(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655157
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】横方向放出による損失を減じ、横方向モードの抑制により動作を改善した電子音響変換器
(51)【国際特許分類】
H03H 9/145 20060101AFI20141218BHJP
H03H 9/17 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
H03H9/145 C
H03H9/145 Z
H03H9/17 Z
【請求項の数】19
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-542505(P2013-542505)
(86)(22)【出願日】2011年12月6日
(65)【公表番号】特表2014-500681(P2014-500681A)
(43)【公表日】2014年1月9日
(86)【国際出願番号】EP2011071900
(87)【国際公開番号】WO2012076517
(87)【国際公開日】20120614
【審査請求日】2013年7月22日
(31)【優先権主張番号】102010053674.1
(32)【優先日】2010年12月7日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】300002160
【氏名又は名称】エプコス アクチエンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】EPCOS AG
(74)【代理人】
【識別番号】100090022
【弁理士】
【氏名又は名称】長門 侃二
(72)【発明者】
【氏名】ルイール, ヴェルナー
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー, マルクス
(72)【発明者】
【氏名】レーゼラー, ウルリケ
(72)【発明者】
【氏名】ハウザー, マルクス
(72)【発明者】
【氏名】ブレイル, インゴ
(72)【発明者】
【氏名】リハ, ゲルド
(72)【発明者】
【氏名】エグス, クリストフ
【審査官】
橋本 和志
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−159039(JP,A)
【文献】
国際公開第2010/137279(WO,A1)
【文献】
特開昭56−043818(JP,A)
【文献】
実開平06−066130(JP,U)
【文献】
特開昭57−162818(JP,A)
【文献】
特開平11−225038(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03H9/00−9/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
音響経路(AS)の圧電基板(11)上に配置されており、
前記圧電基板(11)に配置された2つの電極(1,2)を備え、前記電極が、音響波を励起するために相互に係合する電極フィンガー(3,4)を備える電子音響変換器において、
前記電極(1,2)の前記電極フィンガー(3,4)が互いに接続されており、
前記変換器が、前記音響経路(AS)に対して平行に延在する中央の励起領域(ZAB)の分布質量を高めるための手段を備え、
前記中央の励起領域(ZAB)の分布質量が、両側から前記中央の励起領域(ZAB)に接続している縁部領域(RB)よりも高くなっており、
前記変換器が誘電層(12)を備え、前記誘電層が前記電極フィンガー(3,4)を少なくとも部分的に覆っており、
前記誘電層(12)の横断面外形は構造化されており、
前記誘電層(12)の最下層(14)が前記変換器を完全に覆っており、前記最下層(14)の上部に位置する層(15)が最下層(14)を部分的に覆っており、
前記誘電層(12)の前記最下層(14)が、前記最下層の上部に位置する層(15)よりも小さな単位面積当たりの分布質量を備える電子音響変換器。
【請求項2】
請求項1に記載の電極変換器において、
一方の電極(1,2)の電極フィンガー(3,4)の自由端部に、他方の電極(2,1)に接続されたスタブ状フィンガー(7,8)が向かい合っており、前記誘電層(12)が前記電極フィンガー(3,4)およびスタブ状フィンガー(7,8)を部分的に覆っている電子音響変換器。
【請求項3】
請求項1に記載の電子音響変換器において、
一方の電極(1,2)の電極フィンガー(3,4)の端部に、他方の電極(2,1)に接続されたスタブ状フィンガー(7,8)が向かい合っており、前記誘電層(12)が、前記2つの電極(1,2)の電極フィンガー(3,4)が重なる領域で前記電極フィンガー(3,4)を覆っており、前記スタブ状フィンガー(7,8)と、向かい合った前記電極フィンガー(3,4)との間の間隙(13)は、前記誘電層(12)によって覆われていない電子音響変換器。
【請求項4】
請求項1に記載の音響変換器において、
一方の電極(1,2)の電極フィンガー(3,4)の端部に、他方の電極(2,1)に接続されたスタブ状フィンガー(7,8)が向かい合っており、前記誘電層(12)が、前記2つの電極(1,2)の電極フィンガー(3,4)が重なる領域で前記電極フィンガー(3,4)を覆っており、前記スタブ状フィンガー(7,8)と、向かい合った電極フィンガー(3,4)との間の間隙(13)を覆っており、スタブ状フィンガー(7,8)をストリップ状構造で覆っており、スタブ状フィンガー(7,8)が誘電層(12)によって覆われているストリップと、スタブ状フィンガー(7,8)に誘電層(12)が設けられていないストリップとが交互に現れる電子音響変換器。
【請求項5】
請求項1に記載の電子音響変換器において、
一方の電極(1,2)の電極フィンガー(3,4)の端部に、他方の電極(2,1)に接続されたスタブ状フィンガー(7,8)が向かい合っており、
前記電極(1,2)の前記電極フィンガー(3,4)がそれぞれバスバー(9,10)に接続されており、
前記誘電層(12)が、前記スタブ状フィンガー(7,8)および前記電極フィンガー(3,4)を完全に覆っており、かつ前記バスバー(9,10)を部分的に覆っている電子音響変換器。
【請求項6】
請求項1に記載の電子音響変換器において、
前記誘電層の前記最下層(14)が、前記電極フィンガー(3,4)の端部の上部には設けられていない電子音響変換器。
【請求項7】
請求項1または6に記載の電子音響変換器において、
前記誘電層(12)の最下層(14)がスパッタリングされた二酸化ケイ素を含み、前記最下層の上部に位置する層(15)が、化学ガス堆積法によって被着された二酸化ケイ素を含む電子音響変換器。
【請求項8】
請求項6または7に記載の電子音響変換器において、
前記誘電層(12)の横断面外形または前記横断面外形における前記最下層(14)の上部に位置する層(15)が段状、台形状、または楕円形セグメントの形状に構造化されている電子音響変換器。
【請求項9】
請求項1から8までのいずれか一項に記載の電子音響変換器において、
前記中央の励起領域(ZAB)が第1誘電層(12)によって覆われており、前記変換器の残りの部分が、前記第1誘電層(12)よりも小さな分布質量を備える第2誘電層(16)によって覆われている電子音響変換器。
【請求項10】
請求項1から9までのいずれか一項に記載の電子音響変換器において、
前記電子音響変換器がGBAW‐素子である電子音響変換器。
【請求項11】
請求項1から10までのいずれか一項に記載の電子音響変換器において、
前記電子音響変換器が金属層(MS)を備え、前記金属層が前記縁部領域(RB)に配置されており、前記電極(1,2)の前記電極フィンガー(3,4)がそれぞれ前記金属層(MS)によって互いに電気接触している電子音響変換器。
【請求項12】
請求項11に記載の電子音響変換器において、
前記金属層の密度が、前記電極フィンガー(3,4)の密度よりも小さい電子音響変換器。
【請求項13】
請求項1から12までのいずれか一項に記載の電子音響変換器において、
前記電極フィンガー(3,4)が、2つの前記電極(1,2)の前記電極フィンガー(3,4)が重なる前記中央の励起領域(ZAB)では、通常のフィンガーとして形成されており、
前記電極(1,2)の電極フィンガー(3,4)のみが設けられている縁部領域(RB)では、前記電極フィンガー(3,4)はスプリットフィンガーとして形成されている電子音響変換器。
【請求項14】
請求項1から13までのいずれか一項に記載の電子音響変換器において、
前記電極フィンガー(3,4)の幅が横方向に変化する電子音響変換器。
【請求項15】
請求項14に記載の電子音響変換器において、
前記電極フィンガー(3,4)の幅が、フィンガー中央部で最大であり、外方に向かって減少している電子音響変換器。
【請求項16】
請求項1から15までのいずれか一項に記載の電子音響変換器において、
前記電子音響変換器が、音響波の横方向の振動モードの周波数が、縦方向の振動モードの周波数と一致しているように形成されている電子音響変換器。
【請求項17】
音響経路(AS)の圧電基板(11)上に配置されており、
前記圧電基板(11)に配置された2つの電極(1,2)を備え、前記電極が、音響波を励起するために相互に係合する電極フィンガー(3,4)を備える電子音響変換器において、
前記電極(1,2)の前記電極フィンガー(3,4)が互いに接続されており、
前記変換器が、前記音響経路(AS)に対して平行に延在する中央の励起領域(ZAB)の分布質量を高めるための手段を備え、
前記中央の励起領域(ZAB)の分布質量が、両側から前記中央の励起領域(ZAB)に接続している縁部領域(RB)よりも高くなっており、
前記変換器が誘電層(12)を備え、前記誘電層が前記電極フィンガー(3,4)を少なくとも部分的に覆っており、
前記誘電層(12)の最下層(14)が前記変換器を完全に覆っており、前記最下層(14)の上部に位置する層(15)が最下層(14)を部分的に覆っており、
前記誘電層(12)の前記最下層(14)が、前記最下層の上部に位置する層(15)よりも小さな単位面積当たりの分布質量を備えており、
前記誘電層の前記最下層(14)が、前記電極フィンガー(3,4)の端部の上部には設けられていない電子音響変換器。
【請求項18】
音響経路(AS)の圧電基板(11)上に配置されており、
前記圧電基板(11)に配置された2つの電極(1,2)を備え、前記電極が、音響波を励起するために相互に係合する電極フィンガー(3,4)を備える電子音響変換器において、
前記電極(1,2)の前記電極フィンガー(3,4)が互いに接続されており、
前記変換器が、前記音響経路(AS)に対して平行に延在する中央の励起領域(ZAB)の分布質量を高めるための手段を備え、
前記中央の励起領域(ZAB)の分布質量が、両側から前記中央の励起領域(ZAB)に接続している縁部領域(RB)よりも高くなっており、
前記変換器が誘電層(12)を備え、前記誘電層が前記電極フィンガー(3,4)を少なくとも部分的に覆っており、
前記電極(1,2)の一方の電極フィンガー(3,4)の端部に、他方の電極(2,1)に接続されたスタブ状フィンガー(7,8)が向かい合っており、前記誘電層(12)が、前記2つの電極(1,2)の電極フィンガー(3,4)が重なる領域で前記電極フィンガー(3,4)を覆っており、前記スタブ状フィンガー(7,8)と、向かい合った電極フィンガー(3,4)との間の間隙(13)を覆っており、スタブ状フィンガー(7,8)をストリップ状構造で覆っており、スタブ状フィンガー(7,8)が誘電層(12)によって覆われているストリップと、スタブ状フィンガー(7,8)に誘電層(12)が設けられていないストリップとが交互に現れる電子音響変換器。
【請求項19】
音響経路(AS)の圧電基板(11)上に配置されており、
前記圧電基板(11)に配置された2つの電極(1,2)を備え、前記電極が、音響波を励起するために相互に係合する電極フィンガー(3,4)を備える電子音響変換器において、
前記電極(1,2)の前記電極フィンガー(3,4)が互いに接続されており、
前記変換器が、前記音響経路(AS)に対して平行に延在する中央の励起領域(ZAB)の分布質量を高めるための手段を備え、
前記中央の励起領域(ZAB)の分布質量が、両側から前記中央の励起領域(ZAB)に接続している縁部領域(RB)よりも高くなっており、
前記変換器が金属層(MS)を備え、前記金属層が前記縁部領域(RB)に配置されており、前記電極(1,2)の前記電極フィンガー(3,4)がそれぞれ前記金属層(MS)によって互いに電気接触しており、
前記金属層の密度が、前記電極フィンガー(3,4)の密度よりも小さい電子音響変換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、SAW‐またはGBAW‐HF‐フィルタで使用される電子音響変換器に関する。
【背景技術】
【0002】
音響波、例えば、音響表面波(SAW=Surface Acoustic Wave)または指向性バルク音響波(GBAW=Guided Bulk Acoustic Wave)によって作動する素子は、HF信号を音響波に変換し、反対に音響波をHF信号に変換する。このために、SAW素子またはGBAW素子は、圧電基板または圧電層に配置された電極フィンガーを含む。縦方向に、すなわち、音響波が伝搬する方向に、電極フィンガーは互いに並行に配置されており、概して第1バスバーおよび第2バスバーに交互に接続されている。音響経路は、基盤または圧電層において、素子の作動中に音響表面波が伝搬される領域である。電極フィンガーは、音響波経路、ひいては音響領域に位置する。バスバーは、音響経路の横方向縁部領域に位置する。縦方向に、音響経路は一般にリフレクタによって制限されており、これにより、縦方向の音響波の放出によるエネルギー損失が防止される。音響経路は、音響トラップによっても制限されてよい。
【0003】
音響波によって作動する素子における損失メカニズムは、音響波が縦方向または横方向に音響経路から放射されることにある。
【0004】
音響経路の終端開口部を介して、回折効果により横方向の音響モードが生じる。種々異なる横方向モードの発生により伝達特性が影響される。伝達特性には、ピークと落込みが形成される場合がある。
【0005】
音響波によって作動する素子、特に移動通信分野のためのSAW‐フィルタの開発で重要な点は、損失メカニズムが少なく、不都合な横方向モードのない素子、または不都合な横方向モードが減じられ、良好な伝達特性を備える素子を得ることである。
【0006】
ドイツ国特許出願公開第10331323号明細書により、SAWによって作動する変換器が既知であり、この変換器では不都合な横方向モードが抑制される。
【0007】
米国特許第7,576,471号明細書により、SAWにより作動する素子が既知であり、この素子では、中央の励起領域とバスバーの領域との間の領域で電極フィンガーの密度が増大されている。しかしながら、この場合、用途は、いわゆる「弱結合」基板に制限されている。電子音響結合定数K2は、音響波と信号との間の結合強度のための基準である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】ドイツ国特許出願公開第10331323号明細書
【特許文献2】米国特許第7,576,471号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の課題は、良好な伝達特性を備え、強結合する圧電基板との互換性のある電子音響変換器を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題は、本発明によれば、独立請求項1に記載の電子音響変換器によって解決される。有利な構成が、従属請求項に記載されている。
【0011】
本発明は、音響経路に配置された電子音響変換器を提供する。この変換器は、圧電基板と、圧電基板に配置された2つの電極とを備え、これらの電極は相互に係合し、音響波を励起するための電極フィンガーを備える。1つの電極の電極フィンガーは互いに接続されている。変換器は、音響経路に対して平行に延在する中央の励起領域の分布質量(Massenbelegung)が、両側から中央の励起領域に接続している横方向の縁部領域よりも大きくなるように形成されている。このために、変換器は、中央の励起領域の分布質量を増大させるための手段を備える。
【0012】
変換器は、弱結合基盤に制限されておらず、むしろ強結合基盤とも互換性がある。
【0013】
本発明によれば、変換器は、変換器を横方向に離れるエネルギーが最小限となるように形成されている。このために、異なる横方向領域における音響波の縦方向の速度を適切に調節することができる。この場合、音響波の伝搬速度は、一般に基盤の分布質量がより高い場合に減じられる。分布質量という概念は、以下では単位面積当たりの相対的な分布質量を示す。速度は、一般に剛性の高い材料を設けることにより高められる。所望の分布質量を調節するために適した材料を選択することにより、音響波の伝搬速度を高めたり低めたりすることが可能となる。変換器は、横方向速度特性が調節され、音響経路に対して平行な中央の励起領域の伝搬速度が、両側から音響経路に対して平行に中央の励起領域に接続する縁部領域よりも小さくなるように構成されている。このような速度特性により、効果的な波伝導が可能になる。全反射による横方向のエネルギー放射が減じられる。この原理は、例えば、光ファイバーによる光波に関して既知である。
【0014】
種々異なる横方向領域における音響波の縦方向速度が、全反射による回折損失がほぼ除去されるように調節される変換器は、縦方向にエネルギーがほとんど放射されないので、高い信号強度において優れている。
【0015】
しかしながら、このような変換器は、一般に多数の横方向モードを備えている。これらの横方向モードは分散を少なくとも一つ有している。すなわち、それぞれのモードは異なる伝搬速度を有し、したがって、モード固有の周波数で現れる。これにより、スペクトル純度が失われる。
【0016】
横方向モードが全体として同じ周波数を備え、さらにこの周波数が縦方向モードの共振周波数と一致するように変換器が構成されることにより、変換特性をさらに改善することができる。この場合、変換器は高いスペクトル純度を備える。横方向モードは変換器の共振周波数と一致するので、抑制されず、むしろフィルタ作用に貢献する。横方向モードの共振周波数は、同様に変換器の分布質量によって影響される。
【0017】
変換器は、電極フィンガーを少なくとも部分的に覆う誘電層を備えていてもよい。この実施形態では、電子音響変換器はGBAW素子であってもよい。圧電層が、誘電層、例えばSiO2によって覆われる場合、誘電層における音響波の伝搬速度は圧電層におけるよりも著しく遅い。誘電層の上部に別の層が配置されていてもよく、この場合、誘電層における音響波の伝搬速度は、別の層におけるよりも遅い。したがって、垂直方向に速度特性「速い‐遅い‐速い」が形成され、垂直方向の損失が防止される。誘電層の密度が小さいことに基づき、この層の開口は不都合な横方向モードが形成されるには極めて小さいか、もしくは横方向モードの周波数は互いに著しく離れており、伝達特性を妨害することはない。
【0018】
一実施形態では、誘電層は二酸化ケイ素を含むか、または完全に二酸化ケイ素からなる。さらにSiO2は、基盤の弾性素子の温度特性を補正するためにもよく適している。
【0019】
一方の電極の電極フィンガーは、他方の電極のスタブ状フィンガーに向かい合っている。これらのスタブ状フィンガーは、一般に電極フィンガーよりも短い。電極フィンガーの端部と、それぞれ向かい合ったスタブ状フィンガーとの間には、間隙、いわゆる「ギャップ」が設けられている。電極フィンガーとスタブ状フィンガーとの接触は防止する必要がある。なぜなら、さもなければ変換器は短絡されてしまうからである。オーバラップ重みづけのない変換器では、スタブ状フィンガーは音響経路の外部に位置し、したがって、もはや有効な変換器領域には位置しない。
【0020】
誘電層は、いまや種々異なる構成としてもよい。一実施形態では、誘電層は電極フィンガーおよびスタブ状フィンガーを部分的に覆っている。それぞれ電極の電極フィンガーを相互に接続するバスバーは、この実施形態では誘電層によって覆われていない。
【0021】
第2実施形態では、電極フィンガー、ギャップおよびスタブ状フィンガーは誘電層によって完全に覆われている。バスバーは誘電層によって部分的にのみ覆われている。この場合、好ましくは、横方向に変換器の内部領域に接続するバスバーの領域は誘電層によって覆われている。
【0022】
第3実施形態では、電極フィンガーは、2つの電極(1,2)の電極フィンガー(3,4)が重なる領域でのみ誘電層によって覆われており、スタブ状フィンガー、スタブ状フィンガーと、向かい合った電極フィンガーとの間の間隙、およびバスバーは誘電層によって覆われていない。
【0023】
第4実施形態では、電極フィンガーは2つの電極(1,2)の電極フィンガー(3,4)が重なる領域で誘電層によって覆われており、ギャップは誘電層によって完全に覆われており、スタブ状フィンガーは、ストリップ構造の形態の誘電層によって覆われている。この場合、スタブ状フィンガーが誘電層によって覆われているストリップは、スタブ状フィンガーが誘電層によって覆われていないストリップと入れ代わる。バスバーもこのストリップ状構造の形態の誘電層によって覆われていてもよい。好ましくは、変換器の内部領域に接続するバスバーの領域のみがストリップ状に被着された誘電層によって覆われている。
【0024】
電極フィンガーに配置された誘電材料により、種々異なる分布質量による音響波の速度を調節することが可能になる。変換器の一実施形態では、誘電材料は電極フィンガーに、および電極フィンガーの間に配置されている。すなわち、誘電材料は、例えば、剥離技術またはエッチング技術によって構造化され、縦方向に電極フィンガーに配置されていてもよい。これにより、分布質量、ひいては縦方向速度を容易に調節することができる。
【0025】
本発明の別の実施形態では、誘電層の横方向横断面外形が構造化されている。このために、種々異なった構造、例えば、段状構造、台形構造、または楕円形セグメントの形態の構造化も可能である。
【0026】
このような構造化は、種々異なる音響波速度を備える横方向領域を規定することを可能にする。
【0027】
誘電層を台形に構造化した場合には、種々異なる分布質量の材料により段部の異なる層が構造化される。例えば、最下層の上部に位置する層の分布質量よりも小さな分布質量を有する材料によって最下層を形成してもよい。このために、例えば、最下層のためにはスパッタリングされた二酸化ケイ素を用い、最下層の上部に位置する層のためには化学ガス堆積法を用いて塗布されたSiO2を用いてもよい。一般に、スパッタリングされたSiO2は、化学ガス堆積法によって塗布されたSiO2よりも小さな分布質量を備える。好ましくは、電極フィンガーの端部は、この構成では最も下側の誘電層では開放されている。したがって、電極フィンガーの端部は、いまやその上部に位置するより大きい分布質量を備えるSiO2層によって覆われている。電極フィンガーと、向かい合ったスタブ状フィンガーとの間のギャップは速度特性を変更する。いまこのギャップの領域でより大きい分布質量が用いられた場合、ギャップに起因する効果を補正することができる。
【0028】
一実施形態では、この第1誘電層に第2誘電層が被着される。好ましくは、第2誘電層は、第1誘電層よりも小さな分布質量を備える。第1誘電層は、中央の励起領域に配置されていてもよく
、変換器
の残りの部分は、第2誘電層によってのみ覆われていてもよい。第1誘電層として、例えばSiO2が使用された場合、第2誘電層としてAl2O3を用いてもよい。
【0029】
第2誘電層は、構造化された第1誘電層に被着してもよい。したがって、第1誘電層の横方向外形は、段状、台形状、または楕円形セグメントとして構造化されていてもよく、次いで第2誘電層によって覆われる。この場合、同様に分布質量は、中央励起領域の分布質量がこれに接続する縁部領域の分布質量よりも大きくなるように調節される。
【0030】
本発明の別の実施形態では、電極の電極フィンガーは、バスバーを介してではなく、金属層によって互いに接続されている。好ましくは、この金属層は変換器の縁部領域に配置されており、電極フィンガーの密度よりも小さな密度を備える。
【0031】
電極フィンガーと同じ材料からなるバスバーが変換器の外部領域に配置された場合には、バスバーは、この外部領域の分布質量の著しい増大をもたらす。本発明による構成では、バスバーは比較的小さな密度を備える金属層によって代替することができ、外部領域の分布質量は対応してほどんど増加はなく、したがって、中央の励起領域では、著しく大きな分布質量が提供される。
【0032】
本発明の別の実施形態では、スタブ状フィンガーは著しく延長してもよい。電極フィンガーが従来のようにバスバーによって接続された場合、バスバーは、横方向モードがバスバーまでに既に消失されており、バスバーによる大きい分布質量がもはやモードに負の影響を及ぼさない程に外側に配置されている。しかしながら、この配置は、延長された電極フィンガーにより、供給ラインにおけるオーム損失が極めて高いという欠点を有する。したがって、対抗措置として、延長された電極フィンガーおよびスタブ状フィンガーの上部に別の金属層を配置することが提案される。このような金属層は、一方ではオーム損失を劇的に減じるが、しかしながら、他方ではGBAWの伝搬速度の著しい低下を伴わないので、このようにして、有効な変換器領域から音響エネルギーが吸い取られることがさらに防止される。したがって、金属層のためには過度に重い金属ではなく、好ましくは、例えばAlまたは適宜な合金などの軽い金属が選択される。
【0033】
外部領域の金属比率をさらに低減するために、電極フィンガーの幅を横方向に変化させることができる。この場合、中央の励起領域の最大幅は、横方向外方に減少するように選択される。電極フィンガーの幅の変化は段状または線形に設けられてもよい。実質的に中央の励起領域に対応し、2つの電極の電極フィンガーが重なる内部領域では、電極フィンガーは通常のフィンガーとして形成されている。一方の電極の電極フィンガーのみが設けられている外部領域では、電極フィンガーはスプリットフィンガーとして形成されていてもよい。
【0034】
変換器の電極または電極フィンガーは、アルミニウムよりも高い密度を有する金属、例えば、銅、金、タングステンまたはこれらの金属からなる合金からなっているか、またはこれらを主要成分として含んでいてもよい。
【0035】
変換器には誘電補償層が配置されていてもよい。誘電補償層は、素子の周波数範囲の温度変化を低減または除去することができる。このような誘電補償層は、SiO2、TeO2または温度上昇時に剛性を増す他の誘電材料であってもよい。
【0036】
次に、本発明を実施例および実施例に属する図面に基づいて詳細に説明する。図面は、本発明の異なる実施例の概略図であり、実寸にしたがっていない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【
図1】
図1aは、従来技術で既知の電子音響変換器を示す平面図であり、
図1bは、
図1aに示した変換器の断面図である。
【
図2】
図2aは、本発明の第1実施例による電子音響変換器を示す平面図であり、
図2bは、
図2aに示した変換器の断面図である。
【
図3】3aは、本発明による電子音響変換器の第1実施例の第2変化態様を示す平面図であり、
図3bは、
図3aに示した変換器の断面図である。
【
図4】
図4aは、本発明による電子音響変換器の第1実施例の第3変化態様を示す平面図であり、
図4bは、
図4aに示した変換器の断面図である。
【
図5】
図5aは、本発明による電子音響変換器の第1実施例の第4変化態様を示す平面図であり、
図5bは、
図5aに示した変換器の断面図である。
【
図6】本発明による電子音響変換器の第2実施形態を示す断面図である。
【
図7】本発明による電子音響変換器の第2実施形態の第2変化態様を示す断面図である。
【
図8】本発明による電子音響変換器の第2実施形態の第3変化態様を示す断面図である。
【
図9】本発明による電子音響変換器の第2実施形態の第4変化態様を示す断面図である。
【
図10】本発明による電子音響変換器の第2実施形態の第5変化態様を示す断面図である。
【
図11】本発明による電子音響変換器の第2実施形態の第6変化態様を示す断面図である。
【
図12】本発明による電子音響変換器の第3実施形態の電極および電極フィンガーを示す図である。
【
図13】本発明による電子音響変換器の第4実施形態の電極フィンガーを示す図である。
【
図14】第4実施形態の第2変化態様による音響変換器の電極フィンガーを示す断面図である。
【
図15】GBAW−変換器の第3、第4または第5実施形態による外部領域の異なった構成のためのアドミタンスのシミュレーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0038】
図1aおよび
図1bは、背景技術で既知の従来の電子音響変換器である。
図1aは変換器の平面図を示す。
図1bは同じ変換器の断面図を示す。
【0039】
変換器は2つの電極1,2を備え、これらの電極は、音響波を励起するための互いに係合する電極フィンガー3,4を備える。変換器は、音響経路ASに配置されている。音響波は、この音響経路ASの内部で生成される。縦方向に、すなわち、音響経路ASの方向に、変換器は中央領域MBと2つのリフレクタ領域REBとに分割されており、2つのリフレクタ領域REBはそれぞれ中央領域MBに接続されている。
【0040】
変換器のリフレクタ領域REBには、連続した電極フィンガー5,6が配置されており、これらの電極フィンガーはリフレクタとして作用し、音響波を変換器に反射する。変換器の中央領域MBには、第1電極1に接続された電極フィンガー3と第2電極2に接続された電極フィンガー4とがそれぞれ交互に配置されている。交互に噛み合うように配置された電極フィンガー3,4により、中央領域MBには音響波が励起される。
【0041】
電極1,2の一方の、電極フィンガー3,4の端部には、変換器の中央領域MBにおいて、電極2,1の他方に接続されたスタブ状フィンガー(Stummelfinger)7,8が向かい合っている。スタブ状フィンガー7,8の長さは電極フィンガー3,4よりもずっと短い。電極フィンガー7,8と、向かい合ったスタブ状フィンガーとの間にはそれぞれ間隙、いわばギャップ13が設けられている。
【0042】
電極1,2の電極フィンガー3,4は、それぞれバスバー9,10を介して互いに接続されている。電極は、例えばニオブ酸リチウムよりなる圧電基板11に配置されている。電極1,2および基板11は、誘電層12、例えば酸化ケイ素によって覆われている。
【0043】
音響経路に対して横方向に、すなわち垂直方向に、変換器は1つの内部領域IBと、内部領域IBに直接に接続する2つの外部領域ABとに分割されている。内部領域は、電極フィンガー3,4、ギャップ13およびスタブ状フィンガー7,8を備える。外部領域ABはバスバー9,10を備える。
【0044】
分布質量は、内部領域IB全体でほぼ一定不変である。電極フィンガー3,4とスタブ状フィンガー7,8との間のギャップ13のみが、この領域の、さもなければ一様な分布質量を局所的に変更する役割を果たす。内部領域IBには外方にそれぞれ変換器の外部領域ABが接続しており、外部領域ABにはバスバー9,10が配置されている。
【0045】
この従来の変換器では、バスバー9,10は電極フィンガー3,4と同じ材料からなっている。それ故、変換器の外部電極3,4における分布質量は最大である。高い分布質量を有する領域では音響波の伝搬速度が減じられている。したがって、音響波のエネルギーはこの領域に集中している。
図1に示した従来の変換器では、エネルギーの大部分は横方向に外部領域に吸収される。
【0046】
これに対して、
図2aおよび
図2bは、本発明の第1実施形態によるGBAW変換器を示す。ここでは、誘電層12はもはや変換器全体に全面的には被着されていない。これにより、横方向に、内部領域IBは、音響経路ASに対して平行に延在する中央の励起領域ZABと、両側から中央の励起領域ZABに接続する縁部領域RBとに分割される。内部領域IBの縁部領域RBでは、変換器は誘電層12によって覆われていない。
【0047】
誘電層12によって完全に覆われた中央の励起領域ZABと、誘電層12が設けられていない延部領域RBとの間の境界は、スタブ状フィンガー7,8の領域に位置している。したがって、隣接する電極フィンガーと重なる領域の電極フィンガー3,4、およびギャップ13は誘電層12によって完全に覆われており、これに対して、スタブ状フィンガー7,8は誘電層12によって部分的にのみ覆われている。
【0048】
バスバー9,10を備える外部領域ABは誘電層12によって覆われていない。
【0049】
図2に示す変換器では、中央の励起領域RBの分布質量は高められており、縁部領域RBおよび外部領域ABの分布質量は小さい。このようにして、外部領域ABへのエネルギーの流出を減じることができる。
【0050】
図3aおよび
図3bは、第1実施形態の第2変化態様を示す。ここでは、誘電層12は内部領域IBをぎりぎり超えており、バスバー9,10を部分的に覆っている。したがって、ここでは外部領域ABは内側外部領域IABと縁部領域RBとに分割されている。縁部領域RBの分布質量は、内部領域IBおよび内側外部領域IABの分布質量に比べて減じられている。これにより、縁部領域RBへのエネルギーの流出は防止される。
【0051】
図4aおよび
図4bは、GBAW変換器の第1実施形態の第3変化態様を示す。ここでは、誘電層12はスタブ状フィンガー7,8およびギャップ13を覆っていない。中央の励起領域は誘電層12によって完全に覆われている。対応して、内部領域IBは中央の励起領域ZABと縁部領域RBとに分割されており、この場合、縁部領域RBは外側から中央の励起領域ZABに接続している。
【0052】
したがって、いま電極フィンガー3,4のみが誘電層12によって覆われている。誘電層12によって、向かい合った電極1,2の電極フィンガー3,4が横方向に重なっている中央の励起領域ZABの分布質量が高められる。中央の励起領域ZABに隣接する縁部領域RBでは、分布質量は中央の領域ZABよりも小さい。
【0053】
図4bに示した変換器の断面図は、誘電層12が電極フィンガー3,4の端部と重なって終わっていることをはっきりと示している。
【0054】
図5aおよび
図5bは、本発明によるGBAW変換器の第1実施形態の第4変化態様を示す。これは、
図2に示した実施形態に基づいた変化態様である。変換器の内部領域IBは、ここでも中央の励起領域ZABと縁部領域RBとに分割されており、この場合、中央の励起領域ZABは、電極フィンガー7,8、ギャップ13および部分的にスタブ状フィンガー7,8を含む。誘電層12は、中央の励起領域ZABを完全に覆っている。
【0055】
これに加えて、誘電層12の別の領域が、縁部領域RBおよび外部領域ABをストリップ状に覆っている。スタブ状フィンガー3,4およびバスバー9,10は、誘電層12のストリップ状部分によって部分的にのみ覆われている。この場合、スタブ状フィンガーもしくはバスバー9,10が誘電層12で覆われているストリップ状部分と、誘電層12のないストリップ状部分とが交互に現れる。
【0056】
これにより、中央の励起領域ZABはこれに隣接する縁部領域RBよりも分布質量が大きくなっている。
【0057】
図6は、本発明の第2実施形態を示す。
図6には、GBAW変換器が断面図で示されている。誘電層12の横断面外形は、ここでは段状に構造化されている。横断面外形は、変換器全体を覆う下層14を備える。さらに、誘電層12は、下層14を部分的にのみ覆う上層15を備える。この場合、上層15は、変換器の中央の励起領域ZABを覆う下層14の部分のみを覆うように配置されている。下層14および上層15は同じ材料を含んでいてもよいし、異なる構成としてもよい。
【0058】
誘電層12の横断面外形を段状に構造化することにより、変換器は横方向に、ここでも中央の励起領域ZABとこれに接続する縁部領域RBとに分割される。中央の励起領域ZABにわたって、誘電層12の下層14および上層15が配置されている。縁部領域RBは、下層14によってのみ覆われている。この場合、中央の励起領域ZABは、互いに重なる電極フィンガー3,4、ギャップ13および部分的にスタブ状フィンガー7,8を備える。
【0059】
好ましくは、誘電層12の下層14の材料は、上層15の材料よりも分布質量が低い。下層14の材料は、例えば、スパッタリングした二酸化ケイ素である。上層15は、化学的ガス堆積法を用いて、例えば、プラズマ化学気相成長法(PECVD)によって被着されたSiO2である。このような化学的ガス堆積法によって被着されたSiO2は、スパッタリングしたSiO2よりも幾分高い分布質量を有する。
【0060】
電極フィンガー3,4の端部の領域では、下側の誘電層14が取り除かれる。したがって、いま電極フィンガー4,5の端部は上側の誘電層15によって覆われている。上側の誘電層15は、より高い分布質量を備えているので、フィンガー端部の分布質量は高められる。このように、波の音響伝搬速度の局所的変化をギャップ13によって補正することができる。
【0061】
図7は、GBAW変換器の第2実施形態の第2変化態様を示す。ここでも、誘電層12の横断面外形において構造化されている。誘電層12は、電極フィンガー3,4、ギャップ13および部分的に電極のスタブ状フィンガー7,8のみを覆っている。まず、バスバー9,10および変換器の残りの領域には誘電層12は設けられていない。したがって、
図7に示した変換器のこの部分は、
図2に示した変換器に対応している。
【0062】
そして、変換器には、第1誘電層12が設けられていない領域に被着される第2誘電層16が設けられる。第2誘電層は、例えば、Al2O3からなっていてもよい。Al2O3は、第1誘電層12の材料であるSiO2よりも小さな分布質量を備える。したがって、
図7に示した変換器も中央の励起領域ZABに最大の分布質量を備える。
【0063】
図8に示した変換器では、本発明の第2実施形態の第1変化態様と第2変化態様とが互いに組み合わされている。第1誘電層12は、ここでは段状に構造化されている。第1誘電層12は、変換器全体を覆う下層14、および中央の励起領域ZABを覆っている下層14の領域のみを覆う上層15を備える。第1誘電層12の下層14の、上層15によって覆われていない領域は、第1層12よりも小さな分布質量を備える第2誘電層16によって覆われている。
【0064】
図9から
図11は、GBAW変換器の第2実施形態の他の変化態様を示す。これらの図面においても誘電層12は多層状に構成されている。最下層14は、それぞれ変換器全体を覆っている。最下層14の上部に被着された1つまたは複数の層15,15a,15bは変換器の一部のみを覆っている。この場合、一部とは、中央の励起領域ZABまたは中央の励起領域ZABおよび縁部領域RBの一部であってよい。最下層14に被着された誘電層15,15a,15bは構造化されている。
【0065】
図6との関連で示したように、
図9〜
図11に示した変換器では、最下誘電層14はギャップ13の領域では取り除いてもよい。
【0066】
図9に示した変換器では、誘電層12の上層15は段状に構造化されている。
図10に示した変換器では、誘電層12の上層15は、楕円の一部の形状で構造化されている。
図11は、誘電層12の上層15a,15bが段状に構造化された誘電変換器を示す。一般に誘電層12は、剥離法または適宜なエッチング技術によって構造化することができる。乾式および湿式化学法ならびにエッチング停止層による方法が従来技術により既知である。
【0067】
図12は、本発明の第3実施形態によるGBAW変換器の電極を示す。この変換器の電極フィンガー3,4は極めて長く延ばされている。電極フィンガー3,4は、中央の励起領域ZABと縁部領域RBとに分割される。中央の励起領域ZABでは、互いに向かい合った2つの電極の電極フィンガー3,4は重なっている。縁部領域RBには、それぞれ1つの電極の電極フィンガー3,4のみが設けられている。
【0068】
音響波の良好な波伝導を保障するためには、音響波のエネルギーが横方向に放射されることを防止することが望ましい。このために、中央の励起領域ZABの分布質量が高められるか、もしくは縁部領域RBの分布質量が減じられる。対応して電極フィンガー3,4の幅は縁部領域RBで減じられる。
図12は、縁部領域RBの電極フィンガーがスプリットフィンガーとして形成された電子音響変換器を示す。
【0069】
電極の電極フィンガー3,4は、ここではそれぞれバスバー9,10に接続されている。バスバー9,10は、電極フィンガー3,4と同じ材料から作製されている。したがって、バスバー9,10が配置された領域は極めて高い分布質量を備える。第4実施形態によれば、バスバー9,10を金属層によって代替してもよい。したがって、電極の電極フィンガー3,4はこの金属層によって相互に接続され、金属層は、電極フィンガーの金属化によって被着してもよい。このために、縁部領域RBにはそれぞれ金属層が被着される。この金属層は、電極フィンガーの材料よりも小さな密度を有する。それ故、金属層により、縁部領域RBの分布質量は少ししか増加しない。
【0070】
図13は、電極の電極フィンガー3,4を互いに接続するためにバスバー3,4の代わりに金属層MSを使用した変換器の電極フィンガー3,4の概略図を示す。
図13の変換器では、縁部領域RBの電極フィンガー3,4の幅は、中央の励起領域ZABの電極フィンガーの幅に比べて減じられている。電極フィンガー3,4の幅の変更は、ここでは一段により段状に行われる。しかしながら、幅の変更は、複数回、段階的に行われていてもよい。
【0071】
図14は、第4実施形態の第2変化態様を示す。ここでは、変換器の電極フィンガー3,4の一部のみが示されている。
図14には、電極フィンガー3,4の幅が線形に内側から外側に減少していることが示されている。
【0072】
変換器の第4実施形態のすべての変化態様は、任意に互いに組み合わせることができる。したがって、例えば、横方向に変化する電極フィンガー幅を有する変換器が、
図2〜
図11に示すように、構造化された誘電層を備えていてもよい。さらに、このような変換器では電極の電極フィンガーは、バスバーの代わりに、軽量な金属層MSと互いに接続されていてもよい。
【0073】
図15は、異なった実施形態のためのアドミタンスを示す。曲線K1〜K4は、種々異なる変換器に対するアドミタンスを示す。曲線K1〜K3は、
図13に示した実施例による変換器に対するアドミタンスを示す。ここでは、縁部領域RBのスタブ状フィンガー7,8は、中央の励起領域ZABの電極フィンガー3,4よりも狭い。金属比率ηは、フィンガー幅と変換器における繰り返し周期との比率を示す。中央の励起領域ZABでは、金属比率ηは0.6である。曲線K1は、縁部領域RBの金属比率ηが0.2である変換器のためのアドミタンスを示す。曲線K2は、縁部領域RBの金属比率ηが0.3である変換器のためのアドミタンスを示し、曲線K3は、縁部領域RBの金属比率ηが0.4である変換器のためのアドミタンスを示す。曲線K4は、縁部領域RBのフィンガー幅が減じられていない変換器のための金属比率ηを示す。したがって、縁部領域RBの金属比率ηは、中央の励起領域ZABとちょうど同じ0.6である。
【0074】
アドミタンス曲線K1〜K4の共振および反共振が顕著であればあるほど、対応した変換器のQ値が高くなる。
図15に示すように、アドミタンス曲線K1〜K3は、縁部領域RBでスタブ状フィンガー幅が減じられた変換器を示し、ほぼ重なって延びており、875MHzで極めて顕著な共振を示し、同様に925MHzで極めて顕著な反共振を示す。これに対して、電極フィンガー3,4とスタブ状フィンガー7,8とが同じ幅を有する変換器を示す曲線K4では、共振および反共振は極めて緩やかである。したがって、
図15に示すように、スタブ状フィンガー7,8の幅が縁部領域RBで減じられることにより変換器のQ値を高めることができる。