(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
該乳白化剤が、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化鉄類、シリコンカーバイド、モリブデンシリサイド、酸化マンガン又はアルキル基が1〜4個の炭素原子を含むポリジアルキルシロキサン類である、請求項7に記載の材料。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の低熱伝導材料は、エアロゲル粒子とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)バインダーを含む。有利には、材料は粉末又はパテとして成形される。「パテ」とは、成形又は成型可能で、フィラー粒子がほとんど脱落しない又は全く脱落しない、パン生地のような堅さの材料を意味する。そのため、本発明の材料では、他のエアロゲル含有材料と比較して微粒子の脱落又は発塵が減少している。この材料は、例えば2つの表面間の粉末もしくはパテとして、又は成型もしくは成形された形状の絶縁構造体として、又は複合体として有用である。好ましい複合体はテープのような絶縁構造体を含み、フィルム又は膜のような2つの外層の間に接着した本発明の材料を有する。有利には、顕著な発塵又は絶縁特性の損失を伴わずに、複合体を伸長可能、屈曲可能及び折り曲げ可能にすることができる。
【0015】
エアロゲル粒子は好ましくはフィラー材料であり、並外れた低密度及び低熱伝導率で知られている。好ましいエアロゲルは、約100kg/m
3より小さい粒子密度、及び大気条件(約298.15K及び101.3kPa)において約25mW/mK以下、より好ましくは約15mW/mK以下の熱伝導率を有する。本発明の材料に使用するのに適したエアロゲルは、無機及び有機エアロゲル並びにそれらの混合物を含む。有用な無機エアロゲルは、シリコン、アルミニウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、イットリウム、バナジウムなどの無機酸化物から形成されたものを含み、シリカエアロゲルが特に好ましい。有機エアロゲルも本発明に使用するのに適しており、カーボン、ポリアクリレート、ポリスチレン、ポリアクリロニトリル、ポリウレタン、ポリイミド、ポリフルフラールアルコール、フェノールフルフリルアルコール、メラミンホルムアルデヒド、レゾルシナールホルムアルデヒド、クレゾール、ホルムアルデヒド、ポリシアヌレート、ポリアクリルアミド、エポキシド、寒天、アガロースなどから作ることができる。
【0016】
粉末状のエアロゲルは簡単に市販のものを購入することができる。例えば、比較的低コストの製造工程で形成したシリカエアロゲルが、Smith他の米国特許第6172120号に記載されている。エアロゲル粒子の大きさは、ジェットミル又は大きさを減少させる他の手法により、所望の大きさに減少させるか又は分級することができる。本発明の絶縁材料を作るためには、約5μm〜約1mmの範囲の粒径に粉砕されたエアロゲル粒子(エアロゲルビーズ)が好ましく、約10μm以下に粉砕された粒子がより好ましい。エアロゲル粒子が小さいほど、絶縁材料の他の構成要素とより均一に混合した混合物を形成すると考えられている。それゆえ、より小さい空孔サイズ、例えば約100nm以下の平均空孔サイズを有するエアロゲルは、より大きい空孔サイズを有するエアロゲルよりも好ましい。
【0017】
エアロゲルは親水性及び疎水性の両方の状態で使用することができる。親水性エアロゲルは一般的に約18mW/mK以上のより高い熱伝導率を有し、水の吸収があるために、ある種の熱及び/又は電気の絶縁用途にはあまり有用ではないことがある。疎水化処理がなされたエアロゲルは、親水性エアロゲルよりも低い、約15mW/mKより小さい熱伝導率を一般的に有し、良好な撥水性を有しているため、多くの熱絶縁用途に非常に適している。約14mW/mK以下の熱伝導率を有する疎水性エアロゲルは、好ましくは本発明に記載されている絶縁材料に使用される。ミルなどの粒径を減少させる手法は、疎水性エアロゲル粒子の外部表面基のいくつかに影響することがあり、この場合粒子内部は疎水性が保持される一方、部分的に表面が親水性となる。しかしながら、部分的に表面親水性を有するエアロゲルは、他の化合物に対して強化された接着性を示すことがあり、接着性が望まれる用途においては好ましいことがある。
【0018】
本発明の材料はさらにPTFEを含む。例えば約50nm〜約600μmの範囲であるエアロゲル粒子よりも小さいPTFE粒子を用いることがもっとも好ましいが、同様の大きさのPTFE粒子もまた有用である。約50nm以上のサイズを有するPTFE1次粒子、及び約600μm以下のPTFE凝集体が好ましい。本発明に従って材料を形成するためには、好ましくは約40質量%以上のエアロゲル、約60質量%以上、又は約80質量%以上のエアロゲルを含むエアロゲル/バインダー混合物を作製する。好ましい混合物は、約40質量%〜95質量%のエアロゲル、及び40質量%〜約80質量%のエアロゲルを含むエアロゲル/PTFE混合物を含む。PTFE粒子は好ましくはエアロゲル/PTFEバインダー混合物の約60質量%以下、約40質量%以下、又は約20質量%以下で含まれる。好ましい混合物は、約5質量%〜60質量%のPTFE、及び20質量%〜約60質量%のPTFEを含むエアロゲル/PTFE混合物を含む。熱伝導率、発塵、成形性及び強度のような特性は、混合物中のエアロゲルとPTFEの質量パーセントの比率を変えることにより、部分的に調節することができる。例えば、エアロゲルの割合が増加するにつれ、この材料から形成した構造体の強度は減少し、熱伝導率がより低くなることがある。同様に、より高い割合のPTFEを有する材料は、より高い機械的強度、より高い成形性を有し、発塵が最小限である構造体を提供しうる。
【0019】
本発明の材料は、必要に応じて追加の
成分を含むことができる。放射熱伝達を減少させ熱特性を改善するために、細かく分散した乳白化剤のような、任意の
成分をエアロゲル/PTFEバインダー混合物に添加することができ、任意の
成分は例えばカーボンブラック、二酸化チタン、酸化鉄類、シリコンカーバイド、モリブデンシリサイド、酸化マンガン、アルキル基が1〜4個の炭素原子を含むポリジアルキルシロキサン類などを含む。さらに、例えば機械的強度を増大させ、色彩及び熱安定性、弾力性などのような特性を得るために、ポリマー、色素、可塑剤、増粘剤、様々の合成及び天然ファイバーを必要に応じて添加する。任意の
成分は、本発明のエアロゲル/PTFEバインダー材料を形成するために用いられる混合物の約10%未満で好ましくは添加される。
【0020】
本発明の材料は、エアロゲル及びPTFE構成要素の凝固及び乾燥混合を含む、多くの方法によって形成することができる。PTFEを含む構成要素の凝固及び乾燥混合は、本技術分野で既知であり、例えば米国特許第4985296号及び第6218000号、及び本実施例において記載されている。本発明の材料を形成するのに特に有用な方法の1つは、エアロゲル粒子の水性分散とPTFEの分散の混合物を生成し、攪拌又は凝固剤の添加により混合物を凝固させる工程を含んでいる。エアロゲル粒子存在下でPTFEを共凝固した結果、PTFEとエアロゲル粒子の密接な混合物が得られる。凝固物は液抜きをして、約433.15Kの対流式オーブンの中で乾燥する。使用する湿潤剤の種類に応じて、乾燥した凝固物は、弱く結合した粉末状であってもよく、又は粉末状の絶縁材料を得るために後ほど冷却して粉砕することのできる、柔らかいケーキ状であってもよい。例えばパテ、成形された構造体、又は絶縁された物品を形成するために、この粉末をさらに加工してもよい。
【0021】
好ましくは、PTFE分散は、乳化重合により生成した高分子量のPTFE粒子の水性コロイド分散である。PTFEの乳化重合法は既知であり、本発明に適した材料を製造するのに有用な方法は、広く文献の中に記載されている(例えば、S.V.Gangal,”Tetrafluoroethylene Polymer”,Mark’s Encyclopedia of Polymer Science and Engineering,Vol.16,p577,John Wiley&Sons,1989)。適した水性分散は、約0.05μm〜約0.5μmの範囲の大きさの1次粒子を有する、約20質量%〜70質量%のPTFEを含む。現在購入可能な水性PTFE分散の例には、Teflon(商標)30、Teflon(商標)35(E.I.Dupont de Nemours,Wilmington,Delawareより入手可)、及びFluon(商標)AD300S、Fluon(商標)AD704(Asahi Fluoropolymer,Chadds Ford,Pennsylvaniaより入手可)のようなものが含まれる。したがって、本発明のさらなる実施態様の1つは、エアロゲル粒子の水性分散と、高分子量PTFE粒子の水性分散を含む分散を対象としている。
【0022】
乳化重合から生成したPTFE分散を凝固し、羊毛状に凝集した凝固物を微粉末に乾燥して得られる、微粉末PTFEを含むPTFE構成要素もまた有用である。好ましいPTFE微粉末は、一般的に非常に高分子量で、凝集体の大きさが200μm〜約600μmの範囲である、PTFE1次粒子の凝集体の形状をしている。好ましいPTFE微粉末樹脂は、Teflon(商標)60、Teflon(商標)6C,Teflon(商標)610A(E.I.Dupont de Nemours,Wilmington,Delaware)として、及びFluon(商標)CD123(Asahi Fluoropolymer,Chadds Ford,Pennsylvania)として入手することができる。乾燥混合法は、場合によっては潤滑剤を用いてエアロゲルとPTFE粒子を乾燥混合する製造工程を含む。異なる剪断速度及び温度の設定で製造することにより、本発明の材料における混合された構成要素は様々な均一性を示すことがあり、また得られた絶縁構造体の機械的強度も異なることがある。より高い剪断速度及びより低い温度で乾燥混合する好ましい方法によれば、構成要素がより高い均一性を有する材料を生成し、より高い機械的強度を有する構造体を作り出すことがしばしばある。
【0023】
本発明の材料はまた、構造体又は複合体に成型、成形又は他の加工をしている間に、剪断応力又は剪断力を受けることがあり、そのことが得られる材料の特性に影響することがある。実施態様の1つにおいては、約303.15〜453.15Kで剪断応力を与えた場合、本発明の材料はパテを形成する。理論に束縛されることを望むものではないが、PTFE1次粒子が互いに接触しながら変形を受けるとき、PTFE粒子は微細なフィブリルを形成することにより連結する(S.Mazur,”Paste Extrusion of Poly(tetrafluoroethylene) Fine Powders”,Polymer Powder Technology,p441,John Wiley&Sons,1995)と考えられている。これらのフィブリルの大きさは、直径で約0.02μm〜約0.1μmの範囲であり、一般的には約0.04μmであると考えられている。またさらに、剪断又は伸長の変形により誘起されたPTFE1次粒子のフィブリル化は、足場状又はかご状構造を形成するに至ると考えられている。好ましくは、PTFE粒子のフィブリルは、他のPTFEフィブリルと又はPTFE粒子と相互に連結することで網を形成し、その内部又は周辺にエアロゲル粒子が位置して、そして互いに結合される。それゆえ、エアロゲル粒子とPTFEバインダーを含む本発明の材料については、PTFE相の相互連結した微細構造が特異であるために、エアロゲルは、より良好な取扱性、改善された成型性、より低い発塵性/粒子脱落、より良好な柔軟性などのような多くの有益な特徴をもたらす、改善された結合を有すると考えられている。
【0024】
本発明の材料がエアロゲル粒子とPTFEバインダーを含む場合、「バインダー」、「結合」又は「結合している」とは、エアロゲルの粒子が互いに保持しあうか、他のエアロゲル粒子又はPTFE構成要素による追加の任意の構成要素と凝集することを意味する。好ましくは、PTFE構成要素の少なくとも一部はフィブリル化していて、フィブリルの少なくとも一部は相互連結しており、他のPTFEフィブリル又はPTFE粒子に付着し、エアロゲル粒子を保持し、及びエアロゲル/PTFE構造と一緒に結合している。それゆえ、本発明の好ましい材料は、エアロゲル粒子と、相互連結したフィブリルを含むフィブリル化したPTFE構成要素を含む。
【0025】
PTFE1次粒子のフィブリル化の程度は、かけた剪断力の大きさ、温度、1次粒子間の任意の潤滑流体の存在などのようないくつかの因子に左右されうる。PTFE粒子のフィブリル化の程度が高いと、得られる構造体又は複合体における、高い成形性、低い粒子脱落及び高い機械的強度を有する材料が得られると考えられている。本発明の好ましい材料は無発塵又は低発塵であり、エアロゲルの結合又はPTFEの相互連結の程度は、PTFEの量やかけた剪断力の大きさのような因子に左右されて様々に変化しうるが、絶縁材料が成型、屈曲、伸長、ねじり、巻きつけ又はその他の操作を受けたときに、結合は有利にエアロゲルの発塵を減少させると考えられている。
図1及び2に示すように、フィブリルはPTFE粒子から他のPTFEフィブリル又は粒子へ延在している。
図1は、60質量%のエアロゲルと40質量%のPTFEを含む、好ましい絶縁テープを10000倍に拡大したSEM像である。
図2は、80質量%のエアロゲルと20質量%のPTFEを含む、本発明の好ましい絶縁テープを10000倍に拡大したSEM像である。
図3は、80質量%のエアロゲルと20質量%のPTFEを含む、凝固したエアロゲルとPTFE粉末の混合物を10000倍に拡大したSEM像である。剪断力又は伸長力を加えて作られた
図1及び2のテープでは、共凝固した粉末(
図3)と比べて、より高い程度のPTFEフィブリル化が生じていることが分かる。
【0026】
約40質量%〜約80質量%より多いエアロゲルを有する本発明の好ましい材料の熱伝導率は、大気条件において約25mW/mK以下である。これらの材料は、好ましくは約100〜400kg/m
3の間の密度を有する。大気条件において、約20mW/mK以下の熱伝導率を有する材料がさらに好ましく、約17mW/mK以下の熱伝導率を有する材料がもっとも好ましい。実施態様の1つにおいては、絶縁材料は、疎水性エアロゲル粒子及び疎水性PTFE粒子を含むバインダーの混合物を含んで形成されている。絶縁材料は、大気条件において高度に疎水性及び耐水性に形成されており、このような材料はそのため多くの熱絶縁用途に適している。
【0027】
本発明の材料は、絶縁された物品を形成するために、少なくとも2つの表面の間の空洞又は空間を占めることができる。表面はそれぞれ独立して柔軟又は剛直のいずれかであってよい。実施態様の1つは、少なくとも2つの表面を有する絶縁された物品と、物品の少なくとも第1及び第2表面の間に位置する本発明の材料を含む。好ましくは、表面の少なくとも1つが剛直な表面であり、より好ましくは表面は固体で無孔性である。例えば、少なくとも2つの表面を有する物品は、二重壁のパイプ、極低温デュワー、マニホールドなどのような二重壁の容器であってもよい。そのため、材料が二重壁の容器における2つの壁の間の空間をほぼ埋めることができる場合に、絶縁された物品が形成される。
図6a及び6bは、環状のパイプの空洞64、及び2つのパイプの壁の表面62及び63の間の空間の中にある本発明の材料61を有する二重壁のパイプを含む、本発明の絶縁された物品の好ましい実施態様の1つの半断面及び横断面を、それぞれ図で表現したものである。これとは別に、グローブ、履物又は衣類用途のような衣料に使用するための絶縁挿入体を含む用途において、本発明の材料を、ゴム、ポリマー、薄い金属ホイル、布地などの柔軟な表面の間に含ませることもできる。
【0028】
本発明の材料は、パテとして成形することができ、又は絶縁構造体を形成するために任意の所望の形状、例えば円筒状、球状、長方形などに成型もしくは成形することができる。本材料は、2又は3次元形状物を形成するために、ロール加工、カレンダー、圧縮成型、及びペースト押出などのような既知の方法により、ある構造体に成型又は成形することができる。大気圧における好ましい絶縁構造体の熱伝導率は、約25mW/mK以下であり、さらに好ましくは約20mW/mK以下であり、もっとも好ましくは約17mW/mK以下である。好ましい構造体は約100〜400kg/m
3の比重を有している。本発明の絶縁構造体を形成する好ましい方法は、エアロゲル粒子とPTFEバインダーを含む材料を用意し、その材料に剪断力をかけ、その材料をある形状の絶縁構造体に形成することを含み、その絶縁構造体は大気条件において25mW/mK以下の熱伝導率を有する。
【0029】
本発明の実施態様の1つは、テープに成形されている本発明の材料を含む、ある形状の絶縁構造体を対象としている。好ましいテープは、約0.5mm以上、好ましくは約0.5mm〜10mmの厚さを有する。好ましいテープ形成方法はペースト押出であり、この方法によれば、良好な機械的強度を有し、低発塵又は無発塵のテープが形成される。PTFEのペースト押出の方法はよく知られており(「Fine powder processing guide」202809A(2/91),Dupont Polymers,Wilmington,Delaware)、本発明に使用するのに適している。この方法では、エアロゲルとPTFEを含む共凝固した粉末を潤滑剤を用いて均一に混合し、潤滑された粉末を作製する。ミネラルスピリット、ソルベントナフサなどのような、炭化水素系潤滑剤を含む潤滑剤を用いることができる。乾燥粉末中のエアロゲル含量に応じ、潤滑剤量は、100質量部の乾燥粉末に対して約100質量部〜約400質量部の範囲でもよい。潤滑された粉末、又は予備成形された形状の潤滑された粉末は、ある形状の物品を形成するために、ペースト押出機の容器に充填してラムにより押し出すことができ、その後、必要に応じて、加圧ロールを用いて押出方向に沿ってロールすることができる。その後、潤滑剤は物品を乾燥することにより除去される。絶縁テープ構造体を形成する他の一般的な方法は、米国特許第2400099号、第2593583号、第4153661号及び第4460642号のような先の特許で開示されているように、2本ロール加工を利用する。
【0030】
さらに別の実施態様は、2層の間に配置されている本発明の材料を含む複合構造体を対象としている。本発明の材料は、膜、フィルムもしくはホイル、又はそれらの組み合わせのような2層の間のコアとして形成され、2層の構成要素は用途に応じ同じでも異なってもよい。それぞれの層は必要に応じて、ラミネート、コーティングなどのような多層の形状物を含んでもよい。少なくとも1層は、気体又は液体に対して透過性又は不透過性であってもよい。好ましくは、少なくとも1層が、延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)、ポリウレタン、シリコーン、ポリエチレン、ポリエステルなどのようなポリマー、ゴム、アルミニウムもしくは銅のような金属ホイル、又は金属化ポリマーホイルから選択される材料から形成されている。
【0031】
コア材料は任意の所望の厚さに成型することができ、好ましくは100〜400kg/m
3の範囲の比重を有する。複合構造体は用途に応じて、約0.5mm以上、好ましくは約0.5mm〜50mm以上の厚さを有する、テープ又は圧縮成型された部品として好ましくは形成される。好ましくは、エアロゲルはコア絶縁材料の約40質量%以上、約60質量%以上、又は約80質量%以上を構成する。実施態様の1つにおいては、本発明の材料は、2つの外層の間に接着しているコアを形成する。実施態様の1つにおいては、例えば本発明に使用するのに適したフィルム又は膜のような表面に接着又は貼着することにより、コア材料が複合体の少なくとも1つの外層に接着している。複合構造体は、接着剤の助けを借りずにコア材料が外層に接着しているところに形成されうる。しかしながら、接着剤を使用しない接着に加えて、フッ素ポリマー、ウレタン、シリコーン、エポキシ及びその他適当な接着剤のような接着剤も使うことができる。
図4は、2つの外層41a及び41b、並びに外層の間の絶縁材料コア42を有している本発明のテープの横断面図であり、外層はそれぞれ同じでも異なってもよい。
図5は、膜間に60質量%のエアロゲルと40質量%のPTFEを含む絶縁材料コアがある、2つの外側の延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜層を有するテープを50倍に拡大したSEM像である。
【0032】
本発明の実施態様の1つは、パイプ及び容器の絶縁用途を含む、巻きつける用途に使用される絶縁複合テープ構造体である。好ましい構造体は、約40〜約80質量%の範囲の割合のエアロゲル、及び必要に応じて約10質量%より少ない量のカーボンブラック又は二酸化チタンのような乳白化剤を有するコア絶縁材料、並びに2層の延伸ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)膜を含む。接着剤を用いると用いないとにかかわらず、コアが2層のePTFEの間に接着されていてもよいが、用途又は材料の選択によってより強い接着が必要とされる場合は、接着剤を好ましくは使用してもよい。テープ絶縁構造体は、例えば極低温、海底の石油及びガス移送パイプなどに使用される絶縁されたパイプを形成するためのパイプ類、様々な容器、長い反応容器及びデュワーのような物品に巻きつけるために使用することができる。巻きつける用途のための絶縁テープは非常に柔軟であり、発塵やひびを生じず熱伝導率の実質的な変化又は増加を伴わないで、約5mmと小さい直径の物品の周りに巻きつけることができる。「実質的」とは、約±1〜3mW/mKの熱特性における変化を意味する。
図7は、本発明のテープ71が巻きつけられているパイプ72の透視図を描いて、本発明の絶縁された物品を図で表したものである。
【0033】
さらに別の実施態様は、少なくとも1層が液体及び/又は気体に対して不透過性である複合構造体である。不透過性層は、例えば、最大で数百kPaの圧力の液体の水に対して不透過性の構造体を提供するePTFEのような膜から選択することができる。その上、金属ホイル又は金属化ポリマーホイルを、気体拡散に対して抵抗性の複合体を形成するのに使用することができる。本発明に使用するのに適した金属ホイルはアルミニウム又は銅を含んでいる。金属化ポリエステルフィルムは、例えば、数年にわたって10kPaより小さい真空圧を維持する気体不透過性層として使用することができる。不透過性複合体は、軍用、産業用途などを含む、毒及び反応性気体に対して抵抗性を有する材料を必要とする用途において有用である。
【0034】
実施態様の1つにおいては、本発明の材料はシールされた不透過性外層の間のコアであり、シールされた複合体の内部を、真空を用いて大気圧よりも低く減圧することにより、さらに低くなった熱伝導率を有するシールされた不透過性複合体を形成する。本発明の好ましい材料は、複合体が約10
-6kPa〜約100kPaの真空下に置かれる用途に使用する場合、約40〜95質量%のエアロゲルを有している。好ましい材料は、室温で測定したときにおよそ1.5kPaの真空下、約10mW/mK以下、より好ましくは約4〜約10mW/mKの熱伝導率を有していてもよい。その上、本発明の材料は、極低温用途に使用するのにさらに適しており、低温かつ減圧の極低温条件下で、材料の熱伝導率はさらに低くなる。例えば、約77Kの極低温において、本発明の実施態様の1つでは、大気圧における熱伝導率は13.7mW/mKであり、1.33×10
-4kPaの真空下における熱伝導率は約1mW/mKである。他の実施態様について、手袋用途においてしばしば実現される圧力水準である、最大で約10kPaの小さい圧力をかけた状態では、エアロゲルとPTFE粒子の間のより大きい空孔の大きさが減少するため、好ましい複合体の熱伝導率が約1〜3mW/mK低下することがある。もっとも好ましいテープ構造体は約10kPaの1軸方向の圧力を受けたときに低い圧縮率を有しており、圧縮率は最大でも約25%である。
【0035】
他の実施態様においては、外層の少なくとも1層が気体及び蒸気透過性であるように複合体が形成される。透過性層はePTFE又は他の微細孔性膜、織物又は不織物の布帛、紙などを含む層を含んでいてもよい。蒸気透過性の複合構造体は、蒸気透過性の外層及び蒸気拡散に対して透過性であるPTFE−エアロゲルコア材料から形成してもよい。複合体の外層に使用される蒸気又は気体透過性膜の例には、ePTFE、シリコーン、ポリウレタン、ポリカーボネート、紙並びに他の多孔性及び気体透過性の膜を含む層を含んでおり、「通気性」衣服及び履物、「通気性」毛布、及び他の種類の「通気性」絶縁のような、水蒸気透過性又は通気性が望まれる又は必要とされる用途において使用することができる。アウトドア衣服のようないくつかの用途においては、通気性と液体の水の不透過性が必要である。このことは、微細孔性膜もしくは連続したポリマーフィルムのいずれか、又は親水性ポリウレタン、ポリエステルなどのような水蒸気透過性ポリマーのコーティングを使用することにより実現できる。本発明の好ましい実施態様は、ePTFE膜を含む2つの外層の間に接着したPTFE−エアロゲル材料のコアを含む、蒸気透過性の複合構造体である。
【0036】
弾性膜層及びその間に位置するコア材料から形成される、伸長可能な複合体はさらに好ましい。好ましい弾性層は熱可塑性弾性体であり、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド及びそれらの共重合体を含む層がさらに好ましい。好ましい伸長可能な絶縁テープは、ほぼ又は完全にもとの寸法に回復する能力を有し、熱特性の実質的な変化又は劣化を伴わずに、解放可能なように伸長することができる。「実質的」とは、約±1〜3mW/mKの熱特性の変化を意味する。本発明に使用するのに適した弾性層は、ポリウレタン、シリコーンなど、及びそれらの共重合体を含む。伸長可能な絶縁複合体の用途には、衣料、特に手袋、靴下、帽子及び伸長可能な衣服、絶縁毛布、イマーションスーツ、絶縁ガスケット、絶縁包帯などが含まれる。
【0037】
外側のフィルム層又は膜層の間にコア材料を有する複合体は、真空形成、連続ロール処理、押出、ラミネート、熱圧縮、接着剤による接着又は接着剤を使用しない接着などのような、多層複合体を形成するための本技術分野で既知である任意の方法によって作ることができ、絶縁構造体を形成する。組成に応じて、外層は強度、耐久性、弾力性、及びその他の特性をテープに付与する。
【0038】
有利には、本発明の材料から作られるシート又はテープのような構造体又は複合構造体は切断するのに適しており、クーラー、水筒、デュワー、手、足又は他の体の領域、及びラップトップコンピューター、携帯電話などのような電子デバイスのようなものを絶縁するのに適当な形状に切り抜くことができる。絶縁構造体は絶縁挿入体を形成するために切断でき、その絶縁挿入体は、例えば、接着、縫合により、又は二重壁の容器の表面の間、多層の間、もしくは布地、金属、ボール紙などのような材料のスリーブに含ませることにより、物品に組み込まれる。複合テープは切断した表面に発塵がないことが好ましい。テープ又はシートは、不規則な形状の対象物を絶縁するために、3次元形状物に成型することができる。例えば、ブーツ又は手袋の絶縁挿入体又は絶縁ライナーを、例えば手袋に係る
図8で図示するように構成することができる。
図8aは本発明の絶縁手袋挿入体80を図で表したものであり、2つの外側の複合層81a及び81b、並びに層81a及び81bの間の本発明の絶縁材料82を含む複合体として描かれている。本発明の絶縁された物品は、1つ以上の挿入体を有していてもよい。例えば、絶縁挿入体を手袋の手のひら側の表面に配置してもよく、アウター及びインナー布地層の間(
図8bの84a及び84b)に取り付けてもよい。その代わりに、
図8bに図示するように、絶縁挿入体80を手の表面の上側83a及び下側83bの両方の上に配置してもよい。各挿入体は物品に組み込まれて、接着、縫合などのような、布地層又は他の絶縁体を固定するための本技術分野で既知の任意の方法により、インナー84a布地層とアウター84b布地層の間で固定(85)される。絶縁挿入体80は本発明の絶縁材料を含む構造体であってよく、又は複合絶縁構造体であってもよい。同様に、ブーツの挿入体は、甲側のつま先のキャップ領域のような履物の甲側の表面上に配置してもよく、下側のソールの表面に配置してもよい。履物層と絶縁体を組み合わせるための本技術分野で既知の任意の方法により、挿入体を履物に組み込むことができ、縫合、接着などにより、挿入体を布地、革、プラスチックなどのようなインナー及びアウターの靴材料の間に固定することができる。
【0039】
他の実施態様においては、絶縁構造体は、ノートブックコンピュータ、PDA(個人用デジタル補助装置)、携帯電話などのような持ち運び可能な電子デバイスに有用である。デバイスの物理的な外装又は筐体の大きさが減少する、及び/又はデバイスの機能が増加するにつれて、熱管理が困難になる。機能が増加すると、電子デバイスのある構成部品においてより多くの熱がしばしば発生する。筐体の大きさが減少すると、発熱する構成部品を外側の筐体のより近傍に配置することになり、その構成部品が外側の筐体表面に熱を伝え易くなる。これらの場合、使用者と直接接触する外側の筐体表面が不快に熱くなることがある。絶縁材料は、発熱する構成部品とデバイスの筐体の間に有用なバリアを形成することができ、そのことにより、ある構成部品から使用者と直接接触するように設計されたデバイスの筐体表面の少なくとも一部へ熱が伝達することを削減し又は遅延させる。使用者と接触するデバイスの筐体表面の少なくとも一部の温度を減少させることができるため、デバイスを使用している最中の、使用者の身体的な快適さも改善される。また、デバイスの外側の筐体表面と使用者の間に絶縁材料でバリアを形成することもでき、そのことにより、熱くなったデバイスの外側表面と使用者の間における熱の伝達が削減又は遅延される。
【0040】
図9に図示するような1つの例においては、少なくとも1つの絶縁構造体91を有する携帯電話が描かれており、この中で、絶縁構造体91は、発熱する構成部品95(パワーアンプ、マルチメディアプロセッサなどのような)を備えたプリント回路基板92と、使用者の顔(不図示)にしばしば接触する携帯電話のキーパッド筐体表面96との間に配置されてもよい。絶縁構造体91はまた、発熱する構成部品95を備えたプリント回路基板92と、使用者の手(不図示)に接触しうる携帯電話の背面筐体の表面94との間に配置されてもよい。他の実施態様(不図示)においては、絶縁構造体91は筐体表面94又は96の外部に位置してもよく、例えば絶縁構造体は、使用者の手と接触するように設計されている筐体外側の表面の少なくとも一部に位置してもよい。
図10では、絶縁構造体101を有するノートブックコンピュータが描かれており、ここでは絶縁構造体101は、CPU(中央演算処理装置)又はGPU(画像処理装置)のような発熱する構成部品105を備えたプリント回路基板102と、しばしば使用者の膝(不図示)に接触するノートブックコンピュータの底面筐体の表面104との間に配置されている。他の実施態様(不図示)においては、絶縁構造体101は底面筐体の表面104の少なくとも一部の外側に位置していてもよい。好ましくは、絶縁構成要素は、使用者の膝と接触しうる筐体外側の表面の一部に取り付けられる。
【0041】
他の実施態様における持ち運び可能な電子デバイスは、携帯電話又はコンピュータのような電子デバイス及びキャリーケースを含み、ここではキャリーケースは絶縁構造体を含んでいる。好ましくは、絶縁構造体をキャリーケースの複数層の間に位置させることができる。
【0042】
有利には、低熱伝導率を有する絶縁構造体は、物理的筐体の全体の寸法を全く増大させないか又はほとんど増大させずに、このようなデバイスの内部又は外側に組み込むのに十分な程度に薄く形成することができる。電子デバイスに用いるのに好ましい絶縁構造体は、本発明の絶縁材料を含んでおり、デバイスの中の使用されていない空間に容易に適合するように、テープ状もしくはシート状であるか、ダイカットされているか、さもなくばある寸法の大きさに成形されている。ePTFEのような2つの外層の間に接着した本発明の絶縁材料を含む複合体が好ましいが、外層を有さない絶縁構造体もまた有用となりうる。高い熱伝導性材料のような、絶縁材料と共に機能する追加の材料を電子デバイスに組み込むこともできる。高い熱伝導性材料は、熱伝導を防止又は遅延させるのとは反対に、筐体表面から離れるように意図的に熱を伝達するために配置することができる。
【0043】
本発明の実施態様の1つは、少なくとも1つの発熱する構成部品、筐体、及び発熱する構成部品と筐体の間に位置する少なくとも1つの絶縁構造体を含む、持ち運び可能な電子デバイスを対象としている。絶縁構造体は、発熱する構成部品及び筐体に直に隣接していてもよいが、熱絶縁とは関係しない追加の構成部品をこの配置の構成部品間に配置してもよいと考えられる。さらに、持ち運び可能な電子デバイスの使用者がより快適になるための方法を開示するが、その方法は、少なくとも1つの発熱する構成部品及び表面をもつ筐体を有する持ち運び可能な電子デバイスを用意し、発熱する構成部品と筐体の間に絶縁構造体を配置し、及び構成部品から筐体表面の少なくとも一部へ向かう発生した熱の伝達を防止又は遅延する段階を含んでいる。別の方法は、筐体外側の表面と使用者の間に絶縁構造体を配置し、少なくとも1つの構成部品から発生した熱の、使用者への伝達を防止又は遅延させる段階を含んでいる。
【0044】
一般的に他の絶縁材料と比べて、本発明のエアロゲル/PTFE材料の最終構造体の特性は、成形性がより良好で、発塵が減少しており、機械的強度が増大し、及び熱伝導率がより低い点で有利であり、これらの特性は、混合物中のPTFE及びエアロゲルの割合に部分的に左右されることがある。さらに、本材料の熱伝導率は、本発明の材料内部の空孔サイズの分布、エアロゲル及びPTFE両方の粒径分布に加え、成型又はテープ形成時の圧縮、又は得られた絶縁構造体の密度に左右されることがある。絶縁材料又は絶縁構造体内部に約100nmより大きい空孔、すなわち空気分子の平均自由行程より大きい空孔が存在すると、構造体の熱伝導率が増大してしまうことがある。以下の実施例は、本発明の実施態様のいくつかによって得ることのできる複合体及び特性の範囲の実例となるが、これらに限定されることを意図したものではない。
【実施例】
【0045】
試験1:絶縁構造体からの粒子脱落
絶縁構造体から脱落した粒子数は、注入物中の粒子状物質を測定するためのUSP788の方法を用いて決定した。絶縁材料の小さいサンプル(約0.64cm×0.32cm〜1.3cm×1.3cm)を、超音波を印加した水槽に漬けたビーカー中で、50質量%の脱イオン水と50質量%のイソプロピルアルコールの混合物150〜200cm
3の中に入れた。粒子は2分間超音波をかけて抽出した(Branson 2200 ultrasonic bath)。試験の前に、イソプロピルアルコール/水の混合物を、0.22μm Millipore メチルセルロースフィルターを通して濾過した。単位体積あたりの脱落粒子数は、レーザ粒子計測(LPC)手法を用い、8000Aカウンタ及びMC200レーザを備えたHIAC Royco 液体シリンジサンプラ3000Aにより、100cm
3/分で0.2〜5μmの範囲で測定した。単位体積あたりの脱落粒子数は、絶縁材料を含むサンプル中の粒子数の読値から、ブランクサンプル中の粒子数(バックグラウンド計数)の読値を引くことで決定した。バックグラウンド計数は、全ての測定について、サンプル計数よりも少なくとも1000倍は低かった。絶縁材料1グラムあたりの脱落粒子数は、式(サンプル計数[/cm
3]−ブランク計数[/cm
3])×抽出体積[cm
3]/抽出された領域[g]を用いて計算した。絶縁材料単位面積あたりの脱落粒子数は、式(サンプル計数[/cm
3]−ブランク計数[/cm
3])×抽出体積[cm
3]/抽出された領域[cm
2]を用いて計算した。値はサンプルの既知の形状及び体積密度から計算した。単位質量及び単位面積あたりの脱落粒子の総数は、0.2〜2.5μmの範囲にわたって脱落した粒子の総数を合計して計算した。
【0046】
試験2:熱伝導率測定
本発明のサンプルの熱伝導率は、大気条件(約298K及び101.3kPa)において、特注の熱流計型熱伝導率試験機を用いて測定した。試験機は、表面に埋め込まれた熱流計(Model FR−025−TH44033,Concept Engineering,Old Saybrook,Connecticut)及び温度センサ(サーミスタ)を備えている加熱されたアルミニウム板、並びに室温に維持されておりその表面にも温度センサが埋め込まれている第2のアルミニウム板からなる。
【0047】
加熱された板の温度は309.15Kに維持し、一方「冷たい」板の温度は298.15Kに保持した。熱流測定(W/m
2K)は、伝導率試験機の板を覆う、2層の薄いアルミニウムホイル(およそ0.02mm厚)の間で行われた。板の直径は約10cmだった。サンプルの厚さは、デジタルマイクロメーター(model ID−F125E,Mitutoyo Corp.,Japan)を用い、2つの薄くて剛直な表面の間で測定した。熱流測定は、サンプルを試験機の中に置いて定常状態に達した後、約2〜5分以内で正常に行われた。
【0048】
熱伝導率は、式:k=L/(1/Q−1/Q
0)に従い、測定した熱流及びサンプルの厚さから計算した。ここで、kは熱伝導率(mW/mK)、Lはサンプルの厚さ(mm)、Qは熱流(W/m
2K)、及びQ
0はサンプルを置かなかったときの熱流(Q
0=100W/m
2K)である。
【0049】
実施例1:約80質量%のエアロゲル粒子と約20質量%のPTFEを含む、無発塵材料のパテを作製した。
【0050】
疎水性で、表面処理がしてあり、ジェットミルで約7μmの粒径にした粉末状の約0.8kgのシリカエアロゲル(Nanogel aerogel,grade OJ0008,Cabot Corp.,Billerica,Massachusetts)を含む4.37質量%の分散液を、25リットルの容器の中で、750rpmで約5分間攪拌しながら、約8.75kgのイソプロピルアルコール(VWR International Inc.,Bridgeport,New Jersey)及び8.75kgの脱イオン水を添加することにより作製した。その後、攪拌速度を1500rpmまで上げた。分散した状態の約0.2kgのPTFE粒子を、0.875kgの23質量%ポリテトラフルオロエチレン水系分散液(TEFRMS 153,DuPont,Wilmington,Delaware)として、急速に混合容器の中に注ぎ入れた。その直後に、約0.5kgの0.4質量%Sedipure界面活性剤溶液(CF803、Tensid−Chemie Vertriebsgesellschaft mbH,BASF Group,Koeln,Germany)を混合物に注いだ。スラリー中の固形物の合計は約5.1質量%であった。共凝固は約1.5分以内に完了した。
【0051】
凝固物を含むスラリーを濾材の上から多孔板の上に注ぎ、約1時間以上かけて液相を排出した。流出物は約0.1質量%の固体を含み透明だった。凝固物は433.15Kの対流式オーブンの中で48時間乾燥した。材料はおよそ20mmの厚さのケーキに乾燥された。ケーキを約263.15Kより低い温度に冷却し、材料の温度を約263.15Kより低く維持しながら、小径の円形動作をしながら下方へ最小限の力をかけることにより、3.175mmメッシュのステンレススクリーンを通して、手で粉砕した。絶縁材料は、体積密度が約181kg/m
3になるまで、円形の金型(およそ直径76.2mm、6.35mm厚)の中に手で圧縮してパテにした。パテの密度は、パテの質量を円形の金型の体積で割ることにより、容量的に決定した。
【0052】
成型されたケーキの熱伝導率は、前述の熱伝導率測定(試験2)の試験に従い測定した。成型されたケーキの熱伝導率は約13.52mW/mKだった。
【0053】
実施例2:ePTFE膜の封筒状体の内部に、80質量%のエアロゲル及び20質量%のPTFEを含むコア材料を有する、絶縁複合体を作製した。
【0054】
実施例1の材料を、12cm×13.3cm×0.8cmの寸法を有する長方形の金型に注ぎいれ、少々圧縮してパテにした。パテを含む金型を、アルミ化した2層のプラスチックホイルの間に配置した。金型を除去して2層のホイルの間に成型されたパテを残した。成型されたパテの周りのホイルの三辺を加熱したアイロンを用いてシールし、封筒状体を形成した。パテを含む封筒状体を真空パッケージ装置の中に移し、封筒状体の四番目の辺を1.5kPaの真空下でシールした。
【0055】
最後に得られた真空パックされた形状物は非常に柔軟であり、屈曲時にひびや角が生じず、全体が7.12mmの厚さで、前述の熱伝導率測定(試験2)の試験に大体従って測定したところ、熱伝導率が9.55mW/mKだった。
【0056】
実施例3:絶縁構造体を約80質量%のエアロゲルと約20質量%のPTFEを含む材料から作製した。
【0057】
75.7リットルの開放混合容器の中で、約29.2kgの脱イオン水を約29.2kgのイソプロピルアルコール(VWR International,Inc.,Bridgeport,New Jersey)に添加した。そこへ、疎水性で、表面処理がしてある約2.68kgのシリカエアロゲル(Nanogel aerogel,grade OJ0008,Cabot Corp.,Billerica,Massachusetts;約7μmの粒径にジェットミルしてある)を添加した。標準的なプロペラ型の攪拌羽根を用い、全体の混合物を1500rpmで4分攪拌し、その後1000rpmでさらに4分攪拌して、均一なスラリーを得た。このスラリーに、約0.68kgのPTFE固形物を、約26.3質量%の固形物を含む分散液(TEFRMS 153,DuPont,Wilmington,Delaware)の状態で添加した。混合物を1000rpmで1分攪拌し、シリカエアロゲルの存在下でPTFEを凝固させた。凝固物は、実施例1のように濾過し、乾燥し、冷却し及び粒状粉になるようスクリーンを通した。
【0058】
約0.82kgの上記粉末を、2.1kgのIsopar K(商標)液体(Exxon Corporation,Houston,Texas)と混合した。混合した材料は、少なくとも3.3kPaの真空においた後で、約322.15Kに保ったダイを通して、0.33m/分の速度でラム押出した。ダイは、測定値で178mm幅及び2mm高さの長方形の開口を有していた。押し出されたシートは、約473.15Kの対流式オーブンの中で乾燥し、Isopar Kの炭化水素液体を除去した。
【0059】
絶縁構造体は、取り扱いが容易で、発塵がなく、約2.4mmの厚さだった。前述の熱伝導率測定(試験2)の試験に大体従って測定したところ、熱伝導率は約15.1mW/mKだった。
【0060】
試験1に記載された方法である、「絶縁構造体からの粒子脱落」は、絶縁構造体から脱落した粒子数を決定するのに使用した。実験に使われたサンプルは、1.3cm×1.3cm×0.245cmの寸法の長方形の形状を有し、密度は261kg/m
3だった。サンプルの脱落は、2つの異なるAspenエアロゲルブランケット(Aspen Aerogels,Inc.,Marlborough,Massachusetts),Aspen AR3100(カーボンブラックなし)及びAspen AR5200(カーボンブラック含む)と比較した。Aspen AR3100サンプルは、1.3cm×1.3cm×0.64cmの寸法であり、密度は100kg/m
3だった。Aspen AR5200サンプルは、0.64cm×0.32cm×0.32cmの寸法であり、100kg/m
3の密度だった。表1に示された結果は、3つの絶縁サンプルについて測定した平均であり、サンプルの1cm
2あたりの総粒子数及び1gあたりの総粒子数が記載してある。Aspen AR3100及びAR5200と比べ、本発明の絶縁構造体からの粒子脱落はより低いことをこの結果は示している。表2では、Aspenエアロゲルブランケットと実施例3の絶縁構造体の脱落した総粒子数の比率に基づいて比較してある。
表1:実施例3の絶縁構造体及びAspenエアロゲルブランケット(Aspen AR3100及びAspen AR5200)から脱落した総粒子数の比較
【表1】
表2:Aspenエアロゲルブランケットと実施例3の絶縁構造体の総脱落粒子数の比率
【表2】
【0061】
実施例4:約55質量%のエアロゲル及び45質量%のPTFEを含む、絶縁材料を作製した。
【0062】
約65.3kgの脱イオン水を、約2.22kgのイソプロピルアルコール(VWR International,Inc.,Bridgeport,New Jersey)及び約0.44kgのZonyl FSO(商標)フッ素系界面活性剤(Dupont Fluoropolymers,Wilmington,Delaware)と混合したものを、75.7リットルの開放容器の中で、約600rpmで約30秒、標準的なプロペラ型の攪拌羽根を用いてその混合物を攪拌することにより作製した。ジェットミルで約7μmの粒径にした約1.54kgのシリカエアロゲル(Nanogel aerogel,grade OJ0008,Cabot Corp.,Billerica,Massachusetts)を、約2300〜2600rpmで攪拌しながら徐々に添加した。シリカエアロゲルの均一なスラリーが得られるまで、攪拌を約6分続けた。スラリーを190リットルの密閉容器に移し、プロペラ型の攪拌羽根を用いて約600rpmで3分攪拌した後に、固形分含量が約25.8質量%である約4.92kgのPTFE分散液を添加した。攪拌を600rpmで引き続き行い、PTFEはシリカエアロゲルと共凝固した。約3分の攪拌の後、混合物を濾材の上から多孔板の上に注ぎ、液体を排出した。濾過した凝固物は、約438.15Kで約24時間乾燥した。乾燥した凝固物は、弱く結合した粉状であり、約253Kの冷凍庫で保管した。
【0063】
実施例5:絶縁テープ構造体を約55質量%のエアロゲルと約45質量%のPTFEを含む材料から作製した。
【0064】
実施例4の材料をIsopar K(商標)(Exxon Corporation,Houston,Texas)と、1kgの固形材料に対して約2.5kgのIsopar K(商標)液体の比率で混合した。混合した材料を少なくとも24時間、約322.15Kに保持した。混合した材料を少なくとも約3.3kPaの真空においた後、直径25mmの容器を通して0.25m/分でラム押出した。使用したダイは25mm幅×0.8mm高さの長方形の開口を有していた。ダイ及び容器は両方とも約322.15Kに保持した。
【0065】
押出した絶縁テープは25mm幅であり、473Kの対流式オーブンの中で60分乾燥した。得られたテープは強靭で、取り扱いが容易で、屈曲でき、折り畳むことができ、及び発塵がなかった。絶縁テープは1.08mmの厚さであった。25mm幅のテープの熱伝導率は、試験板の上に4本のテープを横に並べた第1層を置き、その後4本のテープからなる別の同様な層を第1層と直交する方向に配置したこと以外は、前述の熱伝導率測定(試験2)の試験に大体従って測定した。熱伝導率は約17.9mW/mKだった。
【0066】
実施例6:絶縁構造体を約55質量%のエアロゲルと約45質量%のPTFEを含む材料から作製した。
【0067】
実施例4の材料をIsopar K(Exxon Corporation,Houston,Texas)と、1kgの固形材料に対して約2.5kgのIsopar K液体の比率で混合した。混合した材料は、実施例3に記載したのとほぼ同様にラム押出した。混合した材料を少なくとも約3.3kPaの真空においた後、直径25mmの容器を通して約0.25m/分でラム押出した。使用したダイは約178mm幅×0.8mm高さの長方形の開口を有していた。ダイ及び容器は両方とも約322.15Kに保持した。
【0068】
押出した絶縁テープを473Kの対流式オーブンの中で60分乾燥した。絶縁テープ構造体は厚さが約2.5mm、密度が約250kg/m
3、幅が約148mmだった。前述の熱伝導率測定(試験2)の試験に大体従って測定したときのテープの熱伝導率は、約18.9mW/mKだった。
【0069】
実施例7:約55質量%のエアロゲル及び約45質量%のPTFEを含むコア材料、並びにePTFE膜の2つの外層を含む、絶縁複合テープを作製した。
【0070】
実施例6の絶縁テープを、複合構造体を形成するために熱と圧力を用いて2層の延伸ePTFE膜にラミネートした。第1層にePTFE膜(W.L.Gore&Associates,Inc.,Elkton,Maryland)を有する層状構造体を用意した。ePTFE膜の厚さは約28μm、平均流孔径は約0.21μm、及び単位面積あたりの質量は約16.9g/m
2であり、ePTFE膜の上には、少量のフッ素系熱可塑性粉末(Dyneon(商標)THV(商標)220A,Dyneon LLC,Oakdale,Minnesota)をまぶしてある。実施例6の絶縁テープを第1層の上に置き、続いてテープの上にTHV 220Aをさらに振りかけ、第2層のePTFE膜を置いた。全体の層状構造体を、Carver Pressを用いて、約473.15K及びおよそ300kPaで約3分間プレスした。
【0071】
得られた絶縁複合構造体は、厚さが約2.6mm、密度が約250kg/m
3、前述の熱伝導率測定(試験2)の試験に大体従って測定したときの熱伝導率が約18.4mW/mKだった。
【0072】
実施例8:約55質量%のエアロゲル及び約45質量%のPTFEを含むコア材料、並びにポリウレタン膜の2つの外層を含む、絶縁複合テープを作製した。
【0073】
実施例6の絶縁テープを、複合構造体を形成するために熱と圧力を用いて2層の熱可塑性ポリウレタンフィルムにラミネートした。絶縁テープの両面に、厚さが約25.4μmのポリウレタン(Dureflex(登録商標)PT1710S,Deerfield Urethanes,Inc.,South Deerfield,Massachusetts)フィルムを第1層と第2層に有する層状構造体を作製した。層状構造体は、Carver Pressを用いて、約423.15K及びおよそ340kPaの圧力で約2分間熱ラミネートして、絶縁複合構造体を形成した。得られた複合構造体は、厚さが約2.56mm、密度が約250kg/m
3、前述の熱伝導率測定(試験2)の試験に大体従って測定したときの熱伝導率が約17.2mW/mKだった。
【0074】
実施例9:約75質量%のエアロゲルと約25質量%のPTFEを含む材料を作製した。
【0075】
3.6リットルの容器の中で、約2.1kgの脱イオン水と、0.07kgのイソプロピルアルコール(VWR International,Inc.,Bridgeport,New Jersey)を、約0.021kgのZonyl FSO(商標)フッ素系界面活性剤(Dupont Fluoropolymers,Wilmington,Delaware)と混合した。ジェットミルで約7μmの粒径にした約0.07kgのシリカエアロゲル(Nanogel aerogel,grade OJ0008,Cabot Corp.,Billerica,MA)を、2000rpmで攪拌しながら徐々に混合物に添加して分散液を調製した。均一なスラリーが得られるまで、攪拌を6分間続けた。このスラリーに、固形分含量が約26.6質量%である約0.0877kgのPTFE分散液を、1500rpmで攪拌しながら添加した。攪拌を1500rpmで約2分間引き続き行い、PTFEはシリカエアロゲルと共凝固した。
【0076】
凝固物を含む液体を多孔板の上に注ぎ濾過した。濾過した凝固物を438.15Kで約24時間乾燥した。乾燥した凝固物は弱く結合した粉末状だった。
【0077】
実施例10:約75質量%のエアロゲルと約25質量%のPTFEを含む材料から、絶縁テープ構造体を作製した。
【0078】
実施例9の材料をIsopar K(Exxon Corporation,Houston,Texas)と、1kgの絶縁材料に対して約3.0kgのIsopar Kの比率で混合した。混合した材料は、約322.15Kで少なくとも24時間保持した。混合した材料は、直径25mmの容器を通して0.25m/分でラム押し出しし、ダイは約25mm幅×0.8mm高さの開口を有していた。ダイ及び容器は両方とも約322.15Kに保持した。
【0079】
押出した絶縁テープ構造体は約25mm幅であり、473Kのオーブンで約60分乾燥した。得られたテープは強靭で、取り扱いが容易で、発塵がなく、1.07mmの厚さだった。テープの熱伝導率は、実施例5に大体従って測定し、約15.2mW/mKだった。
【0080】
実施例11:約55質量%のエアロゲル、40質量%のPTFE及び約5質量%のカーボンブラックを含む材料を形成した。
【0081】
3.6リットルの容器の中で、2kgの脱イオン水を約0.0142kgの炭化水素系界面活性剤(Tomadol 1−5(商標)、Tomah Products Inc.,Milton,Wisconsin)と混合した。ジェットミルで約7μmの粒径にした約0.0641kgのシリカエアロゲル(Nanogel aerogel,grade OJ0008,Cabot Corp.,Billerica,Massachusetts)を添加して分散液を調製した。分散液を2000rpmで約3分攪拌して、均一なスラリーを得た。別の容器の中に、0.006kgのカーボンブラック(Ketjenblack(商標)EC300J,Akzo Nobel Polymer Chemicals,Chicago,Illinois)を、0.5kgの脱イオン水の中に入れ、1500rpmで約2分、混合物を攪拌することにより分散した。その後、カーボンブラックスラリーをシリカエアロゲルスラリーに添加し、1500rpmで約2分混合した。このスラリー混合物に、固形分含量が約26.6質量%である約0.1754kgのPTFE分散液を、1500rpmで攪拌しながら添加した。
【0082】
約2分間の攪拌の後、凝固物を含む液体を濾過し、凝固物を約438.15Kで約24時間乾燥した。乾燥した凝固物は自由に流動する微粉末状だった。
【0083】
実施例12:絶縁テープ構造体を、約55質量%のエアロゲル、約40質量%のPTFE及び約5質量%のカーボンブラックを含む材料から作製した。
【0084】
実施例11の材料をIsopar K(Exxon Corporation,Houston,Texas)と、約1kgの絶縁材料に対して約2.79kgのIsopar Kの比率で混合した。混合した材料は、約322.15Kで少なくとも24時間保持した。混合した材料を少なくとも約3.3kPaの真空においた後、直径25mmの容器を通して約0.25m/分でラム押し出しした。使用したダイは25mm幅×0.8mm高さの長方形の開口を有していた。ダイ及び容器は両方とも約322.15Kに保持した。押出したテープは、473Kの対流式オーブンで約60分乾燥した。
【0085】
押出した絶縁テープは強靭で、取り扱いが容易で、発塵がなかった。テープの厚さは1.02mmで、密度は210kg/m
3だった。熱伝導率は、実施例5に大体従って測定し、約16.5mW/mKだった。