(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記制御ピストン及び前記反力ピストンに対して可動であり、且つ前記制御ピストン及び前記反力ピストンによって応力を加えられるように作られている剛体の滑動部(126−426)であって、前記反力ピストン(140−440)は、前記滑動部内を好適に伸張している、剛体の滑動部を備えている、請求項1〜3の何れか一項に記載のシミュレータ。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従って、本発明の目的は、この欠点を克服することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このため、本発明によれば、以下の様な、車両のブレーキ倍力装置用の三方向弁シミュレータ、即ち、
−制御ピストンと、
−シミュレータが休止しているときは制御ピストンから離れている反力ピストンと、を備えており、
且つ、シミュレータは、制御ピストンを、シミュレータの外側から伝達されてきたコマンドの影響下にあるときには、反力ピストンの方向に所定の行程に亘って、反力ピストンに応力を伝達することなく動かすことができるように、作られている、三方向弁シミュレータが提供されている。
【0009】
このように、真空供給源が故障した場合は、シミュレータ内の2つのピストンの間に相互作用がない限り、特に、制御ピストンの行程の開始時には、運転者は、反力ピストンに応力を発生させることはなく、従って、自分のエネルギーの一部を不必要に浪費することはない。運転者は、従って、このエネルギーのより多くを、制動システムを作動させるのに充てることができる。
【0010】
好適なことに、シミュレータは、制御装置のロッドとマスターシリンダーのピストンとの間の非連結遊びが、所定の行程が完了する前に、削除され(両者が接触した状態になっているように)るように、作られている。従って、本システムは、運転者がブレーキ液回路に圧力を加え始める前に、運転者のエネルギーの相当な部分を浪費してしまうことはない。
【0011】
本発明によるシミュレータは、追加的に、以下の特徴の少なくとも何れか、即ち、
−シミュレータは、制御ピストンが、応力を反力ピストンに直接伝達するように作られている、
−シミュレータは、
−エンクロージャと、
−それぞれがエンクロージャと連通することのできる3本のダクトと、
−マスターシリンダーダクトという名で、シミュレータのエンクロージャとは連通することができず、反力ピストンを動かすために流体圧力を反力ピストンに伝達するように作られている、ダクトと、を備えている、
−シミュレータは、制御ピストン及び反力ピストンに対して可動であり、且つ制御ピストン及び反力ピストンによって応力を加えられるように作られている剛体の滑動部であって、反力ピストンは、前記滑動部内を好適に伸張している、剛体の滑動部を備えている、
−シミュレータは、滑動部と、シミュレータのケーシングとに押し付けられているスプリングを備えている、
−シミュレータは、シミュレータが休止しているときは予荷重スプリングによって反力ピストンの方向に応力が掛けられている予荷重部材であって、これに対して、反力ピストンが、制御ピストンの方向に押し付けられている、予荷重部材を備えている、
−シミュレータは、シミュレータが休止しているときは、予荷重部材がシミュレータのケーシングに押し付けられるように作られている、の何れかを有していてもよい。
【0012】
好適なことに、シミュレータは、
−作動ダクトという名のダクトと、
−真空ダクトという名のダクトと、
−大気ダクトという名の第1ダクトとを備えており、
シミュレータは、作動ダクトを、真空ダクト及び第1大気ダクトと、随意的に連通させることができ、シミュレータは、少なくとも第2大気ダクトを備えていて、作動ダクトを、第1大気ダクトと連通させる前に第2大気ダクトと連通させることができるようになっている。
【0013】
このように、シミュレータは、作動チャンバへの大気の吸入が、先ず第1流量で起こり、次に第2流量で起こるように作られている。而して、第1期間の間に、乱れを生じる危険性を減らす流量を選定することができる。これとは関係なく、第2期間の間には、一旦乱れの危険性が取り除かれると、別の流量、例えばより高い流量を提供することができる。このように、第1流量は、乱れが現れるかもしれない期間中、乱れの危険性が取り除かれて第2流量に移行する前に設定されている。空気を作動チャンバに吸入し始めるときに空気の流量をこのように良好に制御することによって、運転者がペダルで望ましくない乱れを感知するのが防止される。
【0014】
好適なことに、シミュレータは、
−エンクロージャと、それぞれがエンクロージャと直接連通することのできる3本のダクトとを有するケーシングと、
−エンクロージャの中を伸張する滑動部と、
−ピストンと滑動部とに押し付けられているスプリングと、
−マスターシリンダーダクトという名のダクトであって、流体圧力を滑動部に、制御ピストンとは独立して、この圧力が滑動部に制御ピストンとは反対の方向に応力を掛けるように伝達するように作られている、ダクトと、を備えている。
【0015】
このように、最初のジャンプ位相の間に、制御ピストンは滑動部に応力を掛けるが、この滑動部は、更に、制動回路内で上がっていく圧力によって同じ方向に駆動される。従って、運転者は、係合力を供給した後は、もはや制動回路内の圧力を上げ続けるために追加の力を提供する必要は無い。運転者がしなければならないことは、制動部材、例えばブレーキペダルを、制動回路内の圧力を上げるために更に動かすことだけである。従って、運転者は、制動状態を、ベダルに掛ける力ではなく、ペダルの行程を調節することによって、制御する。このように、制動状態は、ジャンプ位相の間に、一定の力によって生じる。得られる制動状態の強さは、ベダルに掛ける力ではなく、ペダルの行程の関数である。従って、運転者のエネルギーは、大部分が留保される。運転者は、従って、緊急時に、周囲の環境によって強い制動が必要になったときに、高レベルのエネルギーを発動させることができる。
【0016】
更に、本発明によれば、以下のような制動システム、即ち、
−制御装置と、
−本発明に従って制御装置によって制御されるように作られているシミュレータと、
−シミュレータによって制御することができるブレーキ倍力装置であって、制御装置が、流体圧力の介在無しにブレーキ倍力装置に締結されているマスターシリンダーに応力を掛ける構造を有することができるように、制御装置に剛に締結されている、ブレーキ倍力装置と、を備えている制動システムが提供されている。
【0017】
本発明のこの他の特徴及び利点は、非限定的な例として示す数多くの実施形態に関する以下の説明を、添付図面を参照しながら読んで頂ければ明白になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の第1の実施形態によるシミュレータの軸方向断面図であり、そのオペレーションの数多くの個々のステップを示している。
【
図2】本発明の第1の実施形態によるシミュレータの軸方向断面図であり、そのオペレーションの数多くの個々のステップを示している。
【
図3】本発明の第1の実施形態によるシミュレータの軸方向断面図であり、そのオペレーションの数多くの個々のステップを示している。
【
図4】本発明の第1の実施形態によるシミュレータの軸方向断面図であり、そのオペレーションの数多くの個々のステップを示している。
【
図5】本発明の第1の実施形態によるシミュレータの軸方向断面図であり、そのオペレーションの数多くの個々のステップを示している。
【
図6】本発明の第1の実施形態によるシミュレータの軸方向断面図であり、そのオペレーションの数多くの個々のステップを示している。
【
図7】本発明の第2の実施形態によるブースターの軸方向断面図である。
【
図8】
図7に示すブースターのオペレーションの様々なステップにおける部分軸方向断面図である。
【
図9】
図7に示すブースターのオペレーションの様々なステップにおける部分軸方向断面図である。
【
図10】
図7に示すブースターのオペレーションの様々なステップにおける部分軸方向断面図である。
【
図11】
図7に示すブースターのオペレーションの様々なステップにおける部分軸方向断面図である。
【
図12】
図1から
図4と同様の図であるが、本発明の第3の実施形態によるシミュレータを示している。
【
図13】
図1から
図4と同様の図であるが、本発明の第3の実施形態によるシミュレータを示している。
【
図14】
図1から
図4と同様の図であるが、本発明の第3の実施形態によるシミュレータを示している。
【
図15】
図1から
図4と同様の図であるが、本発明の第3の実施形態によるシミュレータを示している。
【
図16】本発明の第4の実施形態による制動システムの図である。
【
図17】
図16に示すシステムのシミュレータの拡大軸方向断面図である。
【
図18】
図17と同様の図であるが、シミュレータのオペレーションの様々な段階を示している。
【
図19】
図17と同様の図であるが、シミュレータのオペレーションの様々な段階を示している。
【
図20】
図17と同様の図であるが、シミュレータのオペレーションの様々な段階を示している。
【
図21】
図17と同様の図であるが、シミュレータのオペレーションの様々な段階を示している。
【
図22】
図17と同様の図であるが、シミュレータのオペレーションの様々な段階を示している。
【
図23】
図17と同様の図であるが、シミュレータのオペレーションの様々な段階を示している。
【
図24】
図17と同様の図であるが、シミュレータのオペレーションの様々な段階を示している。
【
図25】
図17と同様の図であるが、シミュレータのオペレーションの様々な段階を示している。
【
図26】
図17と同様の図であるが、シミュレータのオペレーションの様々な段階を示している。
【
図27】
図17と同様の図であるが、シミュレータのオペレーションの様々な段階を示している。
【
図28】
図17と同様の図であるが、シミュレータのオペレーションの様々な段階を示している。
【
図29】
図17と同様の図であるが、シミュレータのオペレーションの様々な段階を示している。
【
図30】
図17と同様の図であるが、シミュレータのオペレーションの様々な段階を示している。
【
図31】
図17と同様の図であるが、シミュレータのオペレーションの様々な段階を示している。
【
図32】
図17と同様の図であるが、シミュレータのオペレーションの様々な段階を示している。
【
図33】
図17と同様の図であるが、シミュレータのオペレーションの様々な段階を示している。
【
図34】
図17と同様の図であるが、シミュレータのオペレーションの様々な段階を示している。
【
図35】制動回路内の圧力を、シミュレータに掛けられる入力の関数として描いている曲線である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
第1の実施形態
以下に、
図1を参照しながら、本発明のシミュレータの第1の実施形態について説明する。このシミュレータは、自動車の制動システムの一部を形成しており、同システムは、
−車両の運転者からの制動コマンドを受け取ることのできる、制動を制御するための装置と、
−制御装置からのコマンドを受け取るシミュレータであって、三方向弁を備えており、運転者がペダルに感知する感覚を生成することのできる、シミュレータと、
−三方向弁で制御され、車輪の近くに配置されている制動部材まで伸びている車両の制動回路内のブレーキ液の圧力を制御するマスターシリンダーを作動させる、ブレーキブースターと、を備えている。
【0020】
その様なシステム自体は、例えば文献のフランス特許FR−289595から既知である。
シミュレータ100は、後方エンクロージャ104と前方エンクロージャ105とを有するケーシング102を備えている。図では、便宜上、左が前方に対応し、右が後方に対応している。
【0021】
シミュレータは、シミュレータ100の縦軸と共通の縦軸108を有する制御ピストン106を備えている。制御ピストンは、ケーシングに設けられた後方開口部110を通ってエンクロージャ104に入っている。ピストン106はカラー112を有しており、カラーの自由端は前方に向いている。このカラーは、後方基部で制御ピストンのロッドに接続された円筒壁を有している。ピストン106は、ピストンの後方内部空洞に位置する1つ又はそれ以上のオリフィス114を有しており、この空洞は、大気と連通しており、後に示すように、後方チャンバ104とも連通状態にある。ピストン106は、その中心領域に、環状の隆起部116を有している。ピストン106は、後方エンクロージャ104の中を伸張し、更に、2つのエンクロージャを隔てるケーシングの中間壁に設けられたオリフィス120を通って前方エンクロージャ105の中へと伸張する前方ロッド118を有している。
【0022】
特に表示しない限り、全ての部品は、軸108と共軸であり、回転対称である。
シミュレータは、カラー112と環状の隆起部116の間に軸方向に挟まれた弁122を備えている。而して、この弁は、時にはカラーの自由端縁部に、時には隆起部116の後面に押し付けられることになる。シミュレータは、カラーの基部前面と弁の後面とに押し付けられた弁スプリング124を備えている。従って、このスプリングは、弁を隆起部116の方向に押している。このスプリングは、後に示すものと同様に、軸108に沿う支承点を作り出す。
【0023】
シミュレータ100は、更に、この事例では概ねスリーブ形状を有するブッシュ126を形成している滑動部で構成された中間部品を備えている。ブッシュは、ケーシングの肩部128とシールを間に挟んで接触している円筒形の外面を有している。ブッシュは、外側に向けて伸張し、その外側側方面が後方チャンバ104の位置でケーシングの内面と、この場合も間にシールを挟んで、接触している半径方向前方リム130を有している。ブッシュは、弁スプリング134が押し付けられている内部環状隆起部132を有しており、弁スプリング自体は、制御ピストンの隆起部116の前面にも押し付けられている。ブッシュを、制御ピストンが横走している。
【0024】
シミュレータは、主スプリング136又は行程圧力スプリングを備えている。このスプリングは、前方に向けて後方エンクロージャの前面に押し付けられ、後方に向けてブッシュ126の前面に押し付けられている。
【0025】
シミュレータは、前方エンクロージャ105の、オリフィス120と、エンクロージャ105の中へ軸108に対して半径方向に開口しているダクト142との間に収納されている油圧反力ピストン140を備えている。
【0026】
シミュレータは、後方に向けて前方エンクロージャ105の後面に押し付けられ、前方に向けてピストン140の後面に押し付けられているジャンプスプリング146を備えている。
【0027】
部品106、122、126、及び140は、剛体であり、ケーシング102に対し、且つ互いに対して滑動できるように取り付けられている。
ダクト142は、前方エンクロージャ105を、オリフィス143を介して、マスターシリンダーで加圧することのできる液回路と連通させている。
【0028】
制御ピストン106は、適した手段、例えばブレーキペダルによって、制御装置を介して伝達される車両運転者のコマンドを、機械的応力の形態で受け取るように設計されている。
【0029】
後方チャンバ104のブッシュ126より後方に位置する部分は、ダクト127によって、ブレーキ倍力装置の真空チャンバと連通している。後方チャンバ104のブッシュ126より前方に位置する部分は、ダクト129によって、ブレーキ倍力装置の作動チャンバと連通している。
【0030】
弁スプリング134は、制動コマンド時の係合力を定義する機能を有している。それは、従って、いわゆるジャンプ位相前に働く。
ジャンプスプリング146は、マスターシリンダーの液の圧力を調整できるようにしている。それは、運転者がペダルで感知する感覚を選定できるようにもしている。
【0031】
主スプリング136は、マスターシリンダーの中に敷衍する圧力をペダルの行程の関数として規定する法則を定義する働きをする。それは、従って、マスターシリンダー内の圧力を調整し、運転者への力を提供する。
【0032】
制動システムの残りの部分については、例えば、文献のフランス特許FR−2895958、特に
図6の実施形態の中に記載されている通りである。
これよりシミュレータのオペレーションについて説明する。
【0033】
図1に示されている状態では、シミュレータは休止している。弁122は、弁スプリング124の応力の作用下で隆起部116に載っている。弁は、従って、制御ピストンの内部空洞を閉め切り、その間、制御ピストンの後方部分を通って到達する大気と後方エンクロージャ104の間のどの様な連通をも許容しない。弁は、更に、ブッシュ126から或る距離を置いて伸張している。シミュレータの後方エンクロージャ104は、従って、ブレーキ倍力装置の作動チャンバと真空チャンバの間に連通を生じさせる。
図35は、マスターシリンダー内の圧力の変化を制御ピストンに掛けられる入力の関数として示しているが、同図において、
図1は、従って、横座標軸と縦座標軸の交点に位置する点Aに対応している。
【0034】
図2の状態は、同図の点Bに対応している。運転者は、制御装置に伝達される係合力を提供したところであり、この力はその後制御装置を介して制御ピストン106に伝達される。係合力は、点Aと点Bの間の距離に対応している。運転者からピストン106に送られたコマンドによって、同ピストンは、前方に向けて、即ち図では左に向けて動かされている。これに続き、弁スプリング134の圧縮が起こる。弁スプリングによってもたらされた反力は、運転者に感知されている。この感知に他の部材が関与していたとしても、それに主に貢献しているのはこのスプリングである。弁122は、ピストンに追従し、ブッシュ126と接触する。
図2では弁がブッシュに押し付けられていることによって、作業チャンバと真空チャンバの間の連通が中断され、その間、後方エンクロージャ104の前方部分と後方部分は互いから切り離されている。この段階では、ブッシュ126は動いていない。ピストン140とそのスプリング146も動いていない。マスターシリンダー内の圧力を上昇させることになるジャンプはまだ起こっていないが、始まる態勢にある。
【0035】
図2の状態から始まり、制御ピストン106が左に向けて前進し続けると、肩部116が弁に対して離され、これにより制御ピストンを通過する大気がダクト129を介して作動チャンバと連通する。このチャンバが空気で満たされ、ブレーキ倍力装置を作動させると、マスターシリンダー内の圧力が上昇し始める。
【0036】
ダクト142も、ブッシュ126のリム130とその後面で連通している。マスターシリンダー内の圧力は、従って、前方に向けて、即ち
図3で左に向けて働き、ブッシュを同じ方向に動かす。弁スプリング124に押されて、弁122自身もブッシュに載るように追従する。
【0037】
こうして、制御ピストン106は、左に向けて進み、弁122から離れる。しかしながら、マスターシリンダー内の圧力の上昇は、ブッシュ126をも左に向けて駆動するので、その結果ブッシュに載っている弁も左に駆動され、その結果ピストンの隆起部116と一緒になる傾向を示す。弁は、従って、制御ピストン106と弁122とブッシュ126によって形成されているアッセンブリの運動中、自身の平衡状態を維持する。
【0038】
この段階は
図3であり、
図35のジャンプ位相の中間の点Cに来ている。具体的には、運転者は、点Bから点Dへジャンプが進行している間、一定の力を感知している。これらの部品が同時に動くために、弁スプリング134は一定の長さを保ち、それ以上圧縮されない。しかしながら、マスターシリンダー内の圧力が、ブレーキ倍力装置の影響下で漸進的に上昇してゆくと、その結果、車両は漸進的に減速し始める。しかしながら、これは、制御ピストンの行程の間に、運転者の同ピストンへ掛ける応力が変化すること無く起こる。従って、コマンドは、力を変化させるのではなく、ペダルの行程を変化させることによって起こる。それは、而して、運転者にとっては一定の力で起こる。
図35の点Bと点Dによって範囲が定められているジャンプは、制動がこの位相に限定されていれば、通常、快適な位相となるはずである。その時のそれは、例えば、三色信号で停止することを目的とした、滑らかで漸進的な制動状況に相当する。運転者には、運転者が掛ける力が制動力及び車両の減速度に比例することになる車両の次の位相に対応する行程の余裕が残されていなければならない。
【0039】
戻り時は、この圧力の上昇は、ダクト142を通して反力ピストン140まで伝達され、反力ピストンは而して右に向けて押されジャンプスプリング146に押し付けられる。この運動全てはジャンプスプリングを圧縮する働きをする。ジャンプスプリングは、
図4に示されている状態では、制御ピストン106の前端に触れている。この接触は、ジャンプ位相の終りで且つ比例位相の始まりを特徴付けている。
【0040】
図5及び
図35の点Eに示されるように、この点を過ぎると、運転者によって制御ピストン106に掛けられる力はマスターシリンダーの中に敷衍する圧力に直接抗い、制御ピストンは反力ピストン140に直接押し付けられる。運転者は、而して、マスターシリンダーから発生する油圧反力を感知する。これ以後、運転者は、弁スプリング134(実質的に一定の力を送っている)に対応する感覚、特に、運転者によって提供される力に比例して上昇するマスターシリンダー内の圧力に対応する感覚を覚える。
【0041】
この比例位相の終了は、
図6及び点Fに相当する。この段階で、ブッシュ126は、後方エンクロージャの前端に対するその行程の終点に到り、中間に挟まれている主スプリング136は、その最大圧縮状態に在る。好適なことに、シミュレータは、この行程の終点がブレーキ倍力装置の飽和点、従ってブレーキ倍力装置によってもたらされる支援の終点に対応するように作られている。
【0042】
特に、プロセスの延長線上、例えば点Gで、制御ピストンはブッシュ126を通って左に動かされるが、この動作は、これ以降、ブレーキ倍力装置の支援無しに起こる。運転者は、従って、単独で、反力ピストンに応力を掛けることによって、マスターシリンダー内の圧力に抗して動作する。この動作は、同様に、弁スプリング134に対しても起こる。
【0043】
従って、弁スプリング134は、ジャンプ時には、可動部品を、係合力が提供されている時以上に圧縮された状態にすること無く、動くようになっていることが理解されるであろう。従って、運転者がペダルで感じる力は、ジャンプ位相中は実質的に一定である。運転者は、従って、大量のエネルギーをこの位相に費やす必要がない。より高いレベルの制動が必要であることが判明した場合、運転者には、而して、まだ多くのエネルギーを提供する余力がある。更に、ジャンプが完了すると、比例支援位相中に、制御ピストン106が反力ピストン140と接触させられることによって、運転者はマスターシリンダー内の圧力の変化を感じることができる、ということも理解されるであろう。運転者は、従って、液中の圧力の上昇に比例した反作用の力を感知する。運転者は、該当する場合、車両アンチロックシステム(ABS)又は動的軌道制御システム(ESP)によって引き起こされる圧力の変動も感知する。
【0044】
反力ピストン140の断面積の選定は、ブレーキ倍力装置の比例支援の区間DFの勾配、即ち、ブレーキ倍力装置によって提供される支援割合に影響を与えることに気付かれるであろう。
【0045】
第2の実施形態
次に、
図7から
図11を参照しながら、本発明の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態は、前のものに比較的近い。しかしながら、シミュレータは、今回は、ブレーキ倍力装置250と一体化されている。而して、シミュレータ200は、その後端が、ブレーキ倍力装置の後壁252に、同装置と同軸になる位置に締結されている。ケーシングは、全体がブレーキ倍力装置の作動チャンバ264内を伸張している。
【0046】
先のように、制御ピストン206は、シミュレータのケーシングを貫通している。第1の実施形態の構成に近い或る構成では、カラー212、弁222、隆起部216、及びブッシュ226が、ここでも登場している。制御ピストン206には、ブッシュを抜けた後、殆ど遮るものが無い。更に、同ピストンはブッシュと接触している。そのため、シミュレータの前方部205と後方部204の間に空気の連通を許容するため、ダクト254は、今回、ブッシュの内面に沿って形成されている。このダクトは、軸208に平行であるが、同軸とは中心がずれている。
【0047】
反力ピストン240は、今回は、その後端がブッシュの前方部分の中へ突き出るように細長い形状を有している。反力ピストンは、ケーシングの前端を越えて前方に向けて伸張し、マスターシリンダーの隔膜256を通り抜けている。反力ピストンは、ブレーキ倍力装置のマスターシリンダー260に滑動可能に取り付けられている支持部258を通り抜けており、同支持部は、概略的に表されているが、その後端は、作動チャンバ264を前方に位置する真空チャンバ266から分離している可動隔膜256の中央部分に載っている。反力ピストン240は、ピストンに沿ってその軸方向に沿い切り抜かれ、その後端近くに2つの半径方向ダクト242を有しており、同ダクトは、反力ピストンの前方部を出て伸張しているマスターシリンダーの内部エンクロージャ262を、ブッシュのシールされている環状の後方エンクロージャ205と連通させている。ダクト242の一方は、ブッシュ226を通り抜けることによって半径方向に伸ばされて、ブッシュとケーシングの間に形成されている第2の環状のエンクロージャの中へ開口し、ブッシュのリム230の後方部に到っている。マスターシリンダーの加圧された液は、而して、ブッシュを前方に押し進める。
【0048】
シミュレータの後方エンクロージャ204の後方部分は、ダクト(図示せず)によってブレーキ倍力装置の真空チャンバ266に接続されている。後方エンクロージャ204の前方部分は、ダクト254によって作動チャンバ264に接続されている。
【0049】
ジャンプスプリング246は、今回は、前方に向けて反力ピストン240に押し付けられ、後方に向けてブッシュ226の前端に押し付けられている。更に、ジャンプスプリングは、制御ピストンが横走するように同ピストンに嵌められている。
【0050】
この実施形態のオペレーションは、先の実施形態のものに似ている。
而して、
図7は、ブレーキペダル、即ち制御ピストン206に対する応力の無い、自由な状態のときのブレーキ倍力装置を表している。弁222は、隆起部216に載っている。前方チャンバ266の中には真空が敷衍し、シミュレータの後方エンクロージャ204は、ブレーキ倍力装置の作動チャンバ264を真空チャンバと、具体的には、ダクト254を通して、ブッシュ226と弁222の間に存在している空間を考慮しながら、連通させている。従って
図35の点Aにいることになる。
【0051】
運転者は、ブレーキペダルを踏んだとき、係合力によって制御ピストン206を左に動かすことになる。これによって、弁222がブッシュ226と接触する。この時点で、
図35の点Bに来ている。これは、弁とブッシュの間に存在する遊びの補償の終了でありジャンプの開始である。ここまでの段階で、運転者は、弁スプリング234を圧縮させることしかしていない。弁222がブッシュ226に載っていることにより、真空チャンバと作動チャンバ264の間の連通が妨げられている。
【0052】
制御ピストンが前進運動をし続けると、同ピストンを通り大気と作動チャンバ264の間にダクト254を介して空気の連通が作り出される。作動チャンバは、従って、斬新的に空気で満たされ、それにより、隔膜256が前方に動かされる。これに続いて、マスターシリンダー内の圧力が上昇する。エンクロージャ262の中に敷衍するこの圧力は、反力ピストンの内部のブッシュ226の前方リムの後面まで伝達され、ブッシュを左に向けて動かす。弁222は、従って、制御ピストン206の前進運動に追従する。この時点で、
図9の状態まで来ており、点Cに相当する。而して、ジャンプ中、制御ピストン206と、弁222と、ブッシュ226と、スプリング234とによって形成されているアッセンブリが動くと、弁はこの運動中にその平衡状態を見い出そうとする。
【0053】
点Dにおける
図10の状態は、ジャンプの終りで且つ比例支援位相の始まりを特徴付ける。具体的には、制御ピストン206は、反力ピストン240の後端に直接接触する。
制御ピストンが前進運動をし続けている間に、例えば、
図11の状態で点Eに突入するとき、運転者が感じる応力は、反力ピストン240によってブレーキ液から伝達されたものである。
【0054】
この実施形態は、製造コストを下げることができる。具体的には、この実施形態では、シミュレータとブレーキ倍力装置の作動チャンバ264の間に空気輸送ダクトを設ける必要がない。この実施形態は、更に、その応答時間を短縮することにより、制動システムの効率を高めることができる。
【0055】
第3の実施形態
本発明の第3の実施形態が、
図12から
図15に示されている。
ここでも、図に示されているのはシミュレータ300だけである。第1の実施形態に対する主な変更は、ジャンプスプリング146を、弾性材料、例えばゴムで作られた反力ディスク346に置き換えたことにある。
【0056】
先と同じように、制御ピストン306、弁322、ブッシュ326、及び弁スプリング334は、ここでも登場している。反力ピストン340は、今回、ブッシュ326の内側に直接収納されている。この目的のために、ブッシュは、その前方部分がプラグ360によって閉じられており、プラグが配置される前に、ブッシュの中へ、まず反力ディスク346を、そして次にピストン340を挿入できるようになっている。プラグ360付のブッシュは、プラグが所定の位置に設置された後、一体化された剛体のアッセンブリを構成する。主スプリング又は行程圧力スプリング336は、一方で、プラグ360の前面に押し付けられ、他方で、ケーシング302の前壁の内側後面に押し付けられている。半径方向ダクト342は、プラグ360とピストン340の前面の間を伸張しているブッシュの内部空洞を、マスターシリンダーの液と連通させる。このため、ダクトは、半径方向部分362がブッシュ自体の中へ伸張している。このダクト342は、而して、前方側がブッシュのリムの後面によって範囲が画定されている環状の空洞343を、同液と連通させる。
【0057】
図12は、自由な状態に在るシミュレータを表している。弁322は、隆起部316に対して、但しブッシュ326から或る距離を置いて、押し付けられている。シミュレータは、ブレーキ倍力装置の作動チャンバを、同装置の真空チャンバと連通させる。マスターシリンダー内の圧力は低いので、ディスク346は変形しない。この時、
図35の点Aにいることになる。
【0058】
運転者は、ブレーキペダルを作動させるとき、制御ピストン306を左に向けて動かして、弁322をブッシュ326に接触させることになる。この時点で、係合力の提供の終りで且つジャンプの始まりを特徴付けている、
図35の点Bにおける
図13の状態に来ている。弁とブッシュとの接触によって、ブレーキ倍力装置の真空チャンバと作動チャンバの間の連通が中断される。
【0059】
制御ピストン306を動かし続けると、同ピストンと弁の間に大気の通路が作り出され、これにより、ブレーキ倍力装置が作動して、マスターシリンダー内の圧力の上昇が引き起こされる。この圧力は、ダクト342と362を介してブッシュに伝達され、環状の空洞343の前方に向けて加えられるので、前記ブッシュが
図12の左に向けて動かされる。制御ピストンは、従って、弁とブッシュを伴って前方に動く。
【0060】
マスターシリンダーの中に敷衍する圧力は、更に、反力ピストンに逆らって、弾性ディスク346に掛けられるので、同ディスクは拡張し始め、前方側が弾性ディスクによってそして後方側が制御ピストンの前端によって範囲を画定されている空間364を満たしてゆく。
図35の点Dにおける
図14のジャンプの終りは、変形させられたディスクが制御ピストン306に接触してゆく段階に対応している。
【0061】
この時点から、運転者によって制御ピストンに掛けられる追加の力は、反力ディスク346に抗し、及び運転者が感じるマスターシリンダーの中に敷衍する圧力に抗して加えられる。而して、
図35の点Eに対応している
図15では、支援位相期間に入っていることが分かる。マスターシリンダーの中に敷衍する圧力は、反力ピストンと弾性ディスクとによって制御ピストンに伝達され、従って、運転者に感知される。
【0062】
このオペレーションの続きはこれまでの実施形態と同じである。
弾性反力ディスク346は、シミュレータの内側に配置されており、マスターシリンダーの中に敷衍する圧力に曝されていることに気付かれるであろう。
【0063】
ここでも同様に、反力ピストンの断面積によって、
図35の比例支援区間DFに亘って得たい支援割合が決まることになる。
第4の実施形態
次に
図16から
図34を参照しながら、本発明の第4の実施形態について説明する。
【0064】
図16は、この第4の実施形態のシミュレータ400を組み込んだシステムの全体図を示している。この実施形態では、システムは、ブレーキ倍力装置450と同軸に一体化された油圧制御制動装置470を備えている。運転者がブレーキを掛けるように命令するために使用するブレーキペダル472又は何か同じ様な部材は、ブレーキ倍力装置のケーシングに対して同装置の軸に沿って滑動可能に取り付けられている制御ロッド474に接続されている。ロッドは、作動チャンバ464の中へ突き出ており、休止時には、マスターシリンダー460のプッシュロッド475から或る距離を置いて離れている端部を有している。このような構造になっているので、以下に示すように、シミュレータ400又はブレーキ倍力装置450が故障したとき、制御ロッド474からの圧力をロッド475に直接加えることができる。ロッド474は、ブレーキペダルによって制御されて、油圧制御装置のチャンバを流体圧の下に置くことができ、同制御装置が、この圧力を、制御ピストンの上流のシミュレータ400の中に開口しているダクト476の中に送る。液貯留部483から始まっているダクト482は、制御装置470の内部へブレーキ液を供給できるようにしている。
【0065】
シミュレータ400は、このように注入された圧力を受け入れ、ピストンの位置に従って、ブレーキブースターのオペレーションを後で示すように制御することができるようにしている。
【0066】
装置は、ブレーキ倍力装置の真空チャンバ466に真空を作り出すための減圧源478を備えている。マスターシリンダー460は、2つのピストン475と477を備えており、分かり易くするために第1のピストンをロッド475に例えることにする。油圧制動回路480は、制動圧を車輪のブレーキ部材へ再伝達することができるようにしている。
【0067】
シミュレータ400以外の要素の更なる詳細については、フランス特許FR2895958を参照されたい。
本例では、制御ピストン406は、シミュレータ400のケーシング402の中に全体が収納されている。その後端には、後面がダクト476から入ってくる液圧に曝されているフィーラー484が設けられている。制御ピストンの隆起部は、ピストンの前端のストッパ416によって形成されている。フィーラー484とストッパ416は、弁422が嵌め込まれたロッドによって互いに接続されている。
【0068】
弁は、時にはストッパ416に押し付けられ、時には弁の後ろに伸びているブッシュ426のカラー412に押し付けられるようになっている。ブッシュは、更に、弁の前面に向かい合って、従ってストッパ416と同じ側に伸張している隆起部486を備えており、弁はそれに対しても押し付けられるようになっている。
【0069】
弁スプリング434は、後方に向けてフィーラー484に押し付けられ、前方に向けてカラー412の基部に押し付けられている。
弁スプリング424は、
図17のように休止しているときは、後方に向けてこのカラーに押し付けられ、前方に向けて弁422に押し付けられ、弁がストッパ416に載るようになっている。
【0070】
ジャンプスプリング446は、後方に向けてケーシング402の面に押し付けられ、前方に向けて可動ワッシャ488に押し付けられている。
ワッシャは、その中心を反力ピストン440の後端が横走しており、反力ピストン440は肩部を有しており、同肩部を後方に向けてワッシャ488の前面に当接させている。ピストン440は、前端が、ケーシング402の前方エンクロージャ405の中に突き出ているブッシュ426の前端の中に、嵌め込まれている。
【0071】
ケーシングは、大気中に在るケーシングの外側を、フィーラー484の前方の後方エンクロージャ404と連通させている第1の半径方向ダクト490を有している。ケーシングは、少なくとも第2の半径方向ダクト492を有しており、同ダクトはこの事例では2本あって、それぞれが、同様に、後方エンクロージャを大気と連通させるようにフィーラーの前方に開口することができるようになっている。ダクト490とは異なり、両ダクト492は、この連通を常時作り出すわけではない。而して、
図17のように休止しているとき、ブッシュ426の後端がこれらのダクトを閉め切っている。更に、これらのダクトは、ダクト490より遥かに大きい主断面積を有しており、従って空気の流量を高めることができる。
【0072】
ケーシングは、後方エンクロージャ404の、弁422によって占められカラー412と隆起部486の間に位置している中央領域を、ブレーキ倍力装置のそれ自体が真空供給源478に接続されている真空チャンバ466と連通させる半径方向ダクト494を有している。
【0073】
ケーシングは、更に、エンクロージャ404の中のストッパ416とワッシャ488の間へ開口し、同エンクロージャをブレーキ倍力装置の作動チャンバ464と連通させるようになっている半径方向ダクト496を備えている。
【0074】
ブッシュには、ダクト496及びカラー412それぞれと整列しているオリフィスも設けられている。
ケーシングのもう1つの半径方向ダクト442は、反力ピストン440が配置されているブッシュの前方内部エンクロージャを、マスターシリンダーの中に敷衍する一次圧と連通させる。この目的のため、オリフィス499は、半径方向にブッシュの壁を突き抜けている。
【0075】
図17は、シミュレータが休止していて、従ってペダル472が操作されていない状態を示している。フィーラー484は、ケーシングの後端に当接している。弁422は前方ストッパ416に押し付けられている。ワッシャ488は、前方に向けてケーシング402に当接している。反力ピストン440は、後方に向けてディスクに当接している。ブッシュは、後方に向けて、ケーシングの後方部のダクト490と492の間に位置する肩部の領域と、反力ピストン440の両方に当接している。従って、連通は、ダクト494から弁前方のブッシュを介してダクト496まで確立されている。真空チャンバと作動チャンバは、従って、同じ圧力に置かれている。マスターシリンダー内には圧力は存在していない。この時は
図35の点Aにいることになる。
【0076】
まず始めに
図18から
図23を参照しながら、運転者によってコマンドが送られるとジャンプが殆ど完全に起こり、その後圧力が再度低下してコマンドが中断されるという、シミュレータのオペレーションを説明してゆく。
【0077】
図18に示すように、ペダル478を使用してコマンドが送られると、フィーラー484の上流の液圧が上昇し、これにより、制御ピストン406が前方に向けて動かされ、弁422が隆起部486と接触する。作動チャンバ464は、従って、真空チャンバに対して切り離される。この時点で点Bに来ている。
【0078】
図19で、制御ピストン406を動かし続けると、フィーラーの後方部に対して増加する圧力の作用の下で、ストッパ416の分離が引き起こされ、ストッパが前方に向けて弁から離れてゆく。次いで、ダクト490を通って到達する大気との連通が、制御ピストンのロッドと弁の間に、次にストッパ416と弁の間に、そして最後にストッパと肩部486の間に確立される。空気は、その後、ダクト496まで逃げ、作動チャンバ464内に達する。ダクト490の断面積が小さいことを考えると、この段階で通過する空気の流量は低い。
【0079】
ブレーキ倍力装置の隔膜は、従ってゆっくりと動き始め、こうしてマスターシリンダー内の圧力が高まる。この圧力は、
図20に示すように、ダクト422によってシミュレータに伝達される。圧力は、ブッシュ426を通して、反力ピストン440に伝達されるが、同ピストンは、ジャンプスプリング446によってブロックされたままであり、ワッシャ488はまだ動けない。この圧力は、更に、ブッシュを前方に押し進めながらブッシュに伝達される。ブッシュの前進運動によって、弁422がストッパ416によって形成されている同弁の座に追いつくことができ、これにより、確立されたばかりの空気連通が遮断される。更に、ブッシュはなお前進しているが、極僅かなのでダクト492を自由にするほどではない。
【0080】
運転者が制御ピストンに応力を加え続けると、前記現象が、これまでの実施形態の中で説明してきたのと同様のやり方で継続する。弁は、こうして、その平衡状態を求めながら他の部品と共に動いてゆく。この段階では、従って
図35の点Bと点Cの間に位置する或る点に来ており、ジャンプは始まっている。既に説明したように、制御ピストン406、ブッシュ426、弁422、及び弁スプリング434の運動は、弁スプリングがそれ以上圧縮されること無く起こる。ここでも同様に、弁は自身の浮動特性を有していることになる。
【0081】
図21で、ブッシュは、ダクト492をダクト496と連通させるところまで前進している。空気の流量は、従って、この時点で、作動チャンバの方向に、より高くなることができる。更に、空気は、最初に開いたダクト490をなお通過している。隔膜はより速く動き、マスターシリンダー内の圧力をより急速に上げ、これにより、これらの部品の運動を加速する。
【0082】
しかしながら、ここでは、運転者は、制動コマンドを中断したので、ジャンプは完全に起こらないものと仮定する。而して、点Dには到らない。このコマンドの中断は
図22に示されている。フィーラー484の上流の圧力が低下すると、制御ピストンが弁422を伴って後退する。ストッパ416と弁の間の接触により、ダクト496と両ダクト492及び490の大気との間の空気の連通は遮断される。
【0083】
また、弁は隆起部486から離れてゆく。それらの間にこうして形成された空間によって、ダクト496がダクト494と連通する。換言すると、作動チャンバは真空チャンバと空気連通しているので、従って同じ圧力に置かれている。マスターシリンダー内の空気が抜け圧力が下がると、その結果、ブッシュ並びにその他の部品が漸進的に後退する。ここでも同様に、この後退は、弁スプリング434の長さが変化すること無く起こるので、運転者はペダルに一定の力を感じる。制動動作時のアッセンブリの前方に向かう運動と同じやり方で、制動がいったん中断されると、アッセンブリの後方に向かう運動が起こり、その間、時にストッパ416に押し付けられ時に隆起部486に押し付けられる弁は、自身の平衡状態を探求する。
【0084】
図23で、ブッシュは最終的に肩部に押し付けられた状態に戻り、これは、後方に向かう行程の終りであり、点Aに戻る前の点Bに戻ったことを特徴付けている。
これより
図24から
図30を参照しながら、シミュレータのオペレーションの第2のモードについて説明する。今回関わることは、一杯にブレーキを掛けること、即ち少なくとも比例支援位相に到る段階までを命令された制動である。
【0085】
図24、即ち点Bでは、ここで運転者は制動コマンドを開始したばかりであり、フィーラー484がケーシングの後面から僅かに離れていると仮定している。
図25で、制御ピストン406、ブッシュ426、弁422、及び弁スプリング434は、上で説明されているジャンプの一部期間中に、左に向けて動いてしまっている。しかしながら、前述の期間中に到達した点をこの時点では越えている。
【0086】
こうして
図26で、マスターシリンダー内の圧力は、同シリンダーが反力ピストン440に掛ける応力が、この時点で、反力ピストンを、ジャンプ中はワッシャ488を前方に向けてケーシングに押し付けていたジャンプスプリング446の力に打ち勝たせるレベルまで、上昇してしまっている。こうして、この段階では、ブッシュ426が左に向けて動くのみならず、反力ピストン440も右に向けてストッパ416の方向に、ディスク488を伴って動く。
【0087】
この運動は、反力ピストン440の後端が制御ピストン406のストッパ416に接触する
図27に示されている段階まで続く。この段階は、
図35の点Dのジャンプの終りで且つ比例支援の始まりを特徴付けている。これ以後、運転者がブレーキペダルの操作を続行すると、運転者は、弁スプリング434によって提供される一定の力だけでなく、マスターシリンダー内の上昇してゆく圧力も感じることになる。運転者は、従って、マスターシリンダー内の圧力の力に大凡比例する力を感じることになる。
【0088】
ブッシュ426は、
図28に示されているように、ケーシングに当接するまで前方に向かう運動を継続する。この行程終了点は、ブレーキ倍力装置の飽和、即ち
図35の点Fに対応するように選定されている。それは、制動の継続が運転者によって提供される力のみの作用下で起こり、ブレーキ倍力装置はもはや支援を提供することができなくなっていることを意味する。
【0089】
その直後、制御ピストン406を左に向けて動かし続けると、今度は反力ピストン440を直接押すことになり、ワッシャ488が前方に向けてそのストッパに押し付けられた状態に戻る。運転者のマスターシリンダー内の圧力に抗する動作は、そこでは、反力ピストン440を前方に向けて押し進めるジャンプスプリング446によって支援される。この時点で、
図35の点Gにいることになる。
【0090】
動かし続ける動作は、この支援無しに行われる。
図29から分かるように、反力ピストン440は、こうして、その前方に向かう運動中にワッシャ488から離れる。この時点で
図35の点Hにいることになる。
【0091】
図30で、反力ピストン440は最終的に、ストッパに到達し、自身は前方に向けてブッシュ426に押し付けられた状態になるが、これは、シミュレータの各部品が前方へ向けて最大まで動いたことを特徴付けている。この時、
図35の点Iに来ている。
【0092】
最後に
図31から
図34を参照しながら、劣化モードを構成する作動環境を説明する。而して、真空供給源は、欠陥を来し、もはや真空を提供しなくなったものと仮定する。従って、ブレーキ倍力装置の2つのチャンバの中には大気圧が敷衍し、もはや支援を提供できなくなっている。
【0093】
而して、
図31では、運転者が制動を命令するために制御ピストン406を作動させたものと仮定する。フィーラー484の右側に加えられる圧力の増加によって、ストッパ416が弁422に対して離される。それにより、ダクト496と490は連通するが、ブレーキ倍力装置とマスターシリンダー内の圧力に対する何らの作用にもつながらない。
【0094】
運転者は、制御装置のロッド474をマスターシリンダーのピストン475と直接接触させるまでペダルを操作する。運転者は、従って、これらの部品の間の初期の非連結遊びを補償している。
【0095】
そこで、運転者は、従って、圧力をマスターシリンダーに直接加え、而して液の圧力を上げる。この圧力の上昇は、ブッシュ426の前方部に伝達され、ブッシュ内で反力ピストン440に伝達される。ジャンプスプリング446は、ブッシュの運動を阻止するが、圧力の上昇が
図32に示されているようにブッシュの前進運動を引き起こす。
【0096】
この段階までは、反力ピストンが前進運動しても、剛性の低いスプリング434以外は何れのスプリングも圧縮されてはいない。運転者は、従って、自分のエネルギーの一部を留保している。運転者の動作は、従って、真空が失われた場合に、より効果を発揮することになる。
【0097】
図33で、マスターシリンダー内の圧力は、上昇し続け、ついにはジャンプスプリング446の抵抗力に打ち勝ち、こうして、反力ピストン440とワッシャ488を右に向けて動かすことができるようになる。
【0098】
最終的に、
図34で、制御ピストン406と反力ピストン440の間に直接接触が確立される。この段階から、コマンドが継続している間は、運転者は、シミュレータにおいて、マスターシリンダーの中に敷衍する圧力に対抗する。
【0099】
本発明には、無論、数多くの修正を施すことができる。
大気ダクト490に、移行途中モードに起因する乱れを回避するのに十分なだけの、大気ダクト492又はそれら各々と同じ直径を持たせることもできる。ダクト492が開いた時にはダクト490を閉じるようにすることもできる。
以上説明したように、本発明は以下の形態を有する。
[形態1]
車両のブレーキ倍力装置用三方向弁シミュレータ(100−400)において、
−制御ピストン(106−406)と、
−前記シミュレータが休止しているときは前記制御ピストンから離れている反力ピストン(140−440)と、を備えており、
前記シミュレータは、前記制御ピストンを、前記シミュレータの外側から伝達されてきたコマンドの影響下にあるときには、前記反力ピストンの方向に所定の行程に亘って、前記反力ピストンに応力を伝達することなく動かすことができるように、作られていることを特徴とする、シミュレータ。
[形態2]
前記制御ピストン(106−406)が、応力を前記反力ピストン(140−440)に直接伝達するように作られている、形態1に記載のシミュレータ。
[形態3]
−エンクロージャ(104−404)と、
−それぞれが前記エンクロージャと連通することのできる3本のダクトと、
−マスターシリンダーダクトという名で、前記シミュレータの前記エンクロージャとは連通することができず、前記反力ピストン(140−440)を動かすために流体圧力を当該反力ピストンに伝達するように作られている、ダクト(142−442)と、を備えている、形態1または2に記載のシミュレータ。
[形態4]
前記制御ピストン及び前記反力ピストンに対して可動であり、且つ前記制御ピストン及び前記反力ピストンによって応力を加えられるように作られている剛体の滑動部(126−426)であって、前記反力ピストン(140−440)は、前記滑動部内を好適に伸張している、剛体の滑動部を備えている、形態1〜3の何れか一項に記載のシミュレータ。
[形態5]
前記滑動部(126−426)と、前記シミュレータのケーシングとに押し付けられているスプリング(136−436)を備えている、形態4に記載のシミュレータ。
[形態6]
前記シミュレータが休止しているときは、予荷重スプリング(446)によって前記反力ピストンの方向に応力が掛けられている予荷重部材(488)であって、これに対して、前記反力ピストン(440)が、前記制御ピストン(406)の方向に押し付けられている、予荷重部材を備えている、形態1〜5の何れか一項に記載のシミュレータ。
[形態7]
前記シミュレータは、前記シミュレータが休止しているときは、前記予荷重部材(488)が前記シミュレータのケーシングに押し付けられるように、作られている、形態6に記載のシミュレータ。
[形態8]
−作動ダクトという名のダクト(496)と、
−真空ダクトという名のダクト(494)と、
−大気ダクトという名の第1ダクト(492)と、を備えており、
前記シミュレータは、前記作動ダクトを、前記真空ダクト及び前記第1大気ダクトと、随意的に連通させることができ、
前記シミュレータは、少なくとも第2大気ダクト(490)を備えていて、前記作動ダクト(496)を、前記第1大気ダクト(492)と連通させる前に前記第2大気ダクトと連通させることができるようになっている、形態1〜7の何れか一項に記載のシミュレータ。
[形態9]
−エンクロージャ(104−404)と、それぞれが前記エンクロージャと直接連通することのできる3本のダクトとを有するケーシングと、
−前記エンクロージャ(126−426)の中を伸張する滑動部と、
−前記ピストンと前記滑動部とに押し付けられているスプリング(134−434)と、
−マスターシリンダーダクトという名のダクト(142−442)であって、流体圧力を前記滑動部に、前記制御ピストンとは独立して、この圧力が前記滑動部に前記制御ピストンとは反対の方向に応力を掛けるように伝達するように作られている、ダクトと、を備えている、形態1〜8の何れか一項に記載のシミュレータ。
[形態10]
制動システムにおいて、
−制御装置(470)と、
−前記制御装置によって制御されるように作られている、形態1〜9の何れか一項に記載されているシミュレータ(100−400)と、
−前記シミュレータによって制御することができるブレーキ倍力装置(250;450)であって、前記制御装置が、流体圧力の介在無しに前記ブレーキ倍力装置に締結されているマスターシリンダー(460)に応力を掛ける構造を有することができるように、前記制御装置に剛に締結されている、ブレーキ倍力装置と、を備えている制動システム。