(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
都市ガスなどのように性状が安定したガスの場合には空燃比の目標値を固定しても問題がないが、バイオガスのようにガスエンジンの運転中に性状が変化するガスにおいては、適正な空燃比も変化する。このため、バイオガスの場合に空燃比の目標値を固定する制御を行なうと、燃料ガスの性状が変化したときに燃焼異常が発生する。
【0007】
上記の特許文献に記載のバイオエンジンの場合には、空燃比の目標値は基本的に理論空燃比の値に固定して運転されるため、燃料ガスの性状の急変に対応できない。燃料ガスカロリーの切替わり時は、適正な空燃比とならないため、バイオガスの利用効率の点で問題がある。
【0008】
この発明の目的は、燃料ガスの性状が時間とともに変化するバイオガスなどの場合であっても、ガスエンジンを安定して運転できるように空燃比を補正制御する空燃比補正制御方法および空燃比補正制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は要約すれば、燃料ガスと空気とを混合した混合ガスが供給される予混合式ガスエンジンの空燃比補正制御方法である。この発明による空燃比補正制御方法は、
ガスエンジンの負荷率と目標温度との間を対応付ける第1の対応関係と、ガスエンジンの負荷率と補正用理論空気量との間を対応付ける第2の対応関係とを予め設定するステップと、ガスエンジンの現在の負荷率を取得するステップと、温度センサを用いて、ガスエンジンの燃焼室から排出される排気ガスの温度を測定するステップと、
取得した負荷率に応じて補正用理論空気量を決定するステップと、決定した補正用理論空気量に予め設定された空気過剰率を乗ずることによって空燃比の設定値を計算するステップと、空燃比の現在の設定値に従って燃料ガスまたは空気の供給量を調整するステップとを備える。ここで、上記の
補正用理論空気量を決定するステップは、第1の対応関係に基づいて、排気ガスの温度と排気ガスの温度を測定したときの負荷率に対応する目標温度との偏差が小さくなるように、フィードバック制御によって補正用理論空気量を決定する第1ステップと、第2の対応関係に基づいてガスエンジンの負荷率に応じて補正用理論空気量を決定する第2ステップとを含む。第1ステップはガスエンジンの負荷率が所定の閾値以上の場合に実行され、第2ステップはガスエンジンの負荷率が閾値未満の場合に実行される。
【0014】
好ましくは
、ガスエンジンの負荷率が次第に増加する場合において、
第2ステップはガスエンジンの負荷率が閾値に達するまで実行され、第1ステップはガスエンジンの負荷率が閾値以上であり、かつ、ガスエンジンの負荷率が閾値に達したときから開始する第1の移行期間が終了した後に実行される。補正用理論空気量を決定するステップは、さらに、第1の移行期間中に実行され、第1の移行期間が開始したときに測定された排気ガスの温度を初期値として時間の経過またはガスエンジンの負荷率の増加に伴って徐々に増加または減少する変化値
を、経過時間またはガスエンジンの負荷率に応じて目標温度に設定
し、排気ガスの温度と排気ガスの温度を測定したときの目標温度との偏差が小さくなるようにフィードバック制御によって補正用理論空気量
を決定するステップを含む。第1の移行期間は、
上記の変化値と第1の対応関係に基づく目標温度とが等しくなったときに終了する
。
【0015】
好ましくは
、ガスエンジンの負荷率が次第に減少する場合に
おいて、第1ステップはガスエンジンの負荷率が閾値に達するまで実行され、第2ステップはガスエンジンの負荷率が閾値未満であり、かつ、ガスエンジンの負荷率が閾値に達したときから開始する第2の移行期間が終了した後に実行される。補正用理論空気量を決定するステップは、さらに、第2の移行期間中に実行され、第2の移行期間に入る直前に第1ステップで決定した補正用理論空気量を初期値として時間の経過またはガスエンジンの負荷率の減少に伴って徐々に増加または減少する変化値
を、経過時間またはガスエンジンの負荷率に応じて補正用理論空気量に決定
するステップを含む。第2の移行期間は、
上記の変化値と第2の対応関係に基づく補正用理論空気量とが等しくなったときに終了する。
【0016】
この発明の他の局面において、上記の第1ステップは、温度センサが正常な場合に実行される。
上記の第2ステップは、温度センサの故障を検出したときから開始する
第3の移行期間の終了後に実行される。
正用理論空気量を決定するステップは、さらに、第3の移
行期間中に実行され、第3の移行期間に入る直前に第1ステップで決定した補正用理論空気量を初期値として時間の経過に伴って徐々に増加または減少する変化値
を、経過時間に応じて補正用理論空気量に決定
するステップを含む。
第2の移行期間は、
上記の変化値と第2の対応関係に基づく補正用理論空気量とが等しくなったときに終了する。
【0017】
好ましくは、上記の第2ステップは、第2の対応関係に基づいて前記ガスエンジンの負荷率に応じた補正用理論空気量の基準値を決定するステップと、排気ガスの温度が所定の基準温度を超えたか否かを判定し、前記排気ガスの温度が前記基準温度を超えない場合には前記基準値を最終的な補正用理論空気量に決定し、前記排気ガスの温度が前記基準温度を超えた場合には前記基準値に所定のオフセット量を加算した値を最終的な補正用理論空気量に決定するステップ
とを有する。
【0019】
この発明は他の局面において、燃料ガスと空気とを混合した混合ガスが供給される予混合式ガスエンジンの空燃比補正制御装置であって、
空気過剰率設定部と、温度センサと、
補正用理論空気量決定部と、空燃比計算部と、ガス量調整器とを備える。
空気過剰率設定部は、ガスエンジンの回転数および負荷率と空気過剰率との予め定められた対応関係を表すテーブルに基づいて、ガスエンジンの現在の回転数および負荷率に対応する空気過剰率の値を設定する。温度センサは、ガスエンジンの燃焼室から排出された排気ガスの温度を測定する。
補正用理論空気量決定部は、ガスエンジンの現在の負荷率に応じて補正用理論空気量を決定する。空燃比計算部は、決定した補正用理論空気量に設定された空気過剰率の値を乗算することによって空燃比の設定値を計算する。ガス量調整器は、空燃比の現在の設定値に従って燃料ガスまたは空気の供給量を調整する。
上記の補正用理論空気量決定部は、ガスエンジンの負荷率が閾値以上の場合に、ガスエンジンの負荷率と目標温度との間を対応付ける第1の対応関係に基づいて、排気ガスの温度と排気ガスの温度を測定したときの負荷率に対応する目標温度との偏差が小さくなるように、フィードバック制御によって補正用理論空気量を決定する。補正用理論空気量決定部は、ガスエンジンの負荷率が閾値未満の場合に、ガスエンジンの負荷率と補正用理論空気量との間を対応付ける第2の対応関係に基づいて、ガスエンジンの負荷率に応じて補正用理論空気量を決定する。
【0020】
この発明はさらに他の局面において、予混合式ガスエンジンシステムであって、予混合式ガスエンジンと、
空気過剰率設定部と、温度センサと、
補正用理論空気量決定部と、空燃比計算部と、ガス量調整器とを備える。予混合式ガスエンジンには、燃料ガスと空気とを混合した混合ガスが供給される。
空気過剰率設定部は、ガスエンジンの回転数および負荷率と空気過剰率との予め定められた対応関係を表すテーブルに基づいて、ガスエンジンの現在の回転数および負荷率に対応する空気過剰率の値を設定する。温度センサは、ガスエンジンの燃焼室から排出された排気ガスの温度を測定する。
補正用理論空気量決定部は、ガスエンジンの現在の負荷率に応じて補正用理論空気量を決定する。空燃比計算部は、決定した補正用理論空気量に設定された空気過剰率の値を乗算することによって空燃比の設定値を計算する。ガス量調整器は、空燃比の現在の設定値に従って燃料ガスまたは空気の供給量を調整する。
上記の補正用理論空気量決定部は、ガスエンジンの負荷率が閾値以上の場合に、ガスエンジンの負荷率と目標温度との間を対応付ける第1の対応関係に基づいて、排気ガスの温度と排気ガスの温度を測定したときの負荷率に対応する目標温度との偏差が小さくなるように、フィードバック制御によって補正用理論空気量を決定する。補正用理論空気量決定部は、ガスエンジンの負荷率が閾値未満の場合に、ガスエンジンの負荷率と補正用理論空気量との間を対応付ける第2の対応関係に基づいて、ガスエンジンの負荷率に応じて補正用理論空気量を決定する。
【発明の効果】
【0021】
この発明よれば、空燃比の設定値を排気ガスの温度に応じて補正することによって、燃料ガスの性状が時間とともに変化するバイオガスなどの場合であっても、ガスエンジンを安定して運転できるように空燃比を制御することができる。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳しく説明する。なお、同一または相当する部分には同一の参照符号を付して、その説明を繰返さない。
【0024】
[ガスエンジンシステム100の概略的な構成]
図1は、この発明の実施の一形態による予混合式のガスエンジンシステム100の構成を示すブロック図である。
図1に示すように、ガスエンジンシステム100は、ガスエンジン1と、ミキサ30と、燃料ガス量調整器8と、エアクリーナ7と、過給機4と、スロットル弁9とを含む。
【0025】
ガスエンジン1は、燃料ガスFと空気Aとが予め混合された混合ガスMが燃焼室2に吸入される予混合式のガスエンジンである。実施の形態1のガスエンジン1では、燃料ガスFとして熱分解ガスや消化ガスなどのバイオガスが用いられる。吸入された混合ガスMは燃焼室2内で点火されて燃焼し、発生する熱エネルギーによってピストン3が駆動される。
【0026】
ミキサ30は、燃料ガスFと空気Aとを混合して混合ガスMを生成する。燃料ガス量調整器8は、ミキサ30に供給する燃料ガスFの流量を調整する。エアクリーナ7は、ミキサ30に供給する空気Aに含まれるゴミなどを除去する。
【0027】
過給機4は、排気タービン駆動式の過給機(いわゆる、ターボチャージャー)である。すなわち、燃焼室2から排気された排気ガスEによってタービン6が回転し、タービン6に連動して回転するコンプレッサー5によって燃焼室2に供給する混合ガスMが加圧される。
【0028】
スロットル弁9は、過給機4のコンプレッサー5と燃焼室2との間の混合ガスMの経路に設けられ、ガスエンジン1の出力に応じて混合ガスMの流量を調整する。
【0029】
燃料ガスFとして用いられるバイオガスは、都市ガスなどと異なり、その性状が時間的に変化する。たとえば、熱分解ガスは廃プラスチックや建築廃材などを熱分解した後にガス改質することによって得られるが、その成分ガスである水素と一酸化炭素の比率が時間的に変化する。有機廃棄物や汚泥などを嫌気性微生物群によってメタン発酵することによって得られる消化ガスについても、その成分ガスであるメタンと二酸化炭素の比率が時間的に変化する。このため、燃料ガスFの性状に応じて空燃比(空気Aと燃料ガスFとの比率)を適切に制御する必要がある。
【0030】
図1のガスエンジンシステム100は、空燃比の制御のために、流量計11と、温度センサ13と、空燃比制御部12と、補正用理論空気量決定部14とをさらに含む。
【0031】
流量計11は、スロットル弁9と燃焼室2との間の混合ガスMの経路に設けられ、混合ガスMの流量を測定する。温度センサ13は、燃焼室2と過給機4との間の排気ガスEの経路に設けられ、燃焼室2から排出された排気ガスEの温度を測定する。
【0032】
空燃比制御部12は、ガスエンジン1の回転数および負荷率(定格出力に対する現在のエンジン出力の比率)に応じた空気過剰率の値を設定する。補正用理論空気量決定部14は、燃料ガスの種類に応じて補正用理論空気量を決定する。空燃比制御部12は、決定された補正用理論空気量に空気過剰率を乗じることによって空燃比の設定を行なう。そして、空燃比制御部12は、流量計11によって計測された混合ガスMの流量に応じて、空燃比が現在の設定値となるように制御信号を生成して燃料ガス量調整器8に出力する。この結果、燃料ガスFの流量が調整される。
【0033】
ここで、上記の補正用理論空気量は、空燃比の補正に用いる制御用パラメータであり、理論空気量に相当する値である。本来、理論空気量は燃料ガスの性状に応じて一義的に値が決定されるものであるが、バイオガスの場合には、燃料ガスの性状の変化を直接検出することが困難である。そこで、空燃比を補正するための制御パラメータとして理論空気量を用いている。補正用理論空気量は、ガスエンジンの負荷率が所定の閾値以上のときは、燃料ガスの種類と排気ガス温度に応じて設定される。ガスエンジンの負荷率が所定の閾値未満のときは、排気ガス温度にはよらず、燃料ガスの種類ごとに代表的な性状に基づいて定めた理論空気量を負荷率に応じて補正した値が補正用理論空気量に設定される。
【0034】
一般に、排気ガスEの温度は、空燃比が増加するほど、すなわち、混合ガスMがリーンの状態になるほど低下する。この発明では、この点を利用して、排気ガスEの温度の変化をモニタすることによって、燃料ガスFの性状の変化を検出する。そして、排気ガスEの温度に応じて空燃比を補正する。これによって、燃料ガスFの性状の変化に応じて空燃比を最適化することができる。ただし、低負荷時には、燃料ガスFの性状変化に対する排気ガスEの温度の追随性が鈍いので、排気ガスEの温度による空燃比の制御はある程度の高負荷になってから行なうのが望ましい。
【0035】
空燃比制御部12および補正用理論空気量決定部14の機能は、マイクロコンピュータを用いて実現することができる。
図1では空燃比制御部12と補正用理論空気量決定部14とが別個の構成となっているが、これらを合わせて1つのマイクロコンピュータによって構成してもよい。
【0036】
[空燃比補正制御装置10の構成]
図2は、
図1の空燃比制御部12および補正用理論空気量決定部14の構成の一例を示すブロック図である。
図2に示すように、空燃比制御部12は、記憶部16と、空気過剰率設定部15と、乗算部17と、制御信号生成部18とを含む。補正用理論空気量決定部14は、演算部31と、記憶部32と含む。なお、空燃比制御部12、補正用理論空気量決定部14、流量計11、および温度センサ13によって、この発明の空燃比補正制御装置10が構成される。
【0037】
空燃比制御部12において、記憶部16は、回転数および負荷率に応じた空気過剰率の値を記憶する。
図3は、
図2の記憶部16に記憶される空気過剰率の設定テーブルの一例を示す図である。
【0038】
空気過剰率設定部15は、ガスエンジン1の回転数および負荷率に対応する空気過剰率の値を記憶部16から読み出す。
図1のガスエンジン1は、図示しないエンジン制御部によって回転数および出力が制御される。空気過剰率設定部15は、このエンジン制御部から回転数および負荷率を表わす情報を取得する。
【0039】
乗算部17(空燃比計算部)は、空気過剰率設定部15から出力された空気過剰率の設定値に、補正用理論空気量決定部14から取得した、燃料ガスの種類に対応した補正用理論空気量Youtを乗ずることによって空燃比の設定値を定める。記憶部16から読み出された空気過剰率をαとすると、最終的な空燃比Rは、
R=Yout×α …(1)
と表わされる。
【0040】
制御信号生成部18は、流量計11によって検出された混合ガスMの流量に応じて算出した空燃比Rが得られるように、燃料ガス量調整器8から出力される燃料ガスFの流量を調整するための制御信号を生成する。
【0041】
補正用理論空気量決定部14は、空燃比の設定値の補正として上記の補正用理論空気量Youtを決定する。この場合、排気ガスの温度に応じた閉ループ制御(フィードバック制御)によって補正用理論空気量Youtを決定する場合と、ガスエンジン1の負荷率に応じた開ループ制御によって補正用理論空気量Youtを決定する場合とがある。この明細書では、前記の閉ループ制御の場合を補正モード1と称し、後者の開ループ制御の場合を補正モード2と称する。補正モード1(閉ループ制御)はガスエンジン1の負荷率が所定の閾値以上の場合に用いられ、補正モード2(開ループ制御)は負荷率が上記の閾値未満の場合に用いられる。負荷率が所定の閾値以上の場合であっても温度センサが故障した場合には、補正モード1(閉ループ制御)に代えて補正モード2(開ループ制御)が用いられる。以下、補正モード1(閉ループ制御)および補正モード2(開ループ制御)の各々について詳しく説明する。さらに、ガスエンジン1の負荷率の増加によって開ループ制御から閉ループ制御に移行する場合(移行モード1と称する)と、ガスエンジン1の負荷率の減少または温度センサ13の故障によって閉ループ制御から開ループ制御に移行する場合(移行モード2と称する)とについて説明する。
【0042】
(補正モード1:排気ガス温度に応じた閉ループ制御)
0
図2を参照して、補正モード1の場合、補正用理論空気量決定部14の演算部31は、温度センサ13によって測定された排気ガスの温度Texと、目標温度Trefとの偏差が小さくなるように、閉ループ制御によって補正用理論空気量Youtを決定する。目標温度Trefは、燃料ガスの種類ごとにガスエンジン1の負荷率に対応して予め設定され、記憶部32に記憶されている。
【0043】
図4は、
図2の演算部31で実行される閉ループ制御について説明するための図である。
【0044】
図4に示すように、補正モード1の場合、演算部31は、排気ガス温度Texに応じたPID制御(比例積分微分制御)によって補正用理論空気量Youtを決定する。演算部31は、PID制御を行なうための機能ブロックとして、減算部21と、係数部22〜24と、積分部25と、微分部26と、加算部27とを含む。減算部21は、排気ガス温度Texと設定された目標温度Trefとの偏差を算出する。係数部22は、算出された偏差に比例ゲイン(1/Kp)を乗ずる。係数部23は、算出された偏差に積分ゲイン(1/Ki)を乗ずる。係数部23の出力は積分部25によって積分される。係数部24は、算出された偏差に微分ゲイン(Kd)を乗ずる。係数部24の出力は微分部26によって微分される。加算部27は、係数部22、積分部25、および微分部26の出力を加算することによって補正用理論空気量Youtを生成する。以上の操作によって、設定された目標温度Trefと排気ガスの温度Texとの偏差ができるだけ小さくなるように補正用理論空気量Youtが決定される。上記の係数Kp,Ki,Kdの値は、空燃比の制御性が良好なように実験的に定められる。
【0045】
図5は、
図2の記憶部32に記憶される排気ガスの目標温度Trefの例について説明するための図である。
図5に示すように、補正用理論空気量決定部14は、複数の負荷率(
図5の場合、X0=0、X1=15、X2=25、X3=50、X4=70,X5=85、X6=100、X7=110[%])にそれぞれ対応して設定された目標温度T0〜T7を予め記憶している。目標温度Trefは、負荷率が大きいほど大きな値に設定される。
図5のX0〜X7以外の負荷率に対する目標温度Trefは、予め設定された目標温度T0〜T7を補間することによって得られる。この明細書では、ガスエンジン1の負荷率と目標温度Trefとの間の対応関係を第1の対応関係と称する。ただし、負荷率が所定の閾値未満のときには、閉ループ制御は用いられないので、たとえば、
図5で閾値をL1(=X3)とすると、負荷率X0〜X3に対する目標温度T0〜T3は実際の制御には用いられない。
【0046】
(補正モード2:負荷率に応じた開ループ制御)
再び
図2を参照して、補正モード2の場合について説明する。この場合、ガスエンジン1の負荷率と補正用理論空気量Ysetとの対応関係(第2の対応関係と称する)は、燃料ガスの種類ごとに、補正用理論空気量決定部14の記憶部32に予め記憶されている。演算部31は、この第2の対応関係に基づいてガスエンジン1の負荷率に応じた補正用理論空気量Ysetを決定する。演算部31は、最終的に、
Yout=Yset+Yos …(2)
によって決まる補正用理論空気量Youtを空燃比制御部12の乗算部17に出力する。上式(2)において、Yosはオフセットであり、その初期値は0である。演算部31は、排気ガス温度が基準温度を超えた場合にオフセットYosを所定量だけ増加させることによって、排気ガス温度の異常上昇を抑制する。
【0047】
図6は、
図2の記憶部32に記憶される空燃比設定値の補正用理論空気量Ysetの例について説明するための図である。
図6に示すように、補正用理論空気量決定部14は、複数の負荷率(
図6の場合には、X0=0、X1=15、X2=25、X3=50、X4=70,X5=85、X6=100、X7=110[%])にそれぞれ対応する補正用理論空気量Y0〜Y7を予め記憶する。補正用理論空気量Ysetの値は、負荷率が大きいほど大きな値に設定される。
図6のX0〜X7以外の負荷率に対応する補正用理論空気量Ysetについては、予め設定された補正用理論空気量Y0〜Y7を補間することによって与えられる。ただし、温度センサ13が正常の場合には、所定の閾値以上の場合には開ループ制御は用いられない。たとえば、
図5で閾値をL1(X3)とすると、負荷率X3〜X7に対する補正用理論空気量Y3〜Y7は実際の制御では用いられない。
【0048】
(移行モード1:開ループ制御から閉ループ制御への移行)
ガスエンジン1の負荷率が次第に増加する場合は、補正モード2(開ループ制御)、移行モード1、補正モード1(閉ループ制御)の順にモードが切替えられる。たとえば、
図5の場合には、負荷率が閾値L1(=X3)に達するまでは開ループ制御(補正モード2)が実行され、負荷率X3からX4までが移行モード1であり、負荷率がX4以上のとき閉ループ制御(補正モード1)が実行される。
【0049】
移行モード1の場合、演算部31は、補正モード1の場合と同様に排気ガス温度に応じた閉ループ制御によってガスエンジン1の負荷率に応じて補正用理論空気量Youtを決定するが、目標温度Trefの与え方が補正モード1の場合と異なる。たとえば、
図5の場合には、移行モード1の開始時点(負荷率X3)では、負荷率X3で測定された排気ガス温度Texが目標温度に設定される。移行モード1の終了時点(負荷率X4)では、補正モード1で用いられる第1の対応関係に基づく目標温度T4が移行モード1の目標温度に設定される。負荷率X3とX4との間では、負荷率X3のときに実測された排気ガス温度Texと、第1の対応関係に基づく目標温度T4とを補間することによって、各負荷率に対応する目標温度(
図5の破線)が設定される。このように、移行モード1が開始したときに測定された排気ガス温度Texを初期値としてガスエンジン1の負荷率の増加に伴って徐々に増加または減少する変化値(
図5の破線)が、各負荷率に対応する目標温度に設定される。そして、演算部31は、排気ガス温度と排気ガス温度を測定したときの目標温度との偏差が小さくなるようにフィードバック制御によって補正用理論空気量Youtを決定する。移行モード1は、変化値(
図5の破線)が第1の対応関係に基づく目標温度(
図5のT4)に等しくなったとき(
図5で負荷率がX4に達したとき)に終了する。
【0050】
(移行モード2:閉ループ制御から開ループ制御への移行)
ガスエンジン1の負荷率が次第に減少する場合には、補正モード1(閉ループ制御)、移行モード2、補正モード2(開ループ制御)の順にモードが切替えられる。たとえば、
図6の場合には、負荷率が閾値L2(L2はL1に必ずしも等しくない)に達するまでは閉ループ制御(補正モード1)が実行され、負荷率L2からX8までが移行モード2であり、負荷率がX8未満のとき開ループ制御(補正モード2)が実行される。
【0051】
移行モード2の場合、演算部31は、ガスエンジン1の負荷率に応じて開ループ制御によって補正用理論空気量Youtを決定するが、補正モード2の場合と異なり負荷率と補正用理論空気量Youtとの対応関係は予め設定されていない。たとえば、
図6の場合には、移行モード2の開始時点(負荷率L2)の補正用理論空気量は、移行モード2に入る直前に補正モード1で決定した補正用理論空気量Youtに設定される。その後は、負荷率L2における補正用理論空気量Youtを初期値として時間の経過ともに所定の時間変化率で増加または減少する変化値が、各経過時間に対応して補正用理論空気量に設定される。移行モード2は、この変化値(
図6の破線)が第2の対応関係に基づく補正用理論空気量Ysetに等しくなったとき(
図6で負荷率がX8に達したとき)に終了する。
【0052】
同様に、排気ガス温度に応じた閉ループ制御(補正モード1)の実行中に温度センサ13が故障した場合も、移行モード2を経て補正モード2(開ループ制御)にモードが切替えられる。移行モード2では、演算部31は、移行モード2に入る直前の補正モード1で決定した補正用理論空気量Youtを初期値として時間の経過に伴って所定の時間変化率で徐々に増加または減少する変化値を、経過時間に応じて補正用理論空気量に決定する。補正モード2は、この変化値と第2の対応関係に基づく補正用理論空気量Ysetとが等しくなったときに終了する。
【0053】
上記のように閉ループ制御(補正モード1)と開ループ制御(補正モード2)との間に移行モード1または2を設けることによって、補正用理論空気量Youtが急激に変化することを防止することができる。
【0054】
ガスエンジン1の負荷率が次第に増加する場合、上記の移行モード1に代えて、移行モード2のように、移行モードの開始時の排気ガス温度を初期値として時間経過に伴って所定の時間変化率で増加または減少する変化値を、各経過時間に対応する目標温度に設定してもよい。
【0055】
ガスエンジン1の負荷率が次第に減少する場合、上記の移行モード2に代えて、移行モード1のように、移行モードの開始時および終了時の負荷率を予め定め、移行モードに入る直前に設定された補正用理論空気量Youtと、終了時の負荷率において第2の対応関係に従って設定された補正用理論空気量を補間することによって、各負荷率に対応する補正用理論空気量を決定してもよい。
【0056】
[空燃比補正制御装置10の動作]
図7は、
図2に示す空燃比制御部12の動作を示すフローチャートである。
図2、
図7を参照して、空燃比制御部12の動作について総括的に説明する。
【0057】
ステップS101で、ガスエンジン1の起動時には、空燃比制御部12の空気過剰率設定部15は空気過剰率の初期値を設定する。
【0058】
次のステップS102で、空燃比制御部12は、補正用理論空気量決定部14から補正用理論空気量の初期値を取得する。
【0059】
次のステップS103で、乗算部17は、空気過剰率設定部15から出力された空気過剰率の初期値に補正用理論空気量決定部14から取得した補正用理論空気量の初期値を乗ずることによって、空燃比の初期値の設定を行なう。
【0060】
次のステップS104で、燃料ガス量調整器8は、設定された空燃比の初期値に対応した制御信号を空燃比制御部12から受け、制御信号に基づいて燃料ガスの流量Fを調整する。
【0061】
ガスエンジン1が起動すると、図示しないエンジン制御部は、回転数および負荷率を徐々に増加させる。ステップS105で、空気過剰率設定部15はエンジン制御部から回転数および負荷率を表わす情報を取得する。次のステップS106で、空気過剰率設定部15は、エンジン制御部から取得した回転数・負荷率に対応する空気過剰率の設定値を記憶部16に記憶されたテーブルに基づいて定める。
【0062】
次のステップS107で、空燃比制御部12は、補正用理論空気量決定部14から補正用理論空気量を取得する。
【0063】
次のステップS108で、乗算部17は、空気過剰率設定部15から出力された空気過剰率の設定値に補正用理論空気量決定部14から取得した補正用理論空気量を乗ずることによって、空燃比の設定を行なう。
【0064】
次のステップS109で、燃料ガス量調整器8は、空燃比の現在の設定値に対応した制御信号を空燃比制御部12から受け、制御信号に基づいて燃料ガスの流量Fを調整する。エンジンが停止されない場合には(ステップS110でNO)、ステップS105〜S109の手順が繰返される。
【0065】
図8は、
図2に示す補正用理論空気量決定部14の動作を示すフローチャートである。以下、
図2、
図8を参照して補正用理論空気量決定部14の動作について総括的に説明する。
【0066】
ガスエンジン1が起動され、無負荷状態で回転数が所定の定格回転数n1に達するまでの間は(ステップS2でNO)、演算部31は、補正用理論空気量Youtとして初期値(たとえば、Yout=5)を出力する(ステップS1)。
【0067】
ガスエンジン1の回転数が所定の定格回転数n1に達すると(ステップS2でYES)、演算部31は制御用のパラメータを初期化する(ステップS3)。
【0068】
次のステップS4で、演算部31は、記憶部32に記憶された第2の対応関係に基づいて、開ループ制御(補正モード2)によって負荷率に応じて補正用理論空気量Ysetを決定する。演算部31は、前述の式(2)に従って、オフセットYosを加算することによって最終的な補正用理論空気量Youtを算出して、空燃比制御部12に出力する。オフセット値Yosの値はステップS3で初期値(Yos=0)に設定されている。
【0069】
次のステップS5では、排気ガス温度Texが所定の基準温度(
図10のTa)を超えて異常に上昇した場合に、排気ガス温度の異常上昇を抑制するステップが実行される。具体的には、演算部31は、排気ガス温度が基準温度を超えた場合に前述の式(2)のオフセットYosを所定量だけ増加させることによって、排気ガス温度の異常上昇を抑制する。ステップS5の詳細は
図10で説明する。
【0070】
次のステップS6は、ガスエンジン1の停止時のために設けられている。具体的には、回転数が基準値n2(n2は定格回転数n1より小さな値である)以下の場合(ステップS6でYES)にステップS7に進み、エンジン停止の場合(ステップS7でYES)に処理が終了する。回転数が基準値n2以下であるが(ステップS6でYES)、エンジン停止ではない場合(ステップS7でNO)、ステップS1に戻る。
【0071】
上記のステップS4〜S6は、ガスエンジン1の負荷率が閾値L1に達するまでの間(ステップS8でNOの間)、繰返して実行される。一方、負荷率が閾値L1以上となり(ステップS8でYES)、かつ、温度センサ13が正常の場合(ステップS9でYES)には、ステップS10に進み、開ループ制御(補正モード2)から閉ループ制御(補正モード1)に移行する移行モード1にモードが切替わる。
【0072】
次のステップS11で温度センサ13が正常であることが確認されると(ステップS11でYES)、ステップS12に進む。ステップS12で、補正用理論空気量決定部14は、排気ガス温度に応じた閉ループ制御(補正モード1)によって補正用理論空気量Youtを決定する。なお、ステップS11で温度センサ13が故障の場合(ステップS11でNO)には、ステップS17の移行モード2を経てステップS3に処理が戻る。ステップS17の手順については
図9で説明する。
【0073】
次のステップS13で、演算部31は、排気ガス温度Texと目標温度Trefとの偏差の絶対値(|Tex−Tref|)が所定の基準温度Tb以上となっているか否かを判定する。偏差の絶対値が基準温度Tb以上となっていない場合には(ステップS13でNO)、
図4の比例ゲインおよび積分ゲインは標準値に設定される(ステップS14)。一方、偏差の絶対値が基準温度Tb以上の場合には(ステップS13でYES)、
図4の比例ゲインおよび積分ゲインは、標準値より大きい値である変更用ゲインに設定される(ステップS15)。すなわち、係数Kp,Kiは標準値の場合の係数よりも小さな値に設定される。これによって、ハンチングを抑制することができる。
【0074】
次のステップS16は、ガスエンジン1の停止時のために設けられている。負荷率が次第に減少して閾値L2以下になると(ステップS16でYES)、補正用理論空気量決定部14は、ステップS17の移行モード2を経てステップS3に処理を戻す。負荷率が閾値L2を超えている場合は(ステップS16でNO)、ステップS11〜S15が繰返される。
【0075】
図9は、
図8のステップS17の詳細を示すフローチャートである。既に説明したように、
図8のステップS17は、温度センサが故障した場合(ステップS11でNO)または負荷率が閾値L2以下となった場合(ステップS16でYES)に実行される移行モード2に対応する。以下の説明で、補正用理論空気量決定部14の演算部31は所定の制御間隔Tsごとに制御を行なうものとする。
【0076】
図8、
図9を参照して、ステップS21で、演算部31は、第2の対応関係に基づいて現在の負荷率に対応して設定される補正用理論空気量Ysetを記憶部32から読み出す。
【0077】
次のステップS22で、演算部31は、移行モード2に入る直前に閉ループ制御(ステップS12)で設定された補正用理論空気量Youtが、ステップS21で読み出した補正用理論空気量Ysetよりも大きいか否かを判定する。
【0078】
補正用理論空気量Youtが補正用理論空気量Ysetよりも大きい場合には(ステップS22でYES)、ステップS23に進み、演算部31は、時間変化率Rateと制御間隔Tsを乗じた値を補正用理論空気量Youtから減じる。
【0079】
次のステップS24で、演算部31は、第2の対応関係に基づいて現在の負荷率に対応して設定される補正用理論空気量Ysetを記憶部32から読み出す。
【0080】
次のステップS25で、現在の補正用理論空気量YoutがステップS24で読み出した補正用理論空気量Yset以下となっているか否かを判定する。補正用理論空気量Youtが補正用理論空気量Yset以下でない場合には(ステップS25でNO)、ステップS23に戻り、ステップS23〜S25が繰返される。
【0081】
現在の補正用理論空気量YoutがステップS24で読み出した補正用理論空気量Yset以下となった場合には(ステップS25でYES)、現在の補正用理論空気量Youtに補正用理論空気量Ysetを代入して移行モード2が終了する(ステップS29)。
【0082】
一方、補正用理論空気量Youtが補正用理論空気量Yset以下の場合には(ステップS22でNO)、ステップS26に進み、演算部31は、時間変化率Rateと制御間隔Tsとを乗じた値を補正用理論空気量Youtに加算する。
【0083】
次のステップS27で、演算部31は、第2の対応関係に基づいて現在の負荷率に対応して設定される補正用理論空気量Ysetを記憶部32から読み出す。
【0084】
次のステップS28で、現在の補正用理論空気量YoutがステップS27で読み出した補正用理論空気量Yset以上となっているか否かを判定する。補正用理論空気量Youtが補正用理論空気量Yset以上でない場合には(ステップS28でNO)、ステップS26に戻り、ステップS26〜S28が繰返される。
【0085】
現在の補正用理論空気量YoutがステップS27で読み出した補正用理論空気量Yset以上となった場合には(ステップS28でYES)、現在の補正用理論空気量Youtに補正用理論空気量Ysetを代入して移行モード2が終了する(ステップS29)。
【0086】
図10は、
図8のステップS5の詳細を示すフローチャートである。
図10では、排気ガス温度Texが所定の基準温度Taを超えて異常に上昇した場合に、排気ガス温度を抑制するための処理手順が示される。
【0087】
図8、
図10を参照して、演算部31は、ステップS31で、排気ガス温度Texが基準温度Taを超えているか否かを判定する。さらに、演算部31は、ステップS32で、経過時間Tim(
図8のステップS3で0に初期化されている)が基準時間Tintを越えているか否かを判定する。ステップS31およびS32がともにYESの場合にステップS33に進み、演算部31は、補正用理論空気量のオフセット値Yosを所定量Ystepだけ増加させる。次のステップS34で、演算部31は、経過時間Timを0に初期化する。
【0088】
以上の処理によって、排気ガス温度Texが基準温度Taを超えている状態が継続している場合には、基準時間Tintごとに所定量Ystepだけオフセット値Yosが増加する。この結果、補正用理論空気量Youtも基準時間Tintごとに所定量Ystepずつ増加することになるので、排気ガス温度の上昇を抑制することができる。
【0089】
以上のとおり、上記の実施の形態によるガスエンジンシステム100によれば、空燃比の設定値を排気ガス温度Texに応じて補正することによって、燃料ガスFの性状が時間とともに変化するバイオガスなどの場合であっても、ガスエンジン1を安定して運転できるように空燃比を制御することができる。
【0090】
上記では、空燃比を制御するために、燃料ガスFの供給量を調整する燃料ガス量調整器8が設けられていたが、燃料ガス量調整器8に代えて空気Aの供給量を調整する空気量調整器を設けてもよい。
【0091】
今回開示された実施の形態はすべての点で例示であって制限的なものでないと考えられるべきである。この発明の範囲は上記した説明ではなくて請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。