特許第5655012号(P5655012)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5655012-酸化亜鉛緑色発光材料及びその製造方法 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655012
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】酸化亜鉛緑色発光材料及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C09K 11/54 20060101AFI20141218BHJP
   C09K 11/08 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   C09K11/54CPB
   C09K11/08 B
【請求項の数】2
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-552298(P2011-552298)
(86)(22)【出願日】2009年3月6日
(65)【公表番号】特表2012-519739(P2012-519739A)
(43)【公表日】2012年8月30日
(86)【国際出願番号】CN2009070670
(87)【国際公開番号】WO2010099667
(87)【国際公開日】20100910
【審査請求日】2012年3月1日
(73)【特許権者】
【識別番号】511215230
【氏名又は名称】オーシャンズ キング ライティング サイエンスアンドテクノロジー カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100121728
【弁理士】
【氏名又は名称】井関 勝守
(74)【代理人】
【識別番号】100129997
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 米藏
(72)【発明者】
【氏名】チョウ ミンジェ
(72)【発明者】
【氏名】マ ウェンボ
(72)【発明者】
【氏名】シー チャオプ
【審査官】 井上 恵理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−265437(JP,A)
【文献】 特開平08−236275(JP,A)
【文献】 Chemical Physics,1999年,241,339-349
【文献】 Journal of Luminescence,2008年,128,685-689
【文献】 Optical Materials,2003年,23,27-32
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09K 11/00−11/89
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸化亜鉛緑色発光材料であって、
ZnO基質原料に3価希土類イオン化合物及びリチウムイオン化合物をドープすることによって製造された酸化亜鉛緑色発光材料であり、前記酸化亜鉛緑色発光材料は350nm光励起又は低圧陰極線励起において緑色光を発光し、
前記3価希土類イオン化合物は、Eu3+化合物であり、
前記3価希土類イオン化合物及びリチウムイオン化合物のモル数は、一般式ZnO:xA,yLi(ここで、0<x≦0.0、0<y≦0.0、Aは3価希土類イオンである。)の化学量論比に応じて計算され
前記Eu3+化合物は、Eu3+の炭酸塩又は硝酸塩である、
ことを特徴とする酸化亜鉛緑色発光材料。
【請求項2】
(1)一般式ZnO:xA,yLi(ここで、0<x≦0.0、0<y≦0.0、Aは3価希土類イオンである。)の化学量論比に応じて酸化亜鉛と、Eu3+化合物である3価希土類イオン化合物と、リチウムイオン化合物とを秤量し、前記Eu3+化合物はEu3+の炭酸塩又は硝酸塩である工程と、
(2)秤量された原料を乳鉢に入れ、均一に粉末にした後、空気雰囲気において前記均一に粉末にされた原料を900℃〜1100℃にて4時間〜6時間焼成し、その後、得られた産物を室温まで冷却し、3価希土類イオン及びリチウムイオンがドープされた、350nm光励起又は低圧陰極線励起において緑色光を発光するZnO緑色発光材料を得る工程と、
を含む、
ことを特徴とする酸化亜鉛緑色発光材料の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
本発明は、発光材料及びその製造方法に関して、特に酸化亜鉛緑色発光材料及びその製造方法に関する。
【背景技術】
酸化亜鉛は、優れたディレクトワイドバンドギャップ半導体発光材料(Eg=3.37eV)であり、優れた物理化学的性質を有し、且つ紫光ダイオード及びレーザーダイオードへの応用が非常に注目されている。同時に、ZnOは、真空蛍光管及びエレクトロルミネセント素子に用いられる効率的な緑色蛍光粉末でもある。従来の硫化物蛍光粉末と比べると、ZnOは耐紫外線、高コンダクタンス等の利点を有する。
ZnO緑色蛍光粉末の研究において、ジンク(亜鉛)リッチな酸化亜鉛緑色蛍光粉末(ZnO:Zn)にかかる報告は非常に多い。しかし、ZnO:Zn緑色蛍光粉末は、一般的に、還元雰囲気中で高温焼成することによって合成されることが必要であって且つ厳しいプロセス条件が求められる。その他、硫黄がドープされたZnO蛍光粉末の製造及び発光性能に関する検討も報告されている。例えば、shenらは、簡単な溶液転換法によって硫黄がドープされたZnO材料を合成し、且つ緑色発光を観測した。しかし、硫黄がドープされたZnOは、380nmにおける励起子発光が強くなる一方、510nmにおける緑色発光が弱くなるため、ZnO緑色蛍光粉末により発光された緑光の輝度に対する要求に対しては不利になっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、かかる従来技術に存在している、硫黄がドープされたZnO緑色蛍光粉末は緑色発光の輝度が低いという問題について、安定性が良く、光度が高く、且つ低圧陰極線発光效率が高い酸化亜鉛緑色発光材料及びその製造方法を提供することである。本発明がさらに解決しようとする課題は、かかる従来技術に存在している、ジンクリッチなZnO緑色蛍光粉末のプロセス条件は厳しく求められるという問題について、プロセス条件が簡単であって且つ操作し易く、広く適用される酸化亜鉛緑色発光材料の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
本発明の課題を解決するための技術的手段は、
酸化亜鉛緑色発光材料であって、ZnO基質原料に3価希土類イオン化合物及びリチウムイオン化合物をドープすることによって製造された酸化亜鉛緑色発光材料である。
ここで、前記3価希土類イオン化合物及びリチウムイオン化合物がドープされるモル数は、一般式ZnO:xA,yLi+(ここで、0<x≦0.05、0<y≦0.05、Aは3価希土類イオンである。)の化学量論比に応じて計算され、言い換えれば、即ち原料においてZnO:xA:Li+のモル比は、1:x:y(ここで、0<x≦0.05、0<y≦0.05。)である。
好ましくは、前記モル数x、yの範囲は、0<x≦0.03、0<y≦0.03である。
好ましくは、前記3価希土類イオン化合物はTm3+化合物又はEu3+化合物である。
また、前記Tm3+化合物は、Tm3+の酸化物、炭酸塩、硝酸塩又はハロゲン化物であり、前記Eu3+化合物は、Eu3+の酸化物、炭酸塩、硝酸塩又はハロゲン化物である
酸化亜鉛緑色発光材料の製造方法であって、
(1)一般式ZnO:xA,yLi+(ここで、0<x≦0.05、0<y≦0.05、Aは3価希土類イオンである。)の化学量論比に応じて原料を秤量する工程と、
(2)秤量された原料を均一に粉末にした後、800℃〜1200℃にて2時間〜8時間焼成し、その後、室温まで冷却し、3価希土類イオン及びリチウムイオンがドープされたZnO緑色発光材料を得る工程と、
を含む酸化亜鉛緑色発光材料の製造方法である。
酸化亜鉛緑色発光材料の製造方法であって、好ましくは、
(1)一般式ZnO:xA,yLi+(ここで、0<x≦0.03、0<y≦0.03、Aは3価希土類イオンである。)の化学量論比に応じて原料を秤量する工程と、
(2)秤量された原料を乳鉢に入れ、均一に粉末にした後、空气雰囲気において均一に粉末にされた原料を900℃〜1100℃にて4時間〜6時間焼成し、その後、得られた産物を室温まで冷却し、3価希土類イオン及びリチウムイオンがドープされたZnO緑色発光材料を得る工程と、
を含む酸化亜鉛緑色発光材料の製造方法である。
ここで、好ましくは、前記3価希土類イオン化合物はTm3+化合物又はEu3+化合物である。
好ましくは、前記Tm3+化合物は、Tm3+の酸化物、炭酸塩、硝酸塩又はハロゲン化物であり、前記Eu3+化合物は、Eu3+の酸化物、炭酸塩、硝酸塩又はハロゲン化物である
【発明の効果】
本発明にかかる3価希土類イオン及びリチウムイオンがドープされたZnO緑色発光材料は、安定性が良く且つ光度が高いという特徴を有する。また、ドープされないZnO発光材料と比べると、光度が約4.5倍に向上し、且つ低圧陰極線発光效率も高くなる。
本発明にかかる製造方法は、プロセス条件が簡単であって且つ操作し易く、広く適用される。
【図面の簡単な説明】
図1図1は、実施例2で製造されたイオンがドープされたZnO緑色発光材料と、イオンがドープされないZnO発光材料とが対比されたフォトルミネッセンススペクトルである。
図2図2は、実施例2で製造されたイオンがドープされたZnO緑色発光材料と、イオンがドープされないZnO発光材料とが対比された陰極線発光スペクトルである。
図3図3は、実施例6で製造されたイオンがドープされたZnO緑色発光材料と、イオンがドープされないZnO発光材料とが対比されたフォトルミネッセンススペクトルである。
なお、フォトルミネッセンススペクトルは、島津RF―5301PC蛍光分光光度計で検出され、その励起波長が350nmである。
また、陰極線発光スペクトルの測定条件は、励起電圧が7.5kV、ビーム電流が8μAである。
【発明を実施するための形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
実施例1:高温固相法によるZnO:0.005Tm3+,0.005Li+(x=0.005、y=0.005)の製造
室温にて、1mmolのZnO、0.005mmolのTm及び0.005mmolのLiCOを秤量してめのう乳鉢に入れ、均一に混合されるまで十分に粉末にした。その後、粉末を鋼玉るつぼに移し、高温箱式炉に載置して900℃にて4時間焼成し、得られた産物を室温まで冷却した後、乳鉢に入れて粉末にし、緑色発光蛍光粉末ZnO:Tm3+Li+を得た。その緑色発光蛍光粉末は、350nm光励起又は低圧陰極線励起において緑色光を発光した。
実施例2:高温固相法によるZnO:0.01Tm3+,0.01Li+(x=0.01、y=0.01)の製造
室温にて、1mmolのZnO、0.01mmolのTm及び0.01mmolのLiCOを秤量してめのう乳鉢に入れ、均一に混合されるまで十分に粉末にした。その後、粉末を鋼玉るつぼに移し、高温箱式炉に載置して1200℃にて2時間焼成し、得られた産物を室温まで冷却した後、乳鉢に入れて粉末にし、緑色発光蛍光粉末ZnO:Tm3+,Li+を得た。その緑色発光蛍光粉末は、350nm光励起又は低圧陰極線励起において緑色光を発光した。
図1は、Tm3+及びLiイオンがドープされたZnO緑色発光材料と、イオンがドープされないZnO発光材料とが対比されたフォトルミネッセンススペクトルである。図1から、Tm3+及びLiイオンがドープされた後、350nm光励起において、ZnOの緑光光度はドープされる前の約4.3倍に向上することが分かる。図2は、Tm3+及びLiイオンがドープされたZnO緑色発光材料と、イオンがドープされないZnO発光材料とが対比された陰極線発光スペクトルである。図2から、7.5Kv加速電圧励起において、ZnOの緑光光度は、ドープされる前の約5倍に向上することが分かる。
実施例3:高温固相法によるZnO:0.05Tm3+,0.05Li+(x=0.05、y=0.05)の製造
室温にて、1mmolのZnO、0.05mmolのTm及び0.05mmolのLiCOを秤量してめのう乳鉢に入れ、均一に混合されるまで十分に粉末にした。その後、粉末を鋼玉るつぼに移し、高温箱式炉に載置して800℃にて8時間焼成し、得られた産物を室温まで冷却した後、乳鉢に入れて粉末にし、緑色発光蛍光粉末ZnO:Tm3+,Li+を得た。その緑色発光蛍光粉末は、350nm光励起又は低圧陰極線励起において緑色光を発光した。
実施例4:高温固相法によるZnO:0.01Tm3+,0.01Li+(x=0.01、y=0.01)の製造
室温にて、1mmolのZnO、0.01mmolのTm及び0.01mmolのLiFを秤量してめのう乳鉢に入れ、均一に混合されるまで十分に粉末にした。その後、粉末を鋼玉るつぼに移し、高温箱式炉に載置して1100℃にて6時間焼成し、得られた産物を室温まで冷却した後、乳鉢に入れて粉末にし、緑色発光蛍光粉末ZnO:Tm3+Li+を得た。その緑色発光蛍光粉末は、350nm光励起又は低圧陰極線励起において緑色光を発光した。
実施例5:高温固相法によるZnO:0.005Eu3+,0.005Li+(x=0.005、y=0.005)の製造
室温にて、1mmolのZnO、0.005mmolのEu及び0.005mmolのLiCOを秤量してめのう乳鉢に入れ、均一に混合されるまで十分に粉末にした。その後、粉末を鋼玉るつぼに移し、高温箱式炉に載置して1000℃にて5時間焼成し、得られた産物を室温まで冷却した後、乳鉢に入れて粉末にし、緑色発光蛍光粉末ZnO:Eu3+Li+を得た。その緑色発光蛍光粉末は、350nm光励起又は低圧陰極線励起において緑色光を発光した。
実施例6:高温固相法によるZnO:0.01Eu3+,0.01Li+(x=0.01、y=0.01)の製造
室温にて、1mmolのZnO、0.01mmolのEu及び0.01mmolのLiCOを秤量してめのう乳鉢に入れ、均一に混合されるまで十分に粉末にした。それ以外の工程は実施例1と同様にして緑色発光蛍光粉末ZnO:Eu3+Li+を得た。その緑色発光蛍光粉末は、350nm光励起又は低圧陰極線励起において緑色光を発光した。図3は、Eu3+及びLiイオンがドープされたZnO緑色発光材料と、イオンがドープされないZnO発光材料とが対比されたフォトルミネッセンススペクトルである。図3から、Eu3+及びLiがドープされた後、350nm光励起において、ZnOの緑光光度は、ドープされる前の約1.3倍に向上することが分かる。
実施例7:高温固相法によるZnO:0.0001Eu3+,0.03Li+(x=0.0001、y=0.03)の製造
室温にて、1mmolのZnO、0.0001mmolのEu及び0.03mmolのLiCOを秤量してめのう乳鉢に入れ、均一に混合されるまで十分に粉末にした。それ以外の工程は実施例1と同様にして緑色発光蛍光粉末ZnO:Eu3+Li+を得た。その緑色発光蛍光粉末は、350nm光励起又は低圧陰極線励起において緑色光を発光した。
実施例8:高温固相法によるZnO:0.03Tm3+,0.0001Li+(x=0.03、y=0.0001)の製造
室温にて、1mmolのZnO、0.03mmolのTm(NO及び0.0001mmolのLiFを秤量してめのう乳鉢に入れ、均一に混合されるまで十分に粉末にした。それ以外の工程は実施例1と同様にして緑色発光蛍光粉末ZnO:Tm3+Li+を得た。その緑色発光蛍光粉末は、350nm光励起又は低圧陰極線励起において緑色光を発光した。
実施例9:高温固相法によるZnO:0.04Tm3+,0.02Li+(x=0.04、y=0.02)の製造
室温にて、1mmolのZnO、0.04mmolのTmCl及び0.02mmolのLiFを秤量してめのう乳鉢に入れ、均一に混合されるまで十分に粉末にした。それ以外の工程は実施例1と同様にして緑色発光蛍光粉末ZnO:Tm3+Li+を得た。その緑色発光蛍光粉末は、350nm光励起又は低圧陰極線励起において緑色光を発光した。
実施例10:高温固相法によるZnO:0.015Eu3+,0.025Li+(x=0.015、y=0.025)の製造
室温にて、1mmolのZnO、0.015mmolのEu(NO及び0.025mmolのLiClを秤量してめのう乳鉢に入れ、均一に混合されるまで十分に粉末にした。それ以外の工程は実施例1と同様にして緑色発光蛍光粉末ZnO:Eu3+Li+を得た。その緑色発光蛍光粉末は、350nm光励起又は低圧陰極線励起において緑色光を発光した。
図1
図2
図3