特許第5654603号(P5654603)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5654603
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】外部圧力補償を備えた眼内圧力センサ
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/16 20060101AFI20141218BHJP
【FI】
   A61B3/16
【請求項の数】23
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-530908(P2012-530908)
(86)(22)【出願日】2010年9月1日
(65)【公表番号】特表2013-505107(P2013-505107A)
(43)【公表日】2013年2月14日
(86)【国際出願番号】US2010047429
(87)【国際公開番号】WO2011034727
(87)【国際公開日】20110324
【審査請求日】2013年8月9日
(31)【優先権主張番号】12/563,244
(32)【優先日】2009年9月21日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508185074
【氏名又は名称】アルコン リサーチ, リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100102819
【弁理士】
【氏名又は名称】島田 哲郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100160705
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 健太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130133
【弁理士】
【氏名又は名称】曽根 太樹
(72)【発明者】
【氏名】マシュー ジェイ.エー.リッカード
(72)【発明者】
【氏名】ロバート ジョセフ サンチェス,ジュニア
【審査官】 宮川 哲伸
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−520119(JP,A)
【文献】 国際公開第2008/084350(WO,A2)
【文献】 国際公開第2007/127305(WO,A2)
【文献】 特表2010−503220(JP,A)
【文献】 特表2005−535392(JP,A)
【文献】 特表2009−508584(JP,A)
【文献】 特表平09−509334(JP,A)
【文献】 特表2008−546501(JP,A)
【文献】 特開昭61−082748(JP,A)
【文献】 特表2010−515476(JP,A)
【文献】 特表2009−535102(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00 − 3/18
A61F 9/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼の前房と流体連通して配置された第1圧力センサと、
大気圧を測定し又は大気圧の近似値を求めるように前記第1圧力センサから離隔されて配置された離隔圧力センサとを具備する、眼内圧力センサシステムであって、
前記第1圧力センサからの数値と前記離隔圧力センサからの数値との間の差が眼内圧力に近似し、
チューブと、
該チューブの端部上に収まる端キャップであって、前記第1圧力センサが前記端キャップの第1端部に配置され、前記離隔圧力センサが前記端キャップの第2端部に配置される、端キャップと、を更に具備する、眼内圧力センサシステム。
【請求項2】
プロセッサと、
該プロセッサに接続された電源と、
前記プロセッサに接続されたメモリと
を更に具備し、前記プロセッサが、前記測定された抵抗を読み込むように構成される、請求項1に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項3】
前記プロセッサが、眼内圧力に相当する値を前記メモリに書き込む、請求項2に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項4】
前記プロセッサに接続されたデータ伝送モジュールを更に具備する、請求項2に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項5】
前記離隔圧力センサが前記眼の結膜下腔内に配置される、請求項1に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項6】
バルブを備えたチューブと、
前記第1圧力センサからの数値及び前記離隔圧力センサからの数値に基づいて前記バルブを制御するように構成されたコントローラと
を更に具備する、請求項1に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項7】
前記バルブを制御することによって、ほぼ一定の眼内圧力が前記眼内において維持される、請求項に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項8】
前記バルブを制御することによって、ほぼ一定の眼内圧力低下が維持される、請求項に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項9】
眼の前房と流体連通して配置された第1圧力センサと、
排出場所に配置された第2圧力センサと
を具備する、眼内圧力センサシステムであって、
前記第1圧力センサからの数値と前記第2圧力センサからの数値との間の差が前記前房と前記排出場所との間の圧力差に近似し、
大気圧を測定し又は大気圧の近似値を求めるように前記第1圧力センサから離隔されて配置された離隔圧力センサと、
チューブと、
該チューブの端部上に収まる端キャップであって、前記第1圧力センサが前記端キャップの第1端部に配置され、前記離隔圧力センサが前記端キャップの第2端部に配置される、端キャップと、を更に具備する、眼内圧力センサシステム。
【請求項10】
プロセッサと、
該プロセッサに接続された電源と、
前記プロセッサに接続されたメモリとを更に具備し、
前記プロセッサが、前記測定された抵抗を読み込むように構成される、請求項に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項11】
前記プロセッサが、前記圧力差に相当する値を前記メモリに書き込む、請求項10に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項12】
前記プロセッサに接続されたデータ伝送モジュールを更に具備する、請求項10に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項13】
バルブを備えたチューブと、
前記第1圧力センサからの数値及び前記第2圧力センサからの数値に基づいて前記バルブを制御するように構成されたコントローラと
を更に具備する、請求項に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項14】
前記バルブを制御することによって、ほぼ一定の圧力差が維持される、請求項13に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項15】
前記バルブを制御することによって、前記圧力差が調整される、請求項13に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項16】
排出場所に配置された第1圧力センサと、
大気圧を測定し又は大気圧の近似値を求めるように前記第1圧力センサから離隔されて配置された離隔圧力センサと
を具備する、眼内圧力センサシステムであって、
前記第1圧力センサからの数値と前記離隔圧力センサからの数値との間の差が前記排出場所における圧力に近似し、
チューブと、
該チューブの端部上に収まる端キャップであって、前記第1圧力センサが前記端キャップの第1端部に配置され、前記離隔圧力センサが前記端キャップの第2端部に配置される、端キャップと、を更に具備する、眼内圧力センサシステム。
【請求項17】
プロセッサと、
該プロセッサに接続された電源と、
前記プロセッサに接続されたメモリと
を更に具備し、前記プロセッサが、前記測定された抵抗を読み込むように構成される、請求項16に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項18】
前記プロセッサが、前記圧力差に相当する値を前記メモリに書き込む、請求項17に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項19】
前記プロセッサに接続されたデータ伝送モジュールを更に具備する、請求項17に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項20】
前記第1圧力センサを前記離隔圧力センサから隔てる障壁を更に具備する、請求項16に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項21】
バルブを備えたチューブと、
前記第1圧力センサからの数値及び前記離隔圧力センサからの数値に基づいて前記バルブを制御するように構成されたコントローラと
を更に具備する、請求項16に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項22】
前記バルブを制御することによって、ほぼ一定の圧力が前記排出場所において維持される、請求項21に記載の眼内圧力センサシステム。
【請求項23】
前記バルブを制御することによって、前記排出場所における圧力が調整される、請求項21に記載の眼内圧力センサシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2009年9月21日に出願された米国特許出願シリアル番号12/563244の優先権の利益を主張する。
【0002】
本発明は、眼内圧力を監視するための装置に関し、特に外部圧力補償を備えた埋め込み可能な圧力センサに関する。
【背景技術】
【0003】
緑内障、並びに網膜及び視神経に影響する一群の眼疾患は、世界中で失明をもたらす主要因の一つである。緑内障は、眼内圧力(IOP)が、長時間に亘って正常よりも高い圧力に増大すると生じる。IOPは、房水の生成と排出との不均衡によって増大しうる。未治療のままにしておくと、上昇したIOPが視神経および網膜繊維に回復不能な損傷をもたらし、このことは進行性の永久的な視力喪失を引き起こす。
【0004】
眼の毛様体上皮は、眼の前房(角膜と虹彩との間の空間)を満たす透明な流体である房水を絶えず生成する。房水は、複雑な排出システムであるぶどう膜強膜経路を通して前房から流れ出る。房水の生成と排出との間の微妙なバランスが眼のIOPを決定する。
【0005】
(慢性開放隅角又は原発開放隅角とも称される)開放隅角が緑内障の最も一般的なタイプである。このタイプでは、眼の前方構造が正常であるようにみえたとしても、房水が前房内において徐々に増え、IOPの上昇が引き起こされる。未治療のままにしておくと、このことは視神経及び網膜の永久的な損傷をもたらしうる。一般的には、眼圧を下げるために点眼薬が処方される。場合によっては、IOPを薬物療法で十分に制御することができなければ外科手術が行われる。
【0006】
人工の約10%のみが急性閉塞隅角緑内障を患う。急性の隅角の閉塞は眼の前方における構造の異常な状態によって生じる。これら多くの場合、虹彩と角膜との間の空間は正常よりも狭く、房水が通過するための小さなチャネルが残される。房水の流れが完全に遮断されると、IOPが急に上昇し、急激な隅角の閉塞が発症する。
【0007】
続発性緑内障は、別の病気の結果、又は、炎症、外傷、既往手術、糖尿病、腫瘍、及び所定の薬剤のような眼内における問題の結果として生じる。このタイプについて、緑内障とその根本的な問題との両方が治療されなければならない。
【0008】
図1は緑内障の過程を説明するのを助ける眼の前方部分の略図である。図1では、水晶体110、角膜120、虹彩130、毛様体140、小柱網150、及びシュレム管160の描写が描かれている。解剖学上、眼の前房は緑内障を引き起こす構造を含む。房水は毛様体140によって生成され、毛様体140は虹彩130の下に位置し且つ前房内において水晶体110に近接する。この房水は、水晶体110および虹彩130に押し寄せて、前房の隅角に配置された排出システムに流れる。眼の周りに周方向に延在する前房の隅角は、房水が排出されることを可能にする構造を含む。その第1の構造であり且つ一般的に緑内障と最も関連する構造が小柱網150である。小柱網150は、隅角において前房の周りに周方向に延在する。小柱網150は、フィルタとして作用するように見え、房水の流出を制限し、且つIOPを生成する背圧を提供する。シュレム管160は、小柱網150を越えて配置される。シュレム管160はコレクタチャネルを有し、コレクタチャネルは房水が前房から流れ出ることを可能とする。図1の前房における二つの矢印は、毛様体140から水晶体110及び虹彩130を越えて小柱網150を通ってシュレム管160及びそのコレクタチャネル内へと流れる房水の流れを示す。
【0009】
緑内障患者において、IOPは24時間広範に変化しうる。一般的には、IOPは、薬剤が、起きているときに投与される前の早朝の時間帯において最も高い。高い圧力は視神経に損傷を与えて失明を引き起こしうる。したがって、様々な治療の有効性を評価するために、長時間に亘ってIOPを測定することが望ましいであろう。加えて、埋め込まれた機能中のIOP制御システム(例えば房水の流れを制御し又は薬を供給するためのバルブ又はポンプ)を支持すべく、連続的なIOPデータがフィードバック機構の一部として使用されることができる。本発明はIOP測定装置を提供する。
【発明の概要】
【0010】
本発明の原理と一致した一つの実施形態では、本発明は、眼の前房内に配置され又は眼の前房と流体連通して配置された第1圧力センサと、第1圧力センサから離隔されて配置された離隔圧力センサとを有する眼内圧力センサシステムである。離隔圧力センサは大気圧を測定し又は大気圧の近似値を求める。第1圧力センサからの数値と離隔圧力センサからの数値との間の差が眼内圧力に近似する。
【0011】
本発明の原理に一致した別の実施形態では、本発明は、眼の前房内に配置された第1圧力センサと、排出場所に配置された第2圧力センサとを有する眼内圧力センサシステムである。第1圧力センサからの数値と第2圧力センサからの数値との間の差が前房と排出場所との間の圧力差に近似する。
【0012】
本発明の原理に一致した別の実施形態では、本発明は、排出場所に配置された第1圧力センサと、第1圧力センサから離隔されて配置された離隔圧力センサとを有する眼内圧力センサシステムである。離隔圧力センサは大気圧を測定し又は大気圧の近似値を求める。第1圧力センサからの数値と離隔圧力センサからの数値との間の差が排出場所における圧力に近似する。
【0013】
前述の一般的な説明及び以下の詳細な説明の両方が、模範的なものであり説明のためにのみ存在し、且つ、特許請求の範囲に記載されるような発明の更なる説明を提供することが意図されていることが理解されるべきである。以下の説明及び本発明の実施例が本発明の追加の利点及び目的を説明し且つ提案する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、眼の正面部分の略図である。
図2図2は、本発明の原理に係るIOP測定システムのブロック図である。
図3図3は、本発明の原理に係るIOPセンサの略図である。
図4図4は、本発明のIOPセンサの可能な一つの用途の略図である。
図5図5は、本発明の原理と合致したIOPセンサの端キャップの実装(implementation)である。
図6A図6Aは、本発明の原理に合致したIOPセンサの端キャップの実装の斜視図である。
図6B図6Bは、本発明の原理に合致したIOPセンサの端キャップの実装の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書に取り込まれ且つ本明細書の一部を構成する添付の図面が、説明と共に本発明のいくつかの実施形態を示して、本発明の原理を説明するのに役立つ。
以下、本発明の模範的な実施形態が詳細に参照され、それらの例が添付の図面において示される。可能な限り、同一の参照番号が、図面を通して同一又は同様の部品を参照するのに使用される。
【0016】
図2は、本発明の原理に係るIOP測定システム200のブロック図である。図2では、IOP測定システムは、電源205、(P1、P2、及び/又はP3を含みうる)IOPセンサ210、プロセッサ215、メモリ220、データ伝送モジュール225、及び随意的なスピーカー230を含む。
【0017】
電源205は、典型的にはリチウムイオンバッテリー又はリチウムポリマーバッテリーのような充電可能なバッテリーであるが、他のタイプのバッテリーが用いられてもよい。加えて、任意の他のタイプの動力電池(power cell)が電源205に適切である。電源205は、システム200、特にプロセッサ215に電力を提供する。電源はRFIDリンク又は他のタイプの磁気結合を介して充電されることができる。
【0018】
典型的には、プロセッサ215は、ロジック機能を実行できる、電源ピン、入力ピン、及び出力ピンを備えた集積回路である。様々な実施形態において、プロセッサ215は、対象となる装置のコントローラである。斯かる場合、プロセッサ215は、データ伝送モジュール225、スピーカー230、電源205、又はメモリ220のような特定の装置又は構成要素を対象とする特定の制御機能を実行する。他の実施形態では、プロセッサ215はマイクロプロセッサである。斯かる場合、プロセッサ215は、装置の一つよりも多い構成要素を制御するように機能できるようにプログラム可能である。他の場合、プロセッサ215は、プログラム可能なマイクロプロセッサではなく、代わりに、種々の機能を実行する種々の構成要素を制御するように構成された特殊用途のコントローラである。
【0019】
メモリ220は典型的にはNANDフラッシュメモリのような半導体メモリである。半導体メモリのサイズが非常に小さく且つシステム200のメモリ要求が小さいので、メモリ220はシステム200の非常に小さな設置面積(footprint)を占める。メモリ220はプロセッサ215と連動する。このようにして、プロセッサ215はメモリ220に書き込み且つメモリ220から読み込むことができる。例えば、プロセッサ215は、IOPセンサ210からデータを読み込んでそのデータをメモリ220に書き込むように構成されることができる。この態様では、一連のIOPの数値がメモリ220内に記憶されることができる。プロセッサ215は、他の基本的なメモリ機能、例えば、メモリ220を消去し又は上書きする機能と、メモリ220がいっぱいになったときを検出する機能と、半導体メモリを管理することに関連する他の一般的な機能とを実行することもできる。
【0020】
データ伝送モジュール225は任意の多くの様々なタイプのデータ伝送を用いることができる。例えば、データ伝送モジュール225は無線機のような能動装置(active device)である。データ伝送モジュール225はRFIDタグ上のアンテナのような受動装置であってもよい。この場合、RFIDタグはメモリ220とアンテナの形態のデータ伝送モジュール225とを含む。その後、RFIDリーダーが、メモリ220にデータを書き込み又はメモリ220からデータを読み込むべくシステム200の近くに設置されることができる。典型的には(一定の時間に亘るIOPの数値から成る)メモリ220内に記憶されるデータの量が小さいであろうから、データが転送される速度はあまり重要ではない。メモリ220内に記憶されてデータ伝送モジュール225によって伝送されうる、他のタイプのデータが、限定されるものではないが、電源データ(例えばローバッテリー、バッテリー不良)、スピーカーデータ(警告音、警告声(warning voice))、IOPセンサデータ(IOPの数値、問題の状況)、及びこれらと均等なものを含む。
【0021】
随意的なスピーカー230は、危険な状況が存在するときに患者に警告音又は警告声を提供する。例えば、IOPが、患者に損傷をもたらし又は患者にリスクを与える可能性があるレベルである場合、スピーカー230は、医学的な治療を求め又は点眼剤を投与するように患者を警告すべく警告音を出すことができる。プロセッサ215はIOPセンサ210からIOPの数値を読み込む。プロセッサ215は、閾値よりも大きい一つの又は一連のIOPの数値を読み込んだ場合、その後、警告音を出すようにスピーカー230を作動させることができる。閾値は設定されてメモリ220内に記憶されることができる。この態様では、IOPの閾値は医者によって設定されることができ、IOPの閾値が超えられると、警告音が出されうる。
【0022】
代替的に、データ伝送モジュールは、二次装置、例えば、PDA、携帯電話、コンピュータ、腕時計、この目的だけのためのカスタム装置、リモートアクセス可能なデータ保存サイト(例えばインターネットサーバー、電子メールサーバー、テキストメッセージサーバー)、又は他の電子装置に、上昇したIOPの状況を通信するように作動されてもよい。一つの実施形態では、個人の電子装置がリモートアクセス可能なデータ保存サイト(例えば、インターネットサーバー、電子メールサーバー、テキストメッセージサーバー)にデータをアップロードする。情報が、例えば医療関係者によってリアルタイムに見られうるようにリモートアクセス可能なデータ保存サイトにアップロードされうる。この場合、二次装置はスピーカー230を含んでもよい。例えば、病院の環境において、患者が緑内障手術を受けてシステム200が埋め込まれた後、二次装置は患者の病院ベッドの隣に配置されうる。IOPの変動が(高い側と、同様に危険な状況である低い側との両方において)緑内障手術後によく起こるので、プロセッサ215は、埋め込まれたIOPセンサ210によって作られたIOPの数値を読み込むことができる。プロセッサ215が危険なIOPの状況を読み込んだ場合、データ伝送モジュール225は、スピーカー230を介して又は危険な数値を二次装置に送信することによって患者及び医療スタッフを警告することができる。
【0023】
斯かるシステムは病院の環境外での使用についても適切である。例えば、危険なIOPの状況が存在する場合、プロセッサ215は、可聴な警告音を出すようにスピーカー230を作動させることができる。その後、患者は警告されて医学的な治療を求めることができる。警告は多数の態様において医療専門家によって止められることができる。例えば、データ伝送モジュール225がRFIDタグであるとき、RFIDリンクが外部装置とシステム200との間に築かれることができる。この外部装置は、スピーカー230の電源を切るためにシステム200と通信することができる。代替的に、光信号がシステム200によって読み込まれてもよい。この場合、データ伝送モジュール225は光受容器を有し、光受容器は一連の光パルスを受容することができ、一連の光パルスは、指令、例えばスピーカー230の電源を切るための指令を表す。
【0024】
図3は、本発明の原理に係るIOPセンサの略図である。図3では、IOPセンサは、三つの圧力センサ、P1、P2、及びP3と、排出チューブ430と、バルブ420と、分割器350とから成る。圧力センサP1は前房340内に配置され又は前房340と流体連通し、圧力センサP2は結膜下腔内の排出部位に配置され、圧力センサP3はP1及びP2から離隔されて配置される。圧力センサP1は、前房と流体連通しているルーメン又はチューブ内に配置されてもよい。このようにして、圧力センサP1は前房内の圧力を測定し、圧力センサP2は排出部位において圧力を測定し、圧力センサP3は概して大気圧を測定し又は大気圧に対応する。
【0025】
図3では、チューブ430は眼の前房340から房水を排出する。バルブ420が、チューブ430を通る房水の流れを制御する。圧力センサP1は、バルブ420の上流であり且つ前房340の下流において、チューブ430内の圧力を測定する。この態様では、圧力センサP1は前房340内の圧力を測定する。P1が前房の下流においてチューブ内に配置されるとき(P1が強膜と結膜との間に配置されるときでさえ)、真の前房の圧力と、P1によって測定された圧力との間の期待される測定相違は非常に小さい。例えば、パイプ流れについてのポアズイユの法則は、水の毎分3マイクロリットルの流量について、0.300ミリメーターの内径を有する5ミリメートルの長いチューブを横切る0.01mmHgの圧力低下を予測する。
【0026】
分割器350は圧力センサP3から圧力センサP2を隔てる。圧力センサP2は排出部位(例えば図4における410)において配置される。このようにして、圧力センサP2は、概して房水を収容するポケットにおいて配置され、すなわち濡れた場所に位置する。圧力センサP3は物理的に分割器350によって圧力センサP2から隔てられる。分割器350は、P3の乾いた場所からP2の濡れた場所を隔てる物理的な構造体である。分割器350は、本発明のシステムが単一の基材上に配置されるときに含まれる。この形態では、全ての三つの圧力センサ(P1、P2、及びP3)は基材上に配置され、基材は、チューブ430、バルブ420、分割器350、及びシステムの他の構成部品を含む。
【0027】
本発明の一つの実施形態では、圧力センサP3は、眼に近接して配置される。圧力センサP3は眼内において結膜の下に埋め込まれてもよい。斯かる場合、圧力センサP3は、大気圧と関連付けられうる圧力を測定する。例えば、真の大気圧は圧力センサP3の圧力数値の関数である。P3は、排出場所から隔てられた結膜下腔の乾いた部分に配置されてもよい。場所に拘わらず、圧力センサP3は眼の付近において又は眼の表面において大気圧を測定することが意図される。
【0028】
概して、IOPは、ゲージ圧力数値、すなわち(P1によって測定されるような)眼内の絶対圧力と(P3によって測定されるような)大気圧との間の差である。典型的には約760mmHgの大気圧は大きさが10mmHg又はそれよりも多く変化することが多い。例えば、大気圧は、患者が水泳、ハイキング等をする場合、著しく変化しうる。大気圧における斯かる変動は、IOPが典型的には約15mmHgの範囲内であるので重大である。このため、IOPの24時間監視の間、(P1によって測定されるような)前房についての圧力数値と、(P3によって測定されるような)眼の付近の大気圧についての圧力数値とを有することが望ましい。
【0029】
このため、本発明の一つの実施形態では、圧力数値は、実際のIOPが(P1−P3又はP1−f(P3)として)計算されうるように同時に又はほぼ同時にP1及びP3によって長時間に亘って採られる。P1及びP3の圧力数値はプロセッサ215によってメモリ220内に記憶されることができる。これらは、その後、長期間に亘る実際のIOPが医師によって解釈されうるようにメモリから読み込まれることができる。
【0030】
圧力センサP1、P2、及びP3は眼内における埋め込みに適切な任意のタイプの圧力センサでありうる。これら各々は同じタイプの圧力センサであり又は異なるタイプの圧力センサであってもよい。例えば、圧力センサP1及びP2は(眼内に埋め込まれた)同じタイプの圧力センサであり、圧力センサP3は(眼の付近における)異なるタイプの圧力センサである。
【0031】
本発明の別の実施形態では、圧力センサP1及びP2によって採られた圧力数値は、前房340から房水を排出する装置を制御するのに使用されうる。図4は、圧力センサP1及びP2の数値を利用する本発明のIOPセンサの一つの可能な用途の略図である。図4では、圧力センサP1は眼の前房340内の圧力を測定する。圧力センサP2は排出部位410において圧力を測定する。
【0032】
緑内障を制御すべく前房340から房水を排出するための非常に多くの装置が開発されてきた。これら装置のほとんどは、前房340から排出場所410へ房水を流すチューブの変形である。例えば、前房340から結膜下腔へ房水を流し、このため結膜の下に濾過胞を形成するチューブ、又は前房340から強膜下腔へ房水を流し、このため強膜の下に濾過胞を形成するチューブが開発されてきた。(濾過胞とは、結膜又は強膜の下に形成される流体のポケットであることに留意されたい。)他のチューブ設計は、前房から脈絡膜上腔、毛様体上腔、中心窩空間(juxta-uveal space)、又は脈絡膜へ房水を流す。他の用途では、チューブは、前房から、シュレム管、シュレム菅内のコレクタチャネル、又は強膜上静脈のような任意の多くの様々な血管へ房水を流す。いくつかのチューブでは前房から結膜の外側へ房水を流すことさえある。最後に、いくつかの用途ではチューブは全く使用されない。例えば、線維柱帯切除術(又は他のタイプの濾過手術)では、小さな穴が結膜下腔又は強膜下腔から前房にかけて作られる。この態様では、房水は前房から穴を通って結膜又は強膜の下の濾過胞へ排出される。房水が流れ込むこれら種々の解剖学的場所の各々は排出場所410の例である。
【0033】
図4では、一方の端部上にバルブ420を備えたチューブ430が、一方の端部が前房340内に位置し且つ他方の端部が排出場所410に位置する状態で配置される。この態様では、チューブ430は前房340から排出場所410へ房水を排出する。バルブ420は前房340から排出場所410への房水の流れを制御する。圧力センサP1は前房内に配置され又は前房340と流体連通する。図3の実施形態において示されるように、圧力センサP1はバルブ420の上流に配置される。この態様では、圧力センサP1は結膜下腔内に配置されるが前房340と流体連通している。
【0034】
圧力センサP1が前房340内の圧力を測定し、圧力センサP2が排出場所410において圧力を測定するので、これら二つの圧力センサ(P1−P2)によって採られる数値の差は前房340と排出場所410との間の圧力差の指標を与える。一つの実施形態では、この圧力差は前房340から排出場所410への房水の流量を決定する。
【0035】
前房340を排出場所410へ流す濾過手術に関連する一つの合併症が、低眼圧症、すなわち深刻な結果をもたらしうるIOPの危険な低下である。低眼圧症を防ぐように前房340から排出場所410への房水の流出率を制御することが望ましい。圧力センサP1及び圧力センサP2からの数値は、制御バルブ420によってチューブ430を通した流量を制御するのに使用されうる。例えば、バルブ420は圧力センサP1及び圧力センサP2からの圧力数値に基づいて制御されうる。
【0036】
本発明の別の実施形態では、(圧力センサP1及び圧力センサP3からの数値に基づく)IOPは制御バルブ420によって制御されうる。この態様では、IOPは制御パラメータである。バルブ420は(15mmHgのIOPのような)特定のIOPを維持すべく調整されうる。バルブ420は、特定のIOPを維持すべく日中よりも夜に多く開かれうる。他の実施形態では、IOPの低下が制御されうる。濾過手術の直後、IOPは急激に低下しうる。バルブ420は、圧力センサP1及びP3からの数値に基づいてIOPの漸進的な低下を容認するように調整されてもよい。
【0037】
本発明の別の実施形態では、圧力センサP2(又は圧力センサP2と、P3によって測定されるような大気圧との間の差)からの数値は、濾過胞の形態を制御するようにバルブ420を制御するのに使用されうる。濾過手術と関連した問題の一つが濾過胞の機能不全である。濾過胞は貧弱な構造又は線維症のせいで機能不全になりうる。濾過胞における圧力は、濾過胞の形態を決定する一つの要因である。過剰な圧力によって、濾過胞が望ましくない場所へ移動せしめられ、又は線維症が引き起こされうる。濾過胞の圧力は、(排出場所410において、この場合濾過胞において)圧力センサP2からの数値を使用することによって制御されうる。本発明の一つの実施形態では、(P2によって測定されるような)濾過胞における圧力と(P3によって測定されるような)大気圧との間の差が、所望の濾過胞圧力を維持すべくバルブ420を制御するのに使用されうる。この態様では、本発明のIOP圧力センサは、濾過胞を適切に維持するのにも使用されることができる。
【0038】
バルブ420はマイクロプロセッサ215又は適切なPID制御器によって制御されうる。(所望の流量に相当する)所望の圧力差が、バルブ420の作動を制御することによって維持されうる。同様に、所望のIOP、IOP変化率、又は濾過胞圧力が、バルブ420の作動を制御することによって制御されうる。
【0039】
バルブ420は、バルブとして描写されているが、前房340から排出場所410への房水の流れを測定し、制限し、又は容認する任意の多くの様々な流れ制御構造体であってもよい。加えて、バルブ420はチューブ430内のどこかに又はチューブ430に沿って配置されうる。
【0040】
最後に、本IOPセンサについての他の多くの同様な使用がある。例えば、様々な圧力数値は、チューブ420がいくつかの望ましくない態様において閉塞され又は遮られているかどうか判定するのに使用されうる。このようにして、排出装置の機能不全が検出されうる。前房340を排出場所410へ流す自己除去ルーメン(self clearing lumen)では、望ましくない閉塞が、P1、P2、及び/又はP3の圧力数値に基づいて除去されうる。
【0041】
図5は、本発明の原理と一致したIOPセンサの端キャップの実装である。図5では、圧力センサP1及びP3が端キャップ510内に組み込まれる。端キャップ510は、流体密封シールを形成するようにチューブ430内に収まる。チューブ430の一方の端部は前房340内に存在し、(端キャップ510が配置される)チューブ430の他方の端部は前房340の外側に配置される。典型的には、チューブ430の一方の端部は前房340内に存在し、他方の端部は結膜下腔内に存在する。この態様では、圧力センサP1は前房340と流体連通する。前房340と、前房340と流体連通しているチューブ430の内部との間の圧力差がほとんどないので、圧力センサP1は前房340内の圧力を測定する。圧力センサP3は、前房340の外部にあり、且つ大気圧を測定し又は大気圧と関連付けられうる。
【0042】
典型的には、チューブ430は、緑内障濾過手術のときには、前房340を結膜下腔にブリッジすべく眼内に設置される。この場合、P3は結膜下腔に存在する。この形態では、P3は、大気圧に非常に近い圧力又は単純な機能の使用を通して大気圧に関連付けられうる圧力を測定する。プラグ510がチューブ430に流体密封シールを提供するので、圧力センサP3は圧力センサP1から分離される。このため、正確なIOP数値がP1の圧力数値とP3の圧力数値の間の差(P1−P3)として採られうる。一つの実施形態では、単一の薄膜520が、センサパッケージ内に存在し、一方の側(チューブ側)においてP1に曝され且つ他方の側(分離側)においてP3に曝される。このため、膜520上の正味の圧力がセンサによって記録され、IOPに対応するゲージ数値が与えられる。
【0043】
図6A及び図6B図5の端キャップの実装の斜視図である。この実施形態では、圧力センサP1は、チューブ430の内側に配置されうるように端キャップ510の一方の端部上に配置される。圧力センサP3は、チューブ430の外側に配置されうるように端キャップ510の他方の端部上に配置される。膜520はP3からP1を隔てる。この態様では、圧力センサP1は圧力センサP3から分離される。圧力センサP1及びP3は、端キャップ510内の膜520の両面上に配置されるように描写されているが、圧力測定を促進すべく任意の適切な位置において端キャップ510と一体に配置されてもよい。
【0044】
上記から、本発明が、IOPを測定するためのシステムを提供することが理解されうる。本発明はIOPセンサに外部圧力補償を提供する。本発明は本明細書において例によって示され、様々な修正が当業者によってなされうる。
【0045】
本発明の他の実施形態が、本明細書と、本明細書において開示された本発明の実施例とを考慮すると、当業者にとって明らかであるだろう。本明細書及び例が単なる模範的なものとしてみなされ、本発明の真の範囲及び思想は以下の特許請求の範囲によって示されることが意図されている。
図1
図2
図3
図4
図5
図6A
図6B