特許第5655179号(P5655179)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 国立大学法人東北大学の特許一覧 ▶ 学校法人昭和大学の特許一覧

特許5655179[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩を有効成分とする骨形成促進剤
<>
  • 特許5655179-[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩を有効成分とする骨形成促進剤 図000002
  • 特許5655179-[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩を有効成分とする骨形成促進剤 図000003
  • 特許5655179-[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩を有効成分とする骨形成促進剤 図000004
  • 特許5655179-[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩を有効成分とする骨形成促進剤 図000005
  • 特許5655179-[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩を有効成分とする骨形成促進剤 図000006
  • 特許5655179-[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩を有効成分とする骨形成促進剤 図000007
  • 特許5655179-[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩を有効成分とする骨形成促進剤 図000008
  • 特許5655179-[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩を有効成分とする骨形成促進剤 図000009
  • 特許5655179-[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩を有効成分とする骨形成促進剤 図000010
  • 特許5655179-[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩を有効成分とする骨形成促進剤 図000011
  • 特許5655179-[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩を有効成分とする骨形成促進剤 図000012
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655179
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩を有効成分とする骨形成促進剤
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/663 20060101AFI20141225BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20141225BHJP
   A61K 9/08 20060101ALI20141225BHJP
   A61P 19/08 20060101ALI20141225BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20141225BHJP
   A61P 1/02 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   A61K31/663
   A61K47/02
   A61K9/08
   A61P19/08
   A61P43/00 111
   A61P1/02
【請求項の数】8
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2010-527665(P2010-527665)
(86)(22)【出願日】2009年8月5日
(86)【国際出願番号】JP2009003758
(87)【国際公開番号】WO2010026701
(87)【国際公開日】20100311
【審査請求日】2012年8月2日
(31)【優先権主張番号】特願2008-225484(P2008-225484)
(32)【優先日】2008年9月3日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504157024
【氏名又は名称】国立大学法人東北大学
(73)【特許権者】
【識別番号】592019213
【氏名又は名称】学校法人昭和大学
(74)【代理人】
【識別番号】100100181
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 正博
(72)【発明者】
【氏名】篠田 壽
(72)【発明者】
【氏名】五十嵐 薫
(72)【発明者】
【氏名】村上 忍
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 恵子
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第93/005052(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 31/663
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
[(4−メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩を有効成分とする、抜歯窩、のう胞若しくは腫瘍摘出後の骨欠損部;歯周病により吸収された歯槽骨欠損部;先天性異常による顎裂部;骨折部位及び/又はインプラント周囲骨の修復、再生又は補填に用いるための骨形成促進剤。
【請求項2】
[(4−メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸のナトリウム塩を有効成分とする、請求項1記載の骨形成促進剤。
【請求項3】
[4−(メチルチオ)フェニルチオ]−メタンビスホスホン酸・2ナトリウム塩を有効成分とする、請求項1記載の骨形成促進剤。
【請求項4】
有効成分がリン酸カルシウムから成る徐放剤に吸着されてなる、請求項1〜3のいずれか一項に記載の骨形成促進剤。
【請求項5】
リン酸カルシウムがα−トリカルシウムホスフェート、β−トリカルシウムホスフェート、オクタカルシウムホスフェート及びハイドロキシアパタイトから成る群から選択される、請求項4記載の骨形成促進剤。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の骨形成促進剤を含み、抜歯窩、のう胞若しくは腫瘍摘出後の骨欠損部;歯周病により吸収された歯槽骨欠損部;先天性異常による顎裂部;骨折部位及び/又はインプラント周囲骨の修復、再生又は補填に用いるための医薬組成物。
【請求項7】
水溶液の形態である、請求項6記載の医薬組成物。
【請求項8】
注射液の形態を有する局所投与用である、請求項7に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビスホスホン酸の一種である[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩を有効成分とする骨形成促進剤又は医薬組成物、これらを処置を要する対象に投与することから成る骨形成促進法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ビスホスホン酸(BP, BPs)は破骨細胞の機能を抑制することによる強力な骨吸収抑制作用を有し、これまでに、骨粗鬆症、高カルシウム血症、Paget病、腫瘍性骨破壊、等の骨吸収が亢進した様々な疾患に対する薬剤として広く使用されている。
【0003】
ビスホスホン酸は側鎖の化学構造に基づき、(1)アルキル側鎖を有する化合物群、(2)ハロゲン側鎖を有する化合物群、(3)アミノアルキル側鎖を有する化合物群、及び、(4)環状側鎖を有する化合物群に大別される。ビスホスホン酸の骨吸収抑制活性等の様々な薬理学的性質及びその作用機序は、これら側鎖の構造の違いにより大きく異なることが知られている。
【0004】
例えば、側鎖に窒素原子を有するビスホスフォネート化合物(N-BPs:パミドロネート、アレンドロネート、リセドロネート、インカドロネート、ゾレドロネート等)はメバロン酸経路におけるファネルシルピロリン酸合成酵素やゲラニルゲラニルピロリン酸合成酵素を抑制して低分子Gタンパク質のプレニル化を阻害するのに対して、側鎖に窒素原子を有していないビスホスフォネート化合物(non N-BPs:エチドロネート、クロドロネート、チルドロネート 等)はピロリン酸との構造類似性が高くATP(アデノシン3リン酸)類似化合物を形成することが知られている。又、N-BPsはnon N-BPsに比べて100 - 10,000倍以上の骨吸収抑制活性を有していることも知られている。
【0005】
側鎖に窒素原子を有していないビスホスフォネート化合物の一種である[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンのリューマチ性関節炎への応用、抗炎症作用については非特許文献1〜4に、又、骨代謝疾患改善効果、インターロイキン−1産生・作用抑制効果、抗酸化作用については、特許文献1及び非特許文献5に記載されている。更に、同化合物が歯周疾患用薬剤として使用できることも知られている(特許文献4、非特許文献6、7)。しかしながら、上記化合物の骨形成促進作用については従来知られていなかった。
【0006】
又、ビスホスホン酸誘導体の効果は可変であって、異なるビスホスホン酸を用いた場合には反対の効果が生じたり、同一のビスホスホン酸を用いてもその濃度に応じて異なる生物学的反応が生じることも当該技術分野では公知であった(非特許文献8)。
【0007】
一方、骨形成促進作用を有する物質として、これまでにBMP、FGF、IGF、及びスタチン類が知られている。しかしながら、これらの物質は、骨形成と同時に骨吸収を促進する(BMP)、適用部位に炎症を惹起する(BMP、スタチン類)、タンパク性因子であるために生産コストが高く、抗原性が問題となる(BMP、FGF、IGF)、骨に対する親和性が低く、特別なDDS(Drug Delivery System)を必要とする(BMP、FGF、IGF、スタチン類)などの問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特公平8−26048号公報
【特許文献2】特許第3626500号明細書
【特許文献3】特許第2546067号明細書
【特許文献4】国際公開第 01/005403号パンフレット
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Takaoka Y, Nagai H, Mori H, Tanahashi M: The effect of MPMBP on experimental arthritis in mice. Biol Pharmaco Bull 20:1147-50 (1997)
【非特許文献2】Tanahashi M, Funaba Y, Itoh M, Kawabe N, Nakadate-Matsushima T: Inhibitory effect of MPMBP on rat adjuvant arthritis. Pharmacology 56:242-251 (1998)
【非特許文献3】Tanahashi M, Koike J, Kawabe N, Nakadate-Matsushima T: Inhibitory effect of TRL-530 on inflammatory cytokines in bone marrow of rats with adjuvant arthritis. Pharmacology 56:237-241 (1998)
【非特許文献4】Iwase M, Kim KJ, Kobayashi Y, Itoh M, Itoh T: A novel bisphosphonate inhibits inflammatory bone resorption in a rat osteolysis model with continuous infusion of polyethylene particles. J Orthop Res 20:499-505 (2002)
【非特許文献5】Tanahashi M, Funaba Y, Tateishi A, Kawabe N, Nakadate-Matsushima T: MPMBP inhibits accumulation of superoxide anions derived from human polymorphonuclear leukocytes and bone resorption induced by activated osteoclasts. Pharmacology 56:125-130 (1998)
【非特許文献6】Sikder MN, Itoh M, Iwatsuki N, Shinoda H: Inhibitory effect of a novel bisphosphonate, MPMBP, on dental calculus formation in rats. J Periodontol 75:537-45 (2004)
【非特許文献7】Shinoda H, Takeyama S, Suzuki K, Murakami S, Yamada S: A novel bisphosphonate for the treatment of periodontitis. J Pharmacol Sci 106: 555-558 (2008)
【非特許文献8】Fleisch H: Experimental basis for the use of bisphosphonates in Paget’s disease of bone. Clin Orthop Relat Res 217:72-78 (1987)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記に示した課題を解決することを目的とする。即ち、本発明の主な目的は、化学合成による安価な生産が可能であって、優れた骨形成促進作用を有し、骨に対する親和性が高く、特別なDDSを必要とせずに適用可能な化合物、並びに、該化合物を投与することにより骨形成を促進し、骨の増生及び再生に応用する方法等を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上記課題を解決すべく鋭意研究を進め、[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸がこれまで知られていなかった骨形成促進作用を有することを新たに見出し、これに基づき本発明を完成させた。
【0012】
即ち、本発明は以下に示す各態様に係るものである。
[態様1][(4−メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩を有効成分とする骨形成促進剤。
[態様2][(4−メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸のナトリウム塩を有効成分とする骨形成促進剤。
[態様3][4−(メチルチオ)フェニルチオ]−メタンビスホスホン酸・2ナトリウム塩を有効成分とする骨形成促進剤。
[態様4]有効成分がリン酸カルシウムから成る徐放剤に吸着されてなる、態様1〜3のいずれか一項に記載の骨形成促進剤。
[態様5]リン酸カルシウムがα−トリカルシウムホスフェート、β−トリカルシウムホスフェート、オクタカルシウムホスフェート及びハイドロキシアパタイトから成る群から選択される、態様4記載の骨形成促進剤。
[態様6]態様1〜5のいずれか一項に記載の骨形成促進剤を含み、骨形成促進作用を有する医薬組成物。
[態様7]水溶液の形態である、態様6記載の医薬組成物。
[態様8]注射液の形態を有する、態様7に記載の医薬組成物。
[態様9]態様1〜5のいずれか一項に記載の骨形成促進剤、又は、態様6〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物を投与することから成る、骨形成促進方法。
[態様10]態様1〜5のいずれか一項に記載の骨形成促進剤、又は、態様6〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物を部位に局所投与することから成る、骨形成促進方法。
[態様11]態様1〜5のいずれか一項に記載の骨形成促進剤、又は、態様6〜8のいずれか一項に記載の医薬組成物を部位に局所投与することから成る、該部位における骨形成促進方法。
[態様12]歯槽骨部に局所投与することから成る、態様11記載の方法。
【発明の効果】
【0013】
ビスホスホン酸の一種である[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸を又は薬学的に許容され得るその塩を作用させることによって、生体内の投与周辺部位における骨形成促進が見られ、骨芽細胞様株化細胞においてアルカリホスファターゼ(ALP)活性及び/又は骨形成関連遺伝子の発現を有意に上昇させ、又、骨器官培養系においてコラーゲン合成促進、骨形成の促進、及び/又は骨基質産生の促進及び骨量の増加を有意に誘起させることが出来た。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】ビスホスフォネートの一般式、および [4−(メチルチオ)フェニルチオ]−メタンビスホスホン酸・2ナトリウム塩(略称:「MPMBP」)の化学構造。
図2】MPMBP局所投与(1mM、あるいは10mM溶液を4日おきに6回投与)によってウサギ上顎歯槽骨に誘起された骨の増生。(pQCT像:peripheral Quantitative Computerized Tomography像)。上顎臼歯列歯頸部付近の水平断。 Exp:実験側(MPMBP投与側)、cont:対照側(0.9%NaCl投与側)。矢印が注射部位。実験側には口蓋正中側にかけて歯槽骨の増生がみられる。
図3】MPMBP局所投与(1mM、あるいは10mM溶液を4日おきに6回投与)によってウサギ上顎歯槽骨に誘起された骨の増生(μCT像:microfocus Computerized Tomography像)。上顎左右第一臼歯の正中部前頭断。exp:実験側(MPMBP投与側)。cont:対照側(0.9%NaCL投与側)。実験側の歯槽骨から口蓋正中側にかけての口蓋骨の厚みが増している。
図4】骨芽細胞系株化細胞MC3T3-E1細胞に及ぼすMPMBP(1, 10,および100μM)の効果。MPMBPおよびクロドロネート(窒素非含有ビスホスフォネートの一つ)は、3週間の培養期間中、アルカリホスファタ−ゼ活性を用量依存的、かつ経時的に上昇させる。
図5】骨芽細胞様株化細胞MC3T3-E1細胞に及ぼすビスホスフォネート(窒素含有ビスホスフォネートである、パミドロネート、インカドロネート、及びゾレドロネート。それぞれ、0.1, 1, および10μM)の効果。MPMBP と異なり、アルカリホスファターゼ活性を抑制する、あるいはアルカリホスファターゼ活性に影響しない。
図6】マウス骨器官培養系におけるMPMBPの骨基質産生促進作用。培養骨のタイプIコラーゲンを免疫組織化学的に染色したのち、共焦点レーザー顕微鏡により観察。上段パネルは骨表面のノマルスキー微分干渉像。中段パネルは、タイプIコラーゲンとアルカリホスファターゼの二重染色を行ったあとの骨表面像。下段パネルは、タイプIコラーゲンとアルカリホスファターゼの二重染色を行ったあとの骨断面像。赤色(ロダミン):タイプIコラーゲン。緑色 (ELF-97):アルカリホスファターゼ(骨芽細胞)。MPMBP存在下でDMEMにより48時間培養した結果。LPS(リポポリサッカライド:骨吸収促進因子の一つ)の存在、非存在に関わらず、MPMBPは対照骨に比べて著明に骨基質(赤色の部分)の産生を促進した。また、ノマルスキー微分干渉像の観察から、MPMBPの存在下では、LPSによる骨吸収が抑制され、LPSによって形成される吸収窩の大きさが、対照骨に比べて著しく小さい。
図7】マウス骨器官培養系におけるMPMBPの骨基質産生促進作用と骨量増加作用。培養骨のタイプIコラーゲンを免疫組織学的に染色したのち、共焦点レーザー顕微鏡骨により観察。上段パネルは骨表面のノマルスキー微分干渉像。中段パネルは、タイプIコラーゲン染色を行ったあとの骨表面像。下段パネルは、タイプIコラーゲンとアルカリホスファターゼの二重染色を行ったあとの骨断面像。赤色(アリザリンレッド):骨ミネラル。緑色(アレキサフロー-488):タイプIコラーゲン。MPMBP存在下で48時間DMEMにより培養した結果。LPS(リポポリサッカライド:骨吸収促進因子の一つ)の存在、非存在に関わらず、MPMBPは対照骨に比べて著明に骨基質(緑色の部分)の産生を促進した。また、骨ミネラル(赤色の部分)の厚みも対照骨に比べて厚い。さらに、ノマルスキー微分干渉像の観察から、MPMBPの存在下では、LPSによる骨吸収が抑制され、LPSによって形成される吸収窩の大きさが、対照骨に比べて著しく小さい。
図8】マウス骨器官培養系におけるMPMBPの骨基質産生促進作用。ゾレドロネートとの比較。培養骨のタイプIコラーゲンとアルカリホスファターゼを免疫組織化学的に二重染色した後、共焦点レーザー顕微鏡骨により観察。それぞれ上段パネルは骨表面の観察像、下段パネルは、骨断面像。MPMBP存在下で48時間DMEMにより培養した結果。赤色(ロダミン):タイプIコラーゲン。緑色 (ELF-97):アルカリホスファターゼ(骨芽細胞)。LPSの存在、非存在のいずれにおいても、ゾレドロネートがタイプIコラーゲンの産生を抑制したのに対して、MPMBPは著明に骨基質の産生を促進した。MPMBP添加群では、骨芽細胞によって分泌された多量のコラーゲン繊維によって骨芽細胞自身が覆われ、観察でき難いのに対して、ゾレドロネート添加群では、コラーゲンの産生が抑制されているため、骨芽細胞(緑色)がそのまま観察できる。
図9】マウス骨器官培養系におけるMPMBPの骨基質産生促進作用。アレンドロネートとの比較。培養骨のタイプIコラーゲンを免疫組織化学的に染色したあと、共焦点レーザー顕微鏡により骨表面を観察。コラーゲン線維と骨芽細胞は、アレキサフロー-488により緑色に染色。ビスホスフォネート化合物の中で唯一骨形成促進作用が報告されているアレンドロネートとの比較。いずれもDMEMにより48時間培養。アレンドロネートもMPMBPと同様、対照骨に比べてコラーゲンの産生を増加させているが、その程度は、MPMBPに比べてはるかに少ない。MPMBPの存在下では、太いコラーゲン線維が束状に大量に産生され、骨表面が密に覆われているのに対して、アレンドロネートの存在下で産生されるコラーゲン線維は細く、針状で、その量もMPMBPに比べて少ない。
図10】MPMBPが骨形成関連遺伝子の発現におよぼす影響骨芽細胞様株化細胞MC3T3-E1細胞をMPMBP(1,10,および100μM)の存在下で72時間培養後、mRNAを抽出。アルカリホスファターゼ、タイプI‐αコラーゲン、オステオカルシン、骨シアロタンパクの遺伝子発現を、リアルタイムRT-PCR法により解析。MPMBPはいずれの遺伝子発現も促進させた。図中の各バーは左から右へ、夫々、コントロール、1, 10, 及び100μMの結果を示す。
図11】ゾレドロネートが骨形成関連遺伝子の発現におよぼす影響骨芽細胞系株化細胞MC3T3-E1細胞をMPMBP(1,10,および100μM)の存在下で72時間培養後、mRNAを抽出。アルカリホスファターゼ、タイプI‐αコラーゲン、オステオカルシン、骨シアロタンパクの遺伝子発現を、リアルタイムRT- PCRにより解析。ゾレドロネートは、MPMBPと異なり、いずれの遺伝子発現に対しても有意の影響を与えなかった。図中の各バーは左から右へ、夫々、コントロール、1, 10, 及び100μMの結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、ビスホスホン酸の一種である[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸を又は医薬として許容可能なその塩を有効成分とする骨形成促進剤又は医薬組成物、及び、該化合物を処置を要する対象に投与することから成る骨形成促進法等に関する。
【0016】
本明細書において、「骨形成促進作用」とは、生体内での骨形成促進、骨芽細胞様株化細胞の培養系において骨芽細胞前駆細胞の骨芽細胞への分化の指標とされるアルカリホスファターゼ(ALP)活性、及び/又は、その他の骨形成促進の指標とされるタイプIコラーゲン(type-I collagen)、オステオカルシン(osteocalcin)、及び骨シアロタンパク(bone sialoprotein )等の骨形成関連遺伝子の発現を有意に上昇させる作用、及び、頭蓋冠等の骨器官培養系においてコラーゲン合成促進、骨形成の促進、及び/又は骨基質の産生の促進及び骨量の増加を誘起する作用、これらの作用と生理学又は薬理学的に実質的同一又は相関すると見做し得る作用の少なくとも一つを意味するものである。
【0017】
本発明の骨形成促進剤又は医薬組成物に有効成分として含有される[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩は、例えば、特許文献1〜3に記載のような当業者に公知の任意の方法で製造することが出来る。
【0018】
[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸の薬学的に許容され得る塩としては、当業者に公知の任意の塩、例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等を挙げることが出来る。その具体例として、図1に構造式を示す[4−(メチルチオ)フェニルチオ]−メタンビスホスホン酸・2ナトリウム塩(略称:「MPMBP」)を挙げることが出来る。
【0019】
本発明の骨形成促進剤は、錠剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、丸剤などの経口投与形態、注射液、シロップ剤、軟膏剤、バッカル錠、坐剤、口腔洗浄剤、及び局所塗布剤などの非経口投与形態などの種々の製剤形態を有する医薬組成物として有用であり、該医薬組成物は骨形成促進作用を示すものである。
【0020】
本発明の医薬組成物には、上記の製剤の形態等を考慮して、本発明の有効成分以外に当業者に公知の薬学的に許容され得る担体、賦形剤、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、徐放剤、バッファ、コーティング剤及び着色剤等を適宜含ませることが出来る。本発明の骨形成促進剤又は医薬組成物は当業者に公知の任意の製剤方法で容易に調製することが出来る。
【0021】
例えば、適当な担体の例としては、ラクトース、デンプン、ショ糖、グルコース、メチルセルロース、ステアリン酸マグネシウム、マンニトール、ソルビトール及びクロスカルメローズナトリウム等を挙げることが出来る。或いは、適当な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、または、グルコース、無水ラクトース、自由流動ラクトース、ベータ−ラクトース及びトウモロコシ甘味料のような天然の糖、並びに、アラビアガム、グアーガム、トラガントもしくはアルギン酸ナトリウムのような天然及び合成のガム、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、及びロウ等がある。又、これらの剤形に使用される滑沢剤には、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、及び塩化ナトリウム等がある。更に、エリキシル剤及びシロップ、発泡組成物のような液体形態で経口投与するためには、経口薬剤成分を、エタノール、グリセロール、水などのような医薬として許容される無毒の経口不活性担体と組合せることも出来る。又、ポリビニルピロリドン、ピランコポリマー、ポリヒドロキシプロピル−メタクリルアミド等の可溶性ポリマーからなる医薬担体に有効成分が結合されていてもよい。
【0022】
本発明の骨形成促進剤又は医薬組成物の好適例として、有効成分がα−トリカルシウムホスフェート、β−トリカルシウムホスフェート、オクタカルシウムホスフェート及びハイドロキシアパタイト等のリン酸カルシウムから成る徐放剤に吸着された状態で、浸透圧及びpHが生理的範囲に調節された水溶液に含まれている製剤形態を挙げることが出来る。尚、この水溶液の浸透圧及びpHは生理的範囲に調節されていることが好ましい。
【0023】
本発明の骨形成促進剤又は医薬組成物に含有される有効成分の含有量及びその投与量は、投与計画、選択された特定のビスホスホン酸化合物の経口薬効、レシピエント患者の年齢、サイズ、性別及び体調、治療すべき障害の種類及び重篤度、その他の該当する医学的及び肉体的要因等に応じて、当業者が適宜選択することが出来る。尚、適量は、動物モデルの定型的実験及びヒトの臨床試験によって決定できる。一般に、有効成分の適量は有意の骨形成促進効果が得られるように選択される。
【0024】
従って、投与量及び投与間隔等は、投与対象、投与ルート、症状などに応じて適宜決定することが出来るが、有効成分の量にして、約 0.1 mg〜5g程度、好ましくは1 mg〜2g程度であり、これを1日1〜数回に分けて、適当な期間、例えば、1日〜30日の間、経口または非経口投与する。例えば、注射液を治療部位に局所投与することができる。尚、本発明により形成が促進される骨の種類・部位等に特に制限はないが、治療部位又はその周辺部位として、例えば、歯槽骨部、インプラント周囲骨、のう胞摘出後の骨部位、等を挙げることが出来る。
【0025】
以下に実施例を参照して本発明を具体的に説明するが、この実施例は単に本発明の説明のため、その具体的な態様の参考のために提供されているものである。これらの例示は本発明の特定の具体的な態様を説明するためのものであるが、本明細書で開示する発明の範囲を限定したり、あるいは制限することを表すものではない。本発明では、本明細書の思想に基づく様々な実施形態が可能であることは理解されるべきである。尚、市販の試薬あるいはキットを用いている場合はそれらに添付の指示書(protocols) や添付の薬品等を使用している。
【実施例】
【0026】
実施例(1)
平均体重2.2kgの雄性日本家兎9羽を用い、それらを3羽づつ3群に分けた。各群の家兎の左側(実験側)上顎第1大臼歯と第2大臼歯の口蓋側歯間歯槽骨の骨膜下に、生理的浸透圧と生理的なpHに調整した0.1、1.0、ないし10 mMのMPMBP溶液50μlを4日おきに6回注射した(いずれもネンブタール麻酔下で実施)。反対側(右側)の同部位には、50μl の生理的食塩水(0.9%NaCl溶液)を同様に注射し、対照とした。最後の注射後4日目に、ネンブタール過剰投与により動物を屠殺し、上顎骨を摘出、10%中性ホルマリン溶液(pH 7.4)で固定した。薬物投与部位附近の歯槽骨および口蓋骨を関心領域として、pQCT(peripheral Quantitative Computerized Tomography;図2) およびμCT (microfocus Computerized Tomography;図3) による3次元解析を行った。その結果、10 mM及び1.0 mMのMPMBP投与群の家兎において、図2に示すような歯槽骨口蓋側への骨添加(「exp」で示した矢印の部分)、また、図3に示すような歯槽部から口蓋正中部にかけての口蓋骨が厚みを増す像が観察された(「exp」で示した矢印の部分)。これらの変化は、1.0mM投与群に比べて10mM投与群の方が強く、0.1mM投与群での効果は不明であった。MPMBPの生体内におけるこのような骨形成促進効果は、既存のビスホスフォネート化合物においては報告されていない。
【0027】
実施例(2)
マウス頭蓋骨由来の骨芽細胞様株化細胞MC3T3-E1細胞(RIKEN Bio Resource Center, CELL BANK:RCB1126)を用い、骨形成の指標の一つとされ、また骨芽細胞前駆細胞の骨芽細胞への分化の指標とされるアルカリホスファターゼ(ALP)活性に対して、MPMBPがどのような効果を持つかについて検討した。MC3T3-E1細胞をα-MEM(10%牛血清添加)で培養し、コンフルエントに達した後、MPMBPの存在(1,10,および100μM)ないし非存在下で、6、10、ないし20日間、48 well のculture plate 中で培養した。培養終了後、細胞ホモジネートを作製し、Lowry et al の方法(J Biochem 1954;207:19-37)によりALP活性(per well)を測定した。その結果、MPMBPは、用量依存的、かつ経時的にALP活性を上昇させた(図4、左)。同様な実験を、他のビスホスフォネート化合物(クロドクロネート、パミドロネート、インカドロネート、ゾレドロネート)についても行った結果、クロドロネートは公知の様に(Felix and Fleisch, Biochem J 1979; 183:73-81; Igarashi et al, Prostaglandins, Leukotriens, and Essential Fatty Acids 1997; 56: 121-125)ALP活性を上昇させた(図4、右)が、パミドロネートには有意な変化は見られず(図5、左上)、インカドロネートやゾレドロネートは、高濃度でALP活性を著明に低下させた(図5、左下および右下)。これらの事実は、ALP活性に及ぼすビスホスフォネート化合物の効果は一様ではなく、P-C-P結合の炭素原子にどのような側鎖が付加されるかによって異なることを示すと同時に、MPMBPにおいては、[4-メチルチオ(フェニルチオ)]側鎖が、ALP活性の上昇に重要な役割を果たしていることを示している。
【0028】
実施例(3)
骨器官培養系を用いてMPMBPが、骨基質の産生にどのような効果を及ぼすかについて検討した。生後3-6日後のマウスより、無菌的にカルバリア(頭蓋冠)を採取した。これらをStern and Krieger の方法(Calcif Tissue Int 1983; 35:172-17)によりDMEM(10%牛血清添加、ヘパリン無添加、LPS 10μg/ml 添加あるいは無添加)で48時間培養した。培養終了後、Suzuki, Takeyama et al により記載された方法(J Histochem Cytochem 2005; 53:1525-1537)により、タイプIコラーゲンとアルカリホスファターゼの二重染色(図6及び8)、タイプIコラーゲンとアリザリンレッドの二重染色(図7)、あるいはタイプIコラーゲンのみ(図9)の免疫組織化学染色を行い、共焦点レーザー顕微鏡により観察した。
【0029】
図6にマウス骨器官培養系におけるMPMBP(25μM)の骨基質産生促進作用を示す。
上段パネルは骨表面のノマルスキー微分干渉像。中段パネルは、タイプIコラーゲンとアルカリホスファターゼの二重染色を行った後の骨表面像、下段パネルは、タイプIコラーゲンとアルカリホスファターゼの二重染色を行ったあとの骨断面像を夫々示す。タイプIコラーゲンはロダミンにより赤色、アルカリホスファターゼ(骨芽細胞を染色)は脱リン酸化されると蛍光を発する基質(ELF-97)を用いることにより、その酵素活性が緑色に観察できる。培養液中へのMPMBPの添加により、LPS(10μg/ml)(リポポリサッカライド:骨吸収促進因子の一つ)の存在、非存在に関わらず対照骨に比べて著明に骨基質(タイプIコラーゲン:赤色の部分)の産生が増加している。骨芽細胞は、MPMBPの存在下でコラーゲン線維の産生が増すため、自身が産生するコラーゲン線維により被覆され、対照骨のように明瞭に観察できない。また、ノマルスキー微分干渉像の観察から、MPMBPの存在下では、LPSによる骨吸収が抑制され、LPSによって形成される吸収窩の大きさが、対照骨に比べて著しく小さいことが観察できる。
【0030】
図7にマウス骨器官培養系におけるMPMBPの骨基質産生促進作用と骨量増加作用を示す。上段パネルは骨表面のノマルスキー微分干渉像。中段パネルは、タイプIコラーゲン染色を行ったあとの骨表面像で、この図では、コラーゲン線維はアレキサフロー−488により緑色に観察される。下段パネルは、タイプIコラーゲンとアリザリンレッドの二重染色を行ったあとの骨断面像で、コラーゲン線維はアレキサフロー−488により緑色に、骨ミネラルはアリザリンレッドにより赤色に観察できる。MPMBP存在下で48時間培養した結果、LPSの存在、非存在に関わらず、対照骨に比べて著明に骨基質(緑色の部分)の産生が増加している像が観察された。また、骨ミネラル(赤色の部分)の厚みも対照骨に比べて厚い。さらに、ノマルスキー微分干渉像の観察から、MPMBPの存在下では、LPSによる骨吸収が抑制され、LPSによって形成される吸収窩の大きさが、対照骨に比べて著しく小さい。
【0031】
図8には、同じ骨器官培養系において、MPMBPとゾレドロネート(2.5μM)の効果を比較した結果が示してある。タイプIコラーゲンとアルカリホスファターゼの免疫二重染色を行ったあと、図6と同様、タイプIコラーゲンはアレキサフルオー594により赤色に、アルカリホスファターゼ(骨芽細胞)は脱リン酸化されると蛍光を発する基質(ELF-97)を用いることにより、その酵素活性が緑色に染色されている。上段パネルは骨表面の観察像、下段パネルは、骨断面像。ゾレドロネートはLPSの存在、非存在のいずれにおいても、タイプIコラーゲンの産生を抑制したのに対して、MPMBPは著明に骨基質の産生を増加させた。MPMBP添加群では、骨芽細胞によって分泌された多量のコラーゲン繊維によって骨芽細胞自身が覆われ、観察し難いのに対して、ゾレドロネート添加群では、コラーゲンの産生が抑制されているため、骨芽細胞(緑色)が容易に観察できる。
【0032】
図9には、MPMBPの骨基質産生促進作用を、ビスホスフォネート化合物の中で唯一骨形成促進作用が報告されているアレンドロネートの効果(特許第3566984 骨形成促進剤; Tsuchimoto, Azuma et al, Jpn J Pharmacol 1994; 66:25-33; Duque and Rivas, J Bone Miner Res 2007; 22:1603-1611)と比較した結果を示す。骨器官培養系において同程度の骨吸収抑制作用を示す濃度(MPMBP:100μM;アレンドロネート:2.0μM)を用い48時間培養したあと(ヘパリン無添加)、タイプIコラーゲンを免疫染色し、アレキサフロー-488により緑色に染色した結果を示す。アレンドロネート存在下でもMPMBPと同様、対照骨に比べてコラーゲンの産生が増加している像が観察されるが、その程度は、MPMBPに比べてはるかに少ない。MPMBPの存在下では、太いコラーゲン線維が束状に大量に産生され、骨表面が密に覆われているのに対して、アレンドロネート存在下で産生されるコラーゲン線維は細く、針状のものが多い。アレンドロネートでは、産生されるコラーゲン線維の量がMPMBP程多くないため、骨芽細胞を容易に観察することができる。
【0033】
以上の様に、ゾレドロネートは骨基質の産生を抑制する方向に働くのに対して、MPMBPは、骨基質の産生を高める方向に作用することが明らかとなった。またその程度は、骨形成促進作用が唯一報告されているアレンドロネートの効果と比べてもはるかに高いものと考えられる。
【0034】
実施例(4)
MPMBPの骨形成促進作用のメカニズムを解明するための実験として、骨芽細胞様株化細胞MC3T3-E1細胞を用い、骨形成関連遺伝子の発現に及ぼす効果を、リアルタイムRT-PCR法により検討した。また、その効果をゾレドロネートの作用と比較した。
実験には、α-MEM(10%牛血清添加)で培養後、コンフルエントに達した骨芽細胞様株化細胞MC3T3-E1細胞を用いた。3日間MPMBP(1, 10, ないし100μM)ないしはゾレドロネート(0.1, 0.5 ないしは 2.0μM)の存在下で培養した(60mm径dishを使用)。培養終了後、細胞をscrapeし, トリゾール によりRNA を抽出した。5μgのRNAからcDNAを合成し、アルカリホスファターゼ、タイプI−αコラーゲン、オステオカルシン、骨シアロタンパク遺伝子に対する特異的プライマーを設定し、サーマルサイクラー中でPCR増幅を行い、上記遺伝子の発現量を測定した。
その結果、MPMBPは100μMの濃度において、骨形成促進の指標とされる上記遺伝子の発現をいずれも有意に上昇させた(図10)。これに対してゾレドロネートは、用いた濃度範囲(細胞増殖が抑制されない濃度範囲)では、これら遺伝子の発現量に有意の変化を及ぼさなかった。(図11)。
以上、上記4つの実施例のいずれにおいてもMPMBPは、骨形成に対して促進的な効果をもつことが新たに確認された。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明の[4−(メチルチオ)フェニルチオ]メタンビスホスホン酸又は薬学的に許容され得るその塩を有効成分とする骨形成促進剤は、抜歯窩、のう胞や腫瘍摘出後の骨欠損部、歯周病などにより吸収された歯槽骨欠損部、先天性異常による顎裂部、骨折部位、インプラント周囲骨等の修復・再生・補填等に広く応用することが出来る。
図1
図4
図5
図10
図11
図2
図3
図6
図7
図8
図9