【実施例1】
【0027】
本発明の実施例1に係る穀粒物洗滌機100について説明する。
この実施例1では乾式の穀粒物洗滌機の構成例である。洗滌する穀粒物は水よりも比重の軽い浮水性穀粒物とする。
図1は本発明の穀粒物洗滌機100の構成を模式的に示した図である。
図2は加圧噴水部120により打ち出した気泡水流が加圧送水管124の入り口に打ち込まれる様子を示す図である。
図3は貯留槽110の中に実際に浮水性穀粒物を投入し、気泡水流が周囲の浮水性穀粒物を巻き込みつつ打ち込まれる様子を示す図である。
【0028】
図1に示すように、実施例1にかかる穀粒物洗滌機100は、貯留槽110、加圧噴水部120、混合水回転装置130、篩分け排水部160、排水管170を備えている。
【0029】
貯留槽110は、穀粒物を貯留しておくタンクである。本実施例1では乾式タイプの穀粒物洗滌機100の例であるため、貯留槽110は、乾式貯留槽として水を張らずに浮水性穀粒物のみを投入してスタックしておく。貯留槽110の筐体の形は特に限定されないが、この構成例では下方に行くほど絞られた流線型をしている。このように下方に行くほど絞られた流線型をしている場合、内部に投入された穀物は貯留槽110内で重力により下方に移動し、底部の中心に向かって移動してゆくこととなる。
図1などに示すように、底部の中心付近には気泡水流ノズル123が設けられている。
【0030】
加圧噴水部120は、この構成例では、水道設備121、水バルブ122、気泡水流ノズル123、加圧送水管124、隙間125、噴き出し口126を備えた構成となっており、気泡水流ノズル123と加圧送水管124との間に設けられている隙間125から入り込む貯留槽110内に貯留された浮水性穀粒物を巻き込みつつ、気泡水流と浮水性穀粒物との混合水流を噴き上げるものである。
この構成例では水道設備の水圧を利用することにより電気などの動力源を用いることなく水圧をかけた気泡水を生成する構成となっている。また、加圧送水管124から上に噴き上げられた混合水流は、その後、重力で落下するため、本発明の穀洗機は水道設備以外の電気などの動力源を用いることなく浮水性穀粒物の洗滌が可能となっている。
【0031】
水道設備
121は、一般の水道設備でも良く、工業用の水道設備であっても良い。例えば、水圧がかけられて水が供給される水道蛇口などである。
【0032】
水バルブ
122は加圧された水流に対する開閉弁であり、例えば、水道やポンプなど加圧された水源に導通しており、コックの開閉により水流の流入・遮蔽をコントロールするものである。構造や形状などは特に限定されない。
【0033】
気泡水流ノズル123は、水道設備
121から供給される水を勢い良く放水するノズルであるが、外気を引き込む仕組みを持ち、放水する水流に対して空気が混ざるように構成されたノズルである。つまり、気泡水流ノズル123から発射される水流は気泡が多数混ざった混気状態で水圧のかかった気泡水となって吹き出す。
この構成例では気泡水流ノズル123の出射口が貯留槽110の底部にある加圧送水管124の入り口に向けて設けられており、気泡水流ノズル123から出射された水圧気泡水流が勢いよく加圧送水管124内に打ち込まれ、加圧送水管124を上昇してゆく仕組みとなっている。
【0034】
ここで、
図1および
図2に示すように、気泡水流ノズル123の出射口と加圧送水管124の入り口との間に隙間125が設けられている。この隙間125が設けられているため、気泡水流ノズル123の出射口と加圧送水管124の入り口との間が、貯留槽110の内部で開放された状態となり、気泡水流ノズル123と加圧送水管124の間に側方から浮水性穀粒物1が入り込む余地が生じることとなる。
いま、貯留槽110内に浮水性穀粒物1が投入されてスタックされている場合、重量により浮水性穀粒物1は底部に集まってくる。そのため、隙間125に対して浮水性穀粒物1が入り込むこととなる。
【0035】
ここで、
図3に示すように、水圧気泡水流が気泡水流ノズル123から加圧送水管124の入り口に向けて打ち込まれると、貯留槽110内の底部において、水圧気泡水流が付近の浮水性穀粒物を巻き込みつつ上昇することとなる。なお、貯留槽110内には水が張られていないため、スタックされている浮水性穀粒物はそのまま重力で底部付近に集まり、次々と、水圧気泡水流により巻き込まれて上昇してゆく。ここで、加圧送水管124の入り口付近は、水圧気泡水流の上昇に伴って気圧が下がるため、浮水性穀粒物は次々と加圧送水管124の入り口付近に吸い寄せられ、かつ、水圧気泡水流に巻き込まれて加圧送水管124の中に打ち込まれてゆく。
【0036】
もし、従来技術の穀洗機を用いてタンクなどに貯水された水に対して単に上から投入するだけでは、胡麻や粟のように水より比重が軽い浮水性穀粒物は浮いて漂ってしまい、浮水性穀粒物の8〜9割が後段の工程で洗滌されることなく、排水とともに流出してしまい、歩留まりが悪いものとなる。
一方、本発明の穀粒物洗滌機100では、水と十分に触れ合いにくい浮水性穀粒物であっても、気泡水の水流の渦中の内部側へ直接に供給することができるという優れた効果が得られる。そのため、本発明の穀粒物洗滌機によれば、洗滌工程で浮水性穀粒物と水が触れ合う時間が短くすることができ、浮水性穀粒物の水分吸収を小さく抑えることができる。また、浮水性穀粒物を少量ずつ次々と投入して連続処理し、順々に取り出すといういわゆる「先入れ先出し」処理が確保できるため、浮水性穀粒物が洗滌工程の中で水と触れ合う時間にバラツキがなく、水分吸収率にバラツキがなく、品質を均一に保つことができる。
【0037】
次に、加圧送水管124は、気泡水流ノズル123から打ち込まれた水圧気泡水流と、貯留槽120内から巻き込まれて打ち込まれる浮水性穀粒物とを受け取り、上方へ噴き上げられる混合水流が通る管である。この構成例では、貯留槽110の底部付近から混合水回転装置130を貫通してその上部付近まで導通した管となっている。なお、後述するように、混合水回転装置130内部に開口135が設けられており、加圧送水管124と混合水回転装置130との間の隙間から、水圧気泡水によって洗滌された浮水性穀粒物と残水が落ちてゆく構造となっている。
【0038】
図2に示すように、加圧送水管124の入口は、貯留槽110の底部付近に設けられ、気泡水流ノズル123の出射口に対向するように設けられており、気泡水流ノズル123の出射口から水流が打ち込まれる。加圧送水管124の出口である噴き上げ口126は、
図1に示すように、混合水回転装置130の上部の開口に接続されており、加圧送水管124の噴き上げ口126から噴水のように溢れ出した水流が外周方向に向けて流れ、混合水回転装置130の回転支援体131の上部からその壁面を沿うように落ちることとなる。
【0039】
ここで、水圧気泡水による浮水性穀粒物の表面の洗滌効果について述べる。
本発明の穀洗機100では、加圧噴水部120によって貯留槽110の中にスタックされている浮水性穀粒物を少量ずつ水圧気泡水に巻き込んで供給し、加圧送水管124内の上昇過程と後述する混合水回転装置での回転混合の過程において、浮水性穀粒物を水圧気泡水で洗滌する洗滌工程が行われるが、その洗滌工程の中で、撹拌状態の水圧気泡水中の気泡が破裂して発生した衝撃波により浮水性穀粒物の表面に付着している細菌や汚れを弾き飛ばして除去するという優れた効果が得られる。
【0040】
図4は、水圧気泡水中で胡麻などの浮水性穀粒物を撹拌し、水圧気泡水中の気泡が破裂して発生した衝撃波により浮水性穀粒物の表面に付着している細菌や汚れを弾き飛ばす原理を説明する図である。
図4(a)に示すように、水圧気泡水中には微細な気泡が多数あり、胡麻などの浮水性穀粒物の表面近くにも気泡が存在する。気泡は撹拌されるうちに次第に破裂してゆくが、
図4(b)に示すように、気泡が破裂するとその周囲には衝撃波が生じることとなる。生じる衝撃波は小さいものであるが、浮水性穀粒物の表面近くで破裂した場合、当該衝撃波が到達する。衝撃波は浮水性穀粒物の細かい表面の凹凸中にも到達するので、浮水性穀粒物の細かい表面の凹凸中に存する細菌を弾き飛ばすことができ、単なる水による洗滌では除去仕切れない細菌を効率良く除去することができる。
【0041】
次に、混合水回転装置130の構成部品の説明をする。
混合水回転装置130は、気泡水と浮水性穀粒物の撹拌状態の時間を長くとり、気泡水破裂の衝撃波による浮水性穀粒物表面の洗滌時間を確保する部分である。
図5は、混合水回転装置130内部の構造例を示した図である。
図5に示すように、混合水回転装置130は、回転支援体131、羽根板132、周回容器133を備えている。また、内部のキャビティ138内には異物捕捉体150が収められている。
【0042】
回転支援体131は、加圧送水管124から噴き出た気泡水流を受け、周回方向の回転力を与える部分である。
図6は回転支援体131を取り出して示した図である。この構成例では傘状をしており、傘の中心に開口がありこの開口に加圧送水管124の出口が接続されている。加圧送水管124の出口から上方へ吹き上げられた浮水性穀粒物を包含する水流は、噴水のように溢れ出しつつ重力により外周下方向へ落ちてゆき、回転支援体131の外周壁上部に導かれるようになっている。なお、回転支援体131を覆うように蓋体139を被せておけば、回転支援体131の羽根板132等にぶつかって弾ける水滴が蓋体139の内壁で受け止められ飛び散らなくて済む。
【0043】
図6に示すように、この構成例では回転支援体131壁面に羽根板132が設けられている。羽根板132は、回転支援体131壁面を流れ落ちる気泡水に周回方向の回転力を与えるものである。この例ではいわゆるプロペラ状に板面が設けられており、このプロペラにより気泡水流には導水壁面の周回方向に回転力が与えられ、渦を巻くようにキャビティ138内の異物捕捉体150まで落ちて行く。
【0044】
図7は、回転支援体131の壁面を流れる気泡水流が羽根板132により回転力が与えられ、回転渦流となる様子を示す図である。
図7(a)は導水壁面を流れる気泡水流が羽根板132により回転力が与えられる様子を模式的に示す斜視図である。
図7(b)は平面から示した平面図である。加圧送水管124の出口126から上方へ溢れ出した水はそのまま重力で下に落ち、回転支援体131の壁面に沿って勢いよく流れ落ちるが、その過程で羽根板132により方向が曲げられ、羽根板132の導く方向に回りながら流れ、回転流となる。回転流となった気泡水流は、キャビティ138内の異物捕捉体150上に到達しても回転モーメントを持っているので、キャビティ138内の異物捕捉体150上を周回方向に回転する渦流として暫く滞留することとなる。
図7(c)および
図7(d)は回転支援体131を図示せずに周回容器133のキャビティ138における水流を模式的に示した図である。
図7(c)および
図7(d)に示すようにキャビティ138からオーバーフローした水流が内周壁137を超えて開口135から下方へ落ちて行くが、本発明では回転支援体131を流れ落ちて行く間に羽根板132により回転力が与えられるので、
図7(c)および
図7(d)に示すようにキャビティ138内の異物捕捉体150上を周回方向に回転する渦流として暫く滞留することとなる。
【0045】
ここで、穀粒物と異物には比重差があるため渦流の中に長く滞留し、移動距離が長くなれば穀粒物と異物との分離性能が向上する。つまり、回転支援体131の羽根板132の働きによって、浮水性穀粒物と異物を包含した気泡水流のキャビティ138内での滞留時間が長く、かつ、異物捕捉体150上を転がって移動する距離が長くなるように設計してことにより、穀粒物と異物との比重差に起因する動きの違いが鮮明となり、異物のみが下方に沈んで異物捕捉体150に捉えられやすくなる。
【0046】
次に、回転支援体131以外の混合水回転装置130の各構成例を述べておく。
周回容器133は、回転支援体131から周回方向に回転する気泡水流を受け、周回路を周回させつつ一時的に滞留させる容器である。なお、流出路に到達した気泡水流は下方に流し出される。
図8は、周回容器133の一構成例を示した図である。
図8に示した構成例では、中心に開口135を有する底板134と、底板134の外周縁に立設させた外周壁136と、底板134の開口135の縁に立設させた内周壁137と、底板134と外周壁136と内周壁137とで囲まれたキャビティ138を備えた構造となっている。後述するようにキャビティ138内を浮水性穀粒物と水の気泡水流が周回する。
【0047】
ここで、外周壁136に対して内周壁137の高さが低くなっており、回転支援体131をつたわってキャビティ138内に流入しつづける水流によりキャビティ138の容積を超えてオーバーフローした水は内周壁137を超えて開口135より下方へ落ちて行く構造となっている。なお、この構成例では開口135の内側に後述する加圧送水管124を受け入れる輪と、内周壁137との間を橋渡しして構造強度を持たせる橋梁部と、輪と内周壁との開口135を備えた構造となっている。
【0048】
異物捕捉体150は、周回容器133のキャビティ138内の底板134の上面に設けられた構造物である。
図9は異物捕捉体150の一構成例を示す図である。
図9に示した構成例では中心に開口
151を持つドーナツ状の輪郭を持つ網状体152と、網状体152の上に立設した同心円状の壁面と放射状の壁面からなる枠体153を備えた構造となっている。
【0049】
図10は、
図8に示した周回容器133と
図9に示した異物捕捉体150を組み合わせる様子を示す図である。この例では、周回容器133のキャビティ138内の底板134の上面に異物捕捉体150を被せることにより簡単に設置できる構造例となっている。
また、
図11は、周回容器133と異物捕捉体150を組み合わせた状態において、回転支援体131を取り付けた様子を示す図である。
さらに、
図12は、周回容器133、異物捕捉体150、回転支援体131に対して加圧送水管124を組み合わせた様子を示す図である。
このように、
図10から
図12の手順により混合水回転装置130を組み上げる。
【0050】
図13は、周回容器133のキャビティ138に対して上方から浮水性穀粒物を包含した水が流れ込むことによりオーバーフローし、内周壁137を超えて開口135から下方へ落ちて行く様子を周回容器133と異物捕捉体150の断面において模式的に示す図である。
図13(a)は周回容器133のキャビティ138内の水流の流れを模式的に示した図、
図13(b)は浮水性穀粒物と異物が異物捕捉体150の上を転がったり滑ったりしながら移動する様子を模式的に示した図である。
【0051】
なお、回転支援体131の壁面は傾斜がついており、その外周縁は、キャビティ138における外周壁面136近くにあるので、
図13(a)に示すようにキャビティ138に対して上方から流れ込んだ水流は、後述するように異物捕捉体150の網状体152や枠体153の外周側に受けられたのち、網状体152や枠体153の外周側から内周側に移動しつつ最後に内周壁137を超えて開口135に落ちて行く。
ここで、
図13(b)に示すように、水より比重が軽い浮水性穀粒物は水に浮くため、水面付近を浮いて移動するが、水より比重の重い異物は水に沈むため、周回容器133の底面を転がるように移動することとなる。
【0052】
次に、異物除去の原理について説明しておく。
図13(b)に示したように、周回容器133内で水圧気泡水と浮水性穀粒物との混合水が周回する状態では、水流にのった浮水性穀粒物は水面に浮く一方、異物は主に水よりも比重が大きいものが多く、周回容器133の中に沈む。そのため、周回容器133内を循環する間に浮水性穀粒物と異物が分離される。
上記のように、周回容器133の容積を越えた水は、オーバーフローして内周壁137を超えて開口135から下方へ落下してゆくが、周回容器133の底部に沈んでいる異物がオーバーフローする水の流れに乗って内周壁137を超えて開口135から下流側に流れて行かないように、周回容器133の底部において異物を捕捉する異物捕捉体150を付加する。
【0053】
周回容器133の中で、異物の比重は水の比重よりも大きいので水流にのりにくく、周回容器133の底面に配設した異物捕捉体150の網状体152や枠体153の表面を転がったり滑ったりしながら移動する。ここで、枠体153を構成する壁面同士の間隙154は、異物が嵌り得る大きさと幅を持ち、枠体153を構成する壁面の高さは異物よりも高いものであれば、異物が枠体153の間隙に嵌って捕捉され、異物が周回容器133から抜け出て下流側に流出することを防ぐことができる。
【0054】
また、浮水性穀粒物は外形が滑らかで固い曲面となっており網状体152および枠体153に対する摩擦力が小さく、突起などがないため当接して引っ掛かりによる抗力が生じることもないが、小石などの異物は外形がごつごつした突起や疎面となっており枠体153の構造に当接して引っ掛かって強い抗力を受け水流では動かなくなる場合が多い。このように、浮水性穀粒物と異物との表面状態や形状の違いにより異物捕捉体150に対する摩擦力の違いや引っ掛かりの有無が生じる。
つまり、異物は網状体152や枠体153との摩擦が大きいため、枠体153の間隙154から抜け出ることなく捕捉されやすい。このように、浮水性穀粒物は周回容器133から下流側に流れ出て行くが、異物は異物捕捉体150で捕捉されやすく、両者が分離される。
【0055】
次に、本発明の穀洗機100の工夫として、洗滌水を非循環とすることにより、細菌や汚れの汚染濃度を増加させない工夫について説明する。
本発明の穀洗機100は、篩分け排水部160および排水管170を工夫することにより、洗滌水を非循環として細菌や汚れの汚染濃度を増加させないようにしている。
【0056】
図14は篩分け排水部160の構成例を示す図である。
図14に示すように、篩分け排水部160は、折り返し部161、篩体162、穀粒物取り出し路163、水路164を備えた構成となっている。篩分け排水部160は、混合水回転装置130より流れ出した気泡水流から浮水性穀粒物のみを篩分けて取り出し、残水を排水管170から貯留槽110の外に排水するものである。このように篩分け排水部160および排水管170により残水を乾式貯留槽110の外部に取り出して排水するという「非循環型洗滌」となっている。
【0057】
折り返し部161は、混合水回転装置130から流れ出た気泡水を受け、篩体162に向けて流れを変える部分である。
篩体162は、混合水回転装置130より流れ出した気泡水流から浮水性穀粒物のみを篩分ける部分である。例えば、金網など気泡水のうち浮水性穀粒物は通過せず、残水のみが通過する開口が設けられている篩などであれば良い。ここで、残水には細菌や汚れが混入している。
【0058】
穀粒物取り出し路163は、篩体162に隣接して設けられ、篩体162で篩分けられてそのままスライド移動してきた浮水性穀粒物を受け取り、次段に流す通路である。この構成例ではそのまま洗滌終了して浮水性穀粒物を取り出す構成となっている。
【0059】
水路164は、篩体162の下方に設けられ、篩体162を通過して落下してきた残水を受け取り、排水管170に流す通路である。
図14(b)に示すように、浮水性穀粒物と水が混合した状態の混合水を折り返し部161(図示せず)から受け、篩体162により浮水性穀粒物と残水に篩分け、綺麗に洗滌された浮水性穀粒物は穀粒物取り出し路163から流し出し、細菌や汚れなどが混入した汚れた残水は水路164から排水管170に流し出す。
【0060】
排水管170は、上部排水路171と下部排水路172を備え、篩体162で下方に落ちてきた残水を貯留槽内110側から貯留槽外側110に貯留槽110の壁面を貫通させて排水するものとなっている。
下部排水路172は貯留槽110の壁面を貫通する形で、貯留槽110の内側から貯留槽110の外部に導かれており、排水にかかわる構造物もすべて貯留槽110の設置面積内に抑えつつ、細菌や汚れで汚染された残水は貯留槽110内に循環させることなく、そのまま穀粒物洗滌機100の外部へ排出する仕組みとなっている。
【0061】
次に、穀粒物洗滌機100の全体の動作を水流の流れに沿って説明する。
図15は、穀粒物洗滌機100全体の水流の流れを模式的に示した図である。
水バルブ
122を開放して受け入れた水流は気泡水流ノズル123を介して加圧送水管124の入り口内に打ち込まれる。この際に乾式貯留槽110内の周囲の浮水性穀粒物が巻き込まれつつ打ち込まれ、浮水性穀粒物は気泡水流にのって加圧送水管124を上昇し、混合水回転装置130の上部まで上昇する。加圧送水管124の出口126から溢れ出た水流は回転支援体131の壁面に沿って流れ落ちて行く。その際に羽根板132により周回方向の回転力が付けられ、周回容器133のキャビティ138内で周回方向に回転する渦流が形成される。加圧送水管124および気泡水回転支援装置130内において気泡が破裂することによる衝撃波で浮水性穀粒物表面の細菌や汚れが弾き飛ばされる。キャビティ138内には異物捕捉体150があり、浮水性穀粒物は捕捉されず異物のみが捕捉される。気泡水はしばらく周回容器133内を周回した後、オーバーフローして内周壁137を超えて開口135から周回容器133の下方へ落ちて行く。下方は篩分け排水部160につながっており、気泡水は折り返し部161により流路が変えられ、篩体162の上を通過する。浮水性穀粒物は篩体162を通過できずそのままスライド移動して穀粒物取り出し路163へ流し出され、残水は篩体162を通過して落下し、下方にある水路164に受け取られて排水管170に向けて流し出される。排水管170は乾式貯留槽110の外部に導かれ、残水は非循環方式にて穀粒物洗滌機100の外部へ排水される。
【0062】
従来の穀洗機では、残水を乾式貯留槽110に戻して循環させて繰り返し洗滌するため、洗滌水が汚染されやすく、洗滌効果が充分得られない場合があった。
しかし、本発明の穀粒物洗滌機100では、残水を乾式貯留槽110に戻すことなく排水管170より装置外部に排水することにより洗滌水に細菌や汚れが蓄積することを防止している。
【0063】
また、本発明の穀粒物洗滌機100では、水と十分に触れ合いにくい浮水性穀粒物であっても、乾式貯留槽の底部に隙間を設けて気泡水流ノズルから洗滌水とともに一気に噴き上げ、気泡水の水流の渦中の内部側へ直接に供給することができるため、洗滌工程で浮水性穀粒物と水が触れ合う時間が短くすることができ、浮水性穀粒物の水分吸収を小さく抑えることができる。また、浮水性穀粒物を少量ずつ次々と投入して連続処理し、順々に取り出すといういわゆる「先入れ先出し」処理が確保できるため、浮水性穀粒物が洗滌工程の中で水と触れ合う時間にバラツキがなく、水分吸収率にバラツキがなく、品質を均一に保つことができる。
【0064】
次に、穀粒物の取り出しについて述べる。
図1に示した構成例では、穀粒物取り出し路163はそのまま貯留槽110の上面を横方向に横切って排出される仕組みとなっているが、篩分け排水部160において、貯留槽110の内側から貯留槽110の外側に貯留槽110の壁面を貫通させて取り出す穀粒物排出管173および174を設ける工夫も可能である。
図16は、穀粒物導出路165および穀粒物排出管173、174を設けた構成例を示す図である。
図16に示すように、穀粒物取り出し路163において、残水を下方に導く水路164の先に、穀粒物を下方に導く穀粒物導出路165を設けた構成とし、穀粒物導出路165は穀粒物が通過できる大きさを持った開口または穀粒物が通過できる枠を持った網状態(図示せず)が設けられており、穀粒物導出路165まで流れてきた穀粒物が下方に導かれる仕組みとなっている。穀粒物導出路165は穀粒物排出管に接続されている。穀粒物排出管は、上部穀粒物排出管173と下部穀粒物排出管174を備え、貯留槽110の内側から貯留槽110の外側に貯留槽110の壁面を貫通するように設けられている。
【0065】
篩体162により篩分けた穀粒物を、穀粒物導出路165を経て下方に落とし、上部穀粒物排出管173と下部穀粒物排出管174を介して貯留槽110の内側から貯留槽110の外側に貯留槽110の壁面を貫通させて穀粒物を取り出す。
下部穀粒物排出管174は貯留槽110の壁面を貫通する形で、貯留槽110の内側から貯留槽110の外部に導かれており、穀粒物の取り出しにかかわる構造物もすべて貯留槽110の設置面積内に抑えつつ、貯留槽110の外に取り出すことができる仕組みとなっている。
【0066】
以上、実施例1にかかる本発明の穀粒物洗滌機100によれば、装置の設置面積を貯留槽の設置面積に抑えた構成でありながら、加圧噴水部と、混合水回転装置と、篩分け排水部を貯留槽の上部に設けることにより装置設置面積を貯留槽の設置面積に抑えるとともに、残水を貯留槽内側から貯留槽外側に貯留槽の壁面を貫通させて排水する排水管を備えることにより、貯留槽の設置面積内に抑えつつ、残水を貯留槽に還流させることがない。また、穀粒物についても貯留槽内側から貯留槽外側に貯留槽の壁面を貫通させて取り出す穀粒物排出管を備えることにより、貯留槽の設置面積内に抑えつつ、穀粒物を貯留槽の外に取り出すことができる。
このような設置面積の小さな装置において、穀粒物を少量ずつ次々と投入して連続処理し、順々に取り出すといういわゆる「先入れ先出し」処理を行って穀粒物の洗滌を連続処理とすることができる。
また、回転支援体131の羽根板132の働きによって、浮水性穀粒物と異物を包含した気泡水流のキャビティ138内での滞留時間を長く、かつ、移動距離を長く確保することにより、穀粒物と異物との比重差に起因する動きの違いを利用して異物除去率を向上せしめることができる。
また、混合水流は気泡水であり、気泡が破裂する際の衝撃波を利用して浮水性穀粒物表面の凹凸に入り込んだ細菌や汚れであっても弾き飛ばして洗滌することができ、また、水と浮水性穀粒物を篩分けて、残水を循環させることなく装置外に排水することにより細菌や汚れの蓄積を防止して汚染濃度が向上してしまうことがない。