特許第5655117号(P5655117)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655117
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】酸化リン脂質の改良された製造方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 59/125 20060101AFI20141218BHJP
   C07C 69/708 20060101ALI20141218BHJP
   C07F 9/10 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   C07C59/125 ECSP
   C07C69/708
   C07F9/10 B
【請求項の数】3
【全頁数】46
(21)【出願番号】特願2013-143217(P2013-143217)
(22)【出願日】2013年7月9日
(62)【分割の表示】特願2010-116964(P2010-116964)の分割
【原出願日】2005年7月10日
(65)【公開番号】特開2013-231060(P2013-231060A)
(43)【公開日】2013年11月14日
【審査請求日】2013年7月9日
(31)【優先権主張番号】60/586,219
(32)【優先日】2004年7月9日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】503179263
【氏名又は名称】ヴァスキュラー バイオジェニックス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100103816
【弁理士】
【氏名又は名称】風早 信昭
(74)【代理人】
【識別番号】100120927
【弁理士】
【氏名又は名称】浅野 典子
(72)【発明者】
【氏名】ハルペリン, ギデオン
(72)【発明者】
【氏名】コヴァレヴスキー−イシャイ, エティ
【審査官】 天野 皓己
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0225035(US,A1)
【文献】 スイス国特許出願公開第00642665(CH,A3)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C 59/125
C07C 69/708
C07F 9/10
CAplus/REGISTRY/CASREACT(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式を有することを特徴とする化合物。
【請求項2】
下記の式を有することを特徴とする化合物。
【請求項3】
下記の式を有することを特徴とする化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、合成化学の分野に関し、特に酸化リン脂質、それらの誘導体、アナログおよび塩の製造のために有用な新規の合成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
薬理学の技術において、修飾されたリン脂質が多くの用途で知られている。米国特許第5985292号では、脂質可溶性の活性な化合物を有するリン脂質を含む経皮適用および経膜適用のための組成物が開示されている。米国特許第6261597号,第6017513号および第4614796号では、薬物送達用のリポソームおよびバイオベクターに含めたリン脂質誘導体が開示されている。米国特許第5660855号では、リポソームに配合された、平滑筋細胞または組織を標的化するために好適なアミノマンノース誘導体化コレステロールの脂質構築物が開示されている。これらの配合物は、PTCA処置を使用して、動脈における再狭窄を低下させることを目指している。
【0003】
アテローム性動脈硬化を治療するためのリポソームの使用はさらに、WO 95/23592として公開されたPCT特許出願に開示されている。そこではリン脂質を含有しうる単層リポソームの薬学的組成物が開示されている。WO 95/23592に開示されたリポソームは、アテローム硬化性斑からのコレステロール流出を最適化することを目指しており、典型的には非酸化のリン脂質である。
【0004】
血小板活性化因子(PAF)構造を模倣する修飾されたリン脂質誘導体は、薬学的に活性があり、血管透過性、血圧、心臓機能阻害などのような機能をもたらすことが知られている。米国特許第4778912号では、これらの誘導体の一群が抗ガン活性を有することが示唆されている。
【0005】
米国特許第4329302号では、血小板活性化を媒介することにおいて使用可能な合成1−O−アルキルエーテルまたは1−O−脂肪アシルホスホグリセリド化合物(リゾレシチン誘導体)が開示されている。米国特許第4329302号では、リゾレシチンの短鎖アシル化が、長鎖アシル化とは対照的に、血小板活性化作用を有する化合物を生じさせたこと、および、1−O−アルキルエーテルが、PAFを模倣することにおいて、対応する1−O−脂肪アシル誘導体よりも生物学的に優れていることが開示されている。
【0006】
様々なリン脂質の、その生物学的活性に対する構造的影響が、高血圧に関して、Tokumura他(Journal of Pharmacology and Experimental Therapeutics、1981(7月)、第219巻、第1号)によって、また、米国特許第4827011号において調査されている。
【0007】
スイス特許第642665号では、何らかの生理学的効果を有しうる修飾されたリン脂質エーテル誘導体が開示されている。
【0008】
Davies他(J.Biol.Chem.2001,276:16015)は、ペルオキシソーム増殖活性化受容体アゴニストとしての酸化リン脂質の使用を教示する。
【0009】
本出願人による米国特許第6838452号およびWO 04/106486(これらは完全に述べられているようにここに参照として組み入れられる)では、良く規定された酸化リン脂質、並びに他の合成酸化LDL(低密度リポ蛋白)成分の調製が開示されている。開示された化合物は、アテローム性動脈硬化および関連疾患、並びに自己免疫疾患および炎症障害を治療するのに極めて有効であることが報告されている。さらに、酸化リン脂質が酸化LDLに対する免疫応答を調節することが報告されている。さらに、一般に、エーテル化酸化リン脂質が治療剤として匹敵しうるエステル化された酸化リン脂質より優れていることが報告されている。
【0010】
リン脂質の酸化は、アテローム斑に豊富に存在するフリーラジカルおよび酵素反応の作用によってインビボで生じる。インビトロでは、酸化リン脂質の調製は、通常、天然のLDLまたはLDLリン脂質成分の単純な化学的酸化を伴う。酸化LDLの役割を研究している研究者は、例えば、斑成分に関連する分子に類似する酸化リン脂質分子または穏やかに酸化されたリン脂質分子を作製するために、2価鉄イオンおよびアスコルビン酸を用い(Itabe,H他、J.Biol.Chem.1996、271:33208〜217)、そして硫酸銅を用いている(George,J.他、Atherosclerosis、1998、138:147〜152;Ameli,S.他、Arteriosclerosis Thromb Vasc Biol、1996、16:1074〜79)。同様にして調製される分子は、アテローム発生に関連する自己抗原と同一であることが示され(Watson A.D.他、J.Biol.Chem.1997、272:13597〜607)、そしてマウスにおいて保護的なアテローム発生防止性の免疫寛容性を誘導しうることが示されている(米国特許出願第09/806400号(Shoenfeld他)、1999年9月30日出願)。同様に、米国特許第5561052号では、診断に使用される酸化されたアラキドン酸またはリノール酸および酸化LDLを製造するために硫酸銅およびスーパーオキシドジスムターゼを使用して、酸化された脂質およびリン脂質を製造する方法が開示されている。
【0011】
酸化リン脂質を調製するための上記の酸化技術は、非特異的でかつ酸化された生成物の混合物を生み出す反応を伴う。反応の非特異性は、収率を低下し、さらなる分離工程を必要とし、生成物が薬学的組成物に一体化されるときに望ましくない副作用の心配を起こす。
【0012】
1−パルミトイル−2−(5−オキソバレロイル)−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(POVPC)および1−パルミトイル−2−グルタロイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(PGPC)の如きその誘導体は、アテローム発生に関して研究されてきた穏やかに酸化されかつエステル化されたリン脂質の代表例である(例えばBoullier他、J.Biol.Chem.2000,275:9163;Subbanagounder他.,Circulation Research,1999,pp.311参照)。このクラスの酸化されたリン脂質に属する様々な構造的アナログの効果も研究されている(例えばSubbanagounder他、Arterioscler.Thromb.Nasc.Biol.2000,pp.2248;Leitinger et al.,Proc.Nat.Ac.Sci.1999,96:12010)。
【0013】
POVPCは、典型的には、不飽和脂肪酸を有するホスファチジルコリンを準備し、例えばオゾン分解(酸化開裂)によってまたは酸化剤として過沃素酸塩を使用して脂肪酸の不飽和結合を酸化することによって調製される。このような合成経路は、典型的には、多段階合成を伴い、カラムクロマトグラフィによって形成された中間体のほとんどの分離を必要とする。
【0014】
上で引用された米国特許第6838452号に記載されるように、エーテル化された酸化リン脂質は、リン脂質骨格に結合された脂肪酸の不飽和結合を酸化することによって同様に調製される。特に、エーテル化された酸化リン脂質は、この特許の教示に従えば、グリセロ脂質に不飽和短脂肪酸を導入し、得られた中間体にホスフェート部分を導入し、(i)ジオールを得るように過酸化水素および蟻酸によって、その後アルデヒドを得るように過沃化カリウムによって、または(ii)オゾン分解によって、脂肪酸鎖中の不飽和結合を酸化することによって、調製された。不飽和結合の酸化開裂はアルデヒド部分に生じるが、他の酸化された部分(例えばカルボン酸、アセタールなど)はアルデヒド部分をさらに酸化することによって得られた。このような多段階合成経路はしばしば、相対的に低い全体の収率を特徴とし、再びカラムクロマトグラフィによる形成された中間体のほとんどの分離を必要とする。
【0015】
上のように調製されたエステル化された酸化リン脂質を使用するインビボ適用は、体内の活性成分の認識、結合および代謝に対する感受性の欠点を有し、用量および投与後の安定性を重要な考慮事項にすることが見出された。米国特許第6838452号およびWO 04/106486に記載されたものの如きエーテル化された酸化リン脂質は、高い生物安定性および高い治療活性を示す。
【0016】
従って、エーテル化並びにエステル化された、酸化リン脂質を調製する現在公知の方法は、実験室調製のために適した複雑な多段階工程を伴い、しかも工業的規模の調製を非効率で複雑なものにする。特に、これらの多段階工程は、合成工程の様々な段階中、カラムクロマトグラフィの如き工業的に適用できない分離技術を必要とする。
【0017】
一般に酸化リン脂質、特にエーテル化された酸化リン脂質の有益な治療活性に照して、従来公知の方法の欠点の少なくとも幾つかが存在しないエーテル化された酸化リン脂質の調製のための改良された方法が必要であることが広く認識されており、そしてそれらを持つことは極めて有利であるだろう。
【発明の概要】
【0018】
本発明の一側面によれば、グリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合された少なくとも一つの酸化部分含有残基を有する化合物の製造方法であって、グリセロール主鎖および少なくとも一つの遊離ヒドロキシル基を有する第一化合物を準備し;遊離ヒドロキシル基とエーテル結合を形成しうる少なくとも一つの反応基および少なくとも一つの不飽和結合を有する第二化合物を準備し;第一化合物と第二化合物を反応させ、それによってグリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合された不飽和結合含有残基を有する第三化合物を得;第三化合物を単離し、それによって精製された第三化合物を得;精製された第三化合物を酸化剤と反応させ、それによってグリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合された酸化部分含有残基を有する第四化合物を得;そして第四化合物を単離し、それによって精製された第四化合物を得て、それによってグリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合された少なくとも一つの酸化部分含有残基を有する化合物を得ることを含み、カラムクロマトグラフィを欠いている方法が提供される。
【0019】
以下に記載される本発明の好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、第一化合物と第二化合物の反応は塩基の存在下で実施される。
【0020】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、塩基は水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムおよび水酸化カリウムからなる群から選択される。
【0021】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、反応基はハロゲン化物である。
【0022】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、第三化合物の単離は、第三化合物を収集し;第三化合物の溶液を溶媒中に与え、溶媒は、第三化合物がその中で溶解可能であり、反応時に形成された不純物がその中で溶解不可能であるように選択され、それによって溶媒中の第三化合物の溶液および不溶解性不純物を含む混合物を与え;不溶解性不純物を除去し;そして溶媒を除去して精製された第三化合物を得ることを含む。
【0023】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、溶媒は、石油エーテル、ヘキサンおよびベンゼンからなる群から選択される。
【0024】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、酸化剤は、蟻酸、過酸化水素、過沃素酸塩、過塩素酸塩、ビスマス酸塩、過マンガン酸塩、亜塩素酸塩、オゾン、酸化銀、四酸化オスミウムおよびそれらの組み合わせからなる群から選択される。
【0025】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、酸化部分は、カルボン酸、エステル、アルデヒド、アセタール、ケタールおよびジオールからなる群から選択される。
【0026】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、酸化部分はアルデヒドであり、精製された第三化合物と酸化剤の反応は、グリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合されたジオール含有残基を有する化合物に精製された第三化合物を変換し;そしてグリセロール主鎖およびグリセロール主鎖に結合されたジオール含有残基を有する化合物を酸化し、それによってグリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合されたアルデヒド含有残基を有する第四化合物を得ることを含む。
【0027】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、変換は、過酸化物、ビスマス酸塩、過沃素酸塩、過マンガン酸塩、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される第一酸化剤と精製された第三化合物を反応させることによって実施される。
【0028】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、酸化は過沃素酸塩、ビスマス酸塩、過マンガン酸塩、および亜塩素酸塩からなる群から選択される第二酸化剤と、グリセロール主鎖およびグリセロール主鎖に結合されたジオール含有残基を有する化合物を反応させることによって実施される。
【0029】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、第四化合物の単離は、第四化合物を収集し;第四化合物の水溶解性付加物を与え;水溶解性付加物を二相系に供し、それによって付加物を含有する水性相および酸化剤との反応時に形成された水不溶解性不純物を含有する有機相を与え;水性相を収集し;付加物を分解し;そして第四化合物を収集し、それによって精製された第四化合物を得ることを含む。
【0030】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、水不溶解性付加物を与えることは、第四化合物をジラール試薬と反応させることを含む。
【0031】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、酸化部分は、カルボン酸であり、精製された第三化合物を酸化剤と反応させることは:グリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合されたアルデヒド含有残基を有する化合物に精製された第三化合物を変換し;そしてグリセロール主鎖およびグリセロール主鎖に結合されたアルデヒド含有残基を有する化合物を酸化し、それによってグリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合されたカルボン酸含有残基を有する化合物を得ることを含む。
【0032】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、グリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合されたアルデヒド含有残基を有する化合物に精製された第三化合物を変換することは:グリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合されたジオール含有残基を有する化合物に精製された第三化合物を変換し;そしてグリセロール主鎖およびグリセロール主鎖に結合されたジオール含有残基を有する化合物を酸化し、それによってグリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合されたアルデヒド含有残基を有する化合物を得ることを含む。
【0033】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、方法は、グリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合されたアルデヒド含有残基を有する化合物を単離し、それによってグリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合されたアルデヒド含有残基を有する精製された化合物を得ることをさらに含む。
【0034】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、単離は:グリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合されたアルデヒド含有残基を有する化合物を収集し;上記のように、グリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合されたアルデヒド含有残基を有する化合物の水溶解性付加物を与え;水溶解性付加物を二相系に供し、それによって錯体を含有する水性相および変換および/または酸化時に形成された水不溶解性不純物を含有する有機相を与え;水性相を収集し;付加物を分解し;そしてグリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合されたアルデヒド含有残基を有する化合物を収集し、それによってグリセロール主鎖およびエーテル結合によってグリセロール主鎖に結合されたアルデヒド含有残基を有する精製された化合物を得ることを含む。
【0035】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、酸化部分はカルボン酸であり、精製された第三化合物を前記酸化剤と反応させることは:精製された第三化合物を、グリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合されたエポキシド含有残基を有する化合物に変換し;そしてグリセロール主鎖およびグリセロール主鎖に結合されたエポキシド含有残基を有する化合物を酸化し、それによってグリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合されたカルボン酸含有残基を得ることを含む。
【0036】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、変換は第三化合物を過酸化物と反応させることを含む。
【0037】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、第一化合物は少なくとも二つの遊離ヒドロキシル基を有し、方法はさらに、第一化合物と第二化合物を反応させる前に、少なくとも二つの基のうち少なくとも一つを保護基で保護することを含む。
【0038】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、保護基はトリチルである。
【0039】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、第一化合物は少なくとも二つの遊離ヒドロキシル基を有し、方法はさらに、第一化合物と第二化合物を反応させる前に、少なくとも二つの基の少なくとも一つを保護基で、好ましくはトリチル基で保護することを含む。
【0040】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、方法が上記のようにエポキシド含有化合物の形成を含むとき、方法はさらに、第三化合物と酸化剤を反応させる前に、アセテート、ピバロエート又はベンゾエートからなる群から選択される保護基でトリチルを置換することを含む。
【0041】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、グリセロール主鎖およびグリセロール主鎖に結合された少なくとも一つの酸化部分含有残基を有する化合物は、グリセロール主鎖に結合されたリン含有部分をさらに含み、方法はさらに、第一化合物と第二化合物を反応させる前に、第三化合物を単離させる前に、第三化合物を酸化剤と反応させる前に、第四化合物を単離させる前に、または第四化合物を単離させた後に、第一化合物、第三化合物、精製された第三化合物、第四化合物または精製された第四化合物をリン含有部分と反応させ、それによってグリセロール主鎖およびグリセロール主鎖に結合された少なくとも一つの酸化部分含有残基を有し、さらにグリセロール主鎖に結合されたリン含有部分を有する化合物を得ることを含む。
【0042】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、少なくとも一つのリン含有部分は、ホスホジエステル結合を介してグリセロール主鎖に結合されたホスフェート部分である。
【0043】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、少なくとも一つのリン含有部分は、リン酸、ホスホリルコリン、ホスホリルエタノールアミン、ホスホリルセリン、ホスホリルカルジオリピン、ホスホリルイノシトール、エチルホスホコリン、ホスホリルメタノール、ホスホリルエタノール、ホスホリルプロパノール、ホスホリルブタノール、ホスホリルエタノールアミン−N−ラクトース、ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(プロピレングリコール)]、ホスホイノシトール−4−ホスフェート、ホスホイノシトール−4,5−ビホスホネート、ピロホスフェート、ホスホエタノールアミン−ジエチレントリアミン−ペンタアセテート、ジニトロフェニル−ホスホエタノールアミンおよびホスホグリセロールからなる群から選択される。
【0044】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、リン含有部分は化合物のグリセロール主鎖のsn−3位に結合される。
【0045】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、第一化合物、第三化合物、精製された第三化合物、第四化合物または精製された第四化合物をリン含有部分と反応させることは、遊離ヒドロキシル基を有する第一化合物、第三化合物、精製された第三化合物、第四化合物または精製された第四化合物を与え;第一化合物、第三化合物、精製された第三化合物、第四化合物または精製された第四化合物を、第二反応基および第三反応基を有する反応性リン含有化合物と反応させ、第二反応基は遊離ヒドロキシル基および第二反応基と反応することができ、それによってグリセロール主鎖に結合された反応性リン含有基を有する第一化合物、第三化合物、精製された第三化合物、第四化合物または精製された第四化合物を与え;そして反応性リン含有基をリン含有部分に変換することを含む。
【0046】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、反応性リン含有化合物はオキシ塩化リン(POCl)である。
【0047】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、反応は塩基の存在下で実施される。
【0048】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、リン含有部分はリン酸であり、変換は反応性リン含有基を加水分解することを含む。
【0049】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、リン含有部分はアミノアルキル基を含み、変換は、反応性リン含有基をアミノアルキル基の誘導体と反応させることを含み、誘導体は第三反応基と反応することができるように選択される。
【0050】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、グリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合された少なくとも一つの酸化部分含有残基を有する化合物の別の製造方法であって、方法は:グリセロール主鎖および少なくとも一つの遊離ヒドロキシル基を有する第一化合物を準備し;少なくとも一つの酸化部分および少なくとも一つの第四反応基を有する第五化合物を準備し;第一化合物と第五化合物を反応させ、それによってグリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合された少なくとも一つの酸化部分含有残基を有する第六化合物を含有する反応混合物を得;そしてグリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合された少なくとも一つの酸化部分含有残基を有する化合物を単離することを含む。
【0051】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、第一化合物と第五化合物を反応させることは、塩基の存在下で実施される。
【0052】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、塩基は水素化ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、アミドナトリウム、水酸化ナトリウムおよびそれらのいずれかの混合物からなる群から選択される。
【0053】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、第四反応基はハロゲン化物である。
【0054】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、酸化部分は、カルボン酸、エステル、アシルハロゲン化物、アルデヒド、アセタール、ケタールおよびジオールからなる群から選択される。
【0055】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、第五化合物は4個より少ない炭素原子を含む。
【0056】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、第五化合物は5個より多い炭素原子を含む。
【0057】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、第一化合物は少なくとも二つの遊離ヒドロキシル基を有し、方法はさらに、第一化合物と第五化合物を反応させる前に、少なくとも二つの基のうち少なくとも一つを保護基で保護することを含む。
【0058】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、保護基はトリチルである。
【0059】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、グリセロール主鎖およびグリセロール主鎖に結合された少なくとも一つの酸化部分含有残基を有する化合物は、グリセロール主鎖に結合されたリン含有部分をさらに含み、方法はさらに、第一化合物と第五化合物を反応させる前または後に、または第六化合物を単離した後に、第一化合物または第六化合物をリン含有部分と反応させ、それによって上記のようにグリセロール主鎖およびグリセロール主鎖に結合された少なくとも一つの酸化部分含有残基を有し、さらに上記のようにグリセロール主鎖に結合されたリン含有部分を有する化合物を得ることを含む。
【0060】
ここで記載された方法のいずれかにおける本発明の好ましい実施態様のさらなる特徴によれば、第一化合物は、1〜30個の炭素原子を有する少なくとも一つのアルキレン鎖をさらに含む。
【0061】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、アルキレン鎖はエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合される。
【0062】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、アルキレン鎖は第一化合物のグリセロール主鎖のsn−1位に結合される。
【0063】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、酸化部分含有残基は化合物のsn−2位に結合され、さらにグリセロール主鎖の少なくとも一つの遊離ヒドロキシル基の少なくとも一つは第一化合物のsn−2位にある。
【0064】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、第一化合物は下記一般式Iを有する:
式中、Aは存在しないか、またはCH,CH=CHおよびC=Oからなる群から選択され;
はHおよび1〜30個の炭素原子を有する炭化水素鎖からなる群から選択され、
は水素、アルキル、アリール、リン酸、ホスホリルコリン、ホスホリルエタノールアミン、ホスホリルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルカルジオリピン、ホスファチジルイノシトール、ホスホリルカルジオリピン、ホスホリルイノシトール、エチルホスホコリン、ホスホリルメタノール、ホスホリルエタノール、ホスホリルプロパノール、ホスホリルブタノール、ホスホリルエタノールアミン−N−ラクトース、ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(プロピレングリコール)]、ホスホイノシトール−4−ホスフェート、ホスホイノシトール−4,5−ビホスホネート、ピロホスフェート、ホスホエタノールアミン−ジエチレントリアミン−ペンタアセテート、ジニトロフェニル−ホスホエタノールアミン、ホスホグリセロールからなる群から選択される。
【0065】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、グリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合された少なくとも一つの酸化部分を有する化合物は下記一般式IIを有する:
式中、AはCH,CH=CHおよびC=Oからなる群から選択され;
はCHであり;
は1〜30個の炭素原子を有するアルキルであり;

であり、
式中、Xは1〜24個の炭素原子を有するアルキル鎖であり、
Yは水素、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化物、アセトキシおよび芳香族官能基からなる群から選択され、
Zは
からなる群から選択され、
はアルキルまたはアリールであり、Rは水素、アルキル、アリール、リン酸、ホスホリルコリン、ホスホリルエタノールアミン、ホスホリルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルカルジオリピン、ホスファチジルイノシトール、ホスホリルカルジオリピン、ホスホリルイノシトール、エチルホスホコリン、ホスホリルメタノール、ホスホリルエタノール、ホスホリルプロパノール、ホスホリルブタノール、ホスホリルエタノールアミン−N−ラクトース、ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(プロピレングリコール)]、ホスホイノシトール−4−ホスフェート、ホスホイノシトール−4,5−ビホスホネート、ピロホスフェート、ホスホエタノールアミン−ジエチレントリアミン−ペンタアセテート、ジニトロフェニル−ホスホエタノールアミン、ホスホグリセロールからなる群から選択される。
【0066】
本発明のさらに別の側面によれば、グリセロール主鎖を有しかつエーテル結合を介してそれに結合された酸化部分含有または予備酸化部分含有残基を有する化合物中にホスフェート部分を導入する方法であって、グリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合された酸化部分または予備酸化部分含有残基および少なくとも一つの遊離ヒドロキシル基を有する化合物を準備し;その化合物と第二反応基および第三反応基を有するリン含有化合物を反応させ、それによって酸化部分または予備酸化部分含有残基および反応性リン含有基を有する化合物を与え;そして反応性リン含有基をホスフェート部分に変換し、それによってホスフェート部分を化合物中に導入することを含む方法が提供される。
【0067】
以下に記載される本発明の好ましい実施態様のさらなる特徴によれば、グリセロール主鎖を有する化合物は1〜30個の炭素原子を有する少なくとも一つのアルキレン鎖を含む。
【0068】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、アルキレン鎖はエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合される。
【0069】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、アルキレン鎖は化合物のグリセロール主鎖のsn−1位に結合される。
【0070】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、酸化部分は、カルボン酸、エステル、アシル、ハロゲン化物、アルデヒド、アセタール、ジオールおよびケタールからなる群から選択される。
【0071】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、予備酸化部分は不飽和部分である。
【0072】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、リン含有化合物はPOClである。
【0073】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、反応は塩基の存在下で実施される。
【0074】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、塩基は第三アミンである。
【0075】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、リン含有化合物はPOClであり、反応性リン含有基はジクロロホスフェート基である。
【0076】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、グリセロール主鎖を有する化合物はエーテル結合を介してそれに結合された予備酸化部分含有残基を有する。
【0077】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、ホスフェート部分はリン酸、ホスホリルコリン、ホスホリルエタノールアミン、ホスホリルセリン、ホスホリルカルジオリピン、ホスホリルイノシトール、エチルホスホコリン、ホスホリルメタノール、ホスホリルエタノール、ホスホリルプロパノール、ホスホリルブタノール、ホスホリルエタノールアミン−N−ラクトース、ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(プロピレングリコール)]、ホスホイノシトール−4−ホスフェート、ホスホイノシトール−4,5−ビホスホネート、ピロホスフェート、ホスホエタノールアミン−ジエチレントリアミン−ペンタアセテート、ジニトロフェニル−ホスホエタノールアミンおよびホスホグリセロールからなる群から選択される。
【0078】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、ホスフェート部分はリン酸であり、変換は反応性リン含有基を加水分解することを含む。
【0079】
記載された好ましい実施態様におけるさらなる特徴によれば、ホスフェート部分はアルキルアミノ基を含み、変換は、反応性リン含有基と反応しうるアミノアルキルの誘導体と反応性リン含有部分を反応させることを含む。
【0080】
本発明は酸化リン脂質の大規模な製造に有利に使用されることができる新規な合成ルートを提供することによって現在公知の構成の欠点に首尾よく対処する。
【0081】
別途定義されない限り、本明細書中で使用されるすべての技術的用語および科学的用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。本明細書中に記載される方法および材料と類似または同等の方法および材料を本発明の実施または試験において使用することができるが、好適な方法および材料が下記に記載される。矛盾する場合には、定義を含めて、本特許明細書が優先する。加えて、材料、方法および実施例は例示にすぎず、限定であることは意図されない。
【0082】
本明細書中で使用される用語「混合物」は、一つより多い物質を含む混合物を記載し、それはいかなる形態、例えば均質な溶液、懸濁液、分散液、二相およびそれより多い相の溶液の形態であることができる。
【0083】
本明細書中で使用される場合、単数形態(“a”、“an”および“the”)は、文脈がそうでないことを明確に示さない限り、複数の参照物を包含する。
【0084】
本開示を通して、本発明の様々な態様が範囲形式で提示され得る。範囲形式での記載は単に便宜上および簡潔化のためであり、本発明の範囲に対する柔軟性のない限定として解釈すべきでないことを理解しなければならない。従って、範囲の記載は、具体的に開示された可能なすべての部分範囲、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値を有すると見なさなければならない。例えば、1〜6などの範囲の記載は、具体的に開示された部分範囲(例えば、1〜3、1〜4、1〜5、2〜4、2〜6、3〜6など)、ならびに、その範囲に含まれる個々の数値(例えば、1、2、3、4、5、および6)を有すると見なさなければならない。このことは、範囲の広さにかかわらず、適用される。
【0085】
数値範囲が本明細書中で示される場合には常に、示された範囲に含まれる任意の言及された数字(分数または整数)を含むことが意味される。第1の示された数字および第2の示された数字「の範囲にある/の間の範囲」という表現、および、第1の示された数字「から」第2の示された数「まで及ぶ/までの範囲」という表現は、交換可能に使用され、第1の示された数字と、第2の示された数字と、その間のすべての分数および整数とを含むことが意味される。
【0086】
本明細書中全体で使用される用語「含む(“comprising”,“including”,および“containing”)」は、最終結果に影響しない他の工程および成分が加えられ得ることを意味する。これらの用語は、用語「からなる」および用語「から本質的になる」を包含する。
【0087】
表現「から本質的になる」は、さらなる成分および/または工程が、主張される組成物または方法の基本的かつ新規な特徴を実質的に変化させない場合にだけ、組成物または方法がさらなる成分および/または工程を含み得ることを意味する。
【0088】
用語「方法(“method”または“process”)」は、所与の課題を達成するための様式、手段、技術および手順を示し、これには、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者に知られているそのような様式、手段、技術および手順、または、知られている様式、手段、技術および手順から、化学、薬理学、生物学、生化学および医学の技術分野の実施者によって容易に開発されるそのような様式、手段、技術および手順が含まれるが、それらに限定されない。
【0089】
用語「リン脂質」は、非極性の脂質基および高度に極性の末端ホスフェート基を含む化合物を集合的に記載するために本明細書で使用される。リン脂質化合物の自然界における一つの特別なかつ最も一般的なものはホスグリセリドファミリーの化合物である。それゆえ、用語「リン脂質」は、典型的には他に示さない限り、ホスホグリセリドを記載するために本明細書を通じて使用される。
【0090】
それゆえ、用語「ホスホグリセリド」は、グリセロール主鎖、一つ以上の脂質部分および一つ以上のホスフェート末端基(それらはグリセロール主鎖に結合されている)を有する化合物を記載するために本明細書で使用される。天然に存在するグリセロ脂質のほとんどは、sn−1およびsn−2位に結合された二つの脂質部分およびグリセロール主鎖のsn−3位に結合された一つのホスフェート部分を含む。
【0091】
それゆえ、用語「酸化リン脂質」は、以下に記載されるように、一つ以上の酸化部分を有する、リン脂質並びにホスホグリセリドを記載するために本明細書で使用される。典型的には、酸化リン脂質において、酸化部分は脂質部分内に含まれる。
【0092】
用語「グリセロ脂質」は、グリセロール主鎖およびそれに結合された一つまたは二つの脂質部分を有する化合物を記載する。脂質部分は、エステルおよび/またはエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合されることができる。
【0093】
本明細書中で使用される場合、用語「脂質」は、3〜30個の炭素原子を有する炭化水素残基を記載する。天然に存在する化合物において、リン脂質およびグリセロ脂質における脂質は、脂肪酸から誘導され、従ってO−アシル(エステル)結合を介して主鎖に結合される。ここでは、脂質部分は、エーテルまたはエステル結合のいずれかを介して主鎖に結合されることができる。
【0094】
本明細書中で使用される場合、リン脂質またはグリセロ脂質に関する用語「モノエステル化」および「ジエステル化」は、酸化されたまたは酸化されていない、リン脂質またはグリセロ脂質を記載し、そこでは脂質部分の一つまたは二つはそれぞれ、エステル(例えばO−脂肪アシル)結合を介してグリセロール主鎖に結合される。
【0095】
本明細書中で使用される場合、リン脂質またはグリセロ脂質に関する用語「モノエーテル化」または「ジエーテル化」は、酸化されたまたは酸化されていない、リン脂質またはグリセロ脂質を記載し、そこでは脂質部分の一つまたは二つはそれぞれ、エーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合される。
【0096】
用語「ホスホグリセロール」は、グリセロール主鎖およびその一つの位置に結合されたホスフェート基を有する化合物を記載する。
【0097】
用語「ホスホグリセリド」は、グリセロール主鎖、一つまたは二つの脂質部分およびそれに結合されたホスフェート部分を有する化合物を記載する。
【0098】
用語「モノエーテル化ホスホグリセリド」は、脂質部分がエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合されるホスホグリセリドを記載する。
【0099】
本明細書中で使用される場合、用語「部分」は、化合物の一部を形成する機能的な物質または基を記載する。用語「残基」は、当業界で知られているように、別の分子に結合される分子の主要な部分を記載するために使用される。
【発明を実施するための形態】
【0100】
本発明は、酸化リン脂質の大規模製造のために効率的に使用されることができる酸化リン脂質の新規な製造方法である。特に、本発明は、グリセロール主鎖を有する化合物に酸化部分を導入する新規な方法であり、さらにかかる化合物にリン含有部分を導入する新規な方法である。本明細書中に記載される新規な方法は、カラムクロマトグラフィを使わず、典型的には商業的に入手可能でかつ環境に優しい反応体を使用する。
【0101】
本発明による新規な合成方法の原理および操作は、添付の記載を参照してより良く理解されるだろう。
【0102】
本発明の少なくとも1つの実施態様を詳細に説明する前に、本発明は、その適用において、下記の説明に示される細部または実施例により例示される細部に限定されないことを理解しなければならない。本発明は、他の実施態様が可能であり、または様々な方法で実施することができ、または様々な方法で実施される。また、本明細書中で用いられている表現法および用語法は説明のためであり、従って限定として見なされるべきではないことを理解しなければならない。
【0103】
上で述べたように、良く規定された合成製造された酸化リン脂質が酸化LDLに対する免疫反応を調節することができ、従ってアテローム性動脈硬化症および関連疾患、並びに自己免疫疾患および炎症障害を治療するのに極めて有効であることが、最近報告されている。さらに、一般に、エーテル化された酸化リン脂質が治療剤として比較しうるエステル化された酸化リン脂質より優れていることが報告されている。
【0104】
これらの極めて有益な酸化リン脂質は典型的には、例えば米国特許第6838452号およびWO 04/106486に詳細に記載されているように、グリセロール主鎖を含み、それに脂質残基、ホスフェート残基および酸化部分含有脂質残基が結合されている。
【0105】
上でさらに述べたように、このような良く規定された合成酸化リン脂質の現在知られる製造方法は、多数の工程の合成を伴う。これらの多数の工程の合成は比較的有効であり、中程度から良好な収率を生じることが見出されているが、これらの方法は合成中に形成された様々な中間体の面倒な単離および精製工程を実施する必要性によって制限されている。特に、これらの工程は典型的には、カラムクロマトグラフィの如き技術を伴い、それは当業者に広く認識されているように、コスト、複雑性および過剰量の有機溶媒の使用(それは危険であり、廃棄物処理に特別な注意を必要とする)に関して工業的に適用不可能であるか、または少なくとも不十分である。これらの方法におけるカラムクロマトグラフィの使用の必要性は、これらの多工程の合成中に形成された中間体並びに最終生成物が抽出、結晶化などの従来の技術によって単離および/または精製されることができないということから生ずる。
【0106】
このような合成製造された酸化リン脂質は顕著に有益な治療活性を示すので、これらの化合物を高レベルの純度で製造することが極めて望ましい。さらに、このような酸化リン脂質の製造は多数の工程の合成を伴うので、かかる工程が最小量の副生成物で妥当な収率であることを達成するためには中間体の精製が要求される。
【0107】
カラムクロマトグラフィの如き面倒な技術を使用する必要性を回避しながら、これらの化合物の大規模な製造に有効に利用できる、酸化リン脂質の新規な製造方法に対する研究において、本発明者は、グリセロール主鎖を有する化合物に酸化部分および/またはホスフェート部分を導入するための新規な合成方法論を設計し、うまく実践したところ、それはカラムクロマトグラフィの使用を回避し、比較的高い収率の純粋な化合物を生じた。ここに記載される方法はさらに、典型的には商業的に利用可能である、危険性のない反応体を利用し、それはさらに、その工業的適用可能性を与える。
【0108】
ここに記載される新規な合成方法論は、以下のように分けることができる:
(i)不飽和部分の導入および不飽和部分の酸化を介して、グリセロール主鎖を有する化合物に酸化部分を導入し、それによって前記酸化で酸化部分含有化合物が水溶解性付加物によって単離および精製される新規な方法;
(ii)不飽和部分の導入および不飽和部分の酸化を介して、グリセロール主鎖を有する化合物に酸化部分を導入し、それによって前記酸化がエポキシド中間体を介してかつ選択的保護基の存在下で実施される新規な方法;
(iii)酸化部分の直接導入を介して、グリセロール主鎖を有する化合物に酸化部分を導入する新規な方法;および
(iv)反応性リン含有基の導入を介して、所望により酸化または予備酸化部分を結合したグリセロ脂質にホスフェート部分を導入する新規な方法。
【0109】
酸化部分含有残基がエーテル結合を介して主鎖に結合される酸化リン脂質の優れた性能のため、これらの方法は全て、エーテル結合を介したグリセロール主鎖への酸化部分含有残基の結合に対して向けられている。
【0110】
これらの方法論を使用して、後述の実施例の欄で実証されるように、良く規定された酸化リン脂質は、比較的高い収率および精度でうまく製造されている。
【0111】
従って、本発明の一側面によれば、グリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合された少なくとも一つの酸化部分含有残基を有する化合物の製造方法であって、カラムクロマトグラフィを欠いている方法が提供されている。その方法は、本発明のこの側面によれば、以下のようにすることによって実施される:
グリセロール主鎖および少なくとも一つの遊離ヒドロキシル基を有する第一化合物を準備する;
前記遊離ヒドロキシル基とエーテル結合を形成することができる少なくとも一つの反応基および少なくとも一つの不飽和結合を有する第二化合物を準備する;
第一化合物と第二化合物を反応させ、それによってグリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合された不飽和結合含有残基を有する第三化合物を得る;
第三化合物を単離し、それによって精製された第三化合物を得る;
精製された第三化合物を酸化剤と反応させ、それによってグリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合された酸化部分含有残基を有する第四化合物を得る;そして
第四化合物を単離し、それによって精製された第四化合物を得、それによってグリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合された少なくとも一つの酸化部分含有残基を有する化合物を得る。
【0112】
本明細書全体を通して使用される表現「グリセロール主鎖を有する化合物」は、本明細書では「グリセロール化合物」と交換可能に言及され、「グリセロール化合物」は、以下の骨格を含む化合物を記載する:
【0113】
化合物がグリセロールであるとき、グリセロール位置sn−1,sn−2およびsn−3の各々は遊離ヒドロキシル基によって置換される。
【0114】
本明細書全体を通して使用される表現「酸化部分」および「酸化部分含有残基」は、本明細書では交換可能に使用され、炭素原子の少なくとも一つが酸素原子によって置換される有機部分を記載する。その例は、限定されず、アルデヒド、カルボン酸、カルボキシルエステル、ジオール、アセタール、およびケタールを含む。表現「酸化部分含有残基を有する化合物」および「酸化部分含有化合物」はまた、本明細書では交換可能に使用される。
【0115】
本発明のこの側面による方法は、不飽和部分をグリセロール化合物に導入し、不飽和結合を酸化開裂に供することに基づく。しかしながら、このような合成ルートはグリセロール酸化リン脂質の現在公知の合成法に使用されているが、本発明者は、酸化部分が結合したグリセロール化合物がカラムクロマトグラフィを使用せずに単離および精製されることができる、かかる方法を設計し、うまく実践した。
【0116】
グリセロール化合物への不飽和部分の導入は典型的には、例えば米国特許第6838452号に記載されるように公知の方法を使用して実施される。
【0117】
典型的には、グリセロール主鎖および少なくとも一つの遊離ヒドロキシル基を有する第一化合物は、出発材料として選択される。
【0118】
本明細書において第二化合物としても言及される、不飽和部分および第一反応基を有する化合物は、商業的にまたは公知の方法を使用して得られ、グリセロール出発材料と反応される。
【0119】
第一反応基は、遊離ヒドロキシル基と反応できるものが選択される。遊離ヒドロキシル基と反応してエーテル結合を形成することは典型的には、求核機構を介して実施され、それゆえ第一反応基は好ましくは、良好な離脱基として特徴付けられ、例えばハロゲン化物、スルホネート、および他の離脱基であることができる。
【0120】
好ましくは、反応基はハロゲン化物であり、より好ましくは臭化物である。
【0121】
第二化合物は、続く酸化反応を容易にするように不飽和部分がその末端に存在するように選択されることが好ましい。「不飽和部分」は、本明細書では、不飽和結合、例えば二重結合または三重結合、好ましくは二重結合によって間を結合される少なくとも二つの炭素原子を含む部分を意味する。
【0122】
さらに好ましくは、第二化合物は、4〜30個の炭素原子、より好ましくは4〜27個の炭素原子、より好ましくは4〜16個の炭素原子、より好ましくは4〜10個の炭素原子、より好ましくは4〜8個の炭素原子を含み、より好ましくは第二化合物は、6個の炭素原子を含む。
【0123】
本明細書に記載された第一化合物と第二化合物の反応は典型的には、塩基の存在下で実施される。本発明に使用するために好適な塩基は、限定されないが、水酸化ナトリウム、水酸化リチウム、水酸化カルシウム、水酸化バリウムおよび水酸化カリウムの如き無機塩基を含む。
【0124】
第一化合物と第二化合物の反応は典型的には、溶媒の存在下で実施される。本発明に使用するために好適な溶媒は、限定されないが、石油エーテル、ヘキサン、ベンゼンおよびトルエンの如き非極性溶媒を含む。
【0125】
反応を選択的に実施すること、即ちグリセロール主鎖の特定の位置に不飽和部分を導入することが望ましい場合には、反応するヒドロキシル以外の遊離ヒドロキシル基がもし存在するなら、反応前に保護されるべきである。
【0126】
従って、このような場合には、本発明のこの側面による方法は、所望によりかつ好ましくは、第一化合物と第二化合物を反応させる前に、第一化合物内に存在しうる一つ以上の追加の遊離ヒドロキシル基を保護することをさらに含む。
【0127】
公知のヒドロキシル保護基のいずれも本発明に使用することができる。本発明のこの側面の好ましい実施態様によれば、保護基はトリチルである。
【0128】
トリチルは嵩高い基であり、それは典型的には、立体障害のため、選択的保護基として作用する。従って、一つより多い遊離ヒドロキシル基を有するグリセロール化合物を反応させている間、典型的にはトリチル基が、障害の少ない基と反応されるだろう。
【0129】
上で示されたように、そして米国特許第6838452号およびWO 04/106486でさらに述べられているように、酸化部分が結合されるグリセロール主鎖の位置は、化合物の活性に影響する。それゆえ、酸化部分含有残基が所望の位置に結合されるように、本明細書で記載されたグリセロール化合物の製造を選択的に実施することが極めて有益である。米国特許第6838452号でさらに述べられているように、グリセロール主鎖のsn−2位置に結合された酸化部分含有残基を有する酸化リン脂質は、優れた性能を示す。
【0130】
その目的のために、グリセロール主鎖へ上記第二化合物を導入しながら保護基としてトリチル基を使用することは、極めて有益である。なぜならば、その嵩高性のため、sn−1および/またはsn−3位置でのヒドロキシル末端基の保護が実施され、さらなる置換のために利用可能なsn−2でヒドロキシル基を脱離するからである。いったん第一化合物と第二化合物の反応が完了されると、グリセロール主鎖およびエーテル結合を介してそれに結合された不飽和部分含有残基を有する化合物を含有する反応混合物が得られる。かかる化合物はまた、本明細書では第三化合物として交換可能に言及される。
【0131】
使用された出発材料によって、第三化合物は、グリセロール主鎖内に存在しうる遊離ヒドロキシル基を保護する一つ以上の保護基をさらに含む。
【0132】
保護されたまたは保護されていない第三化合物は次いで、反応混合物から単離され、精製された化合物を得るように処理される。
【0133】
好ましい実施態様では、第三化合物の単離はまず、形成された第三化合物を収集することによって実施される。第三化合物の収集は典型的には、抽出、溶媒の除去、濾過など、およびそれらの組み合わせの如き従来技術を使用して実施される。いったん収集されたら、粗生成物は溶媒に溶解され、前記溶媒は、第三化合物がそこに溶解可能であり、第一と第二化合物の間の反応中に形成された不純物はそこに溶解不可能であるように選択される。
【0134】
用語「不純物」は、本明細書では、最終粗生成物に存在し、かつ製品自身ではなく、例えば未反応の出発材料および副生成物を含む、物質を記載するために使用される。
【0135】
かかる溶媒を使用して、かかる溶媒における第三化合物の溶液および不溶解性物質を含む混合物が得られる。本発明に使用するための好適な溶媒は、限定されないが、石油エーテル、ヘキサン、ベンゼン、ヘプタンおよびトルエンを含む。好ましくは、溶媒は石油エーテルである。
【0136】
不溶解性不純物は次いで、好ましくは濾過によって混合物から除去され、溶媒が除去され、その精製工程にカラムクロマトグラフィを使用する必要性を回避しながら精製された第三化合物が得られる。
【0137】
精製された第三化合物は次いで、酸化剤と反応されて不飽和部分を酸化し、それによって酸化部分含有残基がエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合される第四化合物を得る。
【0138】
酸化剤は、以下に詳述されるように、所望の酸化部分に依存して選択され、例えば過酸化物、過沃素酸塩、ビスマス酸塩、過マンガン酸塩、亜塩素酸塩、オゾン、酸化銀、四酸化オスミウムおよびそれらの組み合わせであることができる。
【0139】
本明細書で使用される用語「過沃素酸塩」は、式XIOを有する化合物を記載し、式中、Xは水素(過沃素酸に対して)または金属(例えばナトリウム、カリウム)の一価のカチオンであることができる。
【0140】
用語「ビスマス酸塩」は、式XBiOを有する化合物を記載し、式中、Xは水素または金属(例えばナトリウム、カリウム)の一価のカチオンであることができる。
【0141】
用語「過マンガン酸塩」は、式XMnOを有する化合物を記載し、式中、Xは水素または金属(例えばナトリウム、カリウム)の一価のカチオンであることができる。
【0142】
用語「亜塩素酸塩」は、式XClOを有する化合物を記載し、式中、Xは水素または金属(例えばナトリウム、カリウム)の一価のカチオンであることができる。本明細書で使用される用語「過酸化物」は、式R−O−O−Hを有する化合物を含み、式中、Rは水素、アルキル、シクロアルキル、アリール、オキシアルキル、オキシシクロアルキルおよびオキシアリールであることができ、これらの用語は本明細書中に規定される。
【0143】
本明細書中で使用される用語「アルキル」は、直鎖基および分枝鎖基を含む飽和した脂肪族炭化水素を示す。好ましくは、アルキル基は1個〜20個の炭素原子を有する。
【0144】
「シクロアルキル」基は、環の1つまたは複数が完全共役のπ電子系を有しない、すべて炭素からなる単環基または縮合環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。シクロアルキル基の非限定な例には、シクロプロパン、シクロブタン、シクロペンタン、シクロペンテン、シクロヘキサン、シクロヘキサジエン、シクロヘプタン、シクロヘプタトリエンおよびアダマンタンがある。
【0145】
「アリール」基は、完全共役のπ電子系を有する、すべて炭素からなる単環基または縮合多環(すなわち、隣接炭素原子対を共有する環)基を示す。アリール基の非限定的な例には、フェニル、ナフタレニルおよびアントラセニルがある。
【0146】
用語「オキシアルキル」、「オキシシクロアルキル」および「オキシアリール」は、R′−C(=O)−基を記載し、式中、R′はそれぞれアルキル、シクロアルキルまたはアリールであり、従って過酸化物はペルオキシカルボン酸である。
【0147】
好ましくは、過酸化物は、過酸化水素またはペルオキシカルボン酸である。
【0148】
従って、本発明のこの側面の一実施態様では、酸化部分はアルデヒドであり、第三化合物と酸化剤の反応は、まず好ましくは酸化剤(本明細書では第一酸化剤として言及される)によって第三化合物における不飽和部分をジオール部分に変換し、次いで第二酸化剤によってジオール部分をアルデヒド部分にさらに酸化することによって実施される。
【0149】
第一および第二酸化剤は、同じであっても異なってもよく、例えば過酸化物、過沃素酸塩、ビスマス酸塩、過マンガン酸塩、亜塩素酸塩、オゾンおよびそれらの組み合わせであることができる。
【0150】
第一および第二酸化剤が同じである場合、使用される酸化剤に依存して、不飽和部分のジオール部分への変換およびジオール部分の酸化は、同時に実施されることができる。この点に関して使用されることができる好適な酸化剤は、例えばオゾン、四酸化オスミウム、および過マンガン酸カリウムの如き不飽和部分の酸化開裂を誘導できる酸化剤を含む。
【0151】
第一および第二酸化剤が異なる場合、好ましくは、第一酸化剤は過酸化水素の如き過酸化物であり、第二酸化剤は例えば過沃素酸塩またはビスマス酸塩である。
【0152】
変換および酸化工程が実施される反応条件は、使用された酸化剤に従って決定される。
【0153】
本発明のこの側面の好ましい実施態様では、第一および第二酸化剤は異なり、不飽和部分のジオール部分への変換およびジオール部分の酸化は連続して実施される。さらに、本発明のこの側面の好ましい実施態様によれば、いったんジオールが得られたら、保護基は、もし存在するなら、三つまたはそれより多い遊離ヒドロキシル基(ここではトリオール)を有する化合物を得るように除去される。かかる化合物は、後述する実施例の欄(実施例1参照)に実証されるように、その独特な化学的特徴のため、結晶化によって、そのアルデヒドへの酸化前に容易に精製されることができる。いったん精製されると、sn−1および/またはsn−3位置における遊離ヒドロキシル基の選択的保護は、次の合成工程の前に実施されることができる。
【0154】
かくして形成されたアルデヒド含有グリセロール化合物は次いで、反応混合物から単離され、精製される。
【0155】
本発明のこの側面の好ましい実施態様では、アルデヒドはその水溶解性付加物を形成することによって精製される。
【0156】
従って、いったん酸化剤との反応が完了したら、アルデヒド含有第四化合物は、上で記載されたような従来技術を使用して収集され、その後、粗生成物は、その水溶解性付加物に変換される。かかる変換を二相系で実施することによって、水溶解性付加物を含有する水性相と水不溶解性不純物を含有する有機相が得られる。酸化反応中に形成された副生成物および未反応材料のほとんどは有機物質であるので、かかる物質は水性相を収集することによって水溶解性付加物から容易に分離される。アルデヒド含有化合物はその後、水溶解性付加物を分解することによって回収される。
【0157】
本発明に使用されることができる好適な水溶解性付加物は、アルデヒド含有化合物をジラール試薬と反応することによって得られることが好ましい。
【0158】
ジラール試薬は、カルボニル含有化合物と水溶解性ヒドラゾン付加物を形成することができる物質のファミリーであり、従って他の有機非カルボニル化合物からのカルボニル含有化合物の分離を可能にする。ジラール試薬は、セミカルバジドのイオン誘導体である。
【0159】
T型は、(カルボキシメチル)トリメチルアンモニウムクロライドヒドラジドである:
【0160】
D型は、(カルボキシメチル)ジメチルアンモニウムクロライドヒドラジドである:
【0161】
そして、P型は、1−(カルボキシメチル)ピリジニウムクロライドヒドラジドである:
【0162】
従って、ジラール試薬でアルデヒド含有化合物をその水溶解性付加物に変換することによって、精製された第四化合物は、カラムクロマトグラフィの使用を回避しながら、容易にかつ従来のようにして得られる。
【0163】
酸化部分がカルボン酸である場合には、第三化合物を酸化剤と反応させることは、まず所望によりおよび好ましくは、上記のようにアルデヒド含有化合物を準備し、さらに所望によりおよび好ましくは、上記の方法論を使用して、精製されたアルデヒド含有化合物を準備し、その後さらにアルデヒドをカルボン酸に酸化することによって実施されることができる。
【0164】
アルデヒドをカルボン酸に酸化することは、アルデヒドを亜塩素酸塩の如き酸化剤と反応することによって実施されることが好ましい。
【0165】
あるいは、不飽和部分は、エポキシド中間体を介してカルボン酸に酸化されることができる。
【0166】
従って、第三化合物を酸化剤と反応させることは、不飽和部分をエポキシドに変換し、エポキシドをカルボン酸に変換することによって実施されることができる。好ましくは、エポキシドのカルボン酸への変換は、エポキシドをジオールに変換し、ジオールを、カルボン酸部分を得るように酸化することによって実施される。
【0167】
第三化合物をエポキシドに変換することは、上で規定したような過酸化物と、より好ましくはペルオキシカルボン酸と第三化合物を反応させることによって実施されることが好ましい。
【0168】
エポキシドをジオールに変換することは、エポキシドを過塩素酸(HClO)と反応することによって実施されることが好ましい。あるいは、エポキシドは、それを硫酸と反応させることによってジオールに変換される。
【0169】
ジオールは次いで、それを第三酸化剤と反応させることによってカルボン酸に変換される。第三酸化剤は、過沃素酸塩、ビスマス酸塩、過マンガン酸塩、亜塩素酸塩およびそれらの組み合わせから選択されることができる。好ましくは、ジオールは、それを過沃素酸塩と、次いで亜塩素酸塩と反応させることによってカルボン酸に変換される。
【0170】
グリセロール主鎖およびエーテル結合を介してそれに結合されたカルボン酸含有部分を有する、かくして得られた第四化合物は次いで、精製された生成物を得るように精製される。
【0171】
本発明者は、エポキシド中間体を介して得られた第四化合物が、その遊離ヒドロキシル基がアセテート、ピバロエートまたはベンゾエートの如き保護基によって保護されているなら、カラムクロマトグラフィの使用を回避しながら、容易に精製されることができることを驚くべきことに見出した。
【0172】
上述のように、遊離ヒドロキシル基は、もしグリセロール主鎖に存在するなら、保護されることが好ましく、その場合好ましく選択される保護基はトリチルである。しかしながら、トリチルは、大きく、嵩高く、かつ無極性部分であるので、その存在は、ある場合には、様々な中間体および最終生成物の単離および精製工程を複雑にする。
【0173】
本発明者は、トリチル基と関連した制限が、(i)上で広く記載されているように、アルデヒド含有化合物をその水溶解性付加物の形成を介して単離するか;または(ii)第二化合物の導入後にトリチル保護基を嵩高くない基によって置換することによって容易に回避されうることを見出した。さらに、上に記載されたように、第三化合物の酸化がジオールの形成を含むとき、いったんジオールが形成されたら、トリチル保護基は除去されることができ、生じたトリオールは結晶化によって単離されることができる。
【0174】
従って、本発明の好ましい実施態様によれば、方法は、精製された第三化合物の準備の後および/または第三化合物を酸化剤と反応させる前に、トリチル基をアセテート、ピバロエートまたはベンゾエートからなる群から選択される保護基で置換することをさらに含む。
【0175】
トリチル保護基の置換は典型的には、遊離ヒドロキシル基を得るようにトリチル基を除去し、ヒドロキシル基を所望の保護基で保護することによって実施される。
【0176】
ヒドロキシル基をアセテート基で保護することは、第三化合物を例えば無水酢酸と反応させることによって容易に実施される。ヒドロキシル基をピバロエート基で保護することは、第三化合物を例えば塩化ピバロイルと反応させることによって容易に実施される。ヒドロキシル基をベンゾエート基で保護することは、第三化合物を例えば塩化ベンゾイルと反応させることによって容易に実施される。
【0177】
アセテート、ピバロエートまたはベンゾエートを有する、本明細書で記載されるような第四化合物は、好ましくは抽出工程時にシリカゲルを使用しながら、従来の抽出技術によって実施されることができる。
【0178】
後述する実施例の欄(実施例2参照)で実証されるように、エーテル結合を介して酸化部分含有基を結合したグリセロール化合物をアセテート保護基を有するエポキシド含有中間体の形成を介して製造することによって、高度に精製された化合物および高反応収率を生じることが見出された。
【0179】
得られた第四化合物が上で記載したような保護基を有する場合には、いったん第四化合物が得られ精製されたら、保護基が除去される。
【0180】
酸化部分がエステルである場合には、方法は、カルボン酸含有化合物を準備し、次いでカルボン酸をエステルに変換することによって実施される。これは、従来公知の方法を使用して容易に実施されることができる。
【0181】
上で説明したように、グリセロール主鎖およびグリセルロール主鎖に結合された少なくとも一つの酸化部分含有残基を有し、さらにグリセロール主鎖に結合されたリン含有部分、好ましくはホスフェート含有部分を有する化合物は、酸化リン脂質として知られ、様々な状態を治療するのに極めて有用である。従って、本明細書に記載された方法は、所望によりおよび好ましくは、かかるリン含有部分をグリセロール主鎖に導入することをさらに含む。
【0182】
本明細書中で使用される表現「リン含有部分」は、本明細書中で規定されるように、一個以上のリン原子を含む部分を記載する。代表例は、限定されず、ホスフェート、ホスホネート、ホスフィン、酸化ホスフィン、ホスファイト、ピロホスフェートなどを含む。
【0183】
本明細書中で使用される用語「ホスホネート」は、−P(=O)(OR′)(OR′′)基を記載し、式中、R′およびR′′は各々独立して、本明細書中で規定されるように、水素、または置換もしくは非置換アルキル、シクロアルキルまたはアリールである。
【0184】
用語「ホスフィニル」は、−PR′R′′基(式中、R′およびR′′は上で規定された通りである)を記載する。
【0185】
用語「酸化ホスフィン」は、−P(=O)(R′)(R′′)末端基または−P(=O)(R′)−結合基を記載し、これらの表現は上で規定された通りであり、R′およびR′′は本明細書で規定された通りである。
【0186】
用語「ピロホスフェート」は、−O−P(=O)(OR′)−O−P(=O)(OR′)(OR′′)(OR′′′)基を記載し、R′およびR′′は本明細書中で規定された通りであり、R′′′はR′またはR′′として規定される。
【0187】
用語「ホスファイト」は、−O−PH(=O)(OR′)基(R′は本明細書中で規定された通りである)を記載する。
【0188】
用語「ホスフェート」は、−O−P(=O)(OR′)基(R′は本明細書中で規定された通りである)を記載する。
【0189】
用語「チオホスフェート」は、−O−P(=O)(=S)(OR′)基(R′は本明細書中で規定された通りである)を記載する。
【0190】
グリセロール化合物へのリン含有部分の導入は、第一化合物と第二化合物を反応させる前、第三化合物を単離する前、第三化合物を酸化剤と反応させる前、第四化合物を単離する前または第四化合物を単離した後のいずれかに実施されることができ、公知の方法のいずれかを使用して実施されることができる。
【0191】
それゆえグリセロール化合物を有する化合物にリン含有部分を導入することは、下記のようにすることによって実施される:
上記の第一化合物、第三化合物、精製された第三化合物、第四化合物または精製された第四化合物のいずれかをリン含有部分と反応させ、グリセロール主鎖およびグリセロール主鎖に結合された少なくとも一つの酸化部分含有残基を有し、さらにグリセロール主鎖に結合されたリン含有部分を有する化合物を得る。
【0192】
本発明の好ましい実施態様によれば、リン含有部分は、ホスホジエステル結合を介してグリセロール主鎖に結合されたホスフェート部分である。
【0193】
従って、リン含有部分は、例えばリン酸、ホスホリルコリン、ホスホリルエタノールアミン、ホスホリルセリン、ホスホリルカルジオリピン、ホスホリルイノシトール、エチルホスホコリン、ホスホリルメタノール、ホスホリルエタノール、ホスホリルプロパノール、ホスホリルブタノール、ホスホリルエタノールアミン−N−ラクトース、ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(プロピレングリコール)]、ホスホイノシトール−4−ホスフェート、ホスホイノシトール−4,5−ビホスフェート、ピロホスフェート、ホスホエタノールアミン−ジエチレントリアミン−ペンタアセテート、ジニトロフェニル−ホスホエタノールアミンおよびホスホグリセロールであることができる。
【0194】
好ましくは、リン含有部分は、グリセロール主鎖のsn−3位置に結合され、従ってかかる部分の導入は、反応化合物に存在する他の遊離ヒドロキシル基を適切に保護するかまたは保護されたヒドロキシル基を所望の位置で脱保護することによって、選択的に実施される。
【0195】
酸化リン脂質の現在公知の製造方法では、リン含有部分は典型的には、酸化部分含有化合物の準備前に導入される。
【0196】
さらに、リン含有部分がホスホリルコリンであり、かかる化合物において広く使用されかつ有益な部分である場合、現在公知の方法はN−アルキル化反応を伴い、それは例えばトリメチルアミンの如き危険で環境的に優しくない試薬を伴う。
【0197】
本発明者は、(i)リン含有部分が酸化部分含有化合物の準備の後に容易に導入されることができること;そして(ii)リン含有部分の導入が反応性のリン含有中間体を介して有効に実施されることができることを見出した。
【0198】
上記に基づいて、本発明者は、グリセロール主鎖およびエーテル結合を介して結合された酸化部分含有残基を有する化合物にリン含有部分を導入するための新規な方法を設計し、うまく実践した。
【0199】
この方法は、酸化部分含有化合物を製造するための上記の方法と組み合わせて、上記の治療的に有益な酸化リン脂質を製造するために有利に使用されることができる。
【0200】
従って、本発明の好ましい実施態様によれば、リン含有部分の導入は、第三化合物の製造後または第四化合物の製造後に実施されるが、後者が好ましい。しかしながら、本明細書中で提示されたリン含有部分の導入方法もまた他のいかなる段階にも適用可能であることは注目されるべきである。
【0201】
それゆえ、グリセロール化合物へのリン含有部分の導入は、本実施態様によれば、まず、遊離ヒドロキシル基を有する、上記の第一化合物、第三化合物、精製された第三化合物、第四化合物または精製された第四化合物を反応性リン含有基と反応させて、反応性リン含有基を有する化合物を生成し;そして反応性リン含有基をリン含有部分に変換することによって実施されることが好ましい。
【0202】
反応性リン含有化合物は、前記反応で、グリセロール主鎖に結合された反応性リン含有基が得られるように選択される。それゆえ、反応性リン含有化合物は、第二反応基および第三反応基を有するものとして選択され、第二反応基は、遊離ヒドロキシル基と反応できるように選択され、第三反応基は、リン含有部分に変換できるように選択される。
【0203】
遊離ヒドロキシル基と反応できる反応基は、例えばハロゲン化物、塩化スルホニル、アシルハロゲン化物などである。
【0204】
好ましくは、第二反応基はハロゲン化物であり、より好ましくは、それは塩化物である。
【0205】
上記のように、好ましいリン含有部分がホスフェート部分である間、リン含有化合物を所望のリン含有部分に変換することは、ホスフェートエステル結合の形成を伴う。かかる結合は、例えば塩化ホスホリルの如きリン誘導体をヒドロキシ含有部分と反応させることによって得られることができる。
【0206】
従って、好ましい実施態様によれば、反応性リン含有化合物は、オキシ塩化リン(POCl)であり、従って第三および第二反応基はともに塩化物であり、リン含有反応基を有する化合物はグリセロール主鎖およびそれに結合された塩化ホスホリルを有する。
【0207】
第一化合物、第三化合物、精製された第三化合物、第四化合物または精製された第四化合物をオキシ塩化リンと反応させることは典型的には、塩基の存在下で実施される。好適な塩基は、有機および無機塩基を含み、有機塩基が好ましい。従って、反応は、例えばトリアルキルアミン(例えばトリエチルアミン)の如き塩基の存在下で実施されることが好ましい。
【0208】
この反応はさらに、溶媒、好ましくはTHFの如き極性溶媒の存在下で実施されることが好ましい。
【0209】
本明細書中で記載された方法によって得られた塩化ホスホリル含有グリセロール含有化合物は、いかなる所望のリン含有部分にも容易に変換されることができ、それゆえ極めて有益な中間体である。
【0210】
従って、例えば、それは、後述する実施例の欄で実証されるように、その簡単な加水分解によってリン酸に変換されることができる。
【0211】
あるいは、それは、ヒドロキシ含有部分と反応させ、所望によりかつ好ましくは水とも反応させ、それによって他のホスフェート部分を得ることができる。
【0212】
治療用の酸化リン脂質(例えば塩化ホスホリル、ホスホリルエタノールアミン)に含まれる好ましいホスフェート部分は典型的には、アミノアルキル基を含み、それはさらにN−アルキル化されることができる。
【0213】
塩化ホスホリル中間体をかかるホスフェート部分に変換することは、(塩化物である)第三反応基と反応できるように選択された所望のアミノアルキル基の誘導体との反応によって容易に実施されることができる。
【0214】
従って、例えば、アミノアルキル含有ホスフェート部分は、塩化ホスホリル中間体をアミノアルコールと反応させることによって得られることができる。もし望むなら、アミノアルコールはその後さらにアルキル化されることができ、ホスホリルコリン部分の場合のように、N−アルキル化アミノアルキルホスフェート部分を生成することができる。
【0215】
上記方法を使用してグリセロール主鎖に結合されたかかるN−アルキル化アミノアルキルホスフェート部分を得ることは、かかる化合物を得るために典型的に使用されるトリメチルアミンの如き危険物質を使用する必要性を回避するので、極めて有益である。
【0216】
上で述べたように、リン含有部分の導入は、グリセロール化合物への酸化部分含有残基の導入の前または後のいずれかで実施されることができる。後述する実施例の欄で実証されるように、ホスホリルコリン部分は、酸化部分含有残基または不飽和部分含有残基(実施例4および5参照)のいずれかを有するグリセロール化合物中にうまく導入された。従って、本明細書で提示された反応性リン含有中間体を介してホスフェート部分を導入する方法は、エーテル結合を介して酸化または予備酸化部分を結合したグリセロール化合物で実施されることができる。酸化リン脂質の改良された製造方法に対する研究において、本発明者はさらに、グリセロール化合物への酸化部分含有残基の直接的導入によって実施される、エーテル結合を介して結合された酸化部分を有するグリセロール化合物のさらなる製造方法を設計し、実践した。
【0217】
従って、本発明の別の側面によれば、下記のようにして実施される、グリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合された少なくとも一つの酸化部分含有残基を有する化合物の製造方法が提供される:
上記のように、グリセロール主鎖および少なくとも一つの遊離ヒドロキシル基を有する第一化合物を準備する;
上記のように、少なくとも一つの酸化部分および少なくとも一つの第四反応基を有する第五化合物を準備する;
第一化合物と第五化合物を反応させ、それによってグリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合された少なくとも一つの酸化部分含有残基を有する化合物である第六化合物を含有する反応混合物を得る;そして
グリセロール主鎖およびエーテル結合を介してグリセロール主鎖に結合された少なくとも一つの酸化部分含有残基を有する化合物を単離する。
【0218】
それゆえ、本発明のこの側面による方法は、第一化合物の遊離ヒドロキシル基と反応できる反応基(本明細書では第四反応基と称する)および酸化部分を有する化合物(本明細書では第五化合物と称する)と上記第一化合物の反応を伴う。
【0219】
第五化合物中の酸化部分は、上記の酸化部分のいずれか、即ちアルデヒド、ジオール、カルボン酸、エステル、アセタールおよびケタールであることができる。所望により、酸化部分は、半酸化部分であることができる。即ち、酸化剤と反応することなしに所望の酸化部分に容易に変換される。かかる半酸化部分の一例はニトリルであり、それは簡単な加水分解によって容易にカルボン酸に変換されることができる。
【0220】
第五化合物中の第四反応基は、第一反応基に対して本明細書中で記載される通りであり、好ましくはハロゲン化物、より好ましくは臭化物である。
【0221】
第一化合物と第五化合物の反応は、塩基の存在下で実施されることが好ましい。例えば水素化ナトリウム、水素化リチウムアルミニウム、アミドナトリウム、水酸化ナトリウムおよびそれらの混合物の如き比較的強い無機塩基が好ましい。
【0222】
かかる反応条件下で、4個または5個の炭素原子を有する第五化合物は、反応時に環化される場合があり、従って反応に効果的に悪影響を及ぼす場合がある。
【0223】
従って、好ましくは、第五化合物は、4個未満または5個より多い炭素原子を有する。
【0224】
上で記載されたように、第一化合物が一つより多いヒドロキシル基を結合している場合には、ヒドロキシル基は、所望によりおよび好ましくは、第一と第五化合物の反応前に、保護基によって保護される。
【0225】
いったん第六化合物が得られたら、保護基は除去されることができ、その化合物は従来の精製方法を使用して精製される。
【0226】
本発明のこの側面による方法は、一工程の合成で記載された酸化部分含有化合物を作ることができるので、極めて有用である。
【0227】
この方法を使用して、酸化リン脂質は、第五化合物との反応の前またはそれより後に、上で詳述したリン含有部分を導入することにより容易に得られることができる。リン含有部分の導入は、上で提示された方法を使用して実施されることが好ましい。
【0228】
本明細書で記載された方法のいずれかにおいて、第一化合物は、それに結合されたアルキレン鎖を含むことができる。好ましくは、アルキレン鎖は、第一化合物のsn−1位置に結合される。
【0229】
アルキレン鎖は、例えばエステル結合またはエーテル結合によってグリセロール化合物に結合されることができる。好ましくは、アルキレン鎖は、最終生成物がジエーテル化グリセロール化合物であるように、エーテル結合を介して結合される。
【0230】
従って、本明細書中に記載された方法の各々において、第一化合物は、本明細書中で規定されるようなグリセロ脂質であり、好ましくは、脂質部分がグリセロールのsn−1位置に結合されるモノエーテル化グリセロ脂質である。それゆえ、かかる第一化合物は、一つの遊離ヒドロキシル基を有し、それは上記のように反応前に保護されることが好ましい。
【0231】
従って、第一化合物は、例えばグリセロール、グリセロ脂質、モノエーテル化グリセロ脂質、ジエーテル化グリセロ脂質、ホスホグリセロール、ホスホグリセリド、モノエーテル化ホスホグリセリドおよびリゾレシチンであることができる。
【0232】
上で詳述したように、酸化部分含有残基がグリセロール主鎖に結合される位置は、生じた化合物の活性に影響し、従ってさらに上で述べたように、反応を選択的に実施することが好ましい。
【0233】
好ましくは、本明細書中で記載された方法のいずれかにおいて、酸化部分含有残基は化合物のsn−2位置に結合される。従って、第一化合物を適切に選択および/または保護することによって、酸化部分含有残基の選択的結合が実施される。
【0234】
本発明の好ましい実施態様では、それゆえ第一化合物は下記一般式Iを有する:
式中、Aは存在しないか、またはCH,CH=CHおよびC=Oからなる群から選択され;
はHおよび1〜30個の炭素原子を有する炭素水素鎖からなる群から選択され、
は水素、アルキル、アリール、リン酸、ホスホリルコリン、ホスホリルエタノールアミン、ホスホリルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルカルジオリピン、ホスファチジルイノシトール、ホスホリルカルジオリピン、ホスホリルイノシトール、エチルホスホコリン、ホスホリルメタノール、ホスホリルエタノール、ホスホリルプロパノール、ホスホリルブタノール、ホスホリルエタノールアミン−N−ラクトース、ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(プロピレングリコール)]、ホスホイノシトール−4−ホスフェート、ホスホイノシトール−4,5−ビホスホネート、ピロホスフェート、ホスホエタノールアミン−ジエチレントリアミン−ペンタアセテート、ジニトロフェニル−ホスホエタノールアミン、ホスホグリセロールからなる群から選択される。
【0235】
上記方法のいずれかを使用して、下記一般式IIを有する化合物を得ることができる:
式中、AはCH,CH=CHおよびC=Oからなる群から選択され、好ましくはCHであり;
はCHであり、Rは1〜30個の炭素原子を有するアルキルであり;

であり、
式中、Xは1〜24個の炭素原子を有するアルキル鎖であり、
Yは水素、ヒドロキシ、アルキル、アルコキシ、ハロゲン化物、アセトキシおよび芳香族官能基からなる群から選択され、
Zは
からなる群から選択され、
はアルキルまたはアリールであり、Rは水素、アルキル、アリール、リン酸、ホスホリルコリン、ホスホリルエタノールアミン、ホスホリルセリン、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルカルジオリピン、ホスファチジルイノシトール、ホスホリルカルジオリピン、ホスホリルイノシトール、エチルホスホコリン、ホスホリルメタノール、ホスホリルエタノール、ホスホリルプロパノール、ホスホリルブタノール、ホスホリルエタノールアミン−N−ラクトース、ホスホエタノールアミン−N−[メトキシ(プロピレングリコール)]、ホスホイノシトール−4−ホスフェート、ホスホイノシトール−4,5−ビホスホネート、ピロホスフェート、ホスホエタノールアミン−ジエチレントリアミン−ペンタアセテート、ジニトロフェニル−ホスホエタノールアミン、ホスホグリセロールからなる群から選択される。
【0236】
本発明の追加の目的、利点及び新規な特徴は、下記実施例を考察すれば、当業技術者には明らかになるであろう。なおこれら実施例は本発明を限定するものではない。さらに、先に詳述されかつ本願の特許請求の範囲の項に特許請求されている本発明の各種実施態様と側面は各々、下記実施例の実験によって支持されている。
【実施例】
【0237】
上記説明とともに、以下の実施例を参照して本発明を限定されない態様で示す。
【0238】
一般合成経路:
本発明の教示によれば、幾つかの一般的な合成概念が下記のように酸化リン脂質を製造するために使用される:
(i)実施例1および計画I−Vで例示されているように、不飽和残基をグリセロ脂質に結合し、ジラール試薬を使用しながら不飽和結合を酸化するかおよび/または酸化生成物を単離するためにトリオール含有化合物を結晶化することによって、エーテル結合を介して少なくとも一つの酸化部分含有残基を有するグリセロ脂質化合物を製造する;
(ii)実施例2および計画VI−Xで例示されるように、不飽和残基をグリセロ脂質に結合し、アセトキシ保護基を使用しながら、エポキシド中間体を介して不飽和結合を酸化することによって、エーテル結合を介して結合された少なくとも一つの酸化部分含有残基を有するグリセロ脂質化合物を製造する;
(iii)実施例3および計画XIで例示されるように、酸化部分含有化合物の直接的導入によって、エーテル結合を介して結合された少なくとも一つの酸化部分含有残基を有するグリセロ脂質化合物を製造する;そして
(iv)実施例4および5および計画XII−XIVで例示されるように、反応性中間体を形成するために反応性リン含有化合物(例えば、二塩化リン)を使用してエーテル結合を介して結合された一つまたは二つの酸化(または予備酸化)部分含有残基を有するグリセロ脂質に反応性リン含有部分を導入する。
【0239】
実 施 例 1
過沃素酸塩およびジラールT試薬を使用するrac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ペンタノイックメチルエステル)−グリセロールの製造
この実施例では、不飽和部分はグリセロール主鎖に導入され、その後、蟻酸、過酸化水素および過沃素酸塩によって酸化される。次いで、かくして形成された酸化生成物は、ジラール試薬によって精製される。
【0240】
代表例として、rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ペンタノイックメチルエステル)−グリセロールがここに記載される。
【0241】
rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ペンタノイックメチルエステル)−グリセロールは、以下の計画I〜Vに記載されているように、本発明の教示に従って製造される。
【0242】
1−ヘキサデシル−3−トリチルグリセロールは、米国特許第6838452号に記載されたように製造された。要約すると、D−アセトングリセロール(4グラム)、粉末化された水酸化カリウム(約10グラム)および臭化ヘキサデシル(9.3グラム)をベンゼン(100ml)中で撹拌し、5時間還流し、一方共沸蒸留によって形成された水を除去した(W.J.BaumannおよびH.K.Mangold,J.Org.Chem.29:3055,1964およびF.Paltauf,Monatsh.99:1277,1968を比較)。溶媒の容積は約20mlに徐々に減少され、生じた混合物は、室温に冷却され、エーテル(100ml)に溶解された。生じた溶液は、水(2×50ml)で洗浄され、溶媒は、減圧下で除去された。メタノール:水:濃塩酸(90:10:5)の100ml混合物を残留物に加え、混合物を10分間還流した。生成物はエーテル(200ml)で抽出され、水(50ml)、10%水酸化ナトリウム(20ml)で連続的に洗浄され、中和まで水(20mlの容量)で再び洗浄された。溶媒は、減圧下で除去され、生成物(8.8グラム)は、ヘキサンから結晶化され、7.4グラムの純粋な1−ヘキサデシル−グリセロールを与えた。
【0243】
1−ヘキサデシルオキシ−グリセロール(7.9グラム)、トリフェニルクロロメタン(8.4グラム)および乾燥ピリジン(40ml)は、100℃で12時間加熱された。冷却後、300mlのエーテルおよび150mlの氷冷水が添加され、反応混合物が別の漏斗に移された。有機相は、50mlの氷水、1%炭酸カリウム溶液(塩基性まで)および50mlの水で連続的に洗浄され、次いで無水硫酸ナトリウム上で乾燥された。溶媒は、蒸発され、残留物は、150mlの温かい石油エーテルに溶解され、生じた溶液は、4℃で一晩冷却された。沈殿物の濾過後、濾液は、蒸発され、残留物は、−30℃で20mlの酢酸エチルから再結晶化され、8.2グラムの1−ヘキサデシル−3−トリチルグリセロール(融点49℃)を生じた。
【0244】
計画Iに描かれているように、1−ヘキサデシル−3−トリチルグリセロール(14.78グラム,0.0265mol)、6−ブロモ−1−ヘキサン(4.85グラム)および粉末化された水酸化カリウム(約10グラム)をヘキサン(200ml)中で撹拌し、6時間還流し、一方共沸蒸留によって形成された水を除去した。反応混合物は、室温に冷却され、水(3×100ml)で洗浄され、溶媒は、減圧下で除去された。残留物は、クロロホルム(50ml)中で溶解され、シリカゲル60(12.5グラム)上での濾過によって精製された。クロロホルムは、減圧下で除去され、残留物は、石油エーテル(100ml)中で溶解された。溶液は、4℃で一晩保たれ、その間に副生成物の沈殿が生じた。減圧下での溶媒の除去および濾過は、12.15グラム(0.0190モル)の1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−3−トリチルグリセロール(72%収率)を与えた。
【0245】
【0246】
1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキサニル)−3−トリチルグリセロール(19.80g)は、蟻酸(100ml)に溶解された。黄色溶液は、室温で2時間撹拌され、次いで氷浴で冷却された。過酸化水素33%(25ml)を液滴状で氷冷された溶液に50分間添加した。反応混合物の色は、ほとんどすぐに黄色から白色に変化された。添加が完了した後、氷浴中での撹拌がさらなる4時間続けられた。その後、反応混合物は、氷(150グラム)上に注がれ、エーテル(3×100ml)で抽出された。オレンジ色のエーテル溶液は、水(100ml)で洗浄され、溶媒は、減圧下で除去された。残留物は、ジクロロメタン(150ml)中で溶解され、重炭酸ナトリウムの飽和水溶液(100ml)で洗浄され、溶媒は、減圧下で除去された。次いで残留物は、熱いヘキサン(250ml)中で溶解された。白色化合物の沈殿物がすぐに得られた。溶液は、4℃で一晩維持された。沈殿物(0.53グラム)の濾過後、減圧下で溶媒を除去して、20.03グラムの黄色の油状残留物を与えた。この残留物は、イソプロパノール(200ml)中で溶解され、水酸化ナトリウムの水溶液(50mlの水に17.5グラム)が添加された。生じた溶液は、90℃で2時間加熱され、次いで冷却され、氷(150グラム)上に注がれた。次いで、混合物は、ジクロロメタン(3×100ml)で抽出され、有機相は、水(100ml)およびリン酸二水素ナトリウムの飽和水溶液で洗浄され、無水NaSO上で乾燥された。減圧下で溶媒を除去した後、10.77グラムの粗生成物が得られた。次いで粗生成物は、80%メタノール(100ml)中で溶解され、溶液は、4℃で一晩維持された。沈殿物を濾過し、減圧下で溶媒のほとんどを除去した。ジクロロメタン(3×100ml)で抽出し、無水NaSO上で乾燥し、減圧下で溶媒を除去した。ヘキサン(250ml)からの再結晶化は、7.44グラムの純粋な1−ヘキサデシル−2−(5′,6′−ジヒドロキシ−ヘキサニル)−グリセロールを与えた。
【0247】
【0248】
計画IIIに描かれているように、1−ヘキサデシル−2−(5′,6′−ジヒドロキシ−ヘキサニル)−グリセロール(7.84グラム)は、イソプロパノール(50ml)および水(12ml)中で溶解された。NaIO(9グラム)が添加され、反応混合物は、室温で3時間撹拌された。水(50ml)が添加され、反応混合物は、クロロホルム(3×50ml)で抽出され、無水NaSO上で乾燥され、濾過され、溶媒が減圧下で除去され、5.56グラムを生じた。粗生成物は、エタノール(60ml)および氷酢酸(2.3グラム)中で溶解された。ジラール試薬T(5.6グラム)が添加され、反応混合物は、2時間還流された。反応混合物は、氷浴中で冷却され、アルカリ性溶液(45mlの水に2.3グラム)が添加され、混合物は、エーテル(3×25ml)で抽出された。エーテル相は、水で洗浄され、その水をアルカリ性相と結合した。水性相は、濃HCl(4.4ml)で酸性化され、エーテル(3×25ml)で抽出された。水、飽和された重炭酸ナトリウム水溶液(3×25ml)、水(2×25ml)で洗浄し、無水NaSO上で乾燥し、減圧下で溶媒を除去して、1.95グラム(0.0049mol)の1−ヘキサデシル−2−(5′−オキソ−ペンタニル)−グリセロール(26.9%収率)を与えた。
【0249】
【0250】
計画IVに描かれているように、1−ヘキサデシル−2−(5′−オキソペンチル)−グリセロール(4.80グラム)は、乾燥トリエチルアミン(57ml)に溶解された。無水酢酸(20ml)が添加され、反応混合物は、室温で2.5時間撹拌された。反応混合物は、氷(100グラム)上に注がれ、ジクロロメタン(3×100ml)で抽出された。有機相は、水(100ml)、希塩酸(100ml)、水(100ml)、飽和された重炭酸ナトリウム水溶液(100ml)で連続的に洗浄され、再び水(100ml)で洗浄され、次いで無水硫酸ナトリウム上で乾燥された。溶媒は、減圧下で除去されて、4.54グラムの1−ヘキサデシル−2−(5′−オキソペンチル)−3−アセテートグリセロール(収率86%)を与えた。
【0251】
1−ヘキサデシル−2−(5′−オキソペンチル)−3−アセテートグリセロール(3.94グラム)は、t−ブタノール(75ml)中に溶解された。亜塩素酸ナトリウム(6.85グラム)およびリン酸二水素ナトリウム二水和物(15.50グラム)を水(75ml)に溶解した。その水溶液は、アルコール溶液に添加され、反応混合物は、室温で4時間維持された。次いで反応混合物は、別の漏斗に移され、ジクロロメタン(3×100ml)で抽出された。結合された有機相は、水(2×100ml)で洗浄され、溶媒は、減圧下で除去された。残留物は、メタノール(80ml)と10%NaOH水溶液(20ml)の混合物中で溶解され、その溶液は、室温で一晩撹拌された。メタノール溶液は、トルエンとヘキサン(1:1)の混合物(2×50ml)で抽出され、氷浴で冷却され、濃HClを徐々に添加して、pH5−6を達成した。次いで溶液は、ジクロロメタン(2×100ml)で抽出された。結合された有機相は、水(100ml)で洗浄され、無水NaSO上で乾燥され、溶媒は、減圧下で除去されて、2.07グラムの粗生成物を与えた。ヘキサン(20ml)からの再結晶化は、1.30グラムの純粋な1−ヘキサデシル−2−(5′−カルボキシ)ブチル−グリセロール(収率35%)を与えた。
【0252】
【0253】
計画Vに描かれているように、残留物にメタノール(100ml)および10%NaOH水溶液(20ml)を添加し、生じた溶液を室温で2時間撹拌した。溶液は、石油エーテル/トルエン(1:1,v/v)の混合物で抽出され、メタノール相は、濃HClでpH=0に酸性化され、次いでクロロホルム(3×50ml)で抽出された。結合されたクロロホルム相は、水(2×0ml)で洗浄され、無水NaSO上で乾燥され、溶媒は、減圧下で除去されて、0.77グラム(0.00179mol)のrac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ペンタノイックメチルエステル)−グリセロール(96.7%収率)を生じた。
【0254】
【0255】
実 施 例 2
過沃素酸塩およびアセテート保護基を使用するrac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ペンタノイックメチルエステル)−グリセロールの製造
この実施例では、不飽和部分をグリセロール主鎖に導入し、その後無水酢酸、4−クロロベンゾペルオキソ酸、HClO、過沃素酸塩およびメタノールによってエポキシドを介してエステルに酸化した。中間体の効率的な単離は、アセテート保護基を使用しながら反応を実施することによって行われる。
【0256】
代表例として、rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ペンタノイックメチルエステル)−グリセロールは、ここに記載される。
【0257】
rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ペンタノイックメチルエステル)−グリセロールは、以下の計画VI〜Xに記載されているように、本発明の教示に従って製造される。
【0258】
以下の計画VIに描かれているように、上の実施例1に記載されたように製造された1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−3−トリチルグリセロール(4.90グラム)は、メタノール(30ml)および濃塩酸(3ml)の混合物に溶解され、生じた溶液は、加熱されて4時間還流された。反応混合物は、室温に冷却され、氷(100グラム)上に注がれ、クロロホルム(3×100ml)で抽出された。有機相は、水(100ml)、重炭酸ナトリウム水溶液(100ml)で、そして再び水(100ml)で洗浄された。その後、有機相は、無水NaSO上で乾燥され、濾過され、溶媒は除去されて、3.75グラムの残留物を与えた。残留物は、n−ヘキサンに溶解され、4℃で一晩維持された。沈殿物の濾過および溶媒の除去は、3.17グラムを与え、それは、クロロホルム(200ml)に溶解され、シリカゲル(45グラム)に添加された。この溶液は、濾過され、シリカゲルは、クロロホルム:メタノールの混合物(200ml,9:1)およびクロロホルム:メタノールの混合物(200ml,1:1)で再び抽出された。二つの最後の抽出物は、結合され、減圧下で溶媒を除去され、2.56グラムの1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−グリセロール(84%収率)を与えた。
【0259】
【0260】
以下の計画VIIに描かれているように、乾燥ピリジン(5ml)および無水酢酸(3ml)を、生じた1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−グリセロールに添加し、反応混合物を70℃で2時間加熱した。反応混合物は、氷(25グラム)上に注がれ、ヘキサン(3×25ml)で抽出された。抽出物は、水(25ml)、希硫酸水溶液(25ml)、水(25ml)、重炭酸ナトリウム水溶液(25ml)および水で連続的に洗浄された。無水NaSO上での乾燥、濾過および溶媒の除去後、2.60グラムが得られた。残留物は、ジクロロメタン(50ml)中で溶解され、3−クロロ過安息香酸(3.84グラム)を添加され、反応混合物は、室温で一晩撹拌された。溶媒は、減圧下で約20mlに減少され、n−ヘキサン(100ml)が添加された。濾過後、溶媒は、蒸発され乾燥された。残留物は、n−ヘキサン(100ml)に溶解され、アルカリ性溶液(50mlの水における0.4グラムのNaOH)が添加され、相が分離された。水(25ml)、重炭酸ナトリウム水溶液(25ml)、水(25ml)での連続的な有機相の洗浄、無水NaSO上の乾燥、濾過および溶媒の除去は、2.40グラムの1−ヘキサデシル−2−(5′,6′−エポキシヘキサニル)−3−アセテートグリセロール(82%収率)を与えた。
【0261】
【0262】
以下の計画VIIIに描かれているように、1−ヘキサデシル−2−(5′,6′−エポキシヘキサニル)−3−アセテートグリセロールは、アセトン(50ml)に溶解された。7%HClO(5ml)が添加され、反応混合物が室温で40時間攪拌された。水(50ml)が添加され、反応混合物がクロロホルム(3×50ml)で抽出された。水(25ml)、重炭酸ナトリウム水溶液(25ml)、水(25ml)での連続的な有機相の洗浄、無水NaSO上での乾燥、濾過および溶媒の除去は、2.29グラムの油状残留物を与えた。残留物は、クロロホルム(200ml)に溶解され、シリカゲル(30グラム)に添加された。この溶液は、濾過され、シリカゲルは、クロロホルム:メタノールの混合物(200ml,8:2)で再び抽出された。第二の抽出において溶媒が減圧下で除去された後に1.45グラムの1−ヘキサデシル−2−(5′,6′−ジヒドロキシヘキサニル)−3−アセテートグリセロールが得られた。
【0263】
【0264】
以下の計画IXに描かれているように、1−ヘキサデシル−2−(5′,6′−ジヒドロキシヘキサニル)−3−アセテートグリセロールは、イソプロパノール(50ml)に溶解された。過沃素酸ナトリウムの水溶液(50mlの水における1.45グラム)が添加され、反応混合物が室温で2時間撹拌された。反応混合物は、クロロホルム(3×50ml)で抽出され、無水NaSO上で乾燥され、濾過され、溶媒が減圧下で除去され、0.96グラムを生じた。残留物は、t−ブタノール(50ml)中で溶解され、亜塩素酸ナトリウム(1.66グラム)およびリン酸二水素ナトリウム二水和物(3.76グラム)の水溶液(50ml)が添加された。反応混合物は、室温で4時間撹拌され、クロロホルム(2×50ml)で抽出され、溶媒が減圧下で除去された。残留物は、クロロホルム:ヘキサンの混合物(200ml,1:1)に溶解され、シリカゲル(15グラム)に添加された。溶液は、濾過され、シリカゲルは、クロロホルム(200ml)およびクロロホルム:メタノール(200ml,9:1)で再び抽出された。最後の抽出物からの溶媒は、減圧下で除去され、0.92グラムの1−ヘキサデシル−2−(5−カルボキシブチル)−3−アセテートグリセロールを与えた。
【0265】
【0266】
以下の計画Xに描かれているように、1−ヘキサデシル−2−(5′−カルボキシブチル)−3−アセテートグリセロールは、メタノールと10%NaOH水溶液の8:2混合物の50mlに溶解され、反応混合物は、室温で一晩強く撹拌された。反応混合物は、トルエン:石油エーテルの混合物(2×25ml,1:1)で抽出された。メタノール相は、約0のpHに達するまで濃HClで酸性化され、次いでクロロホルム(2×25ml)で抽出された。溶媒は、減圧下で除去され、残留物は、メタノール(10ml)に溶解された。濃HCl(2滴)を添加し、溶液を室温で一晩撹拌した後、クロロホルム(2×25ml)で抽出し、水(25ml)で有機相を連続的に洗浄し、次いで重炭酸ナトリウム水溶液(25ml)、水(25ml)で洗浄し、次いで無水NaSO上で乾燥し、濾過し、溶媒を除去して、0.86グラムの純粋なrac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ペンタノイックメチルエステル)−グリセロールを与えた。
【0267】
【0268】
実 施 例 3
酸化部分を直接導入されたrac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ペンタノイックエチルエステル)−グリセロールの製造
rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ペンタノイックエチルエステル)−グリセロールは、以下の計画XIに記載されたように、本発明の教示に従って製造された。
【0269】
【0270】
1−ヘキサデシル−3−トリチルグリセロールは、例えば上記実施例1に記載のようにまたは米国特許第6838425号に記載されているように製造された。
【0271】
磁気撹拌器を備えた三ッ口フラスコに、1.0グラム(1.8mmol)1−ヘキサデシル−3−トリチルグリセロール、0.78グラム(3.6mmol)5−ブロモバレリアン酸エチルエステルおよび75mlジメチルホルムアミド(DMF)を添加した。撹拌された溶液に、25mlジメチルホルムアミドに溶解された0.20グラム(5mmol)NaH(鉱油における60%分散液)を15分にわたって液滴状に添加し、反応が完了するまで撹拌を追加の1時間継続した。水(50ml)を添加し、混合物をエーテル(3×50ml)で抽出した。有機相は、無水NaSO上で乾燥され、溶媒が減圧下で除去された。粗生成物は、シリカゲル上でカラムクロマトグラフィで精製された。
【0272】
上記のようなトリチル基の脱保護は、最終生成物を与えた。
【0273】
実 施 例 4
グリセロ脂質化合物へのリン含有部分の導入
本発明の教示によれば、反応性リン含有部分は、エーテル結合を介して結合された一つまたは二つの酸化(または予備酸化)部分含有残基を有するグリセロ脂質化合物中に導入された。反応性リン含有部分の導入は、例えばオキシ塩化リンの如きリン含有化合物を使用して実施される。所望により、反応性リン含有部分の導入に続いて、反応性リン含有部分は、ホスフェート部分に変換される。
【0274】
rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−3−ジクロロホスフェートの製造:
代表例として、rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−3−ジクロロホスフェートは、以下の計画XIIに記載されているように、本発明の教示に従って製造された。
【0275】
【0276】
0.24ml(0.39グラム、2.53mmol)POClおよび10mlテトラヒドロフラン(THF)を、磁気撹拌器を備えた氷冷三ッ口フラスコ中に置いた。撹拌された溶液に液滴状で25分間にわたって、0.87グラム(2.2mmol)rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−グリセロール、0.34ml(0.25グラム、2.44mmol)トリエチルアミンおよび50mlテトラヒドロフラン(THF)の混合物を添加し、撹拌を氷浴中でさらなる10分間継続し、さらに23℃で45分間継続した。
【0277】
rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−3−ジクロロホスフェートは、加水分解され、それによって以下のように対応するホスファチジン酸を生成することができる。
【0278】
1グラムの氷を反応混合物に添加し、撹拌を30分間継続した。水(50ml)を次いで添加し、生成物をクロロホルム:MeOHの混合物(2:1,v/v,3×25ml)で抽出した。有機相は、水で洗浄され、減圧下で溶媒が除去された。
【0279】
あるいは、rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−3−ジクロロホスフェートは、様々なアルキルアミン誘導体と反応され、それによって以下に説明されるようにホスホグリセリドを生成することができる。
【0280】
rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−3−ジクロロホスフェートからのrac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−3−ホスホエタノールアミンの製造:
rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−3−ホスホエタノールアミンは、計画XIIIに記載されるように、本発明の教示に従って製造された。
【0281】
【0282】
実施例2においてすぐ上で記載されたように製造されたTHFにおけるrac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−3−ジクロロホスフェートの溶液は、氷浴中で冷却された。その溶液に液滴状で10分間にわたって0.16ml(0.16グラム、2.7mmol)エタノールアミン、0.34ml(0.25グラム、2.4mmol)トリエチルアミンおよび50mlTHFを添加した。全ての溶液を添加した後、生じた溶液をさらなる20分間撹拌し、次いで氷浴から除去し、室温で一晩撹拌した。
【0283】
溶液は、濾紙(Whatman #2)を使用して濾過された。濾紙上に残っている残留物は、減圧下で乾燥されて1.2グラムのオフホワイトの残留物を生じた。
【0284】
1.2グラムのオフホワイトの残留物は、24mlの氷酢酸および10mlの水の混合物中で溶解され、70℃で1時間維持され、室温に冷却された。生成物は、クロロホルム:メタノールの2:1の抽出溶液の50mlで2回洗浄することによって酢酸溶液から抽出された。抽出溶液の溶媒は、蒸発され、rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−グリセロールに対して85%の収率で0.94グラム(1.7mmol)rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−3−ホスホエタノールアミンが残った。
【0285】
rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−3−ホスホエタノールアミンからのrac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−3−ホスホコリンの製造
rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−3−ホスホコリンは、以下の計画XIVに記載されたように、本発明の教示に従って製造された。
【0286】
【0287】
磁気撹拌器を備えた三ッ口フラスコに、0.5グラム(0.99mmol)rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−3−ホスホエタノールアミン、50mlイソプロパノールおよび18mlCHClを添加した。撹拌しながら、5グラムKCOおよび10ml水の混合物を添加し、溶液の温度を約35℃〜約40℃の間で維持し、一方1.0ml(1.3グラム、11mmol)ジメチルサルフェートおよび10mlイソプロパノールの混合物を液滴状で45分間にわたって添加した。全ての溶液を添加した後、溶液をさらに90分間撹拌した。溶液は、室温に冷却された。生じた生成物は、クロロホルム:メタノールの2:1の溶液50mlで三回洗浄することによって溶液から抽出された。溶液の溶媒は、蒸発され、rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−3−ホスホエタノールアミンに対して92%の収率で0.50グラム(0.82mmol)rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−3−ホスホコリンが残った。
【0288】
純度は、クロロホルム:メタノール:水(70:26:4)の溶出溶媒を使用してアルミナ上で薄層クロマトグラフィで確認された。rac−1−ヘキサデシル−2−(5′−ヘキセニル)−3−ホスホコリンは、13C−NMRを使用して確認された。
【0289】
実 施 例 5
1−ヘキサデシル−2−(5′−カルボキシメチル)ブチル−3−ホスホコリンの製造:
1−ヘキサデシル−2−(5′−カルボキシメチル)ブチル−グリセロール(0.86グラム)、0.34グラム(2.6mmol)トリエチルアミンおよび50mlテトラヒドロフランの溶液を、液滴状で25分間にわたって0.24ml(0.39グラム、2.6mmol)POClおよび10mlテトラヒドロフラン(THF)の氷冷溶液に添加した。生じた混合物は、さらなる10分間氷浴中で撹拌され、45分間室温(23℃)で撹拌された。次いで反応混合物は、氷浴で冷却され、THF(50ml)におけるエタノールアミン(0.16ml)およびトリエチルアミン(0.64ml)の溶液は、強い撹拌下で液滴状でそれに添加された。撹拌は、さらなる10分間氷浴で継続され、さらに室温で一晩継続された。反応混合物は次いで濾過され、減圧下で溶媒が除去された。残留物は、酢酸(24ml)および水(10ml)の混合物に溶解され、溶液は、1時間で70℃に加熱された。室温に冷却後、混合物は、クロロホルム(2×25ml)で抽出され、溶媒は、減圧下で除去された。残留物は、イソプロパノール(50ml)およびジクロロメタン(18ml)の混合物中に溶解された。水(10ml)における炭酸カリウム(5.0グラム)をそれに添加し、生じた混合物を35〜40℃に温めた。10mlイソプロパノールにおけるジメチルサルフェート(1ml)の溶液は次いで45分間にわたって液滴状で添加された。さらなる90分後、混合物は、クロロホルム(3×50ml)で抽出され、溶媒が減圧下で除去され、1.10グラムの1−ヘキサデシル−2−(5′−カルボキシメチル)ブチル−3−ホスホコリン(92%収率)を与えた。
【0290】
1−ヘキサデシル−2−(5′−カルボキシ)ブチル−3−ホスホコリン:
1−ヘキサデシル−2−(5′−カルボキシメチル)ブチル−3−ホスホコリンをメタノール(25ml)に溶解した。90%メタノール(20ml)に溶解された水酸化ナトリウム(1.0グラム)をメタノール溶液に添加し、反応混合物を室温で5時間撹拌した。反応のpHは、リン酸二水素ナトリウムを添加することによって4に調整された。水(50ml)およびクロロホルム(50ml)が添加され、有機相が収集され、溶媒が減圧下で除去された。残留物は、クロロホルムに溶解され、無水NaSO上で乾燥され、濾過され、溶媒が減圧下で除去された。1−ヘキサデシル−2−(5′−カルボキシ)ブチル−3−ホスホコリン(0.71グラム)が得られた(66%収率)。
【0291】
明確にするため別個の実施態様で説明されている本発明の特定の特徴は単一の実施態様に組み合わせて提供することもできることは分かるであろう。逆に、簡潔にするため単一の実施態様で説明されている本発明の各種の特徴は別個にまたは適切なサブコンビネーションで提供することもできる。
【0292】
本発明はその特定の実施態様によって説明してきたが、多くの別法、変更及び変形があることは当業者には明らかであることは明白である。従って、本発明は、本願の請求項の精神と広い範囲の中に入るこのような別法、変更及び変形すべてを包含するものである。本明細書で挙げた刊行物、特許及び特許願はすべて、個々の刊行物、特許及び特許願が各々あたかも具体的にかつ個々に引用提示されているのと同程度に、全体を本明細書に援用するものである。さらに、本願で引用又は確認したことは本発明の先行技術として利用できるという自白とみなすべきではない。