特許第5654492号(P5654492)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5654492外科用摺動シャフト器具及び摺動シャフト
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5654492
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】外科用摺動シャフト器具及び摺動シャフト
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/56 20060101AFI20141218BHJP
   A61B 17/16 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   A61B17/56
   A61B17/16
【請求項の数】42
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2011-548649(P2011-548649)
(86)(22)【出願日】2010年1月29日
(65)【公表番号】特表2012-516731(P2012-516731A)
(43)【公表日】2012年7月26日
(86)【国際出願番号】EP2010051066
(87)【国際公開番号】WO2010089252
(87)【国際公開日】20100812
【審査請求日】2012年11月20日
(31)【優先権主張番号】102009008687.0
(32)【優先日】2009年2月6日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】502154016
【氏名又は名称】アエスキュラップ アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110001069
【氏名又は名称】特許業務法人京都国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コンスタンティン フォイルハーベル
(72)【発明者】
【氏名】ディーター ヴァイスホイプト
【審査官】 佐藤 智弥
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−321832(JP,A)
【文献】 特開2008−237898(JP,A)
【文献】 特表2002−512838(JP,A)
【文献】 独国特許発明第000010320477(DE,B3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 17/56
A61B 17/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対して変位可能となるように配置される第1シャフト部(14’;14”)及び第2シャフト部(18’;18”)、並びに、前記第1シャフト部(14’;14”)に対する前記第2シャフト部(18’;18”)の移動を案内するための案内装置(30’;30”)を含み、
前記第1シャフト部(14’;14”)が第1工具要素(20’)を担持し、前記第2シャフト部(18’;18”)が第2工具要素(28’)を担持し、前記第1及び第2工具要素(20’;28’)が、作用位置では協動し及び/又は互いに当接し、且つ、前記作用位置から偏向した位置では互いから離間され又は前記作用位置におけるよりも互いから遠くに離間されている、
外科用摺動シャフト器具(10’;10”)用の摺動シャフト(12’;12”)であって、
前記案内装置(30’;30”)が、前記第1シャフト部(14’;14”)上に配置される少なくとも1つの第1案内要素(32’;32”)と、前記少なくとも1つの第1案内要素(32’;32”)と協動し且つ前記第2シャフト部(18’;18”)上に配置される少なくとも1つの第2案内要素(38’;38”)とを含み、
前記案内要素が、形状嵌合式に噛合して前記第1シャフト部(14’;14”)に対する前記第2シャフト部(18’;18”)の移動を案内する、
摺動シャフトにおいて、
協動する前記案内要素(32’、38’;32”、38”)の製造公差を補償するための公差補償装置(160;160’)を備え、
前記公差補償装置(160;160’)が、前記第2案内要素(38’;38”)を前記第1案内要素(32’;32”)に抗して付勢するための圧力装置(162;162’)を含み、
前記圧力装置(162;162’)が、前記第1及び第2シャフト部の遠位端の近傍に配置される前記第1及び/又は第2案内要素(38’;38”)上に形成又は配置されること、
を特徴とする摺動シャフト。
【請求項2】
請求項1に記載の摺動シャフトであって、前記作用位置において製造公差が補償可能となるやり方で、前記公差補償装置(160;160’)が形成され配置されること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の摺動シャフトであって、
前記少なくとも1つの第1又は第2案内要素(32’;32”)が案内溝(34’;34”)の形態であること、及び、
対応する他方の前記案内要素(38’;38”)が、前記案内溝(34’;34”)に噛合式に又は略形状嵌合式に係合する案内突起(40’;40”)の形態であること、
を特徴とする摺動シャフト。
【請求項4】
請求項3に記載の摺動シャフトであって、前記案内装置(30’;30”)により規定される移動方向(16)に対して直交する方向における前記案内溝(34’;34”)の幅が、前記第2シャフト部(18’;18”)の方向に低減していること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記圧力装置(160;160’)が、前記第2案内要素(38’;38”)を前記第1案内要素(32’;32”)に抗して付勢するための少なくとも1つの付勢要素(164;164’)を含むこと、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項6】
請求項5に記載の摺動シャフトであって、前記少なくとも1つの付勢要素(164;164’)が、前記第2案内要素(38’;38”)が前記第1案内要素(32’;32”)を押圧可能なやり方で配置され形成されるばね要素(166;166’)の形態であること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項7】
請求項5又は6に記載の摺動シャフトであって、前記少なくとも1つの付勢要素(164;164’)が、前記第1及び/又は第2案内要素(38’;38”)上に配置又は形成されること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項8】
請求項5〜7のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記少なくとも1つの付勢要素(164;164’)と前記第1又は第2案内要素(32’、38’;32”、38”)とが一体のやり方で形成されること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項9】
請求項5〜8のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記少なくとも1つの付勢要素(164;164’)が、自らによって及ぼされる力に抗して、前記第2シャフト部(18’;18”)から離れる方を向く圧力面(178;178’)と、前記第2シャフト部(18’;18”)の下面(36’;36”)との間の間隔が最大となる基本位置から、前記第2シャフト部(18’;18”)から離れる方を向く前記圧力面(178;178’)と、前記第2シャフト部(18’;18”)の前記下面(36’;36”)との間の間隔が最小となる圧力位置へと移動可能であること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項10】
請求項5〜9のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記少なくとも1つの付勢要素(164’)が自由端(182)を有すること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項11】
請求項10に記載の摺動シャフトであって、前記自由端(182)が、前記第2案内要素(38”)から、近位方向で前記第1シャフト部(14”)の方向に突出していること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項12】
請求項5〜11のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記付勢要素(164)が、前記摺動シャフト(12’)により規定される長手方向軸(16)に対して垂直に配向されている鏡面(180)に対して鏡像対称となるように形成されること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項13】
請求項5〜12のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記付勢要素(164)の近位端及び/又は遠位端が、前記第2案内要素(38’)上に保持されること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記少なくとも1つの第1案内要素又は前記少なくとも1つの第2案内要素(38’;38”)が、少なくとも1つの側面に切込みを備えて形成されること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれかに記載の摺動シャフトであって、単一の第1案内要素及び/又は単一の第2案内要素(32’、38’;32”、38”)が設けられること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項16】
請求項15に記載の摺動シャフトであって、前記単一の第1案内要素及び/又は第2案内要素(32’、38’;32”、38”)が、前記第1及び第2シャフト部(14’、18’;14”、18”)の遠位端の領域に配置されること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記第2シャフト部(18’;18”)が、少なくとも2つの部品から形成され、前記第2工具要素(28’)を含む工具部(128)と、前記工具部(128)に接続されている摺動部(130)とを含むこと、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項18】
請求項17に記載の摺動シャフトであって、
前記工具部(128)が近位側で開放されていること、及び、
前記摺動部(130)が近位側で前記工具部(128)を閉鎖すること、
を特徴とする摺動シャフト。
【請求項19】
請求項17又は18に記載の摺動シャフトであって、前記摺動部(130)が摺動部材料製であり、前記工具部が工具部材料製であること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項20】
請求項19に記載の摺動シャフトであって、前記工具部材料及び前記摺動部材料が異なる材料であること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項21】
請求項19又は20に記載の摺動シャフトであって、前記工具部材料が金属であること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項22】
請求項19〜21のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記摺動部材料が金属であること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項23】
請求項19〜21のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記摺動部材料が合成材料であること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項24】
請求項17〜23のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記工具部(128)と前記摺動部(130)とが互いに不可分に接続されていること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項25】
請求項24に記載の摺動シャフトであって、前記工具部(128)と前記摺動部(130)とが、溶接、はんだ付け、又は接着により共に接続されていること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項26】
請求項24に記載の摺動シャフトであって、前記摺動部(130)が、該摺動部を前記工具部(128)上へ成形することにより製造されること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項27】
請求項17〜26のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記工具部(128)が、近位方向に突出し且つ少なくとも部分的に成形可能な少なくとも1つの接続突起(156)を含むこと、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項28】
請求項1〜27のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記第2工具要素(28’;28”)が刃先(26’)の形態であること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項29】
請求項1〜28のいずれかに記載の摺動シャフトであって、
前記第1工具要素(20’;20”)と前記第2工具要素(28’;28”)とが共に穿孔工具(176;176’)を形成すること、及び、
前記第1工具要素及び前記第2工具要素(20’、28’;20”、28”)が互いに当接し協動する前記作用位置が穿孔位置を規定すること、を特徴とする摺動シャフト。
【請求項30】
請求項1〜29のいずれかに記載の摺動シャフトであって、器具ハンドル(45’)への解放可能な接続のための少なくとも1つの結合要素(112;114)を特徴とする摺動シャフト。
【請求項31】
器具ハンドル(45’)と、前記器具ハンドル(45’)によって動作可能な摺動シャフト(12’;12”)とを含み、
前記摺動シャフト(12’;12”)が、互いに対して移動可能となるように配置される第1シャフト部(14’;14”)及び第2シャフト部(18’;18”)、並びに、前記第1シャフト部(14’;14”)に対する前記第2シャフト部(18’;18”)の移動を案内するための案内装置(30’;30”)を含み、
前記第1シャフト部(14’;14”)が第1工具要素(20’;20”)を担持し、前記第2シャフト部(18’;18”)が第2工具要素(28’;28”)を担持し、前記第1及び第2工具要素(20’、28”;20”、28”)が、作用位置では協動し及び/又は互いに当接し、且つ、前記作用位置から偏向した位置では互いから離間され又は前記作用位置におけるよりも互いから遠くに離間されている、
外科用摺動シャフト器具(10’;10”)であって、
前記案内装置(30’;30”)が、前記第1シャフト部(14’;14”)上に配置される少なくとも1つの第1案内要素(32’;32”)と、前記少なくとも1つの第1案内要素(32’;32”)と協動し且つ前記第2シャフト部(18’;18”)上に配置される少なくとも1つの第2案内要素(38’;38”)とを含み、
前記案内要素が、形状嵌合式に噛合して前記第1シャフト部(14’;14”)に対する前記第2シャフト部(18’;18”)の移動を案内する、
外科用摺動シャフト器具において、
協動する前記案内要素(32’、38’;32”、38”)の製造公差を補償するための公差補償装置(160;160’)を備え、
前記公差補償装置(160;160’)が、前記第2案内要素(38’;38”)を前記第1案内要素(32’;32”)に抗して付勢するための圧力装置(162;162’)を含み、
前記圧力装置(162;162’)が、前記第1及び第2シャフト部の遠位端の近傍に配置される前記第1及び/又は第2案内要素(38’;38”)上に形成又は配置されること、
を特徴とする外科用摺動シャフト器具。
【請求項32】
請求項31に記載の摺動シャフト器具であって、前記摺動シャフト(12’;12”)が、請求項2〜29のいずれかに記載の摺動シャフト(12’;12”)であること、を特徴とする摺動シャフト器具。
【請求項33】
請求項31又は32に記載の摺動シャフト器具であって、前記器具ハンドル(45’)と前記摺動シャフト(12’;12”)とが、解放可能なやり方で互いに接続可能であること、を特徴とする摺動シャフト器具。
【請求項34】
請求項31〜33のいずれかに記載の摺動シャフト器具であって、前記器具ハンドル(45’)を前記摺動シャフト(12’;12”)に解放可能なやり方で接続するための結合装置(110)を特徴とする摺動シャフト器具。
【請求項35】
請求項31又は32に記載の摺動シャフト器具であって、前記器具ハンドル(45)と前記摺動シャフト(12)とが互いに不可分に接続されていること、を特徴とする摺動シャフト器具。
【請求項36】
請求項31〜35のいずれかに記載の外科用摺動シャフト器具であって、前記器具ハンドル(45;45’)が、該摺動シャフト器具(10;10’)の近位端を形成すること、を特徴とする摺動シャフト器具。
【請求項37】
請求項31に記載の外科用摺動シャフト器具であって、
前記器具ハンドル(45)が、互いに対して移動可能であるように配置される第1及び第2ハンドル要素(46、48)を含むこと、
前記第1ハンドル要素(46)が前記第1シャフト部(14)に結合されていること、及び、
前記第2ハンドル要素(48)が前記第2シャフト部(18)に結合されていること、
を特徴とする摺動シャフト器具。
【請求項38】
請求項37に記載の外科用摺動シャフト器具であって、前記第1シャフト部(14)と前記第1ハンドル要素(46)とが互いに不動に接続されていること、を特徴とする摺動シャフト器具。
【請求項39】
請求項37又は38に記載の外科用摺動シャフト器具であって、前記第2シャフト部(18)と前記第2ハンドル要素(48)とが、移動可能なやり方で互いに接続されていること、を特徴とする摺動シャフト器具。
【請求項40】
請求項37〜39のいずれかに記載の外科用摺動シャフト器具であって、前記第2ハンドル要素(48)が、前記第2シャフト部(18)に枢動式に結合されていること、を特徴とする摺動シャフト器具。
【請求項41】
請求項37〜40のいずれかに記載の外科用摺動シャフト器具であって、前記第2ハンドル要素(48)が、前記器具ハンドル(45)上に枢動式に装着されていること、を特徴とする摺動シャフト器具。
【請求項42】
請求項31〜41のいずれかに記載の摺動シャフト器具であって、前記摺動シャフト器具(10;10’;10”)が骨パンチ(10;10’;10”)の形態であること、を特徴とする摺動シャフト器具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに対して移動可能となるように配置される第1シャフト部及び第2シャフト部、並びに、前記第1シャフト部に対する前記第2シャフト部の移動を案内するための案内装置を含み、前記第1シャフト部が第1工具要素を担持し、前記第2シャフト部が第2工具要素を担持し、前記第1及び第2工具要素が、作用位置では互いに協動し及び/又は互いに当接し、且つ、前記作用位置から偏向した位置では互いから離間され又は前記作用位置におけるよりも互いから遠くに離間されている、外科用摺動シャフト器具用の摺動シャフトであって、前記案内装置が、前記第1シャフト部上に配置される少なくとも1つの第1案内要素と、前記第2シャフト部上に配置され且つ前記少なくとも1つの第1案内要素と協動する少なくとも1つの第2案内要素とを含み、前記案内要素が、形状嵌合式に噛合して前記第1シャフト部に対する前記第2シャフト部の移動を案内する、摺動シャフトに関する。
【0002】
更に、本発明は、器具ハンドルと、前記器具ハンドルによって動作可能な摺動シャフトとを含み、前記摺動シャフトが、互いに対して移動可能となるように配置される第1シャフト部及び第2シャフト部、並びに、前記第1シャフト部に対する前記第2シャフト部の移動を案内するための案内装置を含み、前記第1シャフト部が第1工具要素を担持し、前記第2シャフト部が第2工具要素を担持し、前記第1及び第2工具要素が、作用位置では互いに協動し及び/又は互いに当接し、且つ、前記作用位置から偏向した位置では互いから離間され又は前記作用位置におけるよりも互いから遠くに離間されている、外科用摺動シャフト器具であって、前記案内装置が、前記第1シャフト部上に配置される少なくとも1つの第1案内要素と、前記第2シャフト部上に配置され且つ前記少なくとも1つの第1案内要素と協動する少なくとも1つの第2案内要素とを含み、前記第1及び第2案内要素が、形状嵌合式に噛合して前記第1シャフト部に対する前記第2シャフト部の移動を案内する、外科用摺動シャフト器具に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば骨パンチの形態である、上述の種類の外科用摺動シャフト器具が知られている。これらの外科用摺動シャフト器具は、摺動シャフトを形成する2つのシャフト部が互いの上へと直接案内されるように構成されている。この目的で、案内装置を形成し、互いに寄り掛かるシャフト部の表面上に配置又は形成される、いわゆる内部案内要素が設けられる。上位摺動部及び下位摺動部とも称される、この2つのシャフト部は、互いに直接当接している。ところが、このことは、器具の清浄時又は使用時に、互いに当接するシャフト部の間で流体が吸引されることがあるという欠点を有する。器具を分解せずにこの流体を除去することは実際には不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】DE 20 2004 015 643 U1
【特許文献2】US 3,902,498 A
【特許文献3】DE 295 06 466 U1
【特許文献4】US 2004/0044346 A1
【特許文献5】DE 20 2007 003 519 U1
【特許文献6】US 2007/0093843 A1
【特許文献7】DE 602 23 978 T2
【特許文献8】US 4,243,047 A
【特許文献9】DE 103 20 477 B3
【特許文献10】DE 20 2004 015 990 U1
【特許文献11】DE 33 43 867 A1
【特許文献12】US 2004 186 499 A1
【特許文献13】US 5,385,570
【特許文献14】EP 1 967 145 A1
【特許文献15】US 2005 090 829 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従って、本発明の1つの目的は、上述の種類の摺動シャフト及び外科用摺動シャフト器具を、従来の摺動シャフト及び摺動シャフト器具よりも容易に清浄可能となるように改良することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、この目的は、上述の種類の摺動シャフトの場合、前記少なくとも1つの第1及び/又は第2案内要素が、前記第2シャフト部から離れる方を向く方向に及び/又は側方に開放されているという点で達成される。
【0007】
本発明により提案される解決法により、前記案内装置を、単純且つ信頼できるやり方で清浄することが可能となる。前記案内装置は、例えば、側方開口を設けることに起因して、すすぎ用流体によって単純且つ信頼できるやり方で不純物を取り除くことができる。
【0008】
更に、特に上述の種類の摺動シャフトの場合において、前記第1案内要素と前記第2案内要素とがその中で噛合する案内領域において前記第1シャフト部と前記第2シャフト部とが互いに当接するのみであり、これらの第1シャフト部及び前記第2シャフト部が、この案内領域から離れるように清浄間隙により互いから離間されていると好都合とすることができる。本発明により構想される前記清浄間隙は、洗浄機において前記器具をすすぐ又は洗浄する工程により、前記2つのシャフト部間の区域に進入する不純物を難なく除去できるという利点を有する。従って、前記清浄間隙は、従来のように互いに当接している前記シャフト部の間に液体が吸引されるのを防止する。それ故、包括的な清浄及び殺菌の目的で前記器具を分解する必要はない。好ましくは、前記清浄間隙は、清浄流体を容易に迸出できるほど十分大きい。
【0009】
好都合なことに、前記清浄間隙の寸法、特にその幅は、清浄流体の毛管効果の発生を防止するほど十分に大きい。前記清浄間隙の幅は、好ましくは0.2mmから2mmの間の範囲内にある。前記間隙の幅が、0.2mmから1mmまでの範囲内にあり、好ましくは0.6mmであると好都合である。前記清浄間隙を形成する目的で、前記第1及び/又は前記第2シャフト部に、適当な凹部又はスロットが設けられる。前記凹部(その深度が好ましくは前記清浄間隙の幅を規定する)が、一方のシャフト部上に設けられるだけで製造工程は特に単純になる。このことは、好ましくは前記第2シャフト部内に凹部があることにより現実化される。好ましくは、前記凹部は、前記案内領域から近位方向に、任意で前記第2シャフト部の近位端まで延びている。
【0010】
前記少なくとも1つの第1又は第2案内要素が案内溝の形態であり、対応する他方の案内要素が、前記案内溝に噛合式に係合する案内突起の形態であると有利である。確実に協動する、前記案内溝及び前記案内突起の形態を成す前記案内要素のおかげで、前記2つのシャフト部の、互いの上への確実且つ傾きのない案内を現実化することができる。
【0011】
前記摺動シャフトにより規定される長手方向軸に対して平行である規定の移動を単純なやり方で達成するために、前記少なくとも1つの第1又は第2案内要素が、少なくとも前記第1及び第2シャフト部間の相対変位経路に対応する範囲にわたって、前記摺動シャフトにより規定される長手方向軸に対して平行に延びていると好都合である。これによって、前記シャフト部が所望の移動経路全体にわたって互いの上へ案内されることを確実にすることができる。
【0012】
前記シャフト部が所望の移動経路にわたって互いに対して移動可能であることを確実にするために、前記案内要素のうちの他方が、前記摺動シャフトにより規定される長手方向軸に対して平行に、前記案内領域よりも小さい範囲にわたって延びていると有利である。その際、前記2つのシャフト部の互いに対する移動経路又は行程長は、前記第1及び第2案内要素の程度を適当に選ぶことにより、単純なやり方で予め規定することができる。
【0013】
前記案内装置の前記案内要素間の噛合接続を単純なやり方で作ることができるようにするために、前記少なくとも1つの第1案内要素又は前記少なくとも1つの第2案内要素が、その少なくとも1つの側部に切込みを備えて形成されると好都合である。これによって更に、前記2つの案内要素が互いに係合しているとき、前記シャフト部が前記摺動シャフトの前記長手方向軸に対して垂直な方向に互いから分離され得ないことをも確実にすることができる。
【0014】
有利には、前記案内装置により規定される動きの方向に対して直交方向である前記案内溝の前記幅が、前記第2シャフト部の方向に減少する。これによって特に、前記案内溝は鳩尾形溝の形態とすることができる。一方、前記構成が、T字形の断面を有する溝の形態をとることも考えられよう。
【0015】
唯1つの第1案内要素及び/又は唯1つの第2案内要素が実現されると、前記摺動シャフトの構造は特に単純になる。
【0016】
単一の前記第1及び/又は第2案内要素が、前記第1及び第2シャフト部の遠位端の近傍に配置されると有利である。特に前記工具要素が遠位端の近傍に配置される場合、このことにより、これらの工具要素が互いに協動する際にその最適な案内が可能になる。
【0017】
特に、上述の種類の摺動シャフトの場合、前記案内装置が、前記案内装置により規定される案内空間と前記器具の周囲との間の流体接続を確立するための少なくとも1つのすすぎ開口を含むことも好都合である。その際、前記案内空間に清浄用流体又はすすぎ用流体を導入することができ、清浄用流体又はすすぎ用流体はその案内空間から前記すすぎ開口を通して供給することもできる。前記案内装置を単純且つ信頼できるやり方で清浄できるようにするために、2つ、3つ、又はそれ以上のすすぎ開口を設けることができよう。
【0018】
前記案内空間を前記案内溝の内側により規定すれば、前記摺動シャフト器具の構造をより一層簡素化することができる。このような場合、特に、前記案内空間には、前記溝の側壁と、前記案内溝により規定されるスロットと対向する前記溝の基部とが接する。
【0019】
前記少なくとも1つのすすぎ開口が、前記案内溝に接する前記第1シャフト部の側壁にある貫通開口の形態であると、前記案内装置は、特に単純なやり方で製造することができる。例えば、矩形又は鳩尾形の案内溝の場合、1つ以上のすすぎ開口を装備することのできる側壁が合計3つ利用可能である。
【0020】
前記貫通開口がスロット又は細長い穴の形態であると、前記摺動シャフト器具の製造は更に簡素化される。
【0021】
本発明の更なる好適な実施形態によれば、特に上述の種類の摺動シャフトの場合にも、前記第2シャフト部が少なくとも2つの部品から構成され、この第2シャフト部が、前記第2工具要素を含む工具部と、前記工具部に接続されている摺動部とを含むことを実現することができる。前記第2シャフト部の前記少なくとも2片による構成により、特に、近位方向に増加する内部断面を有する切削材料収集器を、単純なやり方で製造することが可能となる。更に、前記2片構成により、2つの異なる材料から前記第2シャフト部を作成するという選択肢が与えられる。特に前記第2シャフト部の前記第2工具要素の場合、この第2工具要素が磨耗を受ける要素であるため、前記2片構成に起因して、前記工具部のみが前記第2工具要素への要求を満たす材料製であればよく、一方で前記摺動部への要求はないことから、製造費用を節約することができる。
【0022】
前記第2シャフト部を個々に構成できるようにするために、前記摺動部が摺動部材料製であり、前記工具部が工具部材料製であると有利である。それ故に、前記第2シャフト部のそれぞれの前記部品について、各種の使用にとって最適な材料を選択することができる。
【0023】
前記摺動部材料及び前記工具部材料が異なる材料であると好都合である。これにより、前記2つの部品の前記構成用に前記材料を選択する際、前記部品の各々について特別な要件を考慮することができる。
【0024】
有利には、前記工具部材料は金属である。特に、前記工具材料は器具スチールである。前記第1工具要素と合わせて骨を打ち抜くことができるように研磨することで鋭利にできる刃先の形態の第2工具要素を構成する上で、金属、特に器具スチールは著しく適している。
【0025】
前記摺動部材料が金属であると、前記摺動シャフトの安定性を単純なやり方で増すことができる。特に、前記金属は器具スチールとすることができる。
【0026】
前記摺動部材料が合成材料であると、前記摺動シャフトの製造費用は顕著に低減することができる。このようにして、前記摺動シャフトの製造は、特に簡素化することができる。例えば、前記摺動部は、前記合成材料から射出工程によって製造することができる。前記第2シャフト部を合成材料から部分的に製造することに起因して、使い捨ての品目とすることが特に適している。例えば前記第2工具要素が損傷し、又は刃先が鈍いおかげで使用不能となった場合、例えば、前記第1シャフト部は使用継続できる一方で、前記第2シャフト部は前記摺動シャフトから除去し、この第2シャフト部を交換しさえすればよい。このことは、前記摺動シャフトの使用者にとって取得費用が低減され、特に再処理費用も低減される。
【0027】
前記工具部と前記摺動部とが互いに不可分に接続されていると、前記摺動シャフトの取扱いを、そして安全性をも単純なやり方で改良することができる。その際、前記工具部及び前記摺動部は、従来の摺動シャフトの場合のように、前記使用者にとって単一体を形成する前記第2シャフト部を形成する。
【0028】
有利には、前記工具部と前記摺動部とは、溶接、はんだ付け、又は粘着により共に接続されている。この記載した接続工程は、前記工具部と前記摺動部とを共に不可分に接続し、前記第2シャフト部を形成するユニットを作り出すことに著しく適している。
【0029】
前記摺動部が、この摺動部を前記工具部上へ成形する工程により製造されると有利である。特に、前記工具部が金属製である場合、前記摺動部は、第2のステップにおいて摺動部を工具部上へ成形することにより、前記工具部に接続することができる。これにより、前記摺動部材料は特に合成材料とすることができるが、金属とすることもできよう。
【0030】
前記工具部と前記摺動部とを接続する前記工程を促進するために、前記工具部が、近位方向に突出する、少なくとも部分的に成形可能な少なくとも1つの接続突起を有すると好都合である。その際、前記摺動部は、前記接続突起をオーバモールドすることにより、単純なやり方で前記工具部上へ成形することができ、これによって前記工具部に不可分に接続される。
【0031】
前記摺動部内に少なくとも1つのすすぎ貫通開口が形成されると、前記摺動シャフトの清浄可能性を単純なやり方で更に改良することができる。
【0032】
前記第1工具要素及び前記第2工具要素が共に穿孔工具を形成し、前記第1及び前記第2工具要素が互いに当接し協動する前記作用位置が、穿孔位置を規定すると有利である。この配置により、例えば、前記摺動シャフト器具が前記穿孔位置にあるときこの摺動シャフト器具によって所望のやり方で骨又は軟骨を除去することができる。
【0033】
更に、本発明によれば、上で提起された前記目的は、上述の種類の外科用摺動シャフトの場合、前記少なくとも1つの第1及び/又は第2案内要素が、前記第2シャフト部から離れる方を向く方向に及び/又は側方に開放されているという点で達成される。
【0034】
本発明により提案される解決法により、前記摺動シャフトの前記案内装置を、単純且つ信頼できるやり方で清浄することが可能になる。例えば、側方開口を設けることに起因して、すすぎ用流体によって前記案内装置の不純物を単純且つ信頼できるやり方で取り除くことができる。
【0035】
有利には、前記摺動シャフト器具は、上述の前記摺動シャフトのうちの1つを含む。従って、前記摺動シャフト器具も、上述の前記摺動シャフトの前記好適な実施形態と合わせた前述の前記利点を呈する。
【0036】
前記器具ハンドルが、前記摺動シャフトの近位端に配置又は形成されているハンドル部の形態であると、執刀医は前記摺動シャフト器具を、単純且つ確実なやり方で取り扱うことができる。
【0037】
本発明の好適な実施形態によれば、前記ハンドル部が、互いに対して移動可能となるように配置される第1及び第2ハンドル要素を含み、前記第1ハンドル要素が前記第1シャフト部に結合され、前記第2ハンドル要素が前記第2シャフト部に結合されることを実現することができる。このような構成を用いれば、前記2つのハンドル部の相対移動が、前記2つのシャフト部の互いに対する相対移動を単純なやり方で引き起こすことができる。
【0038】
前記第1及び前記第2ハンドル要素が、移動可能なやり方で互いの上に装着され、把持領域を規定すると、前記摺動シャフト器具の構造を単純なやり方で更に簡素化することができる。特に、把持領域とは、前記ハンドル要素が、例えば従来の剪刀と同様のやり方で互いの上に装着されている領域であると理解すべきである。
【0039】
前記第1及び/又は第2シャフト部上、及び/又は、前記第1及び/又は第2ハンドル要素上の前記把持領域は、前記第1及び第2シャフト部が互いに対して任意の位置にあるとき、清浄流体の毛管効果を防止するような寸法である少なくとも1つの把持領域開口を通り自由にアクセス可能な少なくとも1つの把持領域凹部を含むと更に有利である。知られている摺動シャフト器具とは対照的に、前記把持領域開口によっても、例えば清浄用流体又はすすぎ用流体を使用するすすぎ工程により、前記把持領域内の不純物を除去することが可能になる。前記把持領域開口の断面は任意の形状とすることができ、特に、孔の形態とすることができ、又は、例えば多角形の断面を有することができる。前記把持領域開口の最小直径又は最小幅が、0.2mmから10mmまでの範囲内にあると好都合である。
【0040】
前記第1シャフト部と前記第1ハンドル要素とが互いに不動に接続されていると、前記摺動シャフト器具の構造は更に簡素化することができる。特に、前記2つの部品は、好ましくは器具スチールから一体のやり方で形成することもできよう。
【0041】
第2ハンドル要素と第2シャフト部とが、移動可能なやり方で互いに接続されていると、前記第2ハンドル要素から前記第2シャフト部に、単純且つ信頼できるやり方で作動力を伝達することができる。
【0042】
前記第2ハンドル要素が前記第2シャフト部に枢動式に結合されていると、前記摺動シャフト器具の特に単純な構造を達成することができる。
【0043】
前記第2ハンドル要素が、前記ハンドル部上に枢動式に装着されていると、それも好都合とすることができる。故に、特に、前記第2ハンドル要素の装着を、前記第1ハンドル要素と無関係に達成することができる。
【0044】
更に、本発明の更なる好適な実施形態において、前記第1及び前記第2工具要素の間の間隔が最大となる静止位置から前記摺動シャフト器具が偏向され且つ前記第1及び第2工具要素の間の間隔が前記静止位置におけるよりも小さい位置から、前記摺動シャフト器具を自動で元に戻すための復帰装置を実現することができる。この種類の復帰装置のおかげで、前記摺動シャフト器具が作動していないときには前記工具要素が互いから離間されることを確実にすることができる。その際、摺動シャフト器具は、前記使用者により把握することができ、そのことにより、前記工具要素が所望のやり方で協動することに起因して、手術に着手する用意が即座にできる。
【0045】
前記復帰装置が、前記ハンドル部上に配置されると、又はこのハンドル部に適用されると、前記摺動シャフト器具は特に単純且つコンパクトなやり方で構成することができる。例えば、前記ハンドル部の少なくとも1つのハンドル要素と、少なくとも1つのシャフト部とが強制結合されている場合、前記復帰装置は、このハンドル要素への圧力に起因して、前記静止位置への前記シャフト部の相対移動を引き起こすことができる。前記復帰装置は、少なくとも1つの復帰部材を含む場合、単純なやり方で形成することができる。2つ又は3つの復帰部材を設けておくことも考えられる。特に、これらの復帰部材は、互いに直接係合し、共に協動するように配置及び/又は形成することができる。
【0046】
前記復帰装置が、前記摺動シャフト器具を基本位置に保持する少なくとも1つの付勢要素を含むと好都合である。
【0047】
前記少なくとも1つの付勢要素又は前記少なくとも1つの復帰部材がばね要素の形態であると、前記摺動シャフト器具の製造は更に簡素化される。前記ばね要素は、特に、コイルばね又は板ばねの形態とすることができる。
【0048】
前記少なくとも1つの付勢要素が、前記第1及び/又は第2ハンドル要素の突起上に配置されると好都合である。これによって、特に板ばねを使用する際、前記付勢要素は、毛管効果に起因して前記ハンドル要素と前記少なくとも1つの付勢要素との間に流体を再び吸引し得るという欠点を有する、前記第1又は第2ハンドル要素に直接当接することが、単純なやり方で防止される。前記付勢要素と前記第1及び/又は第2ハンドル要素との間の間隔は、好ましくは、少なくとも0.2mmに達する。このような間隔は、例えば突起又は座金の形態のスペーサ要素によって単純なやり方で達成することができる。
【0049】
骨から骨材料を単純且つ安全なやり方で打ち抜くことができるようにするために、前記摺動シャフト器具が骨パンチの形態であることが好都合である。
【0050】
以上の記載は、特に、摺動シャフトの、更には外科用摺動シャフト器具の、この後に明確に詳述する次の実施形態を含む。

1.互いに対して変位可能となるように配置される第1シャフト部(14’;14”)及び第2シャフト部(18’;18”)、並びに、前記第1シャフト部(14’;14”)に対する前記第2シャフト部(18’;18”)の移動を案内するための案内装置(30’;30”)を含み、
前記第1シャフト部(14’;14”)が第1工具要素(20’)を担持し、前記第2シャフト部(18’;18”)が第2工具要素(28’)を担持し、前記第1及び第2工具要素(20’;28’)が、作用位置では協動し及び/又は互いに当接し、且つ、前記作用位置から偏向した位置では互いから離間され又は前記作用位置におけるよりも互いから遠くに離間されている、
外科用摺動シャフト器具(10’;10”)用の摺動シャフト(12’;12”)であって、
前記案内装置(30’;30”)が、前記第1シャフト部(14’;14”)上に配置される少なくとも1つの第1案内要素(32’;32”)と、前記少なくとも1つの第1案内要素(32’;32”)と協動し且つ前記第2シャフト部(18’;18”)上に配置される少なくとも1つの第2案内要素(38’;38”)とを含み、
前記案内要素が、形状嵌合式に噛合して前記第1シャフト部(14’;14”)に対する前記第2シャフト部(18’;18”)の移動を案内する、
摺動シャフトにおいて、
協動する前記案内要素(32’、38’;32”、38”)の製造公差を補償するための公差補償装置(160;160’)を特徴とする摺動シャフト。

2.実施形態1に記載の摺動シャフトであって、前記作用位置において製造公差が補償可能となるやり方で、前記公差補償装置(160;160’)が形成され配置されること、を特徴とする摺動シャフト。

3.実施形態1又は2に記載の摺動シャフトであって、
前記少なくとも1つの第1又は第2案内要素(32’;32”)が案内溝(34’;34”)の形態であること、及び、
対応する他方の前記案内要素(38’;38”)が、前記案内溝(34’;34”)に噛合式に又は略形状嵌合式に係合する案内突起(40’;40”)の形態であること、
を特徴とする摺動シャフト。

4.実施形態1〜3のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記公差補償装置(160;160’)が、前記第2案内要素(38’;38”)を前記第1案内要素(32’;32”)に抗して付勢するための圧力装置(162;162’)を含むこと、を特徴とする摺動シャフト。

5.実施形態4に記載の摺動シャフトであって、前記圧力装置(162;162’)が、前記第1及び/又は第2案内要素(38’;38”)上に形成又は配置されること、を特徴とする摺動シャフト。

6.実施形態4又は5に記載の摺動シャフトであって、前記圧力装置(160;160’)が、前記第2案内要素(38’;38”)を前記第1案内要素(32’;32”)に抗して付勢するための少なくとも1つの付勢要素(164;164’)を含むこと、を特徴とする摺動シャフト。

7.実施形態6に記載の摺動シャフトであって、前記少なくとも1つの付勢要素(164;164’)が、前記第2案内要素(38’;38”)が前記第1案内要素(32’;32”)を押圧可能なやり方で配置され形成されるばね要素(166;166’)の形態であること、を特徴とする摺動シャフト。

8.実施形態6又は7に記載の摺動シャフトであって、前記少なくとも1つの付勢要素(164;164’)が、前記第1及び/又は第2案内要素(38’;38”)上に配置又は形成されること、を特徴とする摺動シャフト。

9.実施形態6〜8のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記少なくとも1つの付勢要素(164;164’)と前記第1又は第2案内要素(32’、38’;32”、38”)とが一体のやり方で形成されること、を特徴とする摺動シャフト。

10.実施形態6〜9のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記少なくとも1つの付勢要素(164;164’)が、自らによって及ぼされる力に抗して、前記第2シャフト部(18’;18”)から離れる方を向く圧力面(178;178’)と、前記第2シャフト部(18’;18”)の下面(36’;36”)との間の間隔が最大となる基本位置から、前記第2シャフト部(18’;18”)から離れる方を向く前記圧力面(178;178’)と、前記第2シャフト部(18’;18”)の前記下面(36’;36”)との間の間隔が最小となる圧力位置へと移動可能であること、を特徴とする摺動シャフト。

11.実施形態6〜10のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記少なくとも1つの付勢要素(164’)が自由端(182)を有すること、を特徴とする摺動シャフト。

12.実施形態11に記載の摺動シャフトであって、前記自由端(182)が、前記第2案内要素(38”)から、近位方向で前記第1シャフト部(14”)の方向に突出していること、を特徴とする摺動シャフト。

13.実施形態6〜12のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記付勢要素(164)が、前記摺動シャフト(12’)により規定される長手方向軸(16)に対して垂直に配向されている鏡面(180)に対して鏡像対称となるように形成されること、を特徴とする摺動シャフト。

14.実施形態6〜13のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記付勢要素(164)の近位端及び/又は遠位端が、前記第2案内要素(38’)上に保持されること、を特徴とする摺動シャフト。

15.実施形態1〜14のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記少なくとも1つの第1案内要素又は前記少なくとも1つの第2案内要素(38’;38”)が、少なくとも1つの側面に切込みを備えて形成されること、を特徴とする摺動シャフト。

16.実施形態3〜16のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記案内装置(30’;30”)により規定される移動方向(16)に対して直交する方向における前記案内溝(34’;34”)の幅が、前記第2シャフト部(18’;18”)の方向に低減していること、を特徴とする摺動シャフト。

17.実施形態1〜16のいずれかに記載の摺動シャフトであって、単一の第1案内要素及び/又は単一の第2案内要素(32’、38’;32”、38”)が設けられること、を特徴とする摺動シャフト。

18.実施形態17に記載の摺動シャフトであって、前記単一の第1案内要素及び/又は第2案内要素(32’、38’;32”、38”)が、前記第1及び第2シャフト部(14’、18’;14”、18”)の遠位端の領域に配置されること、を特徴とする摺動シャフト。

19.実施形態1〜18のいずれか又は実施形態1の前文に記載の摺動シャフトであって、前記第2シャフト部(18’;18”)が、少なくとも2つの部品から形成され、前記第2工具要素(28’)を含む工具部(128)と、前記工具部(128)に接続されている摺動部(130)とを含むこと、を特徴とする摺動シャフト。

20.実施形態19に記載の摺動シャフトであって、前記摺動部(130)が摺動部材料製であり、前記工具部が工具部材料製であること、を特徴とする摺動シャフト。

21.実施形態20に記載の摺動シャフトであって、前記工具部材料及び前記摺動部材料が異なる材料であること、を特徴とする摺動シャフト。

22.実施形態20又は21に記載の摺動シャフトであって、前記工具部材料が金属、特に器具スチールであること、を特徴とする摺動シャフト。

23.実施形態20〜22のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記摺動部材料が金属、特に器具スチールであること、を特徴とする摺動シャフト。

24.実施形態20〜22のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記摺動部材料が合成材料であること、を特徴とする摺動シャフト。

25.実施形態19〜24のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記工具部(128)と前記摺動部(130)とが互いに不可分に接続されていること、を特徴とする摺動シャフト。

26.実施形態25に記載の摺動シャフトであって、前記工具部(128)と前記摺動部(130)とが、溶接、はんだ付け、又は接着により共に接続されていること、を特徴とする摺動シャフト。

27.実施形態25に記載の摺動シャフトであって、前記摺動部(130)が、該摺動部を前記工具部(128)上へ成形することにより製造されること、を特徴とする摺動シャフト。

28.実施形態19〜27のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記工具部(128)が、近位方向に突出し且つ少なくとも部分的に成形可能な少なくとも1つの接続突起(156)を含むこと、を特徴とする摺動シャフト。

29.実施形態18〜28のいずれかに記載の摺動シャフトであって、
前記工具部(128)が近位側で開放されていること、及び、
前記摺動部(130)が近位側で前記工具部(128)を閉鎖すること、
を特徴とする摺動シャフト。

30.実施形態1〜29のいずれかに記載の摺動シャフトであって、前記第2工具要素(28’;28”)が刃先(26’)の形態であること、を特徴とする摺動シャフト。

31.実施形態1〜30のいずれかに記載の摺動シャフトであって、
前記第1工具要素(20’;20”)と前記第2工具要素(28’;28”)とが共に穿孔工具(176;176’)を形成すること、及び、
前記第1工具要素及び前記第2工具要素(20’、28’;20”、28”)が互いに当接し協動する前記作用位置が穿孔位置を規定すること、を特徴とする摺動シャフト。

32.実施形態1〜31のいずれかに記載の摺動シャフトであって、器具ハンドル(45’)への解放可能な接続のための少なくとも1つの結合要素(112;114)を特徴とする摺動シャフト。

33.器具ハンドル(45’)と、前記器具ハンドル(45’)によって動作可能な摺動シャフト(12’;12”)とを含み、
前記摺動シャフト(12’;12”)が、互いに対して移動可能となるように配置される第1シャフト部(14’;14”)及び第2シャフト部(18’;18”)、並びに、前記第1シャフト部(14’;14”)に対する前記第2シャフト部(18’;18”)の移動を案内するための案内装置(30’;30”)を含み、
前記第1シャフト部(14’;14”)が第1工具要素(20’;20”)を担持し、前記第2シャフト部(18’;18”)が第2工具要素(28’;28”)を担持し、前記第1及び第2工具要素(20’、28”;20”、28”)が、作用位置では協動し及び/又は互いに当接し、且つ、前記作用位置から偏向した位置では互いから離間され又は前記作用位置におけるよりも互いから遠くに離間されている、
外科用摺動シャフト器具(10’;10”)であって、
前記案内装置(30’;30”)が、前記第1シャフト部(14’;14”)上に配置される少なくとも1つの第1案内要素(32’;32”)と、前記少なくとも1つの第1案内要素(32’;32”)と協動し且つ前記第2シャフト部(18’;18”)上に配置される少なくとも1つの第2案内要素(38’;38”)とを含み、
前記案内要素が、形状嵌合式に噛合して前記第1シャフト部(14’;14”)に対する前記第2シャフト部(18’;18”)の移動を案内する、
外科用摺動シャフト器具において、
協動する前記案内要素(32’、38’;32”、38”)の製造公差を補償するための公差補償装置(160;160’)を特徴とする外科用摺動シャフト器具。

34.実施形態33に記載の摺動シャフト器具であって、実施形態2〜31のいずれかに記載の摺動シャフト(12’;12”)を特徴とする摺動シャフト器具。

35.実施形態33又は34に記載の摺動シャフト器具であって、前記器具ハンドル(45’)と前記摺動シャフト(12’;12”)とが、解放可能なやり方で互いに接続可能であること、を特徴とする摺動シャフト器具。

36.実施形態33〜35のいずれかに記載の摺動シャフト器具であって、前記器具ハンドル(45’)を前記摺動シャフト(12’;12”)に解放可能なやり方で接続するための結合装置(110)を特徴とする摺動シャフト器具。

37.実施形態33又は34に記載の摺動シャフト器具であって、前記器具ハンドル(45)と前記摺動シャフト(12)とが互いに不可分に接続されていること、を特徴とする摺動シャフト器具。

38.実施形態33〜37のいずれかに記載の外科用摺動シャフト器具であって、前記器具ハンドル(45;45’)が、該摺動シャフト器具(10;10’)の近位端を形成すること、を特徴とする摺動シャフト器具。

39.実施形態15に記載の外科用摺動シャフト器具であって、
前記器具ハンドル(45)が、互いに対して移動可能であるように配置される第1及び第2ハンドル要素(46、48)を含むこと、
前記第1ハンドル要素(46)が前記第1シャフト部(14)に結合されていること、及び、
前記第2ハンドル要素(48)が前記第2シャフト部(18)に結合されていること、
を特徴とする摺動シャフト器具。

40.実施形態39に記載の外科用摺動シャフト器具であって、前記第1シャフト部(14)と前記第1ハンドル要素(46)とが互いに不動に接続されていること、を特徴とする摺動シャフト器具。

41.実施形態39又は40に記載の外科用摺動シャフト器具であって、前記第2シャフト部(18)と前記第2ハンドル要素(48)とが、移動可能なやり方で互いに接続されていること、を特徴とする摺動シャフト器具。

42.実施形態39〜41のいずれかに記載の外科用摺動シャフト器具であって、前記第2ハンドル要素(48)が、前記第2シャフト部(18)に枢動式に結合されていること、を特徴とする摺動シャフト器具。

43.実施形態39〜42のいずれかに記載の外科用摺動シャフト器具であって、前記第2ハンドル要素(48)が、前記器具ハンドル(45)上に枢動式に装着されていること、を特徴とする摺動シャフト器具。

44.実施形態33〜43のいずれかに記載の摺動シャフト器具であって、前記摺動シャフト器具(10;10’;10”)が骨パンチ(10;10’;10”)の形態であること、を特徴とする摺動シャフト器具。
【0051】
本発明の好適な実施形態の以下の記載は、図面と合わせて検討されると、より詳細な説明を提供するように働く。
【図面の簡単な説明】
【0052】
図1】骨パンチの形態の外科用摺動シャフト器具の部分断面又は切取り側面図。
図2図1に示す骨パンチの遠位端領域の拡大部分図。
図3図2の矢印Aの方向の図。
図4】摺動シャフトと、この摺動シャフトに解放可能なやり方で接続可能な器具ハンドルとを含む外科用摺動シャフト器具の更なる例示的実施形態の部分切取り側面図。
図5図4に示す摺動シャフトの斜視図。
図6図5の長手方向線6‐6の断面図。
図7図6の線7‐7に沿った部分断面図。
図8】摺動シャフトの更なる例示的実施形態の、図6と同様の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0053】
図1には、全体的な参照記号10をもつ外科用摺動シャフト器具の第1の例示的実施形態が、骨刀とも称される骨パンチ10の形態にして示されている。この外科用摺動シャフト器具は、第1シャフト部14と、この第1シャフト部に対して、摺動シャフト12により規定される長手方向軸16と平行に変位可能な第2シャフト部18とから成る摺動シャフト12を含む。
【0054】
第1シャフト部14は、細長い平行六面体の構成であり、その遠位端に第1工具要素20を有する。つまり、上面22から突出する、そして第2シャフト部18の遠位端に配置される刃先26の相手部材を形成する、アンビル様の相手部材24の形態のものを有する。図1に示すような静止位置のとき、刃先26と相手部材24とは互いから離間されている。第2シャフト部18が第1シャフト部14に対して遠位方向に移動すると、第2工具要素28を形成する刃先26は、相手部材24を直接押圧し、従って、骨材料又は軟骨材料に所望のやり方で作用することができる。工具要素20及び28は共に穿孔工具176を形成する。
【0055】
第1シャフト部14に対する第2シャフト部18の移動を案内するための案内装置30が、切込み案内溝34の形態の、又は第2シャフト部18の方向に開放されているT字形の断面の案内溝34の形態の第1案内要素32を含む。案内溝34は、第1シャフト部14の長さ全体の約3分の1にわたって延びている。第2シャフト部18の下面36から案内突起40の形態の第2案内要素38が突出しており、この第2案内要素は、案内溝34内で、2つのシャフト部14及び18が、互いに対して長手方向軸16と平行にのみ変位可能であるように形状嵌合式に係合する。案内溝34は、その近位側で挿入スロット42に隣接している。挿入スロット42は、骨パンチ10を組立てる際に下面36が上面22に接触するまで案内突起40を受けるように働き、第2シャフト部18を遠位方向に移動することにより案内突起40は案内溝34と係合することができる。
【0056】
摺動シャフト12の近位端には、全体的な参照記号44をもつハンドル部が配置されており、このハンドル部は、摺動シャフトに不可分に接続された、第1ハンドル要素46及び第2ハンドル要素48を含む器具ハンドル45を形成する。前記ハンドル要素46及び48は、いわゆる分岐とも称される。第1ハンドル要素46は、第1シャフト部40と一体のやり方で形成され、この第1シャフト部から、長手方向軸16に対して約45°の角度で側方に突き出している。第2ハンドル要素48は、第1シャフト部が第1ハンドル要素46に移行する領域で、長手方向軸16に対して垂直な方向に走る枢動軸50の周りで枢動するように第1シャフト部14上に装着される。枢動軸50を越えて延びている、第2ハンドル要素48の結合端部52が、枢動軸50に対して平行に走る枢動軸54の周りで枢動するが、結合端部52は、第2シャフト部18の近位端56に結合されており、端部領域58を規定する。端部56は、ハンドル要素46及び48の互いに対する枢動位置と無関係に、上面22を越えて常に突き出している。枢動軸54も同様に、上面22の上方を常に走る。
【0057】
近位端56の近傍であっても下面36が第1シャフト部14の上面22に当接できるようにする目的で、第2シャフト部18には、第1シャフト部14の方向に開放されている、そして端部56がその中へ延びている端部領域凹部60が設けられている。枢動軸54は、第2シャフト部18の、端部領域凹部60により規定される領域又は区分内を走る。
【0058】
更に、骨パンチ10は、板ばねの形態の2つの復帰部材64及び66を有する復帰装置62を含む。復帰部材64及び66の第1自由端が、それぞれのねじ68及び70によって、第1及び第2ハンドル要素46、48のそれぞれの自由端72及び74に、つまりその内面76及び78に固定される。復帰部材64及び66の、ハンドル要素46、48に固定されていない自由端は、玉継手80によって枢動式に、つまり基本位置のとき復帰装置62が端部72及び74を互いから離して保持するように、互いに接続されている。その場合、第2ハンドル要素48は、第1ハンドル要素46に向かって、復帰装置62の効果に抗して枢動することができ、これによって、第2ハンドル要素48と第2シャフト部18との間が連接して接続されていることに起因して、同時に第2シャフト部18を遠位方向に移動させることができる。使用者が骨パンチ10のハンドル部44を放すと、復帰装置62は骨パンチ10を、図1に示すその基本位置に押し戻す。
【0059】
骨パンチ10の清浄可能性を改良するために、先行技術から知られている骨パンチと比較して、この骨パンチに対する様々な変更が行われた。
【0060】
最初に、骨パンチ10は、第2シャフト部18の下面36上の平らなスロット84により形成されている、つまり長手方向軸16に対して直交方向であるシャフト部18の幅全体にわたる、清浄間隙82を含む。スロット84の深度は0.3mmから0.9mmの間の範囲内にあり、第1シャフト部14と第2シャフト部18との間で清浄間隙82により規定される間隔は、清浄間隙82の領域にあるスロット84の深度に対応している。清浄間隙82は、ほぼ端部領域凹部60から開始して、長手方向軸16の方向を案内突起40の近くの区域まで延びている。こうして、第2シャフト部18の、遠位側でスロット84に当接する区分により、案内溝34と合わせて、規定される。清浄間隙82の幅、即ちスロット84の深度は、清浄流体の毛管効果を防止するように選択される。従って、上面22に対向して設置されているスロット84は、清浄用流体又はすすぎ用流体による清浄の目的で自由にアクセス可能である。
【0061】
次に、案内溝34は、第2シャフト部18から離れる方を向いて、つまり、直交方向ウェブ92により互いから分離している2つのすすぎ開口88及び90によって、側方に開放されている。スロット又は細長い穴の形態に構成されているすすぎ開口88及び90は、第1シャフト部14の下面94と、案内溝34により規定される案内空間96との間に流体接続を形成する。それ故に、清浄用流体及びすすぎ用流体によって案内溝34をも最適に清浄することができる。更に、ウェブの近位側に設けられているすすぎ開口90は、少なくとも部分的にスロット84と対向して設置されている。つまり、シャフト部14及び18の互いに対する位置と無関係に設置されている挿入スロット42と流体接続されている。
【0062】
骨パンチ10の、端部領域58における清浄可能性をより一層改良するために、端部領域凹部60へ開放されている貫通開口の形態の端部領域開口98が設けられ、この端部領域開口98は、例えば、端部領域凹部60と、第2シャフト部18の上面100との間に流体接続を生成する孔又はスロットの形態である。従って、端部領域凹部60は、一方でスロット84と、他方で上面100と流体接続されていることから、この端部領域凹部60を最適に清浄することができる。
【0063】
骨パンチ10の清浄可能性は、知られている摺動シャフト器具と比較して、ハンドル部44の領域においても改良された。ねじ68及び70により適所で固定されている復帰部材64及び66の端部と、ハンドル要素46及び48との間に、例えば座金102又は104の形態であり、少なくとも図1に示す基本位置のときに復帰部材62及び64をハンドル要素46及び48から離間させておく、それぞれのスペーサ要素がある。
【0064】
このようにして、復帰部材64及び66とハンドル要素46及び48との間にはそれぞれの間隙106及び108が形成され、間隙の幅、即ち、一方で復帰部材64及び66と、他方でハンドル要素46及び48との間の間隔は、座金102及び104の厚さにほぼ対応している。座金102及び104の厚さは、好ましくは、0.4mmから1mmの間の範囲内にある。
【0065】
好ましくは、骨パンチ10の全ての部品は防錆の器具スチール製である。
【0066】
図4図7に示す、全体的な参照記号10’をもつ骨パンチの更なる例示的実施形態は、摺動シャフト12’と、この摺動シャフトに解放可能なやり方で接続可能な器具ハンドル45’とを含む。器具ハンドル45’と摺動シャフト12’とは、結合装置110によって解放可能なやり方で互いに接続可能である。
【0067】
摺動シャフト12’の基本構成は、摺動シャフト12の基本構成に対応しており、摺動シャフト12’は、第1シャフト部14’、そして第2シャフト部18’をも含み、これらのシャフト部は案内装置30’によって互いに結合されている。第1シャフト部14’の下面94’から突出し、結合要素112及び114を規定する結合突起が、第1シャフト部14’の近位端に形成され、又は多少この近位端から離間されており、前記突起は、第1シャフト部14を器具ハンドル45’に対して移動不能となるようにその上に配置するために、器具ハンドル45’上に設けられた対応する結合要素116及び117と係合するようになっている。
【0068】
器具ハンドル45’は、第2シャフト部18’の近位端領域内に形成された駆動部材台座122と係合するようになっている、有角で枢動可能に装着された駆動部材120に結合されている空気圧シリンダの形態の駆動部118を含む。従って、駆動部118は、第2シャフト部18’を第1シャフト部14’に対して長手方向軸16と平行に遠位方向に移動させることに使用することができる。空気圧で駆動する、又は動作可能な器具ハンドルの例が、その内容全体と共に本明細書に援用されるDE 20 2004 015 643 U1に記載されている。
【0069】
第1シャフト部14’は、細長い略平行六面体124の形態に構成されており、その遠位端に設置された第1工具要素20’を有する。つまり、上面22’から突き出している、第2シャフト部18’の遠位端に置かれた刃先26’のアンビル様の相手部材24’の形態のものを有する。図4に示すような静止位置のとき、刃先26’と相手部材24’とは互いから離間されている。第2シャフト部18’が第1シャフト部14’に対して遠位方向に移動すると、第2工具要素28’を形成する刃先26’は、相手部材24に直接押し当たり、これによって骨材料及び軟骨材料に所望のやり方で作用することができる。刃先26’は、長手方向軸16に対して或る程度傾斜する切断面126を規定することに言及されるべきである。
【0070】
第1シャフト部14’に対する第2シャフト部18’の移動を案内するための案内装置30’が、切込み案内溝34’、又は第2シャフト部18’の方向に開放されているT字形の断面を有する案内溝34’の形態の第1案内要素32’を含む。案内溝34’は、第1シャフト部14’の長さ全体のほぼ5分の1にわたって延びている。第1シャフト部18’の遠位端区分を形成する工具部128の下面36’から、案内突起40’の形態の第2案内要素38’が突出しており、前記第2案内要素は、2つのシャフト部14’及び18’が互いに対して長手方向軸16と平行にのみ変位可能となるように、略噛合式に案内溝34’内で係合している。
【0071】
案内溝34’の近位側では、案内溝が挿入スロット42’に隣接されている。挿入スロット42’は、摺動シャフト12’を組立てる際に、下面36’が第1シャフト部18’の上面22’に接触できるようになるまで案内突起40’を受けるように働き、シャフト部18’を遠位方向に移動させることにより案内突起40’を案内溝34’内で係合させることができる。
【0072】
第2シャフト部18’は、2片のやり方で形成されており、工具部128と、工具部に近位側で隣接し駆動部材台座122が中に形成されている摺動部130とを含む。工具部128は、スリーブの形態であり、その遠位端の近傍にある工具部128の外面132を研磨することにより形成される刃先26’をその遠位端に含む。刃先26’は、近位方向に延びて切削材料用の収集手段138を形成する工具部128の内側136への入口開口134に接する。
【0073】
切削材料収集器138の内部断面積140は、入口開口134から近位方向へ連続的に増加する、即ち大きくなる。従って、最小の断面積は入口開口134が規定する。切削材料収集器138の最大の断面積140は、その近位端142にある。この近位端から遠位方向に始まり、第2シャフト部18’の壁144内を延び、摺動シャフト12’の対称面を同時に規定する中心面146に対して対称である排出開口150があり、前記排出開口は、中心面146の垂線と平行に延びる排出方向148に開放されている。排出方向148に対して垂直であり、長手方向軸16に対しても垂直である方向への排出開口150の高さは、切削材料収集器138の高さに対応している。排出開口150の長さは、丸くされているその遠位端及び近位端152及び154の幅の約3倍である。
【0074】
近位端142に近位側で当接して、成形工程により上に摺動部130が形成されている接続突起156がある。工具部128は好ましくは器具スチール製であり、摺動部130は好ましくは射出成形可能な合成材料である。従って、摺動部130は摺動部材料製であり、工具部128は工具部材料製であり、これらの摺動部と工具部とは、本事例では異なるように選択されている。つまり、一方は合成材料製であり、他方は金属製である。別法として、摺動部130は、個別に成形し、続いて、接続突起156の領域において接着又は溶接により工具部128に接続することもできよう。明らかなことであるが、摺動部130は、接着、はんだ付け、又は溶接により工具部128に接続できるように、金属製とすることもできよう。
【0075】
接続突起156の近位側で摺動部130内に、細長いスロット様のすすぎ貫通開口158が形成されるが、図5に示す摺動シャフト12’の例示的実施形態の場合、第2シャフト部18’の上面100’からその下面36’まで延びるすすぎ貫通開口158が合計3つある。
【0076】
第1シャフト部14’に対する第2シャフト部18’の移動の案内を改良する目的で、第1シャフト部14’上に、第2シャフト部18’の方向に突き出している、長手方向軸16に対して垂直なT字形の断面の突起を形成することができ、前記突起は、すすぎ貫通開口の長さの約3分の1にわたって長手方向軸16と平行に延びている。任意で、図4及び図5に示さない案内装置を構成する目的で、長手方向軸16と平行に延びる内部側壁に、突き出し、互いに向き合うウェブ様の案内突起を配置又は形成することができ、前記案内突起は間で、T字形の突起のうちのそれぞれの一方用に長手方向軸16と平行に延びる案内スロットを規定する。換言すれば、案内突起は、T字形の突起用にT字形の案内溝を規定する。案内突起は、長手方向軸と平行なすすぎ貫通開口158の長さの3分の2より多少短い長さにわたって延び、つまりそれぞれのすすぎ貫通開口158の近位端から始まって延びている。このようにして、T字形の突起は、すすぎ貫通開口158の遠位端の近傍で下から同時に導入し、第2シャフト部18’を第1シャフト部14’に対して遠位方向へ移動させることにより、案内突起間に規定されている案内スロットに挿入することができる。このようにして、第1シャフト部14’及び第2シャフト部18’は、摺動部の領域であっても、案内されるやり方で共に保持される。
【0077】
すすぎ貫通開口158の特別な配置及び設計に起因して、第1シャフト部14’上のT字形の突起によりその近傍に任意で設けられる案内装置、及び、すすぎ貫通開口158の内部側壁に設けられる案内突起は、連続的に開放されているように形成することができ、これによって、骨パンチ10の清浄が促進される。
【0078】
既述のように、摺動部130及び工具部128を含む第2シャフト部18’は、特に、工具部128上へ摺動部130を成形することにより製造することができる。考えられる成形工程として、例えば、合成材料射出成形、金属射出成形(「金属射出成形」や、他にはいわゆる「MIM」技術)があり、又は後に焼結工程が続くセラミック射出成形(「セラミック射出成形」や、他には「CIM」技術)によるものがある。ここではいずれの場合も射出成形が必要である。特に、第1シャフト部14’上でT字形の突起により任意で設けられる案内装置、及び、すすぎ貫通開口158の内部側壁に設けられる案内突起を設けることは、比較的単純なやり方で、つまり特に工具プッシャなしで摺動部の射出成形を構成できるという利点を有する。
【0079】
任意で、切削材料収集器138は、第1シャフト部14’の方向に開放し、この第1シャフト部によって閉鎖することができよう。更に、本事例において、長手方向16に対して垂直な面への入口開口断面積の投影の投影面は、投影面に対して平行な切削材料収集器138の任意の断面の任意の断面積140よりも小さい。既述のように、切削材料収集器138の内部断面積140は、入口開口134から近位方向に増加し、図示する例示的実施形態では単調でさえある。本事例において、切削材料収集器138は、入口開口134から近位方向に円錐形のやり方で延びている。それ故に、排出開口150は、切削材料収集器138の内部断面積140が最大である領域に形成される。
【0080】
更に、排出開口150は横を向いている。換言すれば、これらの排出開口は、側方に開放されている。切削材料収集器138に、複数の穿孔処理工程が続けて遂行される方式で切削材料が満たされたとき、これらの排出開口により、切削材料収集器を単純なやり方で空にすることができる。特に、例えば執刀医の助手が、補助的器具、例えば小型のピンを例えば1つの排出開口150に挿入し、切削材料収集器138内に集まった切削材料を切削材料収集器138から他の排出開口150を通して側方に押すことにより、切削材料収集器138を時々空にするのであれば、摺動シャフト12’の遠位端は、操作区域としておくことができる。これによって、骨パンチ10’は、執刀医が実施できる更なる穿孔処理用に、迅速且つ単純なやり方で準備される。
【0081】
磨耗を受ける摺動シャフト12’の実際の部品、つまり刃先26’は、摺動シャフト12’上に設置されている。この刃先は、硬質の骨材料を打ち抜くことに起因して鈍くなることがあり、摺動シャフト12’全体が実際に使用不能となる。原則的に、例えば外側132を再研磨することにより、刃先26’を再度鋭利にすることが可能である。
【0082】
一方、第2シャフト部18’の2片構成により、実際的観点からは磨耗を受けない第1シャフト部14’は使用継続できるのに対して、第2シャフト部18’を、やはり鋭利な刃先26’を有する新しい第2シャフト部18’に交換できるように、第2シャフト部を使い捨ての品目の形態に作成することもできよう。従って、第2シャフト部18’の2片構成により、工具部のみを、刃先26’を形成することに適した材料製とすることができるのに対して、第2シャフト部18’の残りの部品は、より経済的且つ容易に機械加工可能な材料製、例えば合成材料製にすることができる。
【0083】
第1シャフト部14’と第2シャフト部18’とを、実際上任意のやり方で互いに組み合わせることができるようにするために、第1及び第2案内要素32’及び38’を選択的に互いに接触させることができるよう、案内装置30’の領域において適正な製造公差を提供又は許容することが必要である。それでも、摺動シャフト12’により通例の正確なやり方で組織及び骨に作用することができることを確実にするために、協動する案内要素32’及び38’の製造公差を補償するための公差補償装置160が設けられる。特に、これらの案内要素は、第1及び第2工具要素20’及び28’が協動して組織又は骨に作用する作用位置のときに、即ち、特に、図6に示すように工具要素が共に嵌合するときに製造公差が補償されるようなやり方で、配置され形成される。
【0084】
公差補償装置160は、第2案内要素38’を第1案内要素32’に抗して付勢するための圧力装置162を含む。図示する例示的実施形態において、圧力装置は第2案内要素38’上に配置又は形成されるが、第1案内要素32’上に配置又は形成することもできよう。圧力装置162は、第2案内要素38’を第1案内要素32’に抗して付勢するための付勢要素164を含む。次に、付勢要素164は、ばね要素166の形態である。つまり、工具部128の下面36’から突出している2つの突起168間を延び、それらの突起の各々は案内装置30’及び案内突起40’のそれぞれの部品を形成する、板ばねの形態である。ばね要素160は、僅かに凸状のやり方で、下面36’から離れるように湾曲しており、第2シャフト部18の方向を向く案内溝34’の基部170に当接している。従って、案内突起40’は、案内溝34’の、基部170の方向を向く内部境界面172へ押圧され、これによって、案内溝34’又は案内突起40’の領域における製造公差を補償する。作用位置のときには、公差補償装置160の特別な構成に起因して、下面36’は、工具部128の領域において第1シャフト部14’から多少離間しておくことができる。
【0085】
穿孔工具176を形成する工具要素20’及び28’の切削効果をあらゆる事例において確実にするために、アンビル部材とも称される相手部材24’は、第2シャフト部18’の刃先26’が相手部材24’の上縁174に押し被せられるのを防止するような寸法である。従って、ばね要素166に起因して少なくとも部分的に弾力性がある案内装置30’の公差の補償は、多くても刃先26’の、上縁174からの距離と同程度である。
【0086】
特に、再利用可能な第1シャフト部14’を容易に清浄できるようにするために、案内溝34’の近位側に、骨パンチ10内のすすぎ開口88と同様のすすぎ開口88’が設けられる。特に、前記すすぎ開口88’と案内溝34’との間は流体接続されている。
【0087】
図示する例示的実施形態において、付勢要素164と第2案内要素38’とは、一体のやり方で形成される。更に、付勢要素164は、自らによって及ぼすことのできる力に抗して、第2シャフト部18’から離れる方を向く圧力面178と、第2シャフト部18’の下面36’との間の間隔が最大となる基本位置から、例えば図6に示すような、第2シャフト部18’から離れる方を向く圧力面178と、第2シャフト部18’の下面36’との間の間隔が最小となる圧力位置へと移動可能である。
【0088】
付勢要素164及び公差補償装置160は、概して、長手方向軸16に対して垂直に延びる鏡面180に対して鏡像対称である。同様に、付勢要素164の近位端及び遠位端は第2案内要素38’上で保持される。
【0089】
図8には、骨パンチ10”の摺動シャフトである代替の例示的実施形態が部分的に示されており、そこにおいてこの例示的実施形態は全体的な参照記号12”をもつ。摺動シャフト12”は、案内装置30”及び公差補償装置160の構成という点でのみ摺動シャフト12’と相違しているので、互いに対応する部品には同じ参照記号を使用し、又は、識別の目的で、同一の参照番号を、2つのアポストロフィ(「”」)を付して設けている。
【0090】
板ばねのやり方で形成されるばね要素166’の形態の付勢要素164’は、案内突起40”から近位方向に、そしてやや第1シャフト部14”の方向に突出している。前記付勢要素は、案内溝34”の基部170’上で、圧力面178’により支持されている。付勢要素164の近位端182が案内溝34”に係合するとき、即ち、図8に示す作用位置に達するほんの少し前に、並びに作用位置のときにのみ、公差補償装置160’の圧力装置162’は、まずその効果を発揮し、その後、下面36”を、上面22”からやや離れるように押圧する。
【0091】
摺動シャフト12”は、摺動シャフト12’と同様のやり方で、器具ハンドル45’に解放可能なやり方で接続可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8