特許第5655193号(P5655193)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5655193ナノコンポジット、ナノ分散液、その製造方法及び該分散液からなる各種剤
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  • 特許5655193-ナノコンポジット、ナノ分散液、その製造方法及び該分散液からなる各種剤 図000014
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655193
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】ナノコンポジット、ナノ分散液、その製造方法及び該分散液からなる各種剤
(51)【国際特許分類】
   C08L 5/16 20060101AFI20141225BHJP
   C09D 183/16 20060101ALI20141225BHJP
   C09D 5/14 20060101ALI20141225BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20141225BHJP
   C09D 7/12 20060101ALI20141225BHJP
   A01N 57/34 20060101ALI20141225BHJP
   A01P 3/00 20060101ALI20141225BHJP
   A01N 59/00 20060101ALI20141225BHJP
   A01N 25/02 20060101ALI20141225BHJP
   C09K 3/00 20060101ALI20141225BHJP
   C09K 3/18 20060101ALI20141225BHJP
   B82Y 5/00 20110101ALI20141225BHJP
   B82Y 30/00 20110101ALI20141225BHJP
   A61L 9/01 20060101ALI20141225BHJP
   C08K 5/5419 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   C08L5/16
   C09D183/16
   C09D5/14
   C09D5/16
   C09D7/12
   A01N57/34
   A01P3/00
   A01N59/00 Z
   A01N25/02
   C09K3/00 112F
   C09K3/18 104
   B82Y5/00
   B82Y30/00
   A61L9/01 H
   A61L9/01 M
   C08K5/5419
【請求項の数】16
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-71028(P2011-71028)
(22)【出願日】2011年3月10日
(65)【公開番号】特開2012-188635(P2012-188635A)
(43)【公開日】2012年10月4日
【審査請求日】2013年12月12日
(73)【特許権者】
【識別番号】000197975
【氏名又は名称】石原ケミカル株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】504229284
【氏名又は名称】国立大学法人弘前大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095153
【弁理士】
【氏名又は名称】水口 崇敏
(72)【発明者】
【氏名】沢田 英夫
(72)【発明者】
【氏名】高島 大樹
(72)【発明者】
【氏名】小林 昭夫
(72)【発明者】
【氏名】嬉野 智子
(72)【発明者】
【氏名】滝下 勝久
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 特表2003−501455(JP,A)
【文献】 特開2010−138156(JP,A)
【文献】 特開平08−337757(JP,A)
【文献】 特開2009−073799(JP,A)
【文献】 特表2008−536894(JP,A)
【文献】 特表2003−508583(JP,A)
【文献】 特開2009−209349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 5/00−5/16
A01N 25/00−25/34
57/00−57/36
59/00−59/26
A01P 3/00
A61L 9/00−9/22
B82Y 5/00
30/00
C08K 5/00−5/59
C09D 5/00−5/46
7/00−7/14
183/00−183/16
C09K 3/00−3/32
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(I)
【化1】
[式中、Rfはパーフルオロアルキル基、パーフルオロオキサアルキル基または一般式
【化2】
(式中、Afはパーフルオロアルキレン基、Af´はAfと同一または異なるパーフルオロアルキレン基、mは1〜10である)
で示される基、Rはアルキル基、アルコキシアルキル基または水素原子、nは2〜100である。]
で表わされる含フッ素系化合物とシクロデキストリンを含んでなるナノコンポジット。
【請求項2】
含フッ素系化合物が一般式(II)
【化3】
[式中、RFは−(CF)pFまたは−CF(CF)O(CFCFCFO)qC(pは1〜10、qは0〜5である)で示される基、R´はアルキル基、nは2〜3である。]
で表わされるものである請求項1に記載のナノコンポジット。
【請求項3】
請求項1または2に記載の含フッ素系化合物とシクロデキストリンとイオン液体を含んでなるナノコンポジット。
【請求項4】
イオン液体が、ホスホニウムイオン、または第三級または第四級アンモニウムイオンからなるカチオンと、1価のアニオン基または2価のアニオン基からなるアニオンとの塩であり、常温(25℃)、常圧(0.1MPa)で液体であり、かつ沸点を持たない物質である請求項3に記載のナノコンポジット。
【請求項5】
イオン液体が、一般式(III)
【化4】
(式中、Rはアルキル基、Rはアルキル基、アルコキシアルキル基または水素原子である。)
で表わされるものである請求項4に記載のナノコンポジット。
【請求項6】
請求項1〜のいずれかに記載のナノコンポジットが溶媒に分散されてなるナノ分散液。
【請求項7】
溶媒が水性溶媒、非水溶性溶媒、疎水性溶媒である請求項に記載のナノ分散液。
【請求項8】
請求項1または2に記載の含フッ素系化合物とシクロデキストリン、あるいはこれらとイオン液体を溶媒中で混合させることを特徴とする請求項またはに記載のナノ分散液の製造方法。
【請求項9】
請求項またはに記載のナノ分散液からなる消臭剤。
【請求項10】
請求項またはに記載のナノ分散液からなる抗菌剤。
【請求項11】
請求項またはに記載のナノ分散液からなる親水剤。
【請求項12】
請求項またはに記載のナノ分散液からなる撥水剤。
【請求項13】
請求項またはに記載のナノ分散液からなる撥油剤。
【請求項14】
請求項またはに記載のナノ分散液からなる防汚剤。
【請求項15】
請求項またはに記載のナノ分散液からなる添加剤。
【請求項16】
請求項またはに記載のナノ分散液からなるコーティング剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、含フッ素系化合物とシクロデキストリンを含むナノコンポジット、含フッ素系化合物とシクロデキストリンとイオン液体を含むナノコンポジット、ナノ分散液、その製造方法及び該分散液からなる各種剤に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年の消臭・抗菌ブームより、それらの原体として様々な物質が開発されている。一般的にはシクロデキストリンや銀イオンなどが有名である(例えば、特許文献1参照)。これらは、液体に分散された状態で配合され、噴霧されることなどで基材に付着し、消臭効果を示す。しかし、例えば水などで簡単に脱離し、その効果が消失する。また、これらの物質は例えば樹脂や塗料などに配合された場合は、表面に存在するもの以外は、その効果を示しにくい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−533588号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、このような事情の下、水洗等の水処理でも基材への付着性が低下することなく、所期の緒効果を維持しうる、シクロデキストリンを含むコンポジットの分散液、その製造方法、該分散液からなる各種剤及び該コンポジットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意研究した結果、含フッ素末端鎖基を有し、シクロデキストリンが、主鎖骨格に特定の親媒性基を有する含フッ素系化合物と、さらには該含フッ素系化合物およびイオン液体とコンポジットを形成しうることを見出し、さらに、これらのナノコンポジットはナノサイズの粒子であって、含フッ素系化合物の親媒性に追従して水性溶媒、非水性溶媒や疎水性溶媒、或いはこれらの混合溶媒に親媒性であり、これらのナノ粒子をこれら溶媒中に分散させうることや、この分散液で各種基材表面を改質しうること、また、塗料や樹脂への添加でその表面を改質しうることを見出し、これらの知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0006】
すなわち、本発明は以下に示すとおりのものである。
(1) 一般式(I)
【化1】
[式中、Rfはパーフルオロアルキル基、パーフルオロオキサアルキル基または一般式
【化2】
(式中、Afはパーフルオロアルキレン基、Af´はAfと同一または異なるパーフルオロアルキレン基、mは1〜10である)
で示される基、Rはアルキル基、アルコキシアルキル基または水素原子、nは2〜100である。]
で表わされる含フッ素系化合物とシクロデキストリンを含んでなるナノコンポジット。
(2) 含フッ素系化合物が一般式(II)
【化3】
[式中、RFは−(CF)pFまたは−CF(CF)O(CFCFCFO)qC(pは1〜10、qは0〜5である)で示される基、R´はアルキル基、nは2〜3である。]
で表わされるものである前記(1)に記載のナノコンポジット。
(3) 前記(1)または(2)に記載の含フッ素系化合物とシクロデキストリンとイオン液体を含んでなるナノコンポジット。
(4)イオン液体が、ホスホニウムイオン、または第三級または第四級アンモニウムイオンからなるカチオンと、1価のアニオン基または2価のアニオン基からなるアニオンとの塩であり、常温(25℃)、常圧(0.1MPa)で液体であり、かつ沸点を持たない物質である前記(3)に記載のナノコンポジット。
(5) イオン液体が、一般式(III)
【化4】
(式中、Rはアルキル基、Rはアルキル基、アルコキシアルキル基または水素原子である。)
で表わされるものである前記(4)に記載のナノコンポジット。
(6) 前記(1)〜()のいずれかに記載のナノコンポジットが溶媒に分散されてなるナノ分散液。
(7) 溶媒が水性溶媒、非水溶性溶媒、疎水性溶媒である前記()に記載のナノ分散液。
(8) 前記(1)または(2)に記載の含フッ素系化合物とシクロデキストリン、あるいはこれらとイオン液体を溶媒中で混合させることを特徴とする前記()または()に記載のナノ分散液の製造方法。
(9) 前記()または()に記載のナノ分散液からなる消臭剤。
(10) 前記()または()に記載のナノ分散液からなる抗菌剤。
(11) 前記()または()に記載のナノ分散液からなる親水剤。
(12) 前記()または()に記載のナノ分散液からなる撥水剤。
(13) 前記()または()に記載のナノ分散液からなる撥油剤。
(14) 前記()または()に記載のナノ分散液からなる防汚剤。
(15) 前記()または()に記載のナノ分散液からなる添加剤。
(16) 前記()または()に記載のナノ分散液からなるコーティング剤。
【発明の効果】
【0007】
本発明のナノコンポジットは、分散性に優れ、有機溶媒に分散させた分散液として使用することができ、この分散液は、消臭・抗菌効果を示し、また、ドデカンのような高級炭化水素に対する接触角が高く、撥油性を示すとともに、コンポジット化させる対象を選択することで水に対する接触角をコントロールでき、撥水性または親水性を示す。
【0008】
本発明のナノ分散液は、各種基材表面、例えばプラスチックや金属、繊維などに消臭・抗菌効果を付与することができる。また、例えばガラス、金属、セラミックス、プラスチック、車体等の塗装板等に、撥水・撥油性または親水・撥油性を付与することができ、高い防汚効果を示すコーティング剤等として利用しうる。また、塗料や樹脂へ添加することで、その乾燥表面にナノコンポジットを配向させることができるため、乾燥後の塗膜や樹脂表面に消臭・抗菌性や、撥水・撥油性または親水・撥油性を付与することができ、高い消臭・抗菌・防汚効果を示す添加剤等として利用しうる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施例4の分散液から得たコンポジットのSEM写真。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を具体的に説明する。
本発明のナノコンポジットは、上記式(I)の含フッ素系化合物と上記のシクロデキストリンとのナノ粒子複合体および、上記式(I)の含フッ素系化合物とシクロデキストリンとイオン液体とのナノ粒子複合体を含んでなり、好ましくは該ナノ粒子複合体のみからなるものである。
【0011】
式(I)中、Rのアルキル基としてはメチル基またはエチル基が好ましく、nは1〜20であるのが好ましい。また、Rf基については、パーフルオロアルキル基の例としてはC、C13、C15などが挙げられ、パーフルオロオキサアルキル基の例としては−CF(CF)OCが挙げられ、両末端のRf基は互いに異なっていてもよく、また分子間で互いにRf基が異なっていてもよい。
上記含フッ素系化合物としては、特に上記式(II)で表わされるものが好ましい。具体的には、RFで示されるフルオロアルキル基は−CF(CF)OCで表される基が特に好ましく、Rで示される基はメチル基、つまり−Si(OCHが特に好ましい。
【0012】
上記含フッ素化合物の製法は特に制限されないが、好ましくは、該目的物に相応するオレフィン系モノマーを、上記Rf基を含む有機過酸化物の存在下で反応させる方法、例えば該過酸化物をラジカル重合開始剤として、該モノマーの重合や共重合反応によればよい。
Rf基を含む有機過酸化物としては、上記に例示するような対応するRf基を両末端に有する過酸化物が好ましく、このような過酸化物にはRf−CO−OO−OC−Rfで示される化合物(式中のRf基は、互いに同一でもよいし、また異なっていてもよい)が挙げられる。
含フッ素化合物は、全末端に上記Rf基が導入された化合物とともに、片末端のみに上記Rf基が導入された化合物を含んでいてもよく、さらに、ラジカルの連鎖移動により溶媒などに由来する基や不均化反応によるラジカル停止反応に由来する基が片末端に導入されたものを含んでいてもよい。
【0013】
シクロデキストリンは、6〜8個のグルコースが環状に結合した化合物で、グルコースが6個のものはα−シクロデキストリン、7個のものはβ−シクロデキストリン、8個のものはγ−シクロデキストリンである。本発明においては、これらα−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリンのいずれをも使用可能である。また、シクロデキストリンの水に対する溶解性を高めるため、各官能基で化学修飾したシクロデキストリンも使用可能である。具体的な官能基としては、アルキル基、アセチル基、ヒドロキシアルキル基、スルホアルキル基などが挙げられ、好ましくはヒドロキシアルキル基で化学修飾したものである。
【0014】
イオン液体は、カチオンとアニオンとの塩であり、常温(25℃)、常圧(0.1MPa)で液体であり、かつ沸点を持たない物質であれば、特に制限されず、蒸気圧がほとんどない,引火性,可燃性がない,熱安定性が高い,比較的低粘性である,幅広い温度範囲で液体状態である,イオン伝導性が高いことなどで特徴付けられる。
カチオンとしては、ホスホニウムイオン、イミダゾリウムイオン,ピリジニウムイオンなどの第三級または第四級アンモニウムイオンが挙げられる。
また、アニオンとしては、例えば、フッ素イオン、塩素イオン、臭素イオン、ヨウ素イオン、BF、PF、N(SOCF、PO(OMe)、PS(OEt)、(COMe)PhSO等の1価のアニオン基;SO2−等の2価のアニオン基が挙げられる。
イオン液体としては、とりわけ四級ホスホニウム塩、中でも一般式(III)
【化4】
(式中、Rはアルキル基、Rはアルキル基、アルコキシアルキル基または水素原子である。)
で表わされるものが好ましい。
【0015】
本発明のナノコンポジットは、通常数nmから数百nm、好ましくは50〜700nmの平均粒径を有し、種々の溶媒にナノ粒子として分散させることができ、このようにしてナノ分散液を調製しうる。
【0016】
本発明のナノコンポジットは、次のようにして製造することができる。
本発明のナノコンポジットは、上記式(I)の含フッ素系化合物とシクロデキストリンを、溶媒中、酸性またはアルカリ性下で混合させ、ナノ分散液を調製し、ナノ分散液から溶媒を除去することによって得ることができる。
本発明のナノコンポジットは、上記式(I)の含フッ素系化合物とシクロデキストリンとイオン液体を、溶媒中、酸性またはアルカリ性下で混合させ、ナノ分散液を調製し、ナノ分散液から溶媒を除去することによって得ることができる。
これらの製造法に用いられる溶媒としては水と有機溶媒との混合溶媒が好ましく、このような溶媒は酢酸、塩酸、硫酸、硝酸等の酸などでpHを酸性に、アンモニア、水酸化ナトリウムなどの無機塩基、トリエチルアミン、トリエタノールアミンなどの有機塩基でpHをアルカリ性に調製され、有機溶媒として、好ましくはメタノール、エタノール、プロピルアルコール等のアルコール系溶媒、エチレングリコールやプロピレングリコールなどのグリコール系溶媒、テトラヒドロフラン、ジオキサン、アセトン、アセトニトリル、ジメチルホルムアミド、ジメチルスルホキシド、3−メトキシ−3−メチルブタノールなどの親水性溶媒、ヘキサン、トルエン、キシレンなどの疎水性溶媒が挙げられるが、操作性、安全性等からpH調製には塩酸、アンモニア水を、有機溶媒にはメタノールを用いるのが好ましい。
溶媒のpHは、酸性側で1〜6、アルカリ性側で8〜14が好ましく、1〜3および10〜14がより好ましい。
水と有機溶媒との混合比率は、任意に変更できるが、水:有機溶媒=0.1:9.9〜5:5が好ましく、含フッ素化合物の溶解性などを考慮すると水:有機溶媒=1:9〜5:5(w/w)がより好ましい。
含フッ素化合物とシクロデキストリンとの混合割合は任意に決定できるが、目的の性能を示すためには、シクロデキストリンは含フッ素化合物の2〜100倍重量が好ましく、含フッ素化合物の5〜50倍重量がより好ましい。
混合は、通常5℃から溶媒の沸点未満の該沸点付近までの温度、好ましくは常温、常圧で行われる。
ナノ分散液から溶媒を除去するには、例えば溶媒を留去したり、蒸発させるなどすればよい。
本発明のナノ分散液は、ナノコンポジットの製造法において、溶媒を除去する最終工程の前の段階までで止めることによって得られ、また、またはナノコンポジットを溶媒に分散させることによっても調製される。
【0017】
ナノ分散液は、各種基材表面に塗布し、乾燥させて、該表面に被膜を形成させることができ、また、塗料や樹脂へ添加することで、その乾燥表面にナノコンポジットが配向した被膜を形成させることができ、この被膜は消臭効果や抗菌性を示す。また、ドデカン等の有機系媒体に対する接触角が大きく、撥油性を示し、また、コンポジット化させる対象を選択することで水に対する接触角をコントロールでき、撥水性または親水性を示す。これらの性能から、ナノ分散液は、消臭・抗菌剤や防汚剤、コーティング剤、添加剤等として利用しうる。
【実施例】
【0018】
次に実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの例により何ら限定されるものではない。
【0019】
(実施例1〜4)
含フッ素系化合物[上記式(II)において、Rf=CF(CF)OC、n=2である化合物]100mgおよび以下の表1に示す種類および配合量の各種のシクロデキストリンをメタノール5mlに添加し、そこに1N塩酸(実施例3)または28wt%アンモニア水溶液(他の実施例)5mlを添加した。その混合溶液を室温にて5時間攪拌し、ナノコンポジットの分散液を得た。また、ダイナミック光散乱光度計(大塚電子株式会社製「DLS−7000H」)を用いてナノコンポジットの平均粒径を測定した。
【0020】
(比較例1〜3)
以下の表1に示す種類および配合量の各種のシクロデキストリンをメタノール5mlに添加し、そこに1N塩酸(比較例2)または28wt%アンモニア水溶液(他の比較例)5mlを添加した。その混合溶液を室温にて5時間攪拌し、分散液を得た。
【0021】
【表1】
【0022】
(消臭性)
上記各分散液を、アルミ基材(ナイロン樹脂コーティング済)に付着処理し乾燥させて得たサンプルについて、消臭効果を評価した。また別途、付着処理後、1分ほど流水で水洗し、乾燥させて得たサンプルについても同様に消臭効果を評価した。
評価方法は、容器中に揮散させたアンモニアをガス検知管にて測定し、その濃度についてブランクと比較しての消臭率を求めることによった。
【0023】
(接触角)
上記各分散液をガラスにディップ処理し、乾燥した後、その表面の水およびドデカンに対する接触角を協和界面科学社製のDM700型全自動接触角計にて測定した。
【0024】
これらの評価、測定の結果を以下の表2に示す。
【0025】
【表2】
【0026】
これより、比較例の分散液を用いて得たサンプルでは水洗処理を経るもので消臭率が大幅に減少しているにもかかわらず、実施例の分散液を用いて得たサンプルでは水洗処理を経るものでも消臭効果が維持されている。つまり、分散液の基材への付着性が比較例のそれに比べ高いことが分かる。また、実施例の分散液を用いて得たサンプルでは、比較例の相応するそれよりも、その表面の水およびドデカンに対する接触角が非常に高いことから、実施例の分散液は撥水・撥油剤としても利用できることが分かる。
【0027】
実施例4の分散液から溶媒を留去して得られるコンポジットについて、そのSEM写真を図1(右側は左側の一部を拡大して示したものである。)に示す。これより、該コンポジットは中空構造を呈することが分かる。この中空構造は、シクロデキストリンの環状構造に由来すると考えられる。この中空構造がホスト場となり、様々な悪臭源をゲストとして取り込むことで消臭効果が発揮され、この中空には悪臭源以外にも様々な物質を取り込むことができる。
【0028】
(実施例5)
含フッ素系化合物[上記式(II)において、Rf=CF(CF)OC、n=2である化合物]100mgおよびγ−シクロデキストリン100mg、イオン液体[上記式(III)において、R=C、R=CHである四級ホスホニウム塩]0.9mlをメタノール15mlと水5mlの混合溶媒に添加し、そこに28wt%アンモニア水溶液5mlを添加した。その混合溶液を室温にて2時間攪拌し、ナノコンポジットの分散液を得た。
【0029】
(比較例4)
γ−シクロデキストリン100mg、上記実施例5と同じイオン液体0.9mlをメタノール15mlと水5mlの混合溶媒に添加し、そこに28wt%アンモニア水溶液5mlを添加した。その混合溶液を室温にて2時間攪拌し、分散液を得た。
【0030】
(抗菌性)
上記各分散液を、アルミ基材(ナイロン樹脂コーティング済)に付着処理し乾燥させて得たサンプルについて、抗菌効果を評価した。また別途、付着処理後、1分ほど流水で水洗し、乾燥させて得たサンプルについても同様に抗菌効果を評価した。
評価方法は、各サンプルを枯草菌を接種した普通寒天培地とともに容器内に封入し、30℃で2日間放置した後、開封して菌の繁殖状態を目視で評価し、阻止円が観測された場合を○とし、観測されない場合を×とすることによった。
【0031】
(接触角)
上記各分散液をガラスにディップ処理し乾燥させて得たサンプルについて、その表面の水およびドデカンに対する接触角を協和界面科学社製のDM700型全自動接触角計を用い測定した。
【0032】
これらの評価、測定の結果を以下の表3に示す。
【0033】
【表3】
【0034】
これより、実施例の分散液を用いて得たサンプルでは水洗処理を経るものでも阻止円が観測されたことより抗菌効果が維持されている。つまり、分散液の基材への付着性が比較例のそれに比べ高いことが分かる。また、実施例の分散液を用いて得たサンプルでは、比較例の相応するそれよりも、その表面のドデカンに対する接触角が非常に高いにもかかわらず、水に対する接触角も高いことから、親水性を示すことが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
以上のように、本発明の分散液は、各種基材表面、例えばプラスチックや金属、繊維などに消臭・抗菌効果を付与することができる上に、水への接触角が低く、親水性を示すことから、例えば、エアコン内部のフィンに処理することにより、親水性を有しながら、持続効果の高い消臭・抗菌剤として応用しうるし、また、塗料や樹脂へ添加することで、その乾燥表面にナノコンポジットを配向させることができるため、乾燥後の塗膜や樹脂表面に消臭・抗菌効果を付与することができ、機能性添加剤等として利用しうる。
図1