特許第5654822号(P5654822)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5654822
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】静電霧化装置
(51)【国際特許分類】
   B05B 5/057 20060101AFI20141218BHJP
   B05B 5/053 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   B05B5/057
   B05B5/053
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2010-221173(P2010-221173)
(22)【出願日】2010年9月30日
(65)【公開番号】特開2012-75991(P2012-75991A)
(43)【公開日】2012年4月19日
【審査請求日】2013年7月29日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005821
【氏名又は名称】パナソニック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(72)【発明者】
【氏名】上垣 英聖
(72)【発明者】
【氏名】裏谷 豊
【審査官】 加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−125723(JP,A)
【文献】 特開2008−149243(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05B 5/00−5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電電極と、該放電電極との間で放電させるための被放電電極と、前記放電電極に霧化のための液体を供給する液体供給手段と、前記被放電電極に高電圧を印加する高電圧発生手段と、を備えた静電霧化装置であって、
前記高電圧発生手段と前記被放電電極との間に介在し、両者間に流れる電流を検出する放電電流検出手段と、
前記放電電流検出手段によって検出された放電電流に基づいて、所定の放電電流となるよう前記高電圧発生手段の高電圧の印加を制御する制御手段と
を備え、
前記放電電流検出手段は、
前記高電圧発生手段と前記被放電電極との間に第1抵抗を設けるとともに、該第1抵抗と前記被放電電極との間に第2抵抗の一端を接続して前記第1抵抗に流れる電流をその第2抵抗側に流れるように構成し、前記第1抵抗にかかる電圧とその抵抗値とから前記第1抵抗に流れる電流を求めるとともに、前記第2抵抗の一端の電圧とその抵抗値とから前記第2抵抗に流れる電流を求め、求めた各電流から前記被放電電極側に流れる電流を前記放電電流として求めることを特徴とする静電霧化装置。
【請求項2】
請求項1に記載の静電霧化装置において、
前記放電電流検出手段は、
前記高電圧発生手段と前記第1抵抗との間に第3抵抗を介して接続され、前記高電圧発生手段と前記第1抵抗との間の電圧を検出する第1オペアンプと、
前記第1抵抗と前記被放電電極との間に前記第2抵抗を介して接続され、前記第1抵抗と前記被放電電極との間の電圧を検出する第2オペアンプと
を備えて構成されたことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項3】
請求項1に記載の静電霧化装置において、
前記放電電流検出手段は、
前記高電圧発生手段であるトランスの2次側巻線途中の所定巻数位置と接続され、その所定巻数位置の電圧を前記第1抵抗の一端の電圧として検出する第1オペアンプと、
前記第1抵抗と前記被放電電極との間に前記第2抵抗を介して接続され、前記第1抵抗と前記被放電電極との間の電圧を検出する第2オペアンプと
を備えて構成されたことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の静電霧化装置において、
前記液体供給手段は、前記放電電極を冷却しその周囲の空気中の水分を結露させて前記放電電極に液体を供給するように熱電素子を用いて構成されたことを特徴とする静電霧化装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の静電霧化装置において、
前記液体供給手段は、前記放電電極に液体を供給するための水溜め部を有して構成されたことを特徴とする静電霧化装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、静電霧化装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、放電電極と対向電極(被放電電極)との両電極間への高電圧印加と共に放電電極に水を供給し、帯電微粒子水とマイナスイオンとを発生させる静電霧化装置が知られている。この種の静電霧化装置としては、対向電極を接地し、放電電極側にマイナスの高電圧を印加するのが一般的であるが、放電電極側を接地し、対向電極側にプラスの高電圧を印加するものがある(例えば特許文献1参照)。このようにすると、放電電極(霧化電極)から発生する質量の軽いマイナスイオンは対向電極に付着して対象物の帯電が防止され、また質量の大きい帯電微粒子水は対象物に効果的に供給されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−149243号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、静電霧化装置では、放電電極に付着する液体量が変化すると放電が安定しなくなるため、放電電流の検出に基づいて放電を制御する必要がある。
本発明の目的は放電電極に付着する液体量が変化しても放電を安定させることができる静電霧化装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一形態に従う静電霧化装置は、放電電極と、該放電電極との間で放電させるための被放電電極と、前記放電電極に霧化のための液体を供給する液体供給手段と、前記被放電電極に高電圧を印加する高電圧発生手段と、を備えた静電霧化装置であって、前記高電圧発生手段と前記被放電電極との間に介在し、両者間に流れる電流を検出する放電電流検出手段と、前記放電電流検出手段によって検出された放電電流に基づいて、所定の放電電流となるよう前記高電圧発生手段の高電圧の印加を制御する制御手段とを備え、前記放電電流検出手段は、前記高電圧発生手段と前記被放電電極との間に第1抵抗を設けるとともに、該第1抵抗と前記被放電電極との間に第2抵抗の一端を接続して前記第1抵抗に流れる電流をその第2抵抗側に流れるように構成し、前記第1抵抗にかかる電圧とその抵抗値とから前記第1抵抗に流れる電流を求めるとともに、前記第2抵抗の一端の電圧とその抵抗値とから前記第2抵抗に流れる電流を求め、求めた各電流から前記被放電電極側に流れる電流を前記放電電流として求める。
【発明の効果】
【0011】
静電霧化装置の一形態によれば、放電電極に付着する液体量が変化しても放電を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1は第1実施形態の静電霧化装置のブロック回路図である。
図2は第2実施形態の静電霧化装置のブロック回路図である。
図3は変形例の静電霧化装置のブロック回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
〔1〕本発明の一形態に従う静電霧化装置は、放電電極と、該放電電極との間で放電させるための被放電電極と、前記放電電極に霧化のための液体を供給する液体供給手段と、前記被放電電極に高電圧を印加する高電圧発生手段と、を備えた静電霧化装置であって、前記高電圧発生手段と前記被放電電極との間に介在し、両者間に流れる電流を検出する放電電流検出手段と、前記放電電流検出手段によって検出された放電電流に基づいて、所定の放電電流となるよう前記高電圧発生手段の高電圧の印加を制御する制御手段とを備え、前記放電電流検出手段は、前記高電圧発生手段と前記被放電電極との間に第1抵抗を設けるとともに、該第1抵抗と前記被放電電極との間に第2抵抗の一端を接続して前記第1抵抗に流れる電流をその第2抵抗側に流れるように構成し、前記第1抵抗にかかる電圧とその抵抗値とから前記第1抵抗に流れる電流を求めるとともに、前記第2抵抗の一端の電圧とその抵抗値とから前記第2抵抗に流れる電流を求め、求めた各電流から前記被放電電極側に流れる電流を前記放電電流として求める。
〔2〕前記静電霧化装置の一例によれば、前記放電電流検出手段は、前記高電圧発生手段と前記第1抵抗との間に第3抵抗を介して接続され、前記高電圧発生手段と前記第1抵抗との間の電圧を検出する第1オペアンプと、前記第1抵抗と前記被放電電極との間に前記第2抵抗を介して接続され、前記第1抵抗と前記被放電電極との間の電圧を検出する第2オペアンプとを備えて構成された。
〔3〕前記静電霧化装置の一例によれば、 前記放電電流検出手段は、前記高電圧発生手段であるトランスの2次側巻線途中の所定巻数位置と接続され、その所定巻数位置の電圧を前記第1抵抗の一端の電圧として検出する第1オペアンプと、前記第1抵抗と前記被放電電極との間に前記第2抵抗を介して接続され、前記第1抵抗と前記被放電電極との間の電圧を検出する第2オペアンプとを備えて構成された。
〔4〕前記静電霧化装置の一例によれば、前記液体供給手段は、前記放電電極を冷却しその周囲の空気中の水分を結露させて前記放電電極に液体を供給するように熱電素子を用いて構成された。
〔5〕前記静電霧化装置の一例によれば、前記液体供給手段は、前記放電電極に液体を供給するための水溜め部を有して構成された。
【0014】
(第1実施形態)
図1に示すように、静電霧化装置1は、放電電極2と、対向電極3と、高電圧発生回路4と、熱電素子駆動回路5と、制御回路(マイコン)6とを含む。放電電極2は、導電性を有する金属部材からなり、対向して配置された対向電極3に突出した略円柱状をなす。対向電極3の中央部は、放電電極2の上面を覆うドーム状に形成され、その中央部の開口がミスト吐出口3aとなっている。また、対向電極3のドーム状に形成された周辺は、放電電極2に対して平面状をなしている。対向電極3は、高電圧発生回路4に接続されている。放電電極2の先端部は、対向電極3のミスト吐出口3aに向けて設置され、その基端部には熱電素子7が当接配置されている。
熱電素子7は、例えばBiTe系の熱電材料からなり、複数のN型とP型の熱電素子を、放電電極2と対向して配置された放熱電極8にそれぞれ電気的に接続されている。放熱電極8は、熱電素子7の冷却作用による発熱を放出するために平板状をなす。また、放熱電極8は、熱電素子7を駆動するための電圧を供給する熱電素子駆動回路5に接続されている。この場合、放電電極2は、熱電素子7を含む電気回路の一部を構成している。従って、熱電素子駆動回路5は、放熱電極8を介して熱電素子7に電源(数ボルト)を供給し、冷却作用を生じさせる。そして、熱電素子7は、放熱電極8を介して放熱動作を行いながら放電電極2を冷却することによって、空気中の水分から放電電極2に結露水を生じさせる。
【0015】
高電圧発生回路4は、電源回路9と、高圧トランス部10とを含む。高圧トランス部10は、電源回路9からの電圧を昇圧するトランス11を有する。電源回路9は、直流電源回路とスイッチング回路とを含み、トランス11の1次側巻線11aが接続されている。電源回路9は、トランス11の1次側巻線11aにパルス状の電源電圧Vinを印加させる。トランス11は、1次側巻線11aに印加されたパルス状の電源電圧Vinを高電圧の2次電圧に昇圧して2次側巻線11bから出力する。2次側巻線11bのプラス端子には、ダイオードD1のアノードが接続されている。ダイオードD1のカソードは、抵抗R1を介して対向電極3と接続されている。従って、2次側巻線11bから出力される2次電圧は、ダイオードD1と抵抗R1を介して対向電極3にプラスの高電圧(数キロボルト)として印加される。
【0016】
ここで、静電霧化装置1において、放電電極2の電位は、熱電素子駆動回路5にて数ボルトが印加されるものの、数キロボルトの高電圧が印加される対向電極3側から見れば接地電位(ゼロボルト)に近い電位となっている。そして、放電電極2の先端部に結露水を保持した状態で対向電極3に対して高電圧が印加されると、放電電極2と対向電極3との間に放電が生じる。
【0017】
放電動作において、放電電極2の先端部に保持された結露水は、帯電しクーロン力の働きにより結露水の液面が局所的に円錐形状(テーラーコーン)に盛り上がる。円錐形状に盛り上がった水は、その先端に電荷が集中して電荷密度が高密度となり、互いの電荷の反発力で弾けて、分裂・飛散(レーリー分裂)が繰り返されて静電霧化が行われる。そして静電霧化が行われ、活性種を含んだナノメータサイズの帯電微粒子水を大量に発生させる。発生した帯電微粒子水がミスト吐出口3aを通って放出される。
【0018】
ところで、静電霧化装置1は、放電電極2上の結露水が少なくなると、テーラーコーンが小さくなり、その先端と対向電極3までの距離が長くなって、放電電流I2が少なくなる。そして、放電電極2の水の量がさらに少なくなると、放電電極2上に結露水と対向電極3との間での放電ではなくなって、放電電極2と対向電極3との間での放電(空気放電)となり、静電霧化に移行しなくなる。
【0019】
反対に、放電電極2上の結露水の量が多くなると、テーラーコーンが大きくなり、その先端と対向電極3までの距離が短くなって、放電電流I2が増大する。そして、放電電極2上の結露水がさらに多くなると、対向電極3と結露水との距離が短くなり過ぎて、短絡電流が流れて狙った粒子径のミストが得られないとともに大量のオゾンが発生してオゾン濃度が高くなる。
【0020】
従って、空気放電を未然に防止するとともに、放電電極2に結露水が付着し過ぎて放電電流I2が流れ過ぎ大量のオゾンが発生するのを未然に防止する必要がある。つまり、制御回路6は、2次電圧を空気放電が発生する電圧(空気放電電圧)以下にするとともに、放電電流I2が流れ過ぎるときに2次電圧を低下させてオゾン濃度が高くならないように、トランス11にてその2次電圧を発生させる電源回路9の制御を行っている。
【0021】
このような制御を行うのに際し、制御回路6は、ダイオードD1と抵抗R1との間のノードN1と、抵抗R1と対向電極3との間のノードN2における電圧を入力し、放電電流I2を算出する。
【0022】
詳述すると、ノードN1の電圧V1は、抵抗R2を介してオペアンプ21の非反転入力端子に入力される。オペアンプ21の非反転入力端子は、自身の出力端子と抵抗R4を介して接続され、オペアンプ21の出力信号が抵抗R4を介して帰還されている。オペアンプ21の出力端子は制御回路6の入力端子に接続されている。オペアンプ21の反転入力端子は、所定電圧VDを抵抗分割する抵抗R6,R7間のノードN3に接続されている。オペアンプ21の反転入力端子には、所定電圧VDを分圧した基準電圧Vthが入力される。つまり、オペアンプ21は、ノードN1の電圧V1を増幅した出力電圧Vs1を制御回路6に出力する。
【0023】
同様に、ノードN2の電圧V2は、抵抗R3を介してオペアンプ22の非反転入力端子に入力される。オペアンプ22の非反転入力端子は、自身の出力端子と抵抗R5を介して接続され、オペアンプ22の出力信号が抵抗R5を介して帰還されている。オペアンプ22の出力端子は制御回路6の入力端子に接続されている。オペアンプ22の反転入力端子は前記ノードN3に接続され、該端子には前記基準電圧Vthが入力される。つまり、このオペアンプ22においても、ノードN2の電圧V2を増幅した出力電圧Vs2を制御回路6に出力する。
【0024】
ここで、抵抗R1を流れる電流I1は、ノードN1,N2における電圧V1,V2の差と抵抗R1の抵抗値から算出できる。また、抵抗R3を流れる電流I3は、ノードN2の電圧V2と抵抗R3の抵抗値から算出できる。従って、電流I3と電流I1との差分(I1−I3)から放電電流I2が算出できる。制御回路6は、このような放電電流I2を算出する式を備え、出力電圧Vs1,Vs2(電圧V1,V2)から放電電流I2の値を算出している。そして、制御回路6は、算出された放電電流I2に基づいて電源電圧Vinの大きさを調整し、トランス11の2次側巻線11bから出力される2次電圧を上記した好適な範囲内となるように制御する。
【0025】
このように対向電極3にプラスの高電圧を印加する構成を採用する本実施形態の静電霧化装置1においても放電電流I2を高精度に検出でき、放電電極2に付着する結露水の量が変化しても放電を安定させ、空気放電やオゾンの大量発生を未然に防止する制御が可能となっている。
【0026】
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)放電電極2と対向する対向電極3には、トランス11の2次側巻線11bで生じる高電圧がダイオードD1、抵抗R1を介して印加される。抵抗R1とダイオードD1との間のノードN1の電圧V1は抵抗R2を介してオペアンプ21に入力される。抵抗R1と対向電極3との間のノードN2の電圧V2は抵抗R3を介してオペアンプ22に入力される。そして、制御回路6は、オペアンプ21,22から出力された出力電圧Vs1,Vs2に基づいてノードN1,N2の電圧V1,V2を認識し、抵抗R1,R3の抵抗値から自身に流れる電流I1,I3を求め、放電電流I2を算出している。このように対向電極3にプラスの高電圧を印加する構成を採用した本実施形態の静電霧化装置1においても放電電流I2を高精度に検出でき、検出した放電電流I2に基づいて適切な制御を実施できる。そのため、空気放電やオゾンの大量発生を未然に防止しながら、好適量の帯電微粒子水を生成することができる。
【0027】
(2)放電電極2への液体供給としては、熱電素子7を用いて放電電極2自身を冷却し、空気中の水分から結露水を生じさせて供給する構成としている。そのため、液体を貯留・供給する装置が不要であり、また外部から液体を貯留させる手間を省略することができる。
【0028】
(第2実施形態)
以下、本発明を具体化した第2実施形態を図面に従って説明する。尚、本実施形態において、前記第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付してその説明を省略する。
【0029】
図2に示すように、本実施形態の静電霧化装置30では、高電圧発生回路31の高圧トランス部32において、トランス11の2次側巻線11bの途中の所定巻数位置にダイオードD2のアノードが接続される。カソードは、オペアンプ21の非反転入力端子に接続されている。この場合、2次側巻線11bの所定巻数位置で生じる電圧V3がダイオードD2を介してオペアンプ21に入力される電圧と、第1実施形態におけるノードN1の電圧V1が抵抗R2を介してオペアンプ21に入力される電圧とが同様となるようにダイオードD2のアノードの2次側巻線11bに対する接続位置(巻数位置)が設定されている。つまり、2次側巻線11bの途中の所定巻数位置で生じる電圧V3は2次側巻線11bの全体で生じる電圧よりも十分に低電圧のため、第1実施形態で用いた降圧のための抵抗R2が不要となり、高耐圧で高価なこの抵抗R2を省略した構成となっている。
【0030】
因みに、このようにオペアンプ21の非反転入力端子の接続態様が変更されても、オペアンプ21から出力される出力電圧Vs1は第1実施形態と同様になるため、制御回路6での放電電流I2の算出が同様に可能となっている。
【0031】
次に、本実施形態の特徴的な作用効果を記載する。
(1)前記第1実施形態の作用効果(1)と同様に、対向電極3に高電圧を印加する構成を採用しても、放電電流I2を高精度に検出でき、適切な制御を実施できる。
【0032】
(2)トランス11の2次側巻線11bの途中の所定巻数位置から低い電圧V3をダイオードD2を介してオペアンプ21に入力して、前記第1実施形態と同様に放電電流I2の検出が行われる。これにより、降圧のために第1実施形態で用いた抵抗R2が不要、すなわち高耐圧で高価な抵抗R2を省略できるため、装置30の低コスト化に寄与することができる。
【0033】
(3)本実施形態においても、放電電極2への液体供給として熱電素子7を用いることから、液体を貯留・供給する装置が不要で、また外部から液体を貯留させる手間を省略することができる。
【0034】
尚、本発明の実施形態は、以下のように変更してもよい。
・上記各実施形態では、放電電極2に液体を供給する手段として熱電素子7を用いて構成したが、例えば図3に示す静電霧化装置40のように、水溜め部41を設けるとともに、水溜め部41内の液体を毛細管現象等を利用して放電電極42に供給し、放電電極42と対向電極43との間で放電させる構成としてもよい。この場合、放電電極42に例えば水溜め部41内の基端部から先端部に向けて細い孔等を設け、毛細管現象が生じるようにする。尚、図3では、第1実施形態の高電圧発生回路4を備えているが、図2に示す第2実施形態の高電圧発生回路31に替えてもよい。
【0035】
・被放電電極は、上記各実施形態のような対向電極3の他、放電電極2との間で放電が生じるものであれば足り、必ずしも放電電極2と対向しているものに限らない。例えば、放電電極2の周囲を取り囲むように構成してもよい。
・上記各実施形態における回路構成は一例であるため、例えば高電圧発生回路4,31の回路構成を適宜変更してもよい。
・上記各実施形態では、放電電極2を熱電素子7を含む電気回路の一部として構成したが、放電電極2側の電気回路と熱電素子7側の電気回路とを独立して構成してもよい。
【0036】
〔付記A〕
放電電極との間に放電を発生させる被放電電極に高電圧を供給する高電圧発生手段から前記被放電電極に流れる電流である放電電流を検出する放電電流検出手段を備え、
前記放電電流検出手段は前記高電圧発生手段と前記被放電電極とを電気的に接続する経路に配置される第1抵抗と、前記第1抵抗を通過して前記被放電電極に向けて流れる電流を分流する経路に配置される第2抵抗とを備え、前記第1抵抗を流れる電流および前記第2抵抗を流れる電流を用いて前記放電電流を検出する
静電霧化装置。
〔付記B〕
前記放電電流検出手段は前記第1抵抗よりも前記高電圧発生手段側の部分の電圧を検出し、その電圧を用いて前記第1抵抗を流れる電流を検出し、前記第1抵抗と前記第2抵抗との間の部分の電圧を検出し、その電圧を用いて前記第2抵抗を流れる電流を検出する
付記Aに記載の静電霧化装置。
〔付記C〕
前記放電電流検出手段は前記高電圧発生手段を構成する2次側巻線の電圧を検出し、その電圧を用いて前記第1抵抗を流れる電流を検出し、前記第1抵抗と前記第2抵抗との間の部分の電圧を検出し、その電圧を用いて前記第2抵抗を流れる電流を検出する
付記Aに記載の静電霧化装置。
〔付記D〕
前記放電電流に基づいて前記高電圧を制御する制御手段をさらに備える
付記A〜Cのいずれか一項に記載の静電霧化装置。
〔付記E〕
前記制御手段は空気放電が発生しにくくなるように前記放電電流に基づいて前記高電圧を制御する
付記Dに記載の静電霧化装置。
〔付記F〕
前記制御手段はオゾンが発生しにくくなるように前記放電電流に基づいて前記高電圧を制御する
付記DまたはEに記載の静電霧化装置。
〔付記G〕
前記制御手段は前記放電電極と前記被放電電極との間に短絡電流が流れにくくなるように前記放電電流に基づいて前記高電圧を制御する
付記DまたはEに記載の静電霧化装置。
【符号の説明】
【0037】
1 :静電霧化装置
2 :放電電極
3 :対向電極(被放電電極)
3a :ミスト吐出口
4 :高電圧発生回路
5 :熱電素子駆動回路
6 :制御回路(制御手段)
7 :熱電素子(液体供給手段)
8 :放熱電極
9 :電源回路
10 :高圧トランス部
11 :トランス(高電圧発生手段)
11a:1次側巻線
11b:2次側巻線
21 :オペアンプ(第1オペアンプ、放電電流検出手段)
22 :オペアンプ(第2オペアンプ、放電電流検出手段)
30 :静電霧化装置
31 :高電圧発生回路
32 :高圧トランス部
40 :静電霧化装置
41 :水溜め部(液体供給手段)
42 :放電電極
43 :対向電極
D1 :ダイオード
D2 :ダイオード
N1 :ノード
N2 :ノード
N3 :ノード
R1 :抵抗(第1抵抗、放電電流検出手段)
R2 :抵抗(第3抵抗、放電電流検出手段)
R3 :抵抗(第2抵抗、放電電流検出手段)
R4 :抵抗
R5 :抵抗
R6 :抵抗
I1 :電流
I2 :放電電流
I3 :電流
V1 :電圧
V2 :電圧
V3 :電圧
VD :電圧
Vin:電源電圧
Vs1:出力電圧
Vs2:出力電圧
Vth:基準電圧
図1
図2
図3