(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
セリウム付活黄緑色〜黄色発光ルテチウムアルミネート蛍光体であって、該蛍光体は、ルテチウム、ガドリニウム、セリウム、少なくとも1種のアルカリ土類金属、アルミニウム、酸素、及び少なくとも1種のハロゲンを含み、前記蛍光体が380nm〜480nmの範囲の波長を有する励起放射を吸収し、550nm〜600nmの範囲のピーク発光波長を有する光を発光するように構成されている、黄緑色〜黄色発光ルテチウムアルミネート蛍光体。
【発明を実施するための形態】
【0014】
希土類セリウムで付活されるイットリウムアルミニウムガーネット化合物(YAG:Ce)は、歴史的に、所望の用途が高出力LED照明、又は特定ではない一般的な性質の冷白色照明のいずれかである場合に選択される、蛍光体材料の最も一般的な選択肢の1つである。予想し得るように、得られた白色光の青色光成分を供給するLEDチップと、蛍光体が得られる生成物白色光の黄色/緑色構成成分を通常供給する、蛍光体の励起放射との両方の場合において、一般照明における高効率成分が要求されている。
【0015】
本開示にて先に考察したように、YAG:Ceは、この所望される高い効率を示し、約95パーセントを超える量子効率を有し、したがって、この数を改善することは困難な課題であると考えられる。しかし、LEDチップの効率は、発光波長の低下とともに増大することが当技術分野において既知であり、それ故、ともかく理論的に、より短い波長で発光するLEDチップと対をなす蛍光体が、それらのより短い波長により励起され得る場合に一般照明システムの効率が向上されるであろうと思われる。この戦略による問題は、残念なことに、YAG:Ce蛍光体の発光効率が、その青色励起放射の波長が約460nm未満のレベルに低下された際に低下することである。
【0016】
この反動は、勿論、YAG:Ceが実際に、約450〜460nm以上の発光波長を有するLEDチップとのみ対をなす必要があることである。しかし、蛍光体の励起放射の光子エネルギーは、付活剤陽イオン(セリウム)を包囲する陰イオン多面体(この場合、酸素原子を含む)の構造に強く依存することも当技術分野において既知である。したがって、システムの効率は、ガーネット系蛍光体の励起範囲がYAG:Ce蛍光体と比較してより短い波長の方向に延長し得る場合に向上され得る。そこで、本発明の目的の1つは、この陰イオン多面体の構造及び性質を変更して、一方では、多数のガーネットが示す向上された特性をその間維持(又は更には改善)しつつ、蛍光体が遭遇することを「所望する」励起範囲を、従来のYAG:Ceの励起範囲よりも短い波長に移行することである。
【0017】
本開示は、以下のセクションに分割される。最初に、ハロゲン化アルミネートの化学的説明(化学量論式を使用して)を提供し、その後、それらを生成するのに使用し得る実行可能な合成方法の簡単な説明を提供する。次に、本ハロゲン化アルミネートの構造を、所定のハロゲンドーパントを含ませた後の波長及びフォトルミネッセント変化を含む該構造の実験データとの関係とともに論じる。最後に、白色光照明、一般照明、及び背面照明用途においてこれらの黄緑色及び黄色発光蛍光体が果たす役割を、例示的なデータを用いて提示される。
【0018】
本ハロゲン化アルミネート系蛍光体の化学的説明
【0019】
本発明の黄色〜緑色発光アルミネート系蛍光体は、アルカリ土類及びハロゲン構成成分の両方を含有する。これらのドーパントは、所望の発光強度及びスペクトル特性を達成するのに使用されるが、同時に行われるアルカリ土類及びハロゲン置換が一種の自己充足性(self-contained)荷電平衡を提供するという事実は、偶発的でもある。加えて、単位セルのサイズの全体的な変化に関係する他の有利な補償が存在し得る。Sc、La、Gd、及び/又はTbのいずれかによるLuの置換(個々に又は組み合わせのいずれかで)はセルのサイズを拡大又は縮小する傾向があり得る一方、ハロゲンによる酸素の置換により逆効果が生じ得る。
【0020】
本蛍光体の式を記述するいくつかの方法が存在する。一実施形態において、緑色発光、セリウムドープのアルミネート系蛍光体は、式(Lu
1−a−b−cY
aTb
bA
c)
3(Al
1−dB
d)
5(O
1−eC
e)
12:Ce、Eu、(式中、Aは、Mg、Sr、Ca、及びBaからなる郡から選択され;Bは、Ga及びInからなる郡から選択され;Cは、F、Cl及びBrからなる郡から選択され;0≦a≦1;0≦b≦1;0≦c≦0.5;0≦d≦1;並びに0≦e≦0.2である)により記述することができる。単独又は組み合わせのいずれかで使用される、アルカリ土類元素Mg、Sr、Ca、及びBaのいずれであってもよい「A」元素は、発光波長をより短い値に移行させるのに非常に有効である。これらの化合物は、本開示では「ハロゲン化LAG系」アルミネート、又は単に「ハロゲン化アルミネート」と称される。
【0021】
代替的な実施形態では、本黄色〜緑色発光アルミネート系蛍光体は、式(Y、A)
3(Al、B)
5(O、C)
12:Ce
3+(式中、Aが、Tb、Gd、Sm、La、Lu、Sr、Ca及びMgのうちの少なくとも1つである(それらの元素の組み合わせを含む))により記述することができ、これらの元素がYを置換する量は、化学量論的様式で約0.1〜約100パーセントの範囲である。Bが、Si、Ge、B、P及びGaのうちの少なくとも1つであり(組み合わせを含む)、これらの元素が、化学量論的に約0.1〜約100パーセントの範囲の量でAlを置換する。Cが、F、Cl、N及びSのうちの少なくとも1つであり(組み合わせを含む)、化学量論的に約0.1〜約100パーセントの範囲の量で酸素を置換する。
【0022】
代替的な実施形態では、本黄色〜緑色発光アルミネート系蛍光体は、式(Y
1−xBa
x)
3Al
5(O
1−yC
y)
12:Ce
3+(式中、x及びyが、それぞれ約0.001〜約0.2の範囲である)により記述できる。
【0023】
代替的な実施形態では、黄緑色〜緑色発光アルミネート系蛍光体は、式(A
1−x3+B
x2+)
mAl
5(O
1−y2−C
y1−)
n:Ce
3+(式中、Aが、Y、Sc、Gd、Tb及びLuからなる群から選択され;Bが、Mg、Sr、Ca及びBaからなる群から選択され;Cが、F、Cl及びBrからなる群から選択され;0≦x≦0.5;0≦y≦0.5;2≦m≦4;並びに10≦n≦14である)により記述できる。
代替的な実施形態では、黄緑色〜緑色発光アルミネート系蛍光体は、式(A
1−x3+B
x2+)
mAl
5(O
1−y2−C
y1−)
n:Ce
3+(式中、Aが、Y、Sc、Gd、Tb及びLuからなる群から選択され;Bが、Mg、Sr、Ca及びBaからなる群から選択され;Cが、F、Cl及びBrからなる群から選択され;0≦x≦0.5;0≦y≦0.5;2≦m≦4;並びに10≦n≦14であるが、但しmが3に等しくないことを条件とする)により記述できる。
【0024】
代替的な実施形態では、黄緑色〜緑色発光アルミネート系蛍光体は、式(A
1−x3+B
x2+)
mAl
5(O
1−y2−C
y1−)
n:Ce
3+(式中、Aが、Y、Sc、Gd、Tb及びLuからなる群から選択され;Bが、Mg、Sr、Ca及びBaからなる群ら選択され;Cが、F、Cl及びBrからなる群から選択され;0≦x≦0.5;0≦y≦0.5;2≦m≦4;並びに10≦n≦14であるが、但しnが12に等しくないことを条件とする)により記述できる。
【0025】
代替的な実施形態では、黄色〜緑色発光アルミネート系蛍光体は、式(Lu
1−x−yA
xCe
y)
3B
zAl
5O
12C
2z(式中、Aが、Sc、La、Gd及びTbのうちの少なくとも1つであり;Bが、アルカリ土類Mg、Sr、Ca及びBaのうちの少なくとも1つであり;Cが、ハロゲン元素F、C、Br及びIのうちの少なくとも1つであり;パラメーターx、y、zの値が、0≦x≦0.5;0.001≦y≦0.2;及び0.001≦z≦0.5である)により記述できる。本開示の式に関する「少なくとも1つ」は、その群の元素が、個々に又は組み合わせのいずれかで蛍光体中に現れてもよく、その群の元素の任意の組み合わせが可能であるが、但しその群の総量が、全体的な化学量論的量の点からそれに対して指定される規則を満足することを条件とすることに留意される。
【0026】
当業者は、例えば、C及びB成分がアルカリ土類塩(例えば、B
2+C
2)の形態で材料の出発混合物に添加された場合などに、焼成などの処理工程後、C、ハロゲンと、B、アルカリ土類との間の関係が、蛍光体中で常に2:1(化学量論的に)の予想比では存在し得ないことを認識するであろう。これは、ハロゲン成分が揮発性であることが既知であり、場合によりB対Cの比が最終蛍光体生成物において2:1未満となるように幾分かのCがBに対して損失することによる。それ故、本発明の代替的な実施形態では、段落[0045]の式においてCは、5パーセントまでの量で、2zより少ない。様々な別の実施態様では、Cの量は、化学量論的に10、25及び50パーセントまでの量で、2zより少ない。
【0028】
本黄緑色〜黄色発光アルミネート系蛍光体の合成には、固相反応機構及び液体混合法の両方を含み得る任意の数の方法を使用することができる。液体混合としては、共沈法及びゾル−ゲル法などの方法が挙げられる。
【0029】
調製の一実施形態は、
(a)所望の量の出発物質CeO
2、Y
2O
3、ルテチウムの硝酸塩、炭酸塩、ハロゲン化物及び/又は酸化物を含むルテチウム塩、他の希土類Sc、La、Gd及びTbの塩、及びM
2+X
2(式中、MがMg、Sr、Ca及びBaからなる群から選択される二価アルカリ土類金属であり、Xが、F、Cl、Br及びIからなる群から選択されるハロゲンである)を組み合わせて、出発物質の混合物を形成した工程と、
(b)工程(a)の出発物質の混合物を、ボールミル粉砕などの任意の従来の方法を用いて乾燥混合する工程であって、ボールミル粉砕を用いた典型的な混合時間が約2時間(一実施形態では、約8時間)を超える、工程と、
(c)工程(b)の混合された出発物質を、還元雰囲気中(この雰囲気の目的は、アンモニア系化合物の還元である)にて約1400℃〜約1600℃の温度で約6〜約12時間焼成する工程と、
(d)工程(c)の焼成された生成物を粉砕し、これを水で洗浄する工程と、
(e)工程(d)の洗浄された生成物を乾燥する工程であって、乾燥条件が約150℃の温度で約12時間の時間から構成されてもよい、工程と、を含む固相反応機構を含む。
【0030】
本アルミネートは、液体混合法により合成されてもよい。共沈を用いた、式Lu
2.985Ce
0.015Al
5O
12を有する非ハロゲン化LAG化合物の合成の例は、「Fabrication of Transparent Cerium−Doped Lutetium Aluminum Garnet Ceramics by Co−Precipitation Routes」と題されたJ.Am.Ceram.Soc.89[7]2356〜2358(2006)の記事にてH.−L.Li et al.により記載されている。これらの非ハロゲン化LAG化合物は、アルカリ土類構成成分を含まなかった。この記事は、同様の共沈法が、アルカリ土類構成成分を含む本開示のハロゲン化LAGを生成するのに利用されてよいことが企図されるため、その全容が本明細書に組み込まれる。
【0031】
ゾル−ゲル法を用いたハロゲン化YAG化合物の合成の例は、「Phosphor materials」と題されたE.McFarland et al.による、Symyx Technologiesに付与された米国特許第6,013,199号に記載されている。これらの(おそらく)非ハロゲン化YAG化合物は、アルカリ土類構成成分を含まなかった。この特許は、同様のゾル・ゲル法が、アルカリ土類構成成分を含む本開示のYAG化合物を生成するのに利用されてもよいことが企図されるため、その全容が本明細書に組み込まれる。
【0032】
図1は、上述した固相機構を介して合成された、異なるMgF
2添加剤濃度を有する例示的なLu
2.91Ce
0.09Al
5O
12蛍光体のSEMモホロジーを示す。走査型電子顕微鏡(SEM)により現れたモホロジーは、MgF
2添加剤の量が増大するにつれて、粒径がより大きく、より均質となることを示す。
【0033】
本黄緑色〜黄色発光アルミネートの結晶構造
【0034】
本黄緑色〜黄色アルミネートの結晶構造は、イットリウムアルミニウムガーネット、Y
3Al
5O
12の結晶構造と類似し、このよく研究されたYAG化合物と調和して、本アルミネートは、空間群Ia3d(no.230)に属し得る。この空間群は、それがYAGに関するため、「Yttrium Aluminum Garnet as a Scavenger for Ca and Si」と題されたJ.Am.Ceram.Soc.91[11]3663〜3667(2008)の記事にてY.Kuruらにより考察されてきた。Y.Kuruらにより記述されたように、YAGは、Y
3+が多重度24、ワイコフ文字「c」及び対称位置2.22の位置を占め、O
2−原子が多重度96、ワイコフ文字「h」及び対称位置1の位置を占める、単位セル当たり160個の原子(8個の式単位)からなる複雑な結晶を有する。Al
3+イオンの2つは、八面体16(a)位置上に位置するのに対して、残りの3つのAl
3+イオンは4面体24(d)部位上に位置する。
【0035】
YAG単位セルの格子パラメーターは、a=b=c=1.2008nm、及びα=β=γ=90°である。ルテチウムによるイットリウムの置換は単位セルのサイズを拡大すると予想されるのに対して、単位セル軸の間の角度は変化しないと予想され、材料はその立方体の特徴を保持する。
【0036】
図2は、アルカリ土類及びハロゲン(MgF
2)成分の添加が高角度回折ピークをどのようにより高い2θ値に移行させるかを示す、異なるMgF
2添加剤濃度を有する一連の例示的なY
2.91Ce
0.09Al
5O
12蛍光体のx線回折(XRD)パターンを示す。これは、格子定数がアルカリ土類/ハロゲンを有するYAG成分に対してより小さくなることを意味し、更にMg
2+が結晶格子内に組み込まれ、Y
3+位置を占めていることを示す。
【0037】
図3は、今回は一連の化合物が、異なるMgF
2添加剤濃度を有するLu
2.91Ce
0.09Al
5O
12蛍光体であり、イットリウム系化合物ではなくルテチウム系化合物が試験されていることを除いて、
図2と類似した方法で、一連の例示的な蛍光体のx線回折(XRD)パターンを示す。
【0038】
図4は、5重量%のMgF
2及び5重量%のSrF
2添加剤のいずれかを有する一連の例示的なLu
2.91Ce
0.09Al
5O
12蛍光体のx線回折(XRD)パターンを示す。この実験は、Mg構成成分対Sr構成成分の比較を示す。データは、Lu
2.
91Ce
o.o9Al
50
12格子中にMgF
2添加剤が存在することにより、高角度の回折ピークが2θ値を超えて移動することを示し、これは格子定数がより小さくなることを意味する。代替的に、SrF
2添加剤を有する場合、高角度の回折ピークはより小さい2θ値へ移動し、これは格子定数の増大を意味する。Mg
2+及びSr
2+の両方がLu
2.91Ce
0.09Al
5O
12格子に組み込まれており、Lu
3+位置を占めていることが当業者には明らかであろう。これらの位置におけるピークシフトは、0.72Åのイオン半径を有するMg
2+がLu
3+(0.86Å)よりも小さい一方、Sr
2+(1.18Å)はLu
3+よりも大きいために生じる。
【0039】
アルカリ土類及びハロゲンの機構は、光学特性に影響を与える。
【0040】
本発明の一実施形態において、Ce
3+は、アルミネート系蛍光体中の発光付活剤である。Ce
3+イオンの4fとdエネルギーレベルとの間の遷移は、青色光を有する蛍光体の励起に対応し、蛍光体からの緑色光発光は、同じ電子的遷移の結果である。アルミネート構造において、Ce
3+は、6個の酸素イオンの多陰イオン構造により形成される八面体部位の中心に位置する。当業者は、結晶分野の理論によれば、包囲する陰イオン(リガンドとも記載され得る)は、中心陽イオンの5d電子の静電電位を誘導することを認識するであろう。5dエネルギーレベル分裂は10Dqであり、Dqは、特定のリガンド種に依存することが既知である。分光化学シリーズから、ハロゲン化物のDqは酸素のDqよりも小さいため、酸素イオンがハロゲン化物イオンで代替された際、Dqはそれに応じて低下することが理解され得る。
【0041】
それにより、バンドギャップエネルギー、即ち、4fと5d電子準位との間のエネルギー差は、付活剤イオンを包囲する多陰イオンケージの酸素イオンをハロゲン化物で置換することにより増大するであろうことが示唆される。このことが、ハロゲン置換により、発光ピークがより短い波長に移行する理由である。八面体部位を形成する酸素多陰イオン構造にハロゲン化物イオンを導入するのと同時に、対応する陽イオンもLu(及び/又はSc、La、Gd及びTb)内容物の部分を代替し得る。Lu(及び/又は他の希土類)を代替する陽イオンが、より小さい陽イオンである場合、その結果として発光ピークはスペクトルの青色末端へ移行するであろう。発光したルミネッセンスは、他が起こった場合と比較してより短い波長を有するであろう。これに対して、Luを代替する陽イオンがSr又はBaなどのより大きい陽イオンである場合、その結果として発光ピークはスペクトルの赤色末端へ移行するであろう。この場合、発光したルミネッセンスは、より長い波長を有するであろう。
【0042】
青色移行が所望される場合、ハロゲン化物の効果と組み合わせた、アルカリ土類置換物としてのMgは、Srよりも良い選択肢であり、このことは本開示の以下の部分にて実験的に示される。LAG発光ピークは、スピン軌道結合により二重線であることも既知である。青色移行が起こるにつれて、より短い波長を有する発光がバイアスされ、その強度は、それに対応して増大する。この傾向は、発光の青色移行に有益なだけではなく、フォトルミネッセンスを向上させる。
【0043】
図5は、異なるレベルのMgF
2添加剤を有する一連の例示的なY
2.91Ce
0.09Al
5O
12蛍光体の発光スペクトルであり、発光スペクトルは、蛍光体を青色LEDで励起することにより得られた。このデータは、MgF2の量を増大させることによって、フォトルミネッセント強度が増大し、ピーク発光波長がより短い値に移行することを示している。
図5に示していないが、本発明者らは、出発粉末にBaF
2を5重量%添加したデータを有している。この蛍光体は、3つのマグネシウム含有蛍光体と比較して有意に増大したフォトルミネッセント強度と、1重量%サンプルのピーク発光波長とほぼ同一のピーク発光波長とを示した。
【0044】
図5のデータの正規化バージョンを、
図6に示す。
図6は、青色LED励起下での、異なるMgF
2添加剤濃度を有する同一の一連の例示的なLu
2.91Ce
0.09Al
5O
12蛍光体の正規化発光スペクトルであるが、フォトルミネッセント強度を単一の値に正規化し、Y
2.91Ce
0.09Al
5O
12の発光ピークがMgF
2添加剤の量の増大によってより短い波長に移行することを強調している。MgF
2添加剤の量が増大するほど、発光ピーク波長は短くなる。これは、次に明らかにされるように、Lu
2.91Ce
0.09Al
5O
12蛍光体により明らかにされた傾向と同一である。
【0045】
図7は、異なるレベルのMgF
2添加剤を有する一連の例示的なLu
2.91Ce
0.09Al
5O
12蛍光体の発光スペクトルであり、発光スペクトルは、蛍光体を青色LEDにより励起することにより得られた。このデータは、イットリウム系化合物ではなくルテチウム系が試験された以外は、
図5と類似である。イットリウムデータと同様、このルテチウムに関するデータは、発光波長の移行に関して同様の傾向を示すが、フォトルミネッセント強度に関するデータは、おそらく同様ではない。
【0046】
図7のLu
2.91Ce
0.09Al
5O
12発光スペクトルは、ピーク発光波長に対するハロゲン塩の添加の効果を強調するために正規化され、データの正規化バージョンは
図8に示される。イットリウムの場合と同様、ピーク発光は、MgF
2添加剤の量の増大とともにより短い波長に移行しており、即ちMgF
2添加剤の量が増大するほど、発光ピーク波長は短くなる。MgF2添加剤の量を0(添加剤なし)〜約5重量%の添加剤に増大したことによる波長移行の量は、約40nm、即ち約550nmから約510nmであると観察された。
【0047】
図5〜
図8のグラフの各々は、それらのそれぞれのスペクトルを、添加剤なしから開始して、シリーズの5重量%の最大濃度で終了するように添加剤濃度を増大させて、一連の蛍光体組成物としてプロットした。SrF
2添加剤とMgF
2添加剤との比較、換言すればSrアルカリ土類及びフッ素内容物を有する蛍光体と、Mgアルカリ土類及びフッ素内容物を有する蛍光体との比較を強調するために、蛍光体は
図9にて一緒にプロットされており、即ち添加剤なしの蛍光体、5重量%のSrF
2を有する蛍光体、及び5重量%のMgF
2を有する蛍光体がプロットされている。蛍光体は、サンプルLu
2.91Ce
0.09Al
5O
12に基づく。
【0048】
図9の発光スペクトルデータは、ハロゲン及びアルカリ土類を含ませることによりもたらされた光学特性への効果をより強調するために正規化されている。青色LEDで励起された場合、MgF
2及びSrF
2を添加することにより、発光ピークがより短い波長に移行するという結果が示されている。添加剤なしのLu
2.91Ce
0.09Al
5O
12サンプルは、約550nmにピーク発光波長を示し、ピーク発光波長は5重量%のSrF
2添加剤によって約535nmに移行し、波長は、5重量%のMgF
2添加剤によってなお更に約510nmに移行している。
【0049】
図10は、SrF
2添加剤の濃度が増大するにつれて、一連の例示的なLu
2.91Ce
0.09Al
5O
12蛍光体の発光波長がどのように低下するかを示している。ピーク発光波長は、SrF
2添加剤の量の関数としてプロットされており、1、2、3及び5重量%のSrF
2添加剤を有するサンプルが試験された。結果は、1及び2重量%サンプルではピーク発光波長がほぼ同一であり、その波長は約535nmであり、SrF
2添加剤が3重量%に増大するにつれてピーク発光波長が約533nmに低下することを示す。SrF
2添加剤が5重量%に更に増大すると、ピーク波長は約524nmに急激に低下する。
【0051】
図11は、MgF
2添加剤濃度が増大した際、励起スペクトルがより細くなることを示す、異なるMgF
2添加剤濃度を有する一連の例示的なLu
2.91Ce
0.09Al
5O
12蛍光体の正規化励起スペクトルである。データは、本緑色発光アルミネート系蛍光体が、約380〜約480nmの範囲に及んで蛍光体が励起され得る広帯域波長を有することを示す。
【0052】
本ガーネット蛍光体の熱安定性は、5重量%のMgF
2添加剤を有するルテチウム含有化合物Lu
2.91Ce
0.09Al
5O
12により例示され、その熱安定性は、
図12にて、市販の蛍光体Ce
3+:Y
3Al
5O
12と比較されている。Lu
2.91Ce
0.09Al
5O
12化合物の熱安定性は、むしろYAGよりも良好であることが観察され得る。
【0053】
背面照明及び白色光照明システムへの適用
【0054】
本発明の更なる実施形態によれば、本緑色発光アルミネート系蛍光体は、通常「白色LED」として既知の白色光照明システムにおいて、及び、ディスプレイ用途のための背面照明構成において使用されてもよい。そのような白色光照明システムは、約280nmを超える波長を有する放射線を放射するように構成されている放射線発生源と、この放射線発生源からの放射線の少なくとも一部分を吸収し、480nm〜約650nmの範囲のピーク波長を有する光を発光するように構成されているハロゲン化物陰イオンドープの緑色アルミネート蛍光体と、を含む。
【0055】
図13は、5重量%のSrF
2添加剤を有する、式Lu
2.91Ce
0.09Al
5O
12を有する例示的な緑色発光アルミネート系蛍光体を含む白色LEDのスペクトルを示す。この白色LEDは、式(Ca
0.2Sr
0.8)AlSiN
3:Eu
2+を有する赤色蛍光体を更に含む。緑色アルミネート及び赤色窒化物蛍光体の両方がInGaN LED発光青色光で励起された際、得られた白色光は、色座標CIE x=0.24、及びCIE y=0.20を示した。
【0056】
図14は、以下の成分を有する白色LEDのスペクトルである。青色InGaN LED、3又は5重量%のいずれかの添加剤を有する、式Lu
2.91Ce
0.09Al
5O
12を有する緑色ガーネット、式(Ca
0.2Sr
0.8)AlSiN
3:Eu
2+を有する赤色窒化物、又は、式(Sr
0.5Ba
0.5)
2SiO
4:Eu
2+を有するシリケート。白色光は色座標CIE(x=0.3、y=0.3)を有する。最も顕著な二重ピークを示すサンプルは、「EG3261+R640」と表示されたものであり、EG3261は、約640nmで発光する赤色R640(Ca
0.2Sr
0.8)AlSiN
3:Eu
2+蛍光体と組み合わせた(Sr
0.5Ba
0.5)
2SiO
4:Eu
2+蛍光体を表す記号表示である。LAG(3重量% MgF
2)+R640及びLAG(5重量%のSrF
2)+R640と表示された2つのピークは、500〜650nmの波長範囲にわたって、知覚される白色光の遥かに均一な発光を示し、これは当技術分野にて望ましい特性である。
【0057】
図15は、この場合では3,000Kにて測定された
図14の白色LEDシステムのスペクトルである。
【0058】
本発明の一実施形態において、緑色アルミネートとともに使用され得る赤色窒化物は、一般式(Ca、Sr)AlSiN
3:Eu
2+を有してもよく、赤色窒化物は場合によるハロゲンを更に含んでもよく、また赤色窒化物蛍光体の酸素不純物含有量は、約2重量パーセント以下であってもよい。黄緑色シリケートは、一般式(Mg、Sr、Ca、Ba)
2SiO
4:Eu
2+を有してもよく、アルカリ土類は個々に又は任意の組み合わせにて化合物中に現れてもよく、蛍光体は、F、Cl、Br又はI(再び、個々に又は任意の組み合わせにて)によりハロゲン化されてもよい。
【0060】
例示的なデータの概要を、この明細書の末尾に2つの表に示す。表1に、3つの異なるMgF
2添加剤レベルを有するLu
2.91Ce
0.09Al
5O
12系蛍光体の試験結果を示す。表2は、4つの異なるSrF
2添加剤を有するLu
2.91Ce
0.09Al
5O
12系化合物を示す。これらの結果は、Lu
2.91Ce
0.09Al
5O
12中のMgF
2及びSrF
2添加剤が発光ピーク波長をより短い波長に移行させ、発光強度はMgF
2及びSrF
2濃度の増大とともに増大することを要約及び確認している。粒径もMgF
2及びSrF
2添加剤濃度の増大とともに増大している。
【0061】
黄緑色〜黄色発光希土類ドープのアルミネート系蛍光体
【0062】
黄緑色〜黄色発光ハロゲン化アルミネートの特定のシリーズの希土類ドーピングを本発明者らにより試験し、蛍光体は一般式(Lu
1−x−yA
xCe
y)
3B
zAl
5O
12C
2zを有した。上記に開示したように、AがSc、La、Gd及びTbのうちの少なくとも1つであり;Bがアルカリ土類Mg、Sr、Ca及びBaのうちの少なくとも1つであり;Cがハロゲン元素F、C、Br及びIのうちの少なくとも1つであり;パラメーターx、y、zの値が、0≦x≦0.5;0.001≦y≦0.2;及び0.001≦z≦0.5である。この蛍光体のシリーズにおいて、希土類ドーパントはGdであり、アルカリ土類はBa又はSrのいずれかであった。ハロゲンは、この実験のシリーズでは、試験した全化合物においてFであった。試験した特定のアルミネートの式を、
図16に示す。
【0063】
この開示を目的として、緑色発光は、約500nm〜約550nmのピーク発光波長を有するとして定義される。約550nm〜約600nmに延びる発光は、黄緑色から黄色に変化する波長を含むとして記述され得る。記載した実験では、Gdドーピングを加えることにより、蛍光体は実質的に緑色の発光サンプルから実質的に黄色のサンプルに変換され、記されていないが、Gd濃度をなお更に増大させることにより(Baサンプルでは約0.33から、Srサンプルでは約0.13から)、発光が更に電磁スペクトルの黄色領域の方向に、該領域内へと移行する。ピーク発光波長は、ルテチウムに加えて存在する希土類(1つ又は複数)ドーパント(例えば、Luに加えて存在するGd)の選定及びレベルのみに依存せず、含まれるアルカリ土類(1つ又は複数)及びハロゲン(1つ又は複数)の選択にも依存するため、一般化することは困難であり得る。本開示におけるハロゲン化アルミネートは、電磁スペクトルの黄緑色〜黄色領域、約550nm〜約600nmの波長で発光すると定義される。緑色発光ハロゲン化アルミネートは、実質的約500nm〜約550nmの範囲のピーク波長にて発光する。緑色発光アルミネートに関しては、本出願と同一の嬢受人に譲渡され、その全容が本明細書に組み込まれる2011年7月12日出願の米国特許出願第13/181,226号を参照されたい。
【0064】
図16及び17A〜Bのデータは、Gdレベルが増大するにつれて全体で約550nm〜約580nmに拡がるこれらハロゲン化アルミネートのピーク発光波長を示し、Baレベルは、Baシリーズに関しては化学量論的に0.15に固定され、Srレベルは、Srシリーズに関しては化学量論的に0.34に固定されている(濃度は化学量論的であり、即ち、数によるものであり、重量によるものではない)。Ce付活剤レベルも全サンプルに関して化学量論的に0.03に固定された。詳細には、Baサンプルに関しては、Gd量が化学量論的に0.07から0.17、0.33に増加するにつれて、ピーク発光波長はそれぞれ554nmから565nm、576nmに増大した。Srサンプルに関しては、Gd量が化学量論的に0.03から0.07、0.13に増加するにつれて、ピーク発光波長はそれぞれ551nmから555nm、558nmに増大した。
【0065】
Baシリーズ中の実際の化合物は、それぞれ、(Lu
0.90Gd
0.07Ce
0.03)
3Ba
0.15Al
5O
12F
0.30、(Lu
0.80Gd
0.17Ce
0.03)
3Ba
0.15Al
5O
12F
0.30及び(Lu
0.64Gd
0.33Ce
0.03)
3Ba
0.15Al
5O
12F
0.30であった。試験したSrシリーズの実際の化合物は、それぞれ、(Lu
0.94Gd
0.03Ce
0.03)
3Sr
0.34Al
5O
12F
0.68、(Lu
0.90Gd
0.07Ce
0.03)
3Sr
0.34Al
5O
12F
0.68及び(Lu
0.84Gd
0.13Ce
0.03)
3Sr
0.34Al
5O
12F
0.68であった。
【0066】
Baシリーズと比較した場合、Srシリーズはより高い相対フォトルミネッセント強度にて発光したことに留意するべきであるが、いくつかの他の変数(例えば、Gd含有率、アルカリ土類の量、及びハロゲン濃度)が同時に変更されているため、当業者は注意深く結論を導くことを理解するであろう。
【0067】
図
18A〜Bに蛍光体のBaシリーズ及びSrシリーズの両方のx線回折パターンを示し、それらの明度データが
図17A〜Bに図示されている。
【0068】
本実施形態及びそれらの利点を詳細に述べたが、添付の特許請求の範囲によって規定される実施形態の趣旨及び範囲から逸脱することなく、様々な変更、置換及び改良を行うことが可能であることは理解されなければならない。