(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
振動入力に応じて変形する室壁から構成される密閉空間を備え、上記密閉空間内に液体が封入されてなる液体封入式防振ゴム装置であって、上記室壁が、ジエン系ゴムからなり、上記液体が、アミン基を持つベンゾトリアゾール系化合物を含有するグリコール系溶液からなることを特徴とする液体封入式防振ゴム装置。
上記アミン基を持つベンゾトリアゾール系化合物が、1H−ベンゾトリアゾール、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾールおよび5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールからなる群から選ばれた少なくとも一つである請求項1〜3のいずれか一項に記載の液体封入式防振ゴム装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のような液体封入タイプの防振ゴム装置では、環境温度,経時,耐久使用等に起因し、液体封入用の室壁を構成するゴム体中の老化防止剤等の成分が、封入液中に溶出する場合がある。そして、このような老化防止剤等の溶出が生じると、ゴム体が劣化し、耐久性が悪化するおそれがある。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、ゴム体中の成分が封入液中に溶出することによる、ゴム体の劣化および耐久性の悪化を解消することができる液体封入式防振ゴム装置の提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明の液体封入式防振ゴム装置は、振動入力に応じて変形する室壁から構成される密閉空間を備え、上記密閉空間内に液体が封入されてなる液体封入式防振ゴム装置であって、上記室壁が、ジエン系ゴムからなり、上記液体が、アミン基を持つベンゾトリアゾール系化合物を含有するグリコール系溶液からなるという構成をとる。
【0008】
すなわち、本発明者らは、前記課題を解決するため鋭意研究を重ねた。その研究の過程で、本発明者らは、液体封入タイプの防振ゴム装置において、そのゴム体中の老化防止剤等の成分が封入液中に溶出しないよう、ゴム体と封入液との界面に保護膜を形成することを想起した。しかしながら、ゴム体表面(封入液を封入する密閉空間を構成するゴム室壁の内周面)への保護膜の形成作業は、製造コストがかかるため、本発明者らは、封入液中に何らかの特殊な添加物を入れ、この添加物とゴム体表面との作用により、上記保護膜を、作業工程を経ずに形成することができないか検討し、更に研究を重ねた。その結果、上記特殊な添加物として、アミン基を持つベンゾトリアゾール系化合物を用い、これをグリコール系溶媒中に配合して封入液とし、かつ、上記ゴム体のポリマーとしてジエン系ゴムを用いると、上記封入液中の成分とジエン系ゴムの成分との作用によって、経時により、上記ゴム体表面に膜状物が形成されるようになり、ゴム体の劣化および耐久性の悪化を解消することができるようになることを突き止めた。
【0009】
より詳しく述べると、上記膜状物は、ベンゾトリアゾール系化合物からなるものである。すなわち、封入液中に溶解したベンゾトリアゾール系化合物が、ジエン系ゴムからなるゴム体表面に集まり、上記ベンゾトリアゾール系化合物のアミン基と、ジエン系ゴムのジエンの二重結合とが反応することにより、上記ベンゾトリアゾール系化合物からなる膜が、ゴム体表面に対し高密着に形成されるようになると考えられる。そして、上記ベンゾトリアゾール系化合物の分子構造等に起因し、ゴム体表面に対して緻密な膜が形成されるようになることから、この膜が、前記保護膜としての機能を発揮したものと考えられ、これにより、ゴム体中の老化防止剤等の成分が封入液中に溶出するのを抑える作用効果が得られたと考えられる。
【発明の効果】
【0010】
本発明の液体封入式防振ゴム装置は、ゴム体からなる室壁から構成される密閉空間を備え、上記密閉空間内に液体(封入液)が封入されてなる防振ゴム装置であって、上記室壁が、ジエン系ゴムからなり、上記液体が、アミン基を持つベンゾトリアゾール系化合物を含有するグリコール系溶液からなる。そのため、従来の液体封入タイプの防振ゴム装置にみられた、ゴム体中の成分が封入液中に溶出することによるゴム体の劣化および防振性能の低下を、解消することができる。また、本発明の液体封入式防振ゴム装置では、ゴム体と封入液との界面における保護膜の形成作業等といった特段の作業工程を伴わずに、経時により自然に、上記界面にベンゾトリアゾール系化合物とジエン系ゴムの成分とからなる膜が形成され、これにより上記問題を解消することができるため、製造コストの面でも優れている。
【0011】
特に、上記アミン基を持つベンゾトリアゾール系化合物の重量平均分子量(Mw)が300以下であると、より緻密なベンゾトリアゾール系化合物膜が形成され、それにより、ゴム体中の成分が封入液中に溶出するのをより一層抑えることができ、液体封入式防振ゴム装置として、より一層優れた性能を発揮することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施の形態について説明する。
【0014】
本発明の液体封入式防振ゴム装置は、先に述べたように、振動入力に応じて変形する室壁から構成される密閉空間を備え、上記密閉空間内に液体(封入液)が封入されてなる防振ゴム装置であって、上記室壁が、ジエン系ゴムからなり、上記液体が、アミン基を持つベンゾトリアゾール系化合物を含有するグリコール系溶液からなる。
【0015】
図1は、本発明の液体封入式防振ゴム装置の一実施の形態を示すものであり、この形態では、液封入防振マウントを示している。図において、1は厚肉筒状の防振ゴム体であり、その内部に主液室Aを形成している。上記防振ゴム体1の上部開口にはこれを閉鎖するように厚肉の金属製連結部材(金具)2が挿通配設され、上記防振ゴム体1の上端部と、上記連結部材2の外周面とが、接着剤等により接合されている。上記連結部材2の上面にはボルト2aが突設してあり、これにより振動体であるエンジンに連結される。また、上記防振ゴム体1の外周は、金属製連結部材の一部をなす筒状の金属側板5に対しても、接着剤等により接合されている。上記防振ゴム体1の下方には、薄肉のゴム膜3が配され、その上部を副液室Bとしており、上記副液室Bと上記主液室Aとは、仕切板4により区画されている。上記仕切板4,ゴム膜3およびその下方の金属製支持板6の外周は、上記側板5のコ字状に屈曲する下端部内に挟持され、これをかしめて、固定される。上記側板5と、これに連結する上記支持板6により、金属製連結部材が構成され、上記支持板6の下端に突設したボルト6aにより基体である車両本体に連結される。上記主液室Aおよび副液室Bの内部には、封入液が封入してある。さらに、上記仕切板4の外周部には液流路7が形成され、この液流路7は、上記仕切板4に設けられた連通孔4a,4bにより、上記主液室Aおよび副液室Bとそれぞれ連通している。そして、振動入力に伴い、上記防振ゴム体1が変形すると、封入液は上記液流路7を介して両液室A、Bを流通し、振動減衰を行う。
【0016】
図1では、防振ゴム体1やゴム膜3といったゴム部材が、前記「振動入力に応じて変形する室壁」に相当する。そのため、本発明では、上記ゴム部材が、ジエン系ゴムからなるものであることが必要である。
【0017】
上記ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR)、エチレン−プロピレン−ジエン系ゴム(EPDM)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。これらのなかでも、強度や低動倍率化の点で、天然ゴムが好適に用いられる。
【0018】
また、上記防振ゴム体1等のゴム部材の材料には、上記ジエン系ゴム以外にも、必要に応じ、カーボンブラック等の補強剤、加硫剤、加硫促進剤、老化防止剤、プロセスオイル等を適宜に配合しても差し支えない。
【0019】
上記加硫剤としては、例えば、硫黄(粉末硫黄,沈降硫黄,不溶性硫黄)等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0020】
上記加硫剤の配合量は、上記ジエン系ゴム100重量部(以下、「部」と略す)に対して、0.3〜7部の範囲が好ましく、特に好ましくは1〜5部の範囲である。すなわち、上記加硫剤の配合量が少なすぎると、充分な架橋構造が得られず、動倍率、耐へたり性が悪化する傾向がみられ、逆に加硫剤の配合量が多すぎると、耐熱性が低下する傾向がみられるからである。
【0021】
上記加硫促進剤としては、例えば、チウラム系,チアゾール系,スルフェンアミド系,アルデヒドアンモニア系,アルデヒドアミン系,グアニジン系,チオウレア系等の加硫促進剤があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0022】
上記加硫促進剤の配合量は、耐久性、耐熱性、耐へたり性の観点から、上記ジエン系ゴム100部に対して、0.1〜7部の範囲が好ましく、特に好ましくは0.3〜5部の範囲である。
【0023】
なお、上記チウラム系加硫促進剤としては、例えば、テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)、テトラブチルチウラムジスルフィド(TBTD)、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT)、テトラベンジルチウラムジスルフィド(TBzTD)等があげられる。
【0024】
また、上記チアゾール系加硫促進剤としては、例えば、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、2−メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、2−メルカプトベンゾチアゾールナトリウム塩(NaMBT)、2−メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩(ZnMBT)等があげられる。
【0025】
また、上記スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(NOBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N−t−ブチル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミド(BBS)、N,N′−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾイルスルフェンアミド等があげられる。
【0026】
上記老化防止剤としては、例えば、カルバメート系老化防止剤、フェニレンジアミン系老化防止剤、フェノール系老化防止剤、ジフェニルアミン系老化防止剤、キノリン系老化防止剤、イミダゾール系老化防止剤、ワックス類等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0027】
また、上記老化防止剤の配合量は、上記ジエン系ゴム100部に対して、1〜10部の範囲が好ましく、特に好ましくは2〜5部の範囲である。
【0028】
上記プロセスオイルとしては、例えば、ナフテン系オイル、パラフィン系オイル、アロマ系オイル等があげられる。これらは単独でもしくは二種以上併せて用いられる。
【0029】
また、上記プロセスオイルの配合量は、上記ジエン系ゴム100部に対して、1〜50部の範囲が好ましく、特に好ましくは3〜30部の範囲である。
【0030】
そして、上記のような各種材料を混練することにより調製したゴム組成物を、高温(150〜170℃)で5〜30分間、加硫することにより、防振ゴム体1等のゴム部材を作製することができる。この部材を用いて、
図1に示すような液体封入式防振ゴム装置を作製する。また、
図1における主液室Aおよび副液室B内部には、封入液を封入する必要があり、本発明では、上記封入液として、アミン基を持つベンゾトリアゾール系化合物を含有するグリコール系溶液が用いられる。
【0031】
上記アミン基を持つベンゾトリアゾール系化合物の重量平均分子量(Mw)は、300以下であることが好ましく、より好ましくは、重量平均分子量(Mw)が119〜200の範囲である。すなわち、上記ベンゾトリアゾール系化合物の重量平均分子量が上記範囲内であると、上記化合物からなる膜がより緻密に形成されるようになり、ゴム体中の成分が封入液中に溶出するのを抑える作用効果に、より一層優れるようになるからである。
【0032】
上記アミン基を持つベンゾトリアゾール系化合物としては、好ましくは、下記の一般式(1)で示される化合物が用いられる。すなわち、この化合物は、下記に示す化学構造から、緻密に集結することにより、ゴム体中の成分が封入液中に溶出するのを抑える効果が高いからである。
【0034】
そして、上記一般式(1)で示される化合物のなかでも、1H−ベンゾトリアゾール、4−メチル−1H−ベンゾトリアゾール、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールは、より緻密な膜を形成することができ、ゴム体中の成分が封入液中に溶出するのを抑える効果に、より一層優れることから、より好ましい。
【0035】
上記封入液の溶媒としては、エチレングリコール,ジエチレングリコール等のグリコール系溶媒が使用され、必要に応じ、水等が加えられる。
【0036】
そして、上記アミン基を持つベンゾトリアゾール系化合物の、上記溶媒に対する添加量は、5〜500mmol/Lとすることが好ましく、より好ましくは、添加剤量10〜100mmol/Lである。すなわち、上記範囲内で、上記アミン基を持つベンゾトリアゾール系化合物を配合することにより、ゴム体中の成分が封入液中に溶出するのを効果的に抑えることができるからである。
【0037】
ところで、
図1に示す液封入防振マウントを構成する、ゴム部材および封入液以外の他の部材には、通常、鉄、銅、アルミニウム、マグネシウム、鉛、錫、あるいはこれらの合金、ステンレス等の金属によって形成された部材が用いられる。なお、これら金属部材とゴム部材との接合には、必要に応じ、接着剤が用いられる。
【0038】
図1に示す液封入防振マウントは、本発明の液体封入式防振ゴム装置の一例として例示したものであり、自動車用のエンジンマウント等に適用することができるが、本発明は、エンジンマウント以外に、例えば、サスペンションブッシュ、ボデーマウント、サブフレームマウント、デフマウント等への適用も可能である。また、これらの自動車用の液体封入式防振ゴム装置以外にも、例えば、飛行機,フォークリフト,ショベルカー,クレーン等の産業用輸送車両、鉄道車両等の輸送機器に用いられる液体封入式防振ゴム装置にも適用可能である。
【実施例】
【0039】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0040】
まず、実施例および比較例に先立ち、下記に示す添加剤(i)〜(ix)を準備した。
【0041】
〔添加剤(i)〕
アミン基を持つベンゾトリアゾール系化合物{1H−ベンゾトリアゾール(SEETEC BT−R、シプロ化成社製)}
【0042】
〔添加剤(ii)〕
アミン基を持つベンゾトリアゾール系化合物{4−メチル−1H−ベンゾトリアゾールと、5−メチル−1H−ベンゾトリアゾールとの混合物(SEETEC TT−R、シプロ化成社製)}
【0043】
〔添加剤(iii)〕
アミン基を持たないベンゾトリアゾール系化合物{3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−(1,1−ジメチルエチル)−4−ヒドロキシ(TINUVIN 384−2、BASF社製)}
【0044】
〔添加剤(iv)〕
アミン基を持たないベンゾトリアゾール系化合物{メチル3−(3−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−5−t−ブチル−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(TINUVIN 1130、BASF社製)}
【0045】
〔添加剤(v)〕
アミン基を持たないベンゾトリアゾール系化合物{オクチル−3−[3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル]プロピオネート(TINUVIN 109、BASF社製)}
【0046】
〔添加剤(vi)〕
アミン系化合物{N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン(オゾノン6C、精工化学社製)}
【0047】
〔添加剤(vii)〕
フェノール系化合物{2,2′−メチレンビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)(ノクラックNS−6、大内新興化学工業社製)}
【0048】
〔添加剤(viii)〕
硫黄系化合物{2−メルカプトベンゾイミダゾール(ノクラックMB、大内新興化学工業社製)}
【0049】
〔添加剤(ix)〕
硫黄系化合物{ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル(ノクラックNBC、大内新興化学工業社製)}
【0050】
〔実施例1,2、比較例1〜8〕
図1に示す形状の液封入防振マウントを作製した。ここで、図示の防振ゴム体1に相当する加硫ゴム成形体は、天然ゴム(NR)100部と、酸化亜鉛5部と、ステアリン酸1部と、FEFカーボン50部と、ナフテンオイル20部と、老化防止剤1部と、加硫促進剤(N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾールスルフェンアミド)2部と、加硫促進剤(テトラチウラムジスルフィド)1部と、硫黄1部とを混練して得られたゴム組成物からなるものとした。また、封入液としては、エチレングリコール:プロピレングリコール=7:3(重量比)の割合で混合したものを溶媒とし、その溶媒に対し、上記添加剤(i)〜(ix)のいずれかを50mmol/L添加したものを用いた(比較例8は添加剤不含)。なお、封入液中に添加した添加剤の種類、およびその添加剤の官能基と重量平均分子量(Mw)は、後記の表1および表2に併せて示す。
【0051】
そして、このようにして得られた実施例および比較例の液封入防振マウントについて、下記の基準に従い、その特性の評価を行った。その結果を後記の表1および表2に併せて示した。
【0052】
〔耐液物性〕
液封入防振マウントを、80℃の温度条件下で240時間放置した後、上記液封入防振マウントの防振ゴム体の、封入液との接触面から、JIS7号ダンベル形状のゴム試験片を切り出した。そして、上記放置後の試験片の破断点強度(TS)および破断点伸び(EB)を、JIS K 6251に準拠して測定した。同様に、液封入前の防振マウントの防振ゴム体からも試験片を切り出し、そのTSおよびEBを測定(初期物性)した。これらの測定結果より、上記放置前後での、TSおよびEBの変化率(%)(ΔTSおよびΔEB)を算出した。
【0053】
【表1】
【0054】
【表2】
【0055】
上記表の結果から、封入液中へ特定の添加剤を加えた実施例では、何も加えなかった比較例8に比べ、耐液物性評価においてΔTSおよびΔEBが小さいことがわかる。そのため、液封入防振マウントの耐久特性において、良好な結果が得られるようになる。そして、上記結果より、封入液中への防振ゴム体からの成分抽出が抑えられていると考えられる。
【0056】
これに対し、比較例1〜7でも、実施例と同じく、封入液中に添加剤を加えたが、実施例のような効果を得ることができなかった。すなわち、比較例1〜3では、実施例と同じく、ベンゾトリアゾール系化合物を添加したが、この化合物は天然ゴムに対する反応基を持っておらず、耐液物性評価においてΔTSおよびΔEBが大きい結果となった。これにより、比較例1〜3の液封入防振マウントは、耐久特性において良好な結果が得られなかった。比較例4では、実施例と同じく、アミン基を有する化合物を添加したが、その分子構造や分子量、さらに封入液への難溶解性等が影響し、実施例のような効果が得られなかったと考えられる。比較例5〜7で使用の添加剤も、比較例1〜3と同じく、天然ゴムに対する反応基を持っておらず、そのため、実施例のような効果が得られなかったと考えられる。
【0057】
なお、実施例における耐液物性評価後の試験片(JIS7号ダンベル)の、封入液との接触面には、膜状物が確認されたのに対し、比較例のものには、このような膜はほとんど確認されなかった。
【0058】
また、実施例では、加硫ゴム成形体のポリマーが天然ゴムであったが、他のジエン系ゴムの場合でも、実施例と同様の結果が得られた。