(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655159
(24)【登録日】2014年11月28日
(45)【発行日】2015年1月14日
(54)【発明の名称】デュアルモード無線を備える補聴器
(51)【国際特許分類】
H04R 25/00 20060101AFI20141218BHJP
H04R 3/00 20060101ALI20141218BHJP
【FI】
H04R25/00 Z
H04R3/00 310
【請求項の数】18
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2013-546622(P2013-546622)
(86)(22)【出願日】2011年1月7日
(65)【公表番号】特表2014-507833(P2014-507833A)
(43)【公表日】2014年3月27日
(86)【国際出願番号】EP2011050146
(87)【国際公開番号】WO2012092973
(87)【国際公開日】20120712
【審査請求日】2013年6月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】500011045
【氏名又は名称】ヴェーデクス・アクティーセルスカプ
(74)【代理人】
【識別番号】100080322
【弁理士】
【氏名又は名称】牛久 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100104651
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100114786
【弁理士】
【氏名又は名称】高城 貞晶
(72)【発明者】
【氏名】ラアセン・ソレン・モルスコウ
(72)【発明者】
【氏名】クロマン・モルテン
【審査官】
千本 潤介
(56)【参考文献】
【文献】
特開2007−274021(JP,A)
【文献】
特表2011−503980(JP,A)
【文献】
米国特許出願公開第2002/0071581(US,A1)
【文献】
欧州特許出願公開第02052758(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 3/00
H04R 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の搬送周波数を用いて第1のデータ信号を受信するように構成される第1の無線リンク手段,および
第2の搬送周波数を用いて第2のデータ信号を受信するように構成される第2の無線リンク手段を備え,
上記第2の無線リンク手段が,ダウンミックス中間搬送周波数を持つ周波数ミックス信号を提供するように構成された周波数ミキシング手段を備え,
上記ダウンミックス中間搬送周波数が上記第1の無線リンク手段の第1の搬送周波数に対応している,
補聴器。
【請求項2】
上記第2の無線リンク手段が,上記第1の無線リンク手段の電気アンテナを含む第1の帯域通過フィルタを備えている,請求項1に記載の補聴器。
【請求項3】
上記第1の帯域通過フィルタが,上記周波数ミックス信号の上記ダウンミックス中間搬送周波数を通過するように構成されている,請求項2に記載の補聴器。
【請求項4】
上記第1の無線リンク手段の上記電気アンテナが,誘導無線信号を受信するように構成されている,請求項2に記載の補聴器。
【請求項5】
上記第1の無線リンク手段の上記電気アンテナがコイルである,請求項4に記載の補聴器。
【請求項6】
上記周波数ミックス信号が上記第1の無線リンク手段の上記電気アンテナに結合される,請求項2から5のいずれか一項に記載の補聴器。
【請求項7】
上記第2の無線リンク手段が,上記第1の帯域通過フィルタの上流に設けられた第2の帯域通過フィルタを備えている,請求項2から6のいずれか一項に記載の補聴器。
【請求項8】
上記第2の帯域通過フィルタが上記周波数ミキシング手段の下流に設けられており,上記周波数ミックス信号のイメージをフィルタアウトするように構成されている,請求項7に記載の補聴器。
【請求項9】
上記第2の帯域通過フィルタが上記周波数ミキシング手段の上流に設けられており,上記第2の無線リンク手段のアンテナによってピックアップされる雑音信号をフィルタアウトするように構成されている,請求項7に記載の補聴器。
【請求項10】
上記第1のデータ信号および上記第2のデータ信号が,同じデジタル変調手段を用いて復調される,請求項1から9のいずれか一項に記載の補聴器。
【請求項11】
上記第1のデータ信号および上記第2のデータ信号が,同じ無線プロトコル手段を用いてデコードされる,請求項1から10のいずれか一項に記載の補聴器。
【請求項12】
上記第1の搬送周波数が0.5から30MHzの範囲内,好ましくは3から12MHzの範囲内にある,請求項1から11のいずれか一項に記載の補聴器。
【請求項13】
上記第2の搬送周波数が400MHzから5GHzの範囲内,好ましくは850から950MHzの範囲内にある,請求項1から12のいずれか一項に記載の補聴器。
【請求項14】
第1の搬送周波数を用いて第1のデータ信号を受信するように構成される第1の無線リンク手段,および
第2の搬送周波数を用いて第2のデータ信号を受信するように構成される第2の無線リンク手段を備え,
上記第1の無線リンク手段の第1の電気アンテナが上記第2の無線リンク手段の第1の帯域通過フィルタの一部も形成している,
補聴器。
【請求項15】
請求項1から14のいずれか一項に記載の2台の補聴器を備え,
上記第1の無線リンク手段が上記2台の補聴器の間でデータを交換するように構成されている,
バイノーラル補聴器システム。
【請求項16】
上記第2の無線リンク手段が補聴器フィッティング・システムとデータを交換するように構成されている,請求項15に記載のバイノーラル補聴器システム。
【請求項17】
上記第2の無線リンク手段が外部ソースからオーディオを表すデータを受信するように構成されている,請求項15に記載のバイノーラル補聴器システム。
【請求項18】
補聴器において第1の無線信号および第2の無線信号を受信する方法であって,
第1の電気アンテナを用いて,第1の搬送周波数を持つ第1の無線信号を受信し,
第2の電気アンテナを用いて,第2の搬送周波数を持つ第2の無線信号を受信し,
上記第2の無線信号を周波数ミキシングし,これによってダウンミックス中間搬送周波数を持つ周波数ミックス信号を提供し,
帯域通過フィルタを用いて上記周波数ミックス信号を帯域通過フィルタリングし,ここで上記帯域通過フィルタが上記第1の電気アンテナを備え,かつ上記ダウンミックス中間搬送周波数を通過するように構成されており,これによって周波数ダウンミックス信号を提供し,
第1の復調およびデコーディング手段を用いて上記第1の無線信号を復調かつデコーディングし,
上記第1の復調およびデコーディング手段を用いて上記周波数ダウンミックス信号を復調かつデコーディングする,
方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は補聴器に関する。より詳細にはこの発明はデュアルモード無線(無線通信)(dual mode wireless radio)を有する補聴器システムに関する。
【背景技術】
【0002】
本願の開示において,補聴器は,聴覚障害者の耳の後ろにまたは耳の中に装着されるように設計される,小さな小型電子機器として理解される。補聴器システムは1つの補聴器のみからなるモノラルのものもあるし,2つの補聴器からなるバイノーラルのものもある。使用に先立って,補聴器は処方(prescription)にしたがって補聴器フィッタによって調整される。上記処方は,いわゆるオージオグラムが取得される聴覚障害者の裸耳聴覚能力の聴覚テストに基づく。上記処方は,ユーザが聴覚損失を蒙っている可聴周波数範囲の部分の周波数の音を増幅することによって補聴器が難聴を緩和することになる設定に達するように構築される。補聴器は一または複数のマイクロフォン,信号処理装置を含む小型電子回路,および音響出力トランスデューサを備える。上記信号処理装置は好ましくはデジタル信号処理装置である。上記補聴器は耳の後ろまたは耳の中へのフィッティングに適するケース内に収められる。
【0003】
その名が示すように,耳掛け型(Behind-The-Ear)(BTE)補聴器は耳の後ろにかけられる。より正確には,主要電子回路部を含むハウジングを備える電子回路ユニットが,耳の後ろにかけられる。補聴器ユーザに向けて音を放出するイヤピースが,耳の中に,たとえば外耳内または外耳道内に装着される。従来のBTE補聴器では,補聴器の用語において通常レシーバと呼ばれる出力トランスデューサが上記電子回路ユニットのハウジング内に位置しているために,音チューブが用いられている。近年のタイプの補聴器の中には,上記レシーバが耳内の上記イヤピース内に位置しているために,導電体を備える導電部材が用いられるものもある。このような補聴器は一般に耳内レシーバ型(Receiver-In-The-Ear)(RITE)補聴器と呼ばれている。特定のタイプのRITE補聴器では,上記レシーバが外耳道の内側に位置する。これは耳道内レシーバ型(Receiver-In-Canal)(RIC)補聴器として知られている。
【0004】
耳内(In-The-Ear)(ITE)補聴器は,耳内,通常は耳道の漏斗状外側部分内に配置されるように設計される。特定のタイプのITE補聴器では,上記補聴器は実質的に外耳道の内側に位置する。このタイプは完全耳内型(Completely-In-Canal)(CIC)補聴器として知られている。このタイプの補聴器は,補聴器の動作に必要な構成要素を収納しつつ,耳道内にそれを配置することができるように非常にコンパクトなデザインであることを必要とする。
【0005】
最先端の補聴器は,通常,補聴器回路を用いた増幅,調節および再生を目的とする先進的な機能性のために,一以上の信号源を受け入れるように設計されている。このような信号源には,たとえばテレビ,mp3プレーヤおよび携帯電話機がある。
【0006】
補聴器の中には,FM受信機,ブルートゥース(商標)受信機,ケーブルなど,外部設備(外部機器)を補聴器回路に接続する手段を有しているものがある。このような外部機器は様々なやり方で補聴器と通信することができる。FM受信機は,無線FM送信機を備えるマイクロフォンを装着している話者がいる構内状況における使用のために接続することができる。ブルートゥース(商標)は携帯電話その他からのオーディオ信号をストリーミングするために用いることができる。
【0007】
いくつかのタイプの補聴器は,たとえば誘導レシーバ(inductive receivers)のような内部無線レシーバも備えている。このような無線レシーバのほとんどはその電力を補聴器電池から直接に引き出す。
【0008】
当該分野で知られている外部設備または無線レシーバの長期間の使用が,頻繁な電池交換および補聴器の動作のコスト増を必要とする補聴器電池の急減につながることがある。独立した電池を含む一体型電源を有するタイプのレシーバは,重量,サイズおよびレシーバの複雑さを付加する。したがって高電力効率の無線設備が補聴器ユーザに多くの利点をもたらすと考えられる。
【0009】
いくつかのタイプの補聴器では,バイノーラル補聴器システムの2つの補聴器間に無線リンクが設けられている。このケースでは,この短い距離にわたる電力消費を非常に低くすることができるので誘導無線リンクが特に有利である。さらに,バイノーラル補聴器システムの補聴器(複数)は補聴器ユーザの左耳および右耳にまたはその中に装着されるように構成され,上記誘導無線リンクによって送信される磁場信号が補聴器ユーザの頭部によって大きくは減衰されないので,誘導無線リンクを実装するのが有利である。
【0010】
さらに他のタイプの補聴器では,外部信号源または外部リレー機器からの音信号を受信するために誘導無線(誘導無線波)(inductive radio)が用いられている。このタイプの補聴器システムにおいては,上記誘導無線の送受信範囲がほぼ距離の3乗で降下する(falls off approximately with the distance raised to the third power)ために,上記外部信号源または外部リレー機器は近いところになければならない(典型的には1メートル未満)。
【0011】
国際特許公開WO−A1−2010043223は,テレビセット,第1の外部機器,第2の外部機器およびバイノーラル補聴器システムに接続されるDVDプレーヤを開示しており,上記第1の外部機器が上記DVDプレーヤによって提供される音信号をエンコードしかつ上記第2の外部機器に無線送信するように専用設計されており,第2の外部機器が上記音信号をさらに無線で上記バイノーラル補聴器システムにリレーする(中継する)ように構成されている。上記第2の外部機器は上記無線信号送信が上記補聴器(複数)における最小の電力を消費することを保証する。
【発明の開示】
【0012】
この発明の特徴は,改善された無線リンク手段を備える補聴器を提供することにあり,これによって小さい補聴器サイズおよび低電力消費を維持しつつより遠距離の無線範囲を持つ補聴器が提供される。
【0013】
この発明のさらに他の特徴は,無線信号を送信しかつ受信するための改善された方法を提供することにある。
【0014】
第1の観点において,この発明は,請求項1に記載の補聴器を提供する。
【0015】
これにより改善された無線範囲を持つ補聴器が提供される。
【0016】
第2の観点において,この発明は,請求項18に記載の,補聴器において無線信号を受信する方法を提供する。
【0017】
これにより,電力消費およびサイズに関して,補聴器における無線信号の受信の改善された方法が提供される。
【0018】
さらなる有利な特徴は従属請求項から明らかにされる。
【0019】
この発明のさらなる他の特徴は,この発明をより詳細に説明する以下の記述から,当業者に明らかにされよう。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】この発明の第1の実施態様による補聴器をかなり模式的に示す。
【
図2】この発明の第2の実施態様による補聴器をかなり模式的に示す。
【実施例】
【0021】
一例として,この発明の好ましい実施例を示しかつ記載する。当然ではあるが,この発明は他の実施例が可能であり,そのいくつかの詳細は,この発明から逸脱することなく,様々な明白な観点において変更可能である。したがって図面および明細書は本質的に例示にすぎず限定するものではない。
【0022】
本願の開示において,2つのタイプの無線(無線通信)(wireless radios),無線リンク手段または無線送信方法が区別される。
【0023】
第1のタイプの無線(無線通信)は短距離通信(short range communication)に適合されるものである。このタイプの無線は誘導,低周波(長波)または近接場(inductive, low-frequency or near-field)とも言うことができる。典型的な実装において,短距離無線は,無線リンクの送信機および受信機の間の相互作用の特性(the characteristics of the interaction)が,主要には近接場における磁場誘導(magnetic induction in the near-field)によって決定されるように設計される。低周波の用語は,以下に記述する第2のタイプの無線を示すために用いられる,対応する用語である高周波(短波)と対比するために必要な相対的な用語として解釈される。
【0024】
第2のタイプの無線(無線通信)は,長距離通信(long range communication)に適合されるものである。このタイプの無線は無線周波(RF),高周波(短波)または遠方場(far-field)とも言うことができる。典型的な実装では,長距離無線は,無線リンクの送信機および受信機の間の相互作用の特性が,主要には遠方場における電磁波(electromagnetic waves in the far-field)によって決定されるように設計される。高周波の用語は,上述した第1のタイプの無線を示すために用いられる,対応する用語である低周波(短波)と対比するために必要な相対的な用語として解釈される。
【0025】
よく知られているように,近接場および遠方場の用語は確固たる用語(fixed terms)ではないが,与えられる無線送信タイプに関連する選択周波数,アンテナ設計および距離に依存する。
【0026】
一般に,無線補聴器の通信範囲は,外部機器から無線信号を受信する場合,誘導無線ではなく遠方場無線を使用することによって広げる(大きくする)ことができる。これは,主要には,上記遠方場無線がほぼ距離の2乗で降下する強度を持つ信号を提供するのに対し,誘導無線は距離の3乗で降下する強度を有する信号を提供するという事実の結果である。
【0027】
しかしながら,一般に誘導アンテナは遠方場アンテナよりも格段に小さく,これは,特に限定的な送信範囲(limited transmission range)が求められるときに,小型の連続駆動が要求される補聴器内における実装について(for implementation in hearing aids where a continuous drive for miniaturization exists),誘導無線を有利なものにする。
【0028】
一般に搬送周波数(キャリア周波数)が高くなるほど遠方場アンテナのサイズは小さくなる。したがって比較的高い搬送周波数を用いることで補聴器における遠方場アンテナ用の空間を確保することが重要である。しかしながら,上記搬送周波数が高くなると,高い選択性を持って所望信号をフィルタアウトすることがますます困難になり,これは単純に狭帯域幅(高Q値)を持つ帯域通過フィルタの設計が,上記搬送周波数が増加するほどより困難なものとなるからである。さらに典型的には周波数が高くなるほど無線の電力消費は増加する。
【0029】
高い搬送周波数のシステムのこれらの問題を緩和するやり方の一つは,スーパーヘテロダイン検出を採用することである。スーパーヘテロダイン受信機では,上記搬送周波数は中間周波数にダウンミックスされ(down-mixed to an intermediate frequency),必要に応じて,上記中間周波数がさらにダウンミックスされ,この方法はダブルスーパーヘテロダイン検出と呼ばれている。これによって信号の帯域通過フィルタリングを,より低い中間周波数において実行することができ,より効率的に帯域通過フィルタを使用することができる。
【0030】
一般には,デジタル・オンチップ帯域通過フィルタ(digital on-chip band pass filters)はアナログ・オフチップ帯域通過フィルタ(analog off-chip band pass filters)よりも性能が劣るが,他方においてアナログフィルタはかなり大きなスペースを占め,かつより多くの電力を消費する。補聴器において,一般にスペースは容易に利用可能なものでなく,電力も同様に重要なリソースである。
【0031】
この発明の一実施態様では,上記遠方場無線の上記搬送周波数を,上記誘導無線の搬送周波数に対応する中間周波数にダウンミキシングし,かつ長距離遠方場無線と誘導短距離無線とに同じデジタル変調技術および無線プロトコルを用いることによって,広げられた範囲を持つ遠方場無線(a far-field radio with increased range)を補聴器に実装することができることが分かった。これによって,上記誘導短距離無線が上記長距離遠方場無線の後半(後段)を構成し(constitutes the second half),このようにすることで上記長距離遠方場無線用の追加的なアナログ・オフチップ帯域通過フィルタが必要でなくなる。上記誘導アンテナおよびその対応する共振回路がそのようなフィルタを構成するからである。
【0032】
このようにすることで,たとえば2つの別個の無線を持つ補聴器システムまたは低電力の誘導短距離無線を持たないバイノーラル・システムを有する補聴器システムに対してわずかな構成要素が必要とされるだけで,補聴器の比較的小さいサイズを維持しつつかつ電力消費を低く保ちつつ,外部機器と通信するときに大幅に改善された無線受信範囲を持つデュアルモード補聴器システムを提供することができる。
【0033】
この方法は,外部機器と通信するときの無線範囲を改善するために,既存の補聴器システムの修正の非常に簡単なやり方を構成するというさらなる利点がある。
【0034】
基本的には,補聴器は,無線信号が,上記誘導短距離無線または上記長距離無線を通じて受信されたかどうかについて,受信された信号データが完全に復調され,復号されかつ解釈されるまでは認識することができない。したがって,無線送信が信号送信のないタイムスロット(time slots without signal transmission)を含むように,選択される無線プロトコルが構成されることが重要である。
【0035】
これによって,上記誘導短距離無線を用いた補聴器(複数)の間のデータの無線交換を,遠方場信号の連続受信の上述した送信空きタイムスロットの間に実行できるように,バイノーラル補聴器システムそれ自身を構成することができる。
【0036】
連続する長距離無線送信の受信は,一般には標準の手段を用いることによって中断することができる。このような手段の一つは,上記長距離無線の中心構成要素(central components)を停止するように構成される補聴器上のボタンを起動することである。別の手段はリモートコントロールから補聴器に向けて上記誘導短距離無線を利用してオフ信号を送信することであり,この場合の上記リモートコントロールは,上記長距離無線を用いて受信された信号を消すことができる誘導無線信号を提供するように構成される。これは典型的には補聴器の非常に近くに上記リモートコントロールを位置させることによって達成することができる。
【0037】
はじめに
図1を参照して,
図1はこの発明の第1の実施態様による補聴器をかなり概略的に示している。
【0038】
上記補聴器100は,音響−電気入力トランスデューサ124,フロントエンド・チップ122,EEpromチップ123,バックエンド・チップ121および電気−音響出力トランスデューサ125を備えている。これらの構成要素は一体的に基本的な補聴器の機能を提供する。
【0039】
上記補聴器100はさらに誘導短距離無線101を備え,上記誘導短距離無線101は誘導アンテナ103,共振キャパシタ104,第1の低雑音増幅器(first low noise amplifier)(LNA)105,前段増幅器セット(a set of pre-amplifiers)106,第1のミキサ(混合器)107,第1のフェーズロックループ(PLL)108,局部発振器109,第1の中間フィルタ110,リミッタ111,復調器ブロック112,ならびにたとえばクロックデータ・リカバリ・ブロック,無線データ復号手段,および選択されたプロトコルにしたがう無線信号受信および送信の制御手段を含む,上記誘導短距離無線のデジタルコア113を有している。
【0040】
これに加えて,上記補聴器100は長距離無線102を備えており,長距離無線102は長距離アンテナ114,第2の低雑音増幅器115,第2のミキサ116,第2の中間フィルタ117,結合キャパシタ(結合コンデンサ)120,第2のフェーズロックループ118および設定(セット・アップ)レジスタ119を有している。
【0041】
上記誘導短距離無線101は10.6MHzの搬送周波数を持つ電磁信号をピックアップするように構成されており,これによって第1の電気入力信号が提供される。
【0042】
図1による実施態様の変形例では,上記誘導短距離無線用の上記搬送周波数を0.5MHzから30MHzの範囲,より詳細には3から12MHzの範囲から選択することができる。実際には,搬送周波数の選択は,主に無線データ送信に利用可能な周波数帯域を規定する国家の規則に依存する。
【0043】
上記電磁信号の受信を最適化するために,コイル形状の誘導アンテナ103および共振キャパシタ104が設けられており,これらが一緒になって,受信された電磁信号の搬送周波数に対応する共振周波数にチューニングされる共振回路が形成される。
図1の実施態様では,上記誘導アンテナ103は,フェライト心の周りに70回巻き回され,4.9mmの長さ,および1.8mmの直径を有するコイルであり,その結果として30μHのインダクタンスを有するものであり,他方上記共振キャパシタ104は上記誘導アンテナ103と平行に結合されており,7.4pFのキャパシタンスを持つものである。これにより,約25のQ値と,10.6MHzの中心周波数の周囲に400kHzのオーダーの帯域幅を持つ,高選択性の第1の帯域通過フィルタとして機能する共振回路が提供される。
【0044】
図1による実施態様の変形例では,上記コイルのインダクタンスを10から100μHの範囲において選択することができ,対応する共振キャパシタンスを2.5から22pFの範囲において選択することができる。
【0045】
上記第1の電気入力信号は上記第1のLNA105および前段増幅器セット106において適切なレベルに増幅されて,これにより第1の増幅入力信号が提供される。
【0046】
次に上記第1の増幅入力信号が,局部発振器109,第1のPLL108および第1のミキサ107を用いて,周波数においてミックスダウンされる(周波数低下混合される)(mixed down in frequency)。上記局部発振器109は32MHzのクロック周波数を有し,上記第1のPLL108は既知の原理のPLLベースの周波数シンセサイザを用いて上記局部発振器109と相互作用して10.6MHzの周波数を持つミキシング信号を提供する。上記第1のミキサ107において上記ミキシング信号が上記第1の増幅入力信号に乗算されて,第1の周波数ミックス入力信号(a first frequency mixed input signal)が提供される。
【0047】
上記周波数ミックス信号は,21.2MHzの中心周波数を持つ和周波数成分(sum frequency component)と,ゼロの中心周波数を持つ差周波数成分(difference frequency component)(すなわちベースバンド信号)を含む。その後低域通過フィルタ110が第1のフィルタリング入力信号を提供し,そこでは上記和周波数成分が上記第1の周波数ミックス入力信号から除去され,上記差周波数成分が維持される。
【0048】
上記第1のフィルタリング入力信号が上記第1のリミッタ111によって調整されて上記復調器ブロック112に与えられ,そこで選択された変調スキームにしたがって電気信号に復調される。基本的にあらゆるタイプのデジタル変調技術を選択することができる。デジタル変調技術の例としては,たとえば位相シフト・キーイング(phase-shift keying)(PSK),周波数シフト・キーイング(frequency-shift keying)(FSK)がある。
【0049】
図1によるこの実施例の変形例では,上記ダウンミキシングおよび復調,すなわち上記局部発振器108,上記ミキサ107,上記低域通過フィルタ110,上記第1のリミッタ111および上記復調器ブロック112は,国際特許公開WO−A1−2009/062500の第7頁30行〜第12頁第11行および
図5に記述されかつ示されるようにして実装される。これによって,上記第1の増幅入力信号は5つのブランチに分割され,5セットの発振器およびミキサが5つの周波数ミックス入力信号を提供し,それが次に5セットのフィルタおよびリミッタによってフィルタリングされかつ調整され,復調器ブロックに5つの信号が与えられ,復調器ブロックは周波数シフト・キーイング(FSK)変調スキームにしたがって上記信号(複数)を復調する。この変形例では上記低域通過フィルタは400kHzの帯域幅を持つ。したがって上記低域通過フィルタは,上記和周波数成分が上記信号から除去されかつ上記差周波数成分が維持された,フィルタリング入力信号(複数)を提供する。
【0050】
無線信号の受信の最終ステップにおいて,上記復調データが上記デジタルコア113に与えられ,そこで上記データが選択されたデジタル・プロトコルにしたがってデコード(復号)される。基本的にあらゆるタイプの無線送信用のデジタル・プロトコルを選択することができる。ブルートゥース適合プロトコルがその一例である。これに代えて,他の独占のものまたはパブリック・スタンダードのもの,たとえばワイデックスのW-link,オティコンのEarStream,シーメンスのTekConnect,またはフォナックのiComといった技術を用いることができる。
【0051】
次に,受信された無線データは標準補聴器処理用のバックエンド・チップ121に与えられる。
【0052】
上記誘導短距離無線101は,追加的に変調手段126および電力増幅器127を備えている。上記変調手段126は誘導リンクを通して送信されるデータ信号を上記デジタルコア113から受信し,上記電力増幅器127によって増幅される変調データ信号を提供するもので,増幅された信号が無線送信のために誘導アンテナ103に与えられる。
【0053】
図1による実施態様の変形例では,上記誘導短距離無線を用いて送受信されるデータ信号が,バイノーラル補聴器システムの左右の補聴器の動作を同期しかつ最適化するために用いられる。上記左および右補聴器が補聴器ユーザの左右の耳にまたは耳の中に装着されるように構成されている場合,誘導無線リンクを採用することは特に利点がある。誘導短距離無線リンクによって送信される磁場信号が補聴器ユーザの頭部によって大きく減衰されないからである。したがって,上述した誘導短距離無線を利用することによって2つの補聴器の間に低電力消費の無線リンクを実現することができる。
【0054】
上記長距離無線102は,865MHzの搬送周波数を持つ電磁信号をピックアップするように構成されている。上記電磁信号は電気アンテナ(electrical antenna)の形態の遠方場アンテナ114によってピックアップされ,これによって第2の電気入力信号が提供される。
図1の実施態様では,上記電気アンテナは1/4波長ヘリカルアンテナ(a quarter wavelength helical antenna)である。このようなアンテナはたとえばNeosid社から市販されている。
【0055】
図1による実施態様の変形例では,上記電気アンテナは,たとえばメアンダラインアンテナ(蛇行アンテナ)(Meander line antenna),フラクタル・アンテナ,ループ・アンテナおよびダイポール・アンテナを含む,多種多様のアンテナ・タイプから選択することができる。
【0056】
図1による実施態様の変形例では上記搬送周波数が915MHzである。865MHzの搬送周波数は欧州SRD帯域に対応し,他方915MHzは米国ISM帯域に対応する。基本的には,約400MHzから5GHzの範囲,より詳細には850から950MHzの範囲のあらゆる搬送周波数を,国家規則が許す場合に用いることができる。
【0057】
図1による実施態様のさらなる変形例では,上記遠方場アンテナ114は,マッチング回路(matching circuit)(図示略)を用いて遠方場無線の選択搬送周波数にチューニングされる。
【0058】
上記第2の電気入力信号は上記第1のLNA115によって適切なレベルに増幅され,これによって第2の増幅入力信号が提供される。
【0059】
図1による実施態様の変形例では,上記第2の増幅入力信号を,上記誘導短距離無線の前段増幅器106に類似する前段増幅器セットに与えることができる。
【0060】
次に上記第2の増幅入力信号は,上記局部発振器109,上記第2のPLL118および上記第2のミキサ116を用いて周波数においてミックスダウンされる(周波数低下混合される)。上記局部発振器109は32MHzのクロック周波数を有しており,上記第2のPLL118はPLLベースの周波数シンセサイザの既知の原理を用いて上記局部発振器109と相互作用して854.4MHzの周波数を持つミキシング信号を提供する。上記ミキシング信号は上記第2のミキサ116において上記第2の増幅入力信号に乗算されて第2の周波数ミックス入力信号が提供される。
【0061】
上記第2の周波数ミックス入力信号は,1719.4MHzの中心周波数を持つ和周波数成分と,10.6MHzの中心周波数を持つ差周波数成分を含む。上記第2の帯域通過フィルタ117は,10.6MHzの中心周波数を有しかつ1MHzから5MHzの範囲の帯域幅を持つ。
【0062】
したがって上記第2の帯域通過フィルタ117は,上記第1の中間入力信号から上記和周波数成分が取り除かれ,かつ上記差周波数成分が維持された第2のフィルタリング入力信号を提供する。
【0063】
図1の実施態様の変形例では,上記第2の帯域通過フィルタ117は,所望信号のイメージ(影像)(the image of the desired signal)を効果的に減衰するように設計されたデジタルフィルタである。上記所望信号のイメージは信号の周波数ダウンミキシングの結果であり,局部発振器周波数から所望信号と同じだけ離れているが,局部発振器周波数の反対側にあり(equally far from the local oscillator frequency as the desired signal, but on the other side of the local oscillator frequency),したがって所望信号のイメージは843.8MHzの中心周波数を持つ信号から派生する。オンチップ・イメージ除去技術は当該分野において知られており,さらなる詳細については,“On-chip image reject techniques for wireless receivers”; Nora Yan; University of Toronto Department of Electrical and Computer Engineering; 2001年11月12日および“Architectures and circuits for RF CMOS receivers”; Behzad Razavi, University of California, Electrical Engineering Department, IEEE 1998年 Custom Integrated Circuits Conferenceに見ることができる。
【0064】
上記ミキサ116の下流に上記帯域通過フィルタ117を位置させることが特に効果的である。そうすることで,上記帯域通過フィルタが長距離無線用の選択搬送周波数と無関係となり,異なる固定フィルタ間を選択することを持つことに代えて(instead of having to select between different fixed filters),上記周波数シンセサイザによって提供されるミキシング信号を上記搬送周波数に適合させることができるからである。
【0065】
図1の実施態様のさらなる変形例では,従来のオフチップ・フィルタ(図示略)が上記アンテナ114と上記第2のLNA115の間に挿入される。これによって,オンチップ・イメージ除去技術と比べてより強力な減衰を,一般には達成することができる。しかしながら,オフチップ・フィルタの使用は,LNA115における雑音指数と消費電力に関して負の影響を持つことがある。特定の変形例では,上記オフチップ・フィルタはアンテナ・マッチング回路の一部として実装される。
【0066】
さらに他の変形例では,従来のオフチップ・フィルタが上記第2のLNA115と上記ミキサ116との間に挿入される。
【0067】
上述した変形例に記載したようにオフチップ・フィルタを含ませる場合には,上記第2の帯域通過フィルタ117を省略することができる。上記誘導アンテナ103および共振キャパシタ104が10.6MHzの中心周波数において高い選択性の帯域通過フィルタを提供するからである。
【0068】
上記第2のフィルタリング入力信号は,上記結合キャパシタ120を通して上記第2の帯域通過フィルタ117からの出力と上記誘導アンテナ103とが単純に接続されることによって,上記誘導アンテナ103に結合される。上記結合キャパシタ120のキャパシタンスは100fFである。このような小さいキャパシタンス値を持つことで,上記結合キャパシタ120をオンチップに実装することができ,これによって所望キャパシタンス値の実装および要求精度の容易化が提供される。
【0069】
図1の実施態様の変形例において,上記第2の帯域通過フィルタ117からの出力が上記誘導アンテナ103と誘導的に結合される。上記第2のフィルタリング中間入力信号をガイドする上記導電体の末端を,上記誘導アンテナ103の近くに位置させることによって,上記誘導結合を実装することができる。さらなる変形例では,上記導電体はコイルのような誘導要素において終端する。
【0070】
一般には,上記誘導アンテナへの静電結合(capacitive coupling)が取得可能な効果的な結合のために好ましい。上記誘導アンテナへの誘導結合は,上記結合が電気接触を必要とせず,したがって長距離無線受信機を補聴器システムに対する独立のアドオンとして実装することができるという観点において利点である。
【0071】
上記第2のフィルタリング入力信号を上記誘導アンテナ103に結合することによって,高選択性のフィルタリングが達成され,その後,復調(デモジュレーション)およびデコーディングを,上記誘導短距離無線102を用いて実行することができる。
【0072】
図1による実施態様の変形例において,バイノーラル補聴器システムが,有線接続を通じてテレビからオーディオ信号を受信し,上記オーディオ信号を上記バイノーラル補聴器システムの2つの補聴器に遠距離無線を用いて無線で送信するように構成される外部機器を備える。このシステムは,ユーザが2つの補聴器の近くで装着されるさらなる外部機器を必要としないので,ほとんどの既知のシステムに対して有利である。ほとんどの既知のシステムは,補聴器(複数)は誘導短距離無線のみを備えており,この誘導短距離無線はテレビを見るときに伴う典型的な距離にわたって,過剰な電力消費を伴わずにして上記第1の外部機器から上記補聴器へオーディオ信号を送信することに適していないので,さらなる外部機器が必要とされる。上述の変形例のさらなる変形例では,上記テレビが,オーディオ信号を提供可能なあらゆるタイプの機器,たとえばコンピュータ,mp3プレーヤまたは携帯電話機に置き換えられる。
【0073】
ここで
図2を参照して,
図2はこの発明の第2の実施態様による補聴器をかなり模式的に示している。補聴器200は誘導短距離無線211および長距離無線212を備えている。
図1を参照して記述した構成要素に加えて,上記補聴器200は第3の帯域通過フィルタ203,第3のミキサ202および電力増幅器201を備えている。
【0074】
上記補聴器200から送信されるデータが上記デジタルコア113によって提供されて上記変調器126に与えられ,上記第3のミキサ202においてミキシング信号が乗算されることによって第1の変調出力信号が提供される。上記ミキサ202から信号が出力され,その信号は次に差周波数が除去されかつ和周波数が維持されるようにして上記第3の帯域通過フィルタ203においてフィルタリングされ,これによって周波数アップミックス信号(周波数上昇混合信号)(frequency up-mixed signal)が提供される。最後に上記周波数アップミックス信号が上記電力増幅器201において増幅されて,上記遠方場アンテナ114を用いて無線送信される。
【0075】
図2による実施態様の変形例において,バイノーラル補聴器システムが補聴器フィッティング・システムと長距離無線を用いて無線で通信するように構成される。これにより上記補聴器ユーザが補聴器の近くに外部機器を装着する必要なく,上記バイノーラル補聴器システムを完全に無線の形態でフィッティングすることができる。
【0076】
補聴器のフィッティング中に,上記補聴器200は,たとえば現在の補聴器設定および様々な確認信号といったデータを上記フィッティング・システムに送信し,たとえば新たな補聴器設定および様々な制御信号といったデータを受信するために,長距離無線を使用することが必要とされる。
【0077】
構造および手順の他の修正やバリエーションは,当業者には明白であろう。