(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655109
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】映像作成システムおよび映像作成プログラム
(51)【国際特許分類】
G06T 13/80 20110101AFI20141218BHJP
H04N 21/854 20110101ALI20141218BHJP
H04N 5/765 20060101ALI20141218BHJP
H04N 5/91 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
G06T13/80 B
H04N21/854
H04N5/91 L
H04N5/91 N
【請求項の数】7
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2013-93598(P2013-93598)
(22)【出願日】2013年4月26日
(62)【分割の表示】特願2009-37457(P2009-37457)の分割
【原出願日】2009年2月20日
(65)【公開番号】特開2013-191222(P2013-191222A)
(43)【公開日】2013年9月26日
【審査請求日】2013年4月26日
(31)【優先権主張番号】61/030,649
(32)【優先日】2008年2月22日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】12/388,598
(32)【優先日】2009年2月19日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】308033283
【氏名又は名称】株式会社スクウェア・エニックス
(74)【代理人】
【識別番号】100114720
【弁理士】
【氏名又は名称】須藤 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100128749
【弁理士】
【氏名又は名称】海田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】村田 琢
【審査官】
真木 健彦
(56)【参考文献】
【文献】
特開2002−300523(JP,A)
【文献】
特開2005−078584(JP,A)
【文献】
国際公開第2006/096713(WO,A1)
【文献】
特開2006−339878(JP,A)
【文献】
国際公開第2007/005316(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G06T 13/80
G06T 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の映像構成データを統合することで一つの映像作品を完成させる映像作成システムであって、
異なる種類のデータを含む複数の映像構成データを作成および/又は編集する複数種類の個別編集ツールと、
作成および/又は編集された新たな映像構成データを取得する度に当該新たな映像構成データを含む複数の映像構成データを統合することで、継続して一つの最新の映像データを作成するサーバと、
前記サーバから取得した前記映像データを所定のマシンプラットフォーム上で表示するターゲット表示手段と、
を備え、
前記複数種類の個別編集ツールは、各個別編集ツール上で継続して稼働するデータ送信手段を備えており、当該データ送信手段は、前記映像構成データが作成および/又は編集される都度、前記サーバに対して作成および/又は編集された新たな映像構成データを送信し、
前記サーバは、所定の単一フォーマットで映像データを保存しておき、
前記ターゲット表示手段は、ランタイムが設けられた複数種類の再生装置を有し、
前記複数種類の再生装置は、前記ランタイムを用いて前記所定の単一フォーマットで統合された映像データを共用する
ことを特徴とする映像作成システム。
【請求項2】
請求項1に記載の映像作成システムにおいて、
前記複数種類の個別編集ツールには、
オブジェクトの作成および/又は編集を行うオブジェクト作成手段と、
前記オブジェクトのモーションを作成および/又は編集するモーション作成手段と、
作成された前記オブジェクトおよび前記モーションの画像を編集する画像編集手段と、
作成された前記オブジェクトおよび前記モーションを表示出力する表示出力手段と、
作成された前記オブジェクトの座標位置を定義編集する位置編集手段と、
演出効果画像を作成するエフェクト編集手段と、
効果音を作成するサウンド編集手段と、
前記オブジェクト、モーション、編集画像、座標位置、演出効果画像、効果音を統合して映像シーンを表示出力するシーン編集手段と、
が含まれることを特徴とする映像作成システム。
【請求項3】
請求項1に記載の映像作成システムにおいて、
前記サーバは、前記複数種類の個別編集ツールおよび前記ターゲット表示手段と、当該サーバとの間をネットワーク接続する接続手段を備えていることを特徴とする映像作成システム。
【請求項4】
請求項1又は3に記載の映像作成システムにおいて、
前記サーバは、前記複数種類の個別編集ツールから送信されてくる映像構成データを管理するための映像構成データ管理手段を備えており、
前記映像構成データ管理手段は、
前記複数種類の個別編集ツールから送信されてくる映像構成データを前記サーバが備える記憶装置に一時保存しておく映像構成データ保存手段と、
前記映像構成データ保存手段に保存されている複数種類の映像構成データを読み出してこれらを所定の単一フォーマットで統合処理するデータ統合手段と、
を有することを特徴とする映像作成システム。
【請求項5】
請求項1に記載の映像作成システムにおいて、
前記ターゲット表示手段は複数備えられており、これらターゲット表示手段のプラットフォームは互いに異なる種類のものであることを特徴とする映像作成システム。
【請求項6】
請求項2に記載の映像作成システムにおいて、
前記各手段は、ネットワークにより接続された、それぞれ別個のコンピュータにより構成されていることを特徴とする映像作成システム。
【請求項7】
複数のコンピュータを組み合わせて構成される映像作成システムを動作させることで、複数の映像構成データを統合して一つの映像作品を完成させる映像作成プログラムであって、
前記映像作成システムは、
異なる種類のデータを含む複数の映像構成データを作成および/又は編集する複数種類の個別編集ツールと、
作成および/又は編集された前記複数の映像構成データを取得し、これらを統合することで一つの映像データを作成するサーバと、
ランタイムが設けられた複数種類の再生装置を有し、前記サーバから取得した前記映像データを所定のマシンプラットフォーム上で表示するターゲット表示手段と、
を備え、さらに、
前記複数種類の個別編集ツールは、各個別編集ツール上で継続して稼働するデータ送信手段を備えており、
前記データ送信手段に、前記映像構成データが作成および/又は編集される都度、前記サーバに対して作成および/又は編集された新たな映像構成データを送信させ、
前記サーバに、前記新たな映像構成データを取得する度に、当該新たな映像構成データを含む複数の映像構成データを統合させることで継続して最新の映像データを作成させ、
前記サーバに、所定の単一フォーマットで映像データを保存させ、
前記複数種類の再生装置に、前記ランタイムを用いて前記所定の単一フォーマットで統合された映像データを共用させる
ことを特徴とする映像作成プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の映像構成データを統合することで一つの映像作品を完成させる映像作成システムおよび映像作成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
三次元CG(Computer Graphics)等によるビデオゲームやアニメーションは、キャラクタデザイン、モーションデザイン、エフェクト制作、レイアウト設計、サウンドデザイン、シーン編集などの工程で、膨大な人数のデザイナーが共同作業を行うことによって制作されている。かかるビデオゲームやアニメーションの制作は、作業の規模が非常に大きいために全体を把握することが難しく、その結果、作業の非効率化、開発作業相互間のバランス調整の困難化などの問題が生じ易い。特に、映像作品の制作においては、最終結果としての見え方を確認しつつ個別の作業を進めなければならないという特有の課題を抱えており、これらを解決できる新たなシステムが必要とされていた。
【0003】
なお、大規模なソフトウェア開発の際に利用できる従来の管理システムとしては、下記特許文献1に開示の開発管理方式等が知られている。
【0004】
【特許文献1】特開平7−306778号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に代表されるような従来の管理システムには、上述した映像作品制作に特有の問題を解決することができるものはなく、大規模なソフトウェア開発の現場においては、開発作業の効率化を阻む要因となっていた。
【0006】
本発明は、上述した課題の存在に鑑みて成されたものであって、その目的は、映像作品の大規模開発を行う場合に、開発作業を効率的に行うことができ、さらに開発作業相互間のバランス調整を容易に行うことができる新たなシステムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る映像作成システムは、複数の映像構成データを統合することで一つの映像作品を完成させる映像作成システムであって、前記複数の映像構成データを作成および/又は編集する複数の個別編集ツールと、作成および/又は編集された新たな映像構成データを取得する度に当該新たな映像構成データを含む複数の映像構成データを統合することで、継続して一つの最新の映像データを作成するサーバと、前記サーバから取得した前記映像データを所定のマシンプラットフォーム上で表示するターゲット表示手段と、を備え、前記複数の個別編集ツールは、各個別編集ツール上で継続して稼働するデータ送信手段を備えており、当該データ送信手段は、前記映像構成データが作成および/又は編集される都度、前記サーバに対して作成および/又は編集された新たな映像構成データを送信することを特徴とする。
【0008】
本発明に係る映像作成プログラムは、複数のコンピュータを組み合わせて構成される映像作成システムを動作させることで、複数の映像構成データを統合して一つの映像作品を完成させる映像作成プログラムであって、前記映像作成システムは、前記複数の映像構成データを作成および/又は編集する複数の個別編集ツールと、作成および/又は編集された前記複数の映像構成データを取得し、これらを統合することで一つの映像データを作成するサーバと、前記サーバから取得した前記映像データを所定のマシンプラットフォーム上で表示するターゲット表示手段と、を備え、さらに、前記複数の個別編集ツールは、各個別編集ツール上で継続して稼働するデータ送信手段を備えており、前記データ送信手段に、前記映像構成データが作成および/又は編集される都度、前記サーバに対して作成および/又は編集された新たな映像構成データを送信させ、前記サーバに、前記新たな映像構成データを取得する度に、当該新たな映像構成データを含む複数の映像構成データを統合させることで継続して最新の映像データを作成させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明に係る映像作成システムは上記の構成を有しているので、映像作品の開発において、各開発者が最終結果としての映像の見え方を、ターゲット表示手段を介して確認しつつ、個別編集ツールにおいて個別の作業を進めることができるようになっている。これにより、映像作品の大規模開発においても、開発作業を効率的に行うことができ、さらに開発作業相互間のバランス調整を容易に行うことが可能となる。
【0010】
また、本発明に係る映像構成データ管理手段により、大人数で進められる開発作業での統合データが、ほぼリアルタイムに更新されるので、映像の出来具合をタイムラグなしに確認することが可能となる。これにより、開発ライン相互間の齟齬が生じ難くなる。
【0011】
またさらに、本発明では、ターゲット表示手段として複数種類の再生装置を備えるようにしたので、一本の開発スケジュール内で複数のプラットフォーム用の調整を並行して進めることが可能となり、マルチプラットフォーム用の映像開発を一本の開発スケジュールで行うことができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本実施形態に係る映像作成システムの全体構成を例示するブロック図である。
【
図2】本実施形態に係る映像作成システムの動作手順を例示するフローチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0014】
図1は、本実施形態に係る映像作成システムの全体構成を例示するブロック図である。本実施形態に係る映像作成システムは、1つの映像データ(アニメーションなど)の構成要素となる複数の映像構成データ(たとえば、モデルデータ、エフェクトデータ、シーン編集情報、位置編集情報、サウンドデータなど)をそれぞれ編集するための個別編集ツール22,23,24,25を複数有している。個別編集ツールの具体例として、本実施形態では、作成されたオブジェクト(映像に登場するアイテムなど)の座標位置を定義編集する位置編集手段22と、演出効果画像を作成するエフェクト編集手段23と、効果音を作成するサウンド編集手段24と、オブジェクト、モーション、編集画像、座標位置、演出効果画像、効果音を統合して映像シーンを表示出力するシーン編集手段25と、が示されている。
【0015】
また、モデルデータを編集する個別編集ツールとして、本実施形態では、オブジェクトの作成および/又は編集を行うオブジェクト作成手段11と、オブジェクトのモーションを作成および/又は編集するモーション作成手段12と、作成されたオブジェクトおよびモーションの画像を編集する画像編集手段13と、作成されたオブジェクトおよびモーションを表示出力する表示出力手段21と、が例示されている。これら個別編集ツール11,12,13,21,22,23,24,25が編集する映像構成データは、後述するサーバ40によって実施されるデータの統合という処理を経ることで、映像データとして構築されるものである。なお、データの統合とは、互いに異質な映像構成データを有機的に連携させる処理のことである。
【0016】
各個別編集ツール11〜25の具体的構成は、コンピュータ(1台でもよいし、
図1のブロック図で示される手段ごとにコンピュータを配置し、これら複数台のコンピュータを組み合わせることによって構成してもよい。)と、そのコンピュータ上で動作するアプリケーション等である。
【0017】
また、各個別編集ツール11〜25で映像構成データが作成又は編集された際には、編集途中の映像構成データは、常時ハードディスク等の記憶装置に一時保存(上書き保存)されることとなる。つまり、各個別編集ツール11〜25での映像構成データの編集は、編集途中の映像構成データがハードディスク等に常に一時保存(上書き保存)されながら行われることになるので、各個別編集ツール11〜25が有するハードディスク等の記憶装置には、常時最新版の映像構成データが存在することとなる。
【0018】
さらに、本実施形態に係る映像作成システムの特徴として、各個別編集ツール11〜25には、常時稼働するデータ送信手段27が設けられている。このデータ送信手段27は、監視・データ送信用プログラムからなる手段であって、各個別編集ツール11〜25が有するハードディスク等の記憶装置に対する映像構成データの一時保存動作を常に監視しており、一時保存が行われると、一時保存された映像構成データを後述するサーバ40に向けて送信するように構成されている。
【0019】
本実施形態に係る映像作成システムは、サーバ40を有している。サーバ40は、具体的構成としてはコンピュータであり、前述した複数の個別編集ツール11〜25および後述する再生装置としてのターゲット表示手段30と、当該サーバ40との間をネットワーク接続する設備(たとえば、LAN接続設備など)を備えている。
【0020】
また、本実施形態の特徴として、サーバ40は、映像構成データ管理手段41を有している。この映像構成データ管理手段41を具体的に説明すると、映像構成データ管理手段41は、各個別編集ツール11〜25から送信されてくる映像構成データをハードディスク等の記憶装置に一時保存(上書き保存)しておく映像構成データ保存手段42と、映像構成データ保存手段42に保存されている映像構成データを読み出してこれらを統合処理するデータ統合手段43(統合処理アプリケーション等からなる)と、統合されたデータをハードディスク等に一時保存(上書き保存)する統合データ保存手段44とを有している。
【0021】
かかる構成を有する映像構成データ管理手段41は、各個別編集ツール11〜25から映像構成データが送信されてくると、映像構成データ保存手段42がこれを一時保存する。ここで映像構成データには、モデルデータ、エフェクトデータ、シーン編集情報、位置編集情報、サウンドデータなどの複数種類が存在しているが、映像構成データ保存手段42によって行われる一時保存は、種類ごとに区別して保存されている。また、映像構成データは、全種類同時一斉に送信されるのではなく、通常は一種類ごとにバラバラに送信されてくるので、一時保存もそのつど一種類ずつ保存することとなる。ただし、稀な現象として、映像構成データが全く同一の時刻に送信されてくる場合も存在するが、そのような場合であっても、映像構成データ保存手段42では、同一時刻に送信されてきた複数の映像構成データを一時保存することが可能なように構成されている。
【0022】
一方、データ統合手段43は、常駐プログラムとして映像構成データの一時保存の有無を監視しており、一種類でも映像構成データの一時保存があれば、これら映像構成データのデータ統合を実行することとなる。すなわち、映像構成データ保存手段42に保存された全ての映像構成データを読み出して統合処理を行い、統合したデータを統合データ保存手段44に一時保存するのである。
【0023】
以上のようにしてサーバ40内に映像データが完成するが、本実施形態に係る映像作成システムは、さらに、ターゲット表示手段30を有しており、完成した映像データを再生することができるようになっている。
【0024】
ターゲット表示手段30は、具体的構成として、複数種類の再生装置と表示装置とを有している。各再生装置の具体的例は、ゲーム機としてのコンピュータである。再生装置の種類とは、ゲーム機の種類を意味し、ゲーム機の種類(Playstation3(登録商標), XBOX360(登録商標), Wii(登録商標)など)とはマシンアーキテクチャやオペレーティングシステム等により実現されるアプリケーションプログラムを実行するために提供されるプラットフォームの種類を意味する。
【0025】
なお、本実施形態に係るターゲット表示手段30においては、各再生装置に適宜ランタイム等が設けられているため、所定の単一フォーマットで統合されたデータである統合データ(すなわち、映像データ)は、種類の異なる再生装置のいずれにおいても再生可能となっている。
【0026】
ターゲット表示手段30としての各再生装置は、再生指示を受けると再生処理を実行する。ここでの再生指示は、ゲーム機のコントローラ等を介して入力するコマンドでもよいし、各個別編集ツールからネットワーク(サーバ40)を介して当該再生装置に送信されるコマンドなどであってもよい。再生装置がこの再生指示を受けると、サーバ40を介して統合データ保存手段44に一時保存された映像データを読み出し、読み出した映像データを再生することとなる。再生した映像データは、上述した表示装置に表示させることができる。たとえば、表示装置がゲーム機に接続されたモニタ等である場合には、このモニタに映像データが表示されることとなる。
【0027】
なお、ターゲット表示手段30の取り得る別の構成として、表示装置を再生装置とは別個のコンピュータとして構成することも可能である。たとえば、この場合の表示装置は、映像編集等を行っている各開発者の席に設置されたパソコンとして構成することができる。このパソコンは、ネットワーク(サーバ40)を介して再生装置と接続されており、また、該パソコンには、ビューア手段(たとえば、遠隔操作のクライアントアプリケーション等)を備えることが好適である。各開発者が、パソコンのキーボード等より再生指示のコマンドを入力すると、ビューア手段がこれを受けて再生指示のコマンドが送信され、送信されたコマンドを受けた各再生装置は、上述した再生を行うこととなる。
【0028】
一方、再生装置には、前記ビューア手段にディスプレイ情報を提供する画像サービス手段(例えば遠隔操作のサーバアプリケーション等)を備えることができ、当該画像サービス手段は、再生装置におけるディスプレイ情報(具体的には、ビデオバッファメモリに単位時間毎にレンダリングされる画像データ)を前記コマンドの送信元であるパソコンに送信する。パソコンでは、送信されてくるディスプレイ情報をビューア手段が画面表示する。これによって、パソコンでは、再生装置で再生されるディスプレイ映像を当該パソコンのディスプレイで確認することができる。
【0029】
なお、再生装置は複数種類あることから、パソコンのディスプレイでの映像の表示は、再生装置ごとに個別のウインドウ表示とする構成を採用してもよい。あるいは、単一ウインドウとしてタブ等により切替表示するようにしてもよい。また別の方法として、再生指示のコマンドを再生装置の種類を指定して入力するようにしてもよい。再生装置の種類を指定した場合、指定された種類の再生装置においてのみ再生が行われることとなる。
【0030】
また、上記パソコンである表示装置のさらなる別構成として、個別編集ツールのコンピュータが当該パソコンを兼用するように構成してもよい。この場合、画像等の編集をしながら、同じディスプレイの画面内で再生結果を確認できるので好都合である。
【0031】
次に、本実施形態に係る映像作成システムの動作手順について、
図2を用いて説明を行う。ここで、
図2は、本実施形態に係る映像作成システムの動作手順を例示するフローチャートである。
【0032】
各個別編集ツール11〜25において映像構成データが作成又は編集されると(ステップS11)、各個別編集ツール11〜25を構成するコンピュータにインストールされた監視ソフトウェアによって編集作業の有無が確認され(ステップS12)、編集作業が行われたと判断された場合には、各個別編集ツール11〜25が備えるハードディスク等の記憶装置に対して作成又は編集された映像構成データが一時保存(上書き保存)されることとなる(ステップS13)。この一時保存(上書き保存)は、映像構成データの編集途中から実施されており、各個別編集ツール11〜25が有するハードディスク等の記憶装置には、常時最新版の映像構成データが存在するようになっている。
【0033】
また、各個別編集ツール11〜25を構成するコンピュータは、映像構成データが自己の記憶装置に一時保存(上書き保存)される状態をインストールされた監視ソフトウェアによって常時監視しており、映像構成データが一時保存(上書き保存)されたことを確認すると(ステップS14)、各個別編集ツール11〜25を構成するコンピュータが有するデータ送信手段27を動作させることで、この一時保存された映像構成データをサーバ40に向けて送信する(ステップS15)。
【0034】
各個別編集ツール11〜25から送られてくる映像構成データを取得したコンピュータであるサーバ40は、インストールされたソフトウェアによって映像構成データ保存手段42を動作させ、各個別編集ツール11〜25から送信されてくる映像構成データをサーバ40側の記憶装置に一時保存(上書き保存)する(ステップS16)。
【0035】
さらに、サーバ40は、統合処理アプリケーション等からなるデータ統合手段43を用いることによって映像構成データ保存手段42に保存されている映像構成データを読み出してこれらを統合処理し(ステップS17)、その後、これまたインストールされたソフトウェアによって統合データ保存手段44を動作させることで、統合された映像データを記憶装置に一時保存(上書き保存)する処理を実行する(ステップS18)。
【0036】
以上のようにしてサーバ40内に映像データが完成し、サーバ40が有するLAN接続設備などのネットワーク接続設備を利用することでターゲット表示手段30に対して統合された映像データが送信され(ステップS19)、これを受信したターゲット表示手段30では、常に最新版の映像データを再生することができるようになっている(ステップS20)。
【0037】
なお、各個別編集ツール11〜25での処理であるステップS11〜ステップS15については、並列時間的に処理を進めることができるようになっているので、本実施形態に係る映像作成システムは、大規模なソフトウェア開発の現場において好適に用いることができるように構成されている。
【0038】
以上、本実施形態に係る映像作成システムの全体構成および動作手順について説明を行った。特に、本実施形態に係る映像作成システムでは、映像構成データ管理手段41によって、大人数で進められる開発作業での統合データ(映像データ)が、個別編集ツール11〜25での個々の進捗に応じてほぼリアルタイムに更新されることとなる。従来行われていた通常の分散開発環境では、個々のPCでのモジュール作成作業を進捗に応じてリアルタイムで統合することができなかったが、映像作成システムが有する上記映像構成データ管理手段41により、開発作業相互間のバランス調整を容易に行うことが可能となっている。
【0039】
また、本実施形態に係る映像作成システムは、統合データ(映像データ)を所定のフォーマットで保存しておき、各種の再生装置ではランタイムを用いて当該所定のフォーマットのデータを共用する構成を採用している。通常は、最初に1つのプラットフォームに適合したソフトウェアの開発を行い、それが完成した後に他のプラットフォームへの変換移植を行うこととなるが、この移植作業では、プログラムの動作が適正かどうかが問題となり、細かい素材(デザインなど)を調整することはできなかった。特に、映像作品の場合、プラットフォームが異なると色彩やカメラ角度、解像度などが異なることから、細かい素材に関する問題を手当する必要が生じ、開発工程の後戻りが大きい。しかし、本実施形態に係る映像作成システムでは、全てのプラットフォーム共通のものを開発工程の初めから進めるようにしたので、開発工程の後戻りをすることなく映像作品を開発することが可能である。
【0040】
さらに、本実施形態に係る映像作成システムでは、複数種類の再生装置を同時に備えることが容易となっている。これは、統合データ(映像データ)を所定のフォーマットで保存しておき、各種の再生装置ではランタイムを用いて当該所定のフォーマットのデータを共用する構成にしたためである。かかる構成によれば、統合データのフォーマットをプラットフォームごとに複数作成する必要がないので、従来技術に比して簡単な構成となるという利点がある。
【0041】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
【0042】
たとえば、上述した本実施形態に係るターゲット表示手段30については、各再生装置とネットワーク(サーバ40)を介して接続されたデータ配信サーバを有するように構成することも可能である。この構成の場合、再生指示は、統合データ保存手段44が統合データ(映像データ)を一時保存する際に、当該統合データ保存手段44が各再生装置に向けて送信するようになる。つまり、統合データ(映像データ)が更新される度に、各再生装置では直ちにこのデータを再生開始することとなる。再生とともに前記画像サービス手段(たとえば、遠隔操作のサーバアプリケーション等)はこの再生画像をデータ配信サーバに送信し、再生画像を取得したデータ配信サーバでは、再生装置の種類ごとに、これら再生装置から送信されるディスプレイ情報(動画データ)を保存することとなる。また、データ配信サーバには、動画をストリーミング配信する配信手段(配信制御プログラムによる)を備えることができ、各パソコンからの指示によって前記ディスプレイ情報を配信することとなる。以上の構成によると、再生装置での再生処理は統合データの更新ごとに一回で済むので、マシン負荷を低減することができる。また、多数のパソコンから時間差のある指示があっても、データ配信サーバでのストリーミング配信により支障なくディスプレイ情報を配信できるので好都合である。
【0043】
また、本実施形態に係る映像作成システムでは、個別編集ツール11〜25での個々の進捗に応じてほぼリアルタイムに映像データが統合更新される構成を採用しているが、更新直前に保存されていた映像データについては、それを保管しておき、所望の際に当該映像データを復活させて利用できるような構成としても良いし、過去の映像データは常時破棄し、常に最新の映像データのみを保管するような構成としてもよい。
【0044】
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0045】
また、本発明に係る映像作成システムは、複数の映像構成データを統合することで一つの映像作品を完成させる映像作成システムであって、前記複数の映像構成データを作成および/又は編集する複数の個別編集ツールと、作成および/又は編集された前記複数の映像構成データを取得し、これらを統合することで一つの映像データを作成するサーバと、前記サーバから取得した前記映像データを所定のマシンプラットフォーム上で表示するターゲット表示手段と、を備え、前記複数の個別編集ツールは、各個別編集ツール上で継続して稼働するデータ送信手段を備えており、当該データ送信手段は、前記映像構成データが作成および/又は編集される都度、前記サーバに対して作成および/又は編集された新たな映像構成データを送信し、前記サーバは、前記新たな映像構成データを取得する度に、当該新たな映像構成データを含む複数の映像構成データを統合することで、継続して最新の映像データを作成することができる。
【0046】
本発明に係る映像作成システムにおいて、前記複数の個別編集ツールには、オブジェクトの作成および/又は編集を行うオブジェクト作成手段と、前記オブジェクトのモーションを作成および/又は編集するモーション作成手段と、作成された前記オブジェクトおよび前記モーションの画像を編集する画像編集手段と、作成された前記オブジェクトおよび前記モーションを表示出力する表示出力手段と、作成された前記オブジェクトの座標位置を定義編集する位置編集手段と、演出効果画像を作成するエフェクト編集手段と、効果音を作成するサウンド編集手段と、前記オブジェクト、モーション、編集画像、座標位置、演出効果画像、効果音を統合して映像シーンを表示出力するシーン編集手段と、を含むこととすることができる。
【0047】
また、本発明に係る映像作成システムにおいて、前記サーバは、前記複数の個別編集ツールおよび前記ターゲット表示手段と、当該サーバとの間をネットワーク接続する接続手段とを備えることができる。
【0048】
さらに、本発明に係る映像作成システムにおいて、前記サーバは、前記複数の個別編集ツールから送信されてくる映像構成データを管理するための映像構成データ管理手段を備えており、前記映像構成データ管理手段は、前記複数の個別編集ツールから送信されてくる映像構成データを前記サーバが備える記憶装置に一時保存しておく映像構成データ保存手段と、前記映像構成データ保存手段に保存されている複数の映像構成データを読み出してこれらを統合処理するデータ統合手段と、統合された映像データを前記サーバが備える記憶装置に一時保存する統合データ保存手段と、を有することができる。
【0049】
またさらに、本発明に係る映像作成システムにおいて、前記ターゲット表示手段は複数備えられており、これらターゲット表示手段のプラットフォームは互いに異なる種類のものであることとすることができる。
【0050】
さらにまた、本発明に係る映像作成システムにおいて、前記各手段は、ネットワークにより接続された、それぞれ別個のコンピュータにより構成されていることとすることができる。
【符号の説明】
【0051】
11 オブジェクト作成手段、12 モーション作成手段、13 画像編集手段、21 表示出力手段、22 位置編集手段、23 エフェクト編集手段、24 サウンド編集手段、25 シーン編集手段、27 データ送信手段、30 ターゲット表示手段、40 サーバ、41 映像構成データ管理手段、42 映像構成データ保存手段、43 データ統合手段、44 統合データ保存手段。