(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、内燃機関の取付孔にねじ部を螺合した際には、ハウジングのうちねじ部の先端と圧接部との間に位置する部位が、ねじ結合の軸力や燃焼時におけるエンジンヘッドの変形等により軸方向に沿って縮み変形してしまうおそれがある。ハウジングが縮み変形してしまうと、可動部材を介して圧力伝達体に軸方向に沿った力が加わることとなってしまう。その結果、圧力伝達体からセンサ素子に対して伝達される圧力に前記軸方向に沿った力が加わることとなってしまい、燃焼圧を精度よく検知することができなくなってしまうおそれがある。
【0006】
本発明は、上記事情を鑑みてなされたものであり、その目的は、内燃機関に取付けた際の本体部の縮み変形を抑制することで、燃焼圧の検知精度を向上させることができる燃焼圧センサを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下、上記目的を解決するのに適した各構成につき、項分けして説明する。なお、必要に応じて対応する構成に特有の作用効果を付記する。
【0010】
構成
1.本構成の燃焼圧センサは、軸線方向に延びる軸孔を有する筒状のハウジングと、
前記軸孔内に配設されるとともに、一端側が前記ハウジングに固定され、前記軸線方向に沿って変位可能な可動部材と、
前記軸孔内に挿設されるとともに、外面が前記可動部材の他端側に固定され、先端部が外部に露出する棒状の圧力伝達体と、
前記ハウジングに直接又は間接的に固定されるとともに、前記圧力伝達体から加えられる圧力に基づいて信号を出力するセンサ素子とを備え、
前記ハウジングは、
内燃機関の取付孔に螺合するためのねじ部と、
前記内燃機関の取付孔に前記ねじ部を螺合した際に、前記内燃機関に対して圧接する圧接部とを有してなる燃焼圧センサであって、
前記ハウジングのうち前記ねじ部の後端と前記圧接部との中央に位置する部位よりも先端側に前記可動部材の一端側が固定されており、
前記可動部材と前記圧力伝達体との固定部位が、前記ハウジング内に配置されており、
前記ハウジングのうち前記ねじ部の先端及び前記圧接部の間に位置する部位に対して、前記軸線に沿った力を加えたときにおける、前記ハウジングのうち前記可動部材が固定された部位と前記ねじ部の先端との間の部位の圧縮量をAとし、前記ハウジングのうち前記可動部材が固定された部位と前記圧接部の先端との間の部位の圧縮量をBとしたとき、
A<B
を満たすことを特徴とする。
【0011】
上記構成
1によれば、燃焼圧センサを内燃機関に取付けた際に、圧縮変形したとしても圧力伝達体に影響を与えない部位(ハウジングのうち可動部材が固定された部位と
圧接部の先端との間の部位)が、圧縮変形した際に圧力伝達体に影響を与える部位(ハウジングのうち可動部材が固定された部位と
ねじ部の先端との間の部位)よりも縮み変形することとなる。従って、燃焼圧センサを内燃機関に取付けた際に圧力伝達体へと加わる軸方向に沿った力を効果的に低減することができ、燃焼圧の検知精度を向上させることができる。
【0012】
また、可動部材の一端側は、ハウジングのうちねじ部の後端と圧接部との中央に位置する部位よりも先端側に固定されている。このため、軸線に沿った可動部材の長さを比較的短くすることができ、圧力伝達体をより安定した状態で保持することができる。その結果、燃焼圧の検知精度を一層向上させることができる。
【0017】
構成
2.本構成の燃焼圧センサは、軸線方向に延びる軸孔を有する筒状のハウジングと、
前記軸孔内に配設されるとともに、一端側が前記ハウジングに固定され、前記軸線方向に沿って変位可能な可動部材と、
前記軸孔内に挿設されるとともに、外面が前記可動部材の他端側に固定され、先端部が外部に露出する棒状の圧力伝達体と、
前記ハウジングに直接又は間接的に固定されるとともに、前記圧力伝達体から加えられる圧力に基づいて信号を出力するセンサ素子とを備え、
前記ハウジングは、
内燃機関の取付孔に螺合するためのねじ部と、
前記内燃機関の取付孔に前記ねじ部を螺合した際に、前記内燃機関に対して圧接する圧接部とを有してなる燃焼圧センサであって、
前記ハウジングのうち前記ねじ部の先端と前記圧接部の先端との間に位置する部位に前記センサ素子が直接又は間接的に固定されており、前記ハウジングのうち前記センサ素子が固定された部位と前記圧接部との間に位置する部位に前記可動部材が固定されており、
前記ハウジングのうち前記ねじ部の先端及び前記圧接部の間に位置する部位に対して、前記軸線に沿った力を加えたときにおける、前記ハウジングのうち前記センサ素子が固定された部位と前記可動部材が固定された部位との間の部位の圧縮量をXとし、前記ハウジングのうち前記可動部材が固定された部位と前記圧接部の先端との間の部位の圧縮量をYとしたとき、
X<Y
を満たすことを特徴とする。
【0018】
上記構成
2によれば、ハウジングのうち圧縮変形することで圧力伝達体に影響を与える部位(ハウジングのうちセンサ素子が固定された部位と可動素子が固定された部位との間の部位)をより短くすることができる。そのため、燃焼圧センサを内燃機関に取付けた際に、圧力伝達体へと加わる軸方向に沿った力を効果的に低減することができる。
【0019】
さらに、燃焼圧センサを内燃機関に取付けたときに、ハウジングのうち圧縮変形したとしても圧力伝達体に影響を与えない部位(ハウジングのうち可動部材が固定された部位と圧接部の先端との間の部位)が、ハウジングのうち圧縮変形した際に圧力伝達体に影響を与える部位(ハウジングのうちセンサ素子が固定された部位と可動素子が固定された部位との間の部位)よりも縮み変形することとなる。そのため、燃焼圧センサを内燃機関に取付けた際に圧力伝達体へと加わる軸方向に沿った力をより一層低減することができ、燃焼圧の検知精度をさらに向上させることができる。
【0020】
構成
3.本構成の燃焼圧センサは、軸線方向に延びる軸孔を有する筒状のハウジングと、
前記軸孔内に配設されるとともに、一端側が前記ハウジングに固定され、前記軸線方向に沿って変位可能な可動部材と、
前記軸孔内に挿設されるとともに、外面が前記可動部材の他端側に固定され、先端部が外部に露出する棒状の圧力伝達体と、
前記ハウジングに直接又は間接的に固定されるとともに、前記圧力伝達体から加えられる圧力に基づいて信号を出力するセンサ素子とを備え、
前記ハウジングは、
内燃機関の取付孔に螺合するためのねじ部と、
前記内燃機関の取付孔に前記ねじ部を螺合した際に、前記内燃機関に対して圧接する圧接部とを有してなる燃焼圧センサであって、
前記ハウジングのうち前記ねじ部の先端と前記圧接部の先端との間に位置する部位に前記センサ素子が直接又は間接的に固定されており、前記ハウジングのうち前記センサ素子が固定された部位と前記圧接部との間に位置する部位に前記可動部材が固定されており、
前記ハウジングのうち前記ねじ部の先端及び前記圧接部の間に位置する部位に対して、前記軸線に沿った力を加えたときにおける、前記ハウジングのうち前記センサ素子が固定された部位と前記可動部材が固定された部位との間の部位の圧縮量をXとし、前記ハウジングのうち前記ねじ部の先端と前記センサ素子が固定された部位との間の部位の圧縮量をZとしたとき、
X<Z
を満たすことを特徴とする。
【0021】
上記構成
3によれば、ハウジングのうち圧縮変形することで圧力伝達体に影響を与える部位をより短くすることができ、燃焼圧センサを内燃機関に取付けた際に圧力伝達体へと加わる軸方向に沿った力を効果的に低減することができる。
【0022】
加えて、燃焼圧センサを内燃機関に取付けたときに、ハウジングのうち圧縮変形したとしても圧力伝達体に影響を与えない部位(ハウジングのうちねじ部の先端とセンサ素子が固定された部位との間の部位)が、ハウジングのうち圧縮変形した際に圧力伝達体に影響を与える部位よりも縮み変形することとなる。そのため、燃焼圧センサを内燃機関に取付けた際に圧力伝達体へと加わる軸方向に沿った力をより一層低減することができ、燃焼圧の検知精度を一層向上させることができる。
【0023】
構成
4.本構成の燃焼圧センサは、上記構成1乃至
3のいずれかにおいて、前記圧力伝達体のうち外部に露出する部位の少なくとも一部は、発熱体であることを特徴とする。
【0024】
上記構成
4のように、圧力伝達体のうち外部に露出する部位の少なくとも一部を発熱体とし、燃焼圧センサに燃焼室内を加熱する機能を付加することとしてもよい。この場合においても、上記構成1等と同様の作用効果が奏されることとなる。
【発明を実施するための形態】
【0026】
〔第1実施形態〕
以下に、実施形態について図面を参照しつつ説明する。
図1は、燃焼室内を加熱する機能を具備してなる燃焼圧センサの一例を示す一部破断正面図である。
【0027】
図1に示すように、加熱機能付き燃焼圧センサ(以下、「燃焼圧センサ」と称す)1は、筒状のハウジング2と、ハウジング2の先端から先端部が露出する圧力伝達体3と、燃焼圧を検知するためのセンサ構造体4とを備えている。
【0028】
ハウジング2は、それぞれ筒状をなす本体部21とキャップ部材22とが接合されてなり、軸線CL1方向に貫通する軸孔23を有している。
【0029】
前記本体部21は、所定の金属材料により形成されており、その外周面には、ディーゼルエンジン等の内燃機関の取付孔に螺合するためのねじ部24と、トルクレンチ等の工具を係合させるための断面六角形状の工具係合部25とが形成されている。
【0030】
加えて、前記キャップ部材22は、所定の金属材料により形成されており、自身の後端部が本体部21の先端部に対して接合されている。また、キャップ部材22は、圧接部26と、当該圧接部26から軸線CL1に沿って後端側に延びる筒状の円筒部27とを備えている。圧接部26は、円筒部27よりも厚肉(径方向の厚さを比較)に形成されており、軸線CL1方向先端側へと先細るテーパ状のテーパ面26aを有している。また、圧接部26のテーパ面26aは、内燃機関ENの取付孔HOに前記ねじ部24を螺合した際に、取付孔HOの奥側に形成されたテーパ状のシート面SEに対して圧接し、これにより内燃機関ENと燃焼圧センサ1との間がシールされるようになっている(
図4参照)。
【0031】
さらに、前記圧力伝達体3は、棒状の発熱体31と筒状のスリーブ32とが直列的に接続されることで構成されている。
【0032】
前記発熱体31は、チューブ33の内部に発熱コイル34及び制御コイル35が酸化マグネシウム粉末等の絶縁粉末36とともに封入されて構成されている。
【0033】
チューブ33は、鉄(Fe)又はニッケル(Ni)を主成分とする金属(例えば、インコネルやステンレス合金等)から形成されており、先端部が閉じた筒状をなしている。また、スウェージング加工等によって、チューブ33の後端側には、外径の比較的大きな圧入大径部33aが形成されている。一方で、チューブ33の先端側には、前記圧入大径部33aよりも小径であり、発熱コイル34が収容される発熱部33bが形成されている。
【0034】
前記発熱コイル34及び制御コイル35は直列接続されており、発熱コイル34の先端部がチューブ33の先端部に対して接合されている。加えて、発熱コイル34は、Feを主成分とし、クロム(Cr)やアルミニウム(Al)等を含有してなる抵抗発熱線により構成されている。一方で、制御コイル35は、発熱コイル34の材質よりも電気比抵抗の温度係数が大きい材質、例えばコバルト(Co)−Ni−Fe系合金等に代表されるCo又はNiを主成分とする抵抗発熱線により構成されている。これにより、制御コイル35は、自身の発熱及び発熱コイル34からの発熱を受けることにより電気抵抗値を増大させ、発熱コイル34に対する電力供給量を制御する。すなわち、通電初期においては発熱コイル34には比較的大きな電力供給がなされ、発熱コイル34の温度は急速に上昇する。一方で、発熱コイル34の発熱が進むと、その発熱等により制御コイル35が加熱されて制御コイル35の電気抵抗値が増大し、発熱コイル34への電力供給が減少する。従って、発熱体31の昇温特性は、通電初期に急速昇温した後、以降は制御コイル35の働きにより電力供給が抑制されて温度が飽和する形となる。つまり、制御コイル35の存在により、急速昇温性を高めつつ発熱コイル34の温度の過昇(オーバーシュート)も生じにくくすることができるようになっている。
【0035】
尚、所定の外部コントローラを用いて、発熱コイル34に対する電力の供給量を調節し、発熱コイル34の発熱を制御することとしてもよい。この場合には、前記外部コントローラの故障時における発熱コイル34の過昇温を制御コイル35により防止することができる。すなわち、発熱コイル34への電力供給量を積極的に調整するために制御コイル35を用いてもよいし、外部コントローラの故障時等において発熱コイル34への過電流の供給を防止するために制御コイル35を用いてもよい。
【0036】
前記絶縁粉末36は、チューブ33内において発熱コイル34及び制御コイル35の周囲に充填されている。そのため、発熱コイル34の先端部はチューブ33に対して電気的に接続されている一方で、発熱コイル34及び制御コイル35の外周面とチューブ33の内周面とは、絶縁粉末36の介在により絶縁された状態となっている。
【0037】
さらに、前記軸孔23の内部には、軸線CL1方向に延びる金属製の中軸5が設けられている。当該中軸5は、その先端部がチューブ33内に挿入されており、制御コイル35に対して電気的に接続されている。また、中軸5の後端部には、導電性の端子金具6が固定されており、端子金具6及び中軸5を介して、前記発熱コイル34側へと電力が供給されるようになっている。尚、前記チューブ33の後端部と中軸5との間には環状ゴム7が設けられており、チューブ33の内部は封止状態とされている。
【0038】
加えて、圧力伝達体3(発熱体31)は、
図2に示すように、金属製(例えば、SUS製)で筒状をなす可動部材8を介して本体部21に保持されている。具体的には、前記本体部21の先端部分には軸線CL1方向先端側に向けて突設された筒状の突起部28が設けられており、可動部材8の後端部に対して前記突起部28が圧入接合されている。すなわち、可動部材8の先端部は、ハウジング2のうちねじ部24の後端と圧接部26との中央に位置する部位よりも先端側に固定されている。その一方で、前記可動部材8の先端部には、前記チューブ33の圧入大径部33aが圧入接合されており、これにより、圧力伝達体3が本体部21に保持されている。
【0039】
さらに、前記可動部材8の略中央部分には、軸線CL1方向に沿って伸縮変形することで変位可能な蛇腹部81が形成されており、これにより、可動部材8は軸線CL1方向に沿って伸縮変形可能となっている。そして、発熱体31の先端部に圧力が加えられた際には、可動部材8の蛇腹部81が収縮変形し、この変形に伴って可動部材8に保持された発熱体31が、ハウジング2に対して軸線CL1方向後端側へと相対移動するようになっている。
【0040】
図1に戻り、前記スリーブ32は、所定の金属材料により形成されており、前記中軸5の外周側において、軸孔23の内周面及び中軸5の外周面に対してそれぞれ隙間をあけた状態で設けられている。また、スリーブ32の先端部には、前記発熱体31の後端部が圧入接合されている。このため、ハウジング2に対して発熱体31が相対移動することによって、スリーブ32もハウジング2に対して相対移動するようになっている。
【0041】
加えて、スリーブ32の後端部と中軸5との間には、環状の絶縁ゴム9が挿入されており、振動に伴う中軸5の後端部の振れ動きが防止され、中軸5とスリーブ32との接触が回避されるようになっている。また、スリーブ32の外周面の軸線CL1に沿った略中央部分には、軸線CL1を中心とした環状の溝部37が形成されており、当該溝部37に環状のOリング10が配設されている。当該Oリング10は、スリーブ32及び本体部21の双方に接触するように構成されている。これにより、エンジン等の内燃機関の駆動に伴ってスリーブ32が共振してしまうことを抑制でき、スリーブ32とハウジング2の軸孔とが接触・短絡してしまうことを防止できるようになっている。
【0042】
加えて、
図3に示すように、本体部21の後端側には、前記センサ構造体4が接合されている。センサ構造体4は、ケース41、並びに、当該ケース41内に配設されるセンサ素子42、歪部材43、及び、中継部材44等から構成されている。
【0043】
ケース41は、円筒状をなし、その後端部に、中軸5を挿通可能な孔部を有する後壁部(上壁部)を備えている。そして、前記本体部21の後端部に突出形成された筒状の取付部29を前記ケース41内に挿入した上で、当該ケース41及び取付部29を接合することで、本体部21にセンサ構造体4が接合されている。
【0044】
また、ケース41内には、スリーブ32の外径と略同一の外径を有する内壁部43aと、ケース41の内周面に接触する外壁部43bと、両壁部43a,43bを連接する後壁部43cとを備える環状の歪部材43が設けられている。加えて、ケース41内には、円筒状をなすとともに、中軸5を挿通可能な孔部が形成された後壁部44cを備えてなる中継部材44が設けられている。当該中継部材44は、前記歪部材43上に載置された状態となっており、歪部材43及び中継部材44の外周面はケース41の内周面に対して固定されている。さらに、歪部材43の内壁部43aの先端部には、前記スリーブ32の後端部分が接合されている。従って、発熱体31が圧力を受けることでスリーブ32が相対移動した際には、歪部材43の後壁部43cがスリーブ32に押圧されて変形するようになっている。
【0045】
加えて、歪部材43の後壁部43c上には、前記センサ素子42が配置されている。センサ素子42は、例えば、シリコン等の半導体基板上にピエゾ抵抗型素子を形成した公知の半導体歪みゲージにより構成されており、前記歪部材43の後壁部43cの変形の程度により自身の抵抗値が変化するものである。また、歪部材43の後壁部43cと対向する前記中継部材44の後壁部44c上には、中継基板45が配置されている。当該中継基板45は、センサ素子42に対してワイヤーボンディング又はフレキシブルケーブル(図示せず)により電気的に接続されており、センサ素子42の抵抗値を電圧値に変換・増幅する機能を有している。そして、変換・増幅された電圧値は、中継部材44に接続されたケーブル46を介してECU等の外部回路(図示せず)へと出力されるようになっている。
【0046】
さらに、本実施形態では、キャップ部材22がヤング率の比較的低い材料(例えば、チタン合金やアルミニウム等)により形成されている一方で、ハウジングはヤング率の比較的高い材料(例えば、炭素鋼やSUS等)により形成されている。すなわち、キャップ部材22のヤング率が、本体部21のヤング率よりも小さなものとされている。
【0047】
次に、上記のように構成されてなる燃焼圧センサ1の製造方法について説明する。尚、特に明記しない部位については、従来公知の方法により製造している。
【0048】
まず、発熱体31を製造しておく。すなわち、Feを主成分とする抵抗発熱線をコイル形状に加工して発熱コイル34を得るとともに、Co合金等の抵抗発熱線をコイル形状に加工して制御コイル35を得る。次いで、発熱コイル34の後端部分と制御コイル35の先端部分とを接合し、中軸5の先端と、当該中軸5と一体となった発熱コイル34及び制御コイル35とを先端の閉じていないチューブ33内に配置する。そして、アーク溶接によって、チューブ33の先端部分を閉塞させるとともに、チューブ33の先端部分と発熱コイル34の先端部分とを接合する。その後、チューブ33内に絶縁粉末36を充填した上で、チューブ33にスウェージング加工を施す。これにより、チューブ33に圧入大径部33a、及び、発熱部33bが形成されるとともに、中軸5と一体となった発熱体31が得られる。
【0049】
また、所定の合金に鍛造加工や転造加工等を施すことで、軸孔23やねじ部24等を有してなる本体部21を製造する。さらに、前記本体部21を構成する合金のヤング率よりもヤング率が小さい合金を用意し、当該合金に対して鍛造加工等を施すことで、キャップ部材22を製造しておく。また、所定の合金に対して鍛造加工等を施すことで、スリーブ32を得る。
【0050】
次いで、中軸5の後端部を切断して中軸5の長さを調整した上で、中軸5の外周側に前記スリーブ32を配置する。そして、レーザー溶接によって、スリーブ32の先端部と発熱体31(チューブ33)の後端部とを接合する。
【0051】
スリーブ32と発熱体31との接合後、スリーブ32の後端部及び中軸5の間に絶縁ゴム9を挿入した上で、スリーブ32の後端部分とセンサ構造体4の歪部材43(内壁部43a)とを接合する。その後、スリーブ32の外周部分にOリング10を配置した上で、前記本体部21内へとその後端開口から発熱体31及びスリーブ32を挿入する。そして、前記センサ構造体4のケース41を本体部21の後端部に接合する。また、センサ構造体4から軸線CL1方向後端側に突出した中軸5の後端部に対して端子金具6を圧入接合する。
【0052】
次に、予め製造した可動部材8に前記発熱体31を挿通する。そして、可動部材8の後端部に本体部21の突起部28を圧入した上で、可動部材8の外周面側からレーザービームを照射し、可動部材8の後端部と本体部21とを接合する。さらに、可動部材8の先端部に対して発熱体31(チューブ33)を接合する。
【0053】
最後に、キャップ部材22に発熱体31を挿通した上で、本体部21の先端部とキャップ部材22の後端部との接触面外縁にレーザービームを照射する。これによりキャップ部材22と本体部21とが接合され、上述した燃焼圧センサ1が得られる。
【0054】
以上詳述したように、本実施形態によれば、キャップ部材22のヤング率が本体部21のヤング率よりも小さくされているため、軸線CL1方向に沿った力が加えられた際には、本体部21よりもキャップ部材22の方が縮み変形しやすい。従って、燃焼圧センサ1を内燃機関ENに取付けた際に、圧縮変形したとしても圧力伝達体3に影響を与えないキャップ部材22をより大きく変形させることができる一方で、圧力伝達体3に影響を与える本体部21の変形量を比較的小さくすることができる。その結果、本体部21の変形に伴い圧力伝達体3へと加わる軸方向に沿った力を効果的に低減することができ、燃焼圧の検知精度の向上を図ることができる。
【0055】
また、可動部材8の先端部は、ハウジング2のうちねじ部24の後端と圧接部26との中央に位置する部位よりも先端側に固定されている。このため、軸線CL1に沿った可動部材8の長さを比較的短くすることができ、圧力伝達体3をより安定した状態で保持することができる。その結果、燃焼圧の検知精度を一層向上させることができる。
〔第2実施形態〕
次に、第2実施形態について、上記第1実施形態との相違点を中心に説明する。
【0056】
本第2実施形態における燃焼圧センサ101は、
図5に示すように、上記第1実施形態と比較して、特にキャップ部材122の構成が相違する。すなわち、キャップ部材122は、比較的厚肉の圧接部126と、当該圧接部126の後端から軸線CL1に延びる円筒部127を備える一方で、前記円筒部127の外周面に軸線CL1を中心として環状をなす凹状の薄肉部127aが設けられている。また、前記キャップ部材122としては、機械的強度の維持を図るべく、本体部21を構成する材料と同一の金属材料(例えば、炭素鋼やSUS等)により形成されている。
【0057】
以上、本第2実施形態によれば、キャップ部材122の円筒部127に薄肉部127aが設けられているため、燃焼圧センサ101を内燃機関ENに取付けた際には、キャップ部材122をより大きく変形させることができる一方で、本体部21の変形量を比較的小さくすることができる。これにより、本体部21の変形に伴い圧力伝達体3へと加わる軸方向に沿った力を低減することができ、燃焼圧の検知精度を向上させることができる。
〔第3実施形態〕
次いで、第3実施形態について、上記第1、第2実施形態との相違点を中心に説明する。
図6(a),(b)に示すように、本第3実施形態における燃焼圧センサ201において、センサ素子242は、ハウジング202の内部に設けられており、ハウジング202のうちねじ部224の先端と圧接部226の先端との間に位置する部位に対して間接的に固定されている。具体的には、
図7に示すように、ハウジング202の本体部221とキャップ部材222との間において両者に接合された筒状のスリーブ251と、当該スリーブ251の後端側内周に配置されるとともに、スリーブ251に嵌合されたストッパー部材253により少なくとも軸線CL1方向後端側への移動が規制された台座252とを介してセンサ素子242はハウジング202に固定されている。
【0058】
また、キャップ部材222は、圧接部226を有する第1部材261と、第1部材261の後端側に接合された第2部材262とを備えている。そして、第2部材262の先端側には、第1部材261の内径よりも外径が小径に形成され、当該第1部材261から径方向に離間して筒状の突起部271が設けられており、当該突起部271を介して可動部材208が第2部材262(ハウジング202)に固定されている。すなわち、ハウジング202のうちセンサ素子242が固定された部位P1と圧接部226との間に可動部材208の一端側が固定されている。
【0059】
加えて、第2部材262のうち、本体部221と第1部材261との間に位置する部位が、本体部221のうちその先端とねじ部224との間の部位、及び、第1部材261の円筒部227(圧接部226から後端側に延びる円筒状の部位)の少なくとも一方よりも(本実施形態では、両者よりも)厚肉に形成されている。尚、第1部材261を、ヤング率の比較的低い材料(例えば、チタン合金やアルミニウム等)により形成する一方で、第2部材262をヤング率の比較的高い材料(例えば、炭素鋼やSUS等)により形成することとしてもよい。
【0060】
また、本第3実施形態においては、
図6(a)に示すように、絶縁性セラミックからなる筒状の基体231と、当該基体231の内部に設けられた導電性セラミックからなる発熱素子232とを有するセラミックヒータ233、及び、セラミックヒータ233の後端側に設けられた円板状の中間部材234,235によって、圧力伝達体203が構成されている。そして、可動部材208の他端側に対して、圧力伝達体203(セラミックヒータ233)の外面が固定されている。尚、本実施形態では、セラミックヒータ233に対して、ハウジング202の内部に設けられた筒状の中軸281を介して電力が投入される。さらに、前記中軸281の内部に設けられた複数の信号線282を介して、センサ素子242からの信号が外部に出力されるようになっている。
【0061】
さらに、本第3実施形態においては、次の式(1)及び(2)のうち、少なくとも一方を満たすように構成されている。すなわち、
図7に示すように、ハウジング202のうちねじ部224の先端及び圧接部226の間に位置する部位に対して、軸線CL1に沿った力を加えたときにおける、ハウジング202のうちセンサ素子242が固定された部位P1と可動部材208が固定された部位P2との間の部位の圧縮量をXとし、ハウジング202のうち可動部材が固定された部位P2と圧接部226の先端との間の部位の圧縮量をYとし、ハウジング202のうちねじ部224の先端とセンサ素子242が固定された部位P1との間の部位の圧縮量をZとしたとき、X<Y…(1)、及び、X<Z…(2)の少なくとも一方を満たすように構成されている。
【0062】
以上、本第3実施形態によれば、ハウジング202のうち圧縮変形することで圧力伝達体203に影響を与える部位(ハウジング202のうち部位P1と部位P2との間の部位)をより短くすることができる。そのため、燃焼圧センサ201を内燃機関に取付けた際に、圧力伝達体203へと加わる軸方向に沿った力を効果的に低減することができる。
【0063】
さらに、燃焼圧センサ201を内燃機関に取付けたときに、ハウジング202のうち圧縮変形したとしても圧力伝達体203に影響を与えない部位(ハウジング202のうち部位P2と圧接部226の先端との間の部位や、ハウジング202のうちねじ部224の先端と部位P1との間の部位)が、ハウジング202のうち圧縮変形した際に圧力伝達体203に影響を与える部位(部位P1と部位P2との間の部位)よりも縮み変形することとなる。そのため、燃焼圧センサ201を内燃機関に取付けた際に圧力伝達体203へと加わる軸方向に沿った力をより一層低減することができ、燃焼圧の検知精度をさらに向上させることができる。
【0064】
尚、上記実施形態の記載内容に限定されず、例えば次のように実施してもよい。勿論、以下において例示しない他の応用例、変更例も当然可能である。
【0065】
(a)上記実施形態では、キャップ部材22のヤング率を本体部21のヤング率よりも小さくしたり、円筒部127の外周面に薄肉部127aを設けたりすることで
、軸線CL1に沿った力を加えたときにおいて、ハウジング2のうち可動部材8が固定された部位とねじ部24の先端との間の部位の圧縮量が、ハウジング2のうち可動部材8が固定された部位と圧接部26の先端との間の部位の圧縮量よりも小さくなる構成とされている。但し、このような構成を実現する手法は上記実施形態の手法に限定されるものではなく、例えば、キャップ部材22の円筒部27の肉厚を一定とした上で、円筒部27に軸線CL1を中心とする環状の湾曲部を設けたりすることで、上記構成を実現することとしてもよい。
【0066】
(b)上記第2実施形態では、円筒部127の外周面に薄肉部127aが設けられているが、
図8に示すように、円筒部127の内周面に薄肉部127bを設けることとしてもよい。この場合においても、上記第2実施形態と同様の作用効果が奏されることとなる。
【0067】
(c)上記実施形態において、圧力伝達体3は発熱体31を備えて構成されているが、発熱体31を備えることなく(つまり、加熱機能を省略して)燃焼圧センサを構成することとしてもよい。
【0068】
(d)上記実施形態では、センサ素子42として半導体基板上にピエゾ抵抗型素子を形成した半導体歪みゲージが用いられているが、センサ素子42はこれに限定されるものではなく、例えば、圧電素子等を用いることとしてもよい。
【0069】
(e)上記実施形態において、圧力伝達体3は、蛇腹部81を備える可動部材8により保持されているが、可動部材8の構成はこれに限定されるものではない。従って、例えば、筒状部と、当該筒状部の端部から径方向外側に膨出する鍔部とを有し、筒状部に対して鍔部が撓み変形可能な部材や、径方向に向けて湾曲変形することで軸線方向に沿って伸縮変形な筒状部材(いわゆる、メンブレン)などを可動部材として用いることとしてもよい。尚、メンブレンを用いる場合には、前記筒状部(前記筒状部材の先端側)に圧力伝達体3が固定されるとともに、前記鍔部(前記筒状部材の後端側)が本体部21に固定されることとなる。
【0070】
(f)上記第3実施形態では、ハウジング202の第2部材262に対して可動部材208が間接的に固定されているが、
図9に示すように、可動部材308の後端部を鍔状にし、第1部材361と第2部材362との間に挟み両者に接合することで、可動部材308をハウジング302に固定することとしてもよい。尚、この場合において、「ハウジングのうち可動部材が固定された部位」とあるのは、ハウジング302と可動部材308とが固定される部位のうち軸線CL1方向に沿って最も先端側に位置する部位P3をいう。すなわち、セラミックヒータ333を軸線CL1方向後端側へと相対移動させる可動部材308のうち、燃焼圧によって変位しない筒状の部位309と、第1部材361から径方向に離間し、燃焼圧によって変形する蛇腹部381との間が前記部位P3である。また、この
図9に示す構成では第2部材362を排除し、可動部材308の鍔状部とスリーブ251の鍔状に形成した先端部とを直接に接合することとしてもよい。
【0071】
(g)燃焼圧センサ1の形状等は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、チューブ33について、小径の発熱部33bを省略し、チューブ33の先端側の外径が略一定のストレート形状をなすように構成することとしてもよい。また、センサ素子の配設位置も特に限定されるものではなく、例えば、本体部21の内部にセンサ素子を設けることとしてもよい。
【0072】
(h)上記実施形態において、燃焼圧センサ1は、制御コイル35を備えているが、制御コイル35を省略し、発熱コイル34の後端を中軸5に対して直接接合することとしてもよい。