特許第5654503号(P5654503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5654503
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】熱的に安定な抵抗をもつインダクター
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/06 20060101AFI20141218BHJP
   H01F 17/04 20060101ALI20141218BHJP
   H01F 27/29 20060101ALI20141218BHJP
   H01F 41/04 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   H01F17/06 A
   H01F17/06 F
   H01F17/04 A
   H01F17/04 F
   H01F15/10 H
   H01F41/04 B
【請求項の数】32
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2012-4223(P2012-4223)
(22)【出願日】2012年1月12日
(62)【分割の表示】特願2009-530324(P2009-530324)の分割
【原出願日】2006年9月28日
(65)【公開番号】特開2012-99846(P2012-99846A)
(43)【公開日】2012年5月24日
【審査請求日】2012年1月31日
(31)【優先権主張番号】11/535,758
(32)【優先日】2006年9月27日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】502021419
【氏名又は名称】ヴィシェイ デイル エレクトロニクス,インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】VISHAY DALE ELECTRONICS,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100079980
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 伸行
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン,トーマス ティー.
(72)【発明者】
【氏名】ホフマン,ジェローム ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】シャファー,ティモシー
(72)【発明者】
【氏名】シェイド,ニコラス ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ランゲ,デイビッド
(72)【発明者】
【氏名】スミス,クラーク
(72)【発明者】
【氏名】ブルーン,ロッド
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−120887(JP,A)
【文献】 特開2001−052934(JP,A)
【文献】 特開2001−267160(JP,A)
【文献】 特開2006−112868(JP,A)
【文献】 特開2005−353337(JP,A)
【文献】 特開2000−133501(JP,A)
【文献】 特開平10−303002(JP,A)
【文献】 特開2000−232008(JP,A)
【文献】 特開平06−267704(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/06
H01F 17/04
H01F 27/29
H01F 41/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面と、対向する第1端面および第2端面とをインダクター本体に有し、
前記第1端面から前記第2端面に向けて引き伸ばしたスロットを設けた前記上面と、
前記対向する第1端面および第2端面の間のインダクター本体に形成した中空部分と、
を備え、
熱安定合金で形成され且つケルヴィン型測定のために構成する熱安定性抵抗要素が、前記中空部分内を通してから前記インダクター本体の外面に沿って且つ前記上面に向けて折り曲げられて第1及び第2の対向表面実装端子形成されると、この対向表面実装端子のそれぞれが電流搬送端子およびその電流搬送端子から離れた電流検出端子を構成することを特徴とするインダクター。
【請求項2】
前記上面から前記中空部分に引き伸ばされた前記スロットである請求項1記載のインダクター。
【請求項3】
前記第1及び第2の対向表面実装端子の少なくとも一部が前記スロットの少なくとも一部に重ねられた請求項1に記載のインダクター。
【請求項4】
前記インダクター本体が分布型ギャップ材料で構成される請求項1に記載のインダクター。
【請求項5】
前記熱安定性抵抗要素の抵抗値が0.2ミリΩ〜1Ωである請求項1に記載のインダクター。
【請求項6】
前記熱安定性抵抗要素が第1の材料で形成され、前記第1及び第2の対向表面実装端子が前記第1の材料と異なる第2の材料で形成された請求項1に記載のインダクター。
【請求項7】
前記第1及び第2の対向表面実装端子が銅で形成された請求項6に記載のインダクター。
【請求項8】
前記熱安定性抵抗要素が±1%の抵抗許容誤差である請求項1に記載のインダクター。
【請求項9】
上面と、対向する第1端面および第2端面とをインダクター本体に有し、
前記インダクター本体がフェライトからなり、これによってフェライトコアを形成し、
対向する前記第1端面と前記第2端面との間の前記インダクター本体を貫通する中空部分を有し、
前記第1端面から前記第2端面まで引き伸ばしたスロットを前記インダクター本体の前記上面に有し、
第1の材料で形成したケルヴィン型測定のための構成および第2の材料で形成する第1及び第2端部を有する熱安定性抵抗要素であり、
この第1及び第2端部を、前記中空部分内を通してから前記インダクター本体の外面に沿って且つ前記スロットに向けて折り曲げて、前記第1及び第2端部が第1及び第2の対向表面実装端子を形成すると、この対向表面実装端子のそれぞれが電流搬送端子およびその電流搬送端子から離れた電流検出端子を構成することを特徴とするインダクター。
【請求項10】
前記熱安定性抵抗要素が、複数の巻き線部分からなる請求項9に記載のインダクター。
【請求項11】
前記熱安定性抵抗要素の抵抗値が0.2ミリΩ〜1Ωである請求項9に記載のインダクター。
【請求項12】
前記熱安定性抵抗要素の抵抗の温度係数(TCR)が低く、−55〜125℃の範囲で100ppm/℃以下である請求項9に記載のインダクター。
【請求項13】
インダクターのインダクタンスが50ナノヘンリー〜10マイクロヘンリーの範囲内にある請求項9に記載のインダクター。
【請求項14】
前記熱安定性抵抗要素が第1の材料で形成され、前記第1及び第2の対向表面実装端子が前記第1の材料と異なる第2の材料で形成された請求項9に記載のインダクター。
【請求項15】
前記第1及び第2の対向表面実装端子が銅で形成された請求項14に記載のインダクター。
【請求項16】
前記熱安定性抵抗要素が±1%の抵抗許容誤差である請求項9に記載のインダクター。
【請求項17】
上面と、対向する第1および第2端面とを有したインダクター本体であり、前記対向する第1端面と第2端面との間で中空部分を貫通させて設けた前記インダクター本体を用意し、
前記インダクター本体の前記上面にスロットを設け、
ケルヴィン型測定のための構成する熱安定性抵抗素子を用意し、
前記熱安定性抵抗素子前記中空部分を通して配置されて
前記熱安定性抵抗素子の端部を前記インダクター本体の外側に沿って且つ前記上面に向けて折り曲げて対向表面実装端子を形成することでこの対向表面実装端子のそれぞれが電流搬送端子およびその電流搬送端子から離れた電流検出端子を構成することを特徴とするインダクターの形成方法。
【請求項18】
前記熱安定性抵抗素子が、ニッケルおよび銅を有する非鉄系金属合金からなる請求項17に記載の形成方法。
【請求項19】
前記熱安定性抵抗素子が、鉄、クロム、およびアルミからなる請求項17に記載の形成方法。
【請求項20】
前記インダクター本体をフェライト材料で構成する請求項17に記載の形成方法。
【請求項21】
前記インダクター本体が分布型ギャップ材料で構成される請求項17に記載の形成方法。
【請求項22】
前記熱安定性抵抗素子が、複数の巻き線部分からなる請求項17に記載の形成方法。
【請求項23】
前記熱安定性抵抗素子が第1の材料で形成され、前記対向表面実装端子が前記第1の材料と異なる第2の材料で形成された請求項17に記載の形成方法。
【請求項24】
前記対向表面実装端子が銅で形成された請求項17に記載の形成方法。
【請求項25】
前記熱安定性抵抗素子が±1%の抵抗許容誤差である請求項17に記載の形成方法。
【請求項26】
インダクターにおいて、
ケルヴィン型測定のために構成する熱安定性抵抗要素であり、
この熱安定性抵抗要素の末端部の夫々が表面実装端子を構成し、そして、この表面実装端子の夫々が電流搬送端子およびその電流搬送端子から離れた電流検出端子を構成し、
上面および対向する第1端面と第2端面とを有したインダクター本体があって、
前記熱安定性抵抗要素の前記端末部の夫々が、前記インダクター本体の外側を取り囲むように折り曲げられることで前記上面に前記表面実装端子の夫々を形成し、
前記インダクター本体が前記熱安定性抵抗要素上にプレス加工した分布型ギャップ磁性材料であることを特徴とするインダクター。
【請求項27】
前記熱安定性抵抗要素が、複数の巻き線部分からなる請求項26に記載のインダクター。
【請求項28】
前記熱安定性抵抗要素が、鉄、クロム、およびアルミからなる請求項26に記載のインダクター。
【請求項29】
前記熱安定性抵抗要素が、導電性材料で形成された前記第1及び第2の対向表面実装端子と共に前記導電性材料に接合処理される抵抗材料である請求項1に記載のインダクター。
【請求項30】
前記熱安定性抵抗要素が、導電性材料で形成された前記第1及び第2の対向表面実装端子と共に前記導電性材料に接合処理される抵抗材料である請求項9に記載のインダクター。
【請求項31】
前記熱安定性抵抗素子が、導電性材料で形成された前記対向表面実装端子と共に前記導電性材料に接合処理される抵抗材料である請求項17に記載の形成方法。
【請求項32】
前記熱安定性抵抗要素が、導電性材料で形成された前記表面実装端子と共に前記導電性材料に接合処理される抵抗材料である請求項26に記載のインダクター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インダクター、具体的には熱的に安定な抵抗をもつインダクターに関する。
【背景技術】
【0002】
既に以前から、インダクターは、非分離式DC/DCコンバーターのエネルギー保存装置として利用されている。また、高電流の熱安定性抵抗器も、同時に電流検出のために利用されているが、電圧降下やパワー損失が伴うため、DC/DCコンバーターの全体効率が低下する。一方、DC/DCコンバーターメーカーが、PCボードのリアルエステートから締め出されることが多くなり、より小型、より高速でより複雑なシステムへの需要がますます高くなっている。利用できるスペースが減少しているため、部品数を減らす必要があるが、パワー需要が増し、電流が高電流になるに従って、動作温度が高くなる。このため、インダクター設計においてこれに対処する必要性が望まれている。
【0003】
インダクターと電流検出抵抗器を組み合わせて単独ユニットを構成すると、部品数を減らせる上に、インダクターのDCRに伴うパワー損失を抑えることができ、抵抗性素子に伴うパワー損失のみが残ると考えられる。±15%かそれ以上のDC抵抗(DCR)許容誤差でインダクターを設計できるが、その抵抗の電流検出特性は、依然として、インダクター巻き線の銅の3,900ppm/℃の抵抗の熱係数(TCR)により大きくばらつく。電流検出機能にインダクターのDCRを利用した場合には、通常、安定な電流検出点を維持するために、ある形態の補償回路が必要になり、部品数削減の目標を達成できなくなる。さらに、補償回路の場合、インダクターに近接配置することは可能であるが、依然としてインダクターの外部にあるもので、インダクターの内部電流負荷が変化した場合に、導体加熱の変化に素早く対処できない。従って、インダクター巻き線間の電圧降下を正確に追跡する補償回路の作用にタイムラグが発生し、電流検出作用に誤差がでることになる。この問題を解決するためには、温度安定性が改善された巻き線抵抗をもつインダクターが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】USP5,287,083
【特許文献2】USP6,946,944
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
即ち、本発明の第1の目的、特徴または作用効果は、従来技術を改善することである。
【0006】
本発明の第2の目的、特徴または作用効果は、熱安定性が改善された巻き線抵抗をもつインダクターを提供することである。
【0007】
本発明の第3の目的、特徴または作用効果は、インダクターを電流検出抵抗器と組み合わせて単独のユニットに構成し、これによってインダクターのDCRに伴うパワー損失を抑制することである。
【0008】
上記の第1、第2および第3の目的などの一つかそれ以上は、明細書の記載および特許請求の範囲から明らかになるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1態様は、インダクターを提供するものである。このインダクターは、上面と、対向する第1および第2端面とを有するインダクター本体からなる。本態様のインダクターは、対向する第1端面および第2端面との間のインダクター本体に中空部分を有する。この中空部分に熱安定性の抵抗素子を配設し、上面に向けて曲げ、対向表面実装端子を形成する。これら対向表面実装端子としては、ケルヴィン式測定用のケルヴィン端子を使用することができる。従って、例えば、対向表面実装端子を分割すると、端子の一部を電流搬送のために使用することができ、また端子の他の部分を電圧降下検出のために使用することができる。
【0010】
本発明の第2態様は、上面と、対向する第1および第2端面とを有し、フェライトコアを形成するインダクター本体からなるインダクターを提供するものである。対向する第1端面および第2端面との間のインダクター本体に中空部分を設ける。インダクター本体の上面にスロットを設ける。熱安定性の抵抗素子を中空部分に設け、スロットに向けて曲げて、対向表面実装端子を形成する。
【0011】
本発明の第3態様は、インダクターを提供するものである。このインダクターは、上面と、対向する第1および第2端面とを有するインダクター本体からなる。インダクター本体は、限定するものではないが、MPP、HIFLUX、センダストなどの分布型ギャップ磁性材料や、あるいは粉末鉄から構成する。対向する第1端面および第2端面との間のインダクター本体に中空部分を設ける。この中空部分に熱安定性の抵抗素子を配設し、上面に向けて曲げ、対向表面実装端子を形成する。
【0012】
本発明の第4態様は、インダクターを提供するものである。このインダクターは、熱安定性抵抗素子、および上面と、対向する第1および第2端面とを有するインダクター本体からなる。インダクター本体は、熱安定性抵抗素子上にプレス加工した分布型ギャップ磁性材料からなる。
【0013】
本発明の第5態様は、インダクターを提供するものである。このインダクターは、熱安定性巻き線型抵抗素子、およびこの熱安定性巻き線型抵抗素子の周囲にプレス加工した分布型ギャップ磁性材料からなるインダクター本体を有する。
【0014】
本発明の第6態様は、方法を提供するものである。本態様の方法は、上面と、対向する第1および第2端面とを有し、対向する第1端面と第2端面との間に中空部分を設けたインダクター本体を用意し、熱安定性抵抗素子を用意することからなる。本態様の方法では、さらに、熱安定性抵抗素子を中空部分に配置し、熱安定性抵抗素子の端部を上面に向けて折り曲げ、対向表面実装端子を形成する。
【0015】
本発明の第7態様は、インダクターの形成方法を提供するものである。本態様の方法は、インダクター本体材料を用意し、熱安定性抵抗要素を用意するとともに、熱安定性素子の周囲にインダクター本体を配置し、熱安定性抵抗素子の端子をインダクター本体材料から延設することからなる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】スロットを形成したコアに部分的巻き線部を有するインダクターの一実施態様を示す斜視図である。
図2】一個のスロットを設けたフェライトコアの横断面図である。
図3】一個のスロットを設けたフェライトコアの上面図である。
図4】四個の表面実装端子を有するストリップの上面図である。
図5】スロットを設けないインダクターの一実施態様を示す斜視図である。
図6】複数の巻き線部をもつ抵抗要素の一実施態様を示す図である。
図7】巻き線型抵抗要素を利用した本発明の一実施態様を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の一態様は、熱安定性抵抗をもつ薄型高電流インダクターを提供するものである。このようなインダクターは、スロットを形成したフェライトコアに低TCRを挿入した抵抗要素として、固体のニッケル−クロム、マンガン−銅金属合金などの適当な合金を利用する。
【実施例】
【0018】
図1は、このような本発明の一実施態様を示す斜視図である。素子10は、上面14、底面16、第1端部18、これに対向する第2端部20、および対向する第1側面22および第2側面24を有するインダクター本体12からなる。なお、ここで使用する“上面”および“底面”は単に図面での向きを示す用語に過ぎず、向きが逆になる場合もある。素子10は、表面実装素子として使用する場合、スロット側、即ち上面側14に設ける。インダクター本体12は、プレス加工磁性粉から形成する場合などのように、単独の磁性コアコンポーネントであればよい。例えば、インダクター本体12には、フェライトコアを利用することができる。フェライト以外のコア材料、例えば、粉末鉄コアや合金コアなども利用することができる。図示のインダクター本体12には、一つのスロット26を形成する。インダクター本体12には、中空部28がある。コア材料組成、透磁性を選択することにより、またフェライトの場合には、スロット幅を選択することによって、インダクタンス値を選択することができる。
【0019】
図示の抵抗要素30は4端子ケルヴィン型構成である。抵抗要素30は熱的に安定であり、ケルヴィン端子構成の熱的に安定なニッケル−クロム合金、熱的に安定なマンガン−銅合金、またはその他の熱的に安定な合金からなる。図示のように、第1端部に二つの端子32、34があり、そして第2端部に二つの端子38、40がある。抵抗要素30の第1スロット36が、抵抗要素30の第1端部上の端子32、34を分離し、そして抵抗要素30の第2スロット42が、抵抗要素30の第2端部上の端子38、40を分離する。一つの実施態様の場合、抵抗要素材料は、抵抗要素30に対して4端子ケルヴィン素子を与えるようにノッチを入れた銅端子に接合する。より小さな端子34、40、即ち検出端子を使用して、抵抗要素間の電圧を検出して電流の検出を行う。一方、残りのより広い端子32、38、即ち電流端子は、回路の一次電流搬送部に使用する。抵抗要素30の端部をインダクター本体12の周囲に形成し、表面実装端子を形成する。
【0020】
図1には、スロットを形成した多角形フェライトコア中に部分的な、あるいは断片的な巻き線部を示してあるが、本発明の範囲内で多くの変更が可能である。例えば、複数の巻き線部を利用すれば、インダクタンス値を大きくでき、また抵抗を高くすることができる。従来技術では、一つの2端子導体を通してこの種のコアを利用しているが、銅導体の抵抗は熱的に不安定であり、自己発熱、および銅の高TCRを原因とする周囲温度の変化に応じてばらつく。電流検出の精度を出すためには、安定した、外部電流検出抵抗器を使用する必要があり、この分部品数が増え、対応してパワー損失が大きくなる。熱的に安定なニッケル−クロムまたはマンガン−銅抵抗要素か、その他の熱的に安定な合金を利用するのが好ましい。熱的に安定な抵抗要素の他の材料の具体例には、非鉄系金属合金を始めとする各種の合金がある。抵抗要素は、制限するわけではないが、CUPRONなどの銅ニッケル合金から形成することができる。また、抵抗要素は、制限するわけではないが、KANTHALDなどの鉄合金、クロム合金、アルミ合金から形成することも可能である。抵抗要素の場合、電流を検出するために、温度係数が銅よりもかなり低く、そして十分に高い直流抵抗(DCR)で抵抗の温度係数(TCR)が≦100ppm/℃であることが好ましい。さらに、抵抗要素は、当業者にとっては公知な各種方法の一つかそれ以上によって、代表的な±20%のインダクター抵抗許容誤差に対して、±1%の抵抗許容誤差に較正しておく。
【0021】
このように、本発明の第1態様は、一体化した2つの素子、エネルギー保存素子、および厳しい許容誤差に較正した超安定な電流検出抵抗器を与えるものである。素子の抵抗器部分の場合、以下の特性をもっているのが好ましい。即ち、低Ω値(0.2mΩ〜1Ω)、厳しい許容誤差±1%、−55〜125℃での低いTCR≦100ppm/℃、および低い熱起電力(EMF)。素子のインダクタンスは25nH〜10uHの範囲になる。なお、好ましい範囲は、50nH〜500nHで、35Aまでの電流に対処できる。
【0022】
図2は、一つのスロットフェライトコアの横断面図である。図2に示すように、インダクター本体12として、一個のスロットフェライトコアを使用する。図に示しているのは、インダクター本体12の上面14および底面16、および対向する第1端部18および第2端部20である。この一個のスロットフェライトコアの高さは符号62で示す。スロット60によって、インダクター本体12の第1上面部分78は、第2上面部分80から分離されている。インダクター本体12の第1および第2上面部分78、80の両者は、上面14と中空部分28との間において高さ64をもつ。インダクター本体12の底面部分は、中空部分28と底面16との間において高さ70をもつ。第1端部76および第2端部82は、それぞれの端面から中空部分28までの厚さが68である。中空部分28は高さ66をもつ。スロット26は、幅が60である。図2の実施態様の場合、インダクター本体12として多角形のフェライトコアをもち、一側面にスロット26を形成し、中心に中空部分28を形成する。一部を巻き線加工した抵抗要素30をこの中空部分28に挿入し、導体として使用する。スロット26の幅を選択することによって、インダクタンスを選択することができる。粉末鉄、磁性合金やその他の磁性材料などの他の磁性材料や構成も各種の磁性コア構成として利用することができる。なお、粉末鉄などの分布型ギャップ磁性材料を利用すると、コアにスロットを形成する必要がなくなる。フェライト材料を使用する場合、このフェライト材料が、以下の最低必要限の仕様を満足することが好ましい。
【0023】
1.20℃で測定した12.5OeでのBsatがBsat>4,800G。
2.100℃で測定した12.5OeでのBsatMin.がBsatMin.=4,100G。
3.キューリ温度TcがTc>260℃。
4.初期透磁率が1,000〜2,000。
【0024】
スロット側である上面14が、素子10を表面実装する素子10の実装表面になる。抵抗要素30の端部本体12の周囲に折り曲げ、表面実装端子を形成する。
【0025】
本発明の一態様では、熱安定性抵抗要素を導体として使用する。この抵抗要素としては、パンチ加工、エッチング加工やその他の機械加工によって形成したニッケル−クロムストリップまたはマンガン−銅ストリップから構成することができる。このようなストリップを使用する場合、四つの表面実装端子をもつように形成する(例えば図4を参照)。なお、端子数は2つのみでもよい。2端子または4端子は、±1%の抵抗許容誤差に較正しておく。ニッケル−クロム合金、マンガン−銅合金やその他の低TCR合金元素を使用すると、温度係数を≦100ppm/℃にすることができる。リード抵抗、銅端子のTCRおよび半田接合抵抗における実装抵抗許容誤差のバラツキの影響を抑制するためには、2端子よりも4端子構成を使用したほうがよい。例えば、抵抗要素間の電圧を検出するために、2つの小さいほうの端子を使用して電流を検出し、より大きな端子のほうに検出すべき回路電流を流す。
【0026】
本発明の第2態様の場合、インダクター本体12の中空部分に熱安定性抵抗要素を挿入することによって、素子10を構成する。上面側またはスロット側のインダクター本体の周りに抵抗要素端子を折り曲げて、表面実装端子を形成する。インダクターに流れる電流を、次に、DC/DCコンバーターに対応する方法で大きいほうの端子に印加する。電流検出については、小さいほうの検出端子から制御IC電流検出回路に2つの印刷回路盤(PCB)トレースを付加し、インダクターの抵抗間の電圧降下を測定することによって行う。
【0027】
図3は、インダクター本体12の幅74および長さ72を示す独立スロットフェライトコアの上面図である。
【0028】
図4は、抵抗要素として利用できるストリップ84の上面図である。このストリップ84は、4個の表面実装端子をもつ。抵抗ストリップ84は、端子部分間に抵抗部分86をもつ。このようなストリップの形成は、公知であり、本明細書で全体を援用するUSP5,287,083に記載されている方法で実施できる。このように、端子32、34、38、40については銅から構成することができ、抵抗部分86をもつ別な導体については、異なる材料で構成することができる。
【0029】
図5は、スロットのないインダクターの一つの実施態様を示す斜視図である。図5の素子100は、制限するわけではないが、磁性粉末などの分布型ギャップ磁性材料からインダクター本体102を形成した点を除くと、図1の素子10と同様である。この実施態様の場合、インダクター本体102の材料を選択したため、スロットは必要ない。粉末鉄、磁性合金やその他の磁性材料などの他の磁性材料や構成も各種の磁性コア構成として利用することができる。なお、粉末鉄などの分布型ギャップ磁性材料を利用すると、コアにスロットを形成する必要がなくなる。分布型ギャップ磁性材料の他の実例は、制限を意図するものではないが、MPP、HIFLUX、センダストなどである。
【0030】
図6は、複数の巻き線部分94を端部90間にもつ抵抗要素98の一実施態様を示す図である。本発明の場合、使用する抵抗要素が複数の巻き線部分をもち、インダクタンス値を大きくし、かつ抵抗を高くすることを意図している。複数の巻き線部分を利用してこれを実現することは、制限する意図はないが、USP6,946,944に記載されている。
【0031】
図7は別な実施態様を示す図である。図7の構成の場合、図示のインダクター120は、絶縁材周囲に巻き付けた熱安定性抵抗要素からなる巻き線要素122をもつ。プレス加工、成型加工、キャスティング加工などによって巻き線要素122の周りに分布型ギャップ磁性材料124を設ける。巻き線要素122は、端子126、128をもつ。
【0032】
以上の実施態様における抵抗要素は、非鉄系金属合金を始めとする各種の合金から構成することができる。抵抗要素は、制限する意図はないが、CUPRONなどの銅ニッケル合金から構成することができる。また、抵抗要素は、制限する意図はないが、KANTHALDなどの鉄系合金、クロム系合金やアルミ系合金から構成することができる。また、抵抗要素は、化学的または機械的加工や、エッチング加工その他の機械加工を始めとする多数の加工方法で構成することができる。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上のように、本発明は、改良インダクターおよびその製造方法を提供するものである。本発明では、使用する材料のタイプ、使用する製造技術の点で多くの変更が可能である
【符号の説明】
【0034】
10、100、120:インダクター、
12、102、124:インダクター本体、
14:上面、
18、20:端面、
26:スロット、
30、84、98、122:熱安定性抵抗要素、
32、34、38、40、126、128:表面実装端子、
94:巻き線部分
124:分布型ギャップ磁性材料。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7