(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、一実施形態に従う波長変換レーザ及び画像表示装置が、図面を用いて説明される。図面中、同一、同様の作用或いは同様の動作をなす構成要素には、同様の符号が付されている。冗長な説明を避けるために、必要に応じて、重複する説明は省略される。一連の実施形態の原理の理解を助けるために、図面に示される構成要素は、模式的に示されている。したがって、図面に示される構成要素の形状も模式的であり、以下に説明される実施形態の原理を何ら限定するものではない。
【0017】
(波長変換レーザ光源が有する課題)
図16は、上述の如く、従来の波長変換レーザ光源900の概略図である。
図17は、共振器内の基本波光FLの大きさを表す概略図である。
図16及び
図17を用いて、従来の波長変換レーザ光源900が説明される。
【0018】
上述の如く、
図16に示される波長変換レーザ光源900は、固体レーザ媒質910と、波長変換素子920と、凹面レンズ930と、誘電体多層膜940と、を備える。波長変換レーザ光源900は、励起レーザ光PLを生成する半導体レーザダイオード(以下、励起LD950と称される)と、励起レーザ光PLを集光するための集光レンズ960と、を備える。凹面レンズ930は、曲率R1の凹面931を含む。固体レーザ媒質910は、基本波光FLが出射される出射端面911を含む。また、波長変換素子920は、第2高調波光CLが出射される出射端面921を含む。
図17には、基本波光FLのビーム径は、「D」の記号を用いて表されている。
【0019】
波長変換素子920には、波長変換素子920の全体に亘って、周期状の分極反転構造が形成される。分極反転構造は、基本波光FLと第2高調波光CLとを位相整合させる。
【0020】
上述の如く、波長変換素子920の出射端面921には、誘電体多層膜940が形成される。誘電体多層膜940は、基本波光FLに対して高い反射率を有し、第2高調波光CLに対して低い反射率を有する。凹面レンズ930の凹面931にも、誘電多層膜が形成される。凹面レンズ930の凹面931に形成された誘電体多層膜は、基本波光FLに対して高い反射率を有する。この結果、凹面レンズ930の凹面931及び波長変換素子920の出射端面921に形成された誘電体多層膜940は、基本波光FLに対して、共振器として動作する。
【0021】
励起LD950から出射された励起レーザ光PLは、集光レンズ960によって集光される。集光された励起レーザ光PLは、固体レーザ媒質910に入射し、固体レーザ媒質910を励起する。励起された固体レーザ媒質910は、例えば、波長1064nmの光を自然放出する。基本波光FLは、凹面レンズ930の凹面931と波長変換素子920の出射端面921に形成された誘電体多層膜940とによって形成された共振器内で共振する。この結果、基本波光FLがレーザ発振する。
【0022】
共振器を構成する反射面の1つとして用いられる誘電体多層膜940は、波長変換素子920の出射端面921に形成される。
図17に示される如く、基本波光FLは、波長変換素子920内で集光される。この結果、基本波光FLから第2高調波光CLへの変換効率が増大する。したがって、第2高調波光CLは、共振器外へ効率よく出射する。
【0023】
本発明者は、波長変換素子920の出射端面921に形成された誘電体多層膜940を含む共振器を用いた基本波光FLから第2高調波光CLへの変換の効率は、経時的に低下することを見出した。本発明者は、基本波光FLから第2高調波光CLへの変換効率の経時的な低下は、波長変換素子920の出射端面921付近での光電界の集中が引き起こす波長変換素子920の屈折率の部分的な変化に起因することを更に見出した。
【0024】
以下に示される一連の実施形態の原理は、本発明者が新たに見出した従来の波長レーザ光源の課題を適切に改善する。
【0025】
(第1実施形態)
第1実施形態の波長変換レーザ光源は、波長変換素子の出射端面側に形成された「非変換領域」に主に特徴付けられる。「非変換領域」との用語は、基本波光から第2高調波への波長変換にほとんど寄与しない領域を意味する。
【0026】
(波長変換レーザ光源の構造)
図1は、第1実施形態の波長変換レーザ光源の概略図である。
図1を用いて、波長変換レーザ光源が説明される。
【0027】
本実施形態の波長変換レーザ光源100は、励起レーザ光PLを生成する励起レーザ光源110と、励起レーザ光PLを集光する集光レンズ120と、曲率R1で形成された凹面131を含む凹面レンズ130と、励起レーザ光源110からの励起レーザ光PLによって励起され、基本波光FLを発生させる固体レーザ媒質140と、基本波光FLを、基本波光FLとは異なる波長の変換光に変換する波長変換素子150と、を備える。波長変換素子150は、基本波光FLを変換光として第2高調波光CLへ変換する波長変換領域151と、基本波光FLから変換光への変換に寄与しない非変換領域152と、を備える。本実施形態において、固体レーザ媒質140は、レーザ媒質として例示される。
【0028】
図1に示される符号「PLa」は、励起レーザ光PLの光路を意味する。
図1に示される符号「FLa」及び符号「FLb」は、基本波光FLの光路を意味する。
図1に示される符号「CLa」及び符号「CLb」は、第2高調波光CLの光路を意味する。
【0029】
波長変換素子150は、
図1に示される光の伝搬経路(光路FLa、FLb、CLa、CLb)を横切る端面153を含む。波長変換素子150の端面153は、第2高調波光CLが出射する出射端面154と、出射端面154とは反対側の入射端面155と、を含む。入射端面155には、基本波光FLが入射する。本実施形態において、出射端面154は、第2出射端面として例示される。
【0030】
固体レーザ媒質140は、
図1に示される光の伝搬経路(光路PLa、FLa、FLb)を横切る端面143を含む。固体レーザ媒質140の端面143は、基本波光FLが出射する出射端面144と、励起レーザ光PLが入射する入射端面145と、を含む。本実施形態において、出射端面144は、第1出射端面として例示される。
【0031】
励起レーザ光源110として、AlGaAs系の半導体レーザ(Laser Diode)が例示される。本実施形態において、励起レーザ光源110は、約808nmの波長の励起レーザ光PLを発振する。
【0032】
固体レーザ媒質140として、ネオジウムドープのYVO
4(以下、Nd:YVO
4と称される)が例示される。本実施形態において、固体レーザ媒質140は、約1064nmの波長の基本波光FLを発振する。
【0033】
集光レンズ120として、凸レンズが例示される。また、本実施形態において、約20mmの曲率R1で形成された凹面131を有する平凹レンズが、凹面レンズ130として用いられる。
【0034】
波長変換素子150として、非線形光学結晶が用いられてもよい。非線形光学結晶として、マグネシウムドープ二オブ酸リチウム(MgO:LiNbO
3)(以下、MgLNと称される)が例示される。
【0035】
波長変換領域151(長さL=0.5mm)には、周期状の分極反転構造が形成される。波長変換領域151に形成された分極反転構造は、Λ(≒7μm)の分極反転周期を有する。波長変換領域151に形成された分極反転構造は、基本波光FLと第2高調波光CLとを位相整合させる。本実施形態において、波長変換領域151に形成された分極反転構造は、第1分極反転構造として例示される。
【0036】
波長変換領域151とは異なり、非変換領域152には、周期状の分極反転構造は形成されず、単一分極化される。非変換領域152は、d
1の長さ(d
1=400μm)を有する。
【0037】
波長変換レーザ光源100は、波長変換素子150の出射端面154を覆うように形成された誘電体多層膜160を更に備える。誘電体多層膜160は、基本波光FLに対して高い反射率を有し、第2高調波光CLに対して低い反射率を有する。
【0038】
波長変換レーザ光源100は、固体レーザ媒質140の出射端面144を覆うように形成された誘電体多層膜170を更に備える。誘電体多層膜170は、基本波光FLに対して低い反射率を有し、第2高調波光CLに対して高い反射率を有する。
【0039】
波長変換レーザ光源100は、凹面レンズ130の凹面131を覆うように形成された誘電体多層膜180を更に備える。誘電体多層膜180は、基本波光FLに対して高い反射率を有する。
【0040】
本実施形態において、凹面レンズ130の凹面131に形成された誘電体多層膜180及び波長変換素子150の出射端面154に形成された誘電体多層膜160は、基本波光FLをレーザ発振させるための共振器として動作する。基本波光FLを反射する誘電体多層膜180は、少なくとも1つの反射面として例示される。また、基本波光FLを反射する誘電体多層膜160は、第1反射要素及び第1反射膜として例示される。
【0041】
(波長変換レーザ光源の動作)
図1を用いて、波長変換レーザ光源100の動作が説明される。
【0042】
励起レーザ光源110から出射された励起レーザ光PLは、集光レンズ120によって集光される。その後、励起レーザ光PLは、固体レーザ媒質140に入射する。この結果、固体レーザ媒質140は励起し、1064nmの波長の光を自然放出する。固体レーザ媒質140から自然放出した光は、凹面レンズ130の凹面131に設けられた誘電体多層膜180と波長変換素子150の出射端面154に形成された誘電体多層膜160とによって形成された共振器内で共振する。この結果、基本波光FLがレーザ発振する。
【0043】
凹面レンズ130の凹面131に設けられた誘電体多層膜180と波長変換素子150の出射端面154に形成された誘電体多層膜160とによって共振された基本波光FLは、曲率R1で湾曲した凹面レンズ130の凹面によって集光され、波長変換素子150の出射端面154近傍でビームウエストを形成する。この結果、波長変換素子150内での基本波光FLのビーム径は低減され、基本波光FLから第2高調波光CLへの変換効率が増大する。
【0044】
凹面レンズ130から波長変換素子150へ向かう光路FLaに沿って伝搬する基本波光FLは、誘電体多層膜160,180間に配設された波長変換素子150の波長変換領域151によって第2高調波光CLに変換された後、光路CLaに沿って、波長変換素子150の出射端面154から共振器の外へ出射される。一方、波長変換素子150から凹面レンズ130へ向かう光路FLbに沿って伝搬する基本波光FLは、波長変換素子150によって第2高調波光CLに変換された後、固体レーザ媒質140の出射端面144に形成された誘電体多層膜170によって、波長変換素子150に向けて反射される。その後、第2高調波光CLは、波長変換素子150を通過し、共振器外へ出射される(
図1中、光路CLb参照)。
【0045】
上述の如く、本実施形態の波長変換レーザ光源100は、波長変換素子150の出射端面154を形成する非変換領域152を備える。誘電体多層膜160と波長変換領域151との間に配設された非変換領域152が形成する出射端面154を覆う誘電体多層膜160が基本波光FLを反射するので、波長変換領域151に形成された周期状の分極反転構造の劣化は生じにくくなる。この結果、基本波光FLから第2高調波光CLへの変換効率は低下しにくくなる。
【0046】
「周期状の分極反転構造の劣化」との用語は、波長変換素子150内での屈折率変化に起因して生ずる周期状の分極反転構造の一部の周期の見かけ上の変化を意味する。周期状の分極反転構造の一部の周期の変化は、設計周期からの乖離を引き起こす。この結果、第2高調波光CLの出力が低下する。
【0047】
(非変換領域の効果)
図2Aは、
図16に関連して説明された波長変換レーザ光源900から出射される第2高調波光CLの出力の時間変化を概略的に示すグラフである。
図2Bは、
図1に関連して説明された波長変換レーザ光源100から出射される第2高調波光CLの出力の時間変化を概略的に示すグラフである。
図1乃至
図2B並びに
図16を用いて、第2高調波光CLの出力の時間変化が説明される。
【0048】
本発明者は、
図16に示される波長変換レーザ光源900を連続駆動し、第2高調波光CLの出力を調査した。
図2Aに示される如く、10時間の連続駆動後に波長変換レーザ光源900から出射される第2高調波光CLの出力は、連続駆動開始時と比べて約半分になることが分かった。
【0049】
本発明者は、
図1に関連して説明された波長変換レーザ光源100を同様に連続駆動し、第2高調波光CLの出力を調査した。
図2Bに示される如く、10時間の連続駆動の間、波長変換レーザ光源100から出射される第2高調波光CLの出力は、ほとんど低下しないことが分かった。
【0050】
図2A及び
図2Bに示される結果から、波長変換素子150の出射端面154側に配設された非変換領域152は、周期状の分極反転構造の劣化を生じにくくすることが分かる。また、非変換領域152は、第2高調波光CLの出力を低下しにくくすることが分かる。
【0051】
(非変換領域の長さの設定)
本実施形態において、非変換領域152の長さd
1(伝搬される光の光路に沿う方向の長さ寸法)は、400μmに設定されている。代替的に、波長変換素子150が基本波光FLを変換光としてΔλ
snmの波長幅(半値全幅)の第2高調波光CLに変換するならば、非変換領域152の長さd
1は、以下の数式1で規定される関係を満足するように設定されてもよい。
【0053】
数式1で規定される関係が満足されるならば、同様に、周期状の分極反転構造の劣化が生じにくくなり、基本波光FLから第2高調波光CLへの変換効率の低下が生じにくくなる。また、波長変換領域151に形成された周期状の分極反転構造がΛ(μm)の周期を有するならば、非変換領域152の長さd
1は、以下の数式2で規定される関係を満足するように設定されてもよい。
【0055】
上述の数式2の関係が満足されるならば、同様に、周期状の分極反転構造の劣化が生じにくくなり、基本波光FLから第2高調波光CLへの変換効率の低下が生じにくくなる。
【0056】
上述の数式1及び数式2で表される関係が組み合わされた条件(即ち、Λ≦d
1≦40μm/Δλ
s)が満足されるように、非変換領域152の長さd
1は、設定されてもよい。この結果、非変換領域152に起因する共振器内の損失が低減され、共振器内部の基本波光FLが増大する。加えて、基本波光FLから第2高調波光CLへの変換効率が増大する。
【0057】
上述の非変換領域152の長さd
1の設定が更に説明される。以下の説明において、第2高調波光CLの中心波長は、λ
snmで表される。また、第2高調波光CLの波長幅(半値全幅)は、Δλ
snmで表される。波長変換素子150の出射端面154における波長「λ
s−Δλ/2」と波長「λ
s+Δλ/2」の位相差は、Δφ/π[rad]で表される。
【0058】
図3は、Δλ
s=0.1[nm]のときの非変換領域152の長さd
1とΔφ/π[rad]との間の関係を概略的に示すグラフである。
図1及び
図3を用いて、非変換領域152の長さd
1とΔφ/π[rad]の関係が説明される。
【0059】
非変換領域152の長さd
1が「0」のとき(即ち、波長変換素子150の入射端面155から出射端面154に亘って、波長変換領域151が形成されているとき)、波長「λ
s−Δλ/2」から波長「λ
s+Δλ/2」までの第2高調波光CLの位相が全てそろっている(Δφ/π=0)。「Δφ/π=0」の条件下において、波長変換素子150の出射端面154における電界強度は大きくなるので、波長変換素子150の出射端面154の近傍において、屈折率の変化が引き起こされる。波長変換素子150の出射端面154の近傍での屈折率変化は、周期状の分極反転構造の劣化(周期状の分極反転構造の一部の周期の見かけ上の変化)を引き起こす。周期状の分極反転構造の劣化は、基本波光FLから第2高調波光CLへの波長変換効率を低下させるので、第2高調波光CLの出力は低下する。
【0060】
非変換領域152の長さd
1が長く設定されると、Δφ/π[rad]は増大する。この結果、波長変換素子150の出射端面154における電界強度が下がる。「d
1≧40/Δλ
s」に規定される条件が満足されるとき、ΔΦ/πが0.05[rad]以上となるので、波長変換素子150の屈折率変化が特に生じにくくなる。かくして、第2高調波光CLの出力の低下が生じにくくなる。
【0061】
非変換領域152の長さd
1がΛ(周期状の分極反転構造の周期)よりも長く設定されても、第2高調波光CLの出力低減の抑制のために有効なΔφ/πの値が得られ、波長変換素子150の屈折率の変化が緩和される。この結果、第2高調波光CLの出力低減は、同様に、生じにくくなる。尚、非変換領域152の長さd
1の短縮は、共振器内部の損失の低減に帰結する。このことは、基本波光FLから第2高調波光CLへの変換効率を向上させるので、より高い「電気‐光変換効率」の達成のために、比較的短い非変換領域152の長さd
1が設定されてもよい。
【0062】
非変換領域152の長さd
1の延長は、共振器内部の損失を増大させる。したがって、非変換領域152の長さd
1は、好ましくは、共振器の損失の増加が0.4%以下となるように設定される。非変換領域152の長さd
1が、例えば、2000μm以下に設定されるならば、共振器の損失の増加は、0.4%以下となる。上述の検討から、波長変換領域151に形成された周期状の分極反転構造の周期Λ及び非変換領域152の長さd
1は、好ましくは、以下の数式3で示される関係を満足するように設定される。本実施形態において、波長変換領域151に形成された周期状の分極反転構造の周期Λは、第1分極反転周期として例示される。
【0064】
本実施形態において、非変換領域152の全領域は、単一分極化されるので、基本波光FLは、分極壁(分極が入れ替わる境界面)をまたぐ必要がない。この結果、共振器の損失は低くなる。また、低減された共振器の損失に起因して、基本波光FLの強度が向上するので、高い変換効率が達成される。
【0065】
特に、非変換領域152の長さd
1が、「Λ≦d
1<40μm/Δλ」に規定される関係を満たし、且つ、非変換領域152が単一分極化されるならば、波長変換素子150の屈折率の変化は、一方向(単調増加又は単調減少)に限定されるので、共振器内部における横モードへの影響が好適に低減される。
【0066】
(第2実施形態)
図4は、第2実施形態の波長変換レーザ光源の概略図である。
図4を用いて、第2実施形態の波長変換レーザ光源が説明される。
【0067】
本実施形態の波長変換レーザ光源100Aは、第1実施形態に関連して説明された波長変換レーザ光源100と同様の励起レーザ光源110、集光レンズ120、凹面レンズ130、固体レーザ媒質140及び誘電体多層膜160,170,180に加えて、波長変換素子150Aを備える。波長変換素子150Aは、第1実施形態に関連して説明された波長変換領域151に加えて、非変換領域152Aを備える。非変換領域152Aには、基本波光FLから第2高調波光CLへの変換に寄与しない分極反転構造が形成される。
【0068】
図5は、波長変換素子150Aの概略的な斜視図である。
図4及び
図5を用いて、波長変換素子150Aが説明される。
【0069】
波長変換領域151には、
図5中、Y方向に分極反転させる周期状の分極反転構造が形成される。非変換領域152Aには、波長変換領域151の分極反転方向に対して、垂直方向(X軸方向)に分極反転させる分極反転構造が形成される。「Y方向に分極反転させる分極反転構造の形成」との用語は、分極反転壁がY軸方向に沿う面となることを意味する。「X方向に分極反転させる分極反転構造の形成」との用語は、分極反転壁がX軸方向に沿う面となることを意味する。非変換領域152Aに形成される分極反転構造は、周期状でなくともよい。非変換領域152Aに形成される分極反転壁は、Y軸に対して、75度以上且つ105度以下の範囲で傾斜していてもよい。この範囲で傾斜する分極反転壁を有する非変換領域152Aの分極反転構造であっても、波長変換領域151の分極反転方向に対して、垂直方向に分極反転させる分極反転構造と同様の効果をもたらす。
【0070】
(第3実施形態)
図6は、第3実施形態の波長変換レーザ光源の概略図である。
図6を用いて、第3実施形態の波長変換レーザ光源が説明される。
【0071】
本実施形態の波長変換レーザ光源100Bは、第1実施形態に関連して説明された波長変換レーザ光源100と同様の励起レーザ光源110、集光レンズ120、凹面レンズ130、固体レーザ媒質140及び誘電体多層膜160,170,180に加えて、波長変換素子150Bを備える。波長変換素子150Bは、第1実施形態に関連して説明された波長変換領域151に加えて、非変換領域152Bを備える。非変換領域152Bには、波長変換領域151と同様に、周期状の分極反転構造が形成される。尚、非変換領域152Bに形成される分極反転構造の分極反転の方向は、波長変換領域151に形成される分極反転構造の分極反転の方向と同じであってもよい。しかしながら、非変換領域152Bに形成される分極反転構造の周期は、波長変換領域151に形成される分極反転構造の周期と異なる。本実施形態において、非変換領域152Bに形成される分極反転構造は、第2分極反転構造として例示される。
【0072】
非変換領域152Bに形成される分極反転構造の周期は、好ましくは、波長変換領域151に形成される分極反転構造の周期の1/2n(nは自然数)に設定される。この結果、非変換領域152Bの寸法や特性が製造過程においてばらついたとしても、基本波光FLから第2高調波光CLへの波長変換に対する影響は小さくなる。本実施形態において、非変換領域152Bに形成される分極反転構造の周期は、第2分極反転周期として例示される。
【0073】
本実施形態において、波長変換領域151に形成された周期状の分極反転構造の周期Λ及び非変換領域152Bの長さd
1は、第1実施形態での検討に基づき、以下の数式4で表される関係が満足されるように設定されることが好ましい。
【0074】
[数4]
2nΛ≦d
1≦2000μm
【0075】
尚、非変換領域152Bに形成された分極反転構造の周期は、波長変換領域151に形成された分極反転構造の周期のm/4倍(mは3以上の奇数)であってもよい。代替的に、非変換領域152Bに形成された分極反転構造の周期は、波長変換領域151に形成された分極反転構造の周期のp/2倍(pは3以上の奇数)であってもよい。更に代替的に、非変換領域152Bに形成された分極反転構造の周期は、波長変換領域151に形成された分極反転構造の周期のq倍(qは正の偶数)であってもよい。
【0076】
本発明者は、以下の条件に基づき作成された波長変換素子を作成し、波長変換素子の作成工程におけるばらつきが生じたときの非変換領域152Bが与える影響を調査した。
【0077】
条件1:
波長変換領域151における分極反転周期に対して、非変換領域152Bにおける分極反転周期が1/2n倍(nは自然数)
【0078】
条件2:
波長変換領域151における分極反転周期に対して、非変換領域152Bにおける分極反転周期がp/2倍(pは3以上の奇数)又はq倍(qは正の偶数)
【0079】
条件3:
波長変換領域151における分極反転周期に対して、非変換領域152Bにおける分極反転周期がm/4倍(mは3以上の奇数)
【0080】
波長変換素子の作成工程におけるばらつきが生じたときの非変換領域152Bが与える影響は、「条件3」の下で最も大きくなり、「条件1」の下で、最も小さくなった(条件3>条件2>条件1)。
【0081】
非変換領域152Bに形成される周期状の分極反転構造の周期が大きいほど、非変換領域152Bは容易に作成され、波長変換素子150Bの生産コストが低減される。しかしながら、波長変換領域151における分極反転周期と非変換領域152Bにおける分極反転周期の差異が大きくなるほど、波長変換領域151と非変換領域152Bとの間の境界領域における分極反転構造の形成が困難になる。したがって、非変換領域152Bにおける分極反転周期は、波長変換領域151における分極反転周期の7倍以下であることが好ましい。非変換領域152Bの周期状の分極反転の周期が1μm以上、且つ、波長変換領域151の分極反転周期の7倍以下に設定されるならば、波長変換領域151と非変換領域152Bとの間の境界領域における分極反転構造は、設計に沿って作成されやすくなる。したがって、波長変換素子150Bは、高い効率で波長を変換することができる。
【0082】
非変換領域152Bにおける分極反転周期は、波長変換領域151における分極反転周期と略同一であってもよい。尚、「略同一」との用語は、非変換領域152Bにおける分極反転周期が、波長変換領域151における分極反転周期に対して、93.4%以上、且つ、107%以下の範囲に設定されることを意味する。非変換領域152Bにおける分極反転周期が、このような範囲に設定されるならば、上述の有利な効果がもたらされる。
【0083】
代替的に、非変換領域152Bにおける分極反転周期は、波長変換領域151における分極反転周期に対して、87.7%以上、且つ、114%以下の範囲に設定されてもよい。この場合でも、上述の有利な効果に近い効果がもたらされる。
【0084】
(波長変換素子の材料)
第1実施形態乃至第3実施形態に関連して説明された波長変換素子150,150A,150Bの波長変換領域151及び非変換領域152,152A,152Bは、同一の材料から形成されてもよい。代替的に、波長変換領域151及び非変換領域152,152A,152Bは、異なる材料から形成されてもよい。
【0085】
第1実施形態乃至第3実施形態に関連して説明された波長変換素子150,150A,150Bの波長変換領域151は、MgLNを用いて形成される。非変換領域152,152A,152Bは、例えば、タンタル酸リチウムを用いて形成されてもよい。タンタル酸リチウムを用いて形成された非変換領域152,152A,152Bは、基本波光FLをほとんど吸収せず、高い出力の第2高調波光CLが出射される。
【0086】
非変換領域152,152A,152Bに用いられる材料として、タンタル酸リチウムが例示されるが、波長変換領域151に用いられる材料と等しい或いは近似した屈折率を有する材料が用いられてもよい。例えば、非変換領域152,152A,152Bに用いられる他の材料として、YVO
4(イットリウム・バナデート)、GVO
4(ガドリニウム・バナデート)やKNbO
3(ニオブ酸カリウム)が例示される。これらの結晶材料が非変換領域152,152A,152Bに用いられても、上述の有利な効果がもたらされる。
【0087】
非変換領域152,152A,152Bに用いられる結晶の屈折率が、波長変換領域151に用いられる結晶の屈折率と相違するならば、波長変換素子150、150A、150Bは、非変換領域152,152A,152Bに用いられる結晶の屈折率と波長変換領域151に用いられる結晶の屈折率との中間の値の屈折率を有する緩衝膜を更に備えてもよい。非変換領域152,152A,152Bと波長変換領域151との間に配設された緩衝膜は、非変換領域152,152A,152Bと波長変換領域151との間の界面における反射を好適に低減するので、波長変換効率が低下しにくくなる。
【0088】
(第4実施形態)
図7は、第4実施形態の波長変換レーザ光源の概略図である。
図7を用いて、第4実施形態の波長変換レーザ光源が説明される。
【0089】
本実施形態の波長変換レーザ光源100Cは、第1実施形態に関連して説明された波長変換レーザ光源100と同様の励起レーザ光源110、集光レンズ120、凹面レンズ130、固体レーザ媒質140、波長変換素子150及び誘電体多層膜160,180に加えて、誘電体多層膜170Cを備える。波長変換素子150の入射端面155を覆うように形成された誘電体多層膜170Cは、第2高調波光CLに対して高い反射率を有する。誘電体多層膜170Cは、光路CLbに沿って、波長変換素子150の出射端面154から入射端面155に向けて伝搬する第2高調波光CLを反射する。この結果、出射端面154に向けて発生した第2高調波光CLの光路CLa及び入射端面155に向けて発生した第2高調波光CLの光路CLbが好適に揃うので、共振器から出射された第2高調波光CLは容易に一点で集光される。
【0090】
(第5実施形態)
第4実施形態に関連して説明された波長変換レーザ光源100Cの波長変換素子150の入射端面155の近傍領域において、周期状の分極反転構造の劣化を引き起こされることがある。また、第2高調波光CLから基本波光FLへの逆変換に起因して、第2高調波光CLの出力変動が生ずることもある。
【0091】
第5実施形態の波長変換レーザ光源は、波長変換素子の入射端面において、第2高調波光を反射する。本実施形態の波長変換レーザ光源は、波長変換素子の入射端面側に形成された非変換領域に特徴付けられる。
【0092】
図8は、第5実施形態の波長変換レーザ光源の概略図である。
図8を用いて、第5実施形態の波長変換レーザ光源が説明される。
【0093】
本実施形態の波長変換レーザ光源100Dは、第4実施形態に関連して説明された波長変換レーザ光源100Cと同様の励起レーザ光源110、集光レンズ120、凹面レンズ130、固体レーザ媒質140及び誘電体多層膜160,170C,180に加えて、波長変換素子150Dを備える。波長変換素子150Dは、第4実施形態に関連して説明された波長変換素子150と同様の波長変換領域151及び非変換領域152に加えて、波長変換領域151と誘電体多層膜170Cとの間に配設された非変換領域156を備える。非変換領域156は、波長変換素子150Dの入射端面155を形成する。本実施形態において、非変換領域156は、第2非変換領域として例示される。また、非変換領域156によって形成された入射端面155を覆う誘電体多層膜170Cは、第2反射膜として例示される。加えて、波長変換素子150Dの端面153に形成された誘電体多層膜170C、160は、第1反射要素として例示される。
【0094】
非変換領域156は、d
2の長さを有する。第2高調波光CLが、Δλ
s[nm]の波長幅(半値全幅)を有するとき、非変換領域156の長さd
2は、好ましくは、以下の数式5に規定される関係を満足する。
【0096】
上述の数式5の関係が満足されるならば、波長変換領域151に形成された周期状の分極反転構造は、劣化しにくくなり、基本波光FLから第2高調波光CLへの変換効率が低下しにくくなる。
【0097】
波長変換領域151の周期状の分極反転構造は、Λの周期を有する。非変換領域156の長さd
2は、好ましくは、以下の数式6に規定される関係を満足する。
【0099】
上述の数式6の関係が満足されるならば、波長変換領域151に形成された周期状の分極反転構造は、劣化しにくくなり、基本波光FLから第2高調波光CLへの変換効率が低下しにくくなる。
【0100】
基本波光FLは、Δλ
f[nm]の波長幅(半値全幅)を有する。基本波光FLの波長幅Δλ
fが0.2nmであるとき、非変換領域156の長さd
2は、好ましくは、1mm以上に設定される。この結果、第2高調波光CLから基本波光FLへの逆変換に起因する第2高調波光CLの出力変化は、20%以下に低減される。非変換領域156の長さd
2が、2mmに設定されるならば、第2高調波光CLの出力変化は、5%以下に低減され、更に安定した第2高調波光CLの出力が達成される。
【0101】
波長変換素子150Dが有する波長分散特性の結果、非変換領域156において、基本波光FLと第2高調波光CLとの間の位相差は平均化される。この結果、第2高調波光CLから基本波光FLへの逆変換の量が安定化される。かくして、非変換領域156の長さd
2が長い方が、第2高調波光CLの出力は安定する。しかしながら、非変換領域156の延長は、共振器の内部の損失の増大に帰結する。この結果、共振器内部の基本波光FLが減少する。基本波光FLの過度の減少を防ぐために、非変換領域156の長さd
2は、好ましくは、2mm以下に設定される。
【0102】
上述の説明では、基本波光の波長幅Δλ
f(半値全幅)は、0.2nmである。しかしながら、基本波光の波長幅Δλ
f(半値全幅)は、他の数値であってもよい。非変換領域156の長さd
2が、以下の数式7の関係を満たすならば、第2高調波光CLの出力変化は、20%以下に抑制される。
【0103】
[数7]
0.2mm/Δλ
f≦d
2[mm]
【0104】
更に、非変換領域156の長さd
2が、以下の数式8の関係を満たすならば、第2高調波光CLの出力変化は、5%以下に抑制される。
【0105】
[数8]
d
2 [mm]=0.3mm/Δλ
f
【0106】
上述の検討から、非変換領域156の長さd
2は、以下の数式9に規定される関係を満たすように設定されることが好ましい。以下の数式9の関係が満たされるならば、基本波光FLから第2高調波光CLへの変換効率は低下しにくくなり、且つ、第2高調波光CLの出力は安定する。
【0107】
[数9]
0.2mm/Δλ
f≦d
2≦0.3mm/Δλ
f
【0108】
本実施形態に関連して説明された波長変換素子150Dの波長変換領域151及び非変換領域156は、同一の材料から形成されてもよい。代替的に、波長変換領域151及び非変換領域156は、異なる材料から形成されてもよい。本実施形態において、波長変換領域151に用いられる材料として、MgLNが例示される。このとき、非変換領域156は、タンタル酸リチウムを用いて形成されてもよい。この結果、基本波光FLの吸収は低減され、且つ、高い出力の第2高調波光CLが出射される。
【0109】
(第6実施形態)
図9は、第6実施形態の波長変換レーザ光源の概略図である。
図8及び
図9を用いて、第6実施形態の波長変換レーザ光源が説明される。
【0110】
本実施形態の波長変換レーザ光源100Eは、第5実施形態に関連して説明された波長変換レーザ光源100Dと同様の励起レーザ光源110、集光レンズ120、凹面レンズ130及び誘電体多層膜160,170C,180に加えて、波長変換素子150Eを備える。波長変換素子150Eは、第5実施形態に関連して説明された波長変換素子150Dと同様の波長変換領域151及び非変換領域152に加えて、波長変換領域151と誘電体多層膜170Cとの間に配設された非変換領域156Eを備える。
【0111】
非変換領域156Eは、複屈折率を有する固体レーザ媒質を用いて形成される。この結果、第5実施形態に関連して説明された波長変換レーザ光源100Dと同様の有利な効果がもたらされる。
【0112】
第5実施形態に関連して説明された波長変換レーザ光源100Dと異なり、本実施形態の波長変換レーザ光源100Eは、波長変換素子と別体に設けられた固体レーザ媒質を必要としない。したがって、波長変換レーザ光源100Eは、小型に形成される。
【0113】
本実施形態において、非変換領域156Eに用いられる固体レーザ媒質として、Nd:YVO
4が例示される。代替的に、非変換領域156Eに用いられる固体レーザ媒質として、NdがドープされたGdVO
4、NdがドープされたYAGやYbがドープされたYAG結晶が用いられてもよい。更に代替的に、結晶ではなく、セラミック材料から形成された固体レーザ媒質が非変換領域156Eに用いられてもよい。
【0114】
図10は、非変換領域156Eに2つの異なる材料が同時に用いられたときに得られる基本波光の発振波長のスペクトルを概略的に示すグラフである。
図9及び
図10を用いて、波長変換レーザ光源100Eが更に説明される。
【0115】
非変換領域156Eは、例えば、Nd:YVO
4とNd:GdVO
4の2つの材料を用いて形成されてもよい。非変換領域156Eに2つの異なる材料が用いられるならば、2つのピーク波長を有する発振波長スペクトルの基本波光FLが得られる。尚、基本波光FLの波長幅Δλ
fは、このとき、
図10に示される如く、短い波長でピークを有する発振波長スペクトルの半値全幅を規定する波長のうち小さい方の波長から長い波長でピークを有する発振波長スペクトルの半値全幅を規定する波長のうち大きい方の波長までの波長幅を意味する。
【0116】
(第7実施形態)
図11は、第7実施形態の波長変換レーザ光源の概略図である。
図11を用いて、第7実施形態の波長変換レーザ光源が説明される。
【0117】
本実施形態の波長変換レーザ光源100Fは、第5実施形態に関連して説明された波長変換レーザ光源100Dと同様の励起レーザ光源110、集光レンズ120、凹面レンズ130、波長変換素子150D及び誘電体多層膜160、180を備える。また、波長変換レーザ光源100Fは、第1実施形態に関連して説明された波長変換レーザ光源100と同様の誘電体多層膜170を備える。波長変換レーザ光源100Fは、固体レーザ媒質140Fを更に備える。第2高調波光CLに対して高い反射率を有する誘電体多層膜170は、固体レーザ媒質140Fの出射端面144を覆うように形成される。誘電体多層膜170は、波長変換素子150Dが固体レーザ媒質140Fに向けて変換光として発生させた第2高調波光CLを反射する。本実施形態において、誘電体多層膜170は、第2反射要素として例示される。
【0118】
固体レーザ媒質140Fは、基本波光FLが出射される出射端面144が、第2高調波光CLが出射される波長変換素子150Dの出射端面154に対して角度θで傾斜するように配設される。固体レーザ媒質140Fの出射端面144と波長変換素子150Dの出射端面154との間の角度θが、0.1°以上89.9°以下に設定されるならば、第2高調波光CLから基本波光FLへの逆変換が抑制される。本実施形態において、固体レーザ媒質140Fの出射端面144は、第1出射端面として例示される。
【0119】
図11に示される如く、固体レーザ媒質140Fの出射端面144は、固体レーザ媒質140Fの入射端面145に対して略平行であってもよい。この場合、固体レーザ媒質140Fは、全体的に、光路に対して傾斜され、固体レーザ媒質140Fの出射端面144と波長変換素子150Dの出射端面154との間の角度θが、0.1°以上89.9°以下に設定に設定されてもよい。固体レーザ媒質140Fの出射端面144が、波長変換素子150Dの出射端面154に対して傾斜されると、波長変換素子150Dが出射端面154に向けて発生させた第2高調波光CLの光路CLaは、波長変換素子150Dが入射端面155に向けて発生させた第2高調波光CLの光路CLbからずれる。この結果、第2高調波CLの出力変動に帰結する第2高調波光CLから基本波光FLへの逆変換が生じにくくなる。
【0120】
固体レーザ媒質140Fの傾斜は、固体レーザ媒質140F内での基本波光FLのビーム径を大きくする点からも、固体レーザ媒質140Fの傾斜配置は好ましい。
【0121】
図12は、波長変換レーザ光源100Fの固体レーザ媒質140F中の基本波光FLのビーム径を示す概略図である。
【0122】
図12中、点線で示される領域は、波長変換素子150Dの出射端面154に対して略平行に配設された固体レーザ媒質中の基本波光FLの光路BP1を表す。
図12中、実線で示される領域は、波長変換素子150Dの出射端面154に対して傾斜した固体レーザ媒質140F中の基本波光FLの光路BP2を表す。
【0123】
図12中、符号「D1」は、波長変換素子150Dの出射端面154に対して略平行に配設された固体レーザ媒質中の基本波光FLのビーム径を表す。
図12中、符号「D2」は、波長変換素子150Dの出射端面154に対して傾斜した固体レーザ媒質140F中の基本波光FLのビーム径を表す。
【0124】
傾斜した固体レーザ媒質140Fに入射した基本波光FLは、入射端面145において屈折する。入射端面145における基本波光FLの屈折の結果、固体レーザ媒質140F中の基本波光FLのビーム径は大きくなる。基本波光FLは、その後、固体レーザ媒質140Fから出射する。基本波光FLは、固体レーザ媒質140Fの出射端面144において、再度、屈折する。この結果、傾斜した固体レーザ媒質140Fから出射された基本波光FLのビーム径D2は、光路BP1で表される基本波光FLのビーム径D1と等しくなる。
【0125】
非変換領域152において、屈折率変化が生じ、共振器内の横モードが変化しても、固体レーザ媒質140F内でのビーム径D2は大きくなっているので、励起レーザ光PLから基本波光FLへの変換効率は低下しにくい。したがって、第2高調波光CLの出力変動も生じにくくなる。
【0126】
固体レーザ媒質140F中において、励起レーザ光PLの屈折率は、基本波光FLの屈折率と相違する。したがって、好ましくは、励起レーザ光PLと基本波光FLとの間のビームの重畳を考慮し、固体レーザ媒質140Fの出射端面144と波長変換素子150Dの出射端面154との間の角度θは、好ましくは、70°以下に設定される。
【0127】
固体レーザ媒質140Fの端面143が励起レーザ光PLの光路に対してブリュースター角で傾斜するように、固体レーザ媒質140Fが配設されてもよい。固体レーザ媒質140Fの端面143が励起レーザ光PLの光路に対してブリュースター角で傾斜するように、固体レーザ媒質140Fが配設されるならば、固体レーザ媒質140Fの端面143に対して、P偏光となる基本波光FLの透過率が高くなり、基本波光FLに対して反射率が低くなる多層膜は、固体レーザ媒質140Fの端面に形成される必要が無くなる。この結果、波長変換レーザ光源100Fは低コスト化される。
【0128】
一方、固体レーザ媒質140Fの端面143に対してS偏光となる基本波光FLの反射率は高くなるので、S偏光の発振はしにくくなる。この結果、基本波光FLが発振する偏光は、単一偏光化される。単一偏光化は、基本波光FLから第2高調波光CLへの変換効率の向上に帰結する。加えて、横モードの競合が無くなるので、第2高調波光CLの出力は安定化される。
【0129】
図13は、ブリュースター角を説明する概略図である。
図12及び
図13を用いて、波長変換レーザ光源100Fが更に説明される。
【0130】
図13には、屈折率n1の媒質及び屈折率n2の媒質が示されている。ブリュースター角とは、屈折率n1の媒質から屈折率n2の媒質に入射する光の入射角が、arctan(n2/n1)で表されるときの角度を意味する。
【0131】
図13に示されるブリュースター角の原理が波長変換レーザ光源100Fに適用されるならば、共振器内の屈折率は、「n1」で表される。また、固体レーザ媒質140Fの屈折率は、「n2」で表される。波長変換素子150Dの出射端面154と固体レーザ媒質140Fの出射端面144との間の角度θが、ブリュースター角、或いは、ブリュースター角に対して96.4%以上、且つ、104%以下の範囲に設定されるならば、上述の有利な効果が得られる。
【0132】
(スラブ構造を有する波長変換レーザ光源)
上述の一連の実施形態の原理は、スラブ構造を有する波長変換レーザ光源に好適に適用される。
【0133】
図14は、スラブ構造を有する波長変換レーザ光源の概略的な斜視図である。
図14を用いて、波長変換レーザ光源が説明される。
【0134】
図14に示される波長変換レーザ光源300は、スラブ構造を有する。波長変換レーザ光源300は、励起レーザ光源310、集光レンズ320、レーザ媒質340及びSHG素子350(Second Harmonic Generation素子)を備える。レーザ媒質340及び/又はSHG素子350の上下面は、光学研磨され、低屈折率の材料でコーティングされる。この結果、レーザ媒質340及び/又はSHG素子350は、クラッドを形成し、レーザ媒質340及び/又はSHG素子350内で光が導波される。SHG素子350に対向するレーザ媒質340の端面342及びレーザ媒質340に対向するSHG素子350の端面352には、無反射膜がコーティングされる。
【0135】
励起レーザ光源310は、励起レーザ光を集光レンズ320に向けて出射する。集光レンズ320は、励起レーザ光を水平方向に集光する。尚、励起レーザ光は、クラッドに閉じ込められるため、励起レーザ光の垂直方向の集光は必要とされない。
【0136】
励起レーザ光源310に対向する集光レンズ320の端面は、第1反射面321として機能する。第1反射面321は、例えば、1060nm帯域の光及び530nm帯域の光を反射する。
【0137】
第2高調波光が出射されるSHG素子350の出射端面は、第2反射面351として機能する。第2反射面351は、1060nm帯域の光を反射し、530nm帯域の光の透過を許容する。第1反射面321及び第2反射面351は、共振器として機能する。
【0138】
レーザ媒質340は、集光レンズ320によって集光された励起レーザ光を吸収する。この結果、レーザ媒質340は、1060nm帯域の基本波光を発生する。基本波光は、第1反射面321及び第2反射面351によって形成された共振器内でレーザ発振する。
【0139】
レーザ発振した基本波光がSHG素子350を通過すると、530nm帯域の第2高調波光が出力される。
【0140】
レーザ媒質340及びSHG素子350は、例えば、約100μmの厚さであってもよい。この結果、発生した1060nm帯域の基本波光のパワー密度は、レーザ媒質340及びSHG素子350内で増大される。この結果、基本波光から第2高調波光への変換効率が向上する。
【0141】
上述の如く、スラブ構造を有する波長変換レーザ光源は、大きな光パワー密度に起因して、
図16及び
図17に関連して説明された課題は顕著となる。
【0142】
SHG素子350には、上述の一連の実施形態で関連して説明された非変換領域が組み込まれる。この結果、SHG素子350の屈折率変化は生じにくくなる。かくして、屈折率変化に起因する分極反転構造の劣化も生じにくくなる。したがって、波長変換レーザ光源300は、小型に形成され、且つ、高い波長変換効率を有する。加えて、波長変換レーザ光源300は、高い出力の第2高調波光を出射することができる。
【0143】
上述の一連の実施形態において、波長変換素子は、MgLNを用いて形成される。代替的に、波長変換素子は、タンタル酸リチウムやリン酸チタニルカリウムといった材料を用いて形成されてもよい。これらの材料に周期状の分極反転構造が形成されるならば、上述の一連の実施形態に関連して説明された有利な効果がもたらされる。
【0144】
上述の一連の実施形態において、波長変換素子は、波長1064nmの基本波光を波長532nmの第2高調波光に変換する。代替的に、波長変換素子は、他の波長の基本波光に基づき、当該基本波光の高調波光、和周波光や差周波光に変換してもよい。このような波長変換素子が組み込まれた波長変換レーザ光源も、上述の一連の実施形態に関連して説明された有利な効果をもたらす。
【0145】
基本波光は、複数の波長を有してもよい。波長変換素子は、当該基本波光の和周波光や差周波光を発生させてもよい。このような波長変換素子が組み込まれた波長変換レーザ光源も、上述の一連の実施形態に関連して説明された有利な効果をもたらす。
【0146】
上述の一連の実施形態において、波長変換素子の波長変換領域に形成された分極反転構造の分極反転の周期Λは、約7μmの単一周期である。代替的に、波長変換素子の波長変換領域には、周期の異なる分極反転構造が形成されてもよい。波長変換領域に形成された分極反転領域に位相制御領域が介挿されてもよい。更に、分極反転構造の分極反転の周期は、チャープ状に変化されてもよい。これら様々な分極反転構造は、位相整合可能な波長の許容幅を好適に拡大する。
【0147】
上述の一連の実施形態において、周期状の分極反転構造が形成された波長変換領域と基本波光から第2高調波光への波長変換に寄与しない非変換領域を有する擬似位相整合型の波長変換素子が説明されている。上述の一連の実施形態は、波長変換レーザ光源の一例にすぎない。したがって、上述の説明は、上述の実施形態の原理の適用範囲を限定するものではない。上述の原理の真意及び範囲を逸脱することなしに、当業者は、様々な変形や組み合わせを行うことが可能であることは容易に理解されるべきである。
【0148】
(第8実施形態)
第8実施形態において、画像表示装置として例示される液晶表示装置が説明される。第8実施形態の液晶表示装置は、上述の第1実施形態乃至第7実施形態に関連して説明された波長変換レーザ光源を含むバックライト照明装置を備える。
【0149】
図15は、液晶表示装置の概略図である。
図15を用いて、液晶表示装置が説明される。
【0150】
液晶表示装置500は、バックライト照明装置510を備える。バックライト照明装置は、光源部511を備える。光源部511は、赤色レーザ光を出射する赤色レーザ光源(以下、R光源511Rと称される)、緑色レーザ光を出射する緑色レーザ光源(以下、G光源511Gと称される)及び青色レーザ光を出射する青色レーザ光源(以下、B光源511Bと称される)を含む。
【0151】
バックライト照明装置510は、光ファイバ512と、光ファイバ512の先端部に設けられた導光部513と、導光部513からのレーザ光を均一化する導光板514と、を更に備える。
【0152】
液晶表示装置500は、赤色レーザ光、緑色レーザ光及び青色レーザ光を変調する空間変調素子として用いられる液晶表示パネル520と、液晶表示パネル520からの光を偏光する偏光板530と、を更に備える。
【0153】
光源部511中、G光源511Gとして、上述の第1実施形態乃至第7実施形態のいずれかに従う波長変換レーザ光源が用いられる。R光源511Rとして、AlGaInP/GaAs系材料を用いて形成された半導体レーザが用いられる。R光源511Rは、波長640nmの赤色レーザ光を出射する。B光源511Bとして、GaN系材料を用いて形成された半導体レーザが用いられる。R光源511Rは、波長450nmの青色レーザ光を出射する。
【0154】
光ファイバ512は、光源部511からの赤色レーザ光、緑色レーザ光及び青色レーザ光をまとめて、導光部513を介して、導光板514へ導く。導光板514は、導光部513を介して導入されたレーザ光を均一に主面(図示せず)から出射する。本実施形態において、光ファイバ512は、レーザ光源から出射されたレーザ光を空間変調素子へ導く光学系として例示される。
【0155】
G光源511Gは、第1実施形態乃至第7実施形態に関連して説明された波長変換レーザ光源に加えて、集光レンズといった光学部品を備えてもよい。この結果、G光源511Gからの出力光は、光ファイバ512に効率よく結合され、導光板514へ導かれる。
【0156】
上述の液晶表示装置500は、低消費電力で、色再現性に優れた画像を表示することができる。
【0157】
大画面の画像表示装置は、一般的には、安定的に高出力のレーザ光源を要求する。上述の第1実施形態乃至第7実施形態に関連して説明された波長変換レーザ光源は、大画面の画像表示装置の要求特性を満足するので、画像表示装置の大画面化が可能となる。
【0158】
本実施形態において、レーザ光源を用いた画像表示装置として、透過型の液晶パネルを空間光変調素子として利用する液晶表示装置が例示される。代替的に、Digital Micro−Mirror Device (DMD)や反射型液晶(Liquid Crystal on Silicon: LCOS)といった空間変調素子を用いたプロジェクタといった装置が画像表示装置として用いられてもよい。これら画像表示装置に対しても、上述の一連の実施形態の原理が好適に適用され、上述の有利な効果がもたらされる。
【0159】
本実施形態において、レーザ光源から出射された光は、光ファイバ、導光部及び導光板を用いて、空間変調素子に導かれる。代替的に、これら光学素子に代えて、ダイクロイックミラー、クロスプリズムやロッドインテグレータといった適切な光学素子が用いられてもよい。
【0160】
上述の一連の実施形態は、波長変換レーザ光源及び画像表示装置の一例にすぎない。したがって、上述の説明は、上述の実施形態の原理の適用範囲を限定するものではない。上述の原理の真意及び範囲を逸脱することなしに、当業者は、様々な変形や組み合わせを行うことが可能であることは容易に理解されるべきである。
【0161】
上述された実施形態は、以下の構成を主に備える。以下の構成を備える波長変換レーザ光源及び画像表示装置は、典型的には、波長変換素子内に基本波光を集光し、投入電力から第2高調波光への変換効率を増大する。非変換領域は、波長変換レーザ光源及び画像表示装置の長時間の動作の間の経時変化(例えば、横モード変化や共振器長の変化)を生じにくくする。この結果、共振器が安定化され、高い変換効率が維持される。かくして、波長変換レーザ光源及び画像表示装置は、安定的に、第2高調波光を出力することができる。
【0162】
上述の実施形態の一局面に係る波長変換レーザ光源は、基本波光を発生するレーザ媒質と、前記基本波光をレーザ発振させるためのレーザ共振器と、前記レーザ共振器からレーザ発振された前記基本波光を異なる波長の変換光へと変換する波長変換領域を備えた波長変換素子と、前記レーザ媒質を励起するための励起レーザ光源と、を備え、前記レーザ共振器は、前記基本波を反射する少なくとも1つの反射面と、前記波長変換素子の端面に設けられ、前記基本波を反射する第1反射要素と、を含み、前記波長変換領域は、前記少なくとも1つの反射面と前記第1反射要素との間に配置され、前記波長変換素子は、前記波長変換領域に形成された周期状の第1分極反転構造と、前記第1反射要素と前記波長変換領域との間に形成された非変換領域と、を含み、前記非変換領域は、前記基本波光を前記変換光へ変換しないことを特徴とする。
【0163】
上記構成によれば、レーザ媒質は、励起レーザ光源によって励起され、基本波光を発生する。レーザ共振器は、レーザ媒質が発生させた基本波光をレーザ発振させる。波長変換素子は、レーザ共振器からレーザ発振された基本波光を異なる波長の変換光へと変換するための波長変換領域を備える。レーザ共振器は、基本波を反射する少なくとも1つの反射面と、基本波を反射する第1反射要素と、を含む。第1反射要素は、波長変換素子の端面に設けられる。波長変換領域は、少なくとも1つの反射面と第1反射要素との間に配置される。波長変換素子は、波長変換領域に形成された周期状の第1分極反転構造と、第1反射要素と前記波長変換領域との間に形成された非変換領域と、を含む。非変換領域は、長時間の波長変換レーザ光源の動作の間、横モード変化や共振器長の変化といった経時変化を発生させにくくするので、共振器は、安定的に動作することができる。したがって、高い変換効率の下、安定的に、変換光が出力される。
【0164】
上記構成において、前記第1分極反転構造は、Λ[μm]の第1分極反転周期を有し、前記非変換領域は、d
1[μm]の長さを有し、前記第1分極反転周期及び前記非変換領域の長さは、Λ≦d
1≦2000μmによって規定される関係を満足することが好ましい。
【0165】
上記構成によれば、第1分極反転構造は、Λ[μm]の第1分極反転周期を有し、非変換領域は、d
1[μm]の長さを有する。第1分極反転周期及び非変換領域の長さは、Λ≦d
1≦2000μmによって規定される関係を満足するので、共振器による損失が低減される。
【0166】
上記構成において、前記波長変換素子は、前記基本波光を、前記変換光として、Δλ
sの波長幅の第2高調波光へ変換し、単一分極化された前記非変換領域の長さは、Λ≦d
1≦40μm/Δλ
sによって規定される関係を満足することが好ましい。
【0167】
上記構成によれば、波長変換素子は、基本波光を、変換光として、Δλ
sの波長幅の第2高調波光へ変換する。単一分極化された非変換領域の長さは、Λ≦d
1≦40μm/Δλ
sによって規定される関係を満足するので、第2高調波光の出力は低下しにくくなる。
【0168】
上記構成において、前記非変換領域は、周期状の第2分極反転構造を含み、前記第2分極反転構造の第2分極反転周期は、前記第1分極反転構造の第1分極反転周期の1/2n(nは自然数)倍に相当し、前記非変換領域の長さは、2nΛ≦d
1≦2000μmによって規定される関係を満足することが好ましい。
【0169】
上記構成によれば、非変換領域は、周期状の第2分極反転構造を含む。第2分極反転構造の第2分極反転周期は、前記第1分極反転構造の第1分極反転周期の1/2n倍に相当する。非変換領域の長さは、2nΛ≦d
1≦2000μmによって規定される関係を満足するので、非変換領域が基本波光から変換光への変換に与える影響が低減される。
【0170】
上記構成において、前記端面は、前記変換光が出射する出射端面を含み、前記第1反射要素は、前記出射端面に設けられ、前記基本波光を反射する第1反射膜を含み、前記非変換領域は、前記出射端面を形成する第1非変換領域を含むことが好ましい。
【0171】
上記構成によれば、端面は、変換光が出射する出射端面を含む。第1反射要素は、出射端面に設けられ、基本波光を反射する第1反射膜を含む。非変換領域は、出射端面を形成する第1非変換領域を含むので、共振器は、安定的に動作することができる。したがって、高い変換効率の下、安定的に、変換光が出力される。
【0172】
上記構成において、前記端面は、前記基本波光が入射する入射端面を含み、前記第1反射要素は、前記入射端面に設けられ、前記変換光を反射する第2反射膜を含み、前記非変換領域は、前記入射端面を形成する第2非変換領域を含み、前記基本波光は、Δλ
fの波長幅を有し、前記第2非変換領域は、d
2の長さを有し、前記基本波光の波長幅及び前記第2変換領域の長さは、0.2mm/Δλ
f≦d
2≦0.3mm/Δλ
fによって規定される関係を満足することが好ましい。
【0173】
上記構成によれば、波長変換素子は、基本波光が入射する入射端面を含む。第1反射要素は、入射端面に設けられた第2反射膜を含む。第2反射膜は、変換光を反射する。非変換領域は、入射端面を形成する第2非変換領域を含む。基本波光は、Δλ
fの波長幅を有し、第2非変換領域は、d
2の長さを有する。基本波光の波長幅及び第2非変換領域の長さは、0.2mm/Δλ
f≦d
2≦0.3mm/Δλ
fによって規定される関係を満足するので、変換光は安定的に出射される。
【0174】
上記構成において、前記レーザ媒質は、前記基本波光が出射する第1出射端面と、該出射端面に設けられた第2反射要素と、を含み、該第2反射要素は、前記変換光を反射し、前記端面は、前記変換光が出射する第2出射端面を含み、該第2出射端面は、前記第1出射端面に対して、θの角度で傾斜し、前記第1出射端面に対する前記第2出射端面の角度は、0.1°≦θ≦70°によって規定される関係を満足することが好ましい。
【0175】
上記構成によれば、レーザ媒質は、基本波光が出射する第1出射端面と、出射端面に設けられた第2反射要素と、を含む。第2反射要素は、変換光を反射する。端面は、変換光が出射する第2出射端面を含む。第2出射端面は、第1出射端面に対して、θの角度で傾斜する。第1出射端面に対する第2出射端面の角度は、0.1°≦θ≦70°によって規定される関係を満足するので、変換光から基本波光への逆変換が生じにくくなる。また、基本波光とレーザ媒質を励起するための励起光との間の適切な重畳領域が設定される。
【0176】
上記構成において、前記共振器は、n1の屈折率を有し、前記レーザ媒質は、n2の屈折率を有し、前記第1出射端面に対する前記第2出射端面の角度は、0.964×arctan(n2/n1)≦θ≦1.04×arctan(n2/n1) によって規定される関係を満足することが好ましい。
【0177】
上記構成によれば、共振器は、n1の屈折率を有し、レーザ媒質は、n2の屈折率を有する。第1出射端面に対する第2出射端面の角度は、0.964×arctan(n2/n1)≦θ≦1.04×arctan(n2/n1) によって規定される関係を満足するので、変換光が安定的に出力される。
【0178】
上述の実施形態の更に他の局面に係る画像表示装置は、赤、緑及び青のうち少なくとも1つの色相のレーザ光を出射するレーザ光源と、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を変調する空間光変調素子と、前記レーザ光源から出射されたレーザ光を前記空間変調素子へ導く光学系と、を備え、前記レーザ光源は、上述の波長変換レーザ光源を含むことを特徴とする。
【0179】
上記構成によれば、レーザ光源は、赤、緑及び青のうち少なくとも1つの色相のレーザ光を出射する。空間光変調素子は、レーザ光源から出射されたレーザ光を変調する。光学系は、レーザ光源から出射されたレーザ光を空間変調素子へ導く。レーザ光源は、上述の波長変換レーザ光源を含む。長時間の波長変換レーザ光源の動作の間、横モード変化や共振器長の変化といった経時変化は、ほとんど発生しないので、共振器は、安定的に動作することができる。したがって、高い変換効率の下、安定的に、変換光が出力され、画像は適切に表示される。