(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655178
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】飲料抽出方法
(51)【国際特許分類】
A47J 31/06 20060101AFI20141225BHJP
A47J 31/36 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
A47J31/06 A
A47J31/36
【請求項の数】23
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2010-510939(P2010-510939)
(86)(22)【出願日】2008年6月4日
(65)【公表番号】特表2010-528751(P2010-528751A)
(43)【公表日】2010年8月26日
(86)【国際出願番号】IB2008052183
(87)【国際公開番号】WO2008149297
(87)【国際公開日】20081211
【審査請求日】2011年2月1日
(31)【優先権主張番号】07109586.3
(32)【優先日】2007年6月5日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】514028558
【氏名又は名称】カフィタリー システム エス.ピー.エー.
【氏名又は名称原語表記】CAFFITALY SYSTEM S.p.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】ジョヴァンニ アキュルシ
【審査官】
大山 広人
(56)【参考文献】
【文献】
特開2006−142015(JP,A)
【文献】
欧州特許出願公開第1243210(EP,A1)
【文献】
特表2003−508102(JP,A)
【文献】
特開平04−236921(JP,A)
【文献】
特表2004−500939(JP,A)
【文献】
欧州特許第1183975(EP,B1)
【文献】
米国特許第6079315(US,A)
【文献】
特表2009−537267(JP,A)
【文献】
特表2005−538787(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A47J 31/06
A47J 31/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1壁(2)および第2壁(3)を有し、抽出すべき物質(5)を収容するカプセル(1)内に熱水を通過させることによって飲料を抽出する飲料抽出方法であって、
前記カプセル(1)の前記第1壁(2)に貫通する第1開口を形成するステップと、
前記カプセル(1)の第2壁(3)に貫通する第2開口(7)を形成するステップと、
前記第1開口から前記カプセル(1)内に熱水を注ぐ注入ステップと、
前記第2開口(7)から流出させる飲料を生成するステップと
よりなる操作ステップを有する、該飲料抽出方法において、
前記第2開口(7)を形成するステップは、
前記カプセル(1)の前記第2壁(3)に貫通して線状に延在する少なくとも1つの切れ目(10)を、ほとんど材料を除去することなく形成し、前記切れ目(10)は前記第2壁(3)の2つの隣接部分(11)によって区切られるものとした切り目形成ステップと、
前記第2壁(3)の前記切れ目(10)を区切る前記隣接部分(11)が、再度互いに引き寄せ合うステップと、
再度の互いに引き寄せ合いの後、前記熱水の注入によって前記カプセル(1)内の内部圧力を増加させるステップと、
よりなる操作ステップを有し、この内部圧力増加により、以下のことを順次に行わせる、すなわち、
まず、飲料をほとんど分配することなく、カプセル内に含まれる空気を少なくとも部分的に排出する、次いで
少なくとも前記隣接部分(11)で前記第2壁(3)が外方に変形するによって、前記切れ目(10)を区切る前記隣接部分(11)が互いに離れる方向に移動して、飲料を流出させる
ことを行わせる
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1記載の方法において、前記隣接部分(11)が再度互いに引き寄せ合うステップは、前記注入ステップ前に行うことを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1記載の方法において、前記隣接部分(11)が互いに再度引き寄せ合うステップは、前記注入ステップによって生ずる再度の引き寄せ合いを含むことを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法において、前記隣接部分が再度互いに引き寄せ合うステップは、この引き寄せ合うステップに続いて、前記切れ目(10)が、空気を通過させるような寸法および/または形状を有するように行うことを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項4記載の方法で、隣接部分が再度互いに引き寄せ合うステップは、この引き寄せ合うステップに続いて、前記切れ目(10)が、液体の通過をほとんど阻止する寸法および/または形状を有するように行うことを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項4記載の方法で、前記隣接部分が再度互いに引き寄せ合うステップが、この引き寄せ合うステップに続いて、前記切れ目(10)が前記抽出すべき物質(5)の通過をほとんど阻止する寸法および/または形状を有するように行い、前記抽出すべき物質(5)は前記カプセル(1)内に注入した熱水によって前記切れ目(10)に運ばれ、前記切れ目に堆積した物質(5)の粒子と共に作用する前記切れ目(10)によって液体通過が阻止されるものとしたことを特徴とする方法。
【請求項7】
請求項6記載の方法において、前記カプセル(1)内に注入した熱水によって前記切れ目(10)に運ばれた前記抽出すべき物質(5)の粒子を利用して前記切れ目(10)をブロックするブロックステップを有することを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7記載の方法において、前記ブロックステップは、前記第2壁(3)の変形が飲料を分配させる前に、注入ステップ開始時に生ずるものとしたことを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項8記載の方法において、前記第2壁(3)の変形ステップ中に粒子排出ステップも生じることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法において、注入ステップを第1サブステップおよび第2サブステップに分割し、第1サブステップでは、前記第2壁(3)を変形することなく、かつ飲料を分配することなく、前記カプセル(1)内の内部圧力を増加し、第2サブステップでは圧力がさらに増加し、前記第2壁(3)を変形させ、その結果、飲料を分配することを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法において、前記第2壁(3)の変形ステップは、壁の弾性変形または永久変形を伴うものとしたことを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法において、少なくとも1個の前記切れ目(10)を形成するステップは、前記切れ目(10)が直線的に延在するように形成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか一項に記載の方法において、少なくとも1個の前記切れ目(10)を形成するステップは、前記切れ目(10)が湾曲して延在するように形成することを含むことを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法において、カット手段(35)を使用して前記切れ目(10)を形成することを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項3〜14のいずれか一項に記載の方法において、孔を区切る壁の隣接部分が再度互いに引き寄せあうステップは、注入ステップ後、前記切れ目(10)から前記カット手段(35)の退出も含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1〜15のいずれか一項に記載の方法において、前記切れ目(10)を形成するステップは、前記カプセル(1)内の含まれるものになんら影響を与えることなく行うことを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項1〜16のいずれか一項に記載の方法において、前記切れ目(10)は、2〜6mmの長さで形成することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法において、前記切れ目(10)を形成するステップ中、複数個の前記切れ目を形成し、各切れ目をそれぞれ2つの前記隣接部分(11)によって区切られるものとし、また各切れ目(10)に関して、を区切る前記隣接部分(11)が再度互いに引き寄せ合うステップ、そして互いに離れるステップを含むことを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項18記載の方法において、前記切れ目を前記第2壁(3)の異なる区域にそれぞれ形成することを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項18記載の方法において、前記切れ目の少なくとも若干が互いに交差することを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれか一項に記載の方法において、前記第2壁(3)の変形ステップは、前記切れ目(10)における前記第2壁(3)の一部のみが変形するものとしたことを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項1〜21のいずれか一項に記載の方法において、前記第2壁(3)の変形ステップは、前記第2壁(3)全体が変形することを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項1〜22のいずれか一項に記載の方法において、カプセル製造中に前記切れ目(10)を形成するステップを行うことを特徴とする方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、密封カプセル内に加圧した熱水(熱湯)を通過させることによって飲料を抽出(調製)する方法、ならびにこの方法を実施することができる装置およびカプセルに関する。
【0002】
本発明は、とくにコーヒー抽出を意図する。したがって、説明の便宜上、以下の記載は、もっぱらこの飲料にのみ言及するものとする。しかし、本発明は、以下に説明する方法により、抽出または溶解すべき物質(通常は粒子または粉末)を含むカプセルに熱水(熱湯)を注ぐことによって得られる、あらゆる飲料を調製することを意図するものと、理解されたい。
【背景技術】
【0003】
コーヒー抽出用の使い捨てカプセルの使用は、長年知られてきている。 それらは通常、密封カプセルであり、このカプセルはフィルタを有し、このフィルタを通して、熱水を、必要であれば加圧して注ぎ、コーヒーをカプセル内に含まれる粉末または粒子から抽出する。飲料の流出は、カプセルの第2壁に形成した開口によって保証される。
【0004】
生成された飲料の品質は、水をカプセルに通過させる方法、通過時間に極めて大きく依存するため、このような飲料を抽出するための多くのプロセスおよび装置が開発されてきた。例えば、粉末化したコーヒーの混合物を含むカプセルを使用して、そこに低圧力で熱水をゆっくり浸透させることによって、簡単な浸出液を得る、または、加圧した熱水が浸透する場合には、いわゆる“エスプレッソ”(つまり、かなり異なる味覚を有する飲料)を得ることができる。エスプレッソの質は、さらに、カプセルから飲料の分配を開始する前に強制予浸出(プレインフュージョン)を行い、分配期間の全体にわたってカプセル内に所定圧力を維持することによって、さらに改良することができる。
【0005】
通常、予浸出および分配ステップ中の時間、温度および圧力、粒間流速、ひいては発生するマイクロ乱流は、良好な味覚結果を得るのに重要である。必ずしも、コーヒー内に含まれる全ての溶解物質が最適結果に有用とは限らないため、外観、香り、味が、プロセスにおける良好な結果を裏付けるように、抽出サイクルの最適化を図る試みをしなければならない。今日に至るまで、これらの経験的な手段が、コーヒーの品質を定めるのに真に信頼できる唯一の手段であると考えられてきた。
【0006】
そのため、良質なエスプレッソを作るための主な技術は、概して広く知られている。しかし、実際、高レベルの品質に達し、そのレベルを時間が経過しても一定に維持することは不確実であり、そして容易ではない。なぜなら、操作の成功に寄与する要因が多く存在し、定量化、ときには明確に特定することさえも困難な要因が多く存在するからである。それは、なぜなら、操作環境におけるわずかな変化でさえも、相当異なる作用を及ぼすからである。さらには、製造方法を選択する際、産業上低コストでしかも良好な結果を保証する簡単で信頼性のある方法が好まれる。最適結果を達成するのに、複雑過ぎ、したがってコストの高い方法を使用することは、商業的には実現不可能である。
【0007】
上述のとおり、エスプレッソコーヒーの品質という観点において、結果を改善させることができると認識されている技術の一つとして、予浸出(プレインフュージョン)がある。これは、カプセル内に熱水を注ぎ、内部圧力が所定値に至るまで(また必要であれば、所定時間にわたるまで維持する)、熱水が流出するのを防ぐことから成る。この操作によれば、熱水がコーヒー粒子/粉末の微細孔内に深く浸透し、これは熱水自体の圧力が微細孔内に存在するガス状物質を圧縮し、したがってガス状物質の量を減少するからである。この深い浸透は、一方で、熱水が、粒子外被によってのみ生ずる表面よりも、相当広い面積にわたりしみわたるのを可能とし、他方で、粒子内に存在する香り(アロマ)および精油(エッセンシャルオイル)の抽出を可能とし、これら香り(アロマ)および精油(エッセンシャルオイル)はコーヒーが持つ香り(アロマ)および精油(エッセンシャルオイル)の大部分を代表するものである。したがって、このようにして、顕著に改良されたコーヒーの味(フレーバー)および香り(アロマ)を抽出することができる。
【0008】
カプセルを使用して飲料を抽出(調製)することは、長年大きな関心事であったという事実は、この主題に関連する多数の特許が示している。例えば、下記のような特許がある。
スイス国特許第406561号明細書、スイス国特許第605293号明細書、独国特許3722554号明細書、独国実用新案7430109号明細書、欧州特許第199953号明細書、欧州特許第211511号明細書、欧州特許第242556号明細書、欧州特許第382001号明細書、欧州特許第468078号明細書、欧州特許第468079号明細書、欧州特許第468080号明細書、欧州特許第469162号明細書、欧州特許第471094号明細書、欧州特許第507905号明細書、仏国特許第757358号明細書、仏国特許第1198879号明細書、仏国特許第1537031号明細書、仏国特許第2062337号明細書、仏国特許第2171306号明細書、仏国特許第2556323号明細書、英国特許第938617号明細書、英国特許第2023086号明細書、米国特許第2715868号明細書、米国特許第2899886号明細書、米国特許第3094917号明細書、米国特許第3292527号明細書、米国特許第3347151号明細書、米国特許第3403617号明細書、米国特許第3470812号明細書、米国特許第3589272号明細書、米国特許第4077551号明細書、米国特許第4136202号明細書、米国特許第4921712号明細書、国際公開第WO86/02537号パンフレット
【0009】
さらに、カプセルを開口させる様々な方法を記載する特許の例として、以下のものがある。
国際公開第WO/2005090196号パンフレット、欧州特許第1557373号明細書、欧州特許第1243210号明細書、欧州特許第1674007号明細書、欧州特許第0726053号明細書、欧州特許第1599117号明細書、国際公開第WO9507648号パンフレット、米国特許第5243164号明細書、欧州特許第1555218号明細書、欧州特許第1247756号明細書
【0010】
これら特許文献は、実質的に、使い捨て密封カプセルを使用したコーヒーまたは飲料抽出用の、3つの主要方法を記載している。 第1の方法は、カプセルの第2壁を水注入前に穿刺し、したがって、予浸出(プレインフュージョン)を利用しない方法である。第2の方法は、カプセル底部の開口可能部分の内開きを利用する方法である(特許文献1[欧州特許第1557373号]および特許文献2[欧州特許第1243210号]参照)。そして第3の方法は、予浸出(プレインフュージョン)を利用する代わりに、水注入による内部圧力増大の直接的な結果として、カプセルの第2壁の穿刺を生ずる方法である。
【0011】
第2の方法に関連して、特許文献1および特許文献2は、底壁の開口可能部分の内方への変形によってカプセルが開く、2種類の極めて類似した解決方法を記載している。特許文献1(欧州特許1557373号)の場合、開口可能部分は、内部圧力が所定値に達した後、外部パンチを使用して、底壁における脆弱化ラインに沿って押し抜くことにより、得るものである。これとは対照的に、特許文献2(欧州特許1243210号)の場合、カプセルには予め開口可能部分を形成しておくが、この開口可能部分は、カプセル内に熱水を注入する開始時にバルブを形成するような形状にする。とくに、この開口可能部分は、外方に向かって開放しないよう、底部の残り部分に載置する。この結果、実際には、底部は、外部接触素子によって開口させられ、この外部接触素子は、圧力が増しカプセルが十分に膨張したときに開口部と相互作用する。
【0012】
対照的に、上述の第3の方法は2つの形式がある。
【0013】
第1の形式は、例えば特許文献3(米国特許4136202号)に記載されており、圧力の増加によって、好適には、その脆弱化した区域で開口が裂けるカートリッジを有する。
【0014】
第2の形式では、水の流入により発生した内部圧力の結果、カプセルの底部が膨張することによって底部に孔があいた後にコーヒーの分配が始まる。つまり、底部と一体であり、カプセルのハウジング本体の底部から突出する固定素子に圧着して破れることを意味する(特許文献4[欧州特許468078号]および特許文献5[欧州特許507905号]参照)。このようにして得られた裂け目は、空気および液体が圧力下において流出することを可能とするが、この圧力はカプセルの底部における穿刺耐性および突出する素子の形状に基づく。
【0015】
しかし、これら先行技術の解決方法は、いくつもの欠点がある。カプセルの底部が押し込まれるとき、コーヒー粒子の微細孔内における空気またはガスの上述した圧縮を生ずる条件が得られない。圧力増加は、微細孔内ではなく、カプセル全体内における液体および空気/ガスが同時に存在することで発生し、つまり、実際には、微細孔の外部の空気のみが圧縮されることを意味する。結果として、例えば、これら微細孔の若干に含まれる空気の一部を動的に取り除くことができるミクロ乱流のような周縁現象が起こらない限り、熱水は微細孔に浸透しない。
【0016】
しかし、飲料分配ステップ中、孔からの飲料流出に対する動的耐性によって、カプセル内の圧力が新たに所定量増加し、これによってコーヒー粒子の微細孔の一部に熱水が浸透できるようになることに留意されたい。他方で、この新たな圧力増加に続いて、浸透した液体を流出させるのに必要な圧力減少がないと、溶解した物質の一部しか粒子から流出しない。
【0017】
したがって、従来技術では、ときには飲料の良質な結果となる場合があるものの、実質的に不十分なプレインフュージョン処理しか行えず、したがって、さらなる大きな改善を行う余地がある。それらはまた、構造上の問題、とくにカプセルの底壁を必要な時間および方法で引き裂くことを保証するのに必要な狭い部品製造公差の問題がなく、時間が経過しても必要な反復性および一定性を有していなければならない。
【0018】
満足のいく結果を得るためには、カプセル穿刺耐性の最大限度に極めて近づける必要があるが、それは、関連する様々なパラメータおよび製造公差の組み合わせ(ポンプで達成できる最大圧力、カプセル材料および関連する厚みの変形可能性、混合物の性質、周囲温度、穿刺素子の穿刺能力、穿刺素子における突出度および一般的な寸法公差)を最適化するのを困難にする。
【0019】
これら全てから、早期穿刺、またはまったく穿刺を生じないリスクがあることが推測できる。さらに、孔あけは、ときに堅すぎる場合があり、それは孔を開いたままにして流出に十分に対抗することができない状態にしたり、または孔を開きにくくしたり、必要以上に分配時間を長くしてしまう。
【0020】
既述のとおり、他の既知の方法は、カプセルに熱水注入開始前または注入と同時に、カプセルの底部を機械的に穿刺する(場合によっては、一部を取り外す、また別の場合には、孔を区切る端縁を塑性変形させる)ものである。簡単な構造にするために、これらの方法はプレインフュージョンを利用せず、代わりに、他の方法、すなわち高い操作圧力値、極めて微細な粒子サイズにするという前提、高い操作温度、液体流速減少、特別なカプセル内部形状誘発される乱流現象で、容認できる結果を模索している。これらすべての方法は、部分的には目的に適うが、その代わりに複雑で極めて信頼性が高いというものではない(容認できないほど製造コストを増大させない限りにおいて)。他の方法としては、電気制御装置を使用し、大気圧下で極めて穏やかなプレインフュージョンを生ずるようにし、さらに後続ステップ中に圧力を上昇させ、ポンプ能力を増加させるものがある。
【0021】
つまり、これら従来技術における方法の全ては、不安定で、完璧に満足がいくというわけではなく、しばしば相当高いコストを伴う。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0022】
【特許文献1】欧州特許第1557373号明細書
【特許文献2】欧州特許第1243210号明細書
【特許文献3】米国特許4136202号明細書
【特許文献4】欧州特許468078号明細書
【特許文献5】欧州特許507905号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0023】
このような状況下で、本発明の基礎をなす技術的目的は、上述の欠点を解消する飲料抽出方法、ならびにこの方法を実施する装置およびカプセルを得るにある。
とくに、本発明の技術的目的は、最良の味覚性を有する飲料の抽出を可能とする飲料抽出方法ならびに関連するカプセルおよび装置を得ることにある。
【0024】
本発明の他の目的は、時間が経過しても再現性があり、一定の結果を保証する飲料抽出方法ならびに関連するカプセルおよび装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0025】
上述の技術目的および示される趣旨は、実質的に、特許請求の範囲に記載する、飲料抽出方法ならびに関連する装置およびカプセルによって達成される。
【0026】
さらに、本発明の特徴および利点は、添付図面に示される、好適ではあるが非限定的な、飲料抽出方法ならびに関連する装置およびカプセルに係るいくつかの実施形態につき説明する、以下の記載からより明瞭となるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】本発明による装置の概略的部分側面図である。
【
図3】本発明によるカプセルおよびカプセル切断手段の概略図である。
【
図4】
図3に示すカプセルおよびカプセル切断手段のIV−IV線上の断面図である。
【
図5】本発明による方法における幾つかのステップの一つを示す概略図である。
【
図6】本発明による方法における幾つかのステップの一つを示す概略図である。
【
図7】本発明による方法における幾つかのステップの一つを示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明によれば、飲料抽出方法は、カプセル1(例えば
図3および
図4に示すタイプ)を使用し、このカプセル1は、互いに側壁4により連結した第1壁2および第2壁3を有し、また抽出すべき物質5、例えばコーヒーの粉または粒子を含有する。有利には、カプセル1は、
図4に示すタイプのフィルタ又ディフューサ6も有するものとすることができる。さらに、添付図面に示す実施形態において、第1壁2をカプセルの上側壁とし、一方第2壁3をカプセルの下側壁とする。
【0029】
既知のように、飲料抽出方法は、カプセル1の第1壁2に貫通する第1開口を形成するステップと、カプセル1の第2壁3に貫通する第2開口7を形成するステップと、第1開口からカプセル1内に熱水を注ぐステップと、第2開口7から飲料を流出させるステップと、を有する。
【0030】
第1開口は、任意の方法で形成することができ、例えば添付図面および以下の説明で記載のように、装置9の可動部と一体となっているスパイク8を使用して、形成することができる。
【0031】
同様に、熱水はカプセル1内に任意の方法によって注入することができ、例えば、第1壁2を穿刺するスパイク8と直接的または間接的に関連するチャネルを使用して注入できる。
【0032】
さらに、本発明によれば、第2開口7を形成するステップは、第2開口7から飲料が流出できるようにしなければならないものであり、複数のステップを有する。まず、線状に延在する少なくとも1個の切れ目10をカプセル1の第2壁3に貫通するよう形成する操作ステップがある。この切れ目10は、好適には、注入ステップ前に設け、有利には、カプセル1の壁からほとんど材料を取り除くことなく設け、これにより、第2壁3の2つの隣接部分11によって区切るようにする。切れ目10は、好適には、ブレード12を使用して得る。さらに、直線および湾曲の双方の部分を有して延在するものとすることができるが、裂片葉的な部分を区切ることがないように形成するのが好適である。つまり、切れ目10の互いに隣接しない2点間
の距離が、常に、最初の2
点の間に存在する
点のすべての間の相互距離よりも大きくなるようにする。
【0033】
さらに、切れ目10を形成するステップは、好適には、カプセル1内に収納するもの(とくに、コーヒー粉からカプセルの底部を分離することができるフィルタ6)になんら影響を与えることなく行う。最後に、最も一般的な実施形態において、切れ目10は、通常長さが2〜6mmの間となるように設ける。
【0034】
条件に基づいて、複数個の切れ目10を形成することができ、各切れ目がカプセル1の底部の隣接する2個の部分11によって区切られ、切れ目10は、それぞれ第2壁3の異なる区域に設ける、または交差させることができる。
【0035】
切れ目10を形成するステップは、飲料抽出ステップと異なる時点で実施できる点に留意されたい。切れ目は、カプセル1を製造する時点で、予め形成することができる。このような場合、しかし、切れ目10は、好適にはカバーしておき、カプセルに含有される物質の味覚性を保存する。例えば、各カプセルは個別に密封包装でパックする、または、切れ目を、粘着性保護フィルムでカバーすることができ、この粘着性保護フィルムはカプセル使用前に取り外さなければならい。
【0036】
切れ目10を形成した後は、下記のように、直接的にまたは間接的に、切れ目10を区切る第2壁3の隣接部分11を再度互いに引き寄せ合うステップが続き、これにより、以下に説明するように、飲料が直接的または間接的に切れ目から流出することがほとんどないよう阻止する。これには、まず、必要であれば、切れ目10から使用したカット手段35(ブレード12等)の退去を伴う。この時点においてのみ、切れ目10を区切る隣接部分11を、自由に、再度互いに引き寄せ合うことができ、必要であれば、スタート位置に戻す。とくに、切れ目10を形成する操作が(弾性変形によって)隣接部分11を元の位置から移動させたとき(一般的には、カプセル1内部に向かう移動)、後続の注入ステップ前(この場合、例えば、隣接部分11の弾性による)、またはカプセル1内で発生した圧力の増加による注入ステップ後、いずれにおいても隣接部分は実際に再度互いに引き寄せ合うことができる。さらに、切れ目10からのカット手段35の退去は、注入ステップにおけるカプセル1内の圧力増加によって生ずる。
【0037】
いずれにせよ、本発明によれば、再度引き寄せ合うステップは、このステップ後に、切れ目10から液体が流れるのをほぼ防ぐが、空気の通過を可能にする横方向サイズおよび/または形状、となるよう行われる。以下に説明するように、このようにして、切れ目10はカプセル1から空気を抜くことを可能にし、また同時に、飲料の最適な予浸出(プレインフュージョン)を可能にする。もしもこのことが不可能であったならば、再度引き寄せ合うステップの後、切れ目10は、そこから抽出すべき物質5(コーヒー)の粒子が通過するのをほぼ阻止する横方向寸法および/または形状を依然として有するようにするのが好適であり、抽出すべき物質の粒子は、通常物質を通過する熱水の最初の液滴によって除去される。したがって、この場合、その他の操作ステップは、カプセル1内に注入された熱水で切れ目10付近まで運ばれた上述の粒子によって、切れ目10をブロックするステップとみなすことができる。容易に推測できるように、このブロックステップ中、第2開口7が完全にブロックされるまでは、若干の液滴が第2開口7から流出する。しかし、このような場合、飲料が分配されていると見なすことはできない。
【0038】
したがって、切れ目10が、上述した2つの条件のうち一方を満たすような横方向寸法を有するよう形成するとき、カプセル1内への熱水の注入に続いて、カプセルに含まれる空気の少なくとも一部が排出され、この後幾つかの液滴が分配される。しかしこの後、飲料分配がほとんど阻止される期間が続く。
【0039】
換言すれば、熱水がカプセル1に流入する時点で、第2壁3を貫通して形成した切れ目10はバルブとして機能し、実際には、カプセル1内に含まれる空気またはガスに対しては開くが、まさに最初に到達する固形粒子が密集した液滴に対しては閉じる。
【0040】
さらに、切れ目10の横方向寸法が小さすぎて、空気を通過させることができない場合もある。このような場合、切れ目10を区切る端縁はほぼ同一平面上にあり、互いに突き合わさるが、互いに一体となることはない。しかし、カプセル1内の最小限過剰圧力(例えば約0.1バール)は、切れ目10を互いに区切る二つの端縁を互い離れる方向に移動させ、ガスが通過するのに十分な空隙を生ずるようにわずかに湾曲するのに十分である。しかし、本発明においては、この最小限の湾曲は、第2壁3の変形とは見なさない。なぜなら、「変形」の定義は、飲料を通過させることができるものに充てているからである。
【0041】
上述のように、本発明による方法のこの時点においては、飲料は未だカプセル1から流出できない。なぜなら、依然として第2開口7が完全に形成されたと見なせないからである。
【0042】
結果的に、本発明方法の後続のステップにおいて、上述した空気の追い出し後、カプセル1内に熱水を注ぐステップを継続することによってカプセル1内の内部圧力が一層増大し、第2壁3の大きな変形(弾性的なまたは永久的な変形)を、およびこの結果として、切れ目10を区切る隣接部分11が互いに離れる移動を生じ、これにより、飲料が通過できるようになる。さらに、条件によっては、第2壁3の変形は、第2壁の一部にのみ(添付図面に示す装置の場合のように)、または第2壁3の全体に作用するものとすることができる。
【0043】
したがって、有利には、注入ステップは、第2壁3を変形することなく、しかし空気を追い出すようカプセル1内の内部圧力が増加する第1サブステップと、内部圧力一層増加して第2壁3を変形(有利には、弾性変形)させる第2サブステップとに分割する。実際上、第1サブステップから第2サブステップへの移行は、カプセル1の第2壁3における構造上の耐性に打ち勝つ、および/または切れ目10をブロックする粒子の押し出しを可能とする圧力閾値を越えることに対応する。
【0044】
第2壁3の大きな変形ステップに必要な力は、切れ目10が極めて限定された横方向寸法を有する場合、空気が流出できるように、端縁が互いに離れる方向に移動するに必要な力以上に相当大きくなければならないことは、明らかであろう。この状況は、切れ目10に堆積した微細粒子が切れ目10をブロックするよう作用し、このことが切れ目10をほぼ密封状態に維持することに役立ち、液体の通過を阻止するという事実により、強調される。おおよそにまた概略的に、微細粒子が球状で、平均直径が訳0.1〜0.2mmであると想像でき、したがって、微細粒子が切れ目10を通り抜け、そして結果的に切れ目10をブロックせず、さらに液体を流出させることができるようにするためには、要求される変形を、空気または液体のみを通過させるのに十分な変形よりも大きくすることに留意されたい。このことから、切れ目10が実際に開口し、飲料通過を可能にする前に、圧力を大幅に上昇させなければならないことが推測できる。おおよそ、過剰圧力は、単に空気通過を可能にする圧力の少なくとも20〜30倍でなければならない。しかし、本明細書で示した値の全ては単に例示的なものであり、本発明の技術的範囲を限定するものではないことに留意されたい。なぜなら実際上それら値は、切れ目10の形状および大きさ、ならびにカプセル1の第2壁3を形成するのに使用した材料の厚さおよびタイプに密接に関連するからである。
【0045】
図5〜7は、概略的に切れ目10を形成するステップと、切れ目を区切る隣接部分が再度の互いに引き寄せ合うステップと、カプセル1の第2壁3のその後における変形ステップとを示す。
【0046】
さらに、2個以上の切れ目を第2壁3に貫通するよう形成する場合、上述したすべてのステップ、とくに、切れ目を区切る隣接部分11を再度引き寄せ合うステップ、および隣接部分11を互いに離れる方向に移動するステップは、好適には各切れ目10に対して行うようにすることに留意されたい。
【0047】
飲料の生成に関しては、切れ目10が未だ閉じたままの状態で圧力が増加し空気を放出するステップにおいて、粒子の微細空洞内に液体が深く広範囲に浸透し、それは、望まれる味覚物質を豊富に抽出することを可能とし、また、この浸透は、粒間スペースにおける空気および/またはガスが徐々に放出されるという事実によっても生じ得ることに、留意されたい。したがって、放出の終了時に、残存する空気/ガスは、個々の粒子内の微細孔に残されたもののみとなり、そしてそのため、圧縮が容易となり、またその体積を1/5〜1/10までも減量することが可能となる。しかし、上述の空気の実際的な圧縮は、カプセル1の内部圧力に基づき、したがって、第2壁3の変形および/またはブロックしている粒子を排出しようとする瞬間に、最大圧縮となり、切れ目10から飲料を流出させることができる(最大圧力時に)。
【0048】
飲料分配の開始直後に、カプセル1内の圧力が急激に減少し、このことにより微細孔内の空気/ガスが再度膨張し、先に浸透しており、その間に粒子内部から香り(アロマ)を抽出していた熱水を押し出すことができる。この現象の急激性は抽出プロセスに対して極めて有用な微細乱流現象をも引き起こす。
【0049】
上述の方法は、目的に適う任意の装置9で実施することができる。
【0050】
しかし、上述した方法を実施するための装置9の好適な実施形態を、
図1〜4につき以下に説明する。
【0051】
一般的に、装置9は、少なくとも1個のハウジング13を有し、このハウジング内には抽出すべき物質5を収容するカプセル1を挿入することができ、また、カプセル1の第1壁2を貫通する第1開口を形成するための手段14、およびカプセル1の第2壁3に貫通する第2開口7を形成するための手段15を設ける。有利には、ハウジング13は、挿入しなければならないカプセル1に適合する形状にする。
【0052】
図示の実施形態において、装置9は、さらに、主本体16および補助本体17を有し、これら本体は互いに連係してハウジング13を形成する。ハウジング13の体積は、ほぼ完全に主本体16にあるとともに、補助本体17は、主本体16に対して可動であり、ハウジング13にアクセス可能な開放位置と、ハウジング13を密封して上側閉鎖壁を形成する閉鎖位置との間で移動可能にする。
【0053】
とくに,ハウジング13は、ほぼ主本体16の上面に形成するとともに、補助本体17は上面の上方に配置し、水平回転軸線18に従って、主本体16で旋回する。補助本体17は、したがって、閉鎖位置(添付図面で見て水平方向)と開放位置(閉鎖位置に対して上方に回転する)との間で回転することができる。
図1および
図2において、補助本体17は、開放位置と閉鎖位置との中間位置にある状態を示す。
【0054】
添付図面においてリング状シールとして示すシール手段19は、主本体16と補助本体17との間に挿入し、カプセル1と補助本体17との間に封止を生ずるよう設計する。
【0055】
さらに、少なくとも1個の排出パイプ(図示せず)を設け、既知のようにしてハウジング13から飲料が流出できるようにする。
【0056】
主本体16および補助本体17の往復移動は、補助本体17を主本体16に対して移動させる
第2移動手段20によって保証する。
【0057】
図1に示す実施形態おいて、
第2移動手段20は、
少なくとも1個の第1ロッカーアームであって、その中間部分が主本体16において回動する、該第1ロッカーアーム21と、
第1ロッカーアーム21の第1端部23に係合する少なくとも1個の作動素子22と、
少なくとも1個のバーであって、バーの第1端部25が第1ロッカーアーム21の第2端部26で回動し、またバーの第2端部27が補助本体17回動する、該バー24と
を有する。
【0058】
しかしながら有利には、装置9は、2個の第1ロッカーアーム21および2個のバー24を主本体16の2つの側面上に鏡対称的に取り付けて設けるとともに、作動素子22を双方の第1ロッカーアーム21に係合させる。作動素子22は、例えば、C字状の素子とし、C字の2個アームを2個の第1アーム21に連結するとともに、中央部分が使用者用ハンドグリップ(図示せず)を形成する構成とすることができる。
【0059】
第1ロッカーアーム21の回転は、作動素子22を利用して主本体16において回動するポイントの周りで、バー24によって生じて、開放位置と閉鎖位置との間で補助本体17を回転させる。
【0060】
図1に示す実施形態において、第1ロッカーアーム21は湾曲形状(ほぼ直角をなす)を有し、また作動素子22は第1ロッカーアームに連結し、動作方向Xが、第1ロッカーアーム21が主本体16で回動するポイント28と、バー24が第1ロッカーアーム21で回動するポイント29とを結ぶラインに対してほぼ平行となるように連結する(
図1参照)。
【0061】
各第1ロッカーアームは、最大牽引位置と、ハウジング13が開く位置(添付図面には示さない位置)との間で移動することができ、この最大牽引位置では、バー24が第1ロッカーアーム21で回動するポイント29は、第1ロッカーアーム21が主本体16で回動するポイント28の下方に垂直方向に整列する。
【0062】
第1ロッカーアーム21が開放位置にあるとき、バー24が第1ロッカーアーム21で回動するポイント29は、最大牽引位置と関連する所定の回転角にわたり、
図1に示すように時計回りで第2回転方向に回転する。第1ロッカーアーム21の最大牽引位置において、補助本体17は主本体16に最も接近する位置をとり、したがって、シール手段19は最大圧縮状態となる。
【0063】
しかし、ハウジング13が不慮に開くことを防ぐため、装置9は、さらに、補助本体17が閉鎖位置にあるときバー24をロックするロック手段30を有し、このロック手段は、少なくとも1個の歯31およびこの歯に適合する形状の少なくとも1個の空洞32を有し、一方をバー24に付随させ、他方は主本体16に付随させる(
図1の実施例では2個設ける)。
【0064】
図8は、
第2移動手段20の他の実施形態を示す。第1ロッカーアーム21の第1端部23を形成する部分は、主本体16で回動するポイント28に中心を有する第1リングギア50に代替する。第1リングギア50は、ピン52によって、主本体16で回動する第2リングギア51に噛合する。第2リングギア51は、作動素子22によってピン52の周りに回転駆動され、この作動素子22は、第2リングギア51に直接的に、または貫通バー(図示せず)に対して、のいずれかで堅固に連結する。この貫通バーは、主本体16の2つの側面上に位置する2個の第1リングギア51を結合する。(第1ロッカーアーム21に関して上述したのと同様である)。
【0065】
したがって、この場合、作動素子22は第1ロッカーアーム21に堅固に拘束されているのではなく、単に噛合するだけである。
【0066】
ハウジング13に付随して、カプセル1内に熱水を注ぐ注入手段を設け、この注入手段は、実施形態に示すように、窪み34で終端するチャネル33を有し、この窪み34は第1開口形成手段14の周りに延在し、第1開口形成手段14は補助本体17に一体にした固定スパイク8により構成し、このスパイク8はハウジング13に突入し、ハウジング13が閉じるときにカプセル1を貫通するように位置決めする。
【0067】
いずれにせよ、熱水を注入する手段及び第1開口を形成する手段任意の形態とすることができる。(たとえば、チャネル33は、中空に形成したスパイク8内まで延在することができる。)。
【0068】
上述した装置9の要部は、第2開口7形成手段15がカット手段35を有し、このカット手段35は、第2壁3を貫通する少なくとも1個の線状の切れ目10を形成するよう設計すること、また、カット手段35およびハウジング13を往復移動させる
第1移動手段36を設ける点にある。カット手段35およびハウジング13は、切断位置と初期位置との間で往復移動し、切断位置ではカット手段35がハウジング13内に突入し、ハウジング内に挿入したカプセル1の第2壁3に切れ目を形成し、初期位置ではカット手段35がハウジング13内に挿入したカプセル1に干渉できない。
図2に示すように、図示の実施例では、主本体16および、したがってハウジング13は静止した状態のままにするとともに、
第1移動手段36はカット手段35にのみ作用する。
【0069】
図示の実施形態において、カット手段35は、ロッド37の上方端部に一体にした少なくとも1個のブレード21を有し、ロッド37はハウジング13の下方で低位置と高位置との間で、垂直方向に移動することができる。本発明によれば、ブレード12の厚さは、好適には、ブレードが形成する切れ目10がほぼ線状の切れ目(真っ直ぐなまたは湾曲した切れ目)となるように制限する。ロッド37は、主本体16に貫通する液密シールに対して摺動可能に取り付ける。
【0070】
第1移動手段36はロッド37を移動し、この場合、ロッドが上方位置にあるとき、ブレード12がハウジング13内に突入し、そして下方位置にあるときは、ブレード12がハウジング13の底部に設けた窪み38内に挿入されるようにロッド37を移動する。窪み38は、第2壁3の変形する区域を区切る機能も有することができる。ハウジング13の底部が第2壁3に適合する形状である場合、第2壁3の窪み38における部分のみが上述の変形ステップの操作を受ける。
【0071】
図示の実施形態において、
第1移動手段36は、少なくとも1個の第2ロッカーアーム39を有し、第2ロッカーアーム39は、主本体16で回動する中間部分を有し、また第1端部40でカット手段35(ロッド37に)に連結し、さらに第2端部41で作動素子42に連結する。このようにして、第2ロッカーアーム39は、カット手段35が初期位置にある第1位置(
図2参照)と、カット手段35が切断位置にある第2位置(図示せず)との間で移動することができる。
【0072】
有利には、弾性復帰素子(ばね)43を第2ロッカーアーム39に連結し、作動素子42からのストレスがない場合に第1位置に保持するようにする。
図2において、弾性素子43を、第2ロッカーアーム39と作動素子42との間に連結する。作動素子42による上方移動は主本体16の垂直方向突出部44によって阻止され、この垂直方向突出部44は、以下に記載のとおり、他の機能も有する。
【0073】
さらに、好適な実施形態において、カット手段35を移動する
第1移動手段36は、補助本体17の
第2移動手段20によって直接操作される。この目的のため、作動素子42は第1係合素子45を有し、この第1係合素子45は
第2移動手段20、およびとくに第1ロッカーアーム21に一体の第2係合素子46に係合することができ、主本体16が開放位置から閉鎖位置に移動するとき、作動素子42を移動させ、これにより、カット手段35を切断位置に向かって移動させる。
【0074】
とくに、補助本体17が閉鎖位置に近づくとき、第2係合素子46は第1係合素子45に引っ掛かり、第1ロッカーアーム21のさらなる回転(
図2で見て反時計回りの回転)により、作動素子42の回転−並進(
図2における右方向への移動と共に)、および、この結果、第2ロッカーアーム39の回転(
図2で見て反時計回りの回転)を引き起こし、これにより切断手段35が切断位置に向かって持ち上げられる。
【0075】
補助本体17が閉鎖位置に近づくため、カプセル1は、実際上、ハウジング13内にロックされ、そしてその第2壁3は容易にカット手段35によってカットされる。
【0076】
切れ目10を形成した後、第1ロッカーアーム21のさらなる回転は、第1係合素子45に作用して、主本体16に一体の堅固な突出部44に接触させ、この突出部44は離脱素子を構成する。部分的には、第1係合素子45の傾斜形状により、第1係合素子45が突出部44に接触することで下方に回転し、結果として第1係合素子45が第2係合素子46から釈放される。この時点で、弾性復帰素子43は、第2ロッカーアーム39および作動素子42を、
図2に示す初期位置に復帰させ、カット手段35をハウジング13から引き抜く。最後に、補助本体17が閉鎖位置に到達する前には、作動素子42が第1ロッカーアーム21から離脱しているように、様々な部分の寸法を決めることに留意されたい。
【0077】
最後に、上述のとおり、本発明は、さらに、上述した方法を実施できる飲料抽出用カプセルに関する。
【0078】
既知のように、カプセルは、抽出すべき物質を収容し、およびカプセル内に注入すべき熱水用の入口壁をなすよう設計した、少なくとも1個の第1壁2と、熱水と抽出すべき物質との間の相互作用で生成される飲料用の出口壁をなすよう設計した、第2壁3とを有する。
【0079】
本発明によれば、第2壁3は、線状に延在し、第2壁3からほとんど材料を除去することなく形成した少なくとも1個の切れ目10を有する。切れ目は、互いに引き寄せ合う第2壁の2つの隣接部分11によって区切られ、切れ目を区切る隣接部分11(上述のタイプ)を、必要であれば再度互いに引き寄せ合った後、空気を通過させるが、液体が通過するのを直接的にまたは間接的に阻止する寸法および/または形状を有する。
【0080】
とくに, 切れ目10は、それを区切る隣接部分11を、必要であれば、再度互いに引き寄せ合った後、熱水が運んできたカプセル1が含有物質の粒子が通過するのを防ぐ寸法および/または形状を有する。また、粒子および切れ目10は互いに連動して液体の通過を防ぐように作用する。
【0081】
上述のとおり、切れ目10は2〜6mmの長さを有することができる。
【0082】
さらに、カプセルは複数の切れ目10を有することができる。切れ目のそれぞれが互いに引き寄せ合う2つの隣接部分11によって区切られ、第2壁3の異なる区域に、または互いに交差させることができる。
【0083】
上述のように、形成したカプセルは、カプセルを製造する時点で第2壁に貫通する切れ目10を形成しておく、方法の実施形態にも対応する。
【0085】
まず、本発明による方法は、狭い製造公差であり、または特別に複雑で高価な、機械的、電気機械的、または電子的な部品を必要とせず、信頼性が高く、一定した予浸出(プレインフュージョン)を可能とする。
【0086】
さらに、コーヒー粒子によって目詰まりがおこることがない。目詰まりが生じた場合、カプセル内の圧力は急速に再度増加し、自動的に妨害物を排出する。しかし、実際には、妨害現象は、通常、粒子が詰まった最初の液滴に現れることが分かった点を、強調したい。
【0087】
本発明装置は、1回の操作運動で、切れ目を形成およびハウジングを閉鎖/開放に関連する操作のすべてを制御できる、という大きな利点を有する。
【0088】
さらに、歯と空洞と間の相互作用によりハウジングを閉鎖する方法は、内部圧力に由来する応力吸収のための最大能力を保証する。
本発明は、比較的容易に製造でき、また発明の実施に関連するコストもさほど高くないことに留意されたい。
【0089】
本発明は、発明の概念の範囲から逸脱することなく、改良され、様々な方法に適用することができる。
【0090】
本発明のあらゆる細部は他の技術的に等価の要素に代替し、また、実際上、種々のコンポーネントの使用される材料ならびに形状および寸法も、条件に応じて任意のものにも代替することができる。