(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上述の従来技術にあっては、ケーブルを巻き取る際、このケーブルが緊張することにより、巻取り側のアウタケーシングを付勢している圧縮コイルバネが圧縮されてしまう。このため、ケーブル全体の長さと比較してケーブルの配索経路長が短くなり、送り出し側のケーブルが弛緩してスライドドアがスムーズに動作しなくなる虞があるという課題がある。
また、ケーブル巻取り時の圧縮コイルバネの変形を防止するために圧縮コイルバネのバネ定数を大きく設定することも考えられるが、このようにすると、スライドドアを手動開閉する場合の労力が大きくなってしまう。
また、一般的にコイルバネのバネ力は引張量や圧縮量に応じて増大するため、従来技術のスライドドアでは圧縮コイルバネの圧縮変形量に比例してスライドドアの開閉に必要な力が大きくなってしまう。
【0007】
そこで、この発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、ケーブルの配索経路長の変化を吸収しつつ、ケーブルの弛緩を防止でき、かつ手動開閉する際の労力を低減可能なスライドドア自動開閉装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の課題を解決するために、請求項1に記載した発明は、車両本体、およびスライドドアの何れか一方に、開放用ケーブル、および閉塞用ケーブルのそれぞれ一端を接続し、前記車両本体、および前記スライドドアの何れか他方に駆動ユニットを設け、この駆動ユニットにより前記開放用ケーブル、および前記閉塞用ケーブルを操作し、前記スライドドアを自動開閉させるスライドドア自動開閉装置において、前記駆動ユニットは、前記開放用ケーブル、および閉塞用ケーブルが巻回され、これらケーブルの繰出し、および巻取りを行うドラムと、前記ドラムを正/逆回転駆動させる電動モータと、前記開放用ケーブル、および前記閉塞用ケーブルの張力を所定の範囲に維持するためのテンショナ機構とを備え、前記テンショナ機構は、前記開放用ケーブルが掛け回される開放側テンショナプーリと、前記閉塞用ケーブルが掛け回される閉塞側テンショナプーリと、これら開放側テンショナプーリ、および閉塞側テンショナプーリをそれぞれ別々に回転自在に支持する2つのプーリケースと、前記2つのプーリケースのそれぞれに設けられた係止突起に係止されるスプリング部材とを有し、前記プーリケースは、このプーリケースを傾動可能に支持する支点と前記係止突起とを結ぶ線と、前記スプリング部材の伸縮方向とのなす角度が、各ケーブルにかかる張力によって変化するように設けられていることを特徴とする。
【0009】
このように構成することで、ドラムを電動モータにより正/逆転させた際、ケーブルに作用する引張力によって、ケーブル巻取り側のプーリケースが支点を中心にして、引張力が作用する方向に向かって傾動する。このとき、ケーブル繰出し側のプーリケースは、ケーブル巻取り側のプーリケースにコイルスプリングを介して引張される。すると、ケーブル繰出し側のプーリケースは、支点を中心にしてケーブル巻取り側のプーリケースの傾動方向とは反対側に向かって傾動する。
すなわち、ケーブル巻取り側のプーリケースは、配索経路長を短くする方向に向かって傾動する一方、ケーブル繰出し側のプーリケースは、配索経路長を長くする方向に向かって傾動する。このため、配索経路全体として長さが変化することなく、ケーブルの弛緩を防止できる。また、支点と係止突起とを結ぶ線と、スプリング部材の伸縮方向のなす角度が、各ケーブルにかかる張力によって変化するので、スプリング部材によって各ケーブルに付与される張力の変化を抑制することができる。このため、例えば手動開閉する際の労力を低減できる。
【0010】
請求項2に記載した発明は、車両本体、およびスライドドアの何れか一方に、開放用ケーブル、および閉塞用ケーブルのそれぞれ一端を接続し、前記車両本体、および前記スライドドアの何れか他方に駆動ユニットを設け、この駆動ユニットにより前記開放用ケーブル、および前記閉塞用ケーブルを操作し、前記スライドドアを自動開閉させるスライドドア自動開閉装置において、前記駆動ユニットは、前記開放用ケーブル、および閉塞用ケーブルが巻回され、これらケーブルの繰出し、および巻取りを行うドラムと、前記ドラムを正/逆回転駆動させる電動モータと、前記開放用ケーブル、および前記閉塞用ケーブルの張力を所定の範囲に維持するためのテンショナ機構とを備え、前記テンショナ機構は、前記開放用ケーブルが掛け回される開放側テンショナプーリと、前記閉塞用ケーブルが掛け回される閉塞側テンショナプーリと、これら開放側テンショナプーリ、および閉塞側テンショナプーリをそれぞれ別々に回転自在に支持する2つのプーリケースと、前記2つのプーリケースのそれぞれに設けられた係止突起に係止されるスプリング部材とを有し、前記プーリケースは、各テンショナプーリのうち、少なくとも何れか一方のテンショナプーリの回転軸と前記係止突起とを結ぶ線と、前記スプリング部材の伸縮方向とのなす角度が、各ケーブルにかかる張力によって変化するように設けられていることを特徴とする。
【0011】
このように構成することで、ケーブルの引張に応じて各プーリケースが傾動し、ケーブルの配索経路全体の長さが変化するのを防止できる。また、テンショナプーリの回転軸と係止突起とを結ぶ線と、スプリング部材の伸縮方向のなす角度が、各ケーブルにかかる聴力によって変化するので、スプリング部材によって各ケーブルに付与される張力の変化を抑制することができる。
【0012】
請求項3に記載した発明は、車両本体、およびスライドドアの何れか一方に、開放用ケーブル、および閉塞用ケーブルのそれぞれ一端を接続し、前記車両本体、および前記スライドドアの何れか他方に駆動ユニットを設け、この駆動ユニットにより前記開放用ケーブル、および前記閉塞用ケーブルを操作し、前記スライドドアを自動開閉させるスライドドア自動開閉装置において、前記駆動ユニットは、前記開放用ケーブル、および閉塞用ケーブルが巻回され、これらケーブルの繰出し、および巻取りを行うドラムと、前記ドラムを正/逆回転駆動させる電動モータと、前記開放用ケーブル、および前記閉塞用ケーブルの張力を所定の範囲に維持するためのテンショナ機構とを備え、前記テンショナ機構は、前記開放用ケーブルが掛け回される開放側テンショナプーリと、前記閉塞用ケーブルが掛け回される閉塞側テンショナプーリと、これら開放側テンショナプーリ、および閉塞側テンショナプーリをそれぞれ別々に回転自在に支持する2つのプーリケースと、前記2つのプーリケースのそれぞれに設けられた係止突起に係止され、各ケーブルの張力によって伸縮するスプリング部材とを有し、前記プーリケースを傾動可能に支持する支点と前記係止突起とを結ぶ線が、前記スプリング部材の伸縮方向と交差することを特徴とする。
【0013】
このように構成することで、ケーブルの引張に応じて各プーリケースが傾動し、ケーブルの配索経路全体の長さが変化するのを防止できる。また、支点と係止突起とを結ぶ線が、スプリング部材の伸縮方向と交差するので、スプリング部材によって各ケーブルに付与される張力の変化を抑制することができる。
【0014】
請求項4に記載した発明は、前記テンショナ機構を収納する収納部を備え、前記収納部に、各プーリケースの各ケーブルを弛緩させる方向へ向かう傾動を規制するストッパを設け、このストッパにおける前記プーリケースの当接面に、ダンパを配置したことを特徴とする。
【0015】
このように構成することで、各プーリケースが必要以上に傾動してしまうのを阻止できると共に、各プーリケースが傾動した際のストッパへの衝突音をダンパによって低減できる。また、ストッパにプーリケースが衝突した際の衝撃をダンパによって低減できると共に、プーリケースや収納部にかかる負荷を低減できる。
【0016】
請求項5に記載した発明は、各プーリケースは、互いに近接する径方向一側を前記支点として傾動可能に設けられていると共に、前記スプリング部材は、各プーリケースの前記径方向一側とは各テンショナプーリの回転軸を挟んで反対側の径方向他側を互いに連結して配置され、各プーリケースの傾動方向に対し、交差する方向に沿って配置されていることを特徴とする。
【0017】
このように構成することで、スライドドアをスライド自在に支持するガイドレールの湾曲部にローラアッシーが案内され、ケーブルの配索経路長が長くなることによってケーブルが緊張すると、スプリング部材のバネ力に抗して各プーリケースがケーブルの配索経路長を短くする方向に向かって傾動する。このため、スライドドア駆動時において、ケーブルの配索経路長が変化するのを防止でき、ケーブルにかかる張力が過度に大きくなるのを防止できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、ドラムを電動モータにより正/逆転させた際、ケーブルに作用する引張力によって、ケーブル巻取り側のプーリケースが支点を中心にして、引張力が作用する方向に向かって傾動する。このとき、ケーブル繰出し側のプーリケースは、ケーブル巻取り側のプーリケースにコイルスプリングを介して引張される。すると、ケーブル繰出し側のプーリケースは、支点を中心にしてケーブル巻取り側のプーリケースの傾動方向とは反対側に向かって傾動する。
すなわち、ケーブル巻取り側のプーリケースは、配索経路長を短くする方向に向かって傾動する一方、ケーブル繰出し側のプーリケースは、配索経路長を長くする方向に向かって傾動する。このため、配索経路全体として長さが変化することなく、ケーブルの弛緩を防止できる。また、支点と係止突起とを結ぶ線と、スプリング部材の伸縮方向のなす角度が、各ケーブルにかかる張力によって変化するので、スプリング部材によって各ケーブルに付与される張力の変化を抑制することができる。このため、例えば手動開閉する際の労力を低減できる。
【0019】
また、本発明によれば、テンショナプーリの回転軸と係止突起とを結ぶ線と、スプリング部材の伸縮方向のなす角度が、各ケーブルにかかる聴力によって変化するので、スプリング部材によって各ケーブルに付与される張力の変化を抑制することができる。
さらに、本発明によれば、支点と係止突起とを結ぶ線が、スプリング部材の伸縮方向と交差するので、スプリング部材によって各ケーブルに付与される張力の変化を抑制することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(車両)
次に、この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明に係るスライドドア自動開閉装置が搭載された車両の側面図、
図2は、スライドドアの車両本体への取り付け構造を示す平面図である。なお、以下の説明において、説明を簡単にするために、車両の地面側を単に下側、車両の天井側を単に上側、車両の進行方向前方を単に前方、進行方向後方を単に後方などと表現して説明する。
【0022】
図1に示すように、車両100の車両本体101には、側部に車両本体101の開口部102を開閉するためのスライドドア103が設けられている。このスライドドア103は、開口部102の上側に配置されているアッパーレール104と、開口部102の下側に配置されているロアーレール105と、開口部102の上下方向略中央であって、かつ後方側に配置されたセンターレール106とにそれぞれスライド移動自在に支持されている。
【0023】
図2に示すように、ロアーレール105は、前後方向に延在する直線状の直線部105aと、直線部105aに対して車室内側に向かって傾斜した傾斜部105bとが一体成形されたものである。ロアーレール105は、傾斜部105bを前方側に向けた状態で車両本体101に固定されている。
また、センターレール106は、前後方向に延在する直線状の直線部106aと、直線部106aに対して車室内側に向かって湾曲形成された湾曲部106bとが一体成形されたものである。センターレール106は、湾曲部106bを前方側に向けた状態で車両本体101に固定されている。ここで、
図2への図示を省略するが、アッパーレール104もロアーレール105と同様に形成されている。
【0024】
一方、スライドドア103には、前方の下端部にロアーアーム107が設けられている。このロアーアーム107は、スライドドア103を支持するためのものであって、先端側にローラアッシー108が設けられている。ローラアッシー108は、ロアーレール105にスライド移動自在に組み込まれている。
また、スライドドア103には、上下方向略中央の後端部にセンターアーム109が設けられている。このセンターアーム109もロアーアーム107と同様にスライドドア103を支持するためのものであって、先端側にローラアッシー110が設けられている。ローラアッシー110は、センターレール106にスライド移動自在に組み込まれている。
【0025】
ここで、
図2への図示を省略するが、スライドドア103の前方であって上端部にもスライドドア103を支持するためのアッパーアーム(不図示)が設けられ、このアッパーアームの先端に、アッパーレール104にスライド移動自在に組み込まれるローラアッシー(不図示)が組み込まれている。
【0026】
このような構成のもと、各アーム107,109がそれぞれ対応する各レール105,106に沿って移動すると、スライドドア103が車両本体101の前後方向に沿ってスライド移動する。また、ロアーレール105の傾斜部105bにローラアッシー108が案内されると共に、センターレール106の湾曲部106bにローラアッシー110が案内されることにより、スライドドア103は、車両本体101の外側に引き出された位置から車室内側に斜め前方に向かって引き込まれる。そして、その後に車両本体101の側面と面一となって閉じられる。
【0027】
(スライドドア自動開閉装置)
ここで、車両100には、スライドドア103を自動開閉するためのスライドドア自動開閉装置1が搭載されており、このスライドドア自動開閉装置1を構成する駆動ユニット3がスライドドア103に内装されている。スライドドア自動開閉装置1は、所謂ケーブル式の装置であって、駆動ユニット3から延びる開放用ケーブル2a、および閉塞用ケーブル2bがそれぞれ車両本体101に接続されている。
【0028】
一方、車両本体101には、ロアーレール105の後方側に連結ユニット111aが設けられており、ここに、スライドドア103の内部から引き出された開放用ケーブル2aの一端が連結されている。また、車両本体101には、ロアーレール105の前方側に連結ユニット111bが設けられており、ここに、スライドドア103の内部から引き出された閉塞用ケーブル2bが連結されている。
つまり、開放用ケーブル2aの一端は、連結ユニット111aを介して、ロアーレール105の開放側に連結されている。閉塞用ケーブル2bの一端は、連結ユニット111bを介して、ロアーレール105の閉塞側に連結されている。
【0029】
さらに、車両本体101には、開口部102の後端側にストライカ112が設けられている一方、スライドドア103の後端であってストライカ112と対応する位置には、ラッチ機構113が設けられている。このラッチ機構113は、スライドドア103を半閉位置から全閉位置にまで自動で閉め込み、スライドドア103の全閉状態を保持するためのものである。ラッチ機構113と駆動ユニット3は、互いにクローザケーブル114によって連結されている。ラッチ機構113は、駆動ユニット3によって動作する。
【0030】
(駆動ユニット)
図3は、駆動ユニットの正面図、
図4は、
図3のA矢視図、
図5は、
図3のB矢視図である。
図3、
図4に示すように、駆動ユニット3は、平面視略長方形状のベースプレート4を間に挟んで一面側(
図3における紙面手前側、
図4における左側、
図5における上側)に配置されたスライドドア駆動機構5と、他面側(
図4における右側、
図5における下側)に配置された電磁クラッチ6と、ベースプレート4とスライドドア駆動機構5との間に配置されたドライブ機構7と、電磁クラッチ6に連結されているモータユニット8とを有している。
【0031】
モータユニット8は、駆動源としての電動モータ9と、電動モータ9の回転軸(不図示)に連結されているウォーム減速機構10とを有している。ウォーム減速機構10は、不図示のウォーム軸と、このウォーム軸に噛合うウォームホイール(不図示)とで構成されている。そして、電動モータ9の回転軸にウォーム軸が連結されている一方、ウォームホイールに設けられた出力軸11が電磁クラッチ6を介してドライブ機構7に連結されている。
【0032】
電磁クラッチ6は、モータユニット8の駆動力をドライブ機構7へ伝達/遮断するためのものであって、ベースプレート4の長手方向一端側(
図3における下端側)に固定されている。例えば、不図示の車室内に設けられた操作スイッチを操作して、電磁クラッチ6を遮断状態とすると、ウォームホイールの出力軸11とドライブ機構7との間の動力伝達経路が遮断され、ドライブ機構7はモータユニット8に拘束されない非拘束状態になる。一方、操作スイッチを操作して電磁クラッチ6を接続状態とすると、モータユニット8にドライブ機構7が拘束され、モータユニット8の駆動力がドライブ機構7に伝達される。
【0033】
(ドライブ機構)
図6は、駆動ユニットの一部を取り外した状態を示し、ドライブ機構の斜視図である。
同図に示すように、モータユニット8のウォームホイール(不図示)に設けられた出力軸11は、ベースプレート4の他面側から厚さ方向に沿って貫通し、ベースプレート4の一面側に突出している。この突出した出力軸11の先端には、ドライブ機構7が連結されている。
【0034】
ドライブ機構7は、スライドドア駆動機構5と、ラッチ機構113(
図2参照)とに、モータユニット8の駆動力をそれぞれ伝達するためのものであって、出力軸11に連結された遊星歯車機構12を有している。遊星歯車機構12は、出力軸11に外嵌固定され出力軸11と共回りする太陽歯車13と、太陽歯車13に噛合い、太陽歯車13を中心に公転可能に形成された3つの遊星歯車14と、3つの遊星歯車14を連結する遊星キャリア15と、遊星歯車14の外周側に設けられた環状の外輪歯車16とを有している。
【0035】
遊星キャリア15は、各歯車13,14,16とベースプレート4との間に配置されており、略円板状に形成されたキャリア本体17を有している。キャリア本体17には、径方向略中央の大部分に、太陽歯車13との干渉を回避するための開口孔18が形成されている。また、キャリア本体17には、各遊星歯車14に対応する位置に、不図示の支柱が立設されており、ここに、それぞれ遊星歯車14が回転自在に軸支されている。これによって、各遊星歯車14と遊星キャリア15とが一体となって回転する。
【0036】
さらに、キャリア本体17は、この外周部の出力軸11よりもベースプレート4の一端側(
図4における下側)が段差により縮径された形に形成されている。これにより、キャリア本体17の外周縁には、出力軸11を中心にしてベースプレート4の短手方向で対向する位置に、それぞれ段差部19,19が形成される。
【0037】
各段差部19には、ベースプレート4の長手方向に沿って延在する2つのアームの20一端がそれぞれピン21を介して係合されている。各アーム20の他端は、ベースプレート4に長手方向に沿ってスライド移動可能に支持されている。また、各アーム20の他端には、それぞれクローザケーブル114(
図2参照)の一端が接続されている。すなわち、各アーム20は、遊星キャリア15の回転に基づいてスライド移動し、クローザケーブル114を引張するようになっている。そして、クローザケーブル114を引張することにより、ラッチ機構113を駆動させる。
【0038】
ここで、
図3に示すように、クローザケーブル114は、各アーム20の他端からベースプレート4の他端(
図3における上端)を介してラッチ機構113に向かって引き出されている。クローザケーブル114のうち、駆動ユニット3とラッチ機構113との間に配索されている部分には、アウタチューブ115が被覆され、クローザケーブル114が保護されるようになっている。アウタチューブ115の端末部には、アウタチューブ115をベースプレート4の他端に固定するためのプラグ116が取り付けられている。
【0039】
ベースプレート4の他端からは、クローザケーブル114が引き出されている他、センサケーブル117が引き出されている。センサケーブル117の一端は、ベースプレート4に配置されている不図示の回転位置検出センサに接続されている。回転位置検出センサは、遊星歯車機構12の遊星キャリア15、および外輪歯車16の回転位置を検出するためのものである。センサケーブル117の他端は、不図示の外部制御機器に接続されており、回転位置検出センサの信号をセンサケーブル117を介して外部制御機器に出力できるようになっている。
【0040】
なお、センサケーブル117もクローザケーブル114と同様に、アウタチューブ115に被覆されている。このセンサケーブル117を被覆するアウタチューブ115の端末部にもプラグ116が取り付けられており、ベースプレート4の他端に固定できるようになっている。
【0041】
一方、
図6に示すように、外輪歯車16には、内周面に遊星歯車14と噛合う内歯16aが形成されている。また、外輪歯車16の外周面には、周方向に等間隔で4つの突起22が一体形成されている。外輪歯車16の外周面には、スライドドア駆動機構5を構成する後述のドラム24が嵌合固定されるようになっており、突起22は、外輪歯車16とドラム24との相対回転を阻止するための役割を有している。
【0042】
(スライドドア駆動機構)
図3〜
図5に戻り、スライドドア駆動機構5について説明する。スライドドア駆動機構5は、モータユニット8の駆動に基づいて、スライドドア103(
図1、
図2参照)を自動でスライド移動させるためのものである。スライドドア駆動機構5は、ケース23内に、ドライブ機構7の外輪歯車16に外嵌固定されたドラム24と、ドラム24のベースプレート4の長手方向他端側(
図3、
図4における上側)に配置されたテンショナ機構25とを収納している。
【0043】
図7は、ケースの正面図である。
図3、
図7に詳示するように、ケース23は、ベースプレート4の一面側を覆うベース部26と、ベース部26上の大部分に一体形成された箱状の収納部27とで構成されており、この収納部27に、ドラム24、およびテンショナ機構25が収納されている。ベース部26の外周部には、複数のボルト孔(不図示)が形成されており、ここに複数のボルト28が挿通され、ベースプレート4にケース23が締結固定されるようになっている。
【0044】
収納部27は、ベースプレート4の長手方向一端側に形成されたドラム収納部27aとベースプレート4の長手方向他端側に形成されたテンショナ収納部27bとが一体成形されたものである。そして、ドラム収納部27aの両側、つまり、ベースプレート4の短手方向両側には、それぞれ配索通路30a,30bが形成されている。
これら配索通路30a,30bのうち、
図1、
図7における左側に位置する配索通路30aには、開放用ケーブル2aが配索されている。一方、
図1、
図7における右側に位置する配索通路30bには、閉塞用ケーブル2bが配索されている。
【0045】
ドラム収納部27aは、ベースプレート4の一端側の側壁が円弧状に形成されていると共に、テンショナ収納部27b側の側壁が大きく開口している。
一方、テンショナ収納部27bは、ベースプレート4とは反対側に開口部29を有する箱状に形成されている。
【0046】
また、配索通路30a,30bは、それぞれベースプレート4とは反対側に開口部41a,41bを有すると共に、ベースプレート4の一端側に開口部42a,42bを有する箱状に形成されている。テンショナ収納部27bの開口部29と、配索通路30a,30bの開口部41a,41bは、互いに連通している。さらに、テンショナ収納部27b、および配索通路30a,30bには、それぞれの開口部29,41a,41bを閉塞するカバー43が設けられている。
【0047】
図3〜
図5に示すように、ドラム収納部27aに収納されているドラム24は略円筒状に形成されており、内周面がドライブ機構7の外輪歯車16(
図6参照)に外嵌される。ドラム24の内周面には、外輪歯車16の突起22に対応する部位に突起22を受け入れ可能な凹部(不図示)が形成されている。これにより、外輪歯車16に対するドラム24の回転が規制され、外輪歯車16とドラム24とが一体となって回転する。
【0048】
また、ドラム24の外周面には、螺旋状の案内溝24aが形成されている。この案内溝24aに沿って、開放用ケーブル2aの他端側と閉塞用ケーブル2bの他端側とが複数巻回されている。開放用ケーブル2aの他端は、ベースプレート4の長手方向一端側から収納部27内の配索通路30aへと引き込まれ、ドラム24の外周面に複数巻回された後、ドラム24に固定されている。
【0049】
また、閉塞用ケーブル2bの他端は、ベースプレート4の長手方向一端側から収納部27内の配索通路30bへと引き込まれ、ドラム24の外周面に複数巻回された後、ドラム24に固定されている。ドラム24の軸方向両面には、内周面と外周面との間に、それぞれ各ケーブル2a,2bの他端を固定するための切り欠き部47が形成されている。
【0050】
このように、ドラム24の外周面に、各ケーブル2a,2bの他端側を複数巻回することにより、例えば、
図3において、ドラム24を時計回り方向に向かって回転させると、開放用ケーブル2aが巻き取られる一方、閉塞用ケーブル2bが繰出される。このため、スライドドア103が開放用ケーブル2aに引張され、全開方向(
図1における右方向、後方)に向かってスライド移動する。
【0051】
また、これとは逆に、
図3において、ドラム24を反時計回り方向に向かって回転させると、閉塞用ケーブル2bが巻き取られる一方、開放用ケーブル2aが繰出される。このため、スライドドア103が閉塞用ケーブル2bに引張され、全閉方向(
図1における左方向、前方)に向かってスライド移動する。
【0052】
なお、開放用ケーブル2a、および閉塞用ケーブル2bもクローザケーブル114やセンサケーブル117と同様に、アウタチューブ115に被覆されている。そして、アウタチューブ115の端末部には、このアウタチューブ115を収納部27の開口部42a,42bに固定するためのプラグ116が取り付けられている。
【0053】
(テンショナ機構)
テンショナ収納部27bに収納されたテンショナ機構25は、各ケーブル2a,2bに所定の張力を付与するためのものである。テンショナ機構25は、開放用ケーブル2a側(
図3における左側)に配置された開放側テンショナプーリ31と、閉塞用ケーブル2b側(
図3における右側)に配置された閉塞側テンショナプーリ32と、各テンショナプーリ31,32をそれぞれ別々に回転自在に支持するプーリケース33a,33bとを有し、これらプーリケース33a,33bがスプリング部材としてのコイルスプリング34によって連結されている。
【0054】
開放側テンショナプーリ31の外周面には、開放用ケーブル2aを掛け回すための括れ部31aが形成されている。すなわち、開放用ケーブル2aは、ベースプレート4の長手方向一端側から収納部27内へ引き込まれ、ドラム24を間に挟んで反対側に位置する開放側テンショナプーリ31を介して折り返す形でドラム24に巻回される。
一方、閉塞側テンショナプーリ32の外周面には、閉塞用ケーブル2bを掛け回すための括れ部32aが形成されている。閉塞用ケーブル2bは、ベースプレート4の長手方向一端側から収納部27内へ引き込まれ、ドラム24を間に挟んで反対側に位置する閉塞側テンショナプーリ32を介して折り返す形でドラム24に巻回される。
【0055】
各プーリケース33a,33bは、ドラム24の回転軸(ウォーム減速機構10の出力軸11)を通り、かつベースプレート4の長手方向に沿う中心線CL1を中心にして
図3における左右に振り分け配置されている。
ここで、各プーリケース33a,33bは、中心線CL1を中心にして線対称に形成されているので、以下のプーリケース33a,33bの形状の説明については、閉塞側テンショナプーリ32を回転自在に支持するプーリケース33bのみについて説明し、開放側テンショナプーリ31を回転自在に支持するプーリケース33aの説明を省略する。
【0056】
プーリケース33bは、閉塞側テンショナプーリ32を保持するホルダ部35と、ホルダ部35のドラム24とは反対側に一体成形されているアーム部36とからなる。
ホルダ部35は断面略コの字状に形成されたものであって、閉塞側テンショナプーリ32の軸方向両端に配置された1対のプレート部35a,35aと、これら一対のプレート部35a,35aに跨るステー部35bとが一体成形されたものである。そして、ステー部35bが閉塞側テンショナプーリ32のドラム24とは反対側に位置している。
【0057】
また、1対のプレート部35a,35aの中央部には、両者に跨るようにシャフト37が設けられている。このシャフト37に、閉塞側テンショナプーリ32が回転自在に支持されている。さらに、1対のプレート部35a,35aには、シャフト37よりもやや下側であって、かつ中心線CL1側に、中心線CL1側に向かって突出された突出部38が形成されている。この突出部38には、支軸39が閉塞側テンショナプーリ32の軸方向に沿うように挿通されている。この支軸39は、プーリケース33bを傾動自在に支持するためのものであって、その両端がケース23のテンショナ収納部27bに固定されている。
【0058】
また、1対のプレート部35a,35aには、シャフト37を挟んで突出部38とは反対側に、ストッパ部51が突出形成されている。ストッパ部51は、テンショナ収納部27bに形成されている後述のストッパ52と協働してプーリケース33bの傾動を規制するようになっている。
【0059】
一方、ステー部35bは、閉塞側テンショナプーリ32のほぼ上半分を覆うように、1対のプレート部35a,35aの突出部38からストッパ部51に至る間に形成されている。ステー部35bのストッパ部51に対応する位置には、アーム部36が突設されている。アーム部36の先端には、コイルスプリング34の一端を係止可能な係止突起40が突設されている。すなわち、係止突起40と、突出部38に挿通されている支軸39は、シャフト37を挟んで両側に配置された状態になっている。
【0060】
このような構成のもと、テンショナ収納部27b内に、プーリケース33bが支軸39を中心にして傾動自在に収納される。また、開放側テンショナプーリ31のプーリケース33aも支軸39を中心にして傾動自在になっていると共に、プーリケース33aのアーム部36にコイルスプリング34の他端が係止されている。2つのプーリケース33a,33bは、それぞれ中心線CL1を中心にして線対称に形成されているので、互いに近接する径方向一側に突出部38が形成されている状態になる。
【0061】
ここで、ケース23のテンショナ収納部27bの内周面側には、各プーリケース33a,33bのストッパ部51の傾動軌跡上であって、かつストッパ部51よりもドラム24側(
図3における下側)に、それぞれストッパ52,52が内側に向かって突出形成されている。これらストッパ52,52に、それぞれプーリケース33a,33bのストッパ部51が当接することにより、各プーリケース33a,33bの傾動が規制される。
また、ケース23の各ストッパ52,52には、プーリケース33a,33bのストッパ部51,51が当接する面に、ダンパ53が設けられている。ダンパ53は、ゴム等のクッション性を有した材料により形成されている。
【0062】
さらに、各プーリケース33a,33bのアーム部36,36に、コイルスプリング34の両端が係止されることにより、コイルスプリング34は、中心線CL1と略直交する方向に沿って配置された状態になる。すなわち、コイルスプリング34は、各プーリケース33a,33bの傾動方向(
図3における矢印Y0参照)に対して略直交する方向に沿って配置された状態になる。
これにより、コイルスプリング34の伸縮方向(
図3における矢印Y10参照)、つまり、コイルスプリング34の軸線L10と、各プーリケース33a,33bの支軸39とコイルスプリング34が係止される係止突起40とを結ぶ線L11は、係止突起40上で交差することになる。また、コイルスプリング34の軸線L10と、線L11との間の角度θ01、およびコイルスプリング34の軸線L10と、各プーリケース33a,33bのシャフト37と係止突起40とを結ぶ線L12との間の角度θ02は、プーリケース33a,33bが傾動することにより変化する(詳細は後述する)。
【0063】
(作用)
次に、
図2、
図6、
図8〜
図10に基づいて、スライドドア自動開閉装置1の動作について説明する。
図8は、テンショナ機構の動作を示す説明図、
図9は、プーリケースの揺動動作を示す説明図である。
図6、
図8、
図9に示すように、例えば、操作者により不図示の車室内に設けられた操作スイッチを閉操作すると、電磁クラッチ6が接続され、モータユニット8の駆動力がドライブ機構7に伝達される状態になる。そして、この状態でモータユニット8の駆動力がドライブ機構7の太陽歯車13、および遊星歯車14を介して外輪歯車16に伝達される。これにより、外輪歯車16と一体となってドラム24が
図8における時計回り方向(
図8における矢印Y1方向)に向かって回転する。すると、閉塞用ケーブル2bがドラム24に巻取られると共に、開放用ケーブル2aがドラム24から繰出される。
【0064】
閉塞用ケーブル2bがドラム24に巻取られることにより、閉塞用ケーブル2bが引張される一方、開放用ケーブル2aが弛緩される。すると、テンショナ機構25の閉塞側テンショナプーリ32がドラム24側(
図8における下側)へと引張され、閉塞側テンショナプーリ32のプーリケース33bが支軸39を中心にして傾動する(
図8における矢印Y2参照)。そして、プーリケース33bに形成されているストッパ部51がテンショナ収納部27のストッパ52に当接する。
このとき、ストッパ52には、ストッパ部51が当接する面にダンパ53が設けられているので、ストッパ52にストッパ部51が当接することにより生じる衝突音や衝撃を緩和することができる。
【0065】
また、閉塞側テンショナプーリ32のプーリケース33bと、開放側テンショナプーリ31のプーリケース33aとがコイルスプリング34を介して連結されていると共に、開放用ケーブル2aが弛緩しているので、プーリケース33aがコイルスプリング34に引張されるように、支軸39を中心にしてドラム24とは反対側に向かって傾動する(
図8における矢印Y3参照)。すなわち、2つのプーリケース33a,33bは、ドラム24の初動時前の状態(
図3参照)に対して傾斜角度θ03だけ左肩上がりに傾倒した状態になる。
【0066】
ここで、閉塞側テンショナプーリ32のプーリケース33bは、テンショナ収納部27bのストッパ52によって傾動量が規制された状態になっている。すなわち、傾斜角度θ03は、ストッパ52の形成位置によって決定されることになる。このため、ストッパ52の形成位置を、各プーリケース33a,33bのストッパ部51,51に近づけると、各プーリケース33a,33bの傾動量が小さくなる。一方、ストッパ52の形成位置を、各プーリケース33a,33bのストッパ部51,51から離反させると、各プーリケース33a,33bの傾動量が大きくなる。したがって、ストッパ52の形成位置は、ドラム24から繰出される側のケーブル2a,2b、つまり、ドラム24が回転することによって弛緩するケーブル2a,2bの弛緩量に基づいて設定される。
【0067】
また、各プーリケース33a,33bが傾動するにあたって、コイルスプリング34が作用することが殆どないので、各プーリケース33a,33bの傾動動作とほぼ同時にスライドドア103が閉塞用ケーブル2bに引張される。これにより、スライドドア103が閉塞側に向かってスライド移動する。
【0068】
また、
図2に示すように、スライドドア103が閉塞移動するにあたって、スライドドア103に設けられたローラアッシー108がロアーレール105の直線部105aから傾斜部105bへと引き込まれる。さらに、スライドドア103のローラアッシー110がセンターレール106の直線部106aから湾曲部106bへと引き込まれる。このとき、各ローラアッシー108,110がそれぞれ傾斜部105b、および湾曲部106bへと引き込まれることにより、各ケーブル2a,2bの配索経路長が増大する。
【0069】
すると、開放用ケーブル2aにかかる張力が増大し、開放側テンショナプーリ31のプーリケース33aがドラム24側に引張され、プーリケース33aが支軸39を中心にして傾動する(
図8における矢印Y4参照)。これにより、開放用ケーブル2aがケース23の外側(
図8における下側)へと押出され、配索経路長の延びが吸収される。
ここで、コイルスプリング34は、各プーリケース33a,33bの傾動方向に対して略直交する方向に沿って配置された状態になっているので、プーリケース33aの傾動量X1と比較してコイルスプリング34の伸長量X2が小さくなる。
【0070】
つまり、例えば、プーリケース33aの傾動方向に沿ってコイルスプリング34を配置した場合、プーリケース33aの傾動量とコイルスプリング34の傾動量とが等しくなる。このような場合と比較して、本実施形態のコイルスプリング34の伸長量X2は小さくなる。このため、プーリケース33aが傾動することによって開放用ケーブル2aにかかるバネ力の増大が抑制される。
【0071】
また、コイルスプリング34は、各プーリケース33a,33bの傾動方向に対して略直交する方向に沿って配置することにより、コイルスプリング34が伸長変化した場合、
図9に示すように、コイルスプリング34と各プーリケース33a,33bの支軸39との間の距離L1が距離L2へと短くなると共に、各プーリケース33a,33bの支軸39と係止突起40とを結ぶ線L12とコイルスプリング34の軸線L10との間の角度θ02が角度θ02’へと変化する。
【0072】
ここで、各プーリケース33a,33bの状態において、線L12と軸線L10との間の角度が「θ02」である状態をθ02状態とし、「θ02’」である状態をθ02’状態としたとき、θ02状態のときのコイルスプリング34のバネ力F1、θ02’状態のときのコイルスプリング34のバネ力F2(
図9参照)、θ02状態の場合におけるコイルスプリング34が各ケーブル2a,2bに付与する張力T1(トルク)、およびθ02’状態の場合におけるコイルスプリング34が各ケーブル2a,2bに付与する張力T2は、
T1=F1×L1 ・・・(1)
T2=F2×l2 ・・・(2)
を満たす。
【0073】
また、θ02’状態の場合のコイルスプリング34は、θ02状態の場合のコイルスプリング34よりも引張されているので、バネ力F1、およびバネ力F2は、
F1<F2 ・・・(3)
を満たす。
コイルスプリング34と各プーリケース33a,33bの支軸39との間の距離L1、および距離L2は、
L1>L2 ・・・(4)
の関係にある。
すなわち、プーリケース33aが傾動することによってコイルスプリング34のバネ力が増大しても、コイルスプリング34と支軸39との距離L1が短くなる。このため、式(1)〜式(4)より、プーリケース33aに作用する回転トルクの増大が抑制される。
【0074】
より具体的に、
図10に基づいて説明する。
図10は、縦軸を各ケーブル2a,2bの張力[N]、コイルスプリング34のバネ力[N]、角度θ02(
図9参照)の変化量[°]、およびコイルスプリング34の伸長量[mm]とし、横軸をコイルスプリング34の余長吸収量[mm]とした場合の、張力、バネ力、角度θ02、およびテンショナ機構25の伸長量の変化を示したグラフである。
同図に示すように、テンショナ機構25の余長吸収量が変化した場合であっても各ケーブル2a,2bの張力が大きく変化しないことが確認できる。
このため、開放用ケーブル2aにかかる張力の増大が抑制され、テンショナ機構が作用したときでもスライドドアの開閉に必要な力の変化が少なくなる。
【0075】
図6、
図8に示すように、続いて、スライドドア103が閉塞方向にスライド移動して半閉状態になると、スライドドア103の移動が停止するので、ドラム24の回転も停止する。ドラム24の回転が停止することにより、これと一体化しているドライブ機構7の外輪歯車16も停止する。この状態でモータユニット8を駆動し続けると、遊星歯車14が太陽歯車13を中心にして公転し始め、これらと一体となって遊星キャリア15が回転する。
【0076】
すると、遊星キャリア15の段差部19に係合されている各アーム20が駆動し、これに伴ってクローザケーブル114が引張される。クローザケーブル114が引張されることによって、ラッチ機構113(
図2参照)が駆動する。そして、ラッチ機構113が駆動することによって、ラッチ機構113と車両本体101に設けられているストライカ112とが噛合い、スライドドア103が全閉位置にまで閉め込まれる。これによって、スライドドア自動開閉装置1によるスライドドア103の閉塞動作が完了する。
なお、スライドドア103を開放動作させる場合にあっては、閉塞動作させる場合と逆の順序で動作することになり、基本的動作は閉塞動作と同様であるので、説明を省略する。
【0077】
(効果)
したがって、上述の実施形態によれば、テンショナ機構25を、開放用ケーブル2a側(
図3における左側)に配置された開放側テンショナプーリ31と、閉塞用ケーブル2b側(
図3における右側)に配置された閉塞側テンショナプーリ32と、各テンショナプーリ31,32をそれぞれ別々に回転自在に支持するプーリケース33a,33bと、これらプーリケース33a,33bを連結するコイルスプリング34とによって構成することにより、各プーリケース33a,33bを傾動させて各ケーブル2a,2bの弛緩を防止できる。また、従来のように、各ケーブル2a,2bの弛緩防止のためにコイルスプリング34のバネ定数を必要以上に大きく設定する必要がない。さらに、コイルスプリング34の軸線L10と、線L11との間の角度θ01、およびコイルスプリング34の軸線L10と、各プーリケース33a,33bのシャフト37と係止突起40とを結ぶ線L12との間の角度θ02は、プーリケース33a,33bが傾動することにより変化するので、コイルスプリング34によって各ケーブル2a,2bに付与される張力の変化を抑制することができる。このため、例えばスライドドア103を手動開閉する際の労力を低減できる。
【0078】
また、各プーリケース33a,33bが傾動するにあたって、コイルスプリング34が作用することが殆どないので、各プーリケース33a,33bの傾動動作とほぼ同時に各ケーブル2a,2bを引張、または繰出すことができる。このため、スライドドア103をスムーズにスライド移動させることが可能になる。
【0079】
さらに、各ケーブル2a,2bの配索経路長の変化を各プーリケース33a,33bをそれぞれ別々に傾動させることで吸収することができる。このため、スライドドア103の駆動時において、各ケーブル2a,2bの配索経路長が変化するのを防止でき、各ケーブル2a,2bの張力が過度に大きくなるのを防止できる。
【0080】
そして、コイルスプリング34を、各プーリケース33a,33bの傾動方向に対して略直交する方向に沿って配置し、各プーリケース33a,33bの傾動量X1と比較してコイルスプリング34の伸長量X2を小さくすることができる。これに加え、コイルスプリング34が伸長変化した場合、このコイルスプリング34と各プーリケース33a,33bの支軸39との間の距離L1が短くなる(
図8参照)。このため、各ケーブル2a,2bの配索経路長が長くなった場合において、各ケーブル2a,2bにかかるバネ力の増大を抑制でき、より確実に手動開閉する際の労力を低減できる。
【0081】
また、各プーリケース33a,33bにストッパ部51を形成する一方、ケース23のテンショナ収納部27bにストッパ52を形成し、これらストッパ部51、およびストッパ52を協働させて各プーリケース33a,33bの傾動を規制することができる。このため、必要以上に各プーリケース33a,33bが傾動することなく、確実に各ケーブル2a,2bの弛緩を防止できる。
【0082】
さらに、ストッパ52には、ストッパ部51が当接する面にダンパ53が設けられているので、ストッパ52にストッパ部51が当接することにより生じる衝突音や衝撃を緩和することができる。このため、スライドドア自動開閉装置1の延命化を図ることができると共に、駆動時の騒音を低減することが可能になる。
【0083】
なお、本発明は上述の実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において、上述の実施形態に種々の変更を加えたものを含む。
例えば、上述の実施形態では、スライドドア自動開閉装置1を構成する駆動ユニット3をスライドドア103に内装する一方、各駆動ユニット3から延びる開放用ケーブル2a、および閉塞用ケーブル2bの端末部を車両本体101に接続した場合について説明した。しかしながら、これに限られるものではなく、各駆動ユニット3を車両本体101に取り付け、各駆動ユニット3から延びる開放用ケーブル2a、および閉塞用ケーブル2bの端末部をスライドドア103に接続してもよい。