(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655208
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】焼付き防止ボルト
(51)【国際特許分類】
F16B 35/00 20060101AFI20141225BHJP
【FI】
F16B35/00 T
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-513806(P2011-513806)
(86)(22)【出願日】2009年9月30日
(65)【公表番号】特表2012-504731(P2012-504731A)
(43)【公表日】2012年2月23日
(86)【国際出願番号】JP2009005022
(87)【国際公開番号】WO2010038446
(87)【国際公開日】20100408
【審査請求日】2012年8月23日
【審判番号】不服2014-1497(P2014-1497/J1)
【審判請求日】2014年1月28日
(31)【優先権主張番号】特願2008-256976(P2008-256976)
(32)【優先日】2008年10月2日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】390038069
【氏名又は名称】株式会社青山製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100085523
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 文夫
(74)【代理人】
【識別番号】100078101
【弁理士】
【氏名又は名称】綿貫 達雄
(74)【代理人】
【識別番号】100154461
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 由布
(72)【発明者】
【氏名】小長谷 聡
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 禎辰
【合議体】
【審判長】
冨岡 和人
【審判官】
島田 信一
【審判官】
小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】
実開平2−38509(JP,U)
【文献】
特開2001−82430(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16B35/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
呼び径D、内径D1のめねじに螺合されるボルトであって、
ボルト軸部に形成された正規ねじ部の先端に、外径寸法dがめねじの内径D1よりも大きく、かつ(D+D1)/2よりも小さく、しかも谷径が正規ねじ部の谷径よりも小さく、ねじ山形状が三角ねじまたは台形ねじである小径ねじ部を、1ピッチ以上にわたり形成したことを特徴とする焼付き防止ボルト。
【請求項2】
小径ねじ部の外径寸法dを、ボルト有効径よりも大きくしたことを特徴とする請求項1記載の焼付き防止ボルト。
【請求項3】
小径ねじ部を、1〜3ピッチにわたり形成したことを特徴とする請求項1記載の焼付き防止ボルト。
【請求項4】
小径ねじ部の先端に、めねじの内径D1よりも細径のパイロット部をさらに形成したことを特徴とする請求項1記載の焼付き防止ボルト。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、めねじに対して斜め方向にねじ込まれた場合にも焼付きが発生しにくい焼付き防止ボルトに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ボルトをナットその他のめねじに螺合させる際には、ボルトの軸心をめねじの軸心に正確に一致させながらボルトを挿入することが望まれる。しかし実際の組立てライン等においては、軸心が多少傾いた状態のまま動力ドライバ等の工具によってボルトが挿入されることがある。その場合には、ボルトおねじ部のねじ山がめねじの本来係合すべき谷部から1ピッチずれた谷部に嵌り込み、そのまま無理にねじ込むと焼付きが発生し、その後はボルトを容易に分離できない重大なトラブルに至ることがある。
【0003】
そこで従来から、めねじに対して多少斜めに挿入された場合にも焼付きが発生しないように工夫されたボルトが種々提案されている。その代表的なものは本出願人の特許文献1に示されるように、正規ねじ部の先端にパイロット部(棒先部、ガイド部とも呼ばれる)を形成し、ボルトが斜め方向に挿入された場合にはこのパイロット部の先端部外周をめねじと接触させることによって、ボルトの姿勢を矯正するようにしたものである。また特許文献2及び特許文献3に示されるように、パイロット部にも各種のねじ山を形成し、姿勢矯正効果を高めた焼付き防止ボルトも提案されている。
【0004】
ところが、パイロット部は当然ながらボルトの正規ねじ部よりも細径であるから、正規ねじ部とパイロット部との間に小径ねじ部が形成されることが避けられず、この小径ねじ部において焼付きが発生することがある。またパイロット部は長くしてもボルトの傾きを軽減するだけで、焼付き防止には特別の効果がない。このため、パイロット部をあまり長くすることはコスト面でも資源面でも得策ではない。
【特許文献1】特開平10−141343号公報
【特許文献2】特許第3336257号公報
【特許文献3】国際公開公報WO2006/134626
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は上記した従来の問題点を解決し、パイロット部による姿勢矯正効果を必要とすることなく、焼付きの発生を防止することができる新規な焼付き防止ボルトを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は上記の課題を解決するために検討を重ねた結果、意識的に小径ねじ部を形成し、その外径寸法を適切に設定すれば、従来の常識に反して焼付き防止効果が得られることを究明した。
【0007】
本発明は上記の知見に基づいて完成されたものであり、呼び径D、内径D
1のめねじに螺合されるボルトであって、ボルト軸部に形成された正規ねじ部の先端に、外径寸法dがめねじの内径D
1よりも大きく、かつ(D+D
1)/2よりも小さ
く、しかも谷径が正規ねじ部の谷径よりも小さく、ねじ山形状が三角ねじまたは台形ねじである小径ねじ部を、1ピッチ以上にわたり形成したことを特徴とするものである。
【0008】
なお請求項2に記載のように、小径ねじ部の外径寸法dをボルト有効径よりも大きくすることが好ましい。また請求項3に記載のように、小径ねじ部を、1〜3ピッチにわたり形成することが好ましい。さらに請求項4に記載のように、小径ねじ部の先端に、めねじの内径D
1よりも細径のパイロット部をさらに形成しても差し支えない。
【発明の効果】
【0009】
本発明のボルトは、正規ねじ部の先端にねじ山形状が三角ねじまたは台形ねじである小径ねじ部を1ピッチ以上にわたり形成したものであるが、この小径ねじ部の外径寸法dをめねじの内径D
1よりも大きく(D+D
1)/2よりも小さ
く、しかも小径ねじ部の谷径を正規ねじ部の谷径よりも小さく設定した。このため本発明のボルトはめねじに対して多少斜め方向に挿入された場合にも、この小径ねじ部のねじ山がめねじのねじ山と無理にかみ合うことがなく、焼付くことがない。この点については後に詳しく説明する。また小径ねじ部は1ピッチ以上にわたって形成されているので、めねじの切り上がりに対してボルトがどの方向に傾いても焼付くことがない。なお本発明のボルトは本来パイロット部を必要としないものであるが、請求項4のように小径ねじ部の先端にパイロット部をさらに形成しても差し支えない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下に本発明を実施形態とともに更に詳細に説明する。
図1は本発明の要部の説明図であり、10はボルト、20はめねじが形成されたナットである。本発明のボルト10はめねじ20に螺合するためのものであるが、めねじ20は必ずしもナットに限定されるものではなく、部材に形成されたタップ孔などであってもよい。
図1には示されていないが、本発明のボルト10は従来品と同様に頭部と軸部とを備え、軸部には正規ねじ部11と小径ねじ部12とが連続して形成されている。なおこの実施形態では小径ねじ部12の先端にさらにパイロット部13を設けてあるが、本発明においてはパイロット部13は必須のものではなく、省略することも可能である。
【0011】
めねじ20は、呼び径D、内径D
1のものである。呼び径Dはボルト10とめねじ20とに共通である。JIS−B0205に規定されるように、呼び径Dはおねじ外径と同じであり、ここでは正規ねじ部11の外径に等しい。またJIS−B0205に規定されるように、めねじ20の内径D
1はおねじ谷径と等しく、ここでは正規ねじ部11の谷径に等しい。整理すると、ボルト10の呼び径D=めねじ20の呼び径D=正規ねじ部11の外径、めねじ20の内径D
1=正規ねじ部11の谷径である。
【0012】
上記の関係は一般的に成立するものであって本発明に特有のものではない。本発明の特徴は小径ねじ部12にあり、特に小径ねじ部12の外径寸法dを、めねじの内径D
1よりも大きく(D+D
1)/2よりも小さく設定した点にある。この小径ねじ部12は少なくとも1ピッチ以上は必要であり、1〜3ピッチとすることが好ましい。
なお、図1〜図3に示すように、小径ねじ部の谷径は正規ねじ部の谷径よりも小さい。次に小径ねじ部12の外径寸法dをこのように設定した理由及びそれによる作用効果を説明する。
【0013】
図2は本発明のボルト10がめねじ20に挿入された状態を示す図である。このときボルト10の小径ねじ部12のねじ山が、めねじ20のねじ山とA点において
深く噛み合っている。この状態においてA点から180°反対側のボルト上のB点(ねじ山頂部)までの距離は、本発明の設定によって(D+D
1)/2未満である。一方、A点から180°反対側のめねじ20上のC点までの距離ACは、
図4に示すようにめねじ20の呼び径Dから寸法Xを差し引いた値であり、X=(D−D
1)/2であるから、AC=D−X=(D+D
1)/2である。すなわち、ボルト10上のAB間の距離はめねじ20上のAC間の距離である(D+D
1)/2よりも必ず小さくなるので、ボルト上のB点はC点と干渉することなくA点を中心として回転することができる。
【0014】
このため、ボルト10は
図2の状態と
図3の状態との間で自由に角度を変えることが可能となる。また
図3の状態においても、小径ねじ部12のねじ山はめねじ20のねじ山とA点で噛み合っているのみであってその他の位置ではねじ山相互の干渉が発生しないため、焼付きが発生することがない。このように最初に噛み合ったA点を中心としてボルトが自由に回転できるようにしておけば、ドライバからボルト10に加えられる力によって発生する
図3上の時計方向の回転モーメントがボルト10を
図2のような正しい姿勢に戻し、さらにボルト10を回転させて行けばボルト10の正規ねじ部11がめねじ20と正しく螺合し、締結が完了することとなる。
【0015】
なお、小径ねじ部12の外径寸法dをめねじ20の内径D
1よりも大きくしたのは、これよりも細くすると小径ねじ部12がめねじ20と全く接触しなくなる可能性があり、従来のパイロット部と同様となるためである。本発明のように小径ねじ部12の外径寸法dをめねじ20の内径D
1よりも大きくしておけば、必ず小径ねじ部12がめねじ20と何れかの1点において接触し、その点を中心とした回転が可能となる。特にボルト10の小径ねじ部12の外径寸法dをボルト有効径よりも大きくしておくことが好ましい。これによって小径ねじ部12とめねじ20との接触をより確実に行わせることができるからである。
【0016】
また小径ねじ部12を少なくとも1ピッチ以上設けることとしたのは、何れの方向にボルト10が傾斜した場合にも、必ず小径ねじ部12がめねじ20と接触するようにするためである。しかし実際には1ピッチでは接触位置によってはその反対側が小径ねじ部12ではなくなる可能性があるから、2ピッチ以上設けることが好ましい。また小径ねじ部12は締結完了後は締結に寄与しない部分であるから必要以上に設ける意味はなく、1〜3ピッチ、より好ましくは2〜3ピッチとすることが好ましい
。以下に本発明の実施例を示す。
【実施例】
【0017】
呼び径12mm、ピッチ125mmのボルトとナットとを用い、本発明の効果を確認した。なおJISに規定されるように、この場合の呼び径D=12mm、めねじ内径D
1=10.647〜10.912mm、ボルト有効径=11188mmである。ボルトには外径が12mmの正規ねじ部の先端に、小径ねじ部を2ピッチ分形成した。本発明に規定される小径ねじ部の外径dの範囲は、10.912mm<d<1132mmとなるが、この実施例では有効径よりも大きい1120mmとした。
【0018】
このボルトをナットに対して4°、8°、12°の角度で傾けてねじ込み、焼付きの発生率を測定した。また比較のために特許文献2に記載された形状のパイロット部を備えた呼び径12mmの焼付き防止ボルトを用い、上記と同一条件でテストを行い、焼付きの発生率を測定した。
【0019】
その結果、比較用のボルトはめねじに対する傾斜角度を8°とすると1/4の確率で焼付きが発生したのに対して、本発明のボルトは傾斜角度を12°としても全く焼付きが発生せず、正常な締結が可能であった。この実施例のデータから、本発明のボルトは従来品に比較して、より大きい角度で斜め方向にねじ込まれた場合にも焼付きが発生しにくいことが確認された。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図2】本発明のボルトがめねじに挿入された状態を示す図である。
【
図3】本発明のボルトがめねじに傾いて挿入された状態を示す図である。
【符号の説明】
【0021】
10 ボルト
11 正規ねじ部
12 小径ねじ部
13 パイロット部
20 ナット