特許第5655097号(P5655097)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5655097エネルギーを回収する電気式カム軸位相調整装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655097
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】エネルギーを回収する電気式カム軸位相調整装置
(51)【国際特許分類】
   F01L 1/352 20060101AFI20141218BHJP
   F02D 13/02 20060101ALI20141218BHJP
   F02D 29/06 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   F01L1/352
   F02D13/02 G
   F02D29/06 N
【請求項の数】6
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-554257(P2012-554257)
(86)(22)【出願日】2011年1月21日
(65)【公表番号】特表2013-529273(P2013-529273A)
(43)【公表日】2013年7月18日
(86)【国際出願番号】EP2011050861
(87)【国際公開番号】WO2011104051
(87)【国際公開日】20110901
【審査請求日】2013年9月18日
(31)【優先権主張番号】10154551.5
(32)【優先日】2010年2月24日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】599023978
【氏名又は名称】デルファイ・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100092967
【弁理士】
【氏名又は名称】星野 修
(74)【代理人】
【識別番号】100137039
【弁理士】
【氏名又は名称】田上 靖子
(72)【発明者】
【氏名】ストルツ−ドゥーシェ,セバスティヤン
(72)【発明者】
【氏名】マフリカ,セバスティヤン
【審査官】 橋本 敏行
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−198376(JP,A)
【文献】 特表2007−527968(JP,A)
【文献】 特表2006−503213(JP,A)
【文献】 特開平03−095765(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01L1/34−1/356
9/00−9/04
13/00−13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内燃機関におけるクランク軸(18)とカム軸(22)との間の位相関係を制御可能に変化させるための電気式カム軸位相調整装置(10)であって、前記クランク軸(18)に接続された駆動軸と、前記カム軸(22)に接続された出力軸と、電気機械(14)の制御軸(45)に接続された調整軸とを含む3軸の動力伝達装置として形成された調整歯車駆動装置(12)を備え、前記電気機械(14)が、位相保持モード中回転している前記制御軸(45)の速度を増減することにより、前記クランク軸(18)に対する前記カム軸(22)の位相調整を可能にする、装置において、
電気エネルギーを生成するために制動トルクが前記制御軸(45)に印加される、エネルギー回収モードが設けられるように前記調整歯車駆動装置(12)が構成され、前記制動トルクが、位相保持モード中に前記制御軸(45)に印加され、前記制動トルクが、前記制御軸(45)上のカム軸摩擦トルクを相殺することを特徴とする、装置。
【請求項2】
機械的なカム軸の摩擦によるトルク損失の回収による電気エネルギーの生成を実現するために前記制御軸(45)が前記カム軸(22)と逆の方向に回転するように、前記調整歯車駆動装置(12)が構成される、請求項1に記載の装置(10)。
【請求項3】
前記調整歯車駆動装置(12)が、サーキュラスプライン(28)と、ダイナミックスプライン(30)と、前記サーキュラスプライン(28)および前記ダイナミックスプライン(30)の内側に配置されたフレクスプライン(32)と、前記フレクスプライン(32)の内側に配置されたウェーブジェネレータ(34)とを備える調和歯車駆動装置であり、前記電気機械(14)が、前記ウェーブジェネレータ(34)に接続されている、請求項1または2に記載の装置(10)。
【請求項4】
少なくとも1つのばね(24)が、前記サーキュラスプライン(28)および前記ダイナミックスプライン(30)のうちの1つを押圧して前記カム軸位相調整装置(10)を初期回転位置まで移動させるために、前記サーキュラスプライン(28)および前記ダイナミックスプライン(30)に操作的に接続される、請求項3に記載の装置(10)。
【請求項5】
前記電気機械(14)が、DC軸方向磁束モータである、請求項1から4のいずれか一項に記載の装置(10)。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか一項に記載の電気式カム軸位相調整装置(10)の制御方法であって、
カム軸(22)を位相調整するために制御軸速度を増減するステップと、
クランク軸(18)とカム軸(22)との間の位相を保つために制御軸速度を維持するステップと、を含む方法において、
電気エネルギーを生成するために制御軸(45)に制動トルクを印加することによりエネルギー損失を回収するステップをさらに備え、前記回収するステップは、カム軸の摩擦トルクを相殺するために位相保持中に実施される、制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンのクランク軸とカム軸との間の位相関係を変化させることによって内燃機関における燃焼弁のタイミングを変化させるためのカム軸位相調整装置に関し、より詳細には、位相関係を変化させるために調整歯車駆動装置が電気式モータ(eモータ)によって制御され、また本明細書で「電気式可変カム位相調整装置」(eVCP)と呼ばれる、無給油カム軸位相調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関における燃焼弁のタイミングを変化させるためのカム軸位相調整装置(「カム位相調整装置」)がよく知られている。スプロケット要素として一般に知られている第1の要素は、エンジンのクランク軸からの鎖、ベルト、または歯車装置によって駆動される。カム軸プレートとして一般に知られている第2の要素は、エンジンのカム軸の端部に取り付けられる。
【0003】
そのようなカム位相調整装置が電気的に作動される場合、遊星歯車または調和駆動機構などの、3軸の機構が設けられる。カム位相調整装置とともに使用するのに適した3軸の動力伝達装置の例には、太陽歯車、遊星キャリヤに取り付けられた遊星歯車、および内歯車を有する遊星歯車システム、またはウェーブジェネレータ、フレクスプライン(flex-spline)、およびサーキュラスプラインを有する調和駆動システムが含まれる。
【0004】
本明細書に参照により援用される米国特許第7,421,990B2号は、カム軸および位相調整装置の共通軸に沿って互いに向かい合いかつ共通の可撓性スプライン(フレクスプライン)によって接続された第1および第2の調和歯車駆動装置を備える、eVCPを開示している。第1の、すなわち入力の調和駆動装置は、エンジンスプロケットによって駆動され、第2の、すなわち出力の調和駆動装置は、エンジンカム軸に接続される。
【0005】
自動車産業における現在の傾向は、自動車両のエネルギー消費を最適化することである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の主たる目的は、エネルギー消費を最適化するためのeVCPを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内燃機関におけるクランク軸とカム軸との間の位相関係を制御可能に変化させるための電気式カム軸位相調整装置であって、クランク軸に接続された駆動軸と、カム軸に接続された出力軸と、電気機械の制御軸に接続された調整軸とを含む3軸の動力伝達装置として形成された調整歯車駆動装置を備え、電気機械が、位相保持モード中回転している制御軸の制御軸速度を増減することにより、クランク軸に対するカム軸の位相調整を可能にする、装置において、電気エネルギーを生成するために制動トルクが制御軸に印加される、エネルギー回収モードが設けられるように調整歯車駆動装置が構成され、前記制動トルクが位相保持モード中に制御軸に印加され、前記制動トルクが制御軸上のカム軸摩擦トルクを相殺することを特徴とする、電気式カム軸位相調整装置を提供する。
【0008】
本発明により、カム軸上の摩擦などによるトルク損失を、調整歯車駆動装置を通じて回収することができる。したがって、被駆動機構(カム軸)内の摩擦によって制御軸上の力行トルクが生成されて、制御軸と同じ方向に回転すると、電気機械は、電気式モータモードから発電機モードに切り替わる。この形態において、電気エネルギーを回収することができる。
【0009】
本発明の有利な特徴によれば、
− 調整歯車駆動装置は、機械的なカム軸の摩擦によるトルク損失の回収による電気エネルギーの生成を実現するために、制御軸がカム軸と逆の方向に回転するように構成される。
− 調整歯車駆動装置は、サーキュラスプラインと、ダイナミックスプラインと、前記サーキュラスプラインおよび前記ダイナミックスプラインの内側に配置されたフレクスプラインと、前記フレクスプラインの内側に配置されたウェーブジェネレータとを備える調和歯車駆動装置であり、前記電気機械が、前記ウェーブジェネレータに接続される。
− 少なくとも1つのばねが、前記サーキュラスプラインおよび前記ダイナミックスプラインのうちの一つを押圧してカム軸位相調整装置を初期回転位置まで移動させるように、前記サーキュラスプラインおよび前記ダイナミックスプラインに操作的に接続される。
− 前記電気機械が、DC軸方向磁束モータである。
【0010】
調和歯車駆動装置が使用される場合、エネルギー損失が回収されるカム位相調整装置の機能モードを選択するために、ダイナミックスプラインに関するサーキュラスプラインの配置を替えることが容易に可能であることに留意すべきである。
【0011】
本発明はまた、上述の電気式カム軸位相調整装置の制御方法であって、
− カム軸を位相調整するために、制御軸速度を増減するステップと、
− クランク軸とカム軸との間の位相を保持するために、制御軸速度を維持するステップと、を含む方法において、
電気エネルギーを生成するために制御軸に制動トルクを印加することによりエネルギー損失を回収するステップをさらに備え、回収するステップは、カム軸の摩擦トルクを相殺するために位相保持中に実施される、制御方法を提案する。
【0012】
次に、例として添付図面を参照しながら、本発明を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明によるeVCPの組立分解等角図である。
図2図1に示したeVCPの横断立面図である。
図3】明瞭性のためにeモータ、カップリング、およびバイアスばねを省略した、図1および図2に示したeVCPの断面斜視図である。
図4】バイアスばねの内側爪部を係合するための戻り止めを示した、eVCPハブの斜視図である。
図5】本明細書で基本スプライン配置と呼ばれるものであって、ダイナミックスプラインがカム軸を駆動し、サーキュラスプラインがスプロケットによって駆動される、eVCPにおける第1の歯車装置関係を示す概略図である。
図6】本明細書で逆スプライン配置と呼ばれるものであって、サーキュラスプラインがカム軸を駆動し、ダイナミックスプラインがスプロケットによって駆動される、eVCPにおける第2の歯車装置関係を示す概略図である。
図7】調和歯車装置が本発明による機械式バイアスばねを備え、eモータが電磁ブレーキを備える場合の、例示的な基本eVCPおよび逆eVCPに対する進み時間および遅れ時間を示す第1の表である。
図8】調和歯車装置が機械式バイアスばねを備え、eモータが電磁ブレーキを有さない場合の、例示的な基本eVCPおよび逆eVCPに対する、進み時間および遅れ時間を示す第2の表である。
図9】基本スプライン配置のための幾つかの構成部品の回転方向を示した、本発明のeVCPの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本明細書に提示された各例示は、本発明の現在好ましい実施形態を示す。かかる例示は、いかなる方法によっても本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
図1から図4を参照すると、本発明によるeVCP10は、好ましくは平坦な調和歯車駆動装置12である調整歯車駆動装置12と、調和歯車駆動装置12に操作的に接続された好ましくはDC電動機(eモータ)である電気機械14と、調和歯車駆動装置12に操作的に接続されかつエンジン18のクランク軸によって駆動される入力スプロケット16と、調和歯車駆動装置12に取り付けられかつエンジンカム軸22の端部に取付け可能である出力ハブ20と、出力ハブ20と入力スプロケット16との間に操作的に配置されたバイアスばね24と、を備える。ばね24は、ばねカセット26の構成部品とすることができる。eモータ14は、軸方向磁束DCモータとすることができる。
【0015】
調和歯車駆動装置12は、下記のようにサーキュラスプラインまたはダイナミックスプラインのどちらであってもよい外側の第1のスプライン28と、第1のスプライン28の逆のスプライン(ダイナミックまたはサーキュラ)でありかつ第1のスプライン28に隣接して同軸上に配置された外側の第2のスプライン30と、第1および第2のスプライン28、30の両方の内方に放射状に配置され、かつ第1および第2のスプライン28、30の両方の内方に延在する歯に係合するように配置された外方に延在する歯を有する、フレクスプライン32と、フレクスプライン32の内方に放射状に配置され、かつフレクスプライン32と係合する、ウェーブジェネレータ34と、を備える。
【0016】
フレクスプライン32は、サーキュラスプラインよりわずかに小さいピッチ円直径上の外歯を有する非剛体リングである。フレクスプライン32は、ウェーブジェネレータ34に嵌合され、かつウェーブジェネレータ34によって弾性的に撓められる。
【0017】
サーキュラスプラインは、ウェーブジェネレータ34の長軸と交差してフレクスプライン32の歯と係合する内歯を有する剛体リングである。
ダイナミックスプラインは、フレクスプライン32と同数の内歯を有する剛体リングである。ダイナミックスプラインは、フレクスプライン32とともに回転し、出力部材として機能する。ダイナミックスプラインであるかそれともサーキュラスプラインであるかは、一方のスプラインを他方と区別するための、スプラインの外径にある面取り隅部33によって識別することができる。
【0018】
従来技術で開示されているように、ウェーブジェネレータ34は楕円形軸受を支持する楕円形鋼円盤の組立体であり、その組み合わせがウェーブジェネレータ・プラグを画定する。可撓性の軸受保持器が、楕円形軸受を包囲しかつフレクスプライン32と係合する。ウェーブジェネレータ・プラグの回転が、フレクスプライン32内に回転波動を生成させる(実際には、2つの波動が180°離れて生成され、円盤の長楕円軸の両端に対応する)。
【0019】
調和歯車駆動装置12の組立て中、フレクスプラインの歯は、ウェーブジェネレータの長楕円軸の先およびその近傍で、サーキュラスプラインの歯およびダイナミックスプラインの歯の両方と係合する。ダイナミックスプラインがフレクスプラインの歯と同数の歯を有するので、ウェーブジェネレータの回転は、それらの間に1回転当たりの正味回転をもたらさない。しかし、サーキュラスプラインは、ダイナミックスプラインが有する歯よりもわずかに少ない歯を有し、したがって、ウェーブジェネレータ・プラグの回転中、サーキュラスプラインは、ダイナミックスプラインに先行して回転し、それらの間の歯車比を規定する(例えば、50:1の歯車比は、ダイナミックスプラインに先行するサーキュラスプラインの1回転が、ウェーブジェネレータの50回転に相当することを意味する)。したがって、調和歯車駆動装置12は、高比率の歯車伝動装置である。すなわち、第1のスプライン28と第2のスプライン30との間の角度位相関係は、ウェーブジェネレータ34の1回転ごとに、2%ずつ変化する。
【0020】
当然ながら、当業者には明らかなように、サーキュラスプラインは、ダイナミックスプラインが有するよりもわずかに多くの歯を有していてもよく、この場合、下記の回転関係は逆になる。
【0021】
図1および図2をなおも参照すると、スプロケット16は、ボルト38によって第1のスプライン28に固定された全体的にカップ形状のスプロケットハウジング36に支持される。カップリングアダプタ40は、ウェーブジェネレータ34に取り付けられ、スプロケットハウジング36を貫通して延在し、スプロケットハウジング36内に取り付けられたベアリング42によって支持される。eモータ14のモータ軸または制御軸45に取り付けられ、ピン46によってそれにピン止めされたカップリング44は、カップリングアダプタ40と係合し、第1のスプライン28と第2のスプライン30との間の位相関係を所望に応じて変えるために、ウェーブジェネレータ34がeモータ14によって回転的に駆動されることを可能にする。
【0022】
ハブ20は、ボルト48によって第2のスプライン30に固定され、またハブ20内の軸方向穴51を貫通して延在する中央通しボルト50によりカム軸22に固着されてもよく、段付きスラスト座金52、およびハブ20に凹設されたフィルタ54を捕捉する。eVCPにおいて、入力ハブと出力ハブとの間のラジアル方向の振れを制限することが必要である。従来技術では、このことは、複数のころ軸受を設けて入力ハブと出力ハブとの間の同軸性を維持することによって成されてきた。図2を参照すると、本発明の一態様では、ラジアル振れは、ハウジング36(入力ハブ)と出力ハブ20との間の単一のジャーナル軸受接触面35によって制限され、したがって、複数のころ軸受を有する従来技術のeVCPよりも、eVCP10の全体的な軸方向長さおよびその製造費用が減少する。
【0023】
ばねカセット26は、ばね24の両側に配置された底板56および天板58を備える。底板と天板58との間に延在する肩付きばねスペーサ60は、ばね24のための作動空間をもたらし、またばね24上の外側爪部62のための留め具を提供する。ばねスペーサ60は、天板58を貫通してナット64によって固着される。カセット26をハウジング36に固着するために、第1および第2の保持板66が使用されてもよい。例えば、第1および第2の保持板66は、スタッド68によって天板58上に配置されかつボルト70によって底板56に固着されてもよい。保持板66は、スプロケットハウジング36に形成された環状の溝またはスロットに係合するように、天板58の縁部を越えて放射状に延在していてもよく、したがってばね24の内側爪部72が、ハブ20内に形成された、2つの交互の戻り止め74のうちの1つと係合するように、カセット26を、ハブ20上の所定の位置に軸方向に配置および固定する。保持板66は、カセット26をeVCP10に取り付けるための1つの構成のみ例示的に示されているが、当然ながら、他のすべての代替的な取付け構成が、本発明に完全に含まれる。
【0024】
eモータが誤動作した際には、ばね24は、エンジン18が始動または稼働することになる第2のスプライン30の回転位置までeモータ14の支援なしに調和歯車駆動装置12を逆に駆動させるために付勢され、この位置は、力の及ぶ範囲(the range of authority)の最端位置のうちの1つの位置でもよく、または、本発明の一態様においては、位相調整装置の力の及ぶ回転範囲の最端位置の中間でもよい。例えば、ばね24が調和歯車駆動装置12を付勢する移動回転範囲は、位相調整装置の力の及ぶ範囲の端部停止位置より多少短く制限されてもよい。そのような構成は、アイドリングまたは再始動のための中間待機位置を必要とするエンジンに有用であろう。
【0025】
次に図5および図6を参照すると、装置12のような平坦な調和歯車駆動装置の利点は、援用された参照に開示されるようなカップ型の装置とは対照的に、装置12を、スプロケットハウジング36内に2つの配置のどちらにでも設置することができることである。基本スプライン配置(図5)では、第1の、すなわち入力スプライン28は、サーキュラスプラインであって、スプロケットハウジング36に接続され、第2のスプライン30は、ダイナミックスプラインであって、ハブ20に接続される。逆スプライン配置(図6)では、第1のスプライン28は、ダイナミックスプラインであって、スプロケットハウジング36に接続され、第2のスプライン30は、サーキュラスプラインであって、ハブ20に接続される。
【0026】
eVCP10における調和歯車駆動装置のフェイルセーフ動作は、2つの配置で同一ではない。したがって、所望の配置は、エンジンが停止されてeモータ14の電源が切られるとき、またはeモータが不具合(故意ではない電源の入り切り)を起こしたときのフェイルセーフ応答時に、好ましい初期位置まで戻すためのeVCP10の応答時間を最短に抑えるために、設置中に選択することができる。両方の配置において、第2のスプライン30である出力歯車は、第1のスプライン28に対して回転する。サーキュラスプラインが第1のスプライン28であり、ダイナミックスプラインが第2のスプライン30である場合、図5(基本配置)に示されるように、ダイナミックスプラインは、ウェーブジェネレータの入力方向と逆の方向に回転する。しかし、ダイナミックスプラインが第1のスプライン28であり、サーキュラスプラインが第2のスプライン30である場合、図2および図6(逆配置)に示すように、サーキュラスプラインは、出力歯車であり、ウェーブジェネレータの入力方向と同じ方向に回転する。
【0027】
図7を参照すると、例示的なeVCPが、バイアスばね24と、さらにeモータ14上のフェイルセーフ電磁ブレーキ(図示しないが当技術分野で知られている)との両方を備える場合、図5に示される基本スプライン配置が、電源喪失時のフェイルセーフ進み時間が最短になるという理由から好ましいことが分かる。
【0028】
図8を参照すると、例示的なeVCPが、バイアスばね24を備えるが、eモータ14上のフェイルセーフ電磁ブレーキを備えない場合、図6に示される逆スプライン配置が、電源喪失時のフェイルセーフ進み時間が最短になるという理由から好ましいことが分かる。
【0029】
本発明によれば、調和歯車駆動装置12は、エネルギー回収モードが設けられるように構成され、このモードでは、電気エネルギーを生成するために制動トルクがeモータ14の制御軸45に印加される。
【0030】
有利には、制動トルクは、位相保持モード中に制御軸45に印加され、前記制動トルクは、制御軸45上のカム軸の摩擦トルクを相殺する。
好ましくは、調和歯車駆動装置12は、機械的なカム軸の摩擦によるトルク損失の回収による電気エネルギー生成を実現するために、制御軸45がカム軸22と逆の方向に回転するように構成される。これは、図9と関連して説明される図5の基本スプライン配置に関する事例である。
【0031】
基本スプライン配置では、カム軸の位置を一定に保つ(位相調整しない)ために、制御軸速度をカム軸速度に同期させることにより、入力軸速度すなわち制御軸速度と、出力軸速度すなわちカム軸速度とを等しくする必要がある。カム軸22の機械的摩擦のため、たとえスプロケット16がカム軸22をF1の方向(図9で時計方向)に駆動させていても、F2の方向(反時計方向)に負のトルクが生じる。この負のトルクは、制御軸45の回転速度を上げる傾向がある。制御軸45の回転を制動することにより、前記負のトルクの逆方向F3にトルクが生じ、電気機械14を通じて電気エネルギーが生成される。
【0032】
本発明は様々な特定の実施形態を参照して説明されたが、説明された本発明の概念の精神および範囲内で多数の変更がなされうることを理解されたい。より詳細には、フェイルセーフ構成は、省略されてもよく、または図に示された実施形態のものとは異なって設計されてもよい。さらに、3軸の伝動装置は、調和駆動システムの代わりに遊星歯車システムを備えてもよい。したがって、本発明は、説明された実施形態に限定されるものではなく、以下の特許請求の範囲の用語によって定義される全ての範囲を含む。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9