特許第5654989号(P5654989)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5654989グッドパスチャー抗原結合タンパク質およびその検出
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5654989
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】グッドパスチャー抗原結合タンパク質およびその検出
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20141218BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20141218BHJP
   G01N 33/533 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   C12N15/00 A
   G01N33/53 DZNA
   G01N33/533
【請求項の数】9
【全頁数】58
(21)【出願番号】特願2011-519076(P2011-519076)
(86)(22)【出願日】2009年7月20日
(65)【公表番号】特表2011-528559(P2011-528559A)
(43)【公表日】2011年11月24日
(86)【国際出願番号】EP2009005258
(87)【国際公開番号】WO2010009856
(87)【国際公開日】20100128
【審査請求日】2012年7月9日
(31)【優先権主張番号】61/082,741
(32)【優先日】2008年7月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/085,211
(32)【優先日】2008年7月31日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511019546
【氏名又は名称】フィブロスタチン ソシエダ リミターダ
【氏名又は名称原語表記】FIBROSTATIN,SOCIEDAD LIMITADA
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100142907
【弁理士】
【氏名又は名称】本田 淳
(72)【発明者】
【氏名】サウス、ファン
(72)【発明者】
【氏名】レベルト、フェルナンド
【審査官】 森井 文緒
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−525023(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/070025(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00−15/90
C07K 1/00−19/00
G01N 33/53
PubMed
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
UniProt/GeneSeq
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
血液中を循環する77kDグッドパスチャー抗原結合タンパク質(GPBP)を検出する方法であって、
(a)GPBP結合分子の77kD GPBPに対する選択的結合を促進する条件下で、前記77kD GPBP結合する前記GPBP結合分子と血漿試料を接触させること、
(b)非結合GPBP結合分子、血漿、またはそれら両方を除去すること、および
(c)前記GPBP結合分子と前記血漿試料中の前記77kD GPBPとの間の複合体形成を検出すること、を含む方法。
【請求項2】
前記77kD GPBPは、配列番号4によるアミノ酸配列を有する、請求項記載の方法。
【請求項3】
前記GPBP結合分子が抗体を含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記方法は、ヒト血漿からの天然の循環する77kD GPBPを検出することを含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記検出することは、ELISA、免疫蛍光法、フローサイトメトリー、およびクロマトグラフィからなる群から選択される技術を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記血漿試料は、自己免疫疾患を有すると疑われるヒト対象から得られる、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記自己免疫疾患は、グッドパスチャー症候群および免疫複合体型糸球体腎炎からなる群から選択される、請求項に記載の方法。
【請求項8】
前記方法は、自己免疫疾患を有すると疑われるヒト対象の診断に使用される、請求項またはに記載の方法。
【請求項9】
尿グッドパスチャー抗原結合タンパク質(GPBP)を検出する方法であって、
(a)77kD GPBPまたは91kD GPBPに対するGPBP結合分子の選択的結合を促進する条件下で、前記77kD GPBPまたは91kD GPBPに結合する前記GPBP結合分子と尿試料を接触させること、
(b)非結合GPBP結合分子を除去すること、および
(c)前記尿試料中の前記77kD GPBPまたは91kD GPBPと、前記GPBP結合分子との間の複合体形成を検出すること、
を含む方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はグッドパスチャー抗原結合タンパク質に関する。
【背景技術】
【0002】
(相互参照)
本出願は、米国特許仮出願番号61/082741(2008年7月22日付で出願)及び61/085211(2008年7月31日付で出願)の利益を主張し、どちらの出願もその全体を本明細書に援用する。
(背景技術)
基底膜コラーゲンIVのα3鎖の非コラーゲン様(NC1)ドメイン[α3(IV)NC1]のコンフォメーションは、一部分においてリン酸化に依存している。グッドパスチャー抗原結合タンパク質(GPBP)(特許文献1および2)は、その超分子集合の間のα3(IV)NC1ドメインの構造異性化を触媒し、その結果、基底膜で複数のα3(IV)NC1配座異性体を生成し安定化させる、新規な非従来型のタンパク質キナーゼである。GPBPレベルの上昇は、グッドパスチャー(「GP」)疾患に関与する自己免疫反応をもたらす、非耐性化α3(IV)NC1配座異性体の産生と関連する。GP患者において、IV型コラーゲンα3鎖の非コラーゲン様C末端ドメイン(NC1)(「グッドパスチャー抗原」又は「GP抗原」)に対する自己抗体は、急速進行性糸球体腎炎および多くの場合に肺出血を引き起こし、これはGP症候群の2つの基本的な臨床症状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO00/50607
【特許文献2】WO02/061430
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
GPBPの同定は、自己免疫疾患、癌、タンパク質の誤った折りたたみが関与する障害、および異常なアポトーシスを治療するための化合物の同定法を提供し、これらの障害の可能性のある治療法も提供する。従って、新規GPBPアイソフォームの同定は、少なくともこれらの分野において有利であろう。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様において、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列からなる90%又はそれより高い純度の単離ポリペプチド(91kD GPBP)を提供する。
第2の態様において、本発明は、一般式 X−配列番号2(Xは検出可能なポリペプチドである)を有する実質的に精製された組換え型ポリペプチドを提供する。この態様の好ましい一実施形態において、検出可能なポリペプチドは、蛍光ポリペプチド及び結合対のポリペプチドメンバーからなる群から選択される。別の態様において、本発明は、本発明のこの第2の態様のポリペプチドをコードする実質的に精製された核酸を提供する。
【0006】
第3の態様において、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド(91kD GPBP)をコードする実質的に精製された核酸を提供する。好ましい一実施形態において、実質的に精製された核酸は、配列番号1の核酸、又はそのmRNA産物からなる。
【0007】
第4の態様において、本発明は、本発明の任意の態様の実質的に精製された核酸を含む
組換え型発現ベクターを提供する。
第5の態様において、本発明は、本発明の組換え型発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞を提供する。
【0008】
第6の態様において、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を有する実質的に精製されたポリペプチド(91kD GPBP)又は配列番号4を含む実質的に精製されたポリペプチド(77kD GPBP)を提供し、この場合、配列番号2又は配列番号4のポリペプチドは、305−344番目のアミノ酸残基GGPDYEEGPNSLINEEEFFDAVEAALDRQDKIEEQSQSEK(配列番号10)(番号付けは77kD GPBP内の位置に基づく)に直接的及び/又は間接的に関与する1以上の翻訳後修飾(PTM)を有する。好ましい一実施形態において、1以上のPTMは共有結合PTMを含む。別の好ましい実施形態において、1以上のPTMは、305−344番目のアミノ酸(配列番号10)内に共有結合PTMを含む。好ましい一実施形態において、1以上のPTMは、320−327番目の残基(EEFFDAVE、配列番号5)に直接的及び/又は間接的に関与する。別の好ましい実施形態において、1以上のPTMは、320−327番目の残基(EEFFDAVE、配列番号5)内に1以上の共有結合PTMを含む。この態様の様々な好ましい実施形態において、実質的に精製されたポリペプチドは、配列番号2(91kD GPBP)又は配列番号4(77kD GPBP)のアミノ酸配列を有するか、またはこれからなる。
【0009】
第7の態様において、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列を有する実質的に精製されたポリペプチド(91kD GPBP)又は配列番号4を含む実質的に精製されたポリペプチド(77kD GPBP)を提供し、この場合、配列番号2又は配列番号4のポリペプチドは、371−396番目の残基PYSRSSSMSSIDLVSASDDVHRFSSQ(配列番号9)(番号付けは77kD GPBP内の位置に基づく)に直接的及び/又は間接的に関与する1以上のPTMを含む。好ましい一実施形態において、1以上のPTMは、共有結合PTMを含む。別の好ましい実施形態において、1以上のPTMは、アミノ酸371−396(配列番号9)内に共有結合PTMを含む。好ましい一実施形態において、1以上のPTMは、直接的及び/又は間接的に388−392残基(DDVHR、配列番号6)に関与する。別の好ましい実施形態において、1以上のPTMは、388−392残基(配列番号6)内に1以上の共有結合PTMを含む。別の好ましい実施形態において、ポリペプチドは、305−344番目のアミノ酸残基GGPDYEEGPNSLINEEEFFDAVEAALDRQDKIEEQSQSEK(配列番号10)(番号付けは77kD GPBP内の位置に基づく)に直接的及び/又は間接的に関与する1以上のPTMをさらに含み、好ましくは1以上のPTMは共有結合PTMを含み、なお一層好ましくは1以上のPTMは、アミノ酸305−344(配列番号10)内に共有結合PTMを含む。別の好ましい実施形態において、1以上のPTMは、直接的又は間接的に320−327番目の残基(EEFFDAVE、配列番号5)に関与する。別の好ましい実施形態において、1以上のPTMは、320−327番目の残基(EEFFDAVE、配列番号5)内に1以上の共有結合PTMを含む。この態様の様々な好ましい実施形態において、実質的に精製されたポリペプチドは、配列番号2(91kD GPBP)又は配列番号4(77kD GPBP)のアミノ酸配列を有するか、またはこれからなる。
【0010】
第8の態様において、本発明は、本発明の第6又は第7の態様のポリペプチドと選択的に結合する、実質的に精製されたモノクローナル抗体を提供する。
第9の態様において、本発明は、配列番号2のポリペプチドと特異的に結合するが、配列番号4のポリペプチドとは結合しない、実質的に精製されたモノクローナル抗体を提供する。好ましい一実施形態において、モノクローナル抗体は、アミノ酸配列DGWKGRLPSPLVLLPRSARC(配列番号7)内のエピトープと結合する。
【0011】
第10の態様において、本発明は、血液中を循環するグッドパスチャー抗原結合タンパク質(GPBP)を検出する方法であって、
(a)GPBP結合分子のGPBPに対する選択的結合を促進する条件下で、GPBP結合分子と血漿試料を接触させること、
(b)非結合GPBP結合分子を除去すること、および
(c)GPBP結合分子と血漿試料中のGPBPとの間の複合体形成を検出すること、
を含む方法を提供する。
【0012】
第11の態様において、本発明は、尿グッドパスチャー抗原結合タンパク質(GPBP)を検出する方法であって、
(a)尿試料をGPBP結合分子と、GPBP結合分子のGPBPに対する選択的結合を促進する条件下で接触させること、
(b)非結合GPBP結合分子を除去すること、および
(c)尿試料中のGPBP結合分子とGPBPとの間の複合体形成を検出すること、
を含む方法を提供する。
【0013】
第12の態様において、本発明は、天然の77kD GPBPを単離する方法であって、
(a)血漿試料を硫酸アンモニウム沈殿させること、
(b)硫酸アンモニウム沈殿した血清試料に対してイオン交換クロマトグラフィ(IEC)を実施すること、
(c)天然の77kD GPBPを含むIEC画分を同定すること、
(d)天然の77−GPBPを含むIEC画分をゲル濾過クロマトグラフィ(GFC)すること、および
(e)天然の77kD GPBPを含むGFC画分を同定すること、
を含む方法を提供する。
【0014】
第13の態様において、本発明は、天然の91kD GPBPを単離する方法であって、
(a)尿試料を塩析沈殿すること、
(b)塩析タンパク質試料に対してダブルイオン交換クロマトグラフィ(IEC)を実施すること、および
(c)天然の91kD GPBPを含むIEC画分を同定すること、
を含む方法を提供する。
【0015】
第14の態様において、本発明は、天然のGPBPアイソフォームを単離する方法であって、
(a)血漿試料又は尿試料を、天然のGPBPと選択的に結合するGPBP結合分子を含むイムノアフィニティーカラムに通すこと、
(b)イムノアフィニティーカラムから血漿又は尿試料からの非結合タンパク質を洗い流すこと、および
(c)前記カラムから天然のGPBPアイソフォームを溶出させること、
を含む方法を提供する。
【0016】
好ましい一実施形態において、これらの方法は、例えば、以下の実施例においてさらに詳細に開示するように、天然の77kD GPBP及び天然の91kD GPBPを、それぞれ血漿及び尿から実質的に精製するために使用できる。別の好ましい実施形態において、GPBP結合分子はGPBP抗体を含む。別の好ましい実施形態において、抗体は本発明の新規モノクローナル抗体を含む。別の好ましい実施形態において、溶出ステップは、変性溶出緩衝液の使用を含む。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】COL4A3BPは、77kDa、91kDa及び120kDaのポリペプチドをコードする。Aにおいて、FLAG標識GPBP又はGPBPΔ26/CERT(10−20ng)を、示された抗体を用いたウェスタンブロットによって分析した。Bにおいて、細胞抽出物(50μg)をAにおけるのと同様に分析した。Cにおいて、対照細胞(−)から又はpc−n4’を発現する細胞からの抽出物(10μg)をAにおけるのと同様に分析した。Dにおいて、非トランスフェクト細胞(−)から又は示されたsiRNA発現プラスミドでトランスフェクトされた細胞からの抽出物(50μg)をAにおけるのと同様に分析した。グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ(GAPDH)をローディング対照およびsiRNA特異性として使用した。mAb e26と天然又は組換え型ポリペプチドとの反応性は、GPBPpep1(20μM)を抗体阻害ペプチドとして使用する場合に完全に消失した(非図示)。この図及び以下の図において、数字及び線分又は矢印は、それぞれ、MW標準又は反応性ポリペプチドのサイズ(kDa)及び位置を示す。この図および以下の図に示す結果は、少なくとも2つの独立した実験を代表するものである。
図2】91kDa及び120kDaのGPBPポリペプチドは、mRNA非標準翻訳開始の産物である。Aは、示されたプラスミドを構築するために使用したcDNAの略図である。Bにおいて、細胞抽出物(10μg)(エキソビボ)又は示されたプラスミド構築物を発現する個々の転写/翻訳混合物(インビトロ)を、mAb e26(エキソビボ)を用いたウェスタンブロット又はフルオログラフィー(インビトロ)によって分析した。非トランスフェクト細胞からの溶解物(エキソビボ)又はプラスミドを含まない混合物(インビトロ)を対照として使用した。Cにおいて、GPBPのN末端オープン・リーディング・フレーム(ORF)の配列(配列番号15)を1文字コードで表示し、対応するmRNAヌクレオチド配列(配列番号14)を大文字で表示する。灰色および黒色の文字は、それぞれ5’−UTR及びATRを示す。枠で囲んだのは、標準及び非標準翻訳開始のコドン及び残基である。Ab24によって標的とされるペプチド配列を灰色で強調する。右側の負の数は、標準翻訳開始部位(AUG又はMet、+1)からのコドン又は残基の位置を意味する。Dにおいて、示された位置に終止コドンを有さないか(−)又は有する、示されたプラスミド構築物を発現しない細胞(対照)又は発現する細胞からの抽出物(10μg)を、示された抗体を用いたウェスタンブロットによって分析した。Eにおいて、部分的に精製された細胞抽出物(50μg)を、示された反応種及び非反応性F(ab)Ab20(Cont)を用いたウェスタンブロットによって分析した。
図3】91kDa及び120kDaのGPBPアイソフォームは不溶性膜結合ポリペプチドである。Aにおいて、無傷細胞を、αGPBP−Alexa Fluor647抗体(αGPBP−AF647)とともに、GPBPpep1又は等モル量の非関連性ペプチド(Contpep)及び生細胞のミトコンドリア染色のためのローダミン123の存在下でインキュベートし、共焦点顕微鏡法によって分析した。スケールバーは21μMである。Bにおいて、細胞を分離し、ビオチニル化αGPBP抗体の非存在下(対照)又は存在下(αGPBP)でブロッキング溶液とともにインキュベートした。細胞表面結合抗体は、ストレプトアビジン−FITC及びフローサイトメトリーを用いて検出した。対照として、平行培養物(parallel culture)を同じ抗体とともにGPBPpep1の存在下(αGPBP+GPBPpep1)又は等モル量の非関連性ペプチドの存在下(αGPBP+Contpep)でインキュベートし、同様に分析した。Cにおいて、同様の量(10μg)の示された細胞画分を、示されたタンパク質の抗体を用いたウェスタンブロットにより分析した。本発明者等は、細胞区画マーカーとして:ミトコンドリアについてはピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)、リソソームについてはカテプシンD、ミクロソームについてはプリオンタンパク質(PrP)、および核及びサイトゾルについては核因子カッパB(p65)を使用した。GPBP及びGPBPΔ26/CERT検出のために、本発明者等は、mAb e26及びmAb 14をそれぞれ使用した。本発明者等は、サイトゾルにおいて77kDaのGPBPの発現を検出しなかったので、この区画におけるmAb 14反応性は、GPBPΔ26/CERTに起因すると考えることができる。
図4】77kDaのGPBPアイソフォームは、培養細胞においてIV型コラーゲンと相互作用する。Aにおいて、HEK293又はHEK293−FLAG−α3(IV)細胞を架橋し、溶解させ、αFLAG抽出した。50マイクログラムの細胞溶解物(インプット)又は対応するFLAG−免疫沈降物質(IP αFLAG)を、逆架橋(reversed cross−link)し、クマシーブルー染色又はαGPBPrを用いたウェスタンブロットによって分析した。FLAG−免疫沈降物(矢印)中の主な特異的ポリペプチドを切除し、MALDI/TOF/TOF質量分析法によって同定した。Bにおいて、HEK293(−)又はHEK293−FLAG−α3(IV)(+)細胞を、pcDNA3(−)又はpc−n4’(+)でトランスフェクトし、架橋し、処理し、示された抗体を用いたウェスタンブロットによりAにおけるのと同様に分析した。
図5】77kDaのGPBPの細胞外区画への排出。Aにおいて、HeLa細胞を示されたプラスミド構築物でトランスフェクトし、示されたタンパク質を標準的間接免疫蛍光法によって可視化した。DNAを、核視覚化のために4’−6’−ジアミノ−2−フェニルインドール(DAPI)で染色した。原倍率×400。BおよびCにおいて、示されたプラスミド構築物(溶解物)を発現する細胞由来の抽出物(10μg)または対応する培地由来のFLAG−免疫沈降物(培地IP)を、示された抗体を用いたウェスタンブロットによって分析した。
図6】91kDa GPBPは、培養細胞における77kDa GPBP分泌を調節する。Aにおいて、組換え91kDa GPBPを発現するか(c8)又は発現しない(c19)2つの独立したクローン由来の抽出物(10μg)を、天然の91kDa GPBPとあまり反応しないmAb14抗体を用いたウェスタンブロットによって分析した(図1B)。Bにおいて、同じクローンをpc−FLAG−GPBPでトランスフェクトし、細胞抽出物(溶解物)又は対応する培地由来のFLAG−免疫沈降物(培地IP)を、示された抗体を用いたウェスタンブロットによって分析した。c8と類似した組換え91kDaのGPBPのレベルを発現する独立したHEK293クローンであるc14を分析すると、同様の結論が得られた(非図示)。
図7】GPBPではなくGPBPΔ26/CERTがスフィンゴミエリナーゼ細胞処理に対して感受性である。Aにおいて、HeLa細胞を示されたプラスミド構築物でトランスフェクトし、スフィンゴミエリナーゼで処理するか(+)又は処理せず(−)、溶解させ、FLAG−免疫沈降させ、αFLAG抗体(bSMase)を用いたウェスタンブロットによって分析した。未処理細胞由来の免疫沈降物をホスファターゼとともにインキュベートするか(+)又はインキュベートせず(−)、同様に分析した(λPPase)。本発明者等は8−12%勾配ゲル及び広範囲電気泳動(extensive electrophoresis)を用いてGPBPΔ26/CERTのリン酸化型及び脱リン酸化型を分離し、ウェスタンブロット及びデンシトメトリーによってそれらの相対的存在量を推定した。Bにおいて、Aにおけるのと同じ細胞をメタノール/アセトンによって固定し、抗FLAG−FITC抗体(緑)及びDAPI(青)で二重標識し、直接免疫法によって分析した。原倍率×400。
図8】循環する77kDa GPBPのレベルは、グッドパスチャー患者及び免疫複合体型糸球体腎炎の動物モデルにおいて上方調節される。Aにおいて、イムノアフィニティークロマトグラフィによってグッドパスチャー患者血漿交換から単離された物質を、GPBP特異性抗体の存在下(αGPBP)又は非存在下(対照)でのウェスタンブロットによって分析した。Bは、組換えGPBPを用いて示された物質および方法におけるのと同様にして実施したELISAから得られた標準曲線を表すプロットである。C及びDは、同様のELISAによって測定された任意単位(A.U.)での蛍光強度(I.F.)の散布図である。健常なドナー(対照)、グッドパスチャー患者(GP)、および示された月齢のNZWマウスから得た血清を1:10に希釈した。血清の非存在下での蛍光をバックグラウンドと見なし、個々の値から差し引いた。どちらの系においても、P<0.001であった。線分は、各系の平均を表し、円は個々の試料の平均値を表す。A−Dにおいて、αGPBPrは捕捉抗体であり、αGPBPabは検出抗体であった。
図9】mAb 14の結合部位は、GPBPのFFATモチーフに位置する。Aにおいて、1文字コードで表されているのは、GPBP(残基316−333)(配列番号8)におけるFFATモチーフ及びフランキング領域の一次構造並びにGPBPΔFFAT(配列番号29)におけるホモローガスな領域であり、図中、点線はFFATモチーフ(枠中)内の欠失残基を示す。Bにおいて、示されたタンパク質を発現する細胞抽出物(10μg)を、示された抗体を用いたウェスタンブロットによって分析した。
図10】組換えGPBP発現は、サイトゾルにおけるGPBPポリペプチドの蓄積を誘発する。細胞を示されたプラスミド構築物でトランスフェクトし、トランスフェクションの一日後に集め、実施例1の物質および方法で示されたように分別に付し、示された抗体を用いて図3Cにおけるのと同様にウェスタンブロットによって分析した。矢印及び数字は、異なるGPBPポリペプチドの位置及びM(kDa)を示す。120kDaポリペプチドは、主にリソソーム分画において見いだされ、少量でミクロソーム分画において見いだされ、このことは分泌経路において生じた91kDaの共有結合修飾型であることをさらに示唆する。さらに観察されることとしては、サイトゾル中に存在する91kDaポリペプチドに対してmAb e26が示す比較的低い反応性(ポリペプチドがサイトゾル又はミクロソーム中に存在する場合、mAb e26をmAb 14反応性と比較する−150,000×g)が挙げられる。
図11】細胞外77kDa GPBPは、mAb e26とあまり反応しない。pc−FLAG−GPBPでトランスフェクトされた細胞を溶解させ、対応する培地をFLAG−免疫沈降に付した。同様の量の細胞抽出物(溶解物)又は免疫沈降物(培地IP)を、示された抗体を用いたウェスタンブロットによって分析した。
図12】化学的技術を用いて血漿試料から単離されたGPBPのウェスタンブロット分析。約1.25mLのヒト血漿から部分的に精製されたGPBP(実施例2を参照)を、HRP標識mAb N27を用いて還元条件下でウェスタンブロットにより分析した。矢印及び数字は、反応性ポリペプチドの位置及び推定Mを示す。
図13】イムノアフィニティークロマトグラフィを用いて対照ドナーの尿から単離されたGPBP。250ミリリットルの対照ドナーからの尿(あらかじめ遠心分離によって精製し、Trisで中和)を、200μgのウサギポリクローナル抗GPBP抗体と結合させたセファロース4Bの1mLカラム上にかけた。カラムを30mLのTBSで洗浄し、結合物質をGentle Immunopure(商標)Elution Buffer(Pierce)で溶出させた。溶出された物質をTBSに対して透析し、GPBP特異性ニワトリポリクローナル抗体(αGPBPch)及びHRP標識抗ニワトリIgY(二次抗体)を用いたウェスタンブロットによってさらに分析した。二次抗体で同じ物質をロードした対照レーンを染色することによって、抗体特異性を確認した(Cont)。線分と数字又は矢印と数字は、それぞれ、MW標準(左)又はGPBPポリペプチド(右)の位置とサイズ(kDa)を示す。
図14】尿試料中のGPBPを検出するための間接ELISA。尿中で希釈した組換えGPBP及び7人のドナー(1−7)からの尿試料をELISAプレート上に一夜4℃でコーティングした。プレートをPBS中3%BSAでブロックし、GPBP特異性ニワトリポリクローナル抗体(αGPBPch)及びHRP標識抗ニワトリIgY(二次抗体)を用いて免疫検出を実施した。Amplex UltraRed試薬(Invitrogen)を用いてプレートを発色した。Aには、示されたGPBP濃度対蛍光強度(F.I.)(任意単位(A.U.)で表示)のlog−logスケールでの散布図を表す。Bには、均等目盛上にプロットされた示された濃度およびそれらの各F.I.値を用いて計算した線形回帰線を表し、これを用いてDでGPBP試料濃度を決定した。Cには、二次抗体(Cont)、非特異的ニワトリIgY及び二次抗体(IgY)、又はαGPBPch及び二次抗体(αGPBPch)を用いてドナー試料を分析して得られた生データを表す。Dにおいて、表は、Bで得られた曲線を用いた対応する変換データを示す。
図15】尿試料の塩析及びイオン交換クロマトグラフィ。遠心分離によって精製した400ミリリットルの尿を0.85MのNaClに一夜4℃で加え、10.000×gで30分間4℃にて遠心分離に付した。その後の分析に採用するために、上清の試料(Spt 0.85M NaCl)を4℃で保存した。結果として得られたペレットを50mMのTris(pH7.5)中に溶解させ、同緩衝液に対して透析し、0.7mLのCM樹脂で抽出し、非結合物質を0.5mLのDEAE樹脂でさらに抽出した。CM樹脂を1MのNaCl、50mMのTris(pH7.5)で溶出し(CM、1M NaCl)、DEAE樹脂を続いて0.35MのNaCl、50mMのTris(pH7.5)(DEAE、0.35M NaCl)及び1MのNaCl、50mMのTris(pH7.5)(DEAE、1M NaCl)で溶出した。DEAE抽出の上清(Spt CM/DEAE)を有する等量の各試料を、GPBP特異性ニワトリポリクローナル抗体及びHRP標識抗ニワトリIgY(αGPBPch)を用いたウェスタンブロットによって分析した。非特異的反応性ポリペプチドを、HRP標識抗ニワトリIgY(Cont)のみを用いて平行分析を染色することによって同定した。線分と数字又は矢印と数字は、それぞれ、MW標準(左)又は抗GPBP抗体と特異的に反応し、SptCM/DEAEにおいてのみ検出されたポリペプチド(右)の位置及びサイズ(kDa)を示す。
図16】個々のN1−N28モノクローナル抗体を用いてHEK293細胞において産生された細胞内及び細胞外FLAG−GPBPのウェスタンブロット分析。上側の合成画像では、組換えFLAG−GPBPを発現するHEK293細胞からの全タンパク質抽出物10μgを、N1−N28抗体(1−28)を用いたウェスタンブロットに付した。完全長組換えGPBPポリペプチドを表す約77kDaの主なポリペプチドと、低M(45−77kDa)の誘導ポリペプチドの変動し得る存在が観察された。下側の合成画像では、同じ抗体を、HEK293細胞を発現するFLAG−GPBPの培地から抗FLAG免疫沈降によって精製された細胞外組換えGPBP(77kDaのポリペプチド)に対して分析した(Revert et al. 2008 J. Biol. Chem. 283:30246−55)。完全長FLAG−GPBPポリペプチドを表す主なポリペプチド約77kDaが、二次抗体(抗マウスIgG)と反応し免疫沈降性抗体(マウス抗FLAG IgG)からの誘導産物であると思われる低Mの少量の非特異的ポリペプチド(Conj)とともに検出された(非図示)。特に別段の記載がない限り、このウェスタンブロット及びその後のウェスタンブロットにおいて、1−28はN1−N28であり、抗マウス−HRP及び化学発光を発色目的で使用した。
図17】N1−N27モノクローナル抗体を用いたHEK293細胞抽出物のウェスタンブロット分析。50μgのHEK293細胞抽出物を、示された抗体を用いたウェスタンブロットによって分析した。抗体は、4つの異なるGPBP関連ポリペプチド、すなわち77kDaの標準的ポリペプチド、45kDaの断片、88kDaのバンド、及び91kDaのポリペプチド(mAb e26によっても標的とされる)を認識した。矢印によって示されるポリペプチドは、二次抗体(抗マウスIgG HRP標識)によって認識され、したがってGPBP産物ではない。88kDaのポリペプチドの起源は未知であるが、そのMrは、これが77kDaの標準的ポリペプチドのリン酸化型であることを示唆する。
図18】GPBP欠失変異体のクローニング。Aにおいて、GPBP(配列番号4)の一次構造に関して、標準的PCR及び組換えDNA手順によって得られた13の3’末端FLAG−GPBPcDNA欠失変異体(1−13)のC末端(折れ曲がった矢印)を示す。Bにおいては、欠失変異体7(上側の枠)及び8(下側の枠)のC末端領域を含むGPBPの配列を示す。各レーンにおいて、最後の残基の数字を表示する。Δ1は残基285−304が欠失したFLAG−GPBP欠失変異体であり、同様にΔ2−Δ4変異体は、それぞれ残基305−324、325−344及び345−364が欠失している(配列番号30−33)。太字配列(配列番号8)のペプチドは、GPBPと結合するmAb 14と有効に競合し、配列Ala Ala Valを下線の残基の代わりに含むGPBP変異体はmAb 14と反応しなかった。Cにおいて、個々のpCDNA3−FLAG−GPBPΔ1(Δ1)−pCDNA3−FLAG−GPBPΔ4(Δ4)でトランスフェクトされたHEK293細胞のタンパク質抽出物を、SDS−PAGE及び示された抗体を用いたウェスタンブロットによって分析した。同様の結果が、領域7−8:N4、N7、N9、N11、N14、N25、N27、N28(N22と同様);及びN2、N3、N5、N10、N12、N13(N8と同様)で表1に含まれる残りの抗体について得られた。N16抗体はマッピングしなかった。
図19】91kD GPBPの配列(配列番号2)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書で言及される全ての参照文献は、全体として参照することによって本明細書に組み込まれる。本出願内で、特に別段の記載がない限り、利用される技術は、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrook,et al.,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Press),Gene Expression Technology(Methods in Enzymology,Vol.185,edited by D.Goeddel,1991.Academic Press,San Diego,CA),“Guide to Protein Purification”in Methods in Enzymology(M.P.Deutshcer,ed.,(1990)Academic Press,Inc.);PCR Protocols:A Guide to Methods and Applications(Innis,et al.1990.Academic Press,San Diego,CA),Culture of Animal Cells:A Manual of Basic
Technique,2nd Ed.(R.I.Freshney.1987.Liss,Inc.New York,NY),Gene Transfer and Expression Protocols,pp.109−128,ed.E.J.Murray,The Humana Press Inc.,Clifton,N.J.),およびAmbion 1998 Catalog(Ambion,Austin,TX)などのいくつかの周知の参照文献のいずれかに見いだすことができる。
【0019】
本明細書で用いられる場合、数詞を限定しない対象は、文脈で別段の明示の記載がない限り、複数の対象を包含する。本明細書で用いられる「及び」は、別段明示の記載がない限り、「又は」と交換可能に用いられる。
【0020】
本出願で用いられる場合、「天然のタンパク質」という用語は、任意の翻訳後修飾(PTM)を有する、細胞によって自然に生産されるタンパク質を意味し、非変性タンパク質、又は変性タンパク質(たとえば、実質的に精製され、1以上の変性剤に付されて、たとえばSDS−PAGEゲルにかけられた、天然に生産されたタンパク質)を包含する。
【0021】
本出願で用いられる場合、「実質的に精製されたポリペプチド」とは、ポリペプチドが、そのインビボ細胞環境から分離されたことを意味する。単離されたポリペプチドが、ポリアクリルアミド、アガロース、およびクロマトグラフィ試薬などのゲル剤(gel agent)をも実質的に含まないことがさらに好ましい。
【0022】
文脈で別段の明示の記載がない限り、本発明の一態様に関して開示された実施形態を、本発明の他の態様および本発明の他の態様でも用いることができ、開示された他の実施形態との組み合わせで用いることができる。
【0023】
第1の態様において、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列からなる90%又はそれより高い純度の単離されたポリペプチド(91kD GPBP)を提供する。本発明者らは
、WO2004/070025において先に提案された91kDのGPBPの仮定された配列が正しくないことを見出し、本願で天然の91kDのタンパク質を単離し、その正しいアミノ酸配列を見出し、これを配列番号2で示す。図19は、91kD GPBPの配列を示し、太字の筆記体で下線付きの形態で、NからC末端まで、それぞれAb24、mAb 14及びmAb e26のエピトープを含むアミノ酸残基を示す。標準的77kDa GPBP(配列番号4)の最初の残基(Met)を、図中では太字かつ枠で囲んで強調している。このように、91kDa及び77kDaのGPBPは、強調した「Met」残基からタンパク質の末端までのアミノ酸配列において一致する。以下で示す様に、本発明者らは、GPBPのmRNAが標準的(AUG)及び非標準(ACG)翻訳開始を受けて、それぞれ77kDa及び91kDaの2つの一次ポリペプチドを生成する有力な証拠を得た。この研究から得られる結果は、両生成物が分泌経路に入ることも裏付ける。しかし、77kDaが細胞外区画に達し、可溶性免疫沈降性形態で存在するのに対して、91kDaは、細胞膜と結合して主に不溶性のままであり、細胞膜の外面に到達する可能性が高い。この証拠は、120kDaのGPBPアイソフォームが91kDaのGPBPの共有的誘導産物であり(すなわち唯一の違いが翻訳後修飾である)、したがって91kDaのポリペプチドのアミノ酸配列を共有することを裏付ける。したがって、本明細書において用いられる場合、「91kDa GPBP」という用語は、91kDa及びその翻訳後修飾、たとえばこれらに限定されるものではないが、120kDaのGPBP、並びに91kDa及び120kDaのGPBPの凝集体を包含する。本発明は、91kDa GPBPが血漿及び尿において可溶性形態で存在することのさらなる証拠を提供し、91kDa GPBPが細胞膜から放出され得ることを明らかにする。本発明のこの態様のポリペプチドを、たとえば91kDa GPBPに対する抗体を産生するために使用することができ、GPBP活性を妨害する化合物の同定の標的として使用することができ、これによって、グッドパスチャー症候群をはじめとする様々な障害の有用な治療法となる。
【0024】
したがって、本発明者らのデータは、mRNA選択的翻訳開始は、分泌経路、細胞膜及び細胞外区画を包含する複数の場所へGPBPを向かわせる方法であるという概念を裏付ける。
【0025】
本発明のこの態様及び他のポリペプチド態様並びに実施形態において、ポリペプチドを用いて、たとえば、血清又は尿中に存在する天然のGPBPの異なるアイソフォームを検出するための特異抗体を生成させることができ、これらはしたがって、たとえば自己免疫疾患及び他の障害の診断薬として使用することができる。本発明のポリペプチドは、たとえば、以下でさらに詳細に議論するように、様々な特定種類の天然のGPBPアイソフォームを阻害するための候補化合物を同定するため、並びにたとえば自己免疫及びタンパク質の誤った折りたたみが関与する障害を治療するための候補化合物を同定するための手段としても用いることができる。
【0026】
本明細書で用いられる場合、「90%又はそれより高い純度」とは、夾雑タンパク質が単離されたポリペプチドの10%以下、様々な好ましい実施形態においては、単離されたポリペプチドの9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%、1%、又は0.5%以下を構成することを意味する(たとえば、配列番号2のアミノ酸配列からなる91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は99.5%、もしくはそれより高い純度の単離されたポリペプチド)。単離されたポリペプチドがポリアクリルアミド及びアガロースなどのゲル剤も実質的に含まないことがさらに好適である。さらなる好ましい実施形態において、単離されたポリペプチドは、溶液中で、凍結して、または乾燥粉末として存在する。好ましい一実施形態において、この第1の態様の単離されたポリペプチドは、場合によって、これらに限定されるものではないが、蛍光標識又は放射性標識をはじめとする検出可能な非ポリペプチド標識で標識される。
【0027】
第2の態様において、本発明は、一般式 X−配列番号2(Xは検出可能なポリペプチドである)を有するか、またはこれからなる実質的に精製された組換え型ポリペプチドを提供する。この態様において、91kD GPBP(配列番号2)の正しいアミノ酸配列は、検出可能なポリペプチドとの融合タンパク質として発現される。本発明のこの態様のポリペプチド、たとえば、91kD GPBPを細胞においてトラックするために用いたり、GPBP活性を妨害する化合物を同定するための検出可能な標的として用いたりすることができ、これによってグッドパスチャー症候群はじめとする様々な障害の有用な治療法となる。この態様において用いられる場合、「組換え型ポリペプチド」とは、検出可能なポリペプチドが、GPBP由来でないか、又はGPBPmRNAから発現されず、したがってヘテロローガスな検出可能なペプチドを正しい91kD GPBPポリペプチドと融合させることを意味する。本明細書において用いられる場合、「検出可能なポリペプチド」は、検出でき、したがって組換え型ポリペプチドの検出を可能にする、任意のヘテロローガスなペプチドである。好ましい一実施形態において、検出可能なポリペプチドは蛍光タンパク質を含む。当該技術分野で公知の任意の蛍光タンパク質を本発明で使用することができる。たとえば、生物発光において刺胞動物のエネルギー伝達アクセプターとして作用する刺胞動物の緑色蛍光タンパク質は、蛍光指示薬における使用に好適な蛍光タンパク質である。緑色蛍光タンパク質(「GFP」)は、緑色に発光するタンパク質であり、青色蛍光タンパク質(「BFP」)は、青色に発光するタンパク質である。GFPは、北西太平洋クラゲ(オワンクラゲ(Aequorea victoria))、ウミシイタケ(レニラ・レニホルミス(Renilla reniformis))、及びフィアリジウム・グレガリウム(Phialidium gregarium)から単離された。Ward, W. W., et al., Photochem. Photobiol., 35:803 808(1982);及びLevine, L. D., et
al., Comp. Biochem. Physiol., 72B:77 85(1982)を参照。有用な励起及び発光スペクトルを有する様々なオワンクラゲ関連GFPは、オワンクラゲ由来の天然に存在するGFPのアミノ酸配列を修飾することによって改変されてきた。Prasher, D. C, et al., Gene, 111 :229 233(1992);Heim, R., et al., Proc.
Natl. Acad. Sci., USA, 91 :12501 04(1994);U.S. Ser. No. 08/337,915(1994年11月10日付で出願);国際出願PCT/US95/14692(1995年11月10日付で出願);及びU.S. Ser. No. 08/706,408(1996年8月30日付で出願)を参照。GFPのcDNAは、多くの他のタンパク質をコードするものと連結させることができ、結果として得られる融合物は、一般的に蛍光性であり、パートナータンパク質の生化学的特性を保有する。Cubitt, A. B., et al., Trends Biochem. Sci. 20:448 455(1995)を参照。突然変異生成の研究によって、シフトした励起または発光波長を有するGFP変異体が産生された。Heim, R. & Tsien, R. Y. Current Biol. 6:178 182(1996)を参照。好適な対、たとえばブルーシフトしたGFP変異体P4−3(Y66H/Y145F)及び改善された緑色変異体S65Tは、それぞれ蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)のドナー及びアクセプターとしての働きをすることができる。Tsien, R. Y., et al., Trends Cell
Biol. 3:242 245(1993)を参照。
【0028】
この第2の態様の別の好ましい実施形態において、検出可能なポリペプチドは、非GPBPエピトープを含み、これに対する抗体は商業的に入手可能であり、たとえば、これらに限定されるものではないが、FLAG(Sigma Chemical、St.Louis,MO)、myc(9E10)(Invitrogen、Carlsbad,CA)、6−His(Invitrogen;Novagen、Madison,WI)、グルタチオンS−トランスフェラーゼ(GST)(Santa Cruz Biotechn
ology、Santa Cruz,CA)、及びHA(ヘマグルチニン)(Boehringer Manheim Biochemicals)である。
【0029】
本発明の第2の態様の実施形態の全てにおいて、単離されたポリペプチドは、好ましくは検出可能なポリペプチドと配列番号2のポリペプチド間にリンカー配列をさらに含み得る。この実施形態において、リンカーは、GPBPの一部でないか、またはGPBPmRNAによってコードされない。このようなリンカーは、任意の所望の長さのものであってよく、好ましくは存在するならば1−20アミノ酸、さらに好ましくは存在するならば1−15、1−10、1−5、1−4、1−3、又は1−2アミノ酸である。たとえば、検出可能なポリペプチド及び91kD GPBP配列を最適に配置するため、及び検出可能なポリペプチドの除去を可能にするためにプロテアーゼ認識部位の特異的配列を含めるために、リンカーを用いることができる。本発明の第2の態様の実施形態の全てにおいて、単離されたポリペプチドは、N末端メチオニン残基又は異なる細胞及び細胞外区画へポリペプチドを送達するためのペプチド配列などの、発現に必要な任意の追加の残基をさらに含むことができる。
【0030】
本発明の実質的に精製されたポリペプチドは、当業者に公知の任意の方法によって作製することができるが、好ましくは本明細書で提供する教唆に基づいた組換え手段によって作製される。たとえば、本明細書で開示される興味のあるコード領域は、組換え型発現ベクター中にクローンすることができ、次いでこれを用いて、宿主細胞によるタンパク質産生のために宿主細胞をトランスフェクトすることができる。
【0031】
第3の態様において、本発明は、配列番号2のアミノ酸配列からなるポリペプチド(91kD GPBP)をコードする実質的に精製された核酸を提供する。実質的に精製された核酸配列は、RNA又はDNAを含み得る。本明細書において用いられる場合、「実質的に精製された核酸」は、ゲノム又はcDNA配列においてこれらの通常の周囲の核酸配列から取り出されたものである。このような実質的に精製された核酸配列は、これらに限定されるものではないが、polyA配列、修飾Kozak配列、並びにエピトープタグ、排出シグナル、及び分泌シグナル、核局在化シグナル、及び細胞膜局在化シグナルをコードする配列をはじめとする、コードされたタンパク質の発現及び/又は精製を促進するために有用な追加の配列を含んでもよい。好ましい一実施形態において、実質的に精製された核酸コード領域は、配列番号1の核酸、又はそのmRNA産物からなる。別の好ましい実施形態において、本発明は、本発明の第二の態様において議論するように、一般式 X−配列番号2を含むか、またはこれからなる実質的に精製された組換え型ポリペプチドの任意の実施形態のポリペプチドをコードする、実質的に精製された核酸を提供する。
【0032】
第4の態様において、本発明は、プロモータと機能的に連結された本発明のいずれかの態様の実質的に精製された核酸を含む組換え型発現ベクターを提供する。「組換え型発現ベクター」は、核酸コード領域又は遺伝子と、遺伝子産物の発現を行うことができる任意のプロモータとを機能的に連結するベクターを含む。哺乳動物系において、開示された核酸配列の発現を行うために用いられるプロモータ配列は、構成的(これらに限定されるものではないが、CMV、SV40、RSV、アクチン、EFをはじめとする様々なプロモータのいずれかによって決定される)であっても、又は誘導的(これらに限定されるものではないが、テトラサイクリン、エクジソン、ステロイド反応性をはじめとする多くの誘導性プロモータのいずれかによって促進される)であってもよい。原核細胞のトランスフェクションに用いられる発現ベクターの構築も当該技術分野において周知であり、したがって、標準的技術によって行うことができる。(たとえば、Sambrook,Fritsch,and Maniatis,in:Molecular Cloning,A Laboratory Manual,Cold Spring Harbor Laboratory Press, 1989;Gene Transfer and Ex
pression Protocols,pp.109−128,ed.E.J.Murray,The Humana Press Inc.,Clifton, N.J.)、及びAmbion 1998 Catalog(Ambion,Austin,TXを参照)。発現ベクターは、エピソームとして、又は宿主染色体DNA中へ組込むことによるかのいずれかで、宿主生物において複製可能でなければならない。好ましい実施形態において、発現ベクターはプラスミドを含む。しかし、本発明は、ウイルスベクターなどの等しい機能を果たす他の発現ベクターを含むことが意図される。
【0033】
第5の態様において、本発明は、本明細書で開示された組換え型発現ベクターでトランスフェクトされた宿主細胞を提供し、この場合、宿主細胞は、原核生物又は真核生物のいずれかであり得る。細胞は一時的又は安定してトランスフェクトすることができる。このような発現ベクターの原核生物及び真核生物細胞中へのトランスフェクションは、これらに限定されるものではないが、標準的細菌形質転換、リン酸カルシウム共沈、エレクトロポレーション、又はリポソーム介在性、DEAEデキストラン介在性、ポリカチオン介在性若しくはウイルス介在性トランスフェクションをはじめとする当該技術分野で公知の任意の技術によって行うことができる。(たとえば、Molecular Cloning:A Laboratory Manual(Sambrook,et al.,1989,Cold Spring Harbor Laboratory Press;Culture of Animal Cells:A Manual of Basic Technique,2nd Ed.(R.I.Freshney.1987.Liss,Inc.New York,NY)を参照。
【0034】
第6の態様において、本発明は、配列番号2(91kD GPBP)又は配列番号4(77kD GPBP)のアミノ酸配列を有する実質的に精製されたポリペプチドを提供し、この場合、配列番号2又は配列番号4のポリペプチドは、305−344番目のアミノ酸残基GGPDYEEGPNSLINEEEFFDAVEAALDRQDKIEEQSQSEK(配列番号10)(番号付けは77kD GPBP内の位置に基づく)に直接的及び/又は間接的に関与する1以上の翻訳後修飾(PTM)を有する。以下の実施例で開示するように、本発明者らは、天然の77kD及び91kD GPBPの第1の精製法を提供し、77kD及び91kD GPBPの組換え型と結合する既存のモノクローナル抗体は、精製された天然物とは結合しないことを確認し、77kD GPBPの組換え型と天然型間及び91kD GPBPの組換え型と天然型間に存在する構造的な違いを検証した。本発明のこの態様のポリペプチドを、例えば天然のGPBP型に対する抗体を産生するために使用することができ、また天然のGPBP活性を妨害する化合物を同定するための標的として使用することができ、これによってグッドパスチャー症候群をはじめとする様々な障害の有用な治療法となる。好ましい一実施形態において、1以上のPTMは、共有結合PTMを含む。別の好ましい実施形態において、1以上のPTMは、305−344番目のアミノ酸(配列番号10)内に共有結合PTMを含む。好ましい一実施形態において、1以上のPTMは、直接的及び/又は間接的に320−327番目の残基(EEFFDAVE、配列番号5)に関与する。別の好ましい実施形態において、1以上のPTMは、320−327番目の残基(EEFFDAVE、配列番号5)内に共有結合PTMを含む(番号付けは77kD GPBP内の位置に基づく)。別の好ましい実施形態において、1以上のPTMは、残基320、321、及び/又は327において存在するもう1つのPTMを含み、最も好ましくはこれらの残基で存在する1以上のPTMは、共有結合PTMを含む。この態様の実施形態のいずれかのさらなる好ましい実施形態において、実質的に精製されたポリペプチドは、配列番号2(91kD GPBP)又は配列番号4(77kD GPBP)からなるアミノ酸配列を有する。
【0035】
本明細書で用いられる場合、「翻訳後修飾」(PTM)という用語は、タンパク質の翻訳後のタンパク質の構造における修飾を意味する。好ましい一実施形態において、PTM
は、これらに限定されるものではないが、カルボキシル化、メチル化、シトルリン化、リン酸化、グリコシル化、及び非定型イソアスパルチルの形成をはじめとする官能基の付加を含む。別の好ましい実施形態において、PTMは異性化を含み、構造変化に至る。
【0036】
本明細書で用いられる場合、「直接的に」とは、PTMが特定の残基内で起こることを意味し、一方、「間接的に」とは、PTMが特定の残基の外側で起こるが、前記残基内の構造変化をもたらすことを意味する。
【0037】
本開示の教唆に基づいた、配列番号2又は配列番号4の共有結合的に修飾されたポリペプチドを作製するのに好適な任意の方法、たとえば本明細書で開示されるGPBPの天然源からの単離、及びGPBPの組換え産生とそれに続くアミノ酸残基の関連領域内の好適な共有結合修飾(当業者に公知の標準的方法使用)を用いることができる。
【0038】
第7の態様において、本発明は、配列番号2(91kD GPBP)又は配列番号4(77kD GPBP)のアミノ酸配列を有する実質的に精製されたポリペプチドを提供し、この場合、配列番号2又は配列番号4のポリペプチドは、371−396番目の残基PYSRSSSMSSIDLVSASDDVHRFSSQ(配列番号9)(番号付けは77kD GPBP内の位置に基づく)を直接的及び/又は間接的に含む1以上のPTMを含む。以下の実施例で開示するように、本発明者らは、天然の77kD及び91kD GPBPの第1精製法を提供し、77kD及び91kD GPBPの組換え型と結合する既存のモノクローナル抗体は、精製された天然の77kD及び91kD GPBP型と結合しないことを確認し、77kD及び91kD GPBPの組換え型と天然型との間に存在する構造の違いを検証した。本発明のこの態様のポリペプチドを、たとえば、天然のGPBPに対する抗体を産生するために使用することができ、また天然のGPBP活性を妨害する化合物を同定するための標的として用いることができ、これらを、グッドパスチャー症候群をはじめとする様々な障害の有用な治療法とする。好ましい一実施形態において、1以上のPTMは、共有結合PTMを含む。別の好ましい実施形態において、1以上のPTMは、アミノ酸371−396(配列番号9)内に共有結合PTMを含む。好ましい一実施形態において、1以上のPTMは、直接的又は間接的に388−392番目の残基(DDVHR、配列番号6)を有する。別の好ましい実施形態において、1以上のPTMは、残基388−392(配列番号6)内に1以上の共有結合PTMを含む。別の好ましい実施形態において、ポリペプチドは、直接的又は間接的に320−327番目の残基(EEFFDAVE、配列番号5)を有する1以上のPTMをさらに含む。さらなる好ましい実施形態において、残基320−327内の1以上のPTMは、共有結合PTMである。この態様の様々な好ましい実施形態において、実質的に精製されたポリペプチドは、配列番号2(91kD GPBP)又は配列番号4(77kD GPBP)からなるアミノ酸配列を有する。配列番号2又は配列番号4の共有結合的に修飾されたポリペプチドを作製するための任意の好適な方法、例えば本明細書で開示されるGPBPの天然源からの単離、及びGPBPの組換え産生とそれに続くアミノ酸残基の関連領域内の好適な共有結合修飾(当業者に公知の標準的方法を使用)を用いることができる。
【0039】
第8の態様において、本発明は、本発明の第6または第7の態様の実質的に精製されたポリペプチドと選択的に結合する実質的に精製されたモノクローナル抗体を提供する。先に開示したように、本発明者らは、実質的に精製された場合に既存のGPBP特異性モノクローナル抗体と結合しない天然の77kDa及び91kD GPBP種をはじめて単離した。たとえば、既存のモノクローナル抗体は、ELISAにおいて血漿又は尿試料中のGPBPを検出せず、血漿又は尿GPBPの精製に使用することもできない。したがって、本発明のモノクローナル抗体は、たとえば、尿又は血漿中のGPBP検出のためのELISAに基づく分析及び血漿又は血清からのGPBPの精製に有用である。本発明者らは、本明細書において、これらの天然の77kD GPBP及び天然の91kD GPBP
種が翻訳後修飾され、これらのPTMの少なくとも一部は、実質的に精製された天然のGPBPを既存のモノクローナルGPBP抗体に対して非反応性にすることをさらに証明する。本発明のこの態様のモノクローナル抗体の例を以下の実施例に記載する。
【0040】
本発明の「モノクローナル抗体」は、これらに限定されるものではないが、標準的モノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル、キメラモノクローナル、及びこれらの断片をはじめとする任意の種類のモノクローナル抗体であり得る。
【0041】
本明細書において用いられる場合、「実質的に精製された」とは、記載されたモノクローナル抗体が、実質的に精製された試料中、抗体の少なくとも80%を構成することを意味し、さらに好ましくは、少なくとも85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又はそれ以上を構成することを意味する。
【0042】
本明細書で用いられる場合、「選択的に結合する」とは、当業者には十分に理解されるように、1以上の他の生体分子、構造、細胞、組織などではなく、天然のGPBPエピトープに対してGPBPモノクローナル抗体を優先的に結合させることを意味する。
【0043】
モノクローナル抗体は、脾臓細胞を動物から得ることによって産生することができる[Kohler and Milstein,Nature 256,495−497(1975)を参照]。一例を挙げれば、興味のあるモノクローナル抗体(mAb)は、近交系マウスを天然の77kD GPBP、天然の91kDのGBPB、又はその抗原断片(これらに限定されるものではないが、PTM含有ペプチドEEFFDAVE(配列番号5)、DDVHR(配列番号6)、LINEEEFFDAVEAALDRQ(配列番号8)、PYSRSSSMSSIDLVSASDDVHRFSSQ(配列番号9)、及びGGPDYEEGPNSLINEEEFFDAVEAALDRQDKIEEQSQSEK(配列番号10)を有するか、またはこれらからなる1以上のエピトープを包含する)で免疫化することによって調製される。したがって、さらに好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、PTM含有EEFFDAVE(配列番号5)、DDVHR(配列番号6)、LINEEEFFDAVEAALDRQ(配列番号8)、PYSRSSSMSSIDLVSASDDVHRFSSQ(配列番号9)、及びGGPDYEEGPNSLINEEEFFDAVEAALDRQDKIEEQSQSEK(配列番号10)からなる群から選択される1以上のPTMを含む1以上のエピトープを結合する。さらなる好ましい実施形態において、1以上のPTMは共有結合PTMである。別の好ましい実施形態において、モノクローナル抗体は、残基320、321、及び/又は327(番号付けは77kD GPBPに基づく)において存在する1以上のPTM(好ましくは、共有結合PTM)を有するエピトープと結合する。
【0044】
一実施形態において、マウスをIP又はSC経路により、免疫反応を引き起こすために十分な量及び間隔で免疫化する。マウスに第0日に初回予防接種をし、約3−約30週間休ませる。免疫化されたマウスを、静脈内(IV)経路により1回以上ブースター免疫化する。当該技術分野で公知の標準的手順によって免疫化されたマウスから脾臓を取り出すことによって、抗体陽性マウスからリンパ球を得る。脾臓リンパ球を適切な融合パートナーと、安定なハイブリドーマの形成を可能にする条件下で混合することによって、ハイブリドーマ細胞を生成させる。抗体産生細胞及び融合パートナー細胞をポリエチレングリコール中、約30%−約50%の濃度で融合させる。融合したハイブリドーマ細胞を、当該技術分野で公知の手順により、ヒポキサンチン、チミジン及びアミノプテリンを添加したダルベッコの修飾イーグル培地(DMEM)中で成長させることによって選択する。上清液を成長陽性ウェルから集め、固相イムノラジオアッセイ(immunoradioassay)などのイムノアッセイにより抗体産生についてスクリーンする。抗体陽性ウェルからのハイブリドーマ細胞を、MacPherson,Soft Agar Techn
iques,in Tissue Culture Methods and Applications,Kruse and Paterson,Eds.,Academic Press,1973の軟寒天技術などの技術によってクローニングする。
【0045】
「ヒト化モノクローナル抗体」とは、マウスモノクローナル抗体などの非ヒトモノクローナル抗体から誘導されるモノクローナル抗体を意味する。あるいは、ヒト化モノクローナル抗体は、親の非ヒトモノクローナル抗体の抗原結合特性を保持するか、または実質的に保持するが、ヒトに投与された場合に親のモノクローナル抗体と比較して減少した免疫原性を示すキメラ抗体から誘導することができる。たとえば、キメラモノクローナル抗体は、ヒト及びネズミ抗体断片、一般的にヒト定常及びマウス可変領域を含み得る。ヒト化モノクローナル抗体は、これらに限定されるものではないが、(1)非ヒトモノクローナル抗体からの相補性決定領域をヒトフレームワーク及び定常領域上にグラフトすること(「ヒト化」)、及び(2)非ヒトモノクローナル抗体可変ドメインを移植するが、表面残基の置換によってヒト様表面でこれらを「覆う」こと(「被覆(veneering)」)をはじめとする当該技術分野で公知の様々な方法を用いて調製することができる。これらの方法は、たとえば、Jones et al.,Nature 321:522−525(1986);Morrison et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.,U.S.A.,81:6851−6855(1984);Morrison and Oi,Adv.Immunol.,44:65−92(1988);Verhoeyer et al.,Science 239:1534−1536(1988);Padlan,Molec.Immun.28:489−498(1991);Padlan,Molec.Immunol.31(3):169−217(1994);及びKettleborough,C.A.et al.,Protein Eng.4(7):773−83(1991)で開示されている。
【0046】
モノクローナル抗体を、従来技術を用いて断片化することができ、断片を全抗体についてと同じ方法で有用性についてスクリーンすることができる。たとえば、F(ab’)断片は、抗体をペプシンで処理することによって生成させることができる。結果として得られるF(ab’)断片を処理して、ジスルフィドブリッジを還元してFab’断片を生成させることができる。Fab断片は、IgG抗体をパパインで処理することによって得ることができ、F(ab’)断片は、IgG抗体のペプシン消化を用いて得ることができる。F(ab’)断片は、下記のFab’をチオエーテル結合又はジスルフィド結合によって結合させることによっても生成させることができる。Fab’断片は、F(ab’)2のヒンジ領域のジスルフィド結合を切断することによって得られる抗体断片である。Fab’断片は、F(ab’)2断片をジチオトレイトールなどの還元剤で処理することによって得ることができる。抗体断片ペプチドは、組換え細胞でのかかるペプチドをコードする核酸の発現によって生成させることもできる(たとえば、Evans et al.,J.Immunol.Meth.184:123−38(1995)を参照)。たとえば、F(ab’)2断片の一部分をコードするキメラ遺伝子は、H鎖のCH1ドメイン及びヒンジ領域をコードするDNA配列と、それに続く翻訳終止コドンを含んで、このような切断された抗体断片分子を得ることができる。
【0047】
モノクローナル抗体断片の例としては、(i)Fab断片(本質的にVL、VH、CL及びCH Iドメインからなる一価断片)、(ii)F(ab)2及びF(ab’)2断片(ヒンジ領域でジスルフィドブリッジにより結合した2つのFab断片を含む二価断片)、(iii)本質的にVH及びCH1ドメインからなるFd断片;(iv)本質的に抗体の単一アームのVL及びVHドメインからなるFv断片、(v)本質的にVHドメインからなるdAb断片(Ward et al.,(1989)Nature 341:544−546);並びに(vi)1以上の単離されたCDR又は機能的パラトープが挙げられる。
【0048】
抗体反応を生じさせるために、免疫原を典型的には非経口投与用の薬剤的に許容される担体と配合する。このような許容されるアジュバントとしては、これらに限定されるものではないが、フロインド完全、フロインド不完全、ミョウバン沈殿物(alum−precipitate)、コリネバクテリウム・パルバム(Corynebacterium
parvum)及びtRNAを含む油中水エマルジョンが挙げられる。ポリペプチドの濃度並びにビヒクル及び他の成分の選択をはじめとする、かかる組成物の処方は、当該分野の技術範囲内である。
【0049】
第9の態様において、本発明は、配列番号2のポリペプチドと特異的に結合するが、配列番号4のポリペプチドとは結合しない実質的に精製されたモノクローナル抗体を提供する。本発明のこのようなモノクローナル抗体は、これらに限定されるものではないが、尿又は血漿中のGPBP検出のためのELISAに基づく分析をはじめとする分析において、91kD GPBPを77kD GPBPと識別するのに有用である。このようなモノクローナル抗体は、前記開示の方法を用い、配列番号2のポリペプチドにおいて存在するが配列番号4においては存在しないペプチド免疫源を使用して生成させることができる。このような免疫原は、抗体反応を生じさせるために好適な任意の長さを有するものであってよい。一実施形態例において、モノクローナル抗体を、DGWKGRLPSPLVLLPRSARC(配列番号7)を有するか、またはこれからなる免疫源に対して生成させる。このように、この実施形態において、モノクローナル抗体は、アミノ酸配列DGWKGRLPSPLVLLPRSARC(配列番号7)内のエピトープと結合する。かかる抗体Ab24の例を以下で開示する。
【0050】
さらなる態様において、本発明は、本発明の第8又は第9の態様のモノクローナル抗体を発現する単離されたハイブリドーマ細胞を提供する。
本発明は、前述および以下で開示するような、本発明の抗体を作製する方法も提供する。
【0051】
第10の態様において、本発明は、循環するグッドパスチャー抗原結合タンパク質(GPBP)を検出する方法であって、
(a)血漿試料を、GPBPと結合するGPBP結合分子と、GPBP結合分子のGPBPに対する選択的結合を促進する条件下で接触させること、
(b)非結合GPBP結合分子を除去すること、および
(c)GPBP結合分子と血漿試料中のGPBPとの間の複合体形成を検出すること、を含む方法を提供する。
【0052】
「血漿試料」とは、血漿、つまり血液の液体成分を意味し、たとえば、全血を遠心分離して血液細胞を除去することによって調製される。本明細書において用いられる場合、血漿試料は、血液凝固因子が除去された血清試料も含む。
【0053】
第11の態様において、本発明は、尿グッドパスチャー抗原結合タンパク質(GPBP)を検出する方法であって、
(a)尿試料を、GPBPと結合するGPBP結合分子と、GPBP結合分子のGPBPに対する選択的結合を促進する条件下で接触させること、
(b)非結合GPBP結合分子を除去すること、および
(c)尿試料におけるGPBP結合分子とGPBPとの間の複合体形成を検出すること、を含む方法を提供する。
【0054】
尿試料は容易に得られ、尿中の検体測定は、当該技術分野で周知である。
「GPBP結合分子」は、1以上の他の生体分子、構造、細胞、組織等ではなく、GP
BPと選択的に結合するペプチド又は核酸分子である。かかるGPBP結合分子の実施形態例としては、これらに限定されるものではないが、抗体、アプタマー、又は基質が挙げられる。本明細書において用いられる場合、「GPBP基質」は、GPBP、又はGPBP結合活性を保持するその断片と結合するGPBP生物活性の標的である。かかるGPBP基質としては、これらに限定されるものではないが、I−20(配列番号16)、GPBP相互作用タンパク質(GIP)(配列番号17−21)、ミエリン塩基性タンパク質(MBP)およびその誘導体(配列番号22−25)、プリオンタンパク質(PrP)(配列番号26)、IV型コラーゲンα3鎖NC1ドメイン(α3(IV)NC1)(配列番号27)、及びアルツハイマー病ベータペプチド(Aβ1−42)(配列番号28)が
挙げられる。これらの基質のGPBP結合を証明する文献例は、米国特許第6,579,969号、第7,147,855号、及び第7,326,768号(その全体が本明細書において参照することによって組み込まれる)において見いだすことができる。
【0055】
下記実施例で開示されるように、本発明者らは、160kD、91kD、77kD、70kD、66kD、60kD、58kD、56kD、53kD、50kD、46kD、35kD及び34kDのGPBPアイソフォームをはじめとするGPBPの循環型および尿型、並びにその様々な凝集体を見いだした。したがって、第10及び第11の態様において、「GPBP」という用語は、これらに限定されるものではないが、77kD GPBP及び91kD GPBP、並びに160kD、60kD、58kD、56kD、53kD、50kD、46kD、35kD及び34kDの低分子量及び高分子量GPBPアイソフォーム、並びにその凝集体をはじめとする、GPBP選択的抗体と反応する全てのGPBPアイソフォームを意味する。
【0056】
「血漿試料」又は「尿試料」は、任意の好適な対象、好ましくは、これらに限定されるものではないが、ヒト、イヌ、ネコ、ウマ、又は家畜(ウシ、ヒツジなど)をはじめとする哺乳動物から得ることができる。最も好ましい実施形態において、血漿試料又は尿試料は、これらに限定されるものではないが、グッドパスチャー症候群及び/又は免疫複合体型糸球体腎炎をはじめとする自己免疫疾患を有することが疑われるヒト対象などのヒト対象から得られる。本明細書で開示されるように、本発明者らはヒト血漿から天然の循環する77kD GPBPを単離し、グッドパスチャー患者及び免疫複合体型糸球体腎炎の動物モデルにおいて増大したレベルを観察し、GPBP分泌がインビボで起こることを証明し、GPBPの血清学的及び尿測定の臨床的有用性を明らかにした。
【0057】
抗体は、前記のようなポリクローナル、モノクローナル、又はヒト化モノクローナルに関係なく任意の選択的GPBP抗体であり得るが、モノクローナル抗体が好ましい。一実施形態において、本発明の第8又は第9の態様の抗体を用いる。本発明の第10及び第11の態様の方法は、77kD GPBP又は91kD GPBPなどの特異的GPBPアイソフォームの分析を含み得、これらの実施形態において、これらに限定されるものではないが、本明細書で開示される選択的抗体をはじめとする、77kD GPBPに関して選択的であるか、又は91kD GPBPに関して選択的である抗体を使用できる。最も好ましい実施形態において、本発明の第10及び第11の態様の方法において用いられる抗体は、本明細書で開示されるものなどの天然のGPBPアイソフォームと結合するものである。
【0058】
抗体、アプタマー又は基質などのGPBP結合分子の、血漿又は尿試料中のGPBPに対する結合を促進するために適した条件は、本明細書における教唆及び下記実施例に基づいて当業者が決定できる。例えば、抗体−抗原結合は、多くの場合、疎水性相互作用に依存し(いわゆる疎水結合)、したがってモル範囲などの高い塩濃度を用いて、非特異結合を還元し、特異的抗原−抗体結合を増大させることができる。場合によって、これらに限定されるものではないが、非結合又は緩く結合した血清タンパク質、高濃度血清タンパク
質の結合を還元するための非特異結合の阻害剤、GPBPアイソフォームを含むことが知られている対照試料及び/又はGPBPアイソフォームと結合しないことが知られている負の対照を除去するための1以上の洗浄ステップ、及び/又はGPBPを有しない(例えばGPBPが欠失している)ことが知られている血清又は尿試料の包含をはじめとするさらなるステップを含めて、選択性及び特異性を増進してもよい。
【0059】
本発明のこれらの第10及び第11の態様を用いて、これらに限定されるものではないが、ELISA、免疫蛍光法、及びクロマトグラフィ(例えば側方流動分析であり、この分析では、抗体を表面上に固定し、血漿又は尿タンパク質を標識し、血漿又は尿中のGPBPに対する抗体の結合を可能にするために適した条件下で表面上を流動させる)をはじめとする標準的技術によって、血漿又は尿試料中のGPBPの存在について試験するのに使用することができる。一実施形態において、フローサイトメトリーとあわせて機能性ビーズ(Becton Dickinson technology)を使用し、この技術は、生体液又は細胞/組織抽出物中のタンパク質のレベルを測定するための新たな方法である。特に、蛍光マトリックスで作られたビーズを1以上の特異的GPBP抗体でコーティングし、血漿試料と混合し、フィコエリトリンで標識された検出抗体とともにさらにインキュベートする。最後に、ビーズをフローサイトメトリープログラムによって分析し、このプログラムは、マトリックス蛍光発光及びフィコエリトリン発光による検体のレベルの測定値にしたがってビーズを選択する。30までの異なる種類のビーズを同時に検出することができ、血球計算器によって判別することができる。この方法は、GPBP抗体でコーティングされた特異的ビーズ種を他の検体の結合ペプチド(すなわち、自己抗体)でコーティングされた別のビーズ種と混合でき、同時に測定できるので、高感度及び性能と多様性とを兼ね備える。様々な検体の測定は、GPBP測定の可能性を向上させることができる。一実施形態において、この技術は、(1または複数の)GPBPアイソフォームの存在又は非存在のみを決定し得る。あるいは、この技術は定量的であってよく、試料中の興味のあるタンパク質又はペプチドの相対量についての情報を提供する。定量的目的に関しては、ELISAが好ましい。
【0060】
免疫複合体形成の検出は、標準的検出技術によって行うことができる。たとえば、免疫複合体の検出は、標識された抗体又は二次抗体を使用することによって行うことができる。標識の選択を包含するこのような方法は、当業者に公知である。(Harlow及びLane、上記を参照)。あるいは、抗体を検出可能な物質と結合させることができる。「結合した」という用語は、検出可能な物質が抗体と物理的に結合していることを意味するために用いられる。好適な検出可能な物質としては、様々な酵素、補欠分子族、蛍光物質、発光物質及び放射性物質が挙げられる。好適な酵素の例としては、ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β−ガラクトシダーゼ、又はアセチルコリンエステラーゼが挙げられる。好適な補欠分子族の例としては、ストレプトアビジン/ビオチン及びアビジン/ビオチンが挙げられる。好適な蛍光物質の例としては、ウンベリフェロン、フルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、ジクロロトリアジニルアミンフルオレセイン、ダンシルクロライド又はフィコエリトリンが挙げられる。発光物質の一例としては、ルミノールが挙げられる。好適な放射性物質の例としては、125I、131I、35S又はHが挙げられる。
【0061】
前述のように、本発明者らは、グッドパスチャー患者及び免疫複合体型糸球体腎炎の動物モデルにおいて増大したレベルを観察し、GPBP分泌がインビボで起こることを証明し、GPBPの血清学的測定の臨床的有用性を明らかにした。従って、本発明のこの態様の方法は、たとえば、これらに限定されるものではないが、抗体介在性障害(これらに限定されるものではないが、IgAネフロパシー、全身性紅斑性狼瘡及びグッドパスチャー疾患からなる群から選択される糸球体腎炎を包含する)、炎症、及びERストレス介在性障害、並びに薬剤耐性癌をはじめとする、対照におけるGPBP介在性障害を検出するた
めに用いることができる。これらの実施形態において、方法は、試験血清又は尿試料中で検出されるGPBPレベルを対照、例えば「正常」レベルのGPBPを有することが知られている血清若しくは尿試料からの対照、又は血清を得た対象からの血清若しくは尿中のGPBPについてあらかじめ測定された正常値と比較することを含む。様々な実施形態において、対照によって、組換えGPBP又は基準値を用いて標準曲線が得られる。血清又は尿試料中のGPBPの量の対照との比較において、対象に対して血清又は尿試料中のGPBPにおける増加(好ましくは、標準的統計分析技術を用いた統計的に有意な増加)は、1以上の前記障害の存在、又は1以上の障害の発症の危険性の増大を示し、これらは全て増大したGPBP発現と相関する。
【0062】
増大したGPBP発現がIgAネフロパシー、免疫複合体関連糸球体腎炎を誘発すること、増大したGPBP発現がグッドパスチャー症候群発症と密接に関連すること、及び増大したGPBP発現が、タンパク質の間違った折りたたみを誘発し、ERストレス介在性細胞死を誘発する化学療法剤に対する癌細胞の耐性に関与することが先に開示されている。本発明の方法は従って、GPBPの存在に関する血清学的又は尿試験によってこれらの障害を診断する方法を提供する。従って、この方法は、1以上の抗体介在性障害(これらに限定されるものではないが、IgAネフロパシー、全身性紅斑性狼瘡及びグッドパスチャー疾患からなる群から選択される糸球体腎炎を包含する)、炎症、ERストレス介在性障害、及び薬剤耐性癌に罹っているか、罹る危険性があるかのいずれかの個体を特定する。非制限的一実施形態において、当該方法は、化学療法レジメンの開始前又は開始後のいずれかの癌患者を試験するために用いることができ、GPBPの増大した血清レベルについて陽性と出た患者は、薬剤耐性腫瘍を有する危険性が増大しているか、または彼らの腫瘍が薬剤耐性を発現し得る危険性が増大し、担当医はこれらを考慮して適切な治療法の選択肢を評価することができる。さらに、このような患者は、薬剤耐性腫瘍を発現する潜在的な危険性をモニタリングするために、GPBPの血清又は尿レベルについて定期的試験を受けることができる。同様に、IgAネフロパシー、全身性紅斑性狼瘡及びグッドパスチャー疾患からなる群から選択される糸球体腎炎を発症する危険性があると考えられるか、又はすでに発症していることが疑われる患者を、GPBPの血清又は尿レベルについて試験することができる。さらなる実施形態は、本明細書における教唆に基づいて当業者には明らかになるであろう。
【0063】
GPBPは、循環する分子であり、GBM(糸球体基底膜)は糸球体濾過障壁の主成分であり、したがって糸球体におけるGPBP蓄積は、局所産生から起こり得るが、ほかの場所で産生された循環するGPBPの隔離(sequestration)からも起こり得、尿中の増大したGPBPにも反映され得る。局所的過剰産生は、一次抗体介在性糸球体腎炎の原因となり得、一方、増大した循環レベルは、この病理の二次形態を誘導し得、おそらくは腎移植に際する疾患再発に関与する。従って、別の実施形態において、循環又は尿GPBPのレベルの定量化は、一次抗体介在性糸球体腎炎と二次抗体介在性糸球体腎炎の識別、及び腎移植の臨床的モニタリングに有用である。
【0064】
さらなる実施形態において、GPBP測定を他の検体の分析と組み合わせると、当該方法により前記障害において識別診断又は予後診断を実施することが可能になる。非制限的一例において、本発明者等は一部のIgAネフロパシー患者が抗基底膜自己抗体を産生することを見いだした。これらの循環する自己抗体は、IV型コラーゲンのNC1ドメインを認識する。これらの抗体価の測定は、疾患の進行のモニタリング又は異なるIgAネフロパシー患者の識別又はこれらの患者における予後診断の実施に役立つ可能性がある。抗ssDNA、抗ヌクレオソーム自己抗体及びGPBPレベルを測定することにより、全身性紅斑性狼瘡を診断することができるが、一次IgAネフロパシーと全身性紅斑性狼瘡に続発するIgAネフロパシーとを区別することもできる。様々なさらなる実施形態において、IgAの糸球体堆積と関連してDonadio and Grande(2002)
N Engl J Med 347,738−748において記載されている原発性疾患の診断に用いられる任意の測定を、二次IgAネフロパシー患者における識別診断のためのGPBP血漿又は尿検出のための本発明の方法と併せて用いることができる。
【0065】
別の実施形態において、標準曲線の基準としてのGPBPの正常値は、血漿中では約1ng/ml−10ng/mlであり、尿中では約0.2ng/ml−1.5ng/mlであり、一方、グッドパスチャー患者は正常値を少なくとも2倍超え、他の実施形態においては、正常値を少なくとも3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、又はそれ以上超える。
【0066】
第12の態様において、本発明は、天然のGPBPアイソフォームを単離する方法であって、
(a)血漿試料を硫酸アンモニウム沈殿させること、
(b)硫酸アンモニウム沈殿した血清試料に対してイオン交換クロマトグラフィ(IEC)を実施すること、
(c)天然のGPBPアイソフォームを含むIEC画分を同定すること、
(d)天然のGPBPアイソフォームを含むIEC画分をゲル濾過クロマトグラフィ(GFC)すること、および
(e)天然のGPBPアイソフォームを含むGFC画分を同定すること、を含む方法を提供する。
【0067】
好ましい一実施形態において、これらの方法を用いて、たとえば、下記実施例においてさらに詳細に開示されるように、天然の77kD GPBPを血漿から実質的に精製することができる。
【0068】
第13の態様において、本発明は、天然のGPBPアイソフォームを単離する方法であって、
(a)尿試料を塩析すること、
(b)塩析したタンパク質試料に対してダブルイオン交換クロマトグラフィ(IEC)を実施すること、および
(c)天然のGPBPアイソフォームを含むIEC画分を同定すること、を含む方法を提供する。
【0069】
本明細書で用いられる場合、「ダブルイオン交換クロマトグラフィ」とは、ステップ(c)の前に2回連続して別個のイオン交換クロマトグラフィステップを実施することを意味する。IEC技術の実施形態例は当該技術分野において周知であり、以下の実施例で開示されるものを包含する。
【0070】
好ましい実施形態において、これらの方法を用いて、下記実施例でさらに詳細に開示される様に、天然の91kD GPBPを尿から実質的に精製することができる。
第14の態様において、本発明は、天然のGPBPアイソフォームを単離する方法であって、
(a)血漿試料又は尿試料を、天然のGPBPと選択的に結合するGPBP結合分子を含むアフィニティーカラムに通すこと、
(b)血漿又は尿試料からの非結合タンパク質をアフィニティーカラムから洗い流すこと、および
(c)カラムから天然のGPBPアイソフォームを溶出させること、を含む方法を提供する。
【0071】
好ましい実施形態において、これらの方法を用いて、以下の実施例でさらに詳細に開示されるように、例えば血漿及び尿からの天然の77kD GPBP及び天然の91kD
GPBPを実質的に精製することができる。別の好ましい実施形態において、GPBP結合分子はGPBP抗体を含む。別の好ましい実施形態において、抗体は本発明の新規モノクローナル抗体を含む。別の好ましい実施形態において、溶出ステップは変性溶出緩衝液の使用を含む。
【0072】
本発明の第12、第13、および第14の態様の精製法の詳細を下記実施例で記載する。
【実施例1】
【0073】
概要
グッドパスチャー抗原結合タンパク質(GPBP)は、基底膜のIV型コラーゲンの非従来型Ser/Thrキナーゼである。最近になって、本発明者等は、GPBPが、過剰発現された場合にIV型コラーゲン崩壊及び糸球体基底膜における免疫複合体の堆積を誘発する細胞外タンパク質であることを示した(参考文献4)。本明細書では、本発明者らは、標準的(77kDa)及び非標準(91kDa)mRNA翻訳開始によって少なくとも2つのGPBPアイソフォームを細胞が発現したことを示す。77kDaのポリペプチドは、IV型コラーゲンと相互作用し、可溶性形態として細胞外区画において局在した。91kDa及び誘導された120kDaポリペプチドは、細胞膜と結合し、細胞外区画において77kDaのポリペプチドのレベルを調節した。FFATモチーフ及び26−残基Serリッチな領域は、77kDaポリペプチドの排出に必要であった。次に26−残基Serリッチな領域を除去すると、先に認識されたGPBPアイソフォーム(GPBPΔ26/CERT)が得られ、これはサイトゾルであり、GPBPとは対照的にスフィンゴミエリナーゼ細胞処理に対して感受性であった。これらのデータ及び先のデータは、COL4A3BPをタンパク質分泌のマルチ区画プログラムに関連付け(すなわち、IV型コラーゲン)、このプログラムは:1)リン酸化及びタンパク質分子/超分子組織の調節(GPBP)、並びに2)細胞小器官間セラミド輸送及び血漿膜へのタンパク質カーゴ輸送(cargo transport)の調節(GPBPΔ26/CERT)を有する。最後に、本発明者らは、ヒト血漿から循環する77kDa GPBPを単離し、グッドパスチャー患者及び免疫複合体型糸球体腎炎の動物モデルにおいて増大したレベルを観察し、GPBP分泌がインビボで起こることを証明し、GPBPの血清学的測定の臨床的有用性を明らかにした。
【0074】
序文
グッドパスチャー抗原結合タンパク質(GPBP)は、IV型コラーゲンのα3鎖の非コラーゲン性1(NC1)ドメイン[α3(IV)NC1]をリン酸化する(1)。このドメインは、糸球体基底膜(GBM)コラーゲンの分子及び超分子組織における中枢構造であり、グッドパスチャー疾患における糸球体腎炎に関与する自己抗体の標的でもある(2)。増大したGPBP発現は、グッドパスチャー疾患をはじめとする自己免疫の発症機序に関連し(3)、またGBMコラーゲン崩壊及びIgA抗体の堆積の誘発と関連する(4)。これらの観察は、GPBPがGBMコラーゲン構成を調節し、その発現が異常に上昇する場合にIV型コラーゲンベースの抗体が関与する糸球体腎炎を誘発することを示唆する(3、4)。COL4A3BPは、これらの病的状態では外見上調節されないGPBPΔ26(より豊富で活性の低い選択的にスプライスされたGPBP変異体であり、26−残基Serリッチな領域が欠失したもの)もコードする(3)。
【0075】
GPBPは、N末端プレクストリン相同(PH)ドメイン、Ser−Xaa−Yaa領域、二分核定位シグナル、コイルドコイルドメイン、酸性トラック中2つのフェニルアラニン(FFAT)モチーフ及びC末端ステロイド産生急性調節関連脂質伝達(START)ドメインをはじめとする複数の構造要素を含む。さらなる構造特性としては、自己相互作用及びリン酸化のモチーフが挙げられる(1、3、5、6)。PHドメインは、真核生
物においてのみ存在する、様々な十分に保存されていない構造を含み、この構造は、ホスホイノシチドとの相互作用によって細胞膜へのタンパク質ターゲティングに関与することが提案されている(7)。いくつかのタンパク質キナーゼを包含する様々なタンパク質はPHドメインを含む(8)。FFATモチーフは、小胞関連膜タンパク質関連タンパク質(VAP)の貫膜サイトゾルドメインとの相互作用によってタンパク質をERへと向かわせ(9)、VAPは小胞体(ER)におけるタンパク質折りたたみのホメオスタシスの維持及び細胞膜へのタンパク質カーゴ輸送の調節に関与することが提案されている(10、11)。STARTドメインは、セラミド、リン脂質及びステロールをはじめとする脂質と結合し、異なる生理的及び病理的機能を有する様々なタンパク質において存在するモジュールである(12、13)。
【0076】
最近のレポートは、FFATモチーフ及びPHドメインを、それぞれGPBPポリペプチドのER及びゴルジ装置に対する結合と関係付けている。これらの細胞小器官に対する結合は、STARTドメインがERからセラミドを捕捉し、これをゴルジ装置へ送達することを可能にすると仮定されている。これらの観察に基づいて、GPBPポリペプチドは、非小胞サイトゾルセラミド輸送体として記載され、CERT(GPBP)及びCERT(GPBPΔ26)と新たに命名された(5、14)。しかし、これらの著者の結論は、天然のタンパク質の細胞内分布に関連する正確なデータなしに出され、基底膜に関連したGPBPの顕著な発現を示す免疫化学的証拠を全く無視している(3)。最近のレポートは、CERT依存性セラミド輸送が、ホスホリパーゼA2αの動員並びにトランスゴルジ網でのタンパク質キナーゼDの動員及び活性化に重要であり、従って最終的に、プロスタグランジン産生及びタンパク質エクソサイトーシスをそれぞれ調節することを示している(6、15)。
【0077】
免疫組織化学的証拠は、GPBPが主に細胞外であるが、様々な細胞内部位に局在化する可能性があることを示唆する(3、4)。タンパク質分布は、タンパク質機能に関して非常に情報価値があり、したがって、GPBPの生物学的機能を理解するためにさらなる研究が必要であった。本明細書では、本発明者らはGPBPについてのmRNAの翻訳が、いくつかのポリペプチドを生成させ、そのうちのいずれもサイトゾルでは有意に発現されなかったことを示す。一方、現在の研究は、GPBPが分泌経路に入り、IV型コラーゲンと相互作用する証拠を提供する。さらに、本発明者らは、26−残基Serリッチな領域の選択的エクソンスプライシングによる除去は、タンパク質をサイトゾルに局在化させることを示し、GPBPΔ26/CERTがGPBPの可溶性細胞内型であることを明らかにした。本データは、選択的エクソンスプライシング及び翻訳開始が、COL4A3BPの産物がマルチ区画生物学的プログラムを調整することが期待される異なる場所へこれらを向かわせる方法であることを示唆する。様々な証拠は、後のものが、基底膜コラーゲン構成(GPBP)(1、3、4)並びに細胞膜への小胞タンパク質カーゴ輸送を調節する細胞小器官間セラミド輸送(GPBPΔ26/CERT)のリン酸化及び調節を包含することを裏付ける(6、14)。最後に、本発明者らは、77kDa GPBPが、抗体介在性糸球体腎炎(すなわち、グッドパスチャー疾患及び免疫複合体型糸球体腎炎)の臨床的マーカーとして使用できる血清学的成分であることを示す。
【0078】
物質及び方法
血清試料の処理
マウス及びヒト血液試料を人体研究及び動物実験機関ガイドラインにしたがって得た。本発明者等は、あらかじめ特徴付けし(4)、健康な若年(4ヶ月)及びIgA免疫複合体関与を受けた老年(7ヶ月)であるニュージーランドホワイト(NZW)マウスから得た血清を使用した。ヒト血漿交換及び対照又はグッドパスチャー患者由来の血清を標準的手順にしたがって得た。
【0079】
抗体及び組換えタンパク質
切断された組換えGPBPアイソフォーム及び合成ペプチドを用いて、本発明者らはGPBP/GPBPΔ26特異性マウスモノクローナル抗体14(mAb14)のエピトープ(1)をFFATモチーフにマッピングした(図9)。マウスmAb e26はGPBPに特徴的な26残基(GPBPpep1)に対して産生され、したがってGPBPΔ26/CERTと反応しなかった(図1A)。ヒトモノクローナルF(ab)断片を、GPBPの選択的に翻訳された領域(ATR)である合成ペプチドを用いて組換えF(ab)発現ライブラリから単離した(図2C)(Antibodys by Design,MorphoSys AG)。反応性F(ab)断片を、ウェスタンブロットおよび予想されるATRを発現する組換えタンパク質を用いてさらに特徴付けした(非図示)。最も反応性の高いF(ab)断片(Ab 24)を用いて天然のGPBPポリペプチドを特徴付けし、最も反応性の低いF(ab)断片(Ab20)をこれらの研究において負の対照として使用した。先に報告された(4)免疫精製ニワトリポリクローナルGPBP特異性抗体(αGPBP)を、フローサイトメトリーにおいて使用するためにビオチニル化するか、又は直接免疫蛍光法のためにAlexa Fluor 647(Invitrogen)で標識した。GPBPおよびGPBPΔ26/CERTについて特異的なポリクローナル抗体は、標準的手順にしたがってGST−FLAG−GPBP(1)で免疫化したウサギにおいて(αGPBPr)又は特異的合成ペプチドで免疫化されたニワトリにおいてのいずれかで産生され、Abcamから購入した(αGPBPab)。αGPBPrにおける特異抗体を、Sepharose−CNBr(Sigma)と結合した組換えFLAG−GPBP(下記参照)を用いてアフィニティー精製した。グリセルアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ検出のために、本発明者らはErwin Knechtによって提供されたマウスモノクローナル抗体を使用した。カルレギュリン(calregulin)、p65又はカテプシンDに対して特異的なポリクローナル抗体はSanta Cruz Biotechnology Incから得、ピルビン酸デヒドロゲナーゼ(PDH)に対して特異的なものはMolecular Probesから得た。PrP(クローン3F4)又はgolgin−97に対して特異的なモノクローナル抗体は、それぞれClontechおよびMolecular Probesから得た。FLAGを検出するために、本発明者らは、ウェスタンブロット分析に関してはFLAG/M2又はFLAG/M2−ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)(Sigma)および免疫蛍光法(Abcam)に関してはニワトリ抗体(αFLAG)又はヤギ抗体(αFLAG−FITC)を使用した。Alexa Fluor(登録商標)488−ストレプトアビジンはMolecular Probesから得、二次抗体はPromega(抗マウス及び抗ウサギHRP複合体)、Jackson Immunoresearch(抗ヒトF(ab)2−HRP)及びSigma(抗ニワトリHRP並びに他のFITC及
びTRITC複合体)から得た。組換えFLAG−GPBP及びFLAG−GPBPΔ26を、すでに記載されているようにして、メタノール資化酵母(Pichia pastoris)において発現させ、アフィニティー精製した(1、3)。
【0080】
プラスミド構築物
pc−n4’、GPBPmRNAの5’非翻訳領域(UTR)及びコーディング配列を有するcDNAを発現するpcDNA3(Invitrogen)誘導構築物の産生が報告されている(1)。pc−n4’から誘導されるプラスミドは、pc−GPBP−Met(5’UTRが欠失した欠失変異体)、及びpc−n4’−Mmut(標準的AUG(Met)翻訳開始がGGA(Gly)で置換された構築物)を含んでいた。GPBPのコーディング配列と融合したFLAG配列を発現するpc−FLAG−GPBPの産生は、すでに報告されており(1)、FFATモチーフにおいて欠失を有するpc−FLAG−GPBPΔFFAT図9)を得るために使用された。pc−FLAG−GPBPΔ26は、GPBPΔ26のコード領域と融合したFLAG配列を発現し、pc−FLAG−GPBPと同様に産生される。ATRの原因となる開始部位を決定するために、本発明者等は、
iMet位置の上流のオープン・リーディング・フレーム(ORF)における様々な位置で終止コドンを導入することによってpc−n4’及びpc−n4’−Mmut変異体を産生した。GPBP又はGPBP/GPBPΔ26について特異的な低分子干渉mRNA(siRNA)の一時的発現のためにpSilencer(商標)2.1−U6 hygro(Ambion)を用いた。対応する誘導構築物及びcDNA標的配列は:pSi−GPBP/GPBPΔ26−2、ACAGAGTATGGCTGCAGAG(配列番号11);pSi−GPBP/GPBPΔ26−3、GTACTTTGATGCCTGTGCT(配列番号12);pSi−GPBP−1、GCCCTATAGTCGCTCTTCC(配列番号13)であった。標的配列及びプラスミド構築物の選択は、供給者の勧告に基づいた。siRNA発現プラスミドの効率を、細胞組換え発現系において評価した(非図示)。これらの研究における対照プラスミド(pSi−対照)は、ヒト細胞において発現されないタンパク質である、緑色蛍光タンパク質のmRNAを標的とするために設計された。全変異体は、標準的PCRに基づく突然変異生成によって産生され、クローニングされた全てのcDNAクローンの忠実性を、ヌクレオチドシークエンシングにより確認した。
【0081】
細胞培養及びトランスフェクション
HEK−293又はHeLa細胞をそれぞれ、2mMのL−グルタミン、10%(v/v)ウシ胎仔血清及びペニシリン(100U/ml)/硫酸ストレプトマイシン(0.1mg/ml)を添加したダルベッコの修飾イーグル培地またはイーグル最小必須培地を用いて、37℃、加湿5%CO2環境中で成長させた。特に記載しない限り、この研究で使
用した細胞はHEK293細胞であった。
【0082】
ProFection Mammalian Transfection System−Calcium Phosphate(Promega)又はLipofectamine 2000(Invitrogen)を使用し、供給者の勧告に従って、トランスフェクションを16−24時間実施した。免疫蛍光研究のために、細胞を24穴プレート中、ポリ−L−リシンでコーティングされたカバーガラス上に播種した。必要があれば、HEK293細胞をpc−n4’−Mmutでトランスフェクトし、G418(Invitrogen)で15日間選択した。耐性細胞を制限希釈によってさらにクローニングし、多くの個々のクローンにおける91kDa GPBPの発現を細胞抽出物のウェスタンブロット分析によって測定した(下記参照)。上昇したレベル(c8、c14)又は低下したレベル(c19)の91kDaを発現するクローンを機能研究において使用した。
【0083】
インビトロ転写及び翻訳
本発明者らは、TNT(登録商標)T7 Coupled Reticulocyte
Lysate System(Promega)を用いて、供給者の勧告にしたがって約1μgのプラスミドのインビトロ転写/翻訳を実施した。タンパク質合成を評価するために、[S35]メチオニンを混合物に添加し、標識されたポリペプチドをSDS−PAGE及びフルオログラフィーによって同定した。手短に言えば、電気泳動後、ゲルを45%メタノール及び7.5%酢酸で1時間固定した。続いて、ゲルを、ジメチルスルホキシドで30分間、そしてジメチルスルホキシド中22.5%の2,5−ジフェニルオキサゾールでさらに30分間、2回処理した。最後に、ゲルを水で平衡化し、乾燥し、−70℃に暴露した。
【0084】
細胞抽出物及び細胞分画
細胞抽出物を得るために、成長培地を氷冷リン酸緩衝塩溶液(PBS)ですすぎ、氷床上、25mMのTris−HCl(pH7.5)、150mMのNaCl、0.5%のTriton X−100、1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)及び10μg/mlのロイペプチンで均質化した。混合物を500×gで10分間遠心分離
することによって精製し、タンパク質濃度を測定し、−70℃で保存した。
【0085】
細胞下分画のために、90%コンフルエンスの培養物をPBS中に集め、遠心分離に付した(500×gで10分間)。細胞ペレットを250mMのスクロース、10mMのPBS(pH7.5、10μg/mlのロイペプチンを含む)、1mMのPMSF中に分散させ、ガラス製乳棒を用いてDounce均質化(20ストローク)で破壊した。細胞ホモジネートを連続遠心分離(sequential centrufugation)によって徐々に精製して、異なる細胞画分を得た。核及び破壊されていない細胞を500×gで10分間遠心分離することによって集めた。上清を7,000×gで10分間遠心分離することによってさらに精製して、ミトコンドリア/リソソーム画分を得た。最後に、上清を150,000で1時間遠心分離することによって精製して、ミクロソーム分画を得、これは細胞膜の断片、すなわち、小胞体、細胞膜及び分泌小胞(ペレット)並びにサイトゾル画分(上清)を有する。全てのステップは0−4℃で実施し、Protein Assay試薬(Bio−Rad)を用いてタンパク質濃度を測定した。
【0086】
いくつかの目的で、500×gの上清をリソース−Q FPLCカラムにかけ、結合物質を10mMのTris−HCl(pH8.0)中0から1MのNaCl勾配で溶出させた。細胞GPBPの大部分を含む0.55−0.6MのNaCl画分をエタノールで沈殿させ、ウェスタンブロット分析用の部分的に精製されたGPBPとして使用した。
【0087】
エキソビボ架橋、スフィンゴミエリナーゼ処理及びFLAG−免疫沈降
エキソビボ架橋に関して、本発明者らは、本質的にすでに記載されているようにして得られた排出可能なヒトα3(IV)NC1ドメイン(BM40−FLAG−α3(IV)NC1)を発現するHEK293−FLAG−α3(IV)細胞を使用した(1、16)。細胞を、150mmプレート中(天然のGPBP)又は6穴プレート中(組換えGPBP)のいずれかで70−90%コンフルエンスまで成長させた。トランスフェクションの48時間後又は細胞が指示されたコンフルエンスに達したら、架橋を行った。手短に言えば、細胞をPBSですすぐことによってRTにし、1%ホルムアルデヒドを含む培地とともに10分間インキュベートした。架橋反応を、PBS(pH7.4)中125mMのGly−HClで10分間RTにて急冷した。氷冷PBSですすぐことによって細胞を4℃にし、処理を4℃で続けた。細胞を、1又は5ml(6穴又は150mmプレート)の抽出緩衝液[16mMのTris−HCl(pH7.5)、160mMのNaCl、2mMのエチレンジアミン四酢酸(EDTA)、1.1%のTriton X−100、0.01%のSDS、10μg/mlのロイペプチン、1mMのPMSF]で30分間溶解させ、500×gで10分間遠心分離して、細胞片を除去し、そして上清を、50又は250μl(6穴又は150mmプレート)のFLAG−アフィニティーゲルの50%スラリーで、穏やかに揺らしながら一夜抽出した。ビーズを遠心分離によって集め、1mLの抽出緩衝液で2回、Tris緩衝塩溶液(TBS、50mMのTris−HCl(pH7.5)、150mMのNaCl)で1回洗浄した。タンパク質を25又は125μl(6穴又は150mmプレート)のFLAGペプチドのTBS中100μg/ml溶液でRTにて2回溶出させた。溶出した試料を電気泳動試料緩衝液(2X)とともに15分間沸騰させて逆架橋させ、SDS−PAGE及びクマシーブルー染色又はウェスタンブロットのいずれかによってさらに分析した。
【0088】
必要があれば、pc−FLAG−GPBP又はpc−FLAG−GPBPΔ26でトランスフェクトしたHeLa細胞を、すでに記載したようにして(5)セレウス菌(Bacillus cereus)スフィンゴミエリナーゼ(Sigma)で処理するか、または処理せず、細胞をメタノール/アセトンで固定し、そして直接免疫蛍光法(下記参照)によって分析するか又は10mMのTris−HCl(pH7.5)、150mMのNaCl、0.5%のTriton X−100、1mMのEDTA、50mMのNaF、1
mMのオルトバナジウム酸ナトリウム、10μg/mlのロイペプチン、1mMのPMSF中で溶解させ、遠心分離(500×gで10分間)によって精製し、FLAG−免疫沈降に使用した(前記参照)。未処理細胞からの免疫精製物質を分割し、半分を5U/μlのλPPase(New England Biolabs)で30℃にて30分間、供給者の勧告にしたがって処理した。全試料を、抗FLAG抗体を用いたウェスタンブロットによってさらに分析した。
【0089】
いくつかの実験に関しては、細胞を150mmプレート中で成長させ、FLAG標識タンパク質をコードするプラスミド構築物20μgでトランスフェクトし、さらに2日間新鮮な培地中で培養した。20ミリリットルの培地を本質的に前述のようにしてFLAG−免疫沈降に使用した。
【0090】
フローサイトメトリー
細胞をやさしく分離し、培地中に分散させた。細胞表面上の非特異性抗体結合部位を、非関連mAbを含むマウス腹水(ブロッキング溶液)でブロックした。細胞を続いてブロッキング溶液中、阻害ペプチド(GPBPpep1)若しくは非関連性合成ペプチドを含むか又は含まないビオチニル化αGPBPの存在下或いは非存在下でインキュベートした。細胞をAlexa Fluor(登録商標)488−ストレプトアビジンとともにブロッキング溶液中でインキュベートし、Cytomics FC500流動血球計算器(Beckman Coulter)でさらに分析して、蛍光発光を測定した。未処理の新鮮な細胞を基準として使用し、前方及び側方散乱を測定して、細胞統合性を評価した。全てのインキュベーションはRTで1時間であった。
【0091】
固定細胞を用いた直接及び間接免疫蛍光法
細胞をトランスフェクトし、−20℃で10分間冷却されたメタノール−アセトン(1/1)で固定した。続いて、細胞をブロッキング溶液(PBS中で1:2に希釈されたウサギ血清)とともに30分間RTでインキュベートし、一次抗体(ブロッキング溶液中20μg/ml)とともに2時間37℃にて加湿チャンバー中でインキュベートし、続いて二次抗体(ブロッキング溶液中1:200)とともに1時間RTでインキュベートした。細胞をマウント液(DAKO)中DAPI(1.25μg/ml)で染色し、Spotカメラ及びソフトウェア・バージョンv2.2(Diagnostic Instruments)と組み合わせたAxioskop−2 plus顕微鏡(Carl Zeiss)で可視化した。いくつかの実験に関しては、細胞をトランスフェクトし、固定し、αFLAG−FITCとともにインキュベートし、前述のように可視化した。非トランスフェクト細胞を負の対照として使用した。
【0092】
生細胞の直接免疫蛍光法
細胞をガラス底のマイクロウェルディッシュ(MatTek Corp)上で培養し、約50%コンフルエンスに達したら、培地を捨て、10μg/mlのαGPBP−Alexa Fluor 647と過剰のGPBPpep1又は等モル量の非関連性合成ペプチドを生細胞のミトコンドリア染色のためのローダミン123(Invitrogen)とともに含む新鮮な培地と交換した。蛍光の生細胞分析を、Leica TCS SP2倒立共焦点顕微鏡を用いて実施した。細胞は全てのステップにおいて37℃、加湿5%CO2環境中で維持した。
【0093】
質量分析法
各タンパク質バンドをクマシーブルー染色されたゲルから切除し、変色させ、ゲル中トリプシン消化(in−gel trypsin digest)し、遠心分離した。1マイクロリットルの上清を乾燥し、1μlのマトリックス溶液(a−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸、Sigma製)中に再懸濁させ、試料プレートに塗布し、乾燥し、質量分析計
中に導入した。トリプシン消化ペプチドをMALDI/TOF/TOF質量分析法(4700 Proteomics Analyzer,Applied Biosystems)によって分析した。集められたデータを、GPSソフトウェア(Applied Biosystems)を用いて分析し、タンパク質を、検索エンジンMASCOT v2.0(Matrix Science)を用いて識別した。
【0094】
循環するGPBPのヒト血漿からの単離
10ミリリットルのグッドパスチャー患者からの血漿交換を、5mgの共有結合したαGPBPrを含むSepharose−CNBr(Sigma)カラム(1ml床)にかけた。カラムを、0.05%のTween20(TBST)を有する20mlのTBSで洗浄し、Gentle−Immunopure溶出緩衝液(Pierce)で溶出させた。溶出物をTBSに対して透析し、Microcon YM−3(Millipore)を用いて濃縮し、αGPBPabを用いたウェスタンブロットによってさらに分析した。
【0095】
血液中を循環するGPBPレベルの推定
マイクロタイタープレートの各ウェルを一夜αGPBPr(TBS中2μg/ml)でコーティングし、ブロッキング緩衝液(PBS中3%BSA)とともに2時間さらにインキュベートした。組換えGPBP及び血清試料をウシ胎仔血清中で希釈し、2連で2時間インキュベートした。プレートを次に、αGPBPab(TBS中1:5,000)とともに、そして抗ニワトリHRP結合(TBS中1:20,000)とともにそれぞれ1時間インキュベートした。コーティング(4℃)を除くすべてのステップはRTであり、ステップごとにウェルをTBSTでよく洗浄した。最後に、Amplex UltraRed試薬(Invitrogen)(約568/581nmの励起/発光最大値)を用いてVictor 2マイクロタイタープレートリーダー(PerkinElmer)で検出を実施した。標準曲線の直線部分が、0.5−10ng/mlの組換えGPBPで見られた。本発明者らはMann−Whitney試験を用いて、系統間の違いを評価した。<0.05のP値を有意と見なした。Prism4.0ソフトウェア(GraphPad Software、San Diego,CA)を計算に用いた。
【0096】
SDS−PAGE及びウェスタンブロット分析−還元条件下で、標準的手順にしたがい、抗体検出のために化学発光(Amersham Pharmacia Biotech)を用いて実施した。
【0097】
結果
COL4A3BPは77kDa、91kDa及び120kDaのポリペプチドをコードする
GPBP及びGPBPΔ26を同定するために、本発明者らは2つの異なるモノクローナル抗体、すなわち、mAb14(GPBP及びGPBPΔ26を認識することがすでに報告されている(1))、並びにmAb e26(GPBPを除く26−残基Serリッチな領域に対して産生された新規モノクローナル抗体)を使用した(図1A)。GPBP欠失変異体及び合成ペプチドを用いて、本発明者らはmAb14エピトープをFFATモチーフに位置づけ、したがって、この抗体はFFATモチーフが欠失したGPBP変異体(GPBPΔFFAT)と反応しなかった(図9)。
【0098】
細胞抽出物のウェスタンブロット分析によって、mAb14が主に約77kDaの見かけの分子量(M)を有する1つのポリペプチドを認識し(1)、一方、mAb e26は約91kDa及び120kDaのMの2つのポリペプチドと反応することが明らかになった(図1B)。わずかな変動し得る反応性も、mAb e26を含む約77kDa、60kDa、50kDa及び32kDaのポリペプチドに対して、及びmAb14を含む−91kDa及び120kDaのポリペプチドに反発して観察された(非図示)。本発明
者らは、同様の反応性分子種を、HEK293(図1B)、ヒト線維芽細胞、HeLa、hTERT−RPE及びhTERT−BJl細胞をはじめとする多くの培養したヒト細胞において見いだした(非図示)。
【0099】
COL4A3BP産物をさらに特徴付けするために、本発明者らは、天然のmRNA及び組換えmRNAの発現を比較した(図1C)。このために、pc−n4’(COL4A3BPの5’UTR及びコーディング配列を有する構築物)(1、17)を培養細胞における一時的遺伝子発現分析で使用した。pc−n4’の発現によって、mAb e26により検出される約77kDa、91kDa及び120kDaの3つのポリペプチドを得た。対照的に、約77kDa及び91kDaのポリペプチドだけがmAb14と顕著に反応した。驚くことに、組換え溶解物において最も顕著なmAb e26反応性ポリペプチド(77kDa)(すでに報告されているmRNA産物(1))は、重要な天然のカウンターパートを有していなかった。本発明者らは、mAb14が120kDaの組換え型ポリペプチドとよりも91kDaの組換え型ポリペプチドと比較的強力に反応することも観察した。
【0100】
天然のポリペプチドの起源をさらに究明するために、本発明者らは、COL4A3BPについて特異的な低分子干渉RNA(siRNA)を使用した(図1D)。3つの天然のポリペプチド全ての発現は、これらのsiRNAを発現する場合に減少したが、GPBP及びGPBPΔ26/CERTの両方について特異的なsiRNAは、77kDaのポリペプチドの発現を減少させるのにより有効であり、一方、GPBP特異性siRNAは、91kDa及び120kDaのポリペプチドの発現をより有効に減少させた(pSi−GPBP/GPBPΔ26−3及びpsiGPBP−1を比較)。まとめると、本発明者らのデータは、COL4A3BPの主な細胞産物は、GPBPΔ26/CERT(77kDa)並びに91kDa及び120kDaの従来認識されていないGPBPアイソフォームを含み、後者は、一貫したmAb14結合を防止する修飾FFATモチーフを有する可能性が高いことを示唆していた。GPBP特異性siRNAsを用いる場合の77kDaポリペプチドの細胞レベルにおける減少は、このポリペプチドがmAb e26と有意な反応性を示さないので、さらなる調査を必要とする(図1B)。
【0101】
主な細胞GPBPアイソフォームは非標準mRNA翻訳開始から得られる
細胞GPBPアイソフォームの起源をさらに明確にするために、本発明者らは、5’UTR−欠失又はiMetからGlyへの置換からなるmRNA変異体を発現する(pc−n4’)誘導構築物を生成させ(図2A)、これらをタンパク質発現分析で使用した(図2B)。細胞において、5’UTR−欠失mRNAである構築物(pc−GPBP−Met)は、77kDaのポリペプチドのみを産生し、iMetからGlyへの置換である構築物(pc−n4’−Mmut)は、91kDa及び120kDaのポリペプチドのみを発現した(図2B、エキソビボ)。しかし、無細胞翻訳系において、pc−GPBP−Metは77kDa GPBPポリペプチドも発現するが、pc−n4’Mmutは91kDaのポリペプチドのみを生成し、120kDaのポリペプチドの有意な発現は観察されなかった(図2B、インビトロ)。これらのデータは、GPBPmRNAが(1つ若しくは複数の)非標準翻訳開始部位を5’UTR中に含み、これは91kDa及び120kDaのポリペプチドをもたらし、一方、77kDaのポリペプチドは標準翻訳開始の産物であることを示していた。さらに、本発明者らのデータは、91kDaが非標準翻訳開始の主要生成物であり、120kDaのポリペプチドは、細胞膜のない無細胞系において発現できない翻訳後誘導産物であることを示唆していた。
【0102】
さらなる非標準翻訳開始を特徴付けするために、すでに認識されている(1)GPBPmRNAの5’UTRにおいて存在するORF(図2C)を、pc−n4’Mmutにおける各位置で終止コドンを導入することによって中断し、細胞タンパク質発現をウェスタ
ンブロットによって分析した(図2D)。終止コドンを−83(本来ACG、トレオニン)で有する構築物は、91kDa及び120kDaのポリペプチドを発現しなかったが、終止コドンを−84(本来GCG、アラニン)で有する構築物は2つのポリペプチドを発現し、選択的翻訳開始部位をコドン−83に位置づけた(図2Cにおいて枠で囲ったThr)。pc−n4’の−83終止変異体を分析した場合に、同じ結論が得られた(図2D)。
【0103】
非標準翻訳開始も91kDa及び120kDaの内因性GPBPポリペプチドが原因であることを確認するために、予想されるATRである合成ペプチドと特異的に反応するヒトF(ab)2断片(Ab24)(図2Cにおいて網がけした配列)を、部分的に精製さ
れたGPBPポリペプチドのウェスタンブロット分析に使用した(図2E)。予想通り、Ab24は91kDa及び120kDaの2つのポリペプチドと特異的に反応し、これらのポリペプチドはmAb e26によっても認識され、このことは、天然のGPBPポリペプチドが非標準翻訳産物に特徴的なATRを含んでいることを示唆した。
【0104】
91kDa及び120kDaのGPBPアイソフォームは不溶性膜結合ポリペプチドである
91kDa GPBPアイソフォームは、SecretomeP 2.0 Server(18, http://www.cbs.dtu.dk/services/SecretomeP/)を用いて分析すると、非古典的分泌タンパク質であり、PSORT II Prediction(http://psort.ims.u−tokyo.ac.jp/form2.html)を用いて分析すると、ミトコンドリア(60.9%)、核(26.1%)、細胞骨格(8.7%)及び分泌系の小胞(4.3%)中に局在化することが予想された。したがって、これらの理論的考察から、非標準翻訳開始から得られるGPBPアイソフォームが、分泌経路を包含する細胞小器官中に入る非サイトゾルポリペプチドであることが示唆された。
【0105】
これらの予想を評価するために、無傷生細胞をαGPBPとともにインキュベートし、抗体結合検出のための直接免疫蛍光法及びフローサイトメトリーによって分析した(図3A及び3B)。興味深いことに、αGPBPは特異的に生細胞と結合した。その理由は、抗体の結合がGPBPである合成ペプチド(GPBPpep1)によって効率的に消失するが、非関連性ポリペプチド(Contpep)によっては消失しなかったからである。これらのデータは、細胞GPBPアイソフォームが細胞膜の外部表面に存在することを示唆する。
【0106】
GPBPの細胞内分布をさらに特徴付けするために、細胞を破壊し、細胞下分画及びウェスタンブロット分析に付した(図3C)。予想通り、91kDa及び120kDaのGPBPアイソフォームは可溶性物質として検出されなかったが、ミトコンドリア−リソソーム及びミクロソーム画分と主に結合して見いだされた。核画分におけるGPBPの存在が、これらのタンパク質又はこの画分を含む非破壊細胞及び/又はミトコンドリアの核発現を実際に反映するかどうかは明らかではない。対照的に、mAb14と反応し、mAb
e26と顕著な反応性を示さない約77kDaのポリペプチドが、150,000×gで1時間試料を遠心分離した後に可溶物として単独で検出された(サイトゾル)。
【0107】
これらのデータは、91kDa及び120kDaの天然のGPBPポリペプチドは細胞膜と結合して不溶性で発現され、一方、77kDaの天然のGPBPΔ26/CERTポリペプチドは細胞質において可溶性で発現されることが示唆された。
【0108】
77kDa GPBPはIV型コラーゲンと相互作用する可溶性細胞外タンパク質である。
従来のレポートは、77kDa GPBPがIV型コラーゲンと相互作用することを示唆した(1、3、4)。このことを、BM40−FLAG−α3(IV)NC1(ヒトα3(IV)NC1の組換え排出可能な形態)(16)を発現するか、または発現しない細胞のエキソビボ架橋及びFLAG−免疫沈降とそれに続く免疫沈降物のSDS−PAGE分析によってさらに評価した(図4A)。FLAG特異性抗体はFLAG−α3(IV)NC1及びGPBP又はGPBPΔ26/CERTのいずれかである77kDaのポリペプチド(2)(ウェスタン)を、タンパク質折りたたみ及びERホメオスタシス維持に関与する2つのER常在性シャペロンであるGrp78及びGrp94(クマシー)とともに効率よく沈殿させた(19、20)。GPBPが実際にERにおいてFLAG−α3(IV)と相互作用することさらに判定するために、BM40−FLAG−α3(IV)NC1を発現するか又は発現しない細胞をpc−n4’でトランスフェクトし、同様に分析した(図4B)。FLAG抗体は、FLAG−α3(IV)NC1を発現する細胞から77kDa GPBPを効率的に沈殿させたが、対照細胞からは沈殿させず、このことにより、77kDa GPBPアイソフォームが分泌経路中に入り、FLAG−α3(IV)NC1と相互作用することが示唆される。
【0109】
一次構造分析により、77kDa GPBPポリペプチドの細胞質局在化が予想された(未公表の観察結果)。しかし、インビトロ(1、3)、エキソビボ(図4)及びインビボ(4)研究は、77kDa GPBPアイソフォームがIV型コラーゲンと結合し、リン酸化させることを示唆した。さらに、組換え発現研究により、77kDa GPBPポリペプチドが最も顕著なポリペプチドであることが明らかになったが、有意なレベルの天然のカウンターパートは細胞内で検出されなかった(図1)。まとめると、これらの観察結果は、標準的GPBPが、非古典的分泌を受けるサイトゾルポリペプチドであることを示唆した。
【0110】
GPBPが分泌されるかどうかを調査するために、本発明者らはまずFLAG標識GPBPをHeLa細胞において発現させ、FLAG特異性抗体を用いて細胞内組換えタンパク質分布を分析した(図5A)。FLAG−GPBPはカルレギュリン(ER常在性タンパク質)と広範囲にわたって共存し、このことは、GPBPΔ26/CERTについて記載されるように(21、22)、FLAG−GPBPがFFAT−VAP相互作用によってERと結合することを示唆する。したがって、本発明者らは、FLAG−GPBPΔFFAT(FFATモチーフを含まないFLAG−GPBP変異体)を発現し、同様に分析した。FFATモチーフの欠失はGPBPのERへの分布を防止した。というのも、このタンパク質がgolgin−97(ゴルジ装置常在性タンパク質)と広範囲にわたって共存することが判明したからである(図5A)。HEK293細胞において研究を行うと、同じ結論が得られた(非図示)。本発明者らのデータは、組換えGPBPが、その排出のためにFFATモチーフによりVAPと結合したサイトゾルタンパク質であり、FFAT−相互作用が損なわれた場合にのみ、タンパク質はゴルジ装置と結合する可能性を有するという概念と一致した。FLAG−GPBP又はFLAG−GPBPΔFFATを培養細胞において発現し、免疫沈降及びウェスタンブロット分析によって培地を続いて分析することによって、このことを研究した(図5B)。興味深いことに、FLAG特異性抗体は、組換えタンパク質を、FLAG−GPBPを発現する培地から効率的に免疫沈降させ、FLAG−GPBPΔFFATを発現する細胞の培地からは免疫沈降させず、このことから、ERに対するFFATが関与する結合は77kDa GPBP分泌に必須であることが明らかになった。
【0111】
GPBPΔ26/CERTは、FFAT依存的方法でERとも結合する(21、22);しかし、本発明者らは、サイトゾルにおいてGPBPΔ26/CERT及び細胞外区画において77kDa GPBPを見いだし、このことは、GPBPに限定されるSerリッチな26−残基領域もGPBP分泌について重要であることを裏付ける。これを同様に
FLAG標識77kDa GPBP又はGPBPΔ26/CERTを発現する培養物において研究した(図5C)。予想通り、26−残基Serリッチな領域の存在は、FLAG−GPBPΔ26が培地において顕著に発現されないならば、タンパク質分泌に重要であった。
【0112】
91kDa GPBPは、細胞外区画における77kDa GPBPレベルを調節する
この証拠は、77kDa及び91kDaの両GPBPアイソフォームは分泌経路中に入るが、91kDaが膜と結合したままであるのに対して、77kDa GPBPは細胞外区画中に可溶性であることを裏付ける。本発明者らは、91kDa GPBPが77kDa GPBPの細胞外レベルを調節するかどうかを研究した。これは、組換え91kDa
GPBPを異なるレベルに発現する各細胞系におけるFLAG−GPBPの組換え発現(図6A)とそれに続く対応する培地のFLAG−免疫沈降及びウェスタンブロットによる免疫沈降物の分析によって行った(図6B)。興味深いことに、組換え91kDa GPBPの発現の増加は、培地におけるFLAG−GPBPのレベルの増加と関連し、このことは、91kDa GPBPが77kDa GPBPの細胞外区画への分泌を誘発したことを示唆する。
【0113】
77kDa GPBPはスフィンゴミエリナーゼでの細胞処理に対して感受性でない
組換え発現研究によっても、77kDa GPBPは、FFATモチーフが突然変異するとゴルジ装置への転移を受ける、ERと関連したサイトゾルポリペプチドであることが示された(図5A)。したがって、本発明者らは、77kDa GPBPが、GPBPΔ26/CERTについて先に報告されている様に、スフィンゴミエリナーゼ細胞処理に反応して脱リン酸化及びゴルジ装置への転移を受けるかどうかを疑問に思った(5)。これらの研究のために、FLAG標識GPBP又はGPBPΔ26/CERTを発現する細胞をセレウス菌スフィンゴミエリナーゼ(bSMase)で処理し、興味のある細胞内タンパク質をFLAG−免疫沈降及びウェスタンブロットによって分析した(図7A)。すでに指摘されているように(1、5)、両組換えタンパク質をリン酸化し、一般的ホスファターゼ(λPPase)での処理によってそれらのMを同様の程度まで減少させた(上及び下の矢印)。しかし、スフィンゴミエリナーゼ細胞処理は、各組換えタンパク質について異なる結果をもたらし、FLAG−GPBPΔ26/CERTは低Mまでシフトしたのに対して(上および中央の矢印)、顕著なMシフトはFLAG−GPBPについては観察されなかった。このことは、スフィンゴミエリナーゼ処理によって引き起こされるスフィンゴミエリンの細胞レベルにおける減少が、FLAG−GPBPΔ26/CERTの脱リン酸化を誘発するが、FLAG−GPBPのリン酸化状態に顕著な影響を及ぼさなかったことを示唆する。予想通り、細胞の免疫蛍光法分析によって、スフィンゴミエリナーゼ処理は、FLAG−GPBPの細胞内分布を著しく変更することなく、FLAG−GPBPΔ26/CERTのゴルジ装置への転移を促進したことが明らかになった(図7B)。
【0114】
77kDa GPBPの血液循環レベルは、グッドパスチャー患者及び免疫複合体型糸球体腎炎の動物モデルにおいて上方調節される
証拠は、インビボの可溶性タンパク質がイムノアフィニティークロマトグラフィによって最初に研究され、血液循環するヒト77kDa GPBPが単離された際に、77kDa GPBPが分泌されたことを示唆した(図8A)。標準的治療手段によって、高レベルのGPBPを発現することが予想されるグッドパスチャー患者から得た血漿交換を使用した(3)。予想通り、本発明者らは、アフィニティーカラムから溶出された物質において1つの77kDaポリペプチドを同定し、これはGPBP特異性抗体と反応し、このことは、77kDa GPBPがインビボで分泌され、ヒト血漿の成分であることを示唆する。アフィニティー精製を実証し、かつ77kDa GPBPのレベルをさらに正確な方法で決定するために、本発明者らは、ヒト組換えGPBPを捕捉し、検出するためにアフ
ィニティークロマトグラフィで用いられた同じ抗体を利用するELISAを開発した(図8B)。本発明者らは、このELISAを使用して、対照及び抗体介在性糸球体腎炎を表す試料における循環する77kDa GPBPレベルを推定した(図8C、D)。ELISAは、組換えGPBPを測定する場合、0.5ngから10ng/mlの間で直線範囲を示し(図8B)、グッドパスチャー患者において対照個体におけるよりも比較的多くの循環する77kDa GPBPを検出した(図8C)。本発明者らは、若年(4ヶ月)及び高齢(7ヶ月)NZWマウスを比較した場合に、同様の結果を得(図8D)、GPBP依存性IgA免疫複合体型糸球体腎炎を発症し、狼瘡になりやすい自己抗体産生を発現したマウス種では7ヶ月の月齢で始まった(4)。
【0115】
考察
ここで、本発明者らは、GPBPのmRNAが標準的(AUG)及び非標準(ACG)翻訳開始を経て、それぞれ77kDa及び91kDaの2つの主なポリペプチドを生成するという有力な証拠を得た。本研究からの結果はまた、両生成物が分泌経路に入ることを裏付ける。しかし、77kDaが細胞外区画に達し、可溶性免疫沈降性形態で存在するのに対して、91kDaおよびその誘導120kDaポリペプチドは、細胞膜と結合して、主に不溶性のままであった。ACGでの翻訳開始及び非標準翻訳開始を使用して、タンパク質を選択的細胞区画へ向かわせることが、他のヒト遺伝子について記載されている(23、24)。従来の証拠(21、22)に基づいて、ERに対するFFAT介在性GPBP結合(図5)はVAPによって起こり、したがってFFAT−VAP相互作用がER中へのGPBP転移の根底にある分子機構に関与することが予想される。さらに、本発明者らは、すでに報告された、選択的にスプライスされたGPBPΔ26/CERTが、細胞質において主に可溶性のままであるGPBP変異体であることも示す。このように、本発明者らのデータは、mRNA選択的翻訳開始及びエクソンスプライシングが、サイトゾル、分泌経路、細胞膜及び細胞外区画をはじめとする複数の位置へGPBPを向かわせるための方法であるという考えを裏付ける。さらに、先の観察結果では、GPBPはヒト精原細胞の核(1)並びにラット肝臓のミトコンドリア及びリソソームで見いだされ(未発表の観察結果)、このことは、GPBPの分布が実質的に偏在し、したがって、その生物学的プログラムはいくつかの区画において機能することが予想されることを示唆する。
【0116】
肺動脈内皮細胞由来のヒトGPBPcDNAが報告されている(GenBank受入番号AK096854)。興味深いことに、AK096854は選択的標準翻訳開始部位(iMet)を有し、これは、91kDaポリペプチドのORFを上流に45残基延長する。本発明者らは、HEK293細胞においても、肝臓、腎臓、脳、筋肉、膵臓、ケラチノサイト、リンパ球及びHeLa細胞をはじめとする多くの他のヒト組織においても、AK096854mRNA発現についての証拠を見いだせなかった(非図示)。それでも、本明細書で報告される非標準翻訳開始産物と類似したMを有する標準的mRNA翻訳開始によって産生されるGPBPアイソフォーム(すなわち、AK096854)の存在は排除できなかった。
【0117】
一次構造分析から、非標準的に翻訳されたGPBP産物は分泌経路に入ることが予想される。いくつかの観察結果、すなわち、1)非標準GPBPアイソフォームは細胞膜と結合する分子種であること(図3);2)非標準GPBPアイソフォームは細胞における主なGPBP種(図1)及び無傷生細胞の外表面と結合したGPBP特異性抗体であること(図3);3)120kDaのポリペプチドは、翻訳が細胞膜のない無細胞系で起こる場合に、mRNAから発現されないこと(図2);及び4)91kDa GPBPアイソフォームは細胞外区画で77kDa GPBPのレベルを調節すること(図6)が、この予想を裏付けている。総合すると、これらの観察結果は、91kDaのポリペプチドが非標準翻訳開始の主要生成物であるという概念を裏付ける。このアイソフォームは、分泌経路に入り、ここで共有結合修飾を受けて120kDaのポリペプチドを産生し、膜に結合し
たままで、細胞膜の外表面に達する。91kDa GPBPが77kDa GPBPの細胞外レベルを調節する機構はまだわかっていない。
【0118】
本発明者らは、発現が異常に高まる場合(すなわち、一時的遺伝子発現)、GPBPポリペプチドがサイトゾルにおいて蓄積することを観察し(図10)、ER中へのGPBP輸送が飽和過程であることが明らかになった。興味深いことに、これらの発現条件下で、mAb e26は、細胞外区画中にある場合、サイトゾル77kDaポリペプチドについて、このアイソフォームよりも高い反応性を示した(図10及び11)。さらに、mAb14は、天然の91kDa GPBPとよりも組換え体と比較的反応し、天然又は組換え120kDa産物と顕著に反応しなかった(図1)。これらの観察結果はすべて、26−残基Serリッチな領域(mAb e26)及びFFATモチーフ(mAb14)が分泌経路において共有結合修飾を受けることを示唆している。これらのデータは、特定の調節(生理的又は病理学的)状況下で、GPBPはサイトゾルにおいて可溶性ポリペプチドとして発現され得ることも意味する。最後に、91kDa GPBPΔ26/CERTが内因的に発現されるかどうか、及びGPBPΔ26/CERTが分泌を受けずにER中へ輸送され得るかどうかは明らかではない。
【0119】
GPBPΔ26/CERTを表すサイトゾル77kDaポリペプチドの発現レベルは、GPBP特異性siRNAを発現する細胞において有意に減少した(図1D)。このことは、siRNAがpre−mRNAも標的とするか、またはGPBPのmRNAがある程度GPBPΔ26 mRNAの前駆体であるかのいずれかであることを示唆する。本発明者らは、組換えGPBPを発現する細胞が、少量の組換えGPBPΔ26/CERTも発現することを見いだした(未発表の観察結果)。このことにより、成熟GPBPmRNAは、ERストレスシグナルに反応してXBP1について報告されているのと同様に、非古典的プロセシングに付されることが明らかになる(25)。あるいは、共有結合的に修飾された26−残基Serリッチな領域を有するGPBP種であってGPBPΔ26/CERTとともに移動するものも、この観察を説明できる。
【0120】
いくつかの証拠、すなわち:
1)77kDa GPBPは、インビボでリン酸化される部位(1)でα3(IV)NC1ドメインと結合し、リン酸化する非従来型Ser/Thrキナーゼであること(26);
2)77kDa GPBPは細胞外区画において可溶性(図5及び図8)又はGBMコラーゲンと結合し(4)、かつ培養細胞のサイトゾルにおいて有意なレベルで発現されないことが主に判明していること(図1及び3);
3)細胞GPBPアイソフォームは細胞膜の外表面で局在化すること(図3);
4)91kDa GPBPアイソフォームは細胞膜と結合し(図3)、77kDa GPBPアイソフォームの細胞外レベルを調節すること(図6);
5)α3(IV)NC1ドメインは独自の構造的多様化を受け、少なくとも2つの異なる構造アイソフォーム(配座異性体)が基底膜に集まること(27);
6)77kDa GPBPの発現の増大が、IV型コラーゲンの四次構造を混乱させ、このことは、上昇したGPBPレベルがα3(IV)NC1ドメインの構造多様化プログラム(三次構造)を妨害することを示唆する(4);
7)GPBPの血清レベルの増加は、IV型コラーゲンに基づく糸球体腎炎と相関すること(図8);
8)FFATモチーフは77kDa GPBP分泌の構造的要件であり(図5)、VAPは、ERにおける適切なタンパク質折りたたみのためのホメオスタシス維持に重要であること(10);
9)ERに存在し、タンパク質の誤った折りたたみに対する細胞反応を調節するGrp78及びGrp94シャペロンは(18、19)、FLAG−α3(IV)及び77kD
a GPBPと結合すること(図4);
10)COL4A3BP発現の増加は、タンパク質の誤った折りたたみ及びERストレス介在性細胞死を誘発する化学療法剤に対する癌細胞の耐性に関与することが判明したこと(28);
11)細胞のスフィンゴミエリナーゼでの処理は、脱リン酸化を誘発せず、77kDa
GPBPの細胞内分布も変えないこと(図7);
12)タンパク質キナーゼDはGPBPをリン酸化するが、GPBPΔ26/CERTと同じ程度までではないこと(6);
13)ノックダウン及び救済実験により、GPBP及びGPBPΔ26/CERTがセブラフィッシュにおける胚発生の間に様々な生物学的機能を果たすことが明らかになること(29);並びに
14)GPBPは、分泌経路において内腔/細胞外側から膜に対して固定されるタンパク質RTN3及びRTN4と相互作用すること(30)は、GPBPが、サイトゾルにおける細胞小器官間セラミド輸送ではなく、ERにおけるタンパク質折りたたみ及び細胞外区画における超分子組織を調節することを裏付ける。
【0121】
26−残基Serリッチな領域が欠失したGPBPもVAPと結合する(21、22);しかし、セラミド吸収は、VAPとの結合の次に起こり、続いて、タンパク質はゴルジ装置へと向かい、ここでセラミドは放出され、タンパク質エクソサイトーシスが誘発される(6、14)。したがって、リン酸塩転移及びセラミド輸送は分子戦略であってよく、これによってCOL4A3BPはタンパク質分泌を調節する(すなわち、IV型コラーゲン)。これと一致して、VAPも細胞膜へのタンパク質カーゴ輸送の調節に重要であることが示された(11)。
【0122】
様々な証拠は、COL4A3BPが、抗体介在性障害(3、4)、炎症(15)、ERストレス介在性疾患(10)及び薬剤耐性癌(28)を診断及び治療する方法の魅力的な標的であることを裏付ける。しかし、これらの結論を裏付ける観察結果は、今では解釈し直す必要があるかもしれない。その理由は、多くが、異なる細胞区画で発現される異なる遺伝子産物(すなわち、GPBP及びGPBPΔ26/CERT)間の区別ができない手段(すなわち、siRNA又は抗体)を用いて得られ、刺激に反応して異なって調節されるからである(3)。したがって、本研究は、GPBPの様々なアイソフォームが細胞内で産生されるメカニズムを明らかにすることによって、これを理解するための重要な助けとなる。
【0123】
さらに、血液循環するヒト77kDa GPBPを同定することによって、本発明者らは、GPBP分泌もインビボで生物学的に関連するという有力な証拠を提供する。血液循環する77kDa GPBPのレベルが免疫複合体型糸球体腎炎のマウスモデルにおけるGPBP糸球体発現及び発症と相関するという発見は、GPBPの血清学的測定が臨床状況で関連することを示唆する。これと一致して、グッドパスチャー患者における循環するGPBPの上方調節を示す本研究は、これらの結論を裏付け、GPBPがこれらの患者において過剰発現されるという従来の観察結果を実証する(3、31)。
【0124】
これらおよび従来の発見は、GPBPがIV型コラーゲン分泌及び超分子組織を促進することを裏付ける。したがって、GPBPは、適切なGBM集合に重要であり、異常なGPBP蓄積は、GBM破壊を誘発し、IgA免疫複合体を堆積させる(4)。我々の知る限りでは、GPBP発現の増加、GBM解離及び免疫複合体の堆積は、腎疾患の根底にある新規メカニズムである。類似のメカニズムがヒト発症において機能するかどうかは明らかではないが、GBM破壊及び電子密度の高い物質の蓄積の超構造的証拠は、IgAネフロパシー及びループス腎炎にかかった患者において報告されている(32、33)。さらに、GPBP発現の増加は、IV型コラーゲンの四次構造の強化を低下させる可能性があ
り、これによってエピトープ暴露、免疫系の活性化及びグッドパスチャー疾患における自己抗体結合を促進する(34)。後の仮定と一致して、グッドパスチャー患者は循環するGPBPレベルの増加を示し、GPBP発現がグッドパスチャー組織において上方調節されるという従来の観察結果を裏付ける(3、31)。GPBPは、循環する分子であり、GBMは糸球体濾過障壁の主成分であり、したがって、糸球体における病原性GPBP蓄積は、局所産生から起こり得るが、ほかの場所で産生された循環するGPBPの隔離からも起こり得る。局所的過剰産生は一次抗体介在性糸球体腎炎の主な原因となり得るのに対して、循環するレベルの増加はこの病理の二次形態を誘発し得、おそらくは腎移植による疾患再発に関与する。したがって、循環するGPBPレベルの定量化は、一次抗体介在性糸球体腎炎と二次抗体介在性糸球体腎炎との識別において、及び腎移植の臨床的モニタリングに重要であり得る。
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脚注
(1)77kDaポリペプチドは、GPBPΔ26/CERTのリン酸化(高)及び脱リン酸化(低)型を表す二重項として分割することができる(5)。
【0125】
(2)77kDa GPBPの分泌は、分泌経路における天然の77kDa GPBPのレベルを推定するためのこの抗体の使用を除いて、mAb e26との反応性の損失と関連した(図11)。
【0126】
略語
使用する略語は次のとおりである:α3(IV)NC1:IV型コラーゲンのα3鎖のNC1ドメイン、ATR:選択的翻訳領域、CERT及びCERT:セラミド輸送タンパク質の短鎖及び大型アイソフォーム、COL4A3BP:GPBP(CERT)及びGPBPΔ26(CERT)をコードする遺伝子(コラーゲンIVα3−結合タンパク質
と命名されたもの)、EDTA:エチレンジアミン四酢酸、ER:小胞体、FFAT:酸性トラック中の2つのフェニルアラニン、GBM:糸球体基底膜;GPBP及びGPBPΔ26:グッドパスチャー抗原結合タンパク質の大型及び短鎖の選択的にスプライスされた変異体、HRP:ホースラディッシュペルオキシダーゼ、mAb:モノクローナル抗体、NC1:非コラーゲン様−1ドメイン、ORF:オープン・リーディング・フレーム、NZW:ニュージーランドホワイト、PBS:リン酸緩衝塩溶液、PH:プレクストリン相同、RT:室温、SDS−PAGE:ドデシル硫酸ナトリウム−ポリアクリルアミドゲル電気泳動、START:ステロイド産生急性調節関連脂質伝達、UTR:非翻訳領域;VAP:小胞関連膜タンパク質関連タンパク質。
【実施例2】
【0127】
ヒト血漿からのGPBPの同定および単離
ここでは、本発明者らはヒト血漿のタンパク質分別のための古典的な化学的方法を使用し、ヒト血漿中の循環する複数の三次及び四次GPBP構造を同定した。データは、77kDa GPBP及び低分子量の誘導種が、単離され部分的に精製されたGPBP四次構造から血漿を再構成することによって決定される主なGPBP循環アイソフォームであることも示す。
【0128】
物質及び方法
GPBPを、50mLの凍結対照血漿から、塩析、イオン交換クロマトグラフィ及びゲル濾過の組み合わせを用いて精製した。
【0129】
凍結によって沈殿したタンパク質を、まず8200×g、10分間4℃での血漿遠心分離によって除去した。血漿GPBPの精製についての特異性はわからないので、タンパク質をもとの試料から、(NH42SO4飽和度を増大させて(20%、40%、60%及
び80%)連続して沈殿させた。連続沈殿は、8200×gで10分間4℃にて遠心分離することによって実施し、沈殿を50mMのTris−HCl(pH7.5)5ml中に溶解させた。3.5kDaカットオフのメンブレンバッグを用いて50mMのTris−HCl(pH7.5)に対して透析することにより、タンパク質混合物を脱塩した。(NH42SO4沈殿の最終上清を同様に透析し、沈殿プロセスによって得られる最終画分と
して精製するためにさらに使用した。
【0130】
塩析によって得られる画分を、次いでHiTrap Q−セファロースアニオン交換カラムを用いたイオン交換クロマトグラフィ(IEC)によって分析した。カラムをまず緩衝液A(50mMのTris/HCl(pH7.5)、20mMのNaCl)で平衡化し、各試料をさらに添加し、10体積の緩衝液Aで洗浄した。結合タンパク質を緩衝液Aから緩衝液B(50mMのTris/HCl(pH7.5)、1MのNaCl)への勾配で溶出し、0.6mLの画分中に集めた。GPBP物質を含むIEC画分を、GPBP特異性ビオチニル化N27モノクローナル抗体を用いたウェスタンブロットによって検出した。GPBP含有IEC画分をプールし、0.5mlに濃縮し、続いてSuperdex(商標)200 10/300CLを用いたゲル濾過クロマトグラフィに付した。このプロセスでは、カラムをまずTBS(50mMのTris/HCl(pH7.5)、150mMのNaCl)で平衡化し、試料をカラム中に注入し、タンパク質をサイズによって分離した。ゲル濾過画分を、ビオチニル化N27モノクローナル抗体を用いたGPBP物質の検出のためにウェスタンブロットによって分析した。GPBP含有画分をプールし、80%アセトンで沈殿させ、50mMのTris−HCl(pH7.5)、8M尿素中に再懸濁させた。結果として得られた混合物(それぞれは連続(NH42SO4沈殿によって得
られる異なる初期画分に対応する)を、天然の血漿タンパク質組成を忠実に再構成するために等しい割合でプールした。最終プールの試料を、HRP標識N27モノクローナル抗体を用いたウェスタンブロットに付した。
【0131】
結果
結果として得られるウェスタンブロットにおいて、本発明者らは77kDa、70kDa、66kDa、58kDa、56kDa及び53kDaの主なGPBPアイソフォームを観察した。図12においてウェスタンブロットで有意な量で表されない追加のポリペプチドが存在し、これらは精製プロセス中に実施されたウェスタンブロットによって同定された。これらは、約368kDaの[20%(NH42SO4]のポリペプチド、40k
Da、110kDa、120kDa及び311kDaの[40%(NH42SO4]、並
びに91kDa、146kDa、171kDa及び300kDaのポリペプチド[60%(NH42SO4]を含んでいた(データは非図示)。最後に、各GPBP四次構造を表
す、ゲル濾過分析における各クロマトグラフィピークのサイズも評価した。特に、本発明者らは、1400kDa及び920kDa(20%(NH42SO4沈殿中)、310k
Da及び145kDa(40%(NH42SO4沈殿中)、920kDa、420kDa
、270kDa、及び125kDa(60%(NH42SO4沈殿中);66kDa(8
0%(NH42SO4沈殿中);並びに91kDa(80%(NH42SO4飽和で可溶性形態)のGPBP凝集体を見いだした。
【0132】
結論
1.多くの異なる四次構造に集合した複数の循環GPBPアイソフォームが存在する。
2.主な循環GPBPアイソフォームは、すでに認識されている77kDa及び低Mの誘導ポリペプチドを含む。
【実施例3】
【0133】
ヒト尿からのGPBP単離及び定量化
ここでは、本発明者らは、GPBPが、簡単な免疫学に基づく方法(すなわち、ELISA)によって測定でき、かつ化学的方法および免疫化学的方法によって単離できる、尿の通常の成分であることを示す。証拠は、91kDaのポリペプチド及び誘導ポリペプチドが主な尿GPBP産物であることを示す。
【0134】
イムノアフィニティークロマトグラフィによる尿GPBPの単離
GPBPを、GPBP特異性ウサギポリクローナル抗体をロードしたセファロース4Bを用いて対照ドナーの尿より抽出した。カラム結合物質を溶出させ、GPBP特異性ニワトリポリクローナル抗体を用いたウェスタンブロットによって分析した(図13)。広範囲のMWを示す多くのポリペプチドが、イムノアフィニティー精製された試料においてGPBP特異性抗体で検出された。91kDaのポリペプチドは、低MWの他の誘導ポリペプチド(46kDa及び50kDa)[Juan Saus,Fernando Revert and Francisco Revert−Ros “Novel Goodpasture antigen−binding protein isoforms
and protein misfolded−mediated disorders”PCT/EP04/01074 y WO2004/070025]とともにヒト尿中で最も豊富なGPBP物質であることが判明した。
【0135】
特に、250ミリリットルの対照ドナー由来の尿(遠心分離によってあらかじめ精製し、Trisで中和)を、200μgのウサギポリクローナル抗GPBP抗体を結合させた1mLのセファロース4Bのカラムにかけた。カラムを30mLのTBSで洗浄し、結合物質をGentle Immunopure Elution Buffer(Pierce)で溶出した。溶出された物質をTBSに対して透析し、GPBP特異性ニワトリポリクローナル抗体(αGPBPch)及びHRP標識抗ニワトリIgY(二次抗体)を用いたウェスタンブロットによってさらに分析した(図13)。抗体特異性は、二次抗体を含む同じ物質を加えた対照レーン(Cont)を染色することによって確認した。線分と
数字又は矢印と数字は、それぞれMW標準(左)又はGPBPポリペプチド(右)の位置及びサイズ(kDa)を示す。
【0136】
ELISAによる尿GPBPの測定
尿中のタンパク質濃度は低い(通常80ug/mL未満)ので、7人のドナーから得られた試料を用いて間接ELISAを試みた。このために、プレートを尿試料でコーティングし、GPBP特異性ニワトリポリクローナル抗体およびHRP標識抗ニワトリIgY(二次抗体)を用いて免疫検出を実施した。ヒト尿中で希釈されたヒト組換えGPBPを用いて標準曲線を同様に得た。GPBPは全てのドナーにおいて検出され、それぞれの場合でバックグラウンド(非特異的IgYを用いて測定したF.I.)を差し引くことによって各濃度を決定した(図14)。全てのドナーは検出可能なレベルのGPBPを示し、ドナー3は尿中で異常に上昇したGPBP濃度を示した。
【0137】
特に、尿中で希釈された組換えGPBP及び7人のドナーから得られた尿試料(1−7)をELISAプレート上に一夜4℃でコーティングした。プレートをPBS中3%BSAでブロックし、GPBP特異性ニワトリポリクローナル抗体(αGPBPch)及びHRP標識抗ニワトリIgY(二次抗体)を用いて免疫検出を実施した。Amplex UltraRed試薬(Invitrogen)をプレート発色のために使用した(図14)。Aにおいて、示されたGPBP濃度対蛍光強度(F.I.)(任意単位(A.U.)で表示)のlog−logスケールでの散布図を示す。Bにおいて、示された濃度及びそれらの各F.I.値を均等目盛でプロットしたものを用いて計算した線形回帰線を表し、これを用いてDにおいてGPBP試料濃度を決定した。Cにおいて、二次抗体(Cont)、非特異的ニワトリIgY及び二次抗体(IgY)、又はαGPBPch及び二次抗体(αGPBPch)を用いてドナー試料を分析して得られた生データを示す。Dにおいて、表は、Bにおいて得られた曲線を用いた対応する変換データを示す。
【0138】
本発明者らは、血清/血漿試料について使用したサンドイッチELISA法を用いてTBS希釈尿に関してGPBPを測定した場合に、同様の濃度値を得た(データは非図示)。
【0139】
塩析及びイオン交換クロマトグラフィによる尿GPBP単離
イムノアフィニティー及びELISA法を検証し、どのGPBP種がドナー3において増大したかを確認するために、本発明者らは、古典的な化学的精製法を用いて、この尿からのGPBP精製を試みた。これらには、塩析及びダブルイオン交換クロマトグラフィ[カルボキシメチルセルロース(CM)及びジエチルアミノエチルセルロース(DEAE)]、並びに各精製ステップを代表する異なる物質のウェスタンブロット分析(図15)が含まれていた。GPBP特異性ニワトリポリクローナル抗体を用いたウェスタンブロット分析によって、GPBP物質のほとんどが塩によって沈殿し、CM又はDEAEのいずれとも結合しないことが明らかになった。91kDaの主なGPBPペプチドが、有意な量の77kDa GPBPポリペプチドとごく微量の60kDa及び50kDaのGPBP関連ポリペプチドとともに検出された。
【0140】
イムノアフィニティー及びELISA法を検証し、どのGPBP種がドナー3において増加したかを確認するために、本発明者らは、古典的な化学的精製法を用いてこの尿からのGPBP精製を試みた。400ミリリットルの遠心分離によって精製した尿を0.85MのNaClに一夜4℃で添加し、10.000×gで30分間4℃にて遠心分離した。上清の試料(Spt 0.85M NaCl)を、後の分析で採用するために4℃で保存した。結果として得られるペレットを50mMのTris(pH7.5)中に溶解させ、同緩衝液に対して透析し、0.7mLのCM樹脂で抽出し、非結合物質を0.5mLのDEAE樹脂でさらに抽出した。CM樹脂を1MのNaCl、50mMのTris(pH7
.5)(CM、1MのNaCl)で溶出させ、DEAE樹脂を続いて0.35MのNaCl、50mMのTris(pH7.5)(DEAE、0.35M NaCl)及び1MのNaCl、50mMのTris(pH7.5)(DEAE、1M NaCl)で溶出させた。DEAE抽出の上清を含む等量の各試料(Spt CM/DEAE)を、GPBP特異性ニワトリポリクローナル抗体及びHRP標識抗ニワトリIgY(αGPBPch)を用いたウェスタンブロットによって分析した。非特異的反応性ポリペプチドは、HRP標識抗ニワトリIgYのみを用いた平行分析(Cont)を染色することによって同定された。線分と数字又は矢印と数字は、それぞれ、MW標準(左)又は抗GPBP抗体と特異的に反応し、SptCM/DEAEでのみ検出されるポリペプチド(右)の位置及びサイズ(kDa)を示す(図15)。GPBP特異性ニワトリポリクローナル抗体を用いたウェスタンブロット分析によって、GPBP物質のほとんどが塩によって沈殿し、CMまたはDEAEのいずれとも結合しないことが明らかになった。91kDaの主なGPBPポリペプチドが、有意な量の77kDaGPBPポリペプチド及びごく微量の60kDa及び50kDaのGPBP関連ポリペプチドとともに検出された。
【0141】
結論
1)GPBPポリペプチドは、尿から、アフィニティークロマトグラフィによるか、又は塩析とそれに続くイオン交換クロマトグラフィによるかのいずれかで単離することができる。
【0142】
2)尿中のGPBPレベルは、間接的ELISA又はサンドイッチELISAのいずれかによって特異的抗GPBP抗体を用いて評価することができる。
3)尿中で見いだされる主なGPBPポリペプチドは91kDaである。
【実施例4】
【0143】
GPBPを標的とするモノクローナル抗体の産生及び特徴付け
すでに報告されたGPBP中のmAbl4及びmAb e26エピトープを分泌の間に翻訳後修飾に付す(Revert et al.2008 J Biol.Chem.283:30246−55)。したがって、これらのモノクローナル抗体は、ヒト血漿中に存在する循環するGPBPアイソフォームと顕著に反応しなかった。このことにより、単離及びヒト血漿におけるGPBP循環レベルの推定のために、ポリクローナル抗体に基づく免疫学的方法の使用が推奨された(実施例1を参照)。ここで、本発明者らは、ポリクローナル抗体に基づく方法よりも信頼性の高い、血漿中のGPBPの免疫学的検出のための新規GPBP特異性モノクローナル抗体の産生及び特徴付けを報告する。
【0144】
GPBPに対する新規モノクローナル抗を産生するハイブリドーマの増殖及び冷凍保存
間接ELISA及び酵母において作製された組換えGPBPを使用して、本発明者らは、28の独立したハイブリドーマクローン(N1−N28)を得、単離し、これらは抗GPBPモノクローナル抗体を産生した。クローンを、20%ウシ胎仔血清(FBS)を添加したダルベッコの修飾イーグル培地(DMEM)中で増殖させ、FBS中10%DMSO中で凍結させ、液体窒素中で保存した。保存前に、各クローンから10mLの培地を集め、4℃で0.01%アジ化ナトリウムとともに保存し、さらなる抗体特徴付けのために使用した(下記参照)。
【0145】
HEK293細胞において発現された組換え及び天然のGPBPアイソフォームを用いた新規モノクローナル抗体のウェスタンブロット特徴付け
28のハイブリドーマのそれぞれ由来の抗体は、大腸菌(E.coli)において産生された組換えGPBP(25ng)と反応した(データは非図示)。N20及びN21を除いて、残りの抗体の全ては細胞内組換えGPBPとも反応した(図16)。11のモノクローナル抗体(N4、N5、N7、N11、N12、N13、N14、N22、N25
、N27及びN28)は同様に細胞内及び細胞外組換えGPBPのどちらも認識した。7の抗体(N1、N6、N17、N18、N19、N24及びN26)は細胞内GPBPを標的とし、細胞外GPBPは標的としなかったが、残りの抗体(N2、N3、N8、N9、N10、N15、N16及びN23)は細胞外組換えGPBPとの比較的低い反応性を示した(図16)。
【0146】
HEK293細胞からのタンパク質抽出物を使用して、本発明者等は、18のモノクローナル抗体[N2、N3、N4、N5、N7、N8、N9、N10、N11、N12、N13、N14、N15、N16、N22、N25、N27(図示)及びN28(非図示)]が天然の細胞内77kDaGPBPアイソフォームを認識することを確認した。18の抗体のうちの11[N4、N5、N10、N11、N12、N13、N14、N16、N25、N27(図示)及びN28(非図示)]も、細胞において存在することがすでに報告されている45kDaのGPBPアイソフォームを標的とした[Juan Saus、Fernando Revert and Francisco Revert−Ros“Novel Goodpasture antigen−binding protein isoforms and protein misfolded−mediated disorders”WO2004/070025]。抗体N4、N7、N11、N14及びN27は約88kDaのさらなるGPBP関連ポリペプチドも認識し、これらは77kDaの標準的ポリペプチドのリン酸化型であり得る(Raya et al 1999 J.Biol Chem.274、12642−12649)。N26抗体は91kDaポリペプチドを認識し、これは、mAb e26の標的である最近特徴付けされた91kDa GPBPアイソフォーム(Revert et al.2008 J.Biol.Chem.283:30246−55)とともに移動した(図17)。GPBPアイソフォーム(天然又は組換え)を検出するための新規モノクローナル抗体の相対的有効性を推定し、表2にまとめる。
【0147】
N1−N28モノクローナル抗体に関するエピトープマッピング
このために、本発明者等は、GPBPの各C末端欠失変異体である13の異なるcDNA構築物を産生した(図18A)。各構築物をHEK293細胞トランスフェクションのために使用し、対応する細胞抽出物をウェスタンブロットによって分析して、各抗体結合を評価した。28の新規モノクローナル抗体のうち17が欠失変異体8を認識したが、変異体7は認識しなかった(表1);抗体の残りは、N末端を標的とするか、又はウェスタンブロット分析において反応性がないのでエピトープは確認されないかのいずれかであった。抗体の大部分は欠失変異体8と反応し、欠失変異体7と反応しなかったので、本発明者等は、欠失変異体7及び8のC末端間に含まれる配列である合成ペプチドを用いて各エピトープマッピングをさらに試みた。驚くべきことに、本発明者等はこれらの40残基に対する抗体の反応性を確認できず、これらのペプチドはGPBP抗体結合と競合し得なかった。データは、適切なエピトープ集合のためにGPBPN末端領域を必要とする高免疫原性である領域が存在していたことを示唆した。このことを、FLAG−GPBP内部欠失変異体(Δ1−Δ4)を産生することによって調査し、この場合、示された各20残基配列のみを除去した(図18B)。欠失変異体Δ1−Δ4は、2回の連続したPCR及び対応する欠失を導入するための特異的プライマーを用いた標準的手順によって得られた(図18B)。興味深いことに、全ての抗体はΔ2及びΔ3内部欠失FLAG−GPBP変異体と反応しなかったが、Δ1及びΔ4変異体と反応した(図18C)。データは、GPBPの残基305−344によって表される配列(GGPDYEEGPNSLINEEEFFDAVEAALDRQDKIEEQSQSEK、配列番号10)が高免疫原エピトープクラスターと一致することを示す。一貫して、すでに特徴付けされたmAb14は、FATTモチーフでこの領域と反応することが判明した(Revert et al.2008 J.Biol.Chem.283:30246−55)。
【0148】
モノクローナル抗体の分類
これは、エピトープマッピング及びウェスタンブロット分析における天然又は組換え細胞内若しくは細胞外GPBPアイソフォームのいずれかとの反応性を考慮して実施した(表1)。
【0149】
【表1】
【0150】
組換えGPBPを発現するHeLa細胞の間接免疫蛍光法分析によるN1−N28モノクローナル抗体の特徴付け
HeLa細胞をpcDNA3−FLAG−GPBPでトランスフェクトし、さらに24時間培養し、メタノール/アセトン(50%−50%)で固定した。固定後、細胞をPBS中3%BSA(ブロッキング溶液)でブロックし、ブロッキング溶液中で1:2に希釈された表示抗体(培地)とともにインキュベートした。続いて、細胞をPBSで洗浄し、FITC−標識抗マウスIgGとともにインキュベートし、再度洗浄し、倒立蛍光顕微鏡を用いてマウントし、観察した。40×対物レンズを用い、同じ露光時間及びゲインを使用して画像を取得した。N6を除く全ての抗体は、異なる反応性を有する、HeLa細胞において発現されたFLAG−GPBPを認識し、この目的に関して最も反応性の高い抗体は、N13、N14、N15、N16、N21、N22及びN26であった(相対的検出有効性については表2を参照)。反応性抗体のうち、N28を除く全ては、GPBPに特徴的な網状分散パターン(小胞体でのGPBPの局在化の結果)を示した(Revert et al.2008 J.Biol.Chem.283:30246−55)。
【0151】
HeLa細胞の間接免疫蛍光法分析によるN1−N28モノクローナル抗体の特徴付け
HeLa細胞をクリスタルスライド上に播種し、培養し、前述のように処理し、40×
対物レンズ及び1.63の画像増幅を用いて倒立蛍光顕微鏡で分析した。N26を除いて、全ての抗体は、合成画像の左に示される抗体N27によって産生されたものと同様の小胞体分布を示した。一部の細胞はゴルジ装置に典型的な核周囲及び限局性強化も示した(白色矢印)。N26によって明らかになったパターンは、核及び核周囲断続クラスター(peri−nuclear punctuate cluster)を有するすでに記載された網状分布と、細胞膜の線形修飾を混ぜ合わせたものである。N26を除いて、全ての抗体は、組換えGPBPポリペプチドについて記載された小胞体分布のみを明らかにした。抗体N26は、網状パターンを産生することとは別に、細胞膜を装飾し、断続的核周囲及び核蓄積を証明した。HeLa細胞において内因性GPBP物質を検出するための最良の抗体は、N5、N12、N16、N21、N26及びN27であった(表2を参照)。
【0152】
パラフィン包埋ヒト腎臓組織の免疫組織化学的分析によるN1−N28モノクローナル抗体の特徴付け
各モノクローナル抗体を、パラフィン包埋ヒト腎臓試料の標準的免疫組織化学的分析に使用した。全ての反応性抗体は、主に尿細管及び集合管を染色し、メサンギウム細胞、有足細胞、メサンギウムマトリックス及び毛細血管壁で糸球体内も著しく染色した。後の場合では、内皮表面では直線的パターンであり、毛細血管壁内では粒様分布であった。毛細血管壁において、免疫染色は頻度が低く、N5、N6、N7、N8、N10及びN26がこれらのために最良の抗体であった。免疫組織化学的技術を用いてより良好なGPBP検出をもたらす抗体は、N5、N6、N7、N8、N9、N10、N12、N26及びN27であった(表2を参照)。
【0153】
N1−N28モノクローナル抗体がサンドイッチELISA分析においてGPBPを捕捉する能力の評価
サンドイッチELISA分析用の各抗体を選択するために、あらかじめ抗マウス抗体でコーティングしたELISAプレートを使用して、培地からのモノクローナル抗体と、評価される組換え及び天然GPBPを捕捉するそれらの能力とを結びつけた。抗マウスコーティングされたELISAプレートに、示された抗体のハイブリドーマからの培地又は抗GAPDHハイブリドーマからの培地(cont)を添加した。続いて、プレートをPBS中3%BSAでブロックし、示された濃度のFBS中で希釈した組換えGPBPとともに、又はFBS(ブランク)とともにインキュベートした。結合GPBPは、ニワトリポリクローナル抗GPBP及びHRP標識抗ニワトリIgYで検出された。蛍光試薬(Amplex)を用いて発色させた。
【0154】
a)ヒト組換えGPBPの捕捉分析。全ての抗体は効率よくFLAG−GPBPを捕捉し、N5、N6、N8、N10、N11、N12、N15、N16、N20、N23、N26、N27およびN28が、10ng/mlのFLAG−GPBPを含むFBSからFLAG−GPBPを捕捉する最良の効率を示した(表2)
b)ヒト循環GPBP(血漿)の捕捉分析。抗マウスコーティングされたELISAプレートをロードし、前述のようにブロックし、FBS中で1:10に希釈されたグッドパスチャー患者ヒト血漿(登録番号M049)又はFBS単独(ブランク)とともにさらにインキュベートした。28の抗体のうちの9(N3、N5、N9、N10、N11、N12、N13、N26及びN27)が効率的にヒト血漿からのGPBPを捕捉した(表2)。
【0155】
結論
本発明者らは、ELISA、免疫蛍光法及び免疫組織化学的方法による天然のGPBP検出のための新規モノクローナル抗体を提供する。
【0156】
【表2】
図19
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]