特許第5655154号(P5655154)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5655154押出―射出―発泡連続成形工法を用いたアンダーカバーの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655154
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】押出―射出―発泡連続成形工法を用いたアンダーカバーの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 69/00 20060101AFI20141218BHJP
   B62D 25/20 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
   B29C69/00
   B62D25/20 N
【請求項の数】5
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2013-538669(P2013-538669)
(86)(22)【出願日】2011年11月28日
(65)【公表番号】特表2013-544198(P2013-544198A)
(43)【公表日】2013年12月12日
(86)【国際出願番号】KR2011009098
(87)【国際公開番号】WO2012070918
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2013年5月14日
(31)【優先権主張番号】10-2010-0119154
(32)【優先日】2010年11月26日
(33)【優先権主張国】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】509286787
【氏名又は名称】エルジー・ハウシス・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】LG HAUSYS,LTD.
(74)【代理人】
【識別番号】100113664
【弁理士】
【氏名又は名称】森岡 正往
(74)【代理人】
【識別番号】100081776
【弁理士】
【氏名又は名称】大川 宏
(72)【発明者】
【氏名】ユン ヨンフン
(72)【発明者】
【氏名】キム ムソン
(72)【発明者】
【氏名】イ キュセ
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンミン
(72)【発明者】
【氏名】ムン ビョンサン
(72)【発明者】
【氏名】チャ ソンウォン
(72)【発明者】
【氏名】キム ヨンホ
(72)【発明者】
【氏名】チョ スヒョン
【審査官】 関根 崇
(56)【参考文献】
【文献】 特開2010−076163(JP,A)
【文献】 特表2006−502888(JP,A)
【文献】 特開平07−195414(JP,A)
【文献】 特開2005−231211(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 69/00
B29C 45/04
B29C 39/04
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラスチック、ガラス繊維、相溶化剤及びゴムを含む基底部原料を押出機に投入し、溶融及び混合して混合樹脂を押出する段階;
前記の押出された混合樹脂を溶融状態で移送して射出成形する段階;
前記の射出成形された混合樹脂を射出金型から取り出さず、射出金型を開いた状態で回転させ、射出された混合樹脂を発泡金型に移送する段階;
前記発泡金型内で混合樹脂を火炎処理する段階;及び
発泡金型を閉め、前記の火炎処理された混合樹脂の表面でポリウレタンを発泡成形する段階;を含む押出―射出―発泡連続成形工法を用いたアンダーカバーの製造方法。
【請求項2】
前記プラスチックはポリプロピレンであることを特徴とする、請求項1に記載のアンダーカバーの製造方法。
【請求項3】
前記ゴムはポリオレフィンエラストマーであることを特徴とする、請求項1に記載のアンダーカバーの製造方法。
【請求項4】
前記基底部原料は、プラスチック60〜80重量%、ガラス繊維15〜30重量%、相溶化剤1〜5重量%及びゴム3〜8重量%を含むことを特徴とする、請求項1に記載のアンダーカバーの製造方法。
【請求項5】
前記ガラス繊維は、押出機のシリンダーの中間を通過した位置でシリンダーの内部に投入されることを特徴とする、請求項1に記載のアンダーカバーの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車の下面に車体保護及び騒音低減を目的とするアンダーカバー部品を製造するにおいて、押出―射出―発泡連続成形工法を用いてガラス繊維を含むアンダーカバーの基底に発泡体吸音構造物を付着させた形態で製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジンには、そのエンジンの駆動による騒音を遮断するためにエンジンの下面にアンダーカバーを設置している。このようなアンダーカバーは、通常、プラスチックなどの合成樹脂で成形された基底部の一面に、一定厚さを有するように発泡ポリウレタンなどの吸音構造部を付着させた構造となっている。
【0003】
既存には、樹脂のコンパウンディング工程、樹脂の射出成形工程、吸音材の発泡成形工程、射出物である基底部と発泡体である吸音構造部とを接着する工程、その後の様々な後処理工程などを通してアンダーカバーを製造していた。しかし、前記方法は、基底部と吸音構造部をそれぞれ別途に製作し、これを接着剤で付着させる接着工程を必要とするという点で工程構成上効果的でなかった。
【0004】
また、既存には、基底部と吸音構造部を接着剤で付着させたが、アンダーカバーの構造が複雑になりつつあることから、接着剤を用いた工程が漸次難しくなっており、また、接着剤はアンダーカバーの物理的性能の側面で不利であるという短所を有している。
【0005】
従って、基底部に吸音構造部を一体化形態で付着させたアンダーカバーを製造しようとする研究が進められた。このような試みとしては、発泡性樹脂を含む基底部材料及び吸音部材料を順次金型上に積層し、その後、これを加熱加圧してプレス成形すると同時に、基底部材料内の発泡性樹脂を発泡硬化させる方法がある。また、射出成形又はプレス成形で製造した基底部に真空成形などを用いて表皮層を形成した後、基底部と表皮層との間に発泡樹脂を注入して発泡成形をする方法もある。しかし、これら各方法は、それぞれの工程が別途に行われなければならないので、工程の数が多くかつ複雑であるだけでなく、アンダーカバーの製造時間が長くかかるという問題を有する。また、プレス成形をする場合、形状自由度が低下するという問題が生じる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明者等は、アンダーカバーとして要求される物性を満足させながらも、単一成形工程を通してアンダーカバーを製造できる技術を開発しようと持続的に研究した結果、プラスチックとガラス繊維を中心とした混合材料の基底部に発泡体形態からなる吸音構造部を一体化形態で付着させたアンダーカバー部品を押出―射出―発泡連続成形工法を通して製造できることを確認し、本発明を完成するに至った。従って、本発明は、簡単な連続成形工法を通して物性に優れたアンダーカバーを製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、プラスチック、ガラス繊維、相溶化剤及びゴムを含む基底部原料を押出機に投入し、溶融及び混合して混合樹脂を押出する段階;前記の押出された混合樹脂を溶融状態で移送して射出成形する段階;前記の射出成形された混合樹脂を射出金型から取り出さず、射出金型を開いた状態で回転させ、射出された混合樹脂を発泡金型に移送する段階;前記発泡金型内で混合樹脂を火炎処理する段階;及び発泡金型を閉め、前記の火炎処理された混合樹脂表面でポリウレタンを発泡成形する段階;を含む押出―射出―発泡連続成形工法を用いたアンダーカバーの製造方法を特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係るアンダーカバーの製造方法によると、材料を別途にコンパウンディングしてペレット化(pelletizing)する過程と、射出物を成形して発泡体を成形する過程とが一つの工程で行われるので、材料と各構成部位の移送が短縮され、成形寸法の誤差、移送過程上の変質及び汚染の危険を減少させることができる。また、製造されたアンダーカバーは、物理的物性を阻害する接着剤を別途に必要としないので、既存のアンダーカバーと同等水準以上の機械的強度及び吸音性能を示す。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】押出―射出―発泡連続成形工法を通した吸音構造一体型ガラス繊維強化アンダーカバーを製造する過程を図式化したものである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下では、本発明をより詳細に説明する。
【0011】
本発明は、基底部原料を溶融押出及び射出成形した後、射出物を射出金型から取り出さずに発泡金型に移送し、発泡金型で吸音構造体を発泡させることによって、1回の工程を通してアンダーカバーを製造する方法に関する。
【0012】
まず、プラスチック、ガラス繊維、相溶化剤及びゴムを含む基底部原料を押出機に投入し、溶融及び混合して混合樹脂を押出する段階を行う。前記プラスチックは、アンダーカバーの基底部として使用される素材であればその種類に特別な限定がなく、望ましくは、ポリプロピレンを使用すると良い。このようなプラスチックは、基底部原料中の60〜80重量%で使用すると良いが、プラスチックの含量が60重量%未満であると相対的にガラス繊維の含量が高くなり、比重が上昇するという問題があり、プラスチックの含量が80重量%を超えると機械的物性が低下するという問題があり得る。
【0013】
前記ガラス繊維は、アンダーカバー基底部の機械的物性を向上させるために使用する。ガラス繊維の使用量は、基底部原料中の15〜30重量%であることが望ましいが、ガラス繊維の使用量が過度に少ないと、比重は低くなるが、強度や耐久性などの機械的物性が低下し、ガラス繊維の使用量が30重量%を超えると、比重が上昇するという問題があり得る。また、前記相溶化剤は、原料間の分散配合が上手く起こり、他の材料間の混合時に安定化を促進する目的で使用する。望ましくは、ポリプロピレン系列の相溶化剤を用いると良く、商品化されたものとしてCM―1120W(湖南石油化学社)を使用することができる。相溶化剤の含量は1〜5重量%であると良いが、含量が1重量%未満であると、使用による効果上の実益が微々たるものとなり、含量が5重量%を超えたとしても増量による実益がなく、物性が低下し得るので、前記範囲を選択することが望ましい。また、前記ゴムは、基底部の衝撃強度向上の目的で使用する。このようなゴムとしては、具体的にポリオレフィンエラストマー(Dow chemical company社)を使用することができる。基底部原料中のゴムの含量は3〜8重量%であることが望ましいが、ゴムの含量が3重量%未満であると、目的とする衝撃強度を得ることが難しく、ゴムの含量が8重量%を超えると、引張強度、屈曲強度及び屈曲弾性率が低下するという問題があり得る。基底部原料としては、必要に応じて着色のための添加剤などをさらに含むことができる。
【0014】
押出は、原料を溶融及び混合してコンパウンディングする過程であって、プラスチック、相溶化剤、ゴム、添加剤などはホッパー(hopper)を通して押出機に投入するが、ガラス繊維は、切断しない長繊維形態で押出機のシリンダーの中間を通過した位置でシリンダーの内部に直接投入することが望ましい。ガラス繊維を別途に投入することによって繊維の過多な切断現象を防止し、基底部内で2mm以上の長さを維持することができる。
【0015】
シリンダーの内部では、連続的にコンパウンディングされた混合樹脂は、溶融状態でノズル部位に配置された移送路を通して射出成形金型に伝達される。射出成形時、金型にはアンダーカバー基底部の重量だけの混合樹脂を計量して投入し、計量後に射出する間、溶融状態の混合樹脂を受けられない場合、追加的なシリンダーの内部に一時的に貯蔵した後、次の計量段階で移送を行うことによって連続的な工程を構成することが望ましい。
【0016】
射出成形が終了すると、射出された混合樹脂を射出金型から取り出さず、射出金型を開いた状態で回転させ、射出された混合樹脂を発泡金型に移送するようになる。射出金型は、射出機と発泡機との間に位置した回転するコア部位を下型とするとき、このような下型は、混合樹脂の射出が行われるゲートが存在する上型及び発泡材料を注入するゲートが存在する上型のそれぞれに対して回転を通して順次金型開閉が可能な構造である。基底部射出品の成形を射出ゲートを通して行った後、下型を回転させて発泡ゲート方向に回すことによって、射出された混合樹脂を発泡金型に移送する。
【0017】
その後、発泡金型内で混合樹脂を火炎処理する段階を行う。火炎処理を通して射出物の表面を界面活性化させ、接着剤がなくても吸音構造部である発泡部を基底部に付着させることができる。火炎処理は、基底部が付着している下型が発泡機の上型側に回転した後で停止したとき、射出機及び発泡機の外郭に位置した火炎放射器が装着されているロボットなどを用いて吸音材が付着する基底部の部分に火炎処理をする方法で行う。
【0018】
次に、発泡金型を閉め、前記の火炎処理された混合樹脂の表面でポリウレタンを発泡成形する段階を経てアンダーカバーを製造することができる。このとき、ポリウレタンが発泡されながら吸音構造部を形成し、このような吸音構造部は、射出成形された混合樹脂である基底部に付着する。発泡時の圧力は150〜200barであることが望ましいが、圧力が150bar未満であると、発泡剤の原料であるポリオールとイソシアネートの不均衡混合によって発泡性能が低下するという問題があり、圧力が200barを超えると、工程効率が低下し、製造単価が上昇するという問題があり得る。
【0019】
本発明に係るアンダーカバーの製造方法によると、単一化された1回の押出―射出―発泡連続成形工程を通してアンダーカバーの製造が可能であり、工程効率を高めることができ、製造されたアンダーカバーは接着剤を含有しないので、既存の製造方法による製品に対比して同等及び優れた物性を有する。
【0020】
以下、本発明を実施例に基づいてより詳細に説明するが、本発明が次の実施例によって限定されることはない。
【0021】
[実施例]
実施例1
ポリプロピレン72重量%、相溶化剤(CM―1120W(湖南石油化学社))3重量%及びゴムであるポリオレフィンエラストマー(Dow chemical company)5重量%をホッパーを通して押出機に投入し、ガラス繊維は、押出機のシリンダーの押出方向に60%を通過した位置でシリンダーの内部に直接投入した。シリンダーの内部は、基底部原料の溶融のために210℃の状態に維持し、スクリューの回転速度は150rpmに調整して混合樹脂を押出した。
【0022】
溶融された混合樹脂を射出ゲートを通して50mm/sの射出速度で射出金型に注入して混合樹脂を射出成形した後、射出成形された混合樹脂を射出金型から取り出さず、射出金型を開いた状態で発泡ゲート方向に回転させた。
【0023】
その後、射出成形された混合樹脂を火炎放射器が装着されているロボットを用いて火炎処理した後、発泡金型を閉めた状態で160barの圧力でポリウレタンを注入し、射出された混合樹脂である基底部に発泡ポリウレタンである吸音構造部を付着させた一体型アンダーカバーを製造した。
【0024】
実施例2
前記実施例1と同一に実施し、ポリプロピレン67重量%、ガラス繊維25重量%を使用した。
【0025】
物性測定試験
1)屈曲弾性率
ASTM D790規格に基づいて試験した。ただし、試験片のサイズは127mm×12.7mm6.4mmであって、速度は5mm/minであった。
【0026】
2)衝撃強度
ASTM D256規格に基づいて試験した。ただし、試験片のサイズは63.5mm×12.7mm×6.4mmであって、切り欠き(notch)された試験片を使用した。衝撃強度は、常温(25℃)及び低温(−30℃)でそれぞれ試験した。
【0027】
3)走行騒音試験
実施例1で製造したアンダーカバーを排気量1991cc、総重量1995kgの4気筒直接噴射式ディーゼルエンジンの中型乗用車両に付着し、ISO―362試験法を用いて試験した。
【0028】
4)におい試験
80℃でMS 300―34規格に基づいて試験した。
【0029】
【表1】
【0030】
前記表1は、実施例1〜2で製造したアンダーカバーの物性測定試験結果である。前記表1から確認できるように、基底部にガラス繊維が相対的に多く含有された実施例2の場合、屈曲弾性率、衝撃強度の面でより良い結果を示した。しかし、実施例1〜2は、いずれも屈曲弾性率が2.63GPaを超える優れた結果を示すが、これは、市販のアンダーカバーの屈曲弾性率と類似するか、それより少し高い数値である。また、衝撃強度も、実施例1〜2は、いずれも常温衝撃強度が19KJ/m以上と優れた結果を示し、低温衝撃強度の場合、市販のアンダーカバーと類似する結果を示した。
【0031】
その他に、走行騒音試験結果及びにおい試験結果も、車両に適用するために要求される物性を満足するので、本発明のアンダーカバー製造方法によると、単一化された1回の工程を通して、既存のアンダーカバーと同等水準以上の機械的強度及び吸音性能を示すアンダーカバーを製造できることを確認することができた。
図1