(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655149
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】流体を制御するための弁
(51)【国際特許分類】
F16K 1/32 20060101AFI20141218BHJP
B60T 15/36 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
F16K1/32 Z
B60T15/36 Z
【請求項の数】10
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2013-529587(P2013-529587)
(86)(22)【出願日】2011年7月27日
(65)【公表番号】特表2013-543088(P2013-543088A)
(43)【公表日】2013年11月28日
(86)【国際出願番号】EP2011062885
(87)【国際公開番号】WO2012038122
(87)【国際公開日】20120329
【審査請求日】2013年3月22日
(31)【優先権主張番号】102010041300.3
(32)【優先日】2010年9月24日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】591245473
【氏名又は名称】ロベルト・ボッシュ・ゲゼルシャフト・ミト・ベシュレンクテル・ハフツング
【氏名又は名称原語表記】ROBERT BOSCH GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】100140109
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 新次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100075270
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 泰
(74)【代理人】
【識別番号】100096013
【弁理士】
【氏名又は名称】富田 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100114487
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 幸作
(72)【発明者】
【氏名】フィンク,ラインハルト
(72)【発明者】
【氏名】フォルヒ,ディルク
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイツェ,トーマス
【審査官】
北村 一
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭59−140967(JP,A)
【文献】
特開2005−163874(JP,A)
【文献】
実開昭59−039785(JP,U)
【文献】
特開平11−336925(JP,A)
【文献】
特開平06−280781(JP,A)
【文献】
実開昭56−113273(JP,U)
【文献】
特表2007−518041(JP,A)
【文献】
登録実用新案第3046444(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 1;15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を制御するための弁において、
貫通開口(4)を備える弁体(2)と、
該弁体(2)に形成されたテーパしている弁座(5)と、
該弁座(5)で前記貫通開口(4)を開放および閉鎖する閉鎖部材(3)と、
前記弁座(5)に接続する突出部(6)であって、前記弁座(5)の周の一部にわたってのみ延在している突出部(6)と
を備え、前記突出部(6)は、前記弁の開放時に、前記閉鎖部材(3)を半径方向に保持する、流体を制御するための弁。
【請求項2】
請求項1に記載の弁において、
前記突出部(6)が、前記弁座(5)と一体的に形成されている弁。
【請求項3】
請求項1または2に記載の弁において、
前記突出部(6)が、前記閉鎖部材(3)のストローク方向(B)に突出した多数の構成要素(7)によって冠状に形成されており、該突出した構成要素(7)が、中間スペース(8)によって互いに分離されている弁。
【請求項4】
請求項3に記載の弁において、
前記突出した構成要素(7)の間の前記中間スペース(8)が、周方向に、前記突出した構成要素(7)と等しいアーチ長さを備える弁。
【請求項5】
請求項1から4までのいずれか一項に記載の弁において、
前記突出部(6)が、周方向長さ全体の1/2未満および周方向長さの1/3を超えて形成されている弁。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか一項に記載の弁において、
前記突出部(6)が、前記閉鎖部材(3)のストローク方向(B)に、前記閉鎖部材(3)のストローク(H)よりも大きい長さ(L)を備える弁。
【請求項7】
請求項1から6までのいずれか一項に記載の弁において、
前記弁座(5)が、円錐状に形成されている弁。
【請求項8】
請求項1から7までのいずれか一項に記載の弁において、
前記弁座(5)が、完全に周方向に延在する縁部(9)に移行し、前記突出部(6)が前記縁部(9)に形成されている弁。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の弁において、
前記弁が逆止弁として形成されている弁。
【請求項10】
車両用ブレーキ装置において、
請求項1から9までのいずれか一項に記載の弁を含むブレーキ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体を制御するための弁、および、特に車両のブレーキシステムのための逆止弁に関する。
【背景技術】
【0002】
流体を制御するための弁は、従来技術により種々異なった構成で既知である。このような弁の使用分野は、例えば、液圧液を制御するためのブレーキシステムである。特に重量および構成スペースを減じるために、最近ではこのようなシステムおよびあらゆる構成部材をも小型化する動きがある。しかしながら、ブレーキ流体装置で使用する場合、所定の最低貫流量が確保される必要がある。さらに弁を通る流体の抵抗が大きすぎてはならない。しかしながら、寸法が低減された場合、場合によっては弁のストローク高さを増大する必要がある。しかしながら、これにより、弁の閉鎖部材が紛失されやすくなる。したがって、閉鎖部材の紛失を防止することのできる安価で小型の弁が得られることが望ましい。
【発明の概要】
【0003】
これに対して、本発明によれば、請求項1の特徴を備える流体を制御するための弁は、弁部材の紛失の危険性が著しく低減されているという利点を有する。それにも関わらず、本発明による弁は極めて安価に作製可能であり、極めて小さい寸法しか有していない。これは、発明によれば、本弁が、弁座に接続する突出部を備えていることにより達成される。突出部は、弁座の周の一部にのみ延在している。突出部は、閉鎖部材が弁座から遠く引き離され、紛失されることを防止し、しかも、突出部は弁座の全周には提供されていないので、開放された弁を通る高い貫流量を確保することができる。したがって、突出部は、弁の開放時に、弁を通る流体の流れによって閉鎖部材が横方向に押し離され、極端な場合には紛失されてしまうことを、流体抵抗を高めることなしに防止する。
【0004】
従属請求項は本発明の好ましい実施形態を示す。
【0005】
好ましくは、突出部は弁座と一体的に形成されている。これにより、特に簡単で安価な製造可能性を達成することができる。
【0006】
特に好ましくは、突出部は、閉鎖部材のストローク方向に突出する多数の構成要素によって冠状に形成されており、これらの構成要素は中間スペースによって互いに分離されている。突出した構成要素は、閉鎖部材が紛失され得ることを防止し、弁の開放時に流体は突出した構成要素の間を貫流できる。
【0007】
さらに好ましくは、冠状部の突出した構成要素間の中間スペースは、周方向に、中間スペースの周方向のアーチ長さが突出した構成要素の周方向のアーチ長さと等しくなるように形成されている。
【0008】
特に好ましくは、突出部は、周方向長さ全体の1/2未満および弁座の周方向長さの1/3を超えて設けられている。
【0009】
本発明の好ましい別の構成によれば、突出部は、閉鎖部材のストローク方向に、閉鎖部材のストロークよりも大きい長さを備える。これにより、特に弁における閉鎖部材の確実な保持を達成することができる。
【0010】
弁座は、好ましくは円錐状に形成されている。
【0011】
さらに好ましくは、弁座は完全に周方向に延在する縁部に移行し、突出部はこの縁部に形成されている。
【0012】
本発明の別の好ましい構成によれば、閉鎖部材は弁座でシールするためのシール円錐体を備え、これにより大きいシール面を提供する。
【0013】
特に好ましくは、本発明による弁は逆止弁として形成されており、さらに閉鎖部材のストロークを制限するためのストッパを含む。
【0014】
さらに本発明は、本発明による弁、特に本発明による逆止弁を備えるブレーキ装置に関する。
【0015】
次に、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明による弁のための弁体の第1実施例を示す斜視図である。
【
図4】本発明による弁のための弁体の第2実施例を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に
図1、
図2および
図3を参照して、本発明の第1の好ましい実施例による流体を制御するための弁1を説明する。第1実施例の弁1は、ブレーキ回路で使用される逆止弁である。
【0018】
図3から分かるように、弁1は、貫通開口4を備える弁体2を含む。さらに弁体2には、円錐状にテーパする弁座5が形成されている。閉鎖部材3は貫通開口4を開放し、弁座5でシールする形式で貫通開口を閉鎖する。この場合、閉鎖部材3はシール円錐体3aとして形成されている。閉鎖部材3は、差圧の印加により閉じられる。閉鎖部材3の運動は、
図3に二重矢印Bによって示唆されている。閉鎖部材3の運動方向は、この場合、弁の中心軸線X−Xの方向である。
【0019】
図3の矢印Aは、逆止弁を通る流れ方向を示す。さらに、特に
図1および
図2に示すように、流れ方向に弁座5の端部に突出部6が形成されている。この突出部6は冠状に形成されている。冠状の突出部6は複数の突出した構成要素7を含み、これらの突出した構成要素7は、周方向にそれぞれ1つの中間スペース8をおいて相互に離間されている。突出した構成要素7は、この場合、軸線方向に突出しており、アーチ状に形成されている。冠状の突出部6は、
図1からわかるように、弁座5の外周の半分にのみ形成されている。
【0020】
さらに
図1に示すように、弁座5には、まず完全に周方向に延在する縁部9が形成されており、縁部9は、しかしながら、軸線方向に低い高さしか備えていない。さらにこの縁部9には、冠状の突出部6の突出した構成要素7が配置されている。この実施例では、弁体2は縁部9および突出部6と共に、例えば射出成形によって作製可能な一体的な構成部品として設けられている。
【0021】
図1に示すように、突出した構成要素7の周方向のアーチ長さは、中間スペース8のアーチ長さに等しい。これにより、突出した構成要素7が、開放された弁を通過する流体の流れを制限することができる程、過度に大きい面積を占めないことが確保される。しかしながら、突出した構成要素7は、軸線方向X−Xに閉鎖部材3のストロークHよりも大きい長さLを備える。これにより、突出した構成要素7は、弁の開放時に閉鎖部材3が弁座5から横方向に押し出され、紛失されることを防止する。この場合、突出した構成要素7は、貫流量が過度に減じられることなしに、また開放された弁で不都合に大きい流体抵抗が生じることなしに、保持機能を果たす。
【0022】
次に、
図4を参照して、本発明の第2実施例による弁体2を説明する。この場合、同じ、または機能的に同じ部材には第1実施例と同じ符号を付す。
【0023】
第1実施例とは異なり、第2実施例の弁体2は、途切れていない連続した突出部6を備える。このように突出部6は、第2実施例では弁座5の周の一部のみにわたって設けられている。この実施例では、突出部6の周方向長さは弁座5の全周の1/3〜1/2である。周の一部のみにわたって突出部6が設けられていることにより、閉鎖部材の紛失が防止されることの他に、流体の流れ方向に意図的に影響を及ぼすことができる。閉鎖部材の直径は突出部6の最小直径よりも小さいので、突出部6の近傍で流れが妨げられることが防止される。
【0024】
したがって、上記実施例に示した本発明による弁1は、突出部6が設けられていることにより、流れ方向に見た弁座5の端部の構成が既知のタイプの弁とは異なっている。本発明は、好ましくはブレーキシステムにおける逆止弁との関連で用いられる。