(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上記の翼部材においては、
図13及び
図14に示すように、サーペンタイン流路74を流れる冷却空気cが、翼本体70を内側から冷却する。
しかしながら、上記の翼部材においては、翼本体70の端部71(基部)と端壁72(プラットフォーム)を滑らかに繋ぐフィレット部73が形成されるのが通常である。従って、
図14に示すように、フィレット部73の周辺には、サーペンタイン流路74のリターン部75からフィレット部73の外表面までの翼壁肉厚が大きい部位が生じる。これにより、この翼壁肉厚が大きい部位で冷却空気cによる冷却が不十分になる可能性がある。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、フィレット部の冷却を十分に行うことを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る翼部材は、翼本体と、前記翼本体の翼幅方向における端部に設けられ、前記翼幅方向に交差するように延びる端壁と、前記翼本体の端部と前記端壁とを滑らかに繋ぐフィレット部と、前記翼本体と前記端壁との内部において冷却媒体を流通させると共に、前記翼幅方向に沿って延びる二つのメイン流路が前記端壁側に形成されたリターン流路で折れ曲がるようにして接続された冷却流路と、を備える翼部材であって、前記リターン流路は、前記翼本体の翼型中心線に交差する断面において、前記フィレット部に沿うように形成されていると共に、その翼厚方向幅が前記メイン流路における翼厚方向の流路幅より大きく形成され
、前記リターン流路は、前記翼本体の翼厚方向の中央側に形成され、前記冷却媒体の流れ方向を前記翼厚方向両側に案内する突出部を有する。
このようにすれば、リターン流路が、翼型中心線に交差する断面においてフィレット部に沿うようにして形成されているので、リターン流路からフィレット部の外表面までの肉
厚がほぼ均一になる。これにより、翼壁肉厚が大きくなる部位が生じることを抑止し、フィレット部を均一的に十分に冷却することが可能になる。
また、突出部を有するので、冷却媒体が翼厚方向両側に導かれる。これにより、リターン流路の翼厚方向両側に位置するフィレット部を十分に冷却することができる。
【0008】
また、前記リターン流路は、前記リターン流路の内表面において前記フィレット部の外表面に沿って形成された冷却面を有してもよい。
このようにすれば、冷却面を有するので、当該冷却面に背向するフィレット部を、より十分に冷却することができる。
【0010】
また、前記リターン流路は、前記リターン流路の上流側に位置する前記メイン流路における上流側流路との仕切壁に冷却孔を備えてもよい。
このようにすれば、リターン流路の冷却面近傍を流れる圧縮空気が更新されて、冷却面の冷却性能が一層向上する。
【0011】
また、前記冷却面は、前記フィレット部の外表面からの距離が、前記翼本体の外表面から前記メイン流路の内表面までの距離と略同一となるように形成されてもよい。
このようにすれば、冷却面のフィレット部の外表面からの距離が、翼本体の外表面からメイン流路の内表面までの距離と略同一に形成されているので、翼本体とフィレット部との間で冷却を均一的にすることができる。
【0012】
また、前記冷却面は、前記翼型中心線に沿って延びていてもよい。
このようにすれば、冷却面が翼型中心線に沿って延びているので、翼型中心線に沿った広い範囲に亘って、フィレット部を均一的に十分に冷却することができる。
【0013】
さらに、本発明に係る回転機械は、上記の翼部材を具備する。
このようにすれば、上記の翼部材を具備するので、翼部材の冷却効果を高め、信頼性の高い回転機械を提供することができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明に係る翼部材によれば、フィレット部において冷却を均一的に十分に行うことが可能となる。
【0015】
また、本発明に係る回転機械によれば、信頼性を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照し、本発明の実施の形態について説明する。
(第一実施形態)
図1は、本発明の第一実施形態に係るガスタービン(回転機械)GTの概略構成を示す半断面図である。
図1に示すように、ガスタービンGTは、圧縮空気(冷却媒体)cを生成する圧縮機Cと、圧縮機Cから供給される圧縮空気cに燃料を供給して燃焼ガスgを生成する複数の燃焼器Bと、燃焼器Bから供給される燃焼ガスgにより回転動力を得るタービン(回転機械)Tとを備えている。
ガスタービンGTにおいては、圧縮機CのロータR
CとタービンTのロータR
Tとは、それぞれの軸端で連結されてタービン軸P上に延びている。
なお、以下の説明においては、ロータR
Tの延在方向をタービン軸方向と、ロータR
Tの円周方向をタービン周方向と、ロータR
Tの半径方向をタービン径方向という。
【0018】
図2は、タービンTの要部拡大断面図であって、
図1における要部Iの拡大図である。
図2に示すように、タービンTは、タービンケーシング1内においてタービン軸方向に交互に四段に配設されたタービン静翼2及びタービン動翼(翼部材)3を備えている。各段のタービン静翼2は、タービン周方向に間隔をあけて環状の静翼列を構成しており、それぞれタービンケーシング1側に固定されていると共に、ロータR
T側に向けて延出している。
同様に、各段のタービン動翼3は、タービン周方向に間隔をあけて環状の動翼列を構成しており、ロータR
Tのロータディスク4A〜4Dに固定されていると共に、タービンケーシング1側に向けて延出している。
【0019】
図2に示すように、ロータR
Tは、タービン軸方向に重ねられて、全体的に見てシャフト状となったロータディスク4A〜4Dを備えている。これらロータディスク4A〜4Dは、第一段〜第四段のタービン動翼3A〜3Dをそれぞれの外周に固定している。なお、以下の説明において、符号3A〜3D,4A〜4D,7A〜7Dについては、特定のものを個別に指し示す場合に符号の後の大文字のアルファベットを付し、不特定のものを指し示す場合に大文字のアルファベットを省略する。
【0020】
これらロータディスク4A〜4Dのうちタービン軸方向に隣り合う二つの間には、タービン周方向に延びるマニホールド5が形成されている。なお、第一段のロータディスク4Aの上流側には、中心軸をタービン軸方向に向けたシールディスク6がロータディスク4Aに接続されており、このシールディスク6とロータディスク4Aとの間にマニホールド5が形成されている。
【0021】
これらマニホールド5は、ロータディスク4A〜4C及びシールディスク6のそれぞれに穿孔された接続孔5aを介して連続的に接続されており、圧縮機Cから抽気された圧縮空気cがシールディスク6側から各マニホールド5に順番に流入していく。
また、ロータディスク4A〜4Dには、それぞれの上流側のマニホールド5から、各タービン動翼3A〜3Dの内部に形成された冷却流路50(
図3参照)まで、圧縮空気cを導くラジアルホール7A〜7Dが形成されている。これらラジアルホール7A〜7Dは、それぞれ、ロータディスク4A〜4Dにおいてタービン周方向に間隔を空けて複数形成されている。
【0022】
図3は、タービン動翼3の翼型中心線Qに沿って切断した断面図(
図4におけるII−II線断面図)であり、
図4は、タービン動翼3の翼幅方向に交差する翼型断面図(
図3におけるIII−III線断面図)である。
図3に示すように、タービン動翼3は、翼本体10と、プラットフォーム(端壁)20と、翼根部30とが、翼本体10の翼幅方向の他方側から一方側に、上記の順に続いて構成されている。
【0023】
翼本体10は、
図3に示すように、翼幅方向をタービン径方向に向けており、
図2に示すように、ロータディスク4(4A〜4D)側に形成された基端(端部)14(
図3に示す)から、タービンケーシング1側に位置する先端15まで延びている。
また、翼本体10は、
図4に示すように、翼厚方向をタービン周方向に向けており、翼幅方向に交差する翼型断面において前縁11が丸みを帯びて形成されており、後縁12が先鋭状に形成されている。また、
図4に示すように、翼本体10には、翼表面13におけるタービン周方向の一方側において背面13aが凸状に形成されており、タービン周方向の他方側において腹面13bが凹状に形成されている。
【0024】
プラットフォーム20は、
図3に示すように、翼本体10の基端14に対してタービン軸方向一方側に続いて形成されており、翼幅方向に交差するように延びている。
このプラットフォーム20と翼本体10の基端14とは、フィレット部40で滑らかに接続されている。このフィレット部40は、基端14の翼型断面輪郭に沿って周状に形成されており、翼幅方向に沿って切断した断面輪郭が四半円弧状になっている(
図6及び
図7参照)。
【0025】
翼根部30は、
図3に示すように、プラットフォーム20に対してタービン径方向一方側(タービン軸P側)に続いて形成されており、例えばクリスマスツリー形状や三角形状に形成されている。この翼根部30は、ロータディスク4の外周に形成された図示しない翼根溝に嵌合しており、ロータディスク4の外周部に拘束されている(
図2参照)。
【0026】
上記構成からなるタービン動翼3の内部には、冷却流路50が形成されている。
冷却流路50は、
図3及び
図4に示すように、前縁11から後縁12に向けて順に配置された前縁側流路51と、サーペンタイン流路52,53とを備えている。
【0027】
前縁側流路51は、サーペンタイン流路52,53よりも前縁11側において、翼根部30から翼本体10の先端15まで翼幅方向に延在している。この前縁側流路51の上流端は、ラジアルホール7(
図2参照)と連通した導入流路51iに接続されている。また、前縁側流路51は、前縁11の翼表面13と前縁側流路51の流路壁面とをそれぞれ貫通する複数の冷却孔51hに連通している。
前縁側流路51は、ラジアルホール7から翼本体10の先端15まで流れる圧縮空気cによって前縁11を冷却し、冷却孔51hから圧縮空気cを流出させて前縁11をシャワーヘッドフィルム冷却する。
【0028】
サーペンタイン流路52は、
図3及び
図4に示すように、翼型中心線Q上に位置するように、前縁側流路51とサーペンタイン流路53との間において蛇行状に形成されており(
図3参照)、それぞれ翼幅方向に延在する三つのメイン流路52a〜52cがU字状に形成されたリターン流路52d,52eで接続されている。
三つのメイン流路52a〜52cは、それぞれ翼本体10の先端15から翼本体10の基端14まで延びており、上記の順に後縁12側から前縁11側に向けて並設されている。そして、メイン流路52aの外周端とメイン流路52bの外周端とがリターン流路52dで接続されており、メイン流路52bの内周端とメイン流路52cの内周端とがリターン流路52eで接続されている。また、メイン流路52aの上流端は、ラジアルホール7(
図2参照)と連通した導入流路52iに接続されている。さらに、メイン流路52cは、翼表面13とメイン流路52cの流路内壁とをそれぞれ貫通する複数の冷却孔52hに連通している。
サーペンタイン流路52において、圧縮空気cは、導入流路52iからメイン流路52aに流入した後に、このメイン流路52aを通り、リターン流路52dにおいて180°転回してメイン流路52bに流入し、メイン流路52bを通り、リターン流路52eにおいて180°転回してメイン流路52cに流入する。この過程において、メイン流路52c内を流れる圧縮空気cの一部は、
図4に示すように、冷却孔52hより斜めに流出し、翼表面13をフィルム冷却する。
【0029】
サーペンタイン流路53は、
図3及び
図4に示すように、翼型中心線Q上に位置するように、後縁12側において蛇行状に形成されており(
図3参照)、それぞれ翼幅方向に延在する三つのメイン流路53a〜53cが、U字状に形成されたリターン流路53d,53eで接続されている。
三つのメイン流路53a〜53cは、それぞれ翼本体10の先端15から翼本体10の基端14まで延びており、上記の順に前縁11側から後縁12側に向けて並設されている。そして、メイン流路53aの外周端とメイン流路53bの外周端とがリターン流路53dで接続されており、メイン流路53bの内周端とメイン流路53cの内周端とがリターン流路53eで接続されている。また、メイン流路53aの上流端は、ラジアルホール7と連通した導入流路53i,53jに接続されている。さらに、メイン流路53cは、
図4に示すように、翼表面13とメイン流路53cとをそれぞれ貫通する複数の冷却孔53hに連通している。
サーペンタイン流路53において、圧縮空気cは、導入流路53i,53jからメイン流路53aに流入した後に、このメイン流路53aを通り、リターン流路53dにおいて180°転回してメイン流路53bに流入し、メイン流路53bを通り、リターン流路53eにおいて180°転回してメイン流路53cに流入する。この過程において、メイン流路53c内を流れる圧縮空気cの一部は、冷却孔53hより表面に流出してフィルム冷却を行い、残りの圧縮空気cが後縁12より流出する際、後縁端部のピンフィン冷却を行う。
なお、圧縮空気cは、サーペンタイン流路53において導入流路53i,53jからメイン流路53a,53b,53c、リターン流路53d,53eを経て、最終的に燃焼ガス中に排出されるが、流路内をリターン流路53d,53eで折り返しながら流れる過程で圧力損失により、徐々に圧力が低下する。
【0030】
上記のように概略構成されるタービン動翼3は、上述したリターン流路52e,53eがタービン径方向において、翼本体10の基端14とフィレット部40とプラットフォーム20とに亘って形成されている。このリターン流路52e,53eは、翼型中心線Qに交差する断面においてフィレット部40に沿って形成されている。
なお、リターン流路52e,53eは同様の構成となっているので、以下の説明においては、リターン流路53eについて説明することとし、リターン流路52eの説明を省略する。
【0031】
図5は
図3の要部拡大図(
図3の要部IVの拡大図)であり、
図6は
図5のV−V線断面図であり、
図7は
図5のVI−VI線断面図である。
図6及び
図7に示すように、リターン流路53eは、翼型中心線Qに直交する断面(以下、単に翼型中心線Qの交差断面と称する)において、メイン流路53b及びメイン流路53cに比べて翼厚方向寸法Lが大きく形成されている(L
1>L
2)。また、リターン流路53eは、
図6に示すように、翼型中心線Qの交差断面において翼厚方向寸法L1よりも翼幅方向寸法が短い扁平状に形成されている。
図5に示すように、リターン流路53eにおける流路内壁面(内表面)の翼厚方向両側には、フィレット部40の外表面40aに沿って形成された冷却面55が形成されている。
【0032】
冷却面55は、翼型中心線Qに沿って延びていると共に、
図6及び
図7に示すように、交差断面において四半円弧状に形成されたフィレット部40の外表面40aに沿って円弧状に形成されている。より具体的には、冷却面55は、
図7に示すように、翼型中心線Qの交差断面において、メイン流路53bとメイン流路53cとを仕切る仕切壁54の前後の位置で、フィレット部40に沿って四半円弧状の断面輪郭を有し、且つ、仕切壁54が含まれる位置(中間部53e1)で、
図6に示すように、フィレット部40に沿って小円弧状の断面輪郭を有している。
【0033】
図6及び
図7に示すように、リターン流路53eの流路幅(L
1)を形成する流路内壁60を大略フィレット部40の外縁40b近傍まで拡幅させることが望ましい。翼型中心線Qを中心として流路幅(L
1)を翼厚方向の両側に向けてフィレット部40の外縁40b近傍まで拡幅させることにより、冷却面55がフィレット部40に沿って翼厚方向に拡張される。なお、フィレット部40の外縁40bとは、フィレット部40とプラットフォーム20の表面との境界線をいう。
【0034】
また、タービン動翼3の外表面の法線方向における、該タービン動翼3の外表面と冷却流路50の流路内壁面との距離を翼壁肉厚dと定義した場合において、冷却面55とフィレット部40との間の翼壁肉厚d
1は、各部位において略均一に形成されている。
また、冷却面55とフィレット部40との間の翼壁肉厚d
1は、メイン流路53b及びメイン流路53cにおける翼壁肉厚d
2と略同一に形成されている。
【0035】
また、リターン流路53eの流路内壁面の翼根部30側には、翼厚方向中央側において流路内壁面の法線方向に突出した突出部56が形成されている。突出部56は、
図6に示すように、翼型中心線Qの各交差断面において台形状となっている。この突出部56は、
図5に示すように、リターン流路53eにおいてメイン流路53b側から中間部53e1に進むに従って漸次突出量を大きくした後に、中間部53e1からメイン流路53cに進むに従って漸次突出量を小さくする。
この突出部56は、以下に説明する圧縮空気cのガイド機能の他、リターン流路53eの流路断面の調整機能を有している。本実施形態においては、リターン流路53eの流路幅(L
1)を上述のように翼厚方向に拡幅することにより、圧縮空気cがリターン流路53eの中央を流れ、中間部53e1の流路内壁60近傍は、流れのよどみが生ずるのを避け、流路断面の均一な流れを確保するために設けている。
【0036】
次に、上記の構成からなるガスタービンGTにおけるタービン動翼3の作用について説明する。
上述したように、圧縮空気cが導入流路53i,53jを介してサーペンタイン流路53に流入すると、メイン流路53aを通り、リターン流路53dにおいて180°転回してメイン流路53bに流入し、メイン流路53bを通り、リターン流路53eにおいて180°転回してメイン流路53cに流入する。
【0037】
リターン流路53eを通過する圧縮空気cには、冷却面55において翼壁肉厚d
1が略均一に形成されていることから、フィレット部40の各部位において均一的に熱を奪う。
すなわち、
図5に示すように、翼型中心線Qの延在方向に亘ってフィレット部40の各部位を均一的に冷却する。また、翼型中心線Qの各交差断面において(
図6及び
図7参照)、流路幅(L
1)をフィレット部40の外縁近傍まで拡幅するので、フィレット部40の翼幅方向及び翼厚方向に亘って各部位を均一的に冷却する。
【0038】
また、リターン流路53eにおいて突出部56の上流端に達した圧縮空気cは、突出部56が中間部53e1に向かうほど突出量を大きくすることから、次第に翼厚方向の両側に導かれる。リターン流路53eにおいて、翼厚方向の両側に導かれた圧縮空気cは、主に冷却面55を介してフィレット部40から熱を奪って冷却する。
また、突出部56の突出量を調整することにより、リターン流路53eの流路断面での圧縮空気cの不均一流れが改善できる。
【0039】
以上説明したように、ガスタービンGTにおけるタービン動翼3によれば、リターン流路53eが、翼型中心線Qの交差断面においてフィレット部40に沿うようにして形成されているので、リターン流路53eからフィレット部40の外表面40aまでの翼壁肉厚dが均一的になる。これにより、翼壁肉厚dが大きくなる部位が生じることを抑止し、フィレット部40を均一的に十分に冷却することが可能になる。従って、タービン動翼3に生じる酸化減肉や疲労を抑制することが可能となる。なお、リターン流路52eにおいても同様の効果を得ることができる。
【0040】
また、冷却面55を有するので、当該冷却面55に背向するフィレット部40を、より十分に冷却することができる。
【0041】
また、突出部56を有するので、圧縮空気cが翼厚方向両側に導かれる。これにより、リターン流路53eの翼厚方向両側に位置するフィレット部40を十分に冷却することができる。
【0042】
また、冷却面55の、フィレット部40の外表面40aまでの距離が、メイン流路53b,53cの流路内壁面から翼本体10の外表面までの距離と略同一に形成されているので、翼本体10とフィレット部40との間で冷却を均一的にすることができる。
【0043】
また、冷却面55が翼型中心線Qに沿って延びているので、翼型中心線Qに沿った広い範囲に亘って、フィレット部40を均一的に十分に冷却することができる。
【0044】
さらに、上記のタービン動翼3を具備するので、タービン動翼3の冷却効果を高め、信頼性を向上させることができる。
【0045】
(第二実施形態)
以下、本発明の第二実施形態について図を用いて説明する。なお、以下の説明及びその説明に用いる図面において、既に説明を終えた構成要素と同様の構成要素については、同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
【0046】
図8は本実施形態に係るタービン静翼2の翼型中心線に沿って切断した断面図である。
上述した第一実施形態がタービン動翼3に本発明を適用していたのに対して、本実施形態においては、タービンTのタービン静翼2(
図2参照)に本発明を適用している。
【0047】
図8に示すように、タービン静翼2は、翼本体2aの基端(タービン径方向外側、端部)58に外側シュラウド(端壁)2bが接合され、翼本体2aの先端(タービン径方向内側、端部)59に内側シュラウド(端壁)2cが接合されている。
翼本体2aの基端58と外側シュラウド2bとはフィレット部41で滑らかに繋がっており、翼本体2aの先端59と内側シュラウド2cとはフィレット部42で滑らかに繋がっている。
このタービン静翼2の内部には、サーペンタイン流路(冷却流路)57が形成されている。
【0048】
サーペンタイン流路57は、
図4に示す翼型中心線Q上に位置するように、
図8に示すように前縁11と後縁12との間に亘って蛇行状に形成されており、それぞれ翼幅方向に延在する五つのメイン流路57a〜57c,57f,57gが、U字状に形成されたリターン流路57d(57dA,57dB),57e(57eA,57eB)で接続されている。
【0049】
五つのメイン流路57a〜57c,57f,57gは、それぞれ翼本体2aの基端58側から翼本体2aの先端59側まで延びており、上記の順に前縁11側から後縁12側に向けて並設されている。そして、メイン流路57aの内周端とメイン流路57bの内周端とがリターン流路57eAで接続されており、メイン流路57bの外周端とメイン流路57cの外周端とがリターン流路57dAで接続されている。さらに、メイン流路57cの内周端とメイン流路57fの内周端とがリターン流路57eBで接続されており、メイン流路57fの外周端とメイン流路57gの外周端とがリターン流路57dBで接続されている。
【0050】
また、メイン流路57aの上流端は、圧縮空気cが供給される翼環フィードホール70に連通しており、メイン流路57gは、後縁12の冷却穴53mに連通し、後縁端部を対流冷却した後、燃焼ガス中に排出される。
【0051】
上述したリターン流路57d(57dA,57dB),57e(57eA,57eB)は、翼本体2aの翼型中心線に交差する断面において、フィレット部41,42に沿うように形成されている。
より具体的には、リターン流路57d(57dA,57dB),57e(57eA,57eB)のそれぞれにおいて、フィレット部41,42の外表面に沿って冷却面55が形成されている。さらに、リターン流路57dに、翼厚方向中央側において流路内壁面の法線方向に突出した突出部57d1が形成され、リターン流路57eに、翼厚方向中央側において流路内壁面の法線方向に突出した突出部57e1が形成されている。
【0052】
本実施形態によれば、上述した第一実施形態の主要な効果を得ることができる他、タービン静翼2のフィレット部41,42を十分に冷却することができる。
【0053】
なお、上述した実施の形態において示した動作手順、あるいは各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
例えば、上述した第一実施形態においては、翼型中心線Qの交差断面において冷却面55を円弧状の断面輪郭に形成してフィレット部40の外表面に沿わしたが、フィレット部40の外表面の接線方向に斜めに延びる直線状の断面輪郭に形成してフィレット部40の外表面に沿わしてもよい。第二実施形態においても同様である。
【0054】
また、上述した第一実施形態においては、リターン流路52e,53eに本発明を適用したが、どちらか一方にのみ本発明を適用してもよい。また、リターン流路52e,53eと同様のリターン流路を複数形成し、そのうちの少なくとも一つに本発明を適用してもよい。第二実施形態においても同様である。
【0055】
(第三実施形態)
以下、本発明の第三実施形態について図を用いて説明する。なお、以下の説明及びその説明に用いる図面において、既に説明を終えた構成要素と同様の構成要素については、同一の符号を付して、重複した説明を省略する。
【0056】
本実施形態は、上述したサーペンタイン流路のリターン部に冷却孔を設ける実施例であり、第一および第二実施形態の双方に適用できる。
図9は、第一実施形態の
図3と同様のタービン動翼の翼断面図において、それぞれのリターン部入口の圧縮空気cの流れ方向の上流側の仕切壁に冷却孔を設けた例を示したものである。
図10は、
図9の要部拡大図(
図9の要部VIIの拡大図)である。
図11は、
図10のリターン流路53e廻りの前縁方向に見た断面VIII―VIIIを示したものであり、
図12は、
図11のリターン流路53e廻りの断面IX―IXを示したものである。
図9から
図12により、サーペンタイン流路53のリターン流路53eを例に、本実施形態を以下に説明する。
【0057】
図9及び
図10は、サーペンタイン流路53の基端14近傍であって、メイン流路53aと53bとの間を区切る仕切壁54に冷却孔53kが設けられ、リターン流路53eの底面に向けて傾斜させて配置した例が示されている。
【0058】
また、
図11に示すように、リターン流路53eの翼厚方向の両側の流路内壁60で形成された流路断面は、翼幅方向の断面視で流路幅(L1)がフィレット部40の外縁40b近傍まで拡幅され、拡幅された両側の流路内壁60に向かって圧縮空気cが吹き出すように、メイン流路53bの背側および腹側よりに2つの冷却孔53kが配置されている。冷却孔53kは、一方がサーペンタイン流路53の上流側のメイン流路53aの上流側流路に連通し、他方は下流側のメイン流路53bに開口している。
【0059】
図12に示すように、リターン流路53eの流路は、メイン流路53bおよび53cの流路より、翼厚方向の背側および腹側に膨張した拡張部61を備える形状となっている。それぞれの背側および腹側に設けられた冷却孔53kは、翼型中心線Qに対して傾きをもち、圧縮空気cが流路内壁60にあたる方向に向けられている。
【0060】
前述のようにサーペンタイン流路を流れる圧縮空気cは、流路内を流れる過程で発生する圧力損失のため、圧縮空気cの圧力が低下する。サーペンタイン流路53を例に説明すれば、導入流路53i,53jからメイン流路53aに流入した低温の圧縮空気cは、基端側14から先端15に向かって流れ、リターン部53dで180°転回して折返し、更に基端14に向かって流下してリターン部53eに到達するまでの間に、流路内の圧力損失のため、圧力が低下する。つまり、メイン流路53aの上流側基端14とメイン流路53bの下流側のリターン流路53eの入口近傍とでは、圧力損失により一定の差圧が生ずるため、冷却孔53kの入口側と出口側の差圧により、メイン流路53aを流れる圧縮空気cの一部が冷却孔53kを流れて、リターン流路53eに吹出す。
【0061】
本実施形態によれば、リターン流路53eの流路断面で翼厚方向に膨れた拡張部61には圧縮空気cがよどむ可能性があるが、本実施形態の冷却孔53kを設けることにより、圧縮空気cの一部がリターン流路53eの流路内壁60に向かって斜め下向き(径方向の内側方向)に吹出すので、拡張部61に滞留するよどんだ圧縮空気が下流側にパージされ、リターン流路53eの冷却面55近傍を流れる圧縮空気流が更新されて、冷却面55の冷却性能が向上する。
【0062】
同様に、サーペンタイン流路52のリターン流路52eにも、メイン流路52aと52bの間の仕切壁54に冷却孔52kを設け、リターン流路53eと同様の構造を適用できる。
【0063】
また、上述したタービンTのタービン動翼3、及びタービンTのタービン静翼2に本発明を適用したが、各種回転機械の動翼及び静翼(例えば圧縮機Cの動翼及び静翼(
図1参照))について本発明を適用してもよい。