(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記加熱空間の温度は、高分子フィルムの熱分解開始温度以上、高分子フィルムの熱分解終了温度未満の範囲にあることを特徴とする請求項1に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
前記加熱空間の温度は、高分子フィルムの熱分解開始温度以上、高分子フィルムの熱分解終了温度未満の範囲にあることを特徴とする請求項9に記載の炭化フィルムの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、2段階以上の加熱空間を有する連続炭化工程を含むグラファイトフィルムの製造方法、および、2段階以上の加熱空間を有する連続炭化工程を含む炭化フィルムの製造方法に関する。上記グラファイトフィルムの製造方法は、2段階以上の加熱空間を含む連続炭化工程を含む、グラファイトフィルムの製造方法を意味し、上記炭化フィルムの製造方法は、2段階以上の加熱空間を含む連続炭化工程を含む、炭化フィルムの製造方法を意味する。
【0010】
本発明のグラファイトフィルムの製造方法では、高分子フィルムを熱処理することによってグラファイトフィルムを製造する。連続炭化工程において、当該製造方法は、連続炭化工程、炭化工程および黒鉛化工程を含んでいてもよいし、連続炭化工程、および黒鉛化工程を含んでいてもよい。
【0011】
一方、本発明の炭化フィルムの製造方法では、高分子フィルムを熱処理することによって炭化フィルムを製造する。当該製造方法は、連続炭化工程および炭化工程を含んでいてもよいし、炭化工程を含まず、連続炭化工程を含んでいてもよい。
【0012】
連続炭化工程での熱処理対象物は、高分子フィルムまたは炭化フィルムである(連続炭化工程では、高分子フィルムまたは炭化フィルムを熱処理する)。上記炭化フィルムとは、高分子フィルムを加熱して重量減少が始まっている(重量減少が生じた)フィルムを含む。すなわち、連続炭化工程では、未加熱の高分子フィルムを熱処理してもよく、高分子フィルムを加熱して重量減少が生じたフィルムを熱処理してもよい。
【0013】
この連続炭化工程では、高分子フィルムの分解収縮に伴い、高分子フィルムを炭化した炭化フィルムにシワや割れが発生し易い。本発明では、特に収縮の激しい500℃以上1000℃未満の温度範囲において、2段階以上に分けて連続炭化工程を実施することが好ましい。
【0014】
2段階以上の加熱空間を含む連続炭化工程を設けることによって、1段階あたりの炭化フィルム収縮量を小さくし、シワや割れを抑制することができる。
【0015】
<熱分解開始温度、熱分解終了温度>
本発明の連続炭化工程は、高分子フィルムの熱分解開始温度以上、高分子フィルムの熱分解終了温度未満の温度範囲で実施することが好ましい。高分子フィルムの熱分解開始温度以上、高分子フィルムの熱分解終了温度未満の温度範囲で高分子フィルムを熱分解するために、この領域を2段階以上で熱処理することでシワや割れの発生を抑制することができる。また、2段階以上で熱処理することで黒鉛化後のグラファイトフィルムの熱拡散率も高くなり易い。
【0016】
高分子フィルムの熱分解開始温度、熱分解終了温度は、熱処理される高分子フィルム上の実温度である。高分子フィルム上の実温度は、φ0.5mmのシース型K熱電対を使用して、高分子フィルムと熱電対を接触させて測定できる。
【0017】
なお、高分子フィルムの熱分解開始温度より低い温度の熱処理条件や、熱分解終了温度より高い温度の熱処理条件は特に制限されない。
【0018】
ここで高分子フィルムの熱分解開始温度とは、その高分子フィルムを熱処理したときに初期の高分子フィルムの重量に対して1.0%の重量減少が生じる温度と定義する。詳細には、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の熱分析システムEXSTAR6000及び熱重量測定装置TG/DTA 220Uを用いて、試料量は10mg、窒素雰囲流通下(200mL/min)にて、室温(23℃)から1000℃まで10℃/minの昇温速度で熱処理を行い、1.0%の重量減少が生じる温度である。
【0019】
本発明の実施例で用いたポリイミドフィルム(株式会社カネカ製ポリイミドフィルムアピカルAH 厚み75μm、アピカルNPI 厚み50、75、125μm )、ポリパラフェニレンオキサジアゾール(厚み75μm)、ポリパラフェニレンビニレン(厚み75μm)の場合には熱分解開始温度は500℃である。熱分解開始温度の測定は、上記定義に従って実施した。
【0020】
また、高分子フィルムの熱分解終了温度とは、その高分子フィルムを熱処理したときに初期の高分子フィルムの重量に対して50.0%の重量減少が生じる温度と定義する。詳細には、エスアイアイ・ナノテクノロジー株式会社製の熱分析システムEXSTAR6000及び熱重量測定装置TG/DTA 220Uを用いて、試料量は10mg、窒素雰囲流通下(200mL/min)にて、室温(23℃)から1000℃まで10℃/minの昇温速度で熱処理を行い、50.0%の重量減少が生じる温度である。
【0021】
本発明の実施例で用いたポリイミドフィルム(株式会社カネカ製ポリイミドフィルムアピカルAH 厚み75μm、アピカルNPI 厚み50、75、125μm )、ポリパラフェニレンオキサジアゾール(厚み75μm)、ポリパラフェニレンビニレン(厚み75μm)の場合には熱分解終了温度は1000℃である。熱分解開始温度の測定は、上記定義に従って実施した。
【0022】
<2段階以上の加熱空間の好ましい温度域>
2段階以上の加熱空間の好ましい温度範囲は、500℃以上1000℃未満、好ましくは500℃以上900℃以下、更に好ましくは550℃以上850℃以下、更には550℃以上800℃以下、特には550℃以上700℃以下であるとよい。500℃以上1000℃未満において、高分子フィルムの熱分解に伴う収縮が起き易い、この領域を2段階以上で熱処理することでシワや割れの発生を抑制することができる。また、2段階以上で熱処理することで黒鉛化後のグラファイトフィルムの熱拡散率も高くなり易い。
【0023】
<各加熱空間の温度差>
高分子フィルムの収縮の大きな500℃以上1000℃未満の温度範囲においては、段階数を増やして、各加熱空間の温度とその次に続く加熱空間(以下、近接する加熱空間という)の温度との温度差(後段の温度と前段の温度との温度差)ができるだけ小さくなるようにすると、シワや割れなど更に発生し難くなる。近接する加熱空間の温度差は5℃以上200℃以下、好ましくは10℃以上100℃以下、更に好ましくは20℃以上50℃以下であるとよい。5℃以上であれば、熱処理に伴うフィルムの破損や伸びを抑制することができる。また、加熱空間の数を減らすことができるために好ましい。また、200℃以下であれば、炭化フィルムの一度に収縮する量を小さくできるのでシワが発生し難い。さらに、200℃以下であれば、黒鉛化後のグラファイトフィルムの熱拡散率も高くなり易い。
【0024】
特に、600℃以上700℃以下では、高分子フィルムの収縮量が大きいため、各加熱空間の温度と次の加熱空間との温度差は5℃以上50℃以下、好ましく10℃以上40℃以下、更に好ましくは15℃以上30℃以下にするとよい。
【0025】
なお、近接する加熱空間の温度差は、これら2つの加熱空間の間に冷却空間が有っても無くても、近接する加熱空間におけるそれぞれの加熱空間におけるフィルムの最高温度の温度差を意味する。
【0026】
<各加熱空間通過前後の重量減少率>
一つの加熱空間の入口直前のフィルム重量と当該加熱空間の出口直後のフィルム重量から算出されるフィルムの重量減少率(以下、各加熱空間通過前後の重量減少率という)が、25%以下、好ましくは20%以下、更に好ましくは15%以下となるように加熱空間の段階数や温度設定を決定するとよい。25%以下になるようにすると、フィルムの収縮を緩やかにでき、シワが発生し難い。また、25%以下であれば、黒鉛化後のグラファイトフィルムの熱拡散率も高くなり易い。
【0027】
なお、各加熱空間通過前後の重量減少率とは、出発原料である高分子フィルムの初期重量に対して、熱処理前後のフィルムの重量減少の割合を指す。以下の式で計算できる。
重量減少率(%)=(加熱空間の入口直前のフィルム重量−加熱空間の出口直後のフィルム重量)/高分子フィルムの初期重量×100
上記高分子フィルムの初期重量とは、高分子フィルムを熱処理する前、23℃を保持した雰囲気下で24時間放置後、23℃で測定した高分子フィルムの重量である。また、加熱空間の入口直前のフィルム重量とは、加熱空間の入口直前で取り出したフィルムを、23℃を保持した雰囲気下で24時間放置後、23℃で測定したフィルムの重量であり、加熱空間の出口直後のフィルム重量とは、加熱空間の出口直後で取り出したフィルムを、23℃を保持した雰囲気下で24時間放置後、23℃で測定したフィルムの重量である。
【0028】
また、所定加熱空間通過後の高分子フィルムの重量保持率とは、出発原料である高分子フィルムの初期重量に対して、熱処理前後のフィルムの重量保持の割合を指し、以下の式で計算できる。
重量保持率(%)=(1−(高分子フィルムの初期重量−所定加熱空間の出口直後の高分子フィルム重量)/高分子フィルムの初期重量)×100
<グラファイトフィルム>
グラファイトフィルムは、原料フィルムである高分子フィルムを熱処理することにより製造できる。グラファイトフィルムの製造に適した高分子フィルムとして、ポリイミドフィルム、ポリアミドフィルム、ポリオキサジアゾールフィルム、ポリベンゾチアゾールフィルム、ポリベンゾビスアゾールフィルム、ポリベンゾオキサゾールフィルム、ポリベンゾビスオキサゾールフィルム、ポリパラフェニレンビニレンフィルム、ポリベンゾイミダゾールフィルム、ポリベンゾビスイミダゾールフィルム、ポリチアゾールフィルムのうちから選択された少なくとも一種類以上の高分子フィルムを例示できる。
【0029】
高分子フィルムとして特に好ましいのは、ポリイミドフィルムである。ポリイミドフィルムは、他の有機材料を原料とする高分子フィルムよりも、炭化および黒鉛化によりグラファイトの層構造が発達し易いためである。
【0030】
<バッチ式によるグラファイトフィルムの製造方法>
高分子フィルムからグラファイトフィルムを得る製造方法の一例として、炭化工程、黒鉛化工程、加圧処理工程を実施する方法が挙げられる。炭化工程では、出発物質であるフィルムを減圧下もしくは不活性ガス中で加熱処理して炭化する。すなわち、炭化工程では炭化フィルムが熱処理対象物である(炭化工程では、炭化フィルムを熱処理する)。
この炭化工程は、通常1000℃程度の温度にてバッチ式で加熱処理を行う。例えば、室温から10℃/分昇温速度で予備加熱処理を行った場合には、1000℃の温度領域で30分程度の温度保持を行う加熱処理が望ましい。加熱処理の段階では、フィルムの配向性が失われないように面方向の圧力を加えてもよい。
【0031】
なお、本発明で炭化フィルムとは、高分子フィルムを加熱して重量減少が始まっている(重量減少が生じた)フィルムを含む。
【0032】
炭化工程に続く黒鉛化工程は、炭化フィルムを超高温炉内にセットして行われる。すなわち、黒鉛化工程では炭化フィルムが熱処理対象物である(黒鉛化工程では炭化フィルムを熱処理する)。
【0033】
黒鉛化工程は、減圧下もしくは不活性ガス中で行われるが、アルゴンを不活性ガスとして用いることが最も適当であり、アルゴンに少量のヘリウムを加えるとさらに好ましい。黒鉛化工程の熱処理温度は、2400℃以上、より好ましくは2600℃以上、さらに好ましくは2800℃以上、特に好ましくは2900℃以上である。なお、黒鉛化工程は炭化工程に続けて連続で行ってもよいが、炭化工程後に一旦、温度を冷却してその後に黒鉛化工程を単独で行っても構わない。
【0034】
炭化工程および黒鉛化工程を経た後のグラファイトフィルムは、グラファイト骨格を形成しないN
2、フィラー(リン酸系)などの内部ガス発生によりグラファイト層が持ち上げられた発泡状態にある。黒鉛化工程後に発泡状態にあるグラファイトフィルムの場合には、黒鉛化工程後に圧縮処理、圧延処理などの加圧処理工程をおこなって耐屈曲性を向上させることもできる。
【0035】
<連続炭化工程を含むグラファイトフィルムの製造方法>
本発明のグラファイトフィルムの製造方法は、連続炭化工程を含む。連続炭化工程は炭化工程において、
図2のように長尺の高分子フィルム23を加熱処理装置21へ連続的に供給しながら連続焼成する工程(以下、連続加熱プロセスともいう)である。その際、加熱処装置の前後に巻き替え装置を設置して、高分子フィルムを搬送してもよい。また、連続炭化工程は、窒素やアルゴンなどの不活性ガス中で行うことが好ましい。
【0036】
連続炭化工程を実施する温度は、400℃以上1800℃以下、好ましくは450℃以上1400℃以下、更には500℃以上1000℃未満、更には500℃以上900℃以下、更には550℃以上850℃以下、更には550℃以上800℃以下、特に好ましくは550℃以上700℃以下の範囲であるとよい。400℃以上で熱処理することで高分子フィルムを炭化できる。また、1800℃以下であるとフィルム強度が十分であるため、連続処理時にフィルムが破損し難い。特に、800℃以下であると、炭化が完全に進行していないために、フィルムが破損し難いのでより好ましい温度である。
【0037】
黒鉛化工程は、連続炭化工程に続けて連続加熱プロセスを用いて行ってもよいし、連続炭化工程後にバッチ式の超高温炉を用いて行ってもよい。
【0038】
<加熱空間>
本発明の加熱空間とは、高分子フィルムを熱処理するために設けた、
図2のような加熱処理装置21の内部の空間である。複数の加熱空間を設ける場合には、各加熱空間は空間を物理的に切り分けてもよいし(その一例を
図7に示す)、
図3のように同じ空間内に複数の加熱空間33、34、35を設けてもかまわない。高分子フィルムに対して均一に熱を与えるために、一つの加熱空間内の温度分布は均一に保つことが好ましいが、急激な温度変化を避けるために、加熱空間の入口と中央部、中央部と出口において、緩やかな温度勾配をつけることも可能である。ヒーターや断熱材の配置を工夫し、加熱処理装置内の温度分布を制御することができる。なお、加熱空間の温度とは、その加熱空間を通過するフィルムの最も高い実温度を意味する。
【0039】
加熱空間は2段階以上であり、加熱空間では温度が2段階以上に異なっている。この段階数の上限は特に限定されないが、例えば、100段階以下、さらに50段階以下とすることができる。加熱空間では、前段階の温度よりも後段階の温度が高い方が好ましい。例えば、
図3の加熱空間1の温度よりも加熱空間2の温度が高く、加熱空間2の温度よりも加熱空間3の温度が高いことが好ましい。
【0040】
本発明において一つの加熱空間の長さは、5cm以上、好ましくは10cm以上、更に好ましくは20cm以上である。5cm以上であれば、連続通過するフィルムへ十分に熱履歴を加えることができる。
【0041】
<冷却空間>
本発明の連続炭化工程は、
図4のように2つの加熱空間の間(加熱空間同士の間)に冷却空間が存在することが好ましい。冷却空間とは、加熱空間で加熱されたフィルムを冷却するための空間であり、使用する高分子フィルムのTgよりも低い温度に設定されていることが好ましい。冷却空間で冷却された炭化フィルムは加熱空間で加熱されている炭化フィルムに比べて硬くなるために、冷却空間では炭化フィルムは変形し難い。加熱空間と次の加熱空間の間に冷却空間を設けると、炭化フィルムにシワが発生し難くなる。冷却空間の数は多いほど、シワの発生を抑制する効果がより得られる。そのため、加熱空間同士の間の全てに冷却空間が存在することが特に好ましい。
【0042】
冷却空間を設けた連続炭化工程によって得られる炭化フィルムから、熱拡散率の高いグラファイトフィルムが得られる。これは、冷却空間を設けたことによって、冷却空間での炭化フィルムの分子配向が保たれたまま次に続く加熱空間での熱処理を行えることに起因しているものと推定している。
【0043】
本発明の冷却空間の温度は、直前の加熱空間よりも低い温度であって、かつ550℃以下、好ましくは500℃以下、より好ましくは450℃以下、更には300℃以下、特には100℃以下である。
【0044】
なお、冷却空間の温度とは、その冷却空間を通過するフィルムの最も低い実温度を意味する。
【0045】
本発明の冷却空間の長さは、5cm以上、好ましくは10cm以上、更に好ましくは20cm以上である。5cm以上であれば、連続通過するフィルムを冷却空間の温度まで冷却することができる。
【0046】
なお、本発明の冷却空間には、
図7のように各加熱処理装置の間隔を離して設置した場合における加熱処理装置間の空間や、例えば
図2のような加熱処理装置21で高分子フィルムを熱処理して一度巻き取ったフィルムを、再度加熱処理装置で熱処理する場合(再度の加熱処理装置での熱処理温度は同じ温度でも異なる温度でも構わない)、加熱空間を出てから次の加熱空間に入るまでの間も、含まれる。
【0047】
<複屈折>
本発明において、高分子フィルムの複屈折について特に制限はない。しかし、複屈折が0.08以上であればフィルムの炭化、黒鉛化が進行し易くなるので、グラファイト層が発達したグラファイトフィルムが得られ易くなる。特に、本発明のように高分子フィルムの配向性が崩れ易い連続炭化工程を実施する場合には複屈折が高い方が好ましい。高分子フィルムの複屈折は好ましくは0.08以上、より好ましくは0.10以上、さらに好ましくは0.12以上、特に好ましくは0.14以上である。なお、複屈折とはフィルム面内の任意方向の屈折率と厚み方向の屈折率との差を意味し、複屈折を複屈折率と換言することができる。複屈折の上限値は特に限定されないが、例えば、0.20以下、さらに0.18以下とすることができる。
【0048】
<張力を制御するための装置>
本発明の連続炭化工程において、例えば加熱処理装置の前後に高分子フィルムの張力を調整するための張力調整装置が取り付けて、高分子フィルムに張力を加えながら熱処理してもよい。張力調整装置はすべての加熱処理装置に設けてもよいし、一部の加熱処理装置にのみ設けてもよい。張力を調整するための調整装置として、
図2のような巻取り装置の回転軸にトルクを加える方法などが挙げられる。
【0049】
本発明の連続炭化工程で高分子フィルムに張力を加える場合、高分子フィルムに加える引張り強さは、5kgf/cm
2以上500kgf/cm
2以下、好ましくは10kgf/cm
2以上300kgf/cm
2以下、更に好ましくは20kgf/cm
2以上100kgf/cm
2以下であるとよい。引張り強さは、5kgf/cm
2以上であると、フィルムの熱分解収縮に伴うシワの発生を抑制できる。また、500kgf/cm
2以下であると、フィルムの過剰張力による破損を防ぐことができる。
【0050】
<フィルムの厚み方向に加える荷重>
本発明の連続炭化工程において、加熱空間にて高分子フィルムの厚み方向に荷重を加えることが好ましい。荷重を加える方法として、特に限定しないが、
図5のように、炉床51に高分子フィルム37を添わせ、上から重石52を載せる方法などが挙げられる。フィルムの厚み方向に加える荷重は、下限が0.1g/cm
2以上、好ましくは0.5g/cm
2以上、さらに好ましくは1g/cm
2以上、上限が50g/cm
2以下、好ましくは20g/cm
2以下、さらに好ましくは10g/cm
2以下であるとよい。荷重が0.1g/cm
2以上であると、フィルムの熱分解収縮に伴うシワを抑制することができる。また、50g/cm
2以下であると、過剰荷重によるフィルムの破損を防ぐことができる。
【0051】
<ライン速度>
本発明の連続炭化工程におけるフィルムのライン速度(以下、ライン速度ともいう)とは、熱処理後のフィルムの巻き取り速度である。ライン速度は、10cm/min以上500cm/min以下、好ましくは20cm/min以上300cm/min以下、好ましくは30cm/min以上150cm/min以下である。ライン速度が10cm/min以上が生産性の観点から好ましい。また、500cm/min以下であれば、加熱空間での均一な熱処理が可能となり、シワなどの不良が発生し難い。
【0052】
なお、本発明のグラファイトフィルムの製造方法は、以下の(1)のように表され、本発明には(2)〜(7)の形態も含まれる。
【0053】
(1)2段階以上の加熱空間を含む連続炭化工程を含む、グラファイトフィルムの製造方法。
【0054】
(2)前記加熱空間の温度は、高分子フィルムの熱分解開始温度以上、高分子フィルムの熱分解終了温度未満の範囲にあることを特徴とする(1)に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0055】
(3)前記連続炭化工程において、少なくとも2段階以上の加熱空間の温度が、500℃以上1000℃未満の範囲にあることを特徴とする(1)または(2)に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0056】
(4)前記連続炭化工程に少なくとも1つの冷却空間が存在することを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0057】
(5)近接する加熱空間の温度差が5℃以上200℃以下の範囲であることを特徴とする(1)に記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0058】
(6)各加熱空間通過前後のフィルムの重量減少率が25%以下であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0059】
(7)連続炭化工程に使用する高分子フィルムの複屈折が0.10以上であることを特徴とする(1)〜(6)のいずれかに記載のグラファイトフィルムの製造方法。
【0060】
また、本発明の炭化フィルムの製造方法は、以下の(8)のように表され、本発明には(9)〜(14)の形態も含まれる。
【0061】
(8)2段階以上の加熱空間を含む連続炭化工程を含む、炭化フィルムの製造方法。
【0062】
(9)前記加熱空間の温度は、高分子フィルムの熱分解開始温度以上、高分子フィルムの熱分解終了温度未満の範囲にあることを特徴とする(8)に記載の炭化フィルムの製造方法。
【0063】
(10)前記連続炭化工程において、少なくとも2段階以上の加熱空間の温度が、500℃以上1000℃未満の範囲にあることを特徴とする(8)または(9)に記載の炭化フィルムの製造方法。
【0064】
(11)前記連続炭化工程に少なくとも1つの冷却空間が存在することを特徴とする(8)〜(10)のいずれかに記載の炭化フィルムの製造方法。
【0065】
(12)近接する加熱空間の温度差が5℃以上200℃以下の範囲であることを特徴とする(8)〜(11)のいずれかに記載の炭化フィルムの製造方法。
【0066】
(13)各加熱空間通過前後のフィルムの重量減少率が25%以下であることを特徴とする(8)〜(12)のいずれかに記載の炭化フィルムの製造方法。
【0067】
(14)連続炭化工程に使用する高分子フィルムの複屈折が0.10以上であることを特徴とする(8)〜(13)のいずれかに記載の炭化フィルムの製造方法。
【実施例】
【0068】
以下において、本発明の種々の実施例をいくつかの比較例と共に説明する。
【0069】
<各種物性測定条件>
<連続炭化工程後のシワ(巻取りテスト)>
連続炭化工程後の炭化フィルムのシワを評価した。シワの評価は、23℃の雰囲気下、炭化フィルムを各種径の紙管に5周巻きつけて、割れるかどうかを確認した。シワが多いものほど、紙管に巻きつけると割れ易く、小さな径の紙管には巻きつけることができない。
【0070】
評価基準は、炭化フィルムが、直径2インチの紙管に巻いても割れない場合をA、直径2インチでは割れるが直径3インチでは割れない場合をB、直径3インチでは割れるが直径4インチで割れない場合をC、直径4インチでは割れるが直径5インチでは割れない場合をD、直径5インチでも割れる場合をEとした。
【0071】
<グラファイトフィルムの熱拡散率>
グラファイトフィルムの面方向の熱拡散率は、光交流法による熱拡散率測定装置(アルバック理工(株)社製「LaserPit」)を用いて、グラファイトフィルムを4×40mmの形状に切り取ったサンプルを、23℃の雰囲気下、10Hzにて測定した。
【0072】
<複屈折>
高分子フィルムの複屈折は、メトリコン社製の屈折率・膜厚測定システム(型番:2010 プリズムカプラ)を使用して測定した。測定は、23℃の雰囲気下、波長594nmの光源を用い、TEモードとTMモードでそれぞれ屈折率を測定し、TE−TMの値を複屈折として測定した。
【0073】
<加熱空間及び冷却空間の温度>
加熱空間及冷却空間の温度は、φ0.5mmのシース型K熱電対(山里産業製)を使用して、加熱空間及冷却空間を通過するフィルムと熱電対を接触させ、フィルム実温度を測定した。加熱空間の温度とは、その加熱空間を通過するフィルムの最も高い温度、冷却空間の温度とは、その冷却空間を通過するフィルムの最も低い温度とした。
【0074】
(実施例1)
図4の41のように、複屈折0.14、厚み75μm、幅200mm、長さ50mの株式会社カネカ製ポリイミドフィルム:アピカルNPIの巻き物を巻き替え装置にセットし、加熱処理装置に連続的に供給しながら連続炭化工程を実施した。各加熱空間のMD方向(Machine Direction:流れ方向)の長さは50cm、TD方向(Transverse Direction:幅方向)の長さは300mmとし、加熱空間内の温度が均一になるように、それぞれ550℃、600℃、650℃、700℃、750℃、800℃、850℃に調整した。フィルムに対して引張り強さ30kgf/cm
2で張力を加えながら、50cm/minのライン速度でフィルムを搬送した。各空間内は
図5のように黒鉛製の冶具でフィルムを上下から挟みこみ、間を滑らせるように搬送した。フィルムの厚み方向に加わる圧力は2g/cm
2に調整した。得られた炭化フィルムのシワの評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0075】
次に、ロール状に巻かれた炭化フィルムを、
図6のように炭化フィルムのTD方向と垂直方向が一致するように黒鉛化炉に投入し、2900℃まで2℃/minの昇温速度で熱処理した。
【0076】
得られたフィルムを10MPaの圧力で圧縮し、得られたグラファイトフィルムの熱拡散性と耐屈曲性を評価した。結果を表1、2に示す。
【0077】
(実施例2)
図4の42のように、各加熱空間の間に、MD方向の長さが50cmで温度が25℃に調整された冷却空間を設けたこと以外は実施例1と同様にグラファイトフィルムを製造し、各種評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0078】
(実施例3)
冷却空間の温度を450℃に設定したこと以外は実施例2と同様にグラファイトフィルムを製造し、各種評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0079】
(実施例4)
実施例2の最初の3ゾーンが、それぞれ550℃の加熱空間、550℃の加熱空間、600℃の加熱空間であり、その後、
図4の42のように、各加熱空間の間に、MD方向の長さが50cmで温度が550℃に調整された冷却空間を設けたこと以外は実施例1と同様にグラファイトフィルムを製造し、各種評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0080】
(実施例5)
加熱空間をそれぞれ550℃、650℃、750℃、850℃に調整した以外は実施例2と同様にグラファイトフィルムを製造し、各種評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0081】
(実施例6)
550℃と650℃の加熱空間の間に600℃の加熱空間を設けたこと以外は実施例5と同様にグラファイトフィルムを製造し、各種評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0082】
(実施例7)
650℃と750℃の加熱空間の間に700℃の加熱空間を設けたこと以外は実施例5と同様にグラファイトフィルムを製造し、各種評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0083】
(実施例8)
550℃と600℃の加熱空間の間に575℃の加熱空間を設けたこと以外は実施例2と同様にグラファイトフィルムを製造し、各種評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0084】
(実施例9)
600℃と650℃の加熱空間の間に625℃の加熱空間を設けたこと以外は実施例2と同様にグラファイトフィルムを製造し、各種評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0085】
(実施例10)
650℃と700℃の加熱空間の間に675℃の加熱空間を設けたこと以外は実施例2と同様にグラファイトフィルムを製造し、各種評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0086】
(実施例11)
フィルムの厚み方向に圧力を加えなかったこと以外は実施例9と同様にグラファイトフィルムを製造し、各種評価を行った。結果を表1、2に示す。
【0087】
(実施例12)
高分子フィルムの厚みを50μmに変更したこと以外は、実施例2と同様にしてグラファイトフィルムを製造した。結果を表1、2に示す。
【0088】
(実施例13)
高分子フィルムの厚みを125μmに変更したこと以外は、実施例2と同様にしてグラファイトフィルムを製造した。結果を表1、2に示す。
【0089】
(実施例14)
複屈折が低い(複屈折0.10)高分子フィルム:株式会社カネカ製ポリイミドフィルム:アピカルNPIを使用した以外は、実施例2と同様にしてグラファイトフィルムを製造した。結果を表3、4に示す。
【0090】
(実施例15、16)
実施例15では、高分子フィルムとしてPOD(ポリパラフェニレンオキサジアゾール)を用い、実施例16では、高分子フィルムとしてPPV(ポリパラフェニレンビニレン)を用いた以外は、実施例2と同様にしてグラファイトフィルムを製造した。結果を表3、4に示す。
【0091】
(実施例17、18)
実施例17では、高分子フィルムの幅を50mmに変更し、実施例18では、高分子フィルムの幅を300mmに変更したこと以外は、実施例2と同様にしてグラファイトフィルムを製造した。結果を表3、4に示す。
【0092】
(実施例19)
ゾーン1を550℃の加熱空間、ゾーン2を25℃の冷却空間、ゾーン3を750℃の加熱空間、ゾーン4を25℃の冷却空間、ゾーン5を850℃の加熱空間に設定したこと以外は、実施例5と同様にしてグラファイトフィルムを製造した。結果を表3、4に示す。
【0093】
(実施例20)
ゾーン7の加熱空間の温度を750℃から700℃に変更し、ゾーン7で連続炭化工程を終了した(ゾーン8、9を用いない)こと以外は、実施例5と同様にしてグラファイトフィルムを製造した。結果を表3、4に示す。
【0094】
(実施例21)
加熱空間の温度を、ゾーン7では675℃から700℃に、ゾーン9では700℃から750℃に、ゾーン11では750℃から800℃に、ゾーン13では、800℃から850℃に、ゾーン15では850℃から1000℃に変更した以外は、実施例10と同様にしてグラファイトフィルムを製造した。結果を表3、4に示す。
【0095】
(比較例1)
加熱空間を850℃の1段階としたこと以外は、実施例1と同様にグラファイトフィルムを製造し、各種評価を行った。結果を表3、4に示す。
【0096】
(比較例2、3)
比較例2では、ゾーン1の加熱空間の温度を850℃から1000℃に変更し、比較例3では、ゾーン1の加熱空間の温度を850℃から800℃に変更した以外は、比較例1と同様にしてグラファイトフィルムを製造した。結果を表3、4に示す。
【0097】
(参考例1)
特開平4−149013公報の実施例1を追試した。
【0098】
厚み50μm、幅50mm、長さ50mのデュポン株式会社製ポリイミドフィルム:カプトンHを使用したこと、温度を1000℃に調整したこと、フィルムに対して2kgf/cm
2の引張り強さを加えたこと、25℃/minの昇温速度まで1000℃まで昇温すべく、ライン速度を1.25cm/minとしたこと、空間内は炉床が無く、荷重も加えなかったこと以外は、実施例1と同様にグラファイトフィルムを製造し、各種評価を行った。結果を表3、4に示す。
【0099】
(参考例2)
特開2004−299937公報の実施例2を追試した。
【0100】
厚み50μm、幅50mm、長さ5mの株式会社カネカ製ポリイミドフィルム:アピカルAHを使用したこと、温度を800℃に調整したこと、フィルムに対して0.1kgf/cm
2以下の引張り強さを加えたこと、1.66cm/minのライン速度でフィルムを搬送したこと、空間内は荷重を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にグラファイトフィルムを製造し、各種評価を行った。結果を表3、4に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
【表2】
【0103】
【表3】
【0104】
【表4】
【0105】
<2段階以上の加熱空間について>
実施例1〜10と比較例1を比較する。加熱空間を2段階以上設置した実施例1〜10は、加熱空間が一段階の比較例1より連続炭化後のシワの発生が少なく、より小さな径の紙管に巻きつけることができた。これは、加熱空間が2段階以上あることで、一度に起きる熱分解に伴うフィルムの収縮量を小さくでき、シワを抑制することができた。
【0106】
また、比較例2、3のように、加熱空間の温度を1000℃または800℃に変更した場合にも炭化フィルムにシワが発生し易く、グラファイトフィルムの熱拡散率は低い結果となった。このように、加熱空間が一段階の場合、良好なグラファイトフィルムが得られなかった。
【0107】
<冷却空間>
実施例1と実施例2を比較する。冷却空間を設置した実施例2は、冷却空間を設置していない実施例1と比較して連続炭化工程後のシワの発生が少なかった。これは、冷却空間で冷却されたフィルムは硬質化し変形し難くなるためである。
【0108】
また、実施例2の黒鉛化後のグラファイトフィルムの熱拡散率は実施例1と比較して大きかった。これは、過剰な熱分解による分子鎖の乱れが冷却空間にてリセットされるため、黒鉛化が進行し易かったためであると推定される。
【0109】
冷却空間の冷却温度の異なる実施例2〜実施例4を比較する。冷却空間の温度がフィルムの硬質化温度以下である実施例2、実施例3は、フィルムが硬質化できない実施例4と比較して、シワの発生が少なかった。また、黒鉛化後の熱拡散率も向上した。
【0110】
<各加熱空間の温度差>
加熱空間と次の加熱空間の温度差の異なる実施例2と実施例5を比較する。温度差が50℃の実施例2は、温度差が100℃の実施例5と比較して、シワの発生が少なかった。これは、実施例5より実施例2の方が、1つの加熱空間でフィルムが収縮する量を小さくできるのでシワが発生し難かったことが理由である。
【0111】
実施例5〜実施例7を比較する。特に各加熱空間の温度差を小さくした方がよい温度領域600℃以上700℃以下を50℃間隔にした実施例6は、その他の領域を50℃間隔にしたものより、シワの発生が少なく、当領域の温度差を小さくすることが有効であることがわかった。
【0112】
また、実施例2、実施例8〜実施例10を比較する。600℃〜650℃の温度領域を25℃間隔に設定した実施例9はシワ発生が極端に少なく、当領域において、温度差を小さくすることが特に有効であることがわかった。
【0113】
<各加熱空間処理後の重量減少率とシワの関係>
重量減少率が40%の比較例1より、重量減少率が最大で25%以下の実施例1〜実施例10はシワの発生が少なかった。25℃の冷却空間を各温度空間の間に設置した、実施例2、実施例5〜実施例10を比較すると、重量減少率の最大値が11%の実施例9がシワの発生が最も少なく、続いて16〜20%の実施例2、実施例6、実施例8、実施例10はシワが発生し難く、24%の実施例5、実施例7は最もシワが発生し易かった。この結果から、一度に熱分解し、フィルムが収縮する量を小さくすることで、シワの発生を抑制できることがわかった。
【0114】
<フィルムの厚み方向に加える圧力>
フィルムの厚み方向に圧力を加える実施例9と加えなかった実施例11を比較すると、圧力を加えた実施例9の方がシワの発生が少なかった。
【0115】
<高分子フィルムの厚み>
高分子フィルムの厚みが50μmの実施例12および高分子フィルムの厚みが125μmの実施例13から、厚みが50μm〜125μmの場合にもシワが抑制された炭化フィルムが問題なく得られることが分かった。また、実施例12、13の比較から、高分子フィルムが薄い方が、グラファイトフィルムの熱拡散率が高い結果となった。
【0116】
<高分子フィルムの複屈折>
実施例2、14の比較から、複屈折が低い高分子フィルムを用いた場合であっても、シワが抑制された炭化フィルムが問題なく得られることが分かった。ただし、高分子フィルムの複屈折が低い実施例14では、グラファイトフィルムの熱拡散率が低い結果となった。
【0117】
<高分子フィルムの種類>
実施例15、16の結果から高分子フィルムとしてPODまたはPPVを用いた場合であっても、シワが抑制された炭化フィルムが問題なく得られることが分かった。ただし、実施例2、15、16の比較から高分子フィルムとしてポリイミドフィルムを用いた場合に、最も熱拡散率の高いグラファイトフィルムが得られる結果となった。
【0118】
<高分子フィルムの幅>
実施例17では、連続炭化工程後のシワ(巻取りテスト)の結果がAであり、実施例18の結果はCであり、シワの抑制された炭化フィルムが得られ、幅が狭い高分子フィルムを用いた場合、シワがより抑制された炭化フィルムが得られた。実施例17、18から、高分子フィルムの幅を50mm〜300mmとした場合に問題なく炭化フィルムが得られることが分かる。
【0119】
<加熱空間の温度差>
ゾーン1、2の加熱温度差が200℃と広い実施例19では、ゾーン1の加熱空間を通過した後の高分子フィルムの重量保持率は97%であり、重量減少率は3%であった。一方、ゾーン3の加熱空間を通過した後の高分子フィルムの重量保持率は65%であり、重量減少率は32%であった。ゾーン1、3の重量減少率の差は29%であり、高分子フィルムが急速に収縮した結果、連続炭化工程後のシワ(巻取りテスト)の結果はDであり、本発明の炭化フィルムとしてはシワの抑制度合いが低い炭化フィルムが得られた。
【0120】
<加熱空間の最高温度>
実施例5、20の比較から、温度の上昇を緩やかに行い、加熱空間の最高温度が低い実施例20の方が、炭化フィルムにシワが発生し難く、連続炭化工程後のシワ(巻取りテスト)の結果はAと良好であった。
【0121】
また、実施例10、21では、最高温度である、ゾーン15の加熱空間の温度が850℃、1000℃であり、連続炭化工程後のシワ(巻取りテスト)の結果は実施例10がB、実施例21がCであった。このことから、加熱領域の最高温度は、低い方が炭化フィルムにシワが発生し難く、高い方が炭化フィルムにシワが発生し易いことがわかる。さらに、最高温度が低い実施例10の方が、グラファイトフィルムの熱拡散率が高い結果であった。