特許第5654508号(P5654508)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社小松製作所の特許一覧

特許5654508建設機械のキャブフレームおよびその塗装方法
<>
  • 特許5654508-建設機械のキャブフレームおよびその塗装方法 図000002
  • 特許5654508-建設機械のキャブフレームおよびその塗装方法 図000003
  • 特許5654508-建設機械のキャブフレームおよびその塗装方法 図000004
  • 特許5654508-建設機械のキャブフレームおよびその塗装方法 図000005
  • 特許5654508-建設機械のキャブフレームおよびその塗装方法 図000006
  • 特許5654508-建設機械のキャブフレームおよびその塗装方法 図000007
  • 特許5654508-建設機械のキャブフレームおよびその塗装方法 図000008
  • 特許5654508-建設機械のキャブフレームおよびその塗装方法 図000009
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5654508
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】建設機械のキャブフレームおよびその塗装方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 25/08 20060101AFI20141218BHJP
【FI】
   B62D25/08 A
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-50519(P2012-50519)
(22)【出願日】2012年3月7日
(65)【公開番号】特開2013-184535(P2013-184535A)
(43)【公開日】2013年9月19日
【審査請求日】2014年8月26日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000001236
【氏名又は名称】株式会社小松製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110000637
【氏名又は名称】特許業務法人樹之下知的財産事務所
(72)【発明者】
【氏名】太田 信行
(72)【発明者】
【氏名】大木 慎二郎
【審査官】 鈴木 敏史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−37360(JP,A)
【文献】 特開昭52−39214(JP,A)
【文献】 実開昭59−167869(JP,U)
【文献】 実開昭61−174353(JP,U)
【文献】 実開昭60−13865(JP,U)
【文献】 欧州特許出願公開第1249383(EP,A2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周の一部に開放部を有する主構造体と、
前記開放部を覆うとともに、前記主構造体から突出するように該主構造体に対して分割自在に連結される従構造体とを備え、
前記主構造体および前記従構造体には、互いの連結時に対向した状態で連結される連結部が設けられ、
前記従構造体は、前記主構造体へ連結する向きが反転した状態で前記連結部を介して前記主構造体に仮固定自在に設けられ、
前記従構造体が反転して前記主構造体に連結された状態では、前記従構造体が前記主構造体内に収容される
ことを特徴とする建設機械のキャブフレーム。
【請求項2】
請求項1に記載の建設機械のキャブフレームにおいて、
前記従構造体は、前記主構造体の後側の開放部を覆うように連結される後部構造体として構成され、
前記主構造体は、四方に離間して立設された中空の支柱を含んで構成されている
ことを特徴とする建設機械のキャブフレーム。
【請求項3】
請求項2に記載の建設機械のキャブフレームにおいて、
前記主構造体および前記後部構造体の各連結部の左右両側は、前記建設機械の転倒時乗員保護構造用の支柱に近接する
ことを特徴とする建設機械のキャブフレーム。
【請求項4】
外周の一部に開放部を有する主構造体と、前記開放部を覆うとともに、前記主構造体から突出するように該主構造体に対して連結される従構造体とを備え、かつ前記主構造体および前記従構造体が互いの連結部にて分割自在に構成された建設機械のキャブフレームの塗装方法であって、
前記キャブフレームを塗装槽に浸漬させる際には、前記従構造体を前記主構造体へ連結する向きが反転した状態で前記連結部を介して前記主構造体に仮固定することで、前記従構造体を前記主構造体内に収容させる
ことを特徴とする建設機械のキャブフレームの塗装方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば大型のホイールローダなどの建設機械のキャブフレームおよびその塗装方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ホイールローダや、ブルドーザ、パワーショベルのように、オペレータが乗り込む箱状のキャブを備えた建設機械が知られている。このような建設機械のキャブは、金属製の板材を溶接等して組み立てられたキャブフレームを備えて構成される。キャブフレームは、車体に搭載される前の段階で単独で塗装されるのであり、キャブフレームの塗装方法としては、カチオン電着塗料が入った電着槽内にキャブフレームを浸漬させるカチオン塗装が一般的である。
【0003】
ところで、建設機械の大型化に伴い、キャブ内にはオペレータシートのみならず、トレーナーシートを設ける場合がある。このような場合には、キャブ内の空間を大きく確保する必要性から、キャブ自身も大きなサイズに設計される。また、オペレータシートを前方にスライドさせることなくリクライニングさせたいという要望もあり、このためにもキャブ後方の空間を大きくして対応する必要があり、サイズの拡張は免れない。
【0004】
しかし、キャブのサイズが大きくなると、キャブフレームも必然的に大きくなり、キャブフレーム全体を電着槽に投入することができないという問題が生じる。そこで、キャブフレームを複数に分割するとともに、分割したフレームを個々に電着槽に浸漬させて塗装し、塗装後に一体化することが考えられる。特許文献1には、塗装を目的としている訳ではないが、キャブフレームを2分割して生産性を向上させる技術が提案されており、この技術をキャブの塗装に利用するのである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−36002号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術を利用して塗装すると、2分割された各フレームを個別に電着槽に投入することになるため、塗装工数が増え、かえって生産性が低下するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、大きなサイズでも塗装工数を増やすことなく効率的に塗装できる建設機械のキャブフレームおよびその塗装方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1発明に係る建設機械のキャブフレームは、外周の一部に開放部を有する主構造体と、前記開放部を覆うとともに、前記主構造体から突出するように該主構造体に対して分割自在に連結される従構造体とを備え、前記主構造体および前記従構造体には、互いの連結時に対向した状態で連結される連結部が設けられ、前記従構造体は、前記主構造体へ連結する向きが反転した状態で前記連結部を介して前記主構造体に仮固定自在に設けられ、前記従構造体が反転して前記主構造体に連結された状態では、前記従構造体が前記主構造体内に収容されることを特徴とする。
【0009】
第2発明に係る建設機械のキャブフレームは、前記従構造体は、前記主構造体の後側の開放部を覆うように連結される後部構造体として構成され、前記主構造体は、四方に離間して立設された中空の支柱を含んで構成されていることを特徴とする。
【0010】
第3発明に係る建設機械のキャブフレームは、前記主構造体および前記後部構造体の各連結部の左右両側は、前記建設機械の転倒時乗員保護構造(ロップス)用の支柱に近接することを特徴とする。
【0011】
第4発明に係る建設機械のキャブフレームの塗装方法は、外周の一部に開放部を有する主構造体と、前記開放部を覆うとともに、前記主構造体から突出するように該主構造体に対して連結される従構造体とを備え、かつ前記主構造体および前記従構造体が互いの連結部にて分割自在に構成された建設機械のキャブフレームの塗装方法であって、前記キャブフレームを塗装槽に浸漬させる際には、前記従構造体を前記主構造体へ連結する向きが反転した状態で前記連結部を介して前記主構造体に仮固定することで、前記従構造体を前記主構造体内に収容させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
第1、第4発明によれば、キャブフレームを主構造体と従構造体とに分割自在に構成し、本来従構造体を主構造体に対して突出して連結するところ、塗装を施す際には、従構造体の連結方向を反転させて連結させることにより、従構造体を主構造体内に収容させる。こうすることで、従構造体の主構造体からの突出部分が略なくなるため、キャブフレームとしての外径寸法を小さくでき、塗装槽に確実に浸漬させることができて、生産性を向上させることができる。
なお、塗装を施す場合に限らず、キャブフレームの移動や輸送に際して従構造体を主構造体内に収容することで、キャブフレームの荷姿をコンパクトにでき、作業時の取扱性を向上させることも可能である。
【0013】
第2発明よれば、主構造体には四方に離間した位置に中空の支柱を設けるので、主構造体の剛性を大きくでき、従構造体を本来の向きで連結させたり、反転させた向きで連結させたりしても、主構造体の変形等を防止できる。
また、従構造体の外径寸法、特に主構造体からの突出寸法が異なるものを複数用意しておくことで、機種や仕様の異なる建設機械に対応させることができる。そして、この場合でも、主構造体側が十分な剛性を有することで、いずれの従構造体をも確実に連結させることができる。
【0014】
第3発明によれば、主構造体および従構造体の互いの連結部がロップスフレームでより確実にガードされるため、連結部からの破損を抑制でき、より頑丈にできる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の一実施形態に係る建設機械の全体を示す側面図。
図2】前記建設機械に搭載されるキャブのキャブフレームを示す分解斜視図。
図3】前記キャブフレームを示す側断面図。
図4】前記キャブフレームの平断面を示す斜視図。
図5】塗装時の前記キャブフレームを示す分解斜視図。
図6】塗装時の前記キャブフレームを示す側断面図であり、図5のVI−VI断面図。
図7】塗装時の前記キャブフレームの腰部を示す平断面図であり、図5のVII−VII断面図。
図8】前記キャブフレームの塗装方法を説明するための工程図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る建設機械としての大型のホイールローダ1を示す側面図である。なお、以下の説明において、前後左右の各方向としては、図1に示すキャブ6内でオペレータが着座した状態での前後左右と同一の方向である。
【0017】
図1において、ホイールローダ1は、前部車体2Aと後部車体2Bとで構成される車体2を備えている。前部車体2Aの前方(図1中の左方)には、掘削・積込用のバケット3がブーム、ベルクランク、連結リンク、バケットシリンダ、ブームシリンダ等で構成される油圧式の作業機駆動機構4を介して取り付けられている。
【0018】
後部車体2Aは、厚板の金属板等で構成された後部車体フレーム5を有している。後部車体フレーム5の前側には、オペレータが乗り込む箱状のキャブ6が設けられ、後部車体フレーム5の後側には、図示しないエンジンや、エンジンによって駆動される油圧ポンプ等が搭載されている。
【0019】
後部車体フレーム5には、車両転倒時にキャブ6を保護するロップス(転倒時乗員保護構造:ROPS;Roll Over Protective Structure)フレーム7が設けられている。ここで、ロップスフレーム7は、キャブ6の後側の左右両側において、後部車体フレーム5上に立設された一対の支柱8と、支柱8の上部に架け渡された保護部9とを備えている。保護部9は庇状とされて前方側に延出し、キャブ6の上方を覆っている。
【0020】
図2図4には、キャブ6のキャブフレーム6Aが示されている。キャブフレーム6Aは、前方側に配置される大きな主構造体10と、主構造体10の後方側に分割自在に連結される従構造体としての後部構造体20とで構成される。主構造体10および後部構造体20は共に、所定の形状に加工された金属製の板材や中空の型材を互いに溶接することで組み立てられる。
【0021】
具体的に主構造体10は、それぞれサブアッセンブリされた左右の枠状のサイドパネル11,12と、左右両端がサイドパネル11,12の前方下部側に接合されるフロントパネル13と、サイドパネル11,12の上部に架け渡されて天井部分を形成するルーフパネル14とを備える。
【0022】
枠状とされた左側のサイドパネル11の開口部分には、最終的にオペレータの出入り用のドアが取り付けられ、同じく枠状とされた右側のサイドパネル12の開口部分には、ガラス窓が嵌め込まれる。サイドパネル11,12にはそれぞれ、中空とされた前後の支柱15,16が用いられ、剛性向上が図られている。後側の支柱16の断面の大きさは、前側の支柱15の断面よりも格段に大きく、後側の支柱16は大きな背面部分を有した平断面L字型に形成されている。これらの支柱15,16は、主構造体10において、四方に離間して位置することになる。
【0023】
フロントパネル13は、左右方向の中央部分が前方に突出するよう、平面視で左右両側が後方に折曲した形状とされ、キャブ6内に配置されるコンソール部分の前側を覆うことになる。サイドパネル11,12、フロントパネル13、およびルーフパネル14にて区画される前側の開口部分には、フロントパネル13の折曲部分で左右に付き合わされる3枚のフロントガラスが嵌め込まれる。
【0024】
ルーフパネル14は、詳細な図示を省略するが、四周枠組みされた枠体の上部に板材17を取り付けた構造である。枠体はすなわち、サイドパネル11,12の支柱15の上端間に架け渡される中空の横材18、支柱16の上端間に架け渡される中空の横材19、およびこれらの横材18,19の端部間に直接またはガセットプレートを介して架け渡される中空の前後部材を備えて構成される。サイドパネル11,12およびルーフパネル14で区画される後側の開放部30は後部構造体20によって塞がれる。
【0025】
後部構造体20は、左右の側面部21,22、これら側面部21,22の上端間に架け渡される天面部23、側面部21,22の後方下部側間に設けられた背面部24、側面部21,22および天面部23の前側の辺縁に沿って連続したフランジ40を備える。各面部21,22,23,24で区画される後側の開口部分には、オペレータの後方視界を確保するためにリアガラスが嵌め込まれる。
【0026】
側面部21,22および天面部23の前後方向投影形状は、開放部30よりもわずかに小さい寸法形状となっている。後部構造体20のフランジ40を除く部分の左右の幅寸法は凡そ、サイドパネル11,12を構成する支柱16の背面部分の幅寸法分だけ小さい。このため、主構造体10と後部構造体20とを一体に連結し、キャブフレーム6Aとして組み上げた状態では、キャブフレーム6A後方の左右両側の角部分において、内方側に入り込んだ入り隅が形成される。そして、これらの入り隅に対応してロップスフレーム7の支柱8が位置し、後述の連結部32,42と近接することになる(図4参照)。
【0027】
主構造体10および後部構造体20は共に、床面を形成する底部分が存在しない。主構造体10および後部構造体20をキャブフレーム6Aとして一体に連結した後、後部車体フレーム5(図1参照)上に搭載する場合には、平面視にて略6角形状とされた図示しないフロアプレートが用いられる。すなわち、フロアプレートの前方側に主構造体10部分が載置され、その後方側に後部構造体20部分が載置される。そして、フロアプレートの上面がキャブ6の床面となる。
【0028】
このため、主構造体10および後部構造体20の内部下側には、下端から所定の高さの位置に水平なフランジ10A,20Aが設けられている。フランジ10A,20Aは、各構造体10,20の外形に沿って連続して設けられており、フロアプレートの上面にあてがわれて、下方からのボルトによって当該フロアプレートに固定される。また、フロアプレートの下面と後部車体フレーム5との間の適宜な位置には、キャブ6の振動やローリング、ピッチング等を抑制するダンパーマウントが介装される。
【0029】
次に、主構造体10および後部構造体20の連結部分の構造について説明する。
主構造体10の外周の一部である後側には、サイドパネル11,12およびルーフパネル14で区画された開放部30が形成され、前述したように、この開放部30を覆うように後部構造体20が連結される。各構造体10,20が連結された状態では、互いの内部空間が連通し、キャブ6内に大きな空間が確保される。
【0030】
主構造体10において、サイドパネル11,12の鉛直な背面およびルーフパネル14後部の鉛直な端面には、開放部30に臨んだ辺縁に沿って複数のボルト孔31が設けられている。これらのボルト孔31は、左右方向の中心を通る鉛直な対象線C1を境として左右線対称の位置に設けられ、ボルト孔31が設けられた部分により主構造体10側での全体門型状の連結部32が形成されている。ボルト孔31の裏側には、裏ナット33(図7参照)が溶接等によって固着されている。
【0031】
一方の後部構造体20において、フランジ40には、ボルト孔31に対応した挿通孔41が設けられている。従って、これらの挿通孔41も左右の中心を通る鉛直な対象線C2を境に左右線対称の位置に配置されることとなり、挿通孔41が設けられたフランジ40を含んで後部構造体20側の連結部42が形成されている。
【0032】
主構造体10の連結部32に対し、これと対向する後部構造体20の連結部42を当接させ、挿通孔41に挿通されたボルト50(図7参照)をボルト孔31に通して裏ナット33に螺合させることで、各構造体10,20同士を連結させる。
【0033】
以下には、キャブフレーム6Aの塗装時の態様について説明する。
図5において、キャブフレーム6Aの塗装にあたっては、主構造体10に対して後部構造体20が前後を反転させた向きで連結される。後部構造体20の連結部42に設けられた複数の挿通孔41は、左右線対称の位置にあることから、後部構造体20の前後の向きを反転させても、挿通孔41の配置に変わりはなく、主構造体10の連結部32に設けられたボルト孔31と対向することになる。
【0034】
図6に示すように、前後を反転させた後部構造体20を主構造体10に連結すると、後部構造体20の側面部21,22、天面部23、および背面部24で形成される箱状部分は、主構造体10の開放部30を通して内部に収容され、主構造体10から後方へ突出する部分がほぼなくなる。従って、キャブフレーム6A全体の特に前後寸法は、後部構造体20の分だけ短くなり、カチオン塗装での塗装槽である電着槽内にキャブフレーム6Aを丸ごと浸漬させることが可能になる。
【0035】
図7には、塗装時の主構造体10および後部構造体20の連結部分の一部が平断面として示されている。主構造体10の内部に後部構造体20を収容するように連結すると、互いの連結部32,42のボルト孔31および挿通孔41が対向する。これらボルト孔31および挿通孔41にはボルト50が挿入され、ボルト孔31の裏側に固着された裏ナット33に螺合される。
【0036】
この際、各連結部32,42間には、ボルト50に挿通されたワッシャ51が介装される。塗装時の連結では、ボルト50は完全に締め上げられておらず、仮固定状態に維持される。このため、各連結部32,42同士は、ワッシャ51の厚みよりもわずかに大きい隙間分だけガタを持って離間することになり、この隙間を有することで、電着塗装が各連結部32,42の対向面にも確実に施されることになる。
【0037】
このような連結は、他のボルト孔31および挿通孔41の箇所でも同様である。ただし、塗装時には、全てのボルト孔31および挿通孔41にてボルト50を螺合させる必要はなく、塗装ラインにて外れてしまうなど、支障を来たさない程度の箇所で仮固定されていればよい。また、このことからすれば、ボルト孔31および挿通孔41は、全体が左右線対称の位置に配置されていなくともよく、ボルト50での仮固定が行われる少なくとも一対のボルト孔31の配置を左右線対称とし、かつ少なくとも一対の挿通孔41の配置を左右線対称としておけばよい。
【0038】
以下には、キャブフレーム6Aの塗装方法を図8に基づいて説明する。
図8において、キャブ製造ライン100にてそれぞれ製造された主構造体10および後部構造体20を、電着塗装ライン110に搬入する前に先ず、メタルワイプ工程101にて拭き取り作業を行う。このメタルワイプ工程101では、主構造体10および後部構造体20に付着している鉄粉などをウエスにて拭き取る。この後、後部構造体20の前後の向きを反転させ、反転させた後部構造体20を図6に示すように主構造体10に仮固定して互いに一体にする。
【0039】
電着塗装ライン110では初めに、一体とされた各構造体10,20に対して、湯洗→予備脱脂→脱脂→水洗→表面処理→化成→純水洗といった前処理を施す(前処理工程111)。次いで、前処理された各構造体10,20をカチオン電着塗料で満たされた電着槽内に浸漬させ、各構造体10,20に電着塗装を施す(電着塗装工程112)。そして、各構造体10,20を純水にて洗浄し、乾燥炉に搬入して乾燥させる(乾燥工程113)。
【0040】
乾燥工程113の後には、ボルト50を外して各構造体10,20の仮固定を解除し、後部構造体20を主構造体10から分離し、前後を反転させて主構造体10に対して正規の向きで連結し、本来のキャブフレーム6Aを得る(建付工程114)。さらに、建付け後のキャブフレーム6Aを上塗り塗装ライン120に搬入する。上塗り塗装ライン120では、上塗りロボット等を稼動させてキャブフレーム6Aに対して上塗り塗装を施す。なお、最終的に完成したキャブフレーム6Aでは、互いの連結部32,42間にシール材が充填され、気密性が確保されるようになっている。
【0041】
なお、本発明は前述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、前記実施形態では、本発明の従構造体として後部構造体20を採用し、後部構造体20に対して主構造体10の大きさを大きくすることで、塗装時には後部構造体20を主構造体10の内部に収容するようにしたが、主構造体として後方側の大きな構造体を採用し、従構造体として主構造体の前方に連結される前部構造体を採用し、塗装時にはその前部構造体を主構造体の内部に収容してもよい。
【0042】
また、前記実施形態では、キャブフレーム6Aの前後方向の長さ寸法が電着槽の許容を越えることから、主構造体10と後部構造体20とに分割可能に構成したが、キャブフレームの左右方向の幅寸法が大きく、電着槽の許容を越える場合には、キャブフレームを左右のサイドパネルからなる一対の側部構造体(従構造体)と、これらの側部構造体の間の主構造体とに3分割したり、一方のサイドパネルで側部構造体(従構造体)を構成し、他の部分で主構造体を構成して2分割構造にしたりするなど、本発明は前記実施形態のように前後に分割可能に構成される形態に限定されない。
【0043】
さらに、主構造体を機種や仕様の異なる建設機械に共通に用いるとともに、従構造体を機種やオプション等の仕様が異なる毎に前後寸法等の違うものを用意し、種々の建設機械に対応させてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、ホイールローダのキャブフレームに利用できる他、ブルドーザ、パワーショベル、モータグレーダ、ダンプトラックなどに搭載される箱状のキャブのキャブフレームに利用できる。
【符号の説明】
【0045】
1…建設機械であるホールローダ、6…キャブ、6A…キャブフレーム、8…転倒時乗員保護構造用の支柱、10…主構造体、15,16…主構造体の支柱、20…従構造体である後部構造体、30…開放部、32,42…連結部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8