特許第5655019号(P5655019)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655019
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】光通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04L 12/44 20060101AFI20141218BHJP
   H04B 10/077 20130101ALI20141218BHJP
   H04J 14/00 20060101ALI20141218BHJP
   H04J 14/02 20060101ALI20141218BHJP
   H04B 10/272 20130101ALI20141218BHJP
【FI】
   H04L12/44 200
   H04L12/44 M
   H04B9/00 177
   H04B9/00 E
   H04B9/00 272
【請求項の数】1
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-36480(P2012-36480)
(22)【出願日】2012年2月22日
(65)【公開番号】特開2013-172404(P2013-172404A)
(43)【公開日】2013年9月2日
【審査請求日】2013年12月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000237662
【氏名又は名称】富士通テレコムネットワークス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100072718
【弁理士】
【氏名又は名称】古谷 史旺
(74)【代理人】
【識別番号】100116001
【弁理士】
【氏名又は名称】森 俊秀
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 亮
【審査官】 鈴木 崇雅
(56)【参考文献】
【文献】 特開2004−023434(JP,A)
【文献】 特開2009−147577(JP,A)
【文献】 特開2003−218814(JP,A)
【文献】 特開2001−238241(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04L 12/00−955
H04B 10/077
H04B 10/272
H04J 14/00
H04J 14/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のONUと、前記複数のONUに光カプラを介して接続されるOLTとで構成され、前記複数のONUから前記OLTへの同一波長帯域の上り信号を時分割多重して通信するPONシステムにおいて、
前記ONUは、
前記OLTから第1波長または第4波長の下り信号を受信する加入者側通信用光受信部と、
前記OLTに第2波長の上り信号を送信する加入者側通信用光送信部と、
前記OLTに第3波長の上り信号を送信する加入者側制御用光送信部と、
前記OLTとの通信を制御する加入者側制御部と、
自装置の電源断を検出する電源断検出部と
前記加入者側制御用光送信部をオンオフして1bitのパルス信号を送信するパルス変調部と
を有し、
前記加入者側制御部は、前記加入者側通信用光受信部および前記加入者側通信用光送信部により前記OLTとユーザデータの通信を行い、前記電源断検出部が自装置の電源断を検出した場合のみ前記加入者側制御用光送信部を介して電源断信号を前記OLTに送信し、
前記電源断検出部は、自装置の電源断を検出した場合に、前記加入者側制御部を介さずに前記パルス変調部に検出信号を直接出力して前記加入者側制御用光送信部から1bitのパルス信号をOAM規格に対応するダイイングギャスプ信号の代わりに前記OLTに送信し、
前記OLTは、
前記複数のONUに第1波長または第4波長の下り信号を送信する局側通信用光送信部と、
前記複数のONUから第2波長の上り信号を受信する局側通信用光受信部と、
前記複数のONUから第3波長の上り信号を受信する局側制御用光受信部と、
前記複数のONUとの通信を制御する局側制御部と
前記複数のONUとの間に形成されるロジカルリンクの状態を検出するリンク検出部と、
前記リンク検出部が検出するロジカルリンク状態が変化した時刻情報と、当該ロジカルリンクに対応する前記ONUの装置識別情報とを履歴に保存するログ保存部と
を有し、
前記局側制御部は、前記局側制御用光受信部を介して前記ONUから1bitの前記パルス信号を受信した場合に、前記履歴を参照して前記パルス信号の受信直後にロジカルリンク断を検出している前記ONUに電源断が発生したと判断する
ことを特徴とするPONシステム
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の加入者側通信装置と、複数の加入者側通信装置に光カプラを介して接続される局側通信装置とで構成される光通信システムに関し、特に加入者側通信装置をONU(Optical Network Unit)、局側通信装置をOLT(Optical Line Terminater)とするPON(Passive Optical Network)システムに適用される。
【背景技術】
【0002】
近年、光通信ネットワークを実現する技術としてPONシステムが広く使用されている。PONシステムは、光信号を光カプラのような受動(Passive)素子を用いて分岐することで、局側通信装置(OLT)に接続された一本の光ファイバを複数の加入者側通信装置(ONU)で共有することができ、光通信ネットワークの低価格化を実現することができる。
【0003】
PONシステムでは、局側通信装置から各加入者側通信装置への下り方向の光信号は、複数の加入者側通信装置へのデータを時分割多重した同一波長帯域の信号で構成され、光カプラで分岐されて各加入者側通信装置に送信される。そして、各加入者側通信装置は局側通信装置から受信する光信号から自分宛のデータのみを抽出し、それ以外のデータは破棄する。一方、各加入者側通信装置から局側通信装置へ送信される上り方向のそれぞれの光信号は、同一波長帯域で互いに重複しないタイミングで送信され、光カプラで合流して局側通信装置に送られる。このため、複数の加入者側通信装置から送信される光信号のデータが衝突しないように、各加入者側通信装置のデータの送信タイミングとデータ送信量とが局側通信装置によって制御され、各加入者側通信装置は許可された送信タイミングでデータを送信する必要がある。
【0004】
そして、加入者側通信装置に電源断が発生した時に自装置の動作が停止する前に局側通信装置に電源断信号(ダイイングギャスプ)を送信する機能が用いられている。これにより、局側通信装置は、加入者側通信装置とのリンク断を検出した時に、加入者側通信装置の電源断によるものなのか、加入者側通信装置に接続される光ファイバーの障害によるものなのか、原因を切り分けることができる。
【0005】
ところが、従来はダイイングギャスプの上り信号発出時に、送信タイミングの割り当てを得るためのシーケンスをOLTとの間で行った後、ダイイングギャスプを送信する必要があった。このため、電源断後にダイイングギャスプを送信するまでの時間だけ装置を動作させなければならず、容量の大きなコンデンサを搭載しなければならなかった。特に、容量の大きなコンデンサとして知られる専用のスーパーキャパシタは高価なため、汎用のコンデンサを並列接続して使用するのが一般に行われ、基盤の高さが高くなったり、装置本来の回路を搭載する実装面積が小さくなるなど、様々な問題があった。
【0006】
そこで、電源断時に不必要な回路の動作を停止してできるだけ省電力化する方法などが検討されていた(例えば、特許文献1参照)。或いは、大容量のコンデンサを外部の回路に搭載するなどの検討もなされていた(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008−118290号公報
【特許文献1】特開2010−252192号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来はダイイングギャスプを通常のデータ通信を行う波長帯域を利用して送信するため、送信前に送信タイミングの割り当てを得るためのシーケンスをOLTとの間で行わなければならず、電源断後に直ぐにダイイングギャスプを送信できないため、ダイイングギャスプを送信するまでの時間だけ装置を動作させなければならないという課題は解決されなかった。
【0009】
上記課題に鑑み、本発明の目的は、電源断時に直ぐにダイイングギャスプを送信できるようにすることで、大容量のコンデンサを搭載する必要がない光通信システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係る光通信システムは、複数のONUと、前記複数のONUに光カプラを介して接続されるOLTとで構成され、前記複数のONUから前記OLTへの同一波長帯域の上り信号を時分割多重して通信するPONシステムにおいて、前記ONUは、前記OLTから第1波長または第4波長の下り信号を受信する加入者側通信用光受信部と、前記OLTに第2波長の上り信号を送信する加入者側通信用光送信部と、前記OLTに第3波長の上り信号を送信する加入者側制御用光送信部と、前記OLTとの通信を制御する加入者側制御部と、自装置の電源断を検出する電源断検出部と、前記加入者側制御用光送信部をオンオフして1bitのパルス信号を送信するパルス変調部とを有し、前記加入者側制御部は、前記加入者側通信用光受信部および前記加入者側通信用光送信部により前記OLTとユーザデータの通信を行い、前記電源断検出部が自装置の電源断を検出した場合のみ前記加入者側制御用光送信部を介して電源断信号を前記OLTに送信し、前記電源断検出部は、自装置の電源断を検出した場合に、前記加入者側制御部を介さずに前記パルス変調部に検出信号を直接出力して前記加入者側制御用光送信部から1bitのパルス信号をOAM規格に対応するダイイングギャスプ信号の代わりに前記OLTに送信し、前記OLTは、前記複数のONUに第1波長または第4波長の下り信号を送信する局側通信用光送信部と、前記複数のONUから第2波長の上り信号を受信する局側通信用光受信部と、前記複数のONUから第3波長の上り信号を受信する局側制御用光受信部と、前記複数のONUとの通信を制御する局側制御部と、前記複数のONUとの間に形成されるロジカルリンクの状態を検出するリンク検出部と、前記リンク検出部が検出するロジカルリンク状態が変化した時刻情報と、当該ロジカルリンクに対応する前記ONUの装置識別情報とを履歴に保存するログ保存部とを有し、前記局側制御部は、前記局側制御用光受信部を介して前記ONUから1bitの前記パルス信号を受信した場合に、前記履歴を参照して前記パルス信号の受信直後にロジカルリンク断を検出している前記ONUに電源断が発生したと判断することを特徴とする。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係る光通信システムは、電源断時に直ぐにダイイングギャスプを送信できるようにすることで、従来よりも小容量のコンデンサで対応できる。これにより、本来の回路に使用できる基盤の実装面積が大きくなり、基盤の高さも低くすることができ、加入者側通信装置の小型化を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】PONシステム100の構成例を示す図である。
図2】ONU103の構成例を示す図である。
図3】大容量のコンデンサがある場合のONU103の構成例を示す図である。
図4】OLT101の構成例を示す図である。
図5】電源断時の処理例を示すフローチャートである。
図6】ONU103aの構成例を示す図である。
図7】ログの一例を示す図である。
図8】ONU103bの構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明に係る光通信システムの実施形態としてPONシステム100について詳しく説明する。尚、PONシステム100である必要はなく、同一の波長帯域を親局から割り当てられたタイミングで時分割多重してデータを送信する複数の子局で構成される光通信システムであれば同様に適用可能である。
【0021】
図1は、本実施形態に係るPONシステム100の構成例を示す図である。図1において、PONシステム100は、局側通信装置であるOLT101と、光カプラ102と、加入者側通信装置であるONU103(103a、103b、103c)とで構成される。ここで、以降の説明において、ONU103a、ONU103bおよびONU103cに共通の事項を説明する場合は符号末尾のアルファベットを省略してONU103と表記し、特定の加入者側通信装置を示す場合は符号にアルファベットを付加して例えばONU103aのように表記する。加入者端末104についても同様に表記する。
【0022】
ここで、OLT101は、局側のPON通信装置で、例えばONU103の通信速度に応じて10Gbpsの通信速度を有する10G−EPONと1Gbpsの通信速度を有するGE−PONとに対応する回路を有する。ONU103は、加入者側のPON通信装置で、例えば10G−EPONまたはGE−PONに対応する装置である。また、加入者端末104は、パソコンやルータなどユーザー側の端末装置で構成される。
【0023】
図1において、PONシステム100は、OLT101から各ONU103に対して送信される下り方向の光信号(波長帯域:10G−EPON用λ1またはGE−PON用λ4)には、ONU103aに対するデータaと、ONU103bに対するデータbと、ONU103cに対するデータcとが時分割多重されている。下り方向の光信号は、受動素子である光カプラ102で単純に複数の光信号に分岐され、分岐先の全てのONU103に全データ(データa、データbおよびデータc)が送信される。そして、ONU103では、自装置宛のデータのみを取り出して他装置宛のデータを破棄する。例えば、ONU103aではデータaのみを取り出して加入者端末104a側に出力し、データbおよびデータcは破棄される。
【0024】
一方、加入者端末104側に接続されるユーザーのパソコンやルーターなどの装置から送信されるデータは、各加入者端末104側のONU103から上り方向の光信号(波長帯域:λ2)として下り信号とは異なる波長帯域λ2でOLT101に送信される。ここで、各ONU103は、同一の波長帯域λ2を使用するので、OLT101から上り方向のデータの送信タイミングや送信データ量などが指定されており、指定されたタイミングでデータを送信する。例えばONU103aは送信タイミングTaで加入者端末104aのデータAを送信し、ONU103bは送信タイミングTbで加入者端末104bのデータBを送信する。同様に、ONU103cは送信タイミングTcで加入者端末104cのデータCを送信する。そして、全てのデータは、光カプラ102で合流し、時分割多重されてOLT101まで送信される。このようにして、光カプラ102で合流する際に、他のデータに重ならないように、送信タイミングTa,TbおよびTcと送信データ量がOLT101により制御される。
【0025】
また、OLT101は、各ONU103にロジカルリンクID(LLID)を割り当てて各ONU103との通信を管理し、ロジカルリンクの状態をモニタして接続や切断の日時を履歴に保存する。ところが、ONU103のロジカルリンク断が検出された場合に、ONU103との間の光ファイバー障害が原因なのか、ONU103の電源断が原因なのかを保守のために判別する必要がある。そこで、一般的なONU103では、電源断が発生した場合に、一定時間だけ動作できるように電源に大容量のコンデンサが配置されている。そして、大容量のコンデンサのチャージが無くなるまでの一定時間に、波長帯域λ2の上り信号の許可を得るためのシーケンスをOLT101との間で行い、ダイイングギャスプと呼ばれる電源断信号をOLT101に送信する。これにより、OLT101側では、ONU103のロジカルリンク断が検出された場合でも当該ONU103からダイイングギャスプを受信した場合は、ONU103との間の光ファイバーには問題がないと判断できる。
【0026】
しかしながら、ONU103は、ダイイングギャスプを送信するために、波長帯域λ2の上り信号の送信許可を得るためのシーケンスを実行しなければならず、大容量のコンデンサを搭載する必要がある。特に、専用のスーパーキャパシタなどの部品は高価なので、安価な通常の電解コンデンサを並列に配置されることが多く、コンデンサに大きな実装面積が必要となり、基盤の高さが高くなるという問題が生じる。そこで、本実施形態に係るPONシステム100では、ONU103とOLT101との間でユーザーデータを送受信するための下り信号(波長帯域λ1またはλ4)および上り信号(波長帯域λ2)とは異なる第3の波長帯域(λ3)の上り信号を送信するための回路を搭載し、この第3の波長帯域でダイイングギャスプを送信する。これにより、他のONU103の上り信号との衝突を心配する必要がないので、OLT101に上り信号の許可を得るためのシーケンスを実行する必要もなくなる。そして、ONU103は、電源断が発生して直ぐにダイイングギャスプを送信できるので、従来よりも小容量のコンデンサで済ませることができ、実装面積や基盤の高さの問題を回避することができる。尚、図1の例では、ONU103a、ONU103bおよびONU103cの3つのONU103が同時にダイイングギャスプDGを送信する場合に衝突が発生する恐れがあるが、ONU103の電源断が完全に同時に発生する確率は低く、且つダイイングギャスプの送信時間は非常に短いので、信号が衝突する確立は非常に小さい。また、広域の停電発生時に同地域のONU103が一斉にダイイングギャスプを送信する可能性があるが、電力会社の停電情報などを参照することにより、ロジカルリンク断の原因が光ファイバー障害によるものではないと判断できるので問題は生じない。
【0027】
[ONU103の構成例]
次に、ONU103の構成例について図2を用いて説明する。図2において、ONU103は、光送受信回路201と、PONLSI202と、LANI/F203と、電源回路204と、電圧監視回路205とを有する。
【0028】
光送受信回路201は、OLT101との間で光ファイバーを介してユーザーデータや制御データを送受信する光信号と電気信号とを相互に変換するための回路で、図2の例では、光合波分波器251と、光受信器252と、光送信器253と、専用光送信器254とを有する。光受信器252は、10GE−PONに対応する波長λ1の光信号を電気信号に変換する光モジュールで構成され、OLT101から送信される波長帯域λ1の下り信号を受信データに変換してPONLSI202に出力する。また、光送信器253は、10GーEPONに対応する波長λ2のレーザーなどで構成され、PONLSI202から出力される送信データを光信号に変換して波長帯域λ2の上り信号としてOLT101に送信する。また、専用光送信器254は、ダイイングギャスプの電気信号を光信号に変換して送信するレーザーなどで構成され、ダイイングギャスプ信号(DG信号)をOLT101側に送信するための専用の送信器で波長帯域はλ3を使用する。
【0029】
尚、専用光送信器254は、10GーEPON、GE−PON、或いは独自の方式でも構わず、OLT101側の受信器と通信できるようになっていれば構わない。また、波長帯域λ1と、波長帯域λ2と、波長帯域λ3は、互いに波長が異なり、例えば10G−EPON規格において、上り波長帯域は1260nmから1280nm、下り波長帯域は1575nmから1580nmが使用されるので、これらの波長帯域以外の空いている波長帯域をダイイングギャスプ信号用として使用する。そして、これらの波長帯域が異なる光信号は、WDM機能を有する光合波分波器251で各波長帯域に応じて合波または分波され、光受信器252、光送信器253、専用光送信器254に入出力される。
【0030】
PONLSI202は、PON規格に従った通信を制御する専用チップなどで構成される制御部で、図2の例ではONU制御部255と、制御信号発生部256とを有する。尚、本実施形態に係るPONシステム100の特徴が分かり易いように、制御信号発生部256をONU制御部255とは別のブロックにしたが、同じブロックであってもよく、いずれの場合でもPONLSI202の機能の1つである。図2において、ONU制御部255は、PON規格に従ってLANI/F203を介して接続される加入者端末104が送受信するユーザーデータや制御信号発生部256が生成するPON規格に従った様々な制御データを光送受信回路201を介してOLT101との間で送受信する。特に本実施形態では、制御信号発生部256はダイイングギャスプ(Dying Gasp)信号を生成して送信する。
【0031】
LANI/F203は、加入者端末104をONU103にLAN接続するためのインターフェースを提供する専用のチップを搭載する。
【0032】
電源回路204は、外部電源から電源線206を介して供給される電源(例えば直流電源)をONU103の各部に必要な電圧に変換する回路で、光送受信回路201、PONLSI202、LANI/F203などに図2の点線powerで示した配線により供給する。尚、外部電源入力は、ACアダプタなど外部から供給される電源である。
【0033】
電圧監視回路205は、外部電源入力の電圧低下を監視する回路で、例えば外部電源から電源線206を介して供給される電源の電圧をモニタして予め設定した電圧値以下になった時に、電源断を示す検出信号を出力する。図2の例では、検出信号はPONLSI202の制御信号発生部256に出力され、制御信号発生部256は検出信号の入力をトリガとしてダイイングギャスプ(Dying Gasp)信号を生成して送信するようONU制御部255に出力する。これを受けたONU制御部255は、即時、光送受信回路201の専用光送信器254から波長帯域λ3でダイイングギャスプ信号(DG信号)を送信する。ここで、従来は、ONU制御部255は、光送受信回路201のユーザーデータ送信用の光送信器254から波長帯域λ2でダイイングギャスプ信号(DG信号)を送信するために、OLT101との間で送信タイミングなどを取得するための所定のシーケンスを実行後に、OLT101から割り当てられた送信タイミングでDG信号を送信していたので、DG信号を送信するまでにある程度の時間だけONU103を動作させる必要があった。このため、図3に示すように、外部電源入力に大容量のコンデンサ207を搭載しなければならなかったが、図2の例では、電圧監視回路205が外部電源入力の電圧低下を検出したら直ぐに専用光送信器254からDG信号を送信するので、大容量のコンデンサ207が不要になり、電源回路204に内蔵されている小容量のコンデンサで済ませることができる。
【0034】
[OLT101の構成例]
次に、OLT101の構成例について図4を用いて説明する。図4において、OLT101は、光送受信回路301と、OLT制御部302と、光送受信器303と、監視通信I/F304とを有する。
【0035】
光送受信回路301は、複数のONU103との間で光ファイバーを介してユーザーデータや制御データを送受信するための回路で、図4の例では、光合波分波器351と、光送信器352と、光受信器353と、専用光受信器354と、光送信器352bとを有する。
【0036】
光送信器352はOLT制御部302から出力される送信データを光信号に変換して波長帯域λ1の下り信号として複数のONU103に時分割多重して送信し、光受信器353は複数のONU103から時分割で送信される波長帯域λ2の上り信号を受信データに変換してOLT制御部302に出力する。また、専用光受信器354は、電源断が発生したONU103からダイイングギャスプ信号(DG信号)を受信するための専用の受信器で波長帯域はλ3を使用する。ここで、OLT101は、通信速度が10Gbpsと1GbpsのPON規格に対応する局側装置で、光送信器352は10Gbpsの通信速度を有するONU103との通信に対応し、光受信器353は、ONU103の波長帯域λ2の光信号を受信し、光送信器352bは波長帯域がλ4を使用する1Gbpsの通信速度を有するONU103との通信に対応する。ここで、波長帯域λ1と、波長帯域λ2と、波長帯域λ3と、波長帯域λ4とは、互いに波長が異なる。そして、これらの光信号は、光合波分波器351で各波長に応じて合波または分波され、光送信器352、光受信器353、専用光受信器354および光受信器353bにそれぞれ入出力される。
【0037】
OLT制御部302は、PON規格に従って動作する制御部で、複数のONU103との間でユーザーデータやPON規格に従った様々な制御データを光送受信回路301を介して送受信する。そして、ユーザーデータは光送受信器303を介して上位網に送受信され、PON制御に関係する制御データを処理して、複数のONU103の送信タイミングや送信データ量、配下のONU103の警報管理やロジカルリンクの状態検出や履歴管理などを行う。特に本実施形態では、ONU103のロジカルリンク断を検出した場合に光ファイバーの障害によるものなのか、ONU103の電源断によるものなのかを判定し、監視通信I/F304を介して監視装置305に出力し、管理者に通知する。このようにして、管理者はPONシステム100を運用管理することができる。
【0038】
光送受信器303は、上位網に接続される光インターフェースである。
【0039】
監視通信I/F304は、ユーザーデータの通信とは異なる別の監視網に接続され、遠方の監視装置305との間で警報や制御コマンドなどを送受信するためのインターフェースを提供する。例えばOLT制御部302は、ONU103との間のロジカルリンク接続状況に変化が生じた場合や警報を受信した場合などに監視装置305に通知する。
[ONU103の電源断時の処理]
次に、ONU103の電源断時の処理について、図5のフローチャートを用いて説明する。
【0040】
(ステップS101)ONU103の電圧監視回路205は、外部電源の電圧をモニタする。
【0041】
(ステップS102)電圧監視回路205は、ステップS101で計測した電圧値が予め設定した閾値以下であるか否かを判別し、電源電圧が閾値以下であれば電源断が発生したと判断してステップS103に進み、電源電圧が閾値より大きい場合はステップS101に戻って電源電圧のモニタを継続する。
【0042】
(ステップS103)ステップS102で電源断が検出された場合、ONU103はOLT101側にダイイングギャスプ(Dying Gasp)信号を送信する。例えば図2の場合、電圧監視回路205が電源断の検出信号をPONLSI202に出力する。そして、これを受けたPONLSI202の制御信号発生部256は、従来と同様のOAM(Operation Administration and Maintenance)規格に対応するDying Gasp信号を生成してOAMフラグによりONU制御部255に出力し、ONU制御部255は直ちに光送受信回路201の専用送受信器254を介してDG信号をOLT101側に送信する。尚、ステップS103のDG信号を送信する他の方法については、後で詳しく説明する。
【0043】
(ステップS104)外部電力が供給されないので、電源回路204の電源供給がダウンしてONU103の動作は停止する。尚、電源回路204内部のコンデンサにより、ステップS103を実行する短時間だけ、ONU103は動作するものとする。
【0044】
ここで、従来は、ステップS102とステップS103との間にステップS151「ダイイングギャスプ信号を送信するための所定のシーケンスをOLT101側と行う」を実行する必要があったので、ステップS151を実行する時間、ONU103を動作させなければならず、図3で説明したように電源回路204内部のコンデンサとは別に大容量のコンデンサ207を搭載する必要があった。
【0045】
これに対して、本実施形態に係るPONシステム100では、ONU103は外部電源の電源断を検出すると直ぐにダイイングギャスプ信号を送信するのでステップS151の処理を省略でき、処理時間が短くなるので大容量のコンデンサ207を搭載する必要がなくなる。
【0046】
[応用例1]
上記の実施形態では、従来と同様のOAM規格に対応するダイイングギャスプ信号をPONLSI202から送信するようにしたが、PONLSI202を経由して処理を行う時間が必要になる。そこで、応用例1では、図6に示すように、ONU103’は、PONLSI202を介さずにOLT101にダイイングギャスプ信号を送信する。尚、図6において、図2と同符号のブロックは同じものを示す。図6のONU103’と図2のONU103との違いは、光送受信回路201aにパルス変調部261が設けられていることと、電圧監視回路205aの電源断の検出信号がPONLSI202ではなくパルス変調部261に出力されることである。
【0047】
図6において、電圧監視回路205aから検出信号を受けたパルス変調部261は、専用光送信器254のレーザーダイオードを短い時間だけオンにして波長帯域λ3の1bitのパルス信号をOLT101に送信する。これにより、PONLSI202でOAM規格に対応するダイイングギャスプ信号を生成して送信する必要がないので、図2のONU103の場合よりも更に速く電源断を通知するダイイングギャスプ信号(DG信号)をOLT101に送信することができる。尚、ダイイングギャスプ信号はOAM規格に対応する名称の信号なので、厳密にはパルス信号と異なるが、ここでは電源断をOLT101に通知するための信号をダイイングギャスプ信号と称するものとする。
【0048】
このようにして、応用例1のONU103’は、パルス信号によるダイイングギャスプ信号をPONLSI202を介さずに送信するので、より迅速な電源断の通知が可能になり、大容量のコンデンサ207を搭載する必要がなくなる。
【0049】
ここで、複数のONU103がOLT101に収容される場合、パルス信号を受信したOLT101はどのONU103が送信したのか分からないという問題が生じる。そこで、OLT制御部302は、配下のONU103の警報やロジカルリンクの状態などの履歴(ログ)を参照して、パルス信号を送信したONU103を特定する処理を行う。図7にログの例を示す。ここで、図1のONU103aのロジカルリンクID(LLID)をLLID:1、ONU103bのロジカルリンクID(LLID)をLLID:2、ONU103cのロジカルリンクID(LLID)をLLID:3とする。
【0050】
図7において、日時:2012/1/1の10:25:30にONU103aとのロジカルリンクが確立し、日時:2012/1/1の15:11:05にONU103bとのロジカルリンクが確立し、日時:2012/1/1の17:35:28にONU103cとのロジカルリンクが確立している。そして、OLT制御部302は、日時:2012/1/1の21:45:00に上記で説明したパルス信号(電源断を示すDG信号)を受信し、その直後の日時:2012/1/1の21:45:01にONU103a(LLID:1)とのロジカルリンクの切断を検出している。そこで、OLT制御部302は、パルス信号を送信したONU103は、パルス信号の受信の直後にロジカルリンク断を検出したLLID:1のONU103aであると判断する。
【0051】
このようにして、応用例1のONU103’は、パルス信号によるダイイングギャスプ信号をPONLSI202を介さずに送信するので、より迅速な電源断の通知が可能になり、且つ、履歴を参照することによって、電源断が発生したONU103を特定することが可能になる。これにより、従来と同様のダイイングギャスプの機能を維持しながらONU103に大容量のコンデンサ207を搭載する必要がなくなる。
【0052】
[応用例2]
応用例1では、単純なオンオフだけの1bitのパルス信号をダイイングギャスプ信号として送信するようにしたので、OLT101側で履歴を参照して、パルス信号を送信したONU103を特定する処理を行う必要があった。そこで、応用例1と同様にダイイングギャスプ信号をPONLSI202を介さずに送信しながら容易にダイイングギャスプ信号を送信したONU103を特定できる応用例2について説明する。
【0053】
図6のONU103’との違いは、光送受信回路201bに変調部262と、メモリ263とが設けられていることである。尚、電圧監視回路205aの電源断の検出信号は、図6のONU103’と同様に、PONLSI202ではなく変調部262に出力される。
【0054】
図8のONU103’’において、電圧監視回路205aから検出信号を受けた変調部262は、専用光送信器254のレーザーダイオードをメモリ263に記憶されたデジタル情報に従って変調する。尚、変調方法は、例えばデジタルの”1”、”0”をNRZ(Non Return to Zero)などの変調方法を用いてもよいし、別の変調方法を用いてもよい。
【0055】
ここで、メモリ263に記憶するデジタル情報は、ONU103固有の6バイトのMACアドレスでもよいし、OLT101から割り当てられた2バイトのロジカルリンクIDでもよい。
【0056】
このようにして、応用例2のONU103’’は、ONU103を特定するためのMACアドレスやロジカルリンクIDによるダイイングギャスプ信号をPONLSI202を介さずに送信するので、迅速な電源断の通知が可能になり、大容量のコンデンサ207を搭載する必要がなくなる。
【0057】
尚、本発明に係る光通信システムについて、各実施例を挙げて説明してきたが、その精神またはその主要な特徴から逸脱することなく他の多様な形で実施することができる。そのため、上述した実施例はあらゆる点で単なる例示に過ぎず、限定的に解釈してはならない。本発明は、特許請求の範囲によって示されるものであって、本発明は明細書本文にはなんら拘束されない。さらに、特許請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本発明の範囲内である。
【符号の説明】
【0058】
100・・・PONシステム
101・・・OLT
102・・・光カプラ
103,103a,103b,103c,103’,103’’・・・ONU
104,104a,104b,104c・・・加入者端末
201,201a,201b・・・光送受信回路
202・・・PONLSI
203・・・LANI/F
204・・・電源回路
205,205a・・・電圧監視回路
251・・・光合波分波器
252・・・光受信器
253・・・光送信器
254・・・専用光送信器
255・・・ONU制御部
256・・・制御信号発生部
301・・・光送受信回路
302・・・OLT制御部
303・・・光送受信器
304・・・監視通信I/F
351・・・光合波分波器
352・・・光送信器
353・・・光受信器
354・・・専用光受信器
352b・・・光送信器
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8