特許第5654673号(P5654673)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5654673
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】光源制御方法
(51)【国際特許分類】
   H01S 3/131 20060101AFI20141218BHJP
   H01S 3/10 20060101ALI20141218BHJP
   H01S 5/068 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   H01S3/131
   H01S3/10 Z
   H01S5/068
【請求項の数】7
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2013-516329(P2013-516329)
(86)(22)【出願日】2012年5月17日
(86)【国際出願番号】JP2012062684
(87)【国際公開番号】WO2012161092
(87)【国際公開日】20121129
【審査請求日】2013年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2011-115979(P2011-115979)
(32)【優先日】2011年5月24日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】597036581
【氏名又は名称】株式会社メガオプト
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(72)【発明者】
【氏名】角井 素貴
(72)【発明者】
【氏名】玉置 忍
【審査官】 杉山 輝和
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−152560(JP,A)
【文献】 特開2010−226096(JP,A)
【文献】 特開2011−243832(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S3/00−3/30
H01S5/00−5/50
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接変調され、パルス光を出力する半導体レーザと、前記半導体レーザから出力されるパルス光を入力し、その入力パルス光の波長帯域のうちの前記入力パルス光のピーク波長より短波長側および長波長側の一方を他方より減衰させた成形パルス光を出力する光フィルタと、そして、前記光フィルタから出力された成形パルス光を増幅し、その増幅パルス光を出力する光ファイバ増幅器と、前記光ファイバ増幅器に前記パルス光を増幅するための励起光を供給する励起光源と、を備えたパルス光源を用意し、
前記光ファイバ増幅器から出力される増幅パルス光について、前記半導体レーザの温度、前記励起光のパワーと、繰返し周波数とパルス半値全幅との関係データを有し、
前記関係データに基づき、前記半導体レーザの温度および前記励起光のパワーを調整することにより、前記光ファイバ増幅器から出力される増幅パルス光について、所定の繰返し周波数において所定のパルス半値全幅を実現するようフィードフォワード制御を行う光源制御方法。
【請求項2】
前記所定のパルス半値全幅が1ns未満であることを特徴とする請求項1に記載の光源制御方法。
【請求項3】
前記所定のパルス半値全幅が500ps未満であることを特徴とする請求項に記載の光源制御方法。
【請求項4】
前記所定のパルス半値全幅が300ps未満であることを特徴とする請求項に記載の光源制御方法。
【請求項5】
前記所定の繰返し周波数が600kHz以下であることを特徴とする請求項1に記載の光源制御方法。
【請求項6】
直接変調され、パルス光を出力する半導体レーザと、前記半導体レーザから出力されるパルス光を入力し、その入力パルス光の波長帯域のうちの前記入力パルス光のピーク波長より短波長側および長波長側の一方を他方より減衰させた成形パルス光を出力する光フィルタと、そして、前記光フィルタから出力された成形パルス光を増幅し、その増幅パルス光を出力する光ファイバ増幅器と、を備えたパルス光源を用意し、
前記光ファイバ増幅器から出力される増幅パルス光のパルス半値全幅をモニタし、このパルス半値全幅モニタ結果と所定のパルス半値全幅との比較に基づいて前記半導体レーザの温度調整することにより、前記光ファイバ増幅器から出力される増幅パルス光について、所定の繰返し周波数において前記所定のパルス半値全幅を実現するようフィードバック制御を行う光源制御方法。
【請求項7】
前記半値全幅モニタ結果が前記所定のパルス半値全幅と比較して広いときに前記半導体レーザの温度を上げ、前記半値全幅モニタ結果が前記所定のパルス半値全幅と比較して狭いときに前記半導体レーザの温度を下げることを特徴とする請求項に記載の光源制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直接変調された半導体レーザから出力されるパルス光を光ファイバ増幅器により増幅し、該増幅パルス光を繰返し出力するパルス光源を制御する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
パルス光源は、レーザ加工等に代表される産業用途に用いられる。一般に、微細な加工対象のレーザ加工において、パルスレーザ光のパルス幅を一定に制御することは、周囲への熱影響を含めた加工品質を管理する上で重要である。その一方で、加工対象に応じて要求されるスループットなどは様々であり、パルス光出力の繰返し周波数は用途に応じて最適化が必要となる。なお、パルス幅の制御は、微細加工に限らず、光計測や通信、医療応用の分野でも重要である。特許文献1には、出力パルス光のパルス幅を圧縮する発明が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−152560号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
発明者らは、上述のような従来のパルス光源のパルス幅制御について詳細に検討した結果、以下のような課題を発見した。すなわち、上記特許文献1に記載されたパルス光源は、出力パルス光のパルス幅を圧縮する上で有効である。しかし、上記特許文献1の図13に示されたように、光ファイバ増幅器の過渡応答により、パルス光出力の繰返し周波数が低いとパルス幅が増大する。即ち、上記特許文献1によれば、繰返し周波数が100kHzであるときにパルスの半値全幅(以下、パルス半値全幅といい、単にパルス幅又はFWHMと表す場合もある)は0.56nsであるが、繰返し周波数が2.5MHzであるときにはFWHMは0.41nsとなっている。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決するためになされたものであり、出力パルス光のパルス幅(FWHM)の繰返し周波数依存性を低減可能にする光源制御方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る光源制御方法は、直接変調される半導体レーザを種光源として含むパルス光源を用意し、出力パルス光のパルス幅の繰返し周波数依存性を低減させる。具体的に、パルス光源は、半導体レーザと、光フィルタと、光ファイバ増幅器と、を備え、MOPA(Master Oscillator Power Amplifier)構造を有する。半導体レーザは、直接変調され、パルス光を出力する。光フィルタは、半導体レーザから出力されるパルス光を入力し、その入力パルス光の波長帯域のうちのパルス光のピーク波長より短波長側および長波長側の一方を他方より減衰させた成形パルス光を出力する。光ファイバ増幅器は、光フィルタから出力された成形(shaped)パルス光を増幅し、その増幅パルス光を出力する。そして、当該光源制御方法では、第1の態様として、半導体レーザの温度を調整することにより、光ファイバ増幅器から出力される増幅パルス光について、所定の繰返し周波数において所定のパルス半値全幅を実現する。また、当該光源制御方法では、上記第1の態様に適用可能な第2の態様として、更に光ファイバ増幅器の励起光パワーを制御することにより、光ファイバ増幅器から出力される増幅パルス光について、所定の繰返し周波数において所定のパルスの半値全幅を実現するのが好適である。さらに、上記第1および第2の態様の少なくともいずれかに適用可能な第3〜第5の態様として、所定のパルス半値全幅は少なくとも1ns未満、好ましくは500ps未満、更に好ましくは300ps未満である。また、上記第1および第2の態様の少なくともいずれかに適用可能な第6の態様として、所定の繰返し周波数は600kHz以下であるのが好適である。
【0007】
本発明の光源制御方法は、上記第1および第2の態様の少なくともいずれかに適用可能な第7の態様として、半導体レーザの温度と繰返し周波数とパルス半値全幅との間の関係を予め求めておく。この関係は、温度、繰り返し周波数、パルス半値全幅の予め得られた測定値をテーブル化し、この測定値テーブルをメモリに格納しておくことにより実現可能である。第7の態様では、この関係(予めメモリに格納されたテーブルにより関係付けられた測定値)に基づいて半導体レーザの温度調整をフィードフォワード制御することにより、光ファイバ増幅器からの増幅パルス光について、所定の繰返し周波数において所定のパルス半値全幅が実現されるのが好適である。
【0008】
さらに、上記第1および第2の態様の少なくともいずれかに適用可能な第8の態様として、本発明に係る光源制御方法は、光ファイバ増幅器から出力される増幅パルス光の半値全幅をモニタし、この半値全幅モニタ結果に基づいて半導体レーザの温度調整をフィードバック制御することにより、光ファイバ増幅器から出力される増幅パルス光について、所定の繰返し周波数において所定のパルス半値全幅を実現するのが好適である。特に、上記第8の態様に適用可能な第9の態様として、半値全幅モニタ結果が所定のパルス半値全幅と比較して広いときに半導体レーザの温度が上げられ、半値全幅モニタ結果が所定のパルスの半値全幅と比較して狭いときに半導体レーザの温度が下げられるのが好適である。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、出力パルス光のパルス幅(FWHM)の繰返し周波数依存性が好適に低減され得る。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】は、本発明に係るパルス光源の一実施形態の構成を示す図である。
図2】は、図1のパルス光源からの出力パルス光(増幅パルス光)のパルス波形を示す図である。
図3】は、図1のパルス光源からの出力パルス光のパルス波形を示す図である。
図4】は、図1のパルス光源からの出力パルス光のパルス波形を示す図である。
図5】は、図1のパルス光源からの出力パルス光のパルス波形を示す図である。
図6】は、図1のパルス光源からの出力パルス光のパルス波形を示す図である。
図7】は、図1のパルス光源からの出力パルス光のパルス波形を示す図である。
図8】は、図1のパルス光源からの出力パルス光のパルス波形を示す図である。
図9】は、図1のパルス光源からの出力パルス光のパルス波形を示す図である。
図10】は、図1のパルス光源からの出力パルス光のパルス波形を示す図である。
図11】は、図1のパルス光源からの出力パルス光のパルス波形を示す図である。
図12】は、図1のパルス光源からの出力パルス光のパルス波形を示す図である。
図13】は、図1のパルス光源からの出力パルス光のパルス波形を示す図である。
図14】は、図1のパルス光源からの出力パルス光のパルス幅(FWHM)と繰返し周波数との関係を示すグラフである。
図15】は、図1のパルス光源からの出力パルス光のパルス幅(FWHM)と種光源の温度との関係を示すグラフである。
図16】は、図1のパルス光源からの出力パルス光のパルス幅(FWHM)と種光源の温度との関係を示すグラフである。
図17】は、本発明に係るパルス光源の他の実施形態の構成を示す図である。
図18】は、本発明に係るパルス光源の更に他の実施形態の構成を示す図である。
図19】は、出力パルス光のFWHMの制御アルゴリズムを説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明において同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0012】
図1は、本発明に係るパルス光源の一実施形態の構成を示す図である。図1において、パルス光源1は、MOPA構造を有し、種光源10および光ファイバ増幅器20と、を備える。種光源10は、100kHz〜1MHzにおよぶ高い繰返し周波数と、繰返し周波数に依存せずに一定のパルス幅を実現できるよう、駆動電流0〜220mAの範囲で直接パルス変調される1060nm帯ファブリーペロ半導体レーザを含む。
【0013】
光ファイバ増幅器20は、プリアンプ21およびブースタアンプ22を含む。プリアンプ21は、YbDF110、バンドパスフィルタ120、YbDF130、バンドパスフィルタ140およびYbDF150等を含む。ブースタアンプ22は、YbDF160等を含む。プリアンプ21およびブースタアンプ22それぞれは、光ファイバ増幅器であり、種光源10から繰返し出力されたパルス光を増幅し、エンドキャップ30から増幅パルス光を出力させる。このパルス光源1は、レーザ加工に好適である波長1060nm付近のパルス光を出力する。
【0014】
YbDF110,130,150,160は、種光源10から出力される波長1060nm付近のパルス光を増幅する光増幅媒体であり、石英ガラスからなる光ファイバのコアに活性物質としてYb元素が添加されている。YbDF110,130,150,160は、励起光波長と被増幅光波長とが互いに近くパワー変換効率的の点で有利であり、また、波長1060nm付近において高い利得を有する点で有利である。これらYbDF110,130,150,160は、4段の光ファイバ増幅器を構成している。
【0015】
第1段のYbDF110には、光カプラ113および光カプラ111を経由した励起光源112からの励起光が順方向に供給される。そして、YbDF110が光アイソレータ114および光カプラ111を経由した種光源10からのパルス光を増幅し、該増幅されたパルス光が光アイソレータ115を介して出力される。
【0016】
バンドパスフィルタ120は、光アイソレータ115を経由した第1段のYbDF110からの増幅パルス光を入力し、その入力パルス光の波長帯域のうちの短波長側および長波長側の一方を他方より減衰させた成形パルス光を出力する。
【0017】
第2段のYbDF130には、光カプラ113および光カプラ131を経由した励起光源112からの励起光が順方向に供給される。そして、YbDF130は、光カプラ131を経由したバンドパスフィルタ120からのパルス光を増幅し、該増幅されたパルス光を出力する。
【0018】
バンドパスフィルタ140は、第2段のYbDF130からの増幅パルス光を入力し、その入力パルス光の波長帯域のうちの短波長側および長波長側の一方を他方より減衰させた成形パルス光を出力する。
【0019】
第3段のYbDF150には、光カプラ151を経由した励起光源152からの励起光が順方向に供給される。そして、YbDF150は、光アイソレータ153および光カプラ151を経由したバンドパスフィルタ140からのパルス光を増幅し、該増幅されたパルス光を出力する。
【0020】
第4段のYbDF160には、光コンバイナ161を経由した励起光源162〜167それぞれからの励起光が順方向に供給される。そして、YbDF160が光アイソレータ168および光コンバイナ161を経由した第3段のYbDF150からのパルス光を更に増幅し、該増幅されたパルス光がエンドキャップ30を介して当該パルス光源1の外部へ出力される。
【0021】
より好適な構成例は以下のとおりである。YbDF110,120,130それぞれは、単一クラッド構造のAl共添加石英系YbDFであり、Al濃度が5wt%であり、コア径が7μmであり、クラッド径が125μmであり、915nm帯励起光非飽和吸収が70dB/mであり、975nm帯励起光非飽和吸収ピークが240dB/mであり、長さが7mである。第4段のYbDF160は、二重クラッド構造を有するAl共添加石英系YbDFであり、Al濃度が1wt%であり、コア径が10μmであり、クラッド径が125μmであり、915nm帯励起光非飽和吸収が1.5dB/mであり、長さが3.5mである。
【0022】
YbDF110,130,150,160に供給される励起光の波長は何れも0.98μm帯である。第1段のYbDF110に供給される励起光は、パワーが200mWであって、単一モードである。第2段のYbDF130に供給される励起光は、パワーが200mWであって、単一モードである。第3段のYbDF150に供給される励起光は、パワーが400mWであって、単一モードである。また、第4段のYbDF160に供給される励起光は、パワーが12〜24Wであって、マルチモードである。なお、以降では、第4段のYbDF160に供給される励起光のパワーが24Wであるとき100%として、これとの相対比で当該励起光パワーを表す。
【0023】
バンドパスフィルタ120,140それぞれの中心波長を、敢えて種光源10の出力光スペクトルの最大強度波長から短波長側または長波長側にシフトさせることで、種光源10から出力される種光のうちチャーピング成分だけを切り出すことができる。そして、その後に該光を増幅することにより、短パルス幅のパルス光を生成することができる。また、バンドパスフィルタ120,140それぞれはASE光を除去することができる。バンドパスフィルタ120,140それぞれの透過スペクトルのFWHMは例えば1ns以下に維持される。
【0024】
図2図13それぞれは、パルス光源1からの出力パルス光のパルス波形を示す図である。これらの図において、グラフG210、G310,G410,G510,G610,G710,G810,G910,G1010,G1110,G1210,G1310の合計12本のグラフは、第4段のYbDF160の励起光パワーを30%とした場合の出力パルス光のパルス波形を示す。グラフG220、G320,G420,G620,G720,G820,G920,G1020,G1120,G1220の合計10本のグラフは、第4段のYbDF160の励起光パワーを50%とした場合の出力パルス光のパルス波形を示す。グラフG230、G330,G430,G530,G630,G730,G830,G1030,G1130,G1230,G1330の合計11本のグラフは、第4段のYbDF160の励起光パワーを70%とした場合の出力パルス光のパルス波形を示す。グラフG240、G340,G440,G540,G640,G740,G840,G940,G1040,G1140,G1240,G1340の合計12本のグラフは、第4段のYbDF160の励起光パワーを100%とした場合の出力パルス光のパルス波形を示す。
【0025】
図2図5は、種光源10の温度を17℃に設定した場合の出力パルス光のパルス波形を示す。そのうち、図2は繰返し周波数を100kHzとしたときのパルス波形(グラフG210〜G240)を示し、図3は繰返し周波数を300kHzとしたときのパルス波形(グラフG310〜G340)を示し、図4は繰返し周波数を600kHzとしたときのパルス波形(グラフG410〜G440)を示し、図5は繰返し周波数を1000kHzとしたときのパルス波形(グラフG510,G530〜G540)を示す。
【0026】
図6図9は、種光源10の温度を27℃に設定した場合の出力パルス光のパルス波形を示す。そのうち、図6は繰返し周波数を100kHzとしたときのパルス波形(グラフG610〜G640)を示し、図7は繰返し周波数を300kHzとしたときのパルス波形(グラフG710〜G740)を示し、図8は繰返し周波数を600kHzとしたときのパルス波形(グラフG810〜G840)を示し、図9は繰返し周波数を1000kHzとしたときのパルス波形(グラフG910〜G920,G940)を示す。
【0027】
また、図10図13は、種光源10の温度を37℃に設定した場合の出力パルス光のパルス波形を示す。そのうち、図10は繰返し周波数を100kHzとしたときのパルス波形(グラフG1010〜G1040)を示し、図11は繰返し周波数を300kHzとしたときのパルス波形(グラフG1110〜G1140)を示し、図12は繰返し周波数を600kHzとしたときのパルス波形(グラフG1210〜G1240)を示し、図13は繰返し周波数を1000kHzとしたときのパルス波形(グラフG1310〜G1320,G1340)を示す。
【0028】
図2図13から判るように、全般的に、繰返し周波数が高いほどFWHM(パルス幅)は狭く、また、4段目YbDF160の励起パワーが低いほどFWHMは狭くなる。
【0029】
なお、図14は、パルス光源1からの出力パルス光のFWHMと繰返し周波数との関係を示すグラフである。図14において、グラフG1410は、種光源10の温度17℃において励起光パワーを100%とした場合の関係、グラフG1420は、種光源10の温度17℃において励起光パワーを70%とした場合の関係、グラフG1430は、種光源10の温度17℃において励起光パワーを50%とした場合の関係をそれぞれ示す。グラフG1440は、種光源10の温度27℃において励起光パワーを100%とした場合の関係、グラフG1450は、種光源10の温度27℃において励起光パワーを70%とした場合の関係、グラフG1460は、種光源10の温度27℃において励起光パワーを50%とした場合の関係をそれぞれ示す。グラフG1470は、種光源10の温度37℃において励起光パワーを100%とした場合の関係、グラフG1480は、種光源10の温度37℃において励起光パワーを70%とした場合の関係、グラフG1490は、種光源10の温度37℃において励起光パワーを50%とした場合の関係をそれぞれ示す。
【0030】
図15および図16は、パルス光源1からの出力パルス光のFWHMと種光源10の温度との関係を示すグラフである。図15は第4段のYbDF160の励起光パワーを100%とした場合のグラフを示し、具体的には、グラフG1510は繰返し周波数が100kHzの場合の関係、グラフG1520は繰返し周波数が300kHzの場合の関係、グラフG1530は繰返し周波数が600kHzの場合の関係、グラフG1540は繰返し周波数が1MHzの場合の関係をそれぞれ示す。また、図16は第4段のYbDF160の励起光パワーを70%とした場合のグラフを示し、具体的には、グラフG1610は繰返し周波数が100kHzの場合の関係、グラフG1620は繰返し周波数が300kHzの場合の関係、グラフG1630は繰返し周波数が600kHzの場合の関係、グラフG1640は繰返し周波数が1MHzの場合の関係をそれぞれ示す。
【0031】
出力パルス光のFWHMは少なくとも1ns未満、好ましくは500ps未満、更に好ましくは300ps未満であるが、例えば、出力パルス光のFWHMを300ps程度で一定にしたい場合は、繰返し周波数が100kHzであれば種光源温度を35.5℃とするとともに4段目YbDF160の励起パワーを100%とし、繰返し周波数が300kHzであれば種光源温度を34.0℃とするとともに4段目YbDF160の励起パワーを100%とし、繰返し周波数が600kHzであれば種光源温度を27.0℃とするとともに4段目YbDF160の励起パワーを100%とすればよい。このように種光源10の温度を制御することで、繰返し周波数100kHz〜600kHzの範囲で、出力パルス光のFWHMを300psに維持することができる。
【0032】
或いは、例えば、出力パルス光のFWHMを200psに維持したい場合、一例として、繰返し周波数が100kHzあれば種光源10の温度を37.0℃とするとともに4段目YbDF160の励起パワーを70%とする。また、繰返し周波数が300kHzあれば種光源10の温度を34.0℃とするとともに4段目YbDF160の励起パワーを70%としてもよい。繰返し周波数が600kHzあれば種光源10の温度を27.0℃とするとともに4段目YbDF160の励起パワーを70%としてもよい。繰返し周波数が1MHzあれば種光源の温度を27.0℃とするとともに4段目YbDF160の励起パワーを100%としてもよい。このように種光源10の温度および4段目YbDF160の励起パワーを制御することで、繰返し周波数100kHz〜1MHzの範囲で、出力パルス光のFWHMを200psに維持することができる。
【0033】
ただし、4段目YbDF160の励起パワーの制御に関しては、出力パルス光のピーク値まで減衰させてしまっては加工品質に影響が及ぶ。そのため、光ファイバ増幅部の小信号利得および光ファイバ中の非線形光学効果の双方または何れか一方の要因により飽和している領域内で出力パルス光のピーク値を制御することが望ましい。図2図13に示されたグラフでは、4段目YbDF160の励起パワーが70〜100%の範囲が、これに相当する。
【0034】
なお、上述のような出力パルス光のFWHM制御に際しては、様々な条件(繰返し周波数、種光源10の温度および4段目YbDF励起パワーを含む条件)にてパルス光源1の出力パルス光のFWHMを予め計測して求めておき、この結果に基づいてフィードフォワード制御により種光源10の温度および4段目YbDF励起パワーを調整することにより、出力パルス光について、所定の繰返し周波数において所定のパルス幅(FWHM)を実現するのが好適である。このようなフィードフォワード方式による制御は、装置コストを低減する上で好適である。
【0035】
図17および図18は、本発明に係るパルス光源の他の実施形態の構成を示す図である。これらの図に示されるパルス光源1A,1Bは、フィードバック制御を行う光源である。このようなフィードバック制御は、加工品質の安定化の保証という点で、より優れている。なお、フードフォワード制御を実現する場合、図17および図18に示された構成のうち、出力パルス光をモニタする構成(エンドキャップ30の下流側に配置されたビームスプリッタ、PD44、デジタルオシロスコープ45)は不要である。
【0036】
図17に示されたパルス光源1Aは、ペルチエ素子41により種光源10の温度を調整し、温度設定部43により種光源10の温度設定値Trefをメモリ50に記憶しておき、種光源10の温度測定値が温度設定値Trefになるようにオペアンプ42によりペルチエ素子41を制御する。また、パルス光源1Aは、エンドキャップ30から出力されるパルス光の一部をビームスプリッタにより分岐し、PD44で受光された当該分岐光のFWHMをデジタルオシロスコープ45によりモニタする。なお、フィードフォワード制御の場合、メモリ50には、条件(繰返し周波数、種光源10の温度および4段目YbDF励起パワーを含む条件)にて予め測定されたパルス光源1の出力パルス光のFWHMの測定値が、各条件と関係付けられたテーブルとして格納されている。
【0037】
そして、パルス光源1Aでは、制御部46Aが、このFWHMのモニタ結果に基づいてフィードバック制御を行う。パルス光源1Aは、このフィードバック制御により、温度設定部43における種光源10の温度設定値Trefを調整することで種光源10の温度を調整し、出力パルス光について、所定の繰返し周波数において所定のパルス幅(FWHM)を実現する。このとき、FWHMモニタ結果が所定のパルス幅(FWHM)と比較して広ければ種光源10の温度を上げ、FWHMモニタ結果が所定のパルス幅(FWHM)と比較して狭ければ種光源10の温度を下げる。
【0038】
図18に示されるパルス光源1Bは、制御部46Aに替えて制御部46Bを含む。パルス光源1Bでは、制御部46Bが、FWHMのモニタ結果に基づいてフィードバック制御を行う。パルス光源1Bは、このフィードバック制御により、温度設定部43における種光源10の温度設定値Trefを調整することで種光源10の温度を調整し、また、4段目YbDF160の励起パワーを調整して、出力パルス光について、所定の繰返し周波数において所定のパルス幅(FWHM)を実現する。
【0039】
出力パルス光のFWHMの制御アルゴリズムは以下のようなものが好適である。すなわち、図19に示されたように、まず、ステップS1で種光源10の温度を可変範囲の中で調整し、これでも所望の出力パルス光のFWHMが実現できなかった場合は、ステップS2で4段目YbDF160の励起パワーを調整する。所望の出力パルス光のFWHMがステップS1,S2での調整可能な値より広い場合は、ステップS3で種光源10の変調信号のパルス幅、バイアスレベルおよび振幅の何れかを調整する。ステップS1での温度調整は、繰返し周波数600kHz以下の条件にて行うことが望ましい。図15および図16に示されたとおり、繰返し周波数が600kHzを超えると、出力パルス光のFWHMの種光源10の温度への依存性が単調ではなくなる。
【0040】
ステップS1〜S3の調整でも所望の出力パルス光のFWHMが達成できない場合は、フィードフォワード制御およびフィードバック制御の何れであっても、制御部より何らかのアラーム(操作パネル上のLEDの点灯または制御ソフト上のエラーメッセージ)を出力することが望ましい。
【符号の説明】
【0041】
1,1A,1B…パルス光源、10…種光源、20…光ファイバ増幅器、21…プリアンプ、22…ブースタアンプ、30…エンドキャップ、50…メモリ、110…YbDF、111…光カプラ、112…励起光源、113…光カプラ、114,115…光アイソレータ、120…バンドパスフィルタ、130…YbDF、131…光カプラ、140…バンドパスフィルタ、150…YbDF、151…光カプラ、152…励起光源、153…光アイソレータ、160…YbDF、161…光コンバイナ、162〜167…励起光源、168…光アイソレータ。
図1
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