(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5654485
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】楽器用の構成部品と、その構成部品が施された楽器
(51)【国際特許分類】
G10C 3/26 20060101AFI20141218BHJP
G10C 1/04 20060101ALI20141218BHJP
G10C 3/00 20060101ALI20141218BHJP
G10C 3/16 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
G10C3/26 Z
G10C1/04
G10C3/00 G
G10C3/00 H
G10C3/16 L
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-544930(P2011-544930)
(86)(22)【出願日】2009年1月14日
(65)【公表番号】特表2012-515357(P2012-515357A)
(43)【公表日】2012年7月5日
(86)【国際出願番号】IB2009051976
(87)【国際公開番号】WO2010082087
(87)【国際公開日】20100722
【審査請求日】2011年12月15日
【審判番号】不服2013-21988(P2013-21988/J1)
【審判請求日】2013年11月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】511170283
【氏名又は名称】ドュ ラ ロシュフォルディエール,デニス
(73)【特許権者】
【識別番号】511170308
【氏名又は名称】リン,バイ
(73)【特許権者】
【識別番号】511170179
【氏名又は名称】アーネスト,ビットナー
(74)【代理人】
【識別番号】100082072
【弁理士】
【氏名又は名称】清原 義博
(72)【発明者】
【氏名】ドュ ラ ロシュフォルディエール,デニス
(72)【発明者】
【氏名】リン,バイ
(72)【発明者】
【氏名】アーネスト,ビットナー
【合議体】
【審判長】
酒井 伸芳
【審判官】
関谷 隆一
【審判官】
萩原 義則
(56)【参考文献】
【文献】
特表平10−513271(JP,A)
【文献】
Harmonic Piano Pedal,”The Harmonic Pedal Mechanism”,フランス,2013年1月22日検索,URL,http://www.harmonicpianopedal.com/mecanisme_en.php
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10C1/00-9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
楽器の部品であって、
前記部品は、
楽器本体に固定される支持部材(18)と、
前記支持部材に固定されるとともに、停止位置と振動残留位置の間で、前記支持部材に対して移動可能な倍音バー(9)と、
各々がそれぞれのダンパー(8)と協働するに適した複数のダンパーアーム部品(31)とを備え、
個々のダンパーアーム部品は、倍音バーに取り付けられ、かつ停止位置と振動残留位置の間で、前記倍音バー(9)に対して移動可能であり、
前記部品はさらに、
それぞれのダンパーアーム部品に取り付けられ、かつ停止位置とエスケープメントポジションの間で、前記ダンパーアーム部品に対して移動可能なエスケープメントノーズ(32)を備え、
前記複数のダンパーアーム部品(31)は、各々エスケープメントノーズの停止位置において、前記倍音バー(9)と協働し、停止位置から振動残留位置への倍音バーの移動により、停止位置から振動残留位置へと前記ダンパーアーム部品(31)の変位を惹起し、
前記エスケープメントノーズは、各々エスケープメント位置へと移動する楽器の個々のキーによって作動され、それによって、ダンパーアーム部品(31)が振動残留位置にあるときに、エスケープメントノーズのキーの作動により、振動残留位置から停止位置へのダンパーアーム部品の移動が可能になり、
それによって、倍音バー(9)が振動残留位置にあるときには、ダンパーアーム部品を振動残留位置に維持し、当該振動残留位置では個々のダンパーは、相当するキーが演奏されない場合、それぞれの弦の振動を減衰せず、
前記倍音バーが、ダンパーアーム部品を停止位置に戻し、当該停止位置では、相当するキーが離されるとき、キーが作動されていないダンパーアーム部品を振動残留位置に維持しながら、それぞれのダンパーがそれぞれの弦の振動を減衰し、
前記部品はさらに、
前記支持部材(18)に取り付けられ、かつ停止位置と共振位置の間で、前記支持部材に対して移動可能な共振バー(10)を備え、
前記共振バーは、前記ダンパーアーム部品(31)と協働し、その結果、前記共振バーの停止位置から共振位置への変位が、すべての前記ダンパーアーム部品(31)をその共振位置へと移動させ、前記ダンパーアーム部品の振動残留位置は、1自由度に従って、停止位置と共振位置の間に介在し、個々のダンパーアーム部品(31)に対するエスケープメントノーズ(32)の位置に関わらず、ダンパー(8)は共振位置にあるそれぞれの弦の振動を減衰せず、
前記倍音バー(9)が、空洞(23)を画定するために形成されたプロファイルドシート板として形成され、かつ前記倍音バー(9)は、ダンパーアーム部品(31)と協働するための倍音部分として機能する縁(29)と、起動部分として機能するベース(22)とを有し、当該ベース(22)が、停止位置から振動残留位置まで前記倍音バーを移動させるために倍音棒(15d)と協働するのに適し、および、
前記共振バー(10)が前記空洞(23)の内側に伸びてなる、
ことを特徴とする楽器の部品。
【請求項2】
前記倍音バー(9)の縁(29)は、個々のエスケープメントノーズ(32)と協働するのに適し、前記倍音バーの停止位置から振動残留位置までの移動は、各ダンパーアーム部品(31)を停止位置から振動残留位置へと移動させてなる
ことを特徴とする請求項1に記載の楽器の部品。
【請求項3】
前記プロファイルドシート板は穴が穿設され、前記共振バー(10)は、作動面(28)を有し、当該作動面(28)は停止位置から共振位置まで前記共振バーを移動させるために共振棒(15c)と協働するのに適し、
前記共振棒(15c)はプロファイルドシート板の穴の中に伸びてなる、ことを特徴とする請求項1また2に記載の楽器の部品。
【請求項4】
前記倍音バー(9)は、前記支持部材(18)に対して回転軸(X)の周りを回転するのに適しており、
各ダンパーアーム部品(30)は、前記倍音バー(9)に対して回転軸(X)の周りを回転するのに適しており、
前記共振バー(10)は、前記支持部材(18)に対して回転軸(X)の周りを回転するのに適している、ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の楽器の部品。
【請求項5】
前記プロファイルドシート板は、ベース(22)と、第1のウィング(20)と、当該第1のウィング(20)と対向し、かつ当該ベース(22)によって連結された第2のウイング(21)とを備えるU字状の輪郭を有し、
前記第1のウィングは、前記支持部材(18)に前記倍音バーを取り付けるための取付ブラケット(24)を含み、前記第2のウィング(21)は縁(29)を含み、前記ベース(22)は作動部分を含む、ことを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の楽器の部品。
【請求項6】
前記プロファイルドシート板は、軽量の耐ねじれ特性と、耐曲げ特性とを有する素材から製造される、ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の楽器の部品。
【請求項7】
前記共振バー(9)は、倍音バー(10)と同一の素材のプロファイルドシート板から製造される、ことを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の楽器の部品。
【請求項8】
前記支持部材(18)に対する少なくとも1つのダンパーアーム部品(31)の変位を制御するために、少なくとも一つのダンパーアーム部品と協働するのに適したダンパーアバットメント(67)をさらに備え、
前記ダンパーアバットメント(67)が前記共振バー(10)に取り付けられてなる、ことを特徴とする請求項1乃至7のいずれかに記載の楽器の部品。
【請求項9】
作動装置として機能する、前記共振棒(15c)及び倍音棒(15d)のうちの少なくとも1つが、前記共振バー(10)及び前記倍音バー(9)のいずれかの作動部分と協働するのに適した一つ目の端と、前記楽器のペダル(6c;6d)と協働するのに適した二つ目の端とを含み、
前記二つ目の端は、前記一つ目の端に対する前記二つ目の端の位置を調整するためのスリーブ(46)と、当該スリーブ(46)と協働するねじが刻設されたリング(47)を含む、ことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の楽器の部品。
【請求項10】
楽器であって、
前記楽器は、本体と、本体に固定される前述の支持部材を備えた請求項1乃至9のいずれかに記載の部品と、複数の弦(3)と、各々が前記複数の弦(3)の少なくとも1つを打撃するための複数のキーを含む鍵盤(4)と、
を備え、
前記複数のキーの各々は、エスケープメント位置に移動するように、それぞれのエスケープメントノーズ(32)と向かい合い、
前記楽器はさらに、
前述の倍音バーと共振バーが独立して作動するのに適したフットコマンド(6)を、含む
ことを特徴とする楽器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、楽器用の構成部品と、その部品が施された楽器に関するものである。
【0002】
グランドピアノのような楽器
において、
弦は、ピアニスト
によって演奏されるキー(鍵盤)によって
作動されるハンマー
により打撃される。さらに、ダンパーは弦の振動を
減衰する為に弦の上で停止しているか、
あるいは振動を可能にする為に弦から離れ上昇する。ダンパーは様々な方法で作動し、ピアニストの指令(通常ペダル)によって、様々な音響効果をもたらす。
【背景技術】
【0003】
特許文献1において、グランドピアノが図解されている。ダンパー補助部品によって作動するダンパーは、ダンパーバー、倍音バーもしくは直接キーを通じて可動する。
【0004】
ペダルが押さえられないと(作動しないと)、押されたキーに準ずるダンパーは弦から離れ上昇し、キーが開放されると弦に戻る。
【0005】
ダンパーバーが作動すると、全てのダンパーが弦から離れ上昇する。キーを弾く間、ダンパーはその位置を保ち、ダンパーバーが開放されない限り元の位置に戻らない。倍音バーが作動すると、全てのダンパーが弦から離れ上昇する。倍音バーの作動中に特定のキーが弾かれ、そのキーが開放されるとこのキーと対になるダンパーは、弦に戻るという効果がある。
【0006】
それゆえ、この
先行技術文献は、楽器に供給される構成部品について、以下にて解説するものである。
−楽器本体に
支持部材(support)を固定し、その
支持部材に倍音バーを固定し、停止位置と振動残留位置の間で、
当該支持部材に対して移動可能であり、
−複数のダンパーアーム部品は、それぞれのダンパーと
協働する
のに適しており、
個々のダンパーアーム部品は、
支持部材に備わっており、停止位置と振動残留位置
で、前記支持部材に
対して移動可能であり、
−それぞれのダンパーアーム部品には、エスケープメントノーズが備えられており、停止位置とエスケープメント位置の間
で、ダンパーアームに
対して移動可能である。
個々のダンパーアーム部品は、エスケープメントノーズの停止位置にあり、倍音バーと作用するので、停止位置から振動残留位置への倍音バーの動きにより、停止位置から振動
残留位置へのダンパーアーム部品の位置が変わる。
楽器の個々のキーで作動できるエスケープメントノーズは、そのエスケープメント位置に移動する。それによって、ダンパーアーム部品が振動残留位置にあるときに、エスケープメントノーズのキーの作動により、振動残留位置から停止位置へのダンパーアーム部品の
移動が可能になる。
またそれによって、倍音バーが振動残留位置にあるときには、ダンパーアーム部品を振動残留位置に留めておく。その位置では個々のダンパーはそれぞれの弦の振動を弱めない。相当するキーが演奏されない場合は、倍音バーによって、ダンパーアーム部品は停止位置に戻る。その位置ではそれぞれのダンパーがそれぞれの弦の振動を弱める。
−相当するキーが離されるとき、振動残留位置にある、キーが作動されていないアーム部品があったとしても、ダンパーバーは
支持部材に乗せられ、停止位置と
共振位置の間
で、前記支持部材に
対して移動する。ダンパーバーは、ダンパーアーム部品と
協働しているので、停止位置と
共振位置の間のダンパーバーの移動により、すべてのダンパーアーム部品は
共振位置へと移動する。振動残留位置にあるダンパーアーム部品は、
1自由度に
従って停止位置と
共振位置の間に介在する。エスケープメントノーズに関連したそれぞれのアームの位置に関わらず、ダンパーは
共振位置にあるそれぞれの弦の振動を弱めない。
【0007】
このようなメカニズムが十分に満足する物であっても、対応するどんなピアノにも取付が容易で組み込むことが出来る構成部品のニーズが存在する。
本発明品はとりわけこれらのニーズを満たすことを目的としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO96/24,125
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的に対して、本発明に
よれば、楽器
のための部品が提供される。
すなわち、本発明によれば、
楽器本体に固定される支持部材(18)と、
前記支持部材に固定されるとともに、停止位置と振動残留位置の間で、前記支持部材に対して移動可能な倍音バー(9)と、
各々がそれぞれのダンパー(8)と協働するに適した複数のダンパーアーム部品(31)とを備え、
個々のダンパーアーム部品は、倍音バーに取り付けられ、かつ停止位置と振動残留位置の間で、前記倍音バー(9)に対して移動可能であり、
前記部品はさらに、
それぞれのダンパーアーム部品に取り付けられ、かつ停止位置とエスケープメントポジションの間で、前記ダンパーアーム部品に対して移動可能なエスケープメントノーズ(32)を備え、
前記複数のダンパーアーム部品(31)は、各々エスケープメントノーズの停止位置において、前記倍音バー(9)と協働し、停止位置から振動残留位置への倍音バーの移動により、停止位置から振動残留位置へと前記ダンパーアーム部品(31)の変変位を惹起し、
前記エスケープメントノーズは、各々エスケープメント位置へと移動する楽器の個々のキーによって作動され、それによって、ダンパーアーム部品(31)が振動残留位置にあるときに、エスケープメントノーズのキーの作動により、振動残留位置から停止位置へのダンパーアーム部品の移動が可能になり、
それによって、倍音バー(9)が振動残留位置にあるときには、ダンパーアーム部品を振動残留位置に維持し、当該振動残留位置では個々のダンパーは、相当するキーが演奏されない場合、それぞれの弦の振動を減衰せず、
前記倍音バーが、ダンパーアーム部品を停止位置に戻し、当該停止位置では、相当するキーが離されるとき、キーが作動されていないダンパーアーム部品を振動残留位置に維持しながら、それぞれのダンパーがそれぞれの弦の振動を減衰し、
前記部品はさらに、
前記支持部材(18)に取り付けられ、かつ停止位置と共振位置の間で、前記支持部材に対して移動可能な共振バー(10)を備え、
前記共振バーは、前記ダンパーアーム部品(31)と協働し、その結果、前記共振バーの停止位置から共振位置への変位が、すべての前記ダンパーアーム部品(31)をその共振位置へと移動させ、前記ダンパーアーム部品の振動残留位置は、1自由度に従って、停止位置と共振位置の間に介在し、個々のダンパーアーム部品(31)に対するエスケープメントノーズ(32)の位置に関わらず、ダンパー(8)は共振位置にあるそれぞれの弦の振動を減衰せず、
前記倍音バー(9)が、空洞(23)を画定するために形成されたプロファイルドシート板として形成され、かつ前記倍音バー(9)は、ダンパーアーム部品(31)と協働するための倍音部分として機能する縁(29)と、起動部分として機能するベース(22)とを有し、当該ベース(22)が、停止位置から振動残留位置まで前記倍音バーを移動させるために倍音棒(15d)と協働するのに適し、および、
前記共振バー(10)が前記空洞(23)の内側に伸びてなる、
ことを特徴とする楽器の部品が提供される。
【0010】
これらの機能により、本部品は容易に製造ができ、寸法が提供される全ての楽器に対しても統合されることが出来る。
【0011】
いくつかの実施例においては、添付の特許請求の範囲にあるように、1つもしくはそれ以上の機能を応用することが可能である。
【0012】
なお、本発明品では楽器の部品が供給される。ダンパーアバットメントは、補助部品に関連した少なくとも一つのダンパーアーム部品の衝程を制御するために、少なくとも一つのダンパーアーム部品と協調するように改良されて、ダンパーバーに備わっている。なお、本発明品では楽器の構成部品が供給される。
少なくとも一つの起動装置は、一つ目の端を含み、ダンパーバーあるいは倍音バーの起動部分と協調するように改良されており、さらに、二つ目の端と楽器のペダルが協調するように改良されている。前述の二つ目の端は、一つ目と二つ目の端の位置を調整するねじの調節装置を含む。
【0013】
本発明では、下記を含むシステムを供給する:
−キャプスタンの調節基軸の回転を通して調節される、グランドピアノの部品に備わっているキャプスタン。
−調整基軸で回転可能な本体と調節部分を含むツールは、グランドピアノの部品に関して、キャプスタンの位置が協調するように改良されている。調節基軸と調整基軸は並行でなく、望ましくは直角にある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
その他、本発明の特徴や長所については、仕様を限定することの無い具体的な図表例にて、確認可能である:
【
図1】グランドピアノを例にとり、楽器を部分的に描いた斜視図である。
【
図2】
図1のグランドピアノに付随し、ペダルの制御指示を出す連結機器を部分的に描いた斜視図である。
【
図3】グランドピアノの部品を部分的に描いた側面斜視図である。
【
図5a】部品の様々な状態を示す、
図3に類似する簡易化した側面図である。
【
図5b】部品の様々な状態を示す、
図3に類似する簡易化した側面図である。
【
図5c】部品の様々な状態を示す、
図3に類似する簡易化した側面図である。
【
図5d】部品の様々な状態を示す、
図3に類似する簡易化した側面図である。
【
図5e】部品の様々な状態を示す、
図3に類似する簡易化した側面図である。
【
図5f】部品の様々な状態を示す、
図3に類似する簡易化した側面図である。
【
図5g】部品の様々な状態を示す、
図3に類似する簡易化した側面図である。
【
図6】
図2の連結機器の側部分的な側断面図である。
【
図7】ダンパーバーとダンパーアバットメントを部分的に描いた斜視図である。
【
図8a】キャプスタン調節器の概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
各図解において、同一あるいは類似する部品は、同様の関連図が表示される。
【0016】
図1は、グランドピアノを例にとり、楽器を部分的に、透視画法で描いた図解である。
図1は、並行に弦3が伸びる、ピアノのボディー2の一部分のみを表している図解である。ピアノ1は、棚板4と1つのキー5と
フットコマンド6から構成されている。この
フットコマンドは、図解にあるように、6a,6b,6c,6dの四つのペダルが含まれる。構成部品7は、キー5の作動とペダル6a,6b,6c,6dの
パイロットに応じて
個々の弦3
にダンパーの「オン」及び「オフ」の
移動を
命令する為にピアノボディー2に備わっている。
図1において、キー5、及び弦3、ダンパー8のみが描かれているが、グランドピアノが並列に配置された複数のキー・弦・ダンパーを含む事は自明である。いくつかの弦はダンパーとの関連性がない場合がある。
【0017】
添付された例において、最初のペダル6aは、ボディー2の側面から棚板4を水平方向に数ミリメートル可動させる「シフトペダル」である。このようなペダルの操作方法は周知の通りであり、本発明品の実質的な目的ではない。よって以下では割愛する。
【0018】
二つ目のペダルである6bは、ソステヌートペダルであり、ソステヌートペダルを操作している際に、キー5が押されダンパー8が弦3から離れ上昇する連動を維持する。ソステヌートペダル6bの操作が解除された場合のみ、これらのダンパー8は関連性のある弦の元に戻る。このようなソステヌートペダルの操作方法は周知の通りであり、本発明品の実質的な目的ではない。よって以下では割愛する。
【0019】
三つ目のペダルである6cは、いわゆる
共振ペダル(または、フォルテペダル)である。ダンパーペダルの作動により、全てのダンパー8がピアノの弦から離れ上昇する。ダンパー8はダンパーペダルの作動が解除されるまで、元の位置に戻らない。
【0020】
四つ目のペダルは、いわゆる「倍音ペダル」である。倍音ペダルが作動して、振動残留位置にある場合、全てのダンパー8は弦3から離れ上昇し、押されたキー5の対になるダンパー8のみ、所定の位置に戻る。倍音ペダルが作動している間中、
共振作用は持続する。その際、ペダルが振動残留位置に有る場合、キー5が押さえられたか否かに関わらず、すべてのダンパー8は弦から離れ上昇する。
【0021】
図2で示されているように、構成部品7は、伸ばされたダンパーバー10(
図2にて識別不可、
図3参照)と、内部が空洞になっている形状をした倍音バー9から構成される。
【0022】
各ペダル6a,6b,6c,6dは、ペダルの制御作動システムの一部である、各
コマンド棒11a,l1b,11c,11d
に連結されている。ダンパーペダル6cは、
コマンド棒11cを
介して共振レバー12c
に連結されている。
共振レバー12cは、ピアノ本体に固定
される支持部材13c
に回転自在に取り付けられる(図解なし)。
【0023】
同様に、倍音ペダル6dは、
コマンド棒11d、ピアノ本体に固定される
支持部材13dと連動している。
共振レバー12cと外側のプレート62は、本質的に並行に伸びている。
【0024】
U字型ブラケット61は、外側のプレート62から一体的に下に伸び、倍音スプリング16dの収め場所を形成する。補助部品13dに備わる外側のプレート62と同様の回転軸で回転する軸受に備わる内側のプレート63に倍音スプリングの対極が接触する。
【0025】
なお、
横レバー14は、ピアノの本体に固定されている
支持部材13e
に回転可能に連結されており、
共振レバー12cと倍音レバー12dの外側の板にかけて伸びる。
横レバー14は、
共振棒15cを支持し、当該共振棒15cは、横レバー14に連結された一つ目の端
から、空洞内に伸び、共振バー10に連結された二つ目の端まで伸び
ている。したがって、
共振棒15cは、倍音バー9の穴73を通る。
【0026】
加えて
横レバー14は、
ピアノ本体の対向当接体(facing abutment)17と
協働する
のに適した共振スプリング16cを備える。
【0027】
倍音レバー12dの内側のプレート63は、一つ目の端が内側のプレート63に接触し、二つ目の端が倍音バー9と接触する倍音棒15dを備える。
【0028】
図4に詳細が示されているように、
支持部材18はピアノのボディーに固定されている。
共振ブラケット19は、
支持部材18に回転軸Xの軸受に対して可動に備わっている一つ目の端を備える。
共振ブラケット19の二つ目の端は、
共振バー10に固定、あるいは接している。本例では、
共振バーは、板状のプロファイルドプレートが中空で、断面が長方形の本体65は
耐ねじれ
特性と耐曲げ
特性とをもつ軽
金属、例えばAU4Gタイプのアルミニウムを使用していると示されている。本例では、側面に沿って、三つの中空の部分が引き伸びる:中間の十字部分に対して左右対称な二つのT字部分。これらの中空の部分は、
共振バーの機能的な特徴を確保しつつ、重量を減らすことが可能である。さらに厚手の部分は ねじ山を抜く、および/または、ねじを留める、および/または、他の固定器具を留めるために使用可能である。ダンパーアーム部品との
協働のため、本体65上部は、ダンパーアーム部品との
協働のため、例えば平らな長方形の断面をもつフェルトを付随する。
【0029】
倍音バー9は、
倍音バー9及び共振バー10が軸(X)
の周りを独立して回転できるように軸受によって倍音バー9とダンパーバー10の単独回転を可能にするように、
支持部材18に
取り付けられている。
【0030】
図4にて示されるように、倍音バー9は
、例えばAU4G−アルミニウム
などの、耐ねじれ
特性と、耐曲げ特性とをもつ軽金属から製造されたプロファイルドシート板から製造される。好都
合なことに、倍音バーと
共振バーは同じ素材から製造されている。倍音バー9は、
互いに対向する第1のウィング20と第2のウィング21とを有し、かつ互いにベース22によって連結された略U字状の輪郭で製造される。
第1のウィング20、ベース22そして
第2のウィング21は、
内部空洞23を画定し、システムの停止位置において、
共振バー10が
内部空洞23内に伸びる。倍音バー9の
第1のウイング20は、取付ブラケッ
ト24に固定され
、取付ブラケット24は、共振ブラケット19から独立して、回転軸Xの周りに旋回自在に支持部材18に連結される。
第1のウィング20
には複数の取付穴25が穿設され、当該複数の取付穴25は、相当するダンパーアーム部品(図解なし、
図3参照)
用のブラケット26を
受け入れるために機能する。このブラケット26は、
取付穴25
において倍音バー9に固定されている一つ目の端から、それぞれのダンパーアーム部品の受け入れ穴27を
画定する二つ目の端ま
で伸びている。
【0031】
図2に関連して示されているように、倍音バー9のベース22のボトムが
作動部分を
画定しており、倍音棒15dを通して倍音ペダル6dの
動作を伝達する。ベース22は、
共振棒15cが通る(
図3参照)穴が
穿設されているが、
共振棒15cは、
共振バー10の作動面28と
協働する。
【0032】
二つ目のウィング21は、縁29により構成されている。この縁29は、ウィング21から、例えば側面の長さに合せて外側に伸びている。
【0033】
図3で示されるように、ダンパーサポート部品30は、ダンパーアーム部品31及び、回転軸33
の周りに回転可能にダンパー
アーム部品31に連結された、エスケープメントノーズ32を含む。アーム31は、回転軸34
の周りに回転可能
にブラケット26に
取り付けられており、本実施形態において、回転軸34は
、X軸方向に伸び、
かつ支持部材18に対する倍音
バー及び共振バーの回転軸と
同一である。ダンパーロッド35は、例えば
、回転軸36にてダンパーアーム部品31に旋回自在に連結された一つ目の端と、関連付けられたダンパー8に連結された対向する二つ目の端
とを有する。
【0034】
エスケープメントノーズ32は、キー
作動部分37を持ち、エスケープメントノーズ32の停止位置において、各キー5相当の
作動部分38に相対する。エスケープメントノーズ32は、さらに倍音バー作動部分を含む。それは例えば倍音バー9の縁29に相対する末端39である。またエスケープメントノーズ32は、相当するアーム31の前頭部分41に隣接している前頭部分40を含む。
【0035】
ダンパーアーム部品31の下部は、
パイロット48の下面などの作動部分42を備え、当該作動部部分42は共振バー10と
向かい合う。
共振バーに
対する作動部分42の正確な位置は
、図8
の下に記載されているとおりに、正確に
調整され得る。
【0036】
これより、このシステムのキャプスタン方法を
図5aから5gに関連して示す。
【0037】
図5aは、停止位置にあるシステムを図式的に示す。実質的には、先に示された
図3に準ずる。
【0038】
図5bに示されている通り、ペダルが作動していない状態では、キー5の作動は制御部分38と相当するエスケープメントノーズ32のキー
作動部分37を接触させる。その際、回転軸33に関わるアーム31のエスケープメントノーズ32の回転が引き起こる。これは、アーム31の前頭部41が、エスケープメントノーズの部分40に接触するまで続く。アーム31に関連したエスケープメントノーズ32のさらなる回転が食い止められるのは、
図5bに示されるよう、キー5の作動がアーム31の全体の回転と、回転軸34に関わる倍音バー9に関連したエスケープメントノーズ32に作用するからである。この回転は、ダンパー棒35の上昇作動に作用し、相当する弦からダンパーを離す。
【0039】
キー5が離されると、システムは
図5aの位置に戻る。
【0040】
倍音ペダル6dが、振動残留位置まで作動すると、
支持部材13dの倍音レバー12d(
図2)全体の回転に作用し、倍音棒15dを上昇させる。倍音レバー12dの回転運動は、
支持部材13eの
横レバー14の回転にも作用する。その間スプリング16cは圧迫され、さらに
共振棒15cを上昇させる。
図5cで示されるように、この位置において倍音バー9(
共振バーも同様)は回転軸Xから数度回転し、回転軸33に関わるアーム31に関連したエスケープメントノーズ32の回転に作用することなく、縁29はエスケープメントノーズ32を押し上げる。
図5dで示されているように、エスケープメントノーズ32の上昇作動は、回転軸34に関わるアーム31を回転させ振動残留位置への持ち上げに作用する。これは、ダンパー軸35の上昇作動に作用する。こうして全てのダンパーが弦から離れる。
【0041】
倍音ペダル6dがこの停止位置に留められ、規定のキー5がピアノで弾かれと、制御部分38がそれぞれのエスケープメントノーズ32のキー
作動部分37と連動する。それによって回転軸33に関わるアーム31に関連したエスケープメントノーズ32の回転が作用し、倍音バー9の縁29のエスケープメントノーズ32の末端39が離れる。
【0042】
キー5が離されると、倍音ペダル6dが振動残留位置を維持する間、回転軸34に関わるブラケット26に関連したダンパーアーム部品31が、下部の停止位置に回転する。これにより
図5eに示されるように、ダンパー軸35が下方に動き、ダンパーが対になる弦に戻る。これは、倍音ペダルが振動残留位置に維持され、キー5が押されたり開放された時に起こる。
【0043】
その時点で、倍音バーが振動残留位置を維持している場合、相当する鍵盤のキーが押されたり開放されているかによって、いくつかのダンパーアーム部品31は図形5c、または5eのような構成を示す。
【0044】
この時点で、ピアニストがペダル6dを離すと、全てのダンパーアーム部品が停止位置に戻る。
【0045】
反対にピアニストがペダル6dを押し続けると
、倍音バー12dの外側のプレート62の更なる回転
が、横レバー14のさらなる移動を惹起し、同時に、内側のプレート63はその
位置に留まり、倍音スプリング16d
を圧縮する。
横レバー14の上昇作動は、
共振棒15cの
さらなる上昇作動
を惹起する。
図5fに示されているように、これは回転軸X
の周りの共振バー10のさらなる回転
を惹起し、これにより、
共振バー10の
作動部分43が、
アーム31の相当する
作動部分43
と係合し、
図5eの位置に
存在するダンパーアーム部品30
のために、回転軸34
の周りにダンパーアーム部品の回転
を惹起する。この回転は、相当するダンパー軸35の上昇移程を起こし、
これによって、関連するダンパーが相当する弦か
ら離れ上昇する。
【0046】
この時点で、倍音ペダル6dが離されると、システムは前述の段階に戻る。
【0047】
ピアニストが倍音ペダル6dを押さえ続けると、倍音軸9の縁29のエスケープメントノーズの末端39が、
共振位置において回転軸34に関連したアーム31の回転で外れる。それによって回転軸33に関連したアーム31によってエスケープメントノーズ32の回転が可能となる。同時にこの追加の動作は、
図5gに描かれるように、押されたり
、開放され
たりしていないキーに関連するダンパーサポート31を倍音ペダルの振動残留位置から
共振位置に至らす。つまり、
図5gの構成は全てのダンパーアーム部品31及びノーズ32によって示されており、全てのダンパーは弦から持ち上げられている。回転軸33の本体31に相対するエスケープメントノーズ32の回転なしでキー5を弾くことが出来るが、この構成では、エスケープメントノーズ32のキー
作動部分37は、相対するキー5の相対する
作動部分38から離れすぎる。
【0048】
それ故、アーム31は
1自由度に
従って停止位置から振動残留位置、さらに
共振位置に至る。
【0049】
この構成で倍音ペダル6dが離されると、システムは
図5cの配置に戻り、その後
図5aの配置に戻る。
【0050】
ピアニストにより
共振ペダル
11cが押されると、
共振ペダル11cは支持部材13cに
対する共振レバー12cの回転
を惹起する。
共振レバー12cは、
横レバー14
と係合し、これによって、支持部材13eに対する横レバー14の回転と
共振棒15cの上
方移動を
惹起し、これによって、共振棒10だけが長手方向の軸Xの周りを回転し、これによって、ダンパーアーム部品31は
共振位置に至る。
【0051】
図6は、倍音バー9と倍音レバー12dの詳細図である。
図6に示されるように、倍音棒15dは、倍音バー9に固定された、ソケット45内で回転する、球44を備えた二つ目の端を含む。
【0052】
対極の一つ目の端、倍音軸はスリーブ(筒状の管)46のソケット45で回転する球44を含む。ジョイント64、例えば自動潤滑ジョイントは、球とソケットの間に挿入される。このジョイントは、例えばナイロンのようなプラスティックで製造することが出来る。これによって
フットコマンドの静穏、および/または、永続的稼働を可能にする。スリーブ46は、ねじ
が刻設されたリング
(threaded ring)47と関連する外側のねじ山(本精密度では識別不可)と協働する。リング47は、レバーの下部と協働することにより、倍音レバー12dのスリーブ46に固定されるまで、上向きに移動する。
【0053】
前述の組立て品は、全てのピアノにおいて倍音バー9の簡単な調節を可能にする。ねじ
が刻設されたリング47と倍音レバーは、簡単な調節を可能にするため、ピアノのボディーの外側(図解なし)にも配置することが出来る。軸は、ピアノのボディーの適切な穴(71,72,
図1参照)に伸びる。
【0054】
この組立品は倍音軸用に説明されたものであるが、ピアノの範囲内で使用されるダンパー軸あるいは他のどの類似する軸も、前述の幾何学(
図6)にて示されることを言及する。
【0055】
さらに
図7にて示されるように、他の観点によると、アバットメントバー67は
共振バー10に固定されている。
図7において、三つの空洞部分を伴った
共振バーの他の実施形態が示されることを言及する。アバットメントバー67は、
部品7の長さに沿って伸び、フェルトのような軟らかい素材の下側の表面を伴い、ダンパーアーム部品の
打撃を制限するよう配置されている。ダンパーバー10が
作動していない場合、ダンパー
のための長い
ストロークを防ぐため、アバットメントバーは低い位置にある。アバットメントバーがダンパーバー
と調整
可能に一体化され
ると、共振バーが
作動されるときは、いつでもダンパーへの長い
ストロークが可能となる。このように
図5gの配置は可能となる。
【0056】
前述の説明より、前述に説明された部品が、適合するどのピアノにも組み込みを可能にし、容易に製造可能なことが分かる。
倍音バーおよび/または
共振バーを形成する
ために、適切な長さのプロファイルドシート
板を製造(打刻か押出加工)するため
、及びブラケット26
及び関連するダンパーアーム部品31を受け入れ
るために
適切な位置に取付穴25
を穿設するために、ピアノの幅、弦とキーの配置と長さ
を与えることで十分である。
部品7の全ての要素は、これによって標準化することが可能である。前述の部品は、
フットコマンドと連結機器を含んでも含まなくても、ピアノに固定され、精密に調節可能である。
【0057】
例えば、ピアノの分野においては、例えば
図3における
参照符号48で示されるような「
パイロット(pilotes)」を利用される事は良くある周知の事実である。この
パイロットは、機械的な部分の相対的・幾何学的配置を微妙に修正することが出来る微妙な調節装置である。
パイロットは例えば、
共振バー10と連動するダンパーアーム部品の下部、キーの端、弦をたたくハンマー(図解なし)のエスケープメント等に備えられる。
【0058】
本発明を異なる視点で見ると、このような
パイロットは、ねじ山に連動した一つ目の端(
図3のアーム31にねじこまれた端)の軸と、円筒形の歯車から製造された、前述の実施形態に調節部分を携えたヘッド49に固定された二つ目の端を含む。
パイロット48の配置の微調整に対応するツール50は、
図8a及び
図8bにて示される。
図8aで示されるように、このツールは、キャビネット57と一体化したハンドル51を含み、内部には、設定回転軸60に沿って伸びる回転軸52を備える。軸52の一つの端は、インデックス付きの作動ボタン53と連動し、もう一つの端はハンドル51と一体化する軸受55に支持された
ウォームねじ(endless screw)54を含む。
パイロット48は、
ウォームねじ54の回転軸に直角に調節旋回軸58のキャビネット57を旋回するように固定されている。
パイロットの歯車部分49は、ツールの
パイロット受け入れ場所59に挿入されている。ユーザーによる回転軸60のボタン53の回転により、
ウォームねじ54の回転が連動し、
パイロットは回転し、調節軸58に沿って、受け入れ部品の内又は外にねじ込まれる。並行でなく例えば直角な設定・調節軸のおかげで、
パイロットは容易に設定可能である。ピアノの他の隣接する部分にダメージを与えずに、
パイロットの位置をツールの限られた動作で可能である。
【0059】
前述の
パイロットと関連するツールは、
図1から
図7で示された通り、ピアノにおいて用可能。しかしあらゆる適切なピアノにも利用可能である。