特許第5655025号(P5655025)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655025
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】田植機の苗植付け装置
(51)【国際特許分類】
   A01C 11/02 20060101AFI20141218BHJP
【FI】
   A01C11/02 313B
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2012-69913(P2012-69913)
(22)【出願日】2012年3月26日
(65)【公開番号】特開2013-198459(P2013-198459A)
(43)【公開日】2013年10月3日
【審査請求日】2014年3月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】100107308
【弁理士】
【氏名又は名称】北村 修一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100137590
【弁理士】
【氏名又は名称】音野 太陽
(72)【発明者】
【氏名】小林 鑑明
【審査官】 佐藤 久則
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−253624(JP,A)
【文献】 特開2003−265008(JP,A)
【文献】 特開2008−082443(JP,A)
【文献】 特開平11−346519(JP,A)
【文献】 特開2004−141095(JP,A)
【文献】 特開2002−095315(JP,A)
【文献】 実開昭62−083413(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01C11/00−14/00
F16H57/00−57/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
前部に伝動上手側の動力が入力される左右向きの伝動軸を備えて機体前後向きに配備された植付け駆動ケース、及び前記植付け駆動ケースの後端部に駆動自在に設けた苗植付け機構、前記苗植付け機構に対する伝動を入り状態と切り状態に切り換える端数条植えクラッチを備える田植機の苗植付け装置であって、
前記端数条植えクラッチを、前記端数条植えクラッチを内装する前記植付け駆動ケースの外部から内部にケース壁を挿通して入り込んで作用する操作ピンによって入り状態と切り状態に切り換え操作するよう構成し、
前記操作ピン及び前記操作ピンを操作付勢するスプリングを覆う操作部カバーを、前記植付け駆動ケースからケース外に突設し、
前記操作ピンをクラッチ操作具に連動させる連動機構を、前記操作部カバーの内部で前記操作ピンに連結し、
前記操作部カバーを、突出端が前記伝動軸と前記苗植付け機構の植付け爪先端の回動軌跡との間に位置するように配備してある田植機の苗植付け装置。
【請求項2】
前記連動機構を、アウターケーブル及びインナーケーブルを備えた操作ケーブルによって構成し、
前記アウターケーブルの端部を前記操作部カバーに連結してある請求項1記載の田植機の苗植付け装置。
【請求項3】
前記操作部カバーを、前記ケースから横外側向きに、かつ下向き傾斜又は上向き傾斜で突設してある請求項1又は2記載の田植機の苗植付け装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体前後向きに配備した植付け駆動ケース、及び前記植付け駆動ケースの後端部に駆動自在に設けた苗植付け機構、前記苗植付け機構に対する伝動を入り状態と切り状態に切り換える端数条植えクラッチを備える田植機の苗植付け装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に示されるように、植付けケースの内部に少数条クラッチを設け、植付けケースを貫通する操作ピンによって少数条クラッチを操作するよう構成された苗植付け装置があった。また、特許文献2に示されるように、伝動パイプの内部にユニットクラッチを設け、伝動パイプを挿通するクラッチピンによってユニットクラッチを操作するよう構成された田植機の植付部があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−82443号公報
【特許文献2】特開2002−305924号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した田植機の苗植付け装置では、端数条植えクラッチを植付け駆動ケースや植付け駆動ケースに連設のケースに内装し、端数条植えクラッチの切り換え操作をケースの外部から行なうように構成する。上記した従来の技術を採用することにより、ケースの外部から内部にケース壁を挿通して端数条植えクラッチを切り換え操作する操作ピンを設け、この操作ピンに連動機構を介して連動するクラッチ操作具を設けた場合、操作ピンのクラッチ側と反対側がケース外に露出し、操作ピンや連動機構に泥土や泥水が付着し易くなっていた。
【0005】
本発明の目的は、操作ピンを採用するとともに操作ピンに連動機構を介してクラッチ操作具を連動させるものでありながら、泥土や泥水の付着による操作不良を回避しやすい田植機の苗植付け装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本第1発明は、前部に伝動上手側の動力が入力される左右向きの伝動軸を備えて機体前後向きに配備された植付け駆動ケース、及び前記植付け駆動ケースの後端部に駆動自在に設けた苗植付け機構、前記苗植付け機構に対する伝動を入り状態と切り状態に切り換える端数条植えクラッチを備える田植機の苗植付け装置であって、
前記端数条植えクラッチを、前記端数条植えクラッチを内装する前記植付け駆動ケースの外部から内部にケース壁を挿通して入り込んで作用する操作ピンによって入り状態と切り状態に切り換え操作するよう構成し、
前記操作ピン及び前記操作ピンを操作付勢するスプリングを覆う操作部カバーを、前記植付け駆動ケースからケース外に突設し、
前記操作ピンをクラッチ操作具に連動させる連動機構を、前記操作部カバーの内部で前記操作ピンに連結し、
前記操作部カバーを、突出端が前記伝動軸と前記苗植付け機構の植付け爪先端の回動軌跡との間に位置するように配備してある。
【0007】
本第1発明の構成によると、操作ピン、及び操作ピンと連動機構の連結構造が操作部カバーによって覆われるのみならず、スプリングも操作部カバーによって覆われ、操作ピン、連結構造及びスプリングに泥土や泥水が付着することを回避できる。
【0008】
従って、本第1発明によると、クラッチ操作具による連動機構を介しての操作ピンの操作によって端数条植えクラッチを操作するものでありながら、泥土や泥水による操作不良が発生しにくいものにできた。
【0009】
【0010】
第1発明の構成によると、端数条植えクラッチを植付け駆動ケースに収容し、端数条植えクラッチ用の専用のケースを不要にしたコンパクト化をできる。従って、コンパクトで取り扱いなどを行い易い苗植付け装置を得ることができる。
【0011】
本第1発明の構成によると、操作ピンとクラッチ操作具を連動させる連動機構を操作部カバーから直線状に延出させても、植付け爪先端の回動軌跡より機体前方側を通って連動機構と苗植付け機構が干渉せず、連動機構と苗植付け機構の干渉を回避しながら、操作部カバーからクラッチ操作具に至る連動機構の長さを短くできる。従って、連動機構を操作部カバーからクラッチ操作具に至る長さが短いコンパクトなものにできる。
【0012】
第2発明は、前記連動機構を、アウターケーブル及びインナーケーブルを備えた操作ケーブルによって構成し、前記アウターケーブルの端部を前記操作部カバーに連結してある。
【0013】
第2発明の構成によると、インナーケーブルのうちのアウターケーブルから突出する部位の全体が操作部カバーの内部に位置する状態で操作ケーブルを配備でき、インナーケーブルに泥土や泥水が付着することを回避できる。
【0014】
従って、本第2発明によると、操作ケーブルを採用するものでありながら、ケーブル内に泥水や泥土が入り込みにくくて良好な操作性を維持できる。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
第3発明は、前記操作部カバーを、前記ケースから横外側向きに、かつ下向き傾斜又は上向き傾斜で突設してある。
【0019】
ケースから横外側向きにかつ水平向きに突設した操作部カバーから横外側向きに延出する連動機構のうちの植付け爪先端の回動軌跡よりも機体前方側に位置する部位と回動軌跡の間隔と、ケースから横外側向きにかつ下向き傾斜又は上向き傾斜で突設した操作部カバーから横外側向きに延出する連動機構のうちの植付け爪先端の回動軌跡よりも機体前方側に位置する部位と回動軌跡の間隔とを比較した場合、植付け爪先端の回動軌跡のうちの植付け爪下降側における部位の形状は、植付け駆動ケースから上方に離れるほど機体後方側に位置し、かつ植付け駆動ケースから下方に離れるほど機体後方側に位置する円弧形状になることにより、ケースから下向き傾斜又は上向き傾斜で突設している操作部カバーにおける間隔の方が大になりがちである。
従って、本第3発明の構成によると、操作部カバーがケースから横外側向きに突設し、連動機構がその操作部カバーから横外側向きに延出することによって、連動機構と植付け駆動ケースの上方に位置する苗載せ台などとの干渉を回避しやすいのみならず、連動機構と苗植付け機構との干渉も回避しやすい。
【0020】
従って、本第3発明によると、操作ピンとクラッチ操作具との連動機構の配備を行い易い。
【0021】
また、本第3発明の構成によると、操作部カバーが軸芯方向にケースから突出する長さに比べ、操作部カバーがケースから水平方向に突出する長さが短くなる。
【0022】
従って、本第3発明によると、操作部カバーの軸芯方向での長さを長くして長い操作ピンの収容を可能にしながら、ケース及び操作部カバーの配備に必要な水平方向でのスペースを小に済ませることができ、たとえば苗ガイドなど近くに位置する部材や装置を配備するためのスペースを確保しやすい。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】苗植付け装置を示す側面図である。
図2】苗植付け装置を示す平面図である。
図3】植付け駆動ケース及び苗植付け機構を示す側面図である。
図4】フィードケースの横断平面図である。
図5】フィードケースの縦断側面図である。
図6】植付け駆動ケース及び苗植付け機構を示す横断平面図である。
図7】端数条植えクラッチを示す横断平面図である。
図8】操作部カバーを示す縦断後面図である。
図9】別の実施構造を備えた操作部カバーを示す横断平面図である。
図10】別の実施構造を備えた操作部カバーを示す縦断後面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施例に係る田植機の苗植付け装置1を示す側面図である。図2は、本発明の実施例に係る苗植付け装置1を示す平面図である。図1,2に示すように、本発明の実施例に係る田植機の苗植付け装置1は、乗用型田植機を構成しており、乗用型の自走機体(図示せず)から後方に上下揺動操作自在に延出するリンク機構4の後部に位置する支持部材5に前端部が連結された機体フレーム2、機体フレーム2の後部に機体横方向に並べて駆動自在に設けた8つの苗植付け機構6、機体フレーム2の前部の上方に下端側ほど機体後方側に位置する傾斜姿勢で設けた一つの苗載せ台7、機体フレーム2の下方に機体横方向に並べて設けた5つの接地フロート8を備えて構成してある。
【0025】
苗植付け装置1は、リンク機構4の走行機体に対する上下揺動操作により、各接地フロート8が圃場面に接地した下降作業状態と各接地フロート8が圃場面から高く上昇した上昇非作業状態とに昇降操作され、下降作業状態で自走機体によって牽引されることにより、接地フロート8によって圃場面を整地し、整地した圃場面に8つの苗植付け機構6によって8条植えの苗植え付けを行なう。
【0026】
苗植付け装置1は、支持部材5に機体前後向きのローリング軸芯まわりに揺動自在に支持され、自走機体の左右傾斜にかかわらず左右の苗植え深さが同じ又はほぼ同じになるように、自走機体に対してローリングしながら苗植え作業する。
【0027】
機体フレーム2について説明する。
図1,2,3に示すように、機体フレーム2は、機体フレーム2の前端部に位置する機体横方向に長いメインフレーム10、メインフレーム10の機体横方向での4箇所から機体後方向きに延出する植付け駆動ケース11、メインフレーム10の機体横方向での中間部に連結されたフィードケース12を備えて構成してある。メインフレーム10は、縦断面形状が矩形の中空部材によって構成してある。
【0028】
図4は、フィードケース12の横断平面図である。図5は、フィードケース12の縦断側面図である。図1及び図4,5に示すように、フィードケース12は、入力軸13を備え、かつ変速機構14を収容するフィードケース本体12aと、フィードケース本体12aの横一端側から機体後方下方向きに延出する出力ケース部12bとを備えて構成してある。フィードケース本体12aの機体前方向きの壁面12cに、機体前方向きに突出する連結軸15、入力軸13と同じ又はほぼ同じ配置高さに位置する潤滑油供給口16、及び潤滑油供給口16を開閉するプラグ17を設けてある。連結軸15は、支持部材5にローリング軸芯まわりに回転自在に連結され、苗植付け装置1のローリングを可能にするものである。フィードケース本体12aの下部に、メインフレーム10に連結する台座部12dを設けてある。
【0029】
苗植付け機構6について説明する。
図3は、植付け駆動ケース11及び苗植付け機構6を示す側面図である。図6は、植付け駆動ケース11及び苗植付け機構6を示す横断平面図である。図2,3,6に示すように、8つの苗植付け機構6は、各植付け駆動ケース11の後端部の両横側に一つずつ位置する配置で機体横方向に並んでいる。各植付け駆動ケース11の両横側に分かれて位置する一対の苗植付け機構6,6は、植付け駆動ケース11の後端部に機体横方向に貫設された一本の植付け駆動軸20に取り付けられており、植付け駆動軸20を介して植付け駆動ケース11に駆動自在に支持されている。
【0030】
各苗植付け機構6は、植付け駆動軸20のうちの植付け駆動ケース11の外部に突出している部位に一体回転自在に支持される回転ロータ6a、回転ロータ6aの両端部に回転駆動軸6bを介して駆動自在に支持される植付けアーム6cを備えて構成してある。つまり、各苗植付け機構6は、回転ロータ6aが植付け駆動軸20によって回転駆動されることにより、回転駆動軸6bが回転ロータ6aの内部に位置するギヤ機構6eによって回転駆動されて、一対の植付けアーム6c,6cが植付け駆動軸20の軸芯まわりに公転しながら回転駆動軸6bの軸芯まわり自転するように駆動される。
【0031】
従って、各苗植付け機構6は、植付け駆動軸20が駆動されることにより、一方の植付けアーム6cに設けた植付け爪6dと他方の植付けアーム6cに設けた植付け爪6dとが、植付け爪6dの先端で苗植え運動軌跡としての回動軌跡T(図3参照)を描きながら、交互に苗載せ台7の下端側に位置する苗取出し口21と圃場面との間を上下に往復移動するように苗植え運動する。従って、各苗植付け機構6は、一対の植付け爪6d,6dによって交互に、苗取り出し口21において苗載せ台7のマット状苗から一株分の苗を取り出し、取り出した苗を苗取り出し口21から圃場面に下降搬送して植え付ける。苗植付け機構6が苗載せ台7から取り出して下降搬送する苗は、苗ガイド9(図1参照)によって圃場面に向かうように案内される。
【0032】
各苗植付け機構6に対する苗供給について説明する。
苗載せ台7の表面側に苗載置部(図示せず)を設け、この苗載置部に、8つの苗植付け機構6に供給するためのマット状苗を機体横方向に並べて載置するように構成してある。図1,2,3に示すように、苗載せ台7は、苗載せ台7の上端側を支持する苗載せ台支柱23、及び苗載せ台7の下端側を支持するガイドレール24によって機体横方向に移動自在に支持されている。
【0033】
苗載せ台7は、苗載せ台7の裏面側に位置する苗横送り駆動装置25(図2参照)によって苗植付け機構6の苗植え運動に連動して機体横方向に往復移送され、各苗植付け機構
6が苗載置部に載置されたマット状苗の下端部から一株分の苗取り出しを行なうように、この苗取り出しがマット状苗の横方向での一端側から他端側に向けて順次に行なわれるように、各苗植付け機構6に供給するマット状苗をガイドレール24に設けた苗取り出し口21に対して機体横方向に往復移送する。
【0034】
苗載せ台7の下部の裏面側に苗縦送りベルト26を設けてある。苗縦送りベルト26は、苗載せ台7が横移送の左右のスロトークエンドに到達した際、苗載せ台7の裏面側に位置する苗縦送り駆動装置27(図2参照)によって設定回動ストロークだけ駆動され、苗載置部に載置されている各苗植付け機構6のためのマット状苗を苗取り出し口21に向けて縦送りする。
【0035】
苗植付け機構6、苗横送り駆動装置25及び苗縦送り駆動装置27を駆動する作業伝動装置3について説明する。
図2に示すように、作業伝動装置3は、フィードケース12の前部に設けた入力軸13によって走行機体のエンジン(図示せず)からの駆動力をフィードケース12のフィードケース本体12aに入力し、入力した駆動力を、苗送り駆動部30により、苗横送り駆動装置25及び苗縦送り駆動装置27に伝達するように構成し、フィードケース本体12aに入力した駆動力を、植付け駆動部31によって8つの苗植付け機構6の植付け駆動軸20に伝達するように構成してある。
【0036】
図2及び図4に示すように、苗送り駆動部30は、入力軸13に一体回転自在に設けたベベルギヤ32に中継ベベルギヤ33を介して連動する中継伝動軸34、苗横送り駆動装置25を構成する苗載せ台横送り軸25aの端部に一体回転自在に連結された横送り出力軸35、中継伝動軸34と横送り出力軸35とにわたって設けた変速機構14を備えて構成してある。
従って、苗送り駆動部30は、入力軸13によって入力したエンジンからの駆動力を、ベベルギヤ32、中継ベベルギヤ33及び中継伝動軸34を介して変速機構14に入力して回転速度が4段階に異なる駆動力に変速し、変速後の駆動力を横送り出力軸35から苗載せ台横送り軸25aに出力する。従って、苗送り駆動部30は、苗載せ台横送り軸25aの駆動速度を変速機構14によって4段階に異なる駆動速度に変速し、苗横送り速度としての苗載せ台横送り速度を4段階に変更する。
【0037】
苗送り駆動部30は、苗縦送り駆動装置27を構成する苗縦送り軸27aの端部に連結ピン36によって一体回転自在に連結された縦送り出力軸37、縦送り出力軸37の一端部に一体回転自在に設けた伝動ギヤ38、この伝動ギヤ38に噛合う状態で横送り出力軸35に一体回転自在に設けた伝動ギヤ39を備えて構成してあり、横送り出力軸35の駆動力を、伝動ギヤ39及び伝動ギヤ38を介して縦送り出力軸37に伝達して、縦送り出力軸37から苗縦送り軸27aに出力する。
【0038】
図2及び図4に示すように、植付け駆動部31は、前記入力軸13及び前記中継伝動軸34を備える他、中継伝動軸34にギヤ連動機構40によって連動されているフィードケース12の出力輪体41、出力輪体41に中央部が連結され、フィードケース12の出力ケース部12bより左側が左側2つの植付け駆動ケース11,11の前端部に入り込むように、フィードケース12の出力ケース部12bより右側が右側2つの植付け駆動ケース11,11の前端部に入り込むように配備した機体横向きの伝動軸42、各植付け駆動ケース11の内部に伝動軸42と植付け駆動軸20と連動させるように設けた回転伝動軸43を備えて構成してある。
【0039】
図4図5に示すように、出力輪体41を回転ギヤによって構成し、ギヤ連動機構40を、中継伝動軸34に一体回転自在に設けた上手側中継伝動ギヤ40aと、上手側中継伝動ギヤ40a及び出力輪体41に噛合う下手側中継伝動ギヤ40bとによって構成してある。上手側中継伝動ギヤ40a及び下手側中継伝動ギヤ40bは、フィードケース12における出力ケース部12bに回転自在に支持されている。
【0040】
図4に示すように、出力輪体41は、下手側中継伝動ギヤ40bに連動する輪体本体41a、及び輪体本体41aから両横側に一体回転自在に延出して伝動軸42に外嵌するボス部41bを備えて構成し、フィードケース12における出力ケース部12bの延出端部に設けた出力輪体支持部12eと各ボス部41bとの間に介装した軸受45を介して出力輪体支持部12eに回転自在に支持されている。各ボス部41bと出力輪体支持部12eとの間にシール部材46を介装してある、各ボス部41bに位置するシール部材46は、軸受45に対して輪体本体41aが位置する側とは反対側に伝動軸42の軸芯方向に並ぶ配置で設けてある。各ボス部41bが輪体本体41aから延出する延出長さLとして、延出端側がシール部材46から軸受45が位置する側と反対側に突出する延出長さに設定してある。
【0041】
図2,4,6に示すように、伝動軸42は、フィードケース12の出力ケース部12bとこの出力ケース部12bに隣り合う植付け駆動ケース11とにわたって設けた伝動ケース47、及び隣り合う二つの植付け駆動ケース11,11にわたって設けた伝動ケース47に収容されている。伝動軸42は、軸芯方向に8本の分割伝動軸42aに分割自在に構成されている。伝動軸42を構成する分割伝動軸42aは、フィードケース12の出力ケース部12bの内部及び植付け駆動ケース11の外側近くで連結してある。隣り合う一対の分割伝動軸42a,42aは、一対の分割伝動軸42a,42aにわたって外嵌する連結筒体48や出力輪体41、及び連結筒体48や出力輪体41のボス部41bと各分割伝動軸42aとの間に設けた連結キー49によって一体回転自在に連結してある。
【0042】
図2に示すように、各植付け駆動ケース11に設けた回転伝動軸43の前端部に端数条植えクラッチ50を設け、各植付け駆動ケース11に設けた回転伝動軸43の後端部にトルクリミッター70を設けてある。
【0043】
図6に示すように、各植付け駆動ケース11の回転伝動軸43に設けた端数条植えクラッチ50は、回転伝動軸43の前端部に外嵌する駆動側クラッチ体51及び従動側クラッチ体52、従動側クラッチ体52と回転伝動軸43に設けたバネ受け部53との間で回転伝動軸43に外嵌するスプリング54を備えて構成してある。
【0044】
駆動側クラッチ体51は、伝動軸42に一体回転自在に設けたベベルギヤ55にベベギヤ部51aが噛合う状態で回転伝動軸43に相対回転自在に外嵌しており、伝動軸42からベベルギヤ55を介して伝達される駆動力によって回転伝動軸43の軸芯まわりに回転駆動される。駆動側クラッチ体51は、軸受56を介して植付け駆動ケース11の支持部11aに回転自在に支持されている。
【0045】
従動側クラッチ体52は、内周面に設けたスプライン部52aと回転伝動軸43の周面に設けたスプライン部43aとの係合により、回転伝動軸43に対して一体回転自在に係合するように構成し、かつこの係合を維持しながら回転伝動軸43の軸芯方向に摺動するように構成してある。従動側クラッチ体52は、スプリング54の付勢力による入り操作と、スプリング54による操作に抗しての操作ピン61による切り操作とによって、駆動側クラッチ体51が位置する側に摺動した入り位置と、駆動側クラッチ体51が位置する側と反対側に摺動した切り位置とに切り換え操作されるように構成してある。
【0046】
従動側クラッチ体52は、入り位置に切り換え操作されると、従動側クラッチ体52の端部に設けてある従動側クラッチ爪52bと駆動側クラッチ体51の端部に設けてある駆動側クラッチ爪51bとが噛合い、駆動側クラッチ体51に一体回転自在に連結された状態になる。従動側クラッチ体52は、切り位置に切り換え操作されると、従動側クラッチ爪52bと駆動側クラッチ爪51bの噛合いが外れ、駆動側クラッチ体51に対する連結が解除された状態になる。
【0047】
つまり、端数条植えクラッチ50は、従動側クラッチ体52が入り位置に切り換え操作されることにより、入り状態に切り換わり、伝動軸42の駆動力としてのベベルギヤ55の駆動力を駆動側クラッチ体51及び従動側クラッチ体52を介して回転伝動軸43の前端部に伝達して回転伝動軸43を駆動する。回転伝動軸43の駆動力は、回転伝動軸43の後端部からトルクリミッター70、トルクリミッター70を構成する従動側クラッチ体72に一体回転自在に設けたベベルギヤ73、このベベルギヤ73に噛合う状態で植え付け駆動軸20に一体回転自在に設けた植付け駆動ギヤ75を介して植付け駆動軸20に伝達される。
【0048】
端数条植えクラッチ50は、従動側クラッチ体52が切り位置に切り換え操作されることにより、切り状態に切り換わり、伝動軸42の駆動力としてのベベルギヤ55の駆動力の回転伝動軸43への伝達を絶って回転伝動軸43を停止する。回転伝動軸43が停止すると、植付け駆動軸20が停止する。
【0049】
従って、各端数条植えクラッチ50は、入り状態に切り換え操作されることにより、その端数条植えクラッチ50が付いている回転伝動軸43を備える植付け駆動ケース11によって支持される一対の苗植付け機構6,6だけを苗植付け作動するように駆動し、切り状態に切り換え操作されることにより、その植付け駆動ケース11に支持される一対の苗植付け機構6,6だけを植付け停止するように停止させる。
【0050】
図6に示すように、各端数条植えクラッチ50は、端数条植えクラッチ50毎に設けられ、前記操作ピン61を備えたクラッチ操作装置60によって切り換え操作するように構成してある。
【0051】
各端数条植えクラッチ50のクラッチ操作装置60は、植付け駆動ケース11から横外側に突設した操作部カバー62、操作部カバー62の内部に設けた操作ピン61、操作ピン61の端部と操作部カバー62の開口蓋部63との間に配置して操作部カバー62の内部に設けたスプリング64、操作ピン61に操作ケーブル65を介して連動されたクラッチ操作具としてのクラッチレバー66を備えて構成してある。図1に示すように、クラッチレバー66は、苗載せ台7の上端部の裏面側に設けた操作盤67に揺動自在に配備してある。
【0052】
図6及び図8に示すように、操作部カバー62は、植え付け駆動ケース11から水平方向又はほぼ水平方向に延出している。操作部カバー62は、鋳造製の植え付け駆動ケース11に一体形成されている。図3に示すように、操作部カバー62は、操作部カバー62から延出する操作ケーブル65と苗植付け機構6の干渉を回避しやすいように操作部カバー62の突出端が、操作ケーブル65の突出する部位62aで植付け爪先端の回動軌跡Tより機体前方側に位置するよう配備してある。操作ピン61は、頭部側が植付け駆動ケース11の壁を挿通する状態で操作部カバー62の基部62cに摺動自在に支持されている。開口蓋部63は、操作部カバー62の延出端部に一体形成した支持部62bに連結ボルト80によって止着されたストッパー81による係止によって外れ止めされている。操作ケーブル65は、操作部カバー62の内部でクラッチ側端部がジョイント82を介して操作ピン61に連結されたインナーケーブル65a、及びインナーケーブル65aが摺動自在に内嵌しているアウターケーブル65bを備えて構成してある。アウターケーブル65bのクラッチ側端部は、開口蓋部63に設けたホルダー部63aに支持されている。
【0053】
従って、クラッチレバー66を入り位置[入]に揺動操作することにより、インナーケーブル65aが引っ張り操作されて操作ピン61をスプリング64に抗して引き操作し、操作ピン61の頭部61aが植付け駆動ケース外方側に移動して従動側クラッチ体52におけるカムプレート部52cに対する支持作用を解除し、従動側クラッチ体52がスプリング54によって入り位置に切り換え操作されて端数条植えクラッチ50が入り状態になる。
【0054】
クラッチレバー66を切り位置[切]に揺動操作することにより、インナーケーブル65aが緩め操作され、操作ピン61がスプリング64の付勢力によって植付け駆動ケース内方側に移動操作されて操作ピン61の頭部61aがカムプレート部52cの切り凹部に合致し、操作ピン61がカムプレート部52cをスプリング54に抗して押圧操作して従動側クラッチ体52を切り位置に切り換え操作して端数条植えクラッチ50が切り状態になる。このとき、苗植付け機構6の一対の植付け爪6d,6dが圃場面より上方に位置する回転位相に従動側クラッチ体52が位置することにより、操作ピン61の頭部61aがカムプレート部52cの切り凹部に合致してカムプレート部52cを切り側に押圧操作するように構成してあり、端数条植えクラッチ50は、一対の植付け爪6d,6dが圃場面より上方に位置する回転位相の位置で苗植付け機構6を停止させる定位置停止機能を備えている。
【0055】
〔別実施形態〕
図9は、別の実施構造を備える操作部カバー62を示す横断平面図である。図10は、別の実施構造を備える操作部カバー62を示す縦断後面図である。これらの図に示すように、別の実施構造を備える操作部カバー62は、植え付け駆動ケース11から横外側向きに、かつ上向き傾斜で突設してある。操作部カバー62の開口蓋部63を、操作部カバー62の開口の両側に設けた支持部62bに連結ボルト80によって止着するよう構成してある。
【0056】
〔別実施例
【0057】
(1) 上記した実施例では、操作部カバー62が端数条植えクラッチ50を収容するケースから横外側に水平向き及び上向き傾斜で突設した例を示したが、ケースから横外側に下向き傾斜で突設して実施してもよい。
【0058】
(2) 上記した実施例では、端数条植えクラッチ50を収容するケースから横外側に突設した操作部カバー62を採用した例を示した、ケースから機体上方向きあるいは機体下方向きに突設した操作部カバーを採用して実施してもよい。
【0059】
(3) 上記した実施例では、操作ピン61に連結する連動機構として操作ケーブル65を採用した例を示したが、ロッドやリンクなどを採用して実施してもよい。
【0060】
【0061】
(4) 上記した実施例では、植付け駆動ケース11の両横側に苗植付け機構6を設けた例を示したが、植付け駆動ケース11の片側にだけ苗植付け機構6を設けて実施してもよ
い。
【0062】
(5) 上記した実施例では、回転ロータ6aを備える苗植付け機構6を設けた例を示したが、駆動揺動自在な植付けアーム及び一つの植付け爪を備える苗植付け機構を設けて実施してもよい。
【0063】
(6) 上記した実施例では、8つの苗植付け機構6を設けた例を示したが、6つや4つなど8つ以外の数の苗植付け機構を設けて実施してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、乗用型に構成された田植機の他、歩行型に構成された田植機にも利用できる。
【符号の説明】
【0065】
6 苗植付け機構
11 植付け駆動ケース
42 伝動軸
50 端数条植えクラッチ
61 操作ピン
62 操作部カバー
62a 突出端
64 スプリング
65 連動機構
65a インナーケーブル
65b アウターケーブル
66 クラッチ操作具
T 回動軌跡
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10