【実施例】
【0073】
例1:α−ガラクトシダーゼによる軟組織からのα−galエピトープ除去のための分析;
本例ではELISA分析を使用して、軟組織からのα−galエピトープ除去が評価される。
α1.3ガラクトシル移転酵素のための抗−Gal産生用のノックアウトマウスからの脾臓細胞と、マウスハイブリドーマ融合パートナーの脾臓細胞とを融合させることにより、グリコプロテインのα−galエピトープに対し極めて特異的なモノクローナル抗−Gal抗体(M86)が生成された。グリコプロテイン上のα−galエピトープに対するM86の特異性は
図10に例示される。M86は“●”で示す牛の血清アルブミン(BSA)に結合された人工α−galエピトープと結合し、“▲”で示され、11α−galエピトープを持つ牛のチログロブリン(R.G.Spiro他、Occurrence of α−D−galactosyl residues in the thyroglobulin from several species. Localizetion in the saccharide chains of completx carbohydratess, 259 J.Biol.Chem.9858(1984))と結合し、若しくは、“■”で表され、50α−galエピトープを持つマウスラミニン(R.G.Arumugham他、Structure of the asparagine−linked sugar chains of laminin.883 Biochem. Biophys. Acta 112(1986))と結合する。しかし、その全てがα−galエピトープを全く有さない、“□”で表すヒトチログロブリンあるいはヒトラミニン、O−Galβ1−4GlcNAc−BSA(N−アセチルラクトサミン−BSA)及びGalα1−4Galβl−4GlcNAc−BSA(BSAに結合したPl抗原)とは結合しない。結合は、希釈度の異なるM86組織培養培地で測定される。
【0074】
M86抗体を分離したモノクローナル抗体は約1:20〜約1:160、好ましくは約1:50〜約1:130に希釈される。抗体は、約3℃〜約8℃の範囲の所定温度下に約5〜約24時間培養される。抗体は約5〜約100μmの軟組織フラグメント、もっと好ましくは、約10〜約50μmの寸法範囲の軟組織フラグメントと共に、約200〜約1.5mg/mlの様々な軟組織濃度範囲下に一定回転状態に維持される。引き続き、軟組織フラグメントは、約20,000xg〜約50,000xgの遠心分離速度下に遠心分離除去される。軟組織に対するM86の結合比は、例えば、従来技術に説明されるような、α−Gal−BSAを使用してELISA内での上澄み中における残留M86の活性度を測定することにより評価する(U.Gsalili他、Porcine and bovine cartilage transplants in cynomolgus monkey: II.Changes in anti−Gal response during chronic rejection, 63mTransplantation 645−651(1997))。軟組織に対するM86の結合の程度は、その後のα−Gal−BSAに対する結合の抑制割合として定義される。軟組織中のα−GAlエピトープ量と、軟組織フラグメントと複合体化されて上澄みから除去されるM86の比率(即ち、抑制割合)との間には直接の関係がある。
【0075】
図11には分析の1例が示される。ホモジェナイズされたメニスカス軟骨フラグメント(○)あるいはα−ガラクトシダーゼを使用して処理されたメニスカス軟骨フラグメント(・)が、M86モノクローナル抗体(1:100に希釈)と共に20時間、4℃でインキュベートされた。引き続き、メニスカス軟骨フラグメントは、35,000xgでの遠心分離により除去され、上澄み中の残留M86が固相抗体としてのα−Gal−BSAを使用してELISAで評価された。
図11には、200U/mlのα−ガラクトシダーゼを使用して30℃下に4時間メニスカス軟骨を処理し、引き続きリン酸緩衝溶液(PBS)を使用して5回洗浄することにより、α−galエピトープが完全に排除されたことが示される。かくして、メニスカス軟骨フラグメント濃度が200mg/mlと高くとも、引き続くM86のα−gal−BSAへの結合はもはや抑制されない。
【0076】
例2: αガラクトシダーゼ処理した、豚のメニスカス軟骨、関節軟骨、靱帯及び心臓弁の、各軟組織異種移植片の移植に対する霊長類の反応の評価:
本例では、豚のメニスカス軟骨、関節軟骨、靱帯、腹膜心臓弁の各軟組織移植片をα−ガラクトシダーゼ処理してα−ガラクトシルエピトープを除去し、これをカニクイザルに移植した場合の軟組織移植片に対する霊長類反応を評価した。
豚の後膝関節が無菌調製され、メニスカス軟骨、関節軟骨、及びその他周囲の軟組織付着物が外科的に除去された。心臓弁異種移植片のための豚の腹膜も採取され、付着性の脂肪組織及び或は筋肉組織が外科的に除去された。メニスカス軟骨、関節軟骨及び心臓弁の各軟組織試料が、アルコール、例えばエタノールあるいはイソプロパノールを使用して少なくとも5分間洗浄され、滑液や脂質夾雑物が除去された。次いで、試料は約−35℃〜約−90℃、好ましくは約−70℃の温度範囲下に冷凍され、これら組織の繊維軟骨細胞が破壊、即ち殺された。
【0077】
豚の後膝関節が更にまた無菌調製され、一端あるいは両端に骨ブロックを付着させた靱帯が、厳密な無菌技法を使用して冷温下に取り出された。各々の骨ブロックは直径約9mm長さ約40mmの実質的に円筒プラグ状であった。各靱帯軟組織片は注意深く同定され、付着組織のない状態へ切り分けられ異種移植片が形成された。次いで、靱帯軟組織移植片は例えばエタノール、イソプロパノールのようなアルコールを使用して少なくとも5分間洗浄され、滑液や脂質夾雑物が除去された。これらの異種移植片は、次いで約−70℃の温度下に凍結され、靱帯異種移植片の細胞が破壊、即ち殺された。
【0078】
メニスカス軟骨、関節軟骨及び心臓弁、そして靱帯の各軟組織異種移植片は第1及び第2の2つの部分に切断された。各第1の部分は所定濃度のα−ガラクトシダーゼを含有する緩衝溶液内に浸漬された。各異種移植片は所定温度下に所定時間、緩衝溶液中でインキュベートされた。第2部分の各々は相当する第1部分と同様であるがα−ガラクトシダーゼを含まない条件下に、緩衝溶液中でインキュベートされて対照標準とした。
インキュベートの終了時点において、軟組織異種移植片は酵素を散出させる条件下に洗浄された。分析により、α−galエピトープが完全に除去されたことが確認された。
【0079】
各メニスカス軟骨軟組織異種移植片が6匹のカニクイザルの膝蓋上包(supra patellar pouch)に移植された。全身吸入麻酔法の下に、膝蓋上包の、膝蓋骨の中心方向に伸延する上内側縁位置を約1cm直接切開した。約0.5cm〜約1cmの長さの豚の軟骨軟組織片を、標識タグとしてのシングル3−0ナイロンステッチと共に上包内に配置した。
上述の移植に実質的に従って、関節軟骨異種移植片が6匹のカニクイザルの膝蓋上包に移植された。
【0080】
豚の腹膜が心臓弁として形成され、この心臓弁異種移植片が、当業者に既知の心臓弁移植手順に従い6匹のカニクイザルに移植された。
靱帯軟組織異種移植片が以下の移植手順を使用して6匹のカニクイザルに移植された。全身吸入麻酔法の下に異種移植片靱帯のための解剖学的な挿入部位が特定され、実質的に直径9mm長さ40mmの骨プラグを収受するための穿孔が形成された。靱帯異種移植片は穿孔に通され、締まり嵌めネジを使用して固着された。
【0081】
移植手順は無菌外科技法下に実施され、傷口は3−0ヴィクリルあるいは当業者に既知の好適な同等物を使用して閉鎖された。動物達は拘束されないカゴ内で活動し、不快や腫れ、感染、あるいは拒絶反応の兆候が監視された。血液サンプル(例えば2ml)が定期的(例えば2週間毎)に採取され、抗体が監視された。
移植したサルから採取した血清サンプル内の抗−Gal及び非抗−Galの抗−軟組織抗体(即ち、α−galエピトープ以外の軟組織抗原に結合する抗体)を判定することにより異種移植片に対する免疫反応の発生が評価された。移植手術日及び移植後定期的(例えば2週間毎)間隔で移植を受けたサルから少なくとも2mlの血液サンプルが採取された。採取した血液サンプルは遠心分離にかけられた後、血清サンプルが凍結され、抗Gal及びその他の非抗Gal抗軟組織抗体の活性が評価された。
【0082】
例えば、Galili他、Porcin,and bovine cartilage transplants in cynomolgus monkey:II. Changesinanti−Gal response during chronic rejection, 63 Transplantation 645−651(1997)に説明される方法の如き従来既知の方法に従い、固相抗原としてのα−gal−BSAを使用したELISA分析により血清サンプルにおける抗−Gal活性度が判定された。
α−ガラクトシダーゼ処理された異種移植片に抗軟組織抗体が形成されたか否かを判定するべく分析を実施した。抗軟組織抗体の活性度を測定するため、ELISA分析が従来既知の方法、例えば、K.R.Stone他、Porcine and bovine cartilage transplants in cynomolgus monkey; I.A. model for chronic xenograft rejection, 63 Transplantation 640−645(1997)に記載される方法に従い実施された。
【0083】
軟組織異種移植片は、移植後1〜2ヶ月の時点で、炎症性浸潤の組織学的評価のために随意的に外移植され、切片を作成され、染色された。抗Gal及びその他の抗軟骨軟組織抗体の活性度の移植後変化が移植後1〜2ヶ月の時点において、外移植された軟組織における炎症性の組織学的特性(即ち、顆粒球あるいは単核細胞浸潤物)と、例えば、Porcine and bovine cartilage transplants in cynomolgus monkey; I.A. model for chronic xenograft rejection, 63 Transplantation 640−645(1997)に記載されるような従来既知の方法に従い相関された。
【0084】
軟組織を外移植した場所において、軟組織異種移植片が、麻酔手順、関節の外科的露出、移植片の除去、軟組織の閉鎖を使用して無菌採取された(動物を回復させる場合)。異種移植片を除去するに際し、関節液がもし吸引されるに十分な量生じて、移植した軟組織の移植片の肉眼的(gros)且つ組織学的評価が良好であった場合には、免疫試験を実施する場合に備えてこの関節液を後膝関節から収集しておく。
メニスカス軟骨あるいは関節軟骨の異種移植片を移植された動物は、回復後、傷口が癒えて普通に歩けるようになるまで密着監視を続ける。異種移植片サンプルが収集され、プロセス処理され、顕微鏡検査にかけられる。
【0085】
メニスカス軟骨、関節軟骨、心臓弁及び靱帯の各異種移植片及び周囲組織の一部が、包埋モールド内で組織片を凍結させるための包埋媒体内で凍結され、従来既知の方法に従い免疫組織化学的に評価された。約10%w/wポリビニルアルコール、約4%W/Wポリエチレングリコール、約86%w/wの非反応性成分を含み、カリフォルニア州トーレンスのSakura FinTekの製造する“TISSUE−TEK(商標名)”O.C.T配合物は、本発明で使用することのできる包埋媒体の非限定例である。当業者に既知のその他のその他の包埋媒体を使用することもできる。残余の移植片及び周囲組織は組織病理学検査のために10%の中性緩衝ホルマリン内に収集された。
【0086】
例3:
α−ガラクトシダーゼ、フコシル及びフコシル転移酵素を使用して処理し、移植したメニスカス軟骨、関節軟骨、靱帯及び心臓弁の各軟組織移植片に対する霊長類反応の評価:
本例では、豚のメニスカス軟骨、関節軟骨、靱帯及び腹膜心臓弁の各軟組織異種移植片が例2で説明した如くαガラクトシダーゼ処理され、α−エピトープが除去された。軟組織移植片は更に、フコシル及びフコシル転移酵素処理され、残留炭水化物鎖がフコシルによりキャッピングされた。フコシル転移酵素は、異種移植片へのフコシル転移を容易化する。フコシルは残留炭水化物鎖と結合してこれをキャッピングする。フコシルによるキャッピングは、レシピエントの免疫システムの、異種移植片を異物と認識する能力を妨害する。軟組織移植片はカニクイザルに移植され、これらの軟組織移植片に対する霊長類反応が評価された。
【0087】
豚の後膝関節から採取したメニスカス軟骨及び関節軟骨移植片、豚の腹膜から採取した心臓弁移植片、豚の後膝関節から採取した靱帯移植片が、αガラクトシダーゼ処理を含む例2において移植片が調製された如く調製された。しかしながら、サルへの移植に先立ち、各移植片は所定濃度のフコシル及びフコシル転移酵素で所定温度下に所定時間処理され、残留炭水化物鎖がフコシルでキャッピングされた。例えば、各移植片は所定濃度のフコシル及びフコシル転移酵素の緩衝溶液内に浸漬された。各移植片は所定温度下に所定時間インキュベートされた。
移植片の炭水化物鎖をキャッピングするためにその他の分子、例えばN−アセチルグルコサミンと、相当するグリコシルトランスフェラーゼとの組み合わせも使用され得る。
【0088】
次いで、各移植片は洗浄されて酵素が除去された後、サルに移植され、これらの異種移植片に対する免疫反応の発生が、例2に関連して説明した如く評価された。
例4: 冷凍解凍サイクル及びプロテオグリカン除去因子処理を受けたメニスカス軟骨、関節軟骨、靱帯及び心臓弁の各軟組織異種移植片移植に対する霊長類反応の評価:
【0089】
本例では、例2で説明されたように、豚のメニスカス軟骨、関節軟骨、靱帯、腹膜から採取した心臓弁の各軟組織移植片が調製され、冷凍され、細胞が破壊、即ち殺された。これらの軟組織移植片は更にプロテオグリカン除去因子処理され、プロテオグリカンがこれらの異種移植片から実質的に排除された。次いで、各異種移植片は、例2で説明した如くグリコシダーゼ処理され、残留α−galエピトープが除去された。プロテオグリカン及び残留α−galエピトープが実質的に排除されたことにより、レシピエントの免疫システムの、異種移植片を異物と認識する能力が妨害される。各軟組織移植片はカニクイザルに移植され、これらの軟組織移植片に対する霊長類反応が評価された。
【0090】
豚の後膝関節から採取したメニスカス軟骨、関節軟骨、靱帯と、豚の腹膜から採取した心臓弁が調製され、次いで、例2に説明した、滅菌、冷凍/解凍サイクルの各処理を含む調製手順が実施された。コンドロイチナーゼABC溶液が、0.05MTris−HCL(7.88gm/リットル−MW=157.60)、5mMベンズアミジン−HCL(0.783gm/リットル−MW=156.61),0.010MN−エチルマレイミド(1.2513gm/リットル−MW=12513)、0.001Mフェニルメチルスルホニルフルオリド(0.17420gm/リットル−M=174.2)を組み合わせることにより調製され、メタノール中に溶解された。0.15MNaCl(8.775gm/リットル−Mw=58.5)、ペニシリン及びストレプトマイシン(1%(v/v)10ml/リットル)の混合物が、溶液1ミリリットル当たり1単位量のコンドロイチナーゼABC(Sigma#C−3509)酵素溶液の酵素と共に添加され、溶液が1リットルとされた。
【0091】
各軟組織異種移植片が、直径3mmの軟組織プラグ1個当たり溶液1mlの濃度下にコンドロイチナーゼABC酵素溶液中でインキュベートされた。インキュベートはシェーカー水浴内で48時間、pH8.0及び37℃の温度下に実施された。インキュベート後、各軟組織異種移植片は適宜の緩衝剤で洗浄され、コンドロイチナーゼABC酵素溶液に洗液が添加された。次いで、各軟組織異種移植片は更に48時間、1mlの溶液当たり1単位量のコンドロイチナーゼABC(Sigma#C−3509)酵素溶液の濃度下に、コンドロイチナーゼABC溶液を使用して上述した如く再インキュベートされた。各軟組織異種移植片は適宜の緩衝溶液内で再度洗浄され、洗液がコンドロイチナーゼABC溶液に追加された。
【0092】
次いで、各軟組織異種移植片は、pH7.2の状態下に、1mlのトリプシン溶液(1mg/mlトリプシン、0.15MNaCl、0.05Mナトリウムホスフェート)中で24時間インキュベートされた。インキュベートは37℃の温度下にシェーカー水浴内で実施された。各軟組織移植片は適宜の緩衝溶液内で洗浄され、洗液がトリプシン溶液に追加された。
次いで、各移植片は、1mlのヒアルロニダーゼ溶液(0.01mg/ml精巣ヒアルロニダーゼ、0.005MベンザミジンHCL、001M PMSF、0.010M ネチルマレイミド、0.005M ベンザミジンHCL、1%v/vペニシリン及びストレプトマイシン)中に、pH6.0の状態下に24時間置かれた。インキュベートは37℃の温度下にシェーカー水浴内で実施された。各軟組織移植片は適宜の緩衝溶液内で再度洗浄され、洗液がヒアルロニダーゼ溶液に追加された。
【0093】
引き続き、各軟組織異種移植片は例2で説明した如くグリコシダーゼ処理され、サルに移植され、これらの異種移植片に対する免疫反応の発生が例2で説明した如く評価された。
以上、本発明を実施例を参照して説明したが、本発明の内で種々の変更をなし得ることを理解されたい。
【0094】
本発明は次の[1]〜[57]にもある。
[1] 人間に移植するための軟組織異種移植片を調製するための方法であって、
a. 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去して異種移植片を用意すること、
b. 異種移植片を水及びアルコールで洗浄すること、
c. 異種移植片を細胞破壊処理すること、
d. 異種移植片から実質的に複数のプロテオグリカンを除去し、異種移植片を非免疫原性化し且つ実質的に天然の軟組織と同じ機械特性を実質的に有すものとすること、
を含む人間に移植するための軟組織異種移植片を調製するための方法。
[2] プロテオグリカンの除去が、異種移植片をコンドロイチナーゼABC、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチンACIIリアーゼ、ケラタナーゼ、トリプシン及びフィブロネクチンフラグメントから成る群から選択した少なくとも1つのプロテオグリカン除去因子を使用して消化することを含んでいる[1]の方法。
[3] ステップcの後、異種移植片に孔開けすることが含まれる[1]の方法。
[4] ステップcの後、異種移植片を少なくとも1つの酵素を使用して処理することが含まれる[1]の方法。
[5] フィシン及びトリプシンから成る群から酵素を選択することを含む[4]の方法。
[6] ステップcの後、異種移植片を、抗石灰化剤、抗血栓症剤、抗生物質及び成長因子から成る群から選択した1つ以上の作用物質を使用して処理することが更に含まれる[1]の方法。
[7] ステップcの後、異種移植片を滅菌することが更に含まれる[1]の方法。
[8] 異種移植片の滅菌処理が、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドから成る群から選択した1つ以上の作用物質を使用して処理することを更に含む[7]の方法。
[9] ステップcの後、ポリエチレングリコールを使用して異種移植片を処理することが更に含まれる[1]の方法。
[10] ステップcの後、異種移植片を蒸気形態の架橋剤に暴露することが更に含まれる[1]の方法。
[11] 細胞破壊処理が冷凍/解凍サイクルを含む[1]方法。
[12] 細胞破壊処理がガンマ放射線への暴露を含む[1]の方法。
[13] ステップdの後、異種移植片から実質的に複数の第1表面炭水化物成分が除去される[1]の方法。
[14] 上記除去ステップには、グリコシダーゼを使用して異種移植片を消化することが含まれる[13]の方法。
[15] グリコシダーゼがガラクトシダーゼである[14]の方法。
[16] ガラクトシダーゼがα−ガラクトシダーゼである[15]の方法。
[17] 上記除去後、複数のキャッピング分子を使用して異種移植片上の複数の第2表面炭水化物成分を処理し、該第2表面炭水化物成分の少なくとも一部分をキャッピング処理することが更に含まれる[13]の方法。
[18] キャッピング分子の少なくとも一部分が複数のフコシル分子である[17]の方法。
[19] キャッピング分子の少なくとも一部分が複数のn−アセチルグルコサミン分子である[17]の方法。
[20] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、上(superior)主表面及び下(inferior)主表面を有する内側(medial)メニスカス又は外側(lateral)メニスカスの一部を除去することを含み、各主表面が外部外側(outer lateral)表面により連結された外部(outer)部分を有し、各主表面が内部外側(inner lateral)表面により連結された内部(inner)部分を有する、[1]の方法。
[21] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、靱帯の一部分を除去することを含む[1]の方法。
[22] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、靱帯の一部分と共に、該一部分の第1の端部に付着した第1の骨ブロックを除去することを含む[21]の方法。
[23] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、靱帯の一部分と共に、該一部分の、第1の端部とは反対側の第2の端部に付着した第2の骨ブロックを除去することを含む[22]の方法。
[24] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、関節軟骨の一部分を除去することを含む[1]の方法。
[25] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、関節軟骨の一部分と共に肋軟骨下の骨層を除去することを含む[24]の方法。
[26] 人間に移植するための実質的に非免疫原性の、プロテオグリカン除去された軟組織異種移植片を含む製造物品であって、
a.人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去して異種移植片を用意すること、
b.異種移植片を水及びアルコールで洗浄すること、
c.異種移植片を細胞破壊処理すること、
d.異種移植片をプロテオグリカン除去因子を使用して消化し、異種移植片から実質的に複数のプロテオグリカンを除去し、
異種移植片を実質的に非免疫原性化し且つ天然の軟組織と同じ機械特性を有するものとして調製した製造物品。
[27] プロテオグリカン除去因子を、コンドロイチナーゼABC、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチンACIIリアーゼ、ケラタナーゼ、トリプシン及びフィブロネクチンフラグメントから成る群から選択した[26]の製造物品。
[28] 異種移植片が、作用物質及び酵素に対する透過性を高めるための複数の孔を有する[26]の製造物品。
[29] 抗石灰化剤、抗血栓症剤、抗生物質及び成長因子、から成る群から選択した1つ以上の作用物質を更に含む[26]の製造物品。
[30] 異種移植片が滅菌される[26]の製造物品。
[31] 異種移植片がポリエチレングリコール処理した異種移植片である[26]の製造物品。
[32] 架橋剤を更に含む[26]の製造物品。
[33] 異種移植片が、第1表面炭水化物成分が実質的に除去されている[26]の製造物品。
[34] 異種移植片が、グリコシダーゼ処理された異種移植片である[33]の製造物品。
[35] グリコシダーゼ処理された異種移植片がガラクトシダーゼ処理された異種移植片である[34]の製造物品。
[36] ガラクトシダーゼ処理された異種移植片がα−ガラクトシダーゼ処理された異種移植片である[35]の製造物品。
[37] 異種移植片の第2表面炭水化物成分にキャッピングされた複数のキャッピング分子を更に含む[33]の製造物品。
[38] キャッピング分子が、フコシル分子及びn−アセチルグルコサミン分子から成る群の1つ以上から選択される[37]の製造物品。
[39] 異種移植片が、凍結異種移植片を解凍したものである[26]の製造物品。
[40] 異種移植片が、ガンマ線照射された異種移植片である[26]の製造物品。
[41] 人間以外の動物から除去される軟組織の一部分が、上主表面及び下主表面を有する内側メニスカス又は外側メニスカスの一部であり、各主表面が外部外側表面により連結された外部部分を有し、各主表面が内部外側表面により連結された内部部分を有する、[26]の製造物品。
[42] 人間以外の動物から除去される軟組織の一部分が靱帯である[26]の製造物品。
[43] 靱帯の一部分が、該部分の第1の端部に付着した第1の骨ブロックを含んでいる[42]の製造物品。
[44] 靱帯の一部分が、該部分の、第1の端部とは反対側の第2の端部に付着した第2の骨ブロックを含んでいる[43]の製造物品。
[45] 人間以外の動物から除去される軟組織の一部分が関節軟骨である[26]の製造物品。
[46] 関節軟骨の一部分が肋軟骨下の骨層を含んでいる[45]の製造物品。
[47] 人間に移植するための軟組織異種移植片であって、
人間以外の動物からの軟組織の一部分にして、該一部分が、複数の実質的に死細胞のみと、複数の細胞外成分とを含み、該細胞外成分がプロテオグリカン減少されており、該軟組織の一部分が実質的に非免疫原性であり且つ実質的に天然軟組織と同じ機械特性を有する軟組織異種移植片。
[48] 細胞外成分と、実質的に死細胞のみとが、実質的に表面α−ガラクトシル成分を有さない[47]の軟組織異種移植片。
[49] 軟組織の一部分が、異種移植片の複数の表面炭水化物成分の少なくとも一部分と架橋されたキャッピング分子を有する[47]の軟組織異種移植片。
[50] キャッピング分子の少なくとも一部分が複数のフコシル分子である[49]の軟組織異種移植片。
[51] キャッピング分子の少なくとも一部分が複数のn−アセチルグルコサミン分子である[49]の軟組織異種移植片。
[52] 軟組織の一部分が、上主表面及び下主表面を有する内側メニスカス又は外側メニスカスの一部であり、各主表面が外部外側表面により連結された外部部分を有し、各主表面が内部外側表面により連結された内部部分を有する、[47]の軟組織異種移植片。
[53] 軟組織の一部分が靱帯である[47]の軟組織異種移植片。
[54] 靱帯の一部分が、該部分の第1の端部に付着した第1の骨ブロックを含んでいる[52]の軟組織異種移植片。
[55] 靱帯の一部分が、該部分の、第1の端部とは反対側の第2の端部に付着した第2の骨ブロックを含んでいる[54]の軟組織異種移植片。
[56] 軟組織の一部分が関節軟骨である[47]の軟組織異種移植片。
[57] 関節軟骨の一部分が肋軟骨下の骨層を含んでいる[56]の軟組織異種移植片。
【0095】
本発明は次の[1]〜[54]にもある。
[1] 人間に移植するための軟組織異種移植片を調製するための方法であって、
a.人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去して異種移植片を用意すること、
b.異種移植片を水及びアルコールで洗浄すること、
c.異種移植片を細胞破壊処理すること、
d.異種移植片から実質的に複数のプロテオグリカンを除去し、異種移植片を非免疫原性化し且つ実質的に天然の軟組織と同じ機械特性を実質的に有すものとすること、
を含み、プロテオグリカンの除去が、異種移植片をコンドロイチナーゼABC、ヒアルロニダーゼ、及びフィブロネクチンフラグメントから成る群から選択した少なくとも1つのプロテオグリカン除去因子を使用して消化することを含んでいる方法であり、使用される濃度がコンドロイチナーゼABCについては0.01u/ml〜2.0u/ml、ヒアルロニダーゼについては1.0TRU/ml〜100.0TRU/ml、フィブロネクチンフラグメントについては0.01μM〜1.0μMである方法。
[2] ステップcの後、異種移植片に孔開けすることが含まれる[1]の方法。
[3] ステップcの後、異種移植片を少なくとも1つの酵素を使用して処理することが含まれる[1]の方法。
[4] フィシン及びトリプシンから成る群から酵素を選択することを含む[3]の方法。
[5] ステップcの後、異種移植片を、抗石灰化剤、抗血栓症剤、抗生物質及び成長因子から成る群から選択した1つ以上の作用物質を使用して処理することが更に含まれる[1]の方法。
[6] ステップcの後、異種移植片を滅菌することが更に含まれる[1]の方法。
[7] 異種移植片の滅菌処理が、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドから成る群から選択した1つ以上の作用物質を使用して処理することを更に含む[6]の方法。
[8] ステップcの後、ポリエチレングリコールを使用して異種移植片を処理することが更に含まれる[1]の方法。
[9] ステップcの後、異種移植片を蒸気形態の架橋剤に暴露することが更に含まれる[1]の方法。
[10] 細胞破壊処理が冷凍/解凍サイクルを含む[1]の方法。
[11] 細胞破壊処理がガンマ放射線への暴露を含む[1]の方法。
[12] ステップdの後、異種移植片から実質的に複数の、炭水化物鎖の非還元末端位置の末端α−ガラクトシル糖である第1表面炭水化物成分が除去される[1]の方法。
[13] 上記除去ステップには、グリコシダーゼを使用して異種移植片を消化することが含まれる[12]の方法。
[14] グリコシダーゼがガラクトシダーゼである[13]の方法。
[15] ガラクトシダーゼがα−ガラクトシダーゼである[14]の方法。
[16] 上記除去後、複数のキャッピング分子を使用して異種移植片上の複数の、炭水化物鎖の非還元末端位置でのN−アセチルラクトサミン基である第2表面炭水化物成分を処理し、該第2表面炭水化物成分の少なくとも一部分をキャッピング処理することが更に含まれる[12]の方法。
[17] キャッピング分子の少なくとも一部分が複数のフコシル分子である[16]の方法。
[18] キャッピング分子の少なくとも一部分が複数のn−アセチルグルコサミン分子である[16]の方法。
[19] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、上(superior)主表面及び下(inferior)主表面を有する内側(medial)メニスカス又は外側(lateral)メニスカスの一部を除去することを含み、各主表面が外部外側(outer lateral)表面により連結された外部(outer)部分を有し、各主表面が内部外側(inner lateral)表面により連結された内部(inner)部分を有する、[1]の方法。
[20] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、靱帯の一部分を除去することを含む[1]の方法。
[21] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、靱帯の一部分と共に、該一部分の第1の端部に付着した第1の骨ブロックを除去することを含む[20]の方法。
[22] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、靱帯の一部分と共に、該一部分の、第1の端部とは反対側の第2の端部に付着した第2の骨ブロックを除去することを含む[21]の方法。
[23] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、関節軟骨の一部分を除去することを含む[1]の方法。
[24] 人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去する段階が、関節軟骨の一部分と共に肋軟骨下の骨層を除去することを含む[23]の方法。
[25] 人間に移植するための実質的に非免疫原性の、プロテオグリカン除去された軟組織異種移植片を含む製造物品であって、
a.人間以外の動物から軟組織の少なくとも一部分を除去して異種移植片を用意すること、
b.異種移植片を水及びアルコールで洗浄すること、
c.異種移植片を細胞破壊処理すること、
d.異種移植片をプロテオグリカン除去因子を使用して消化し、異種移植片から実質的に複数のプロテオグリカンを除去し、
異種移植片を実質的に非免疫原性化し且つ天然の軟組織と同じ機械特性を有するものとして調製した製造物品であり、
プロテオグリカン除去因子を、コンドロイチナーゼABC、ヒアルロニダーゼ、及びフィブロネクチンフラグメントから成る群から選択して使用され、使用される濃度がコンドロイチナーゼABCについては0.01u/ml〜2.0u/ml、ヒアルロニダーゼについては1.0TRU/ml〜100.0TRU/ml、フィブロネクチンフラグメントについては0.01μM〜1.0μMである、製造物品。
[26] 異種移植片が、作用物質及び酵素に対する透過性を高めるための複数の孔を有する[25]の製造物品。
[27] 抗石灰化剤、抗血栓症剤、抗生物質及び成長因子、から成る群から選択した1つ以上の作用物質を更に含む[25]の製造物品。
[28] 異種移植片が滅菌される[25]の製造物品。
[29] 異種移植片がポリエチレングリコール処理した異種移植片である[25]の製造物品。
[30] 架橋剤を更に含む[25]の製造物品。
[31] 異種移植片が、炭水化物鎖の非還元末端位置の末端α−ガラクトシル糖である第1表面炭水化物成分が実質的に除去されている[25]の製造物品。
[32] 異種移植片が、グリコシダーゼ処理された異種移植片である[31]の製造物品。
[33] グリコシダーゼ処理された異種移植片がガラクトシダーゼ処理された異種移植片である[32]の製造物品。
[34] ガラクトシダーゼ処理された異種移植片がα−ガラクトシダーゼ処理された異種移植片である[33]の製造物品。
[35] 異種移植片の、炭水化物鎖の非還元末端位置でのN−アセチルラクトサミン基である第2表面炭水化物成分にキャッピングされた複数のキャッピング分子を更に含む[31]の製造物品。
[36] キャッピング分子が、フコシル分子及びn−アセチルグルコサミン分子から成る群の1つ以上から選択される[35]の製造物品。
[37] 異種移植片が、凍結異種移植片を解凍したものである[25]の製造物品。
[38] 異種移植片が、ガンマ線照射された異種移植片である[25]の製造物品。
[39] 人間以外の動物から除去される軟組織の一部分が、上主表面及び下主表面を有する内側メニスカス又は外側メニスカスの一部であり、各主表面が外部外側表面により連結された外部部分を有し、各主表面が内部外側表面により連結された内部部分を有する、[25]の製造物品。
[40] 人間以外の動物から除去される軟組織の一部分が靱帯である[25]の製造物品。
[41] 靱帯の一部分が、該部分の第1の端部に付着した第1の骨ブロックを含んでいる[40]の製造物品。
[42] 靱帯の一部分が、該部分の、第1の端部とは反対側の第2の端部に付着した第2の骨ブロックを含んでいる[41]の製造物品。
[43] 人間以外の動物から除去される軟組織の一部分が関節軟骨である[25]の製造物品。
[44] 関節軟骨の一部分が肋軟骨下の骨層を含んでいる[43]の製造物品。
[45] 人間に移植するための軟組織異種移植片であって、
人間以外の動物からの軟組織の一部分にして、該一部分が、複数の実質的に、該組織を細胞破壊処理した結果死んだ細胞のみと、複数の細胞外成分とを含み、該細胞外成分がプロテオグリカン除去因子で該組織を処理した結果プロテオグリカン減少されており、軟組織の該一部分が細胞破壊処理及びプロテオグリカン除去因子での処理の結果、実質的に非免疫原性であり且つ実質的に天然軟組織と同じ機械特性を有する軟組織異種移植片であり、プロテオグリカン除去因子を、コンドロイチナーゼABC、ヒアルロニダーゼ、コンドロイチンACIIリアーゼ、ケラタナーゼ、トリプシン及びフィブロネクチンフラグメントから成る群から選択した移植片であり、
細胞外成分と、実質的に死細胞のみとが、実質的に表面α−ガラクトシル成分を有さない軟組織異種移植片。
[46] 軟組織の一部分が、異種移植片の複数の表面炭水化物成分の少なくとも一部分と架橋されたキャッピング分子を有する[45]の軟組織異種移植片。
[47] キャッピング分子の少なくとも一部分が複数のフコシル分子である[46]の軟組織異種移植片。
[48] キャッピング分子の少なくとも一部分が複数のn−アセチルグルコサミン分子である[46]の軟組織異種移植片。
[49] 軟組織の一部分が、上主表面及び下主表面を有する内側メニスカス又は外側メニスカスの一部であり、各主表面が外部外側表面により連結された外部部分を有し、各主表面が内部外側表面により連結された内部部分を有する、[45]の軟組織異種移植片。
[50] 軟組織の一部分が靱帯である[45]の軟組織異種移植片。
[51] 靱帯の一部分が、該部分の第1の端部に付着した第1の骨ブロックを含んでいる[49]の軟組織異種移植片。
[52] 靱帯の一部分が、該部分の、第1の端部とは反対側の第2の端部に付着した第2の骨ブロックを含んでいる[51]の軟組織異種移植片。
[53] 軟組織の一部分が関節軟骨である[45]の軟組織異種移植片。
[54] 関節軟骨の一部分が肋軟骨下の骨層を含んでいる[53]の軟組織異種移植片。