特許第5655233号(P5655233)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5655233T細胞レセプター及び該レセプターをコードする核酸
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655233
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】T細胞レセプター及び該レセプターをコードする核酸
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/09 20060101AFI20141225BHJP
   C07K 14/705 20060101ALI20141225BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20141225BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   C12N15/00 AZNA
   C07K14/705
   A61K48/00
   A61P35/00
【請求項の数】6
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-285851(P2012-285851)
(22)【出願日】2012年12月27日
(62)【分割の表示】特願2007-535435(P2007-535435)の分割
【原出願日】2006年9月7日
(65)【公開番号】特開2013-126415(P2013-126415A)
(43)【公開日】2013年6月27日
【審査請求日】2013年1月25日
(31)【優先権主張番号】特願2005-266088(P2005-266088)
(32)【優先日】2005年9月13日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】304026696
【氏名又は名称】国立大学法人三重大学
(73)【特許権者】
【識別番号】302019245
【氏名又は名称】タカラバイオ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100095832
【弁理士】
【氏名又は名称】細田 芳徳
(72)【発明者】
【氏名】珠玖 洋
(72)【発明者】
【氏名】日浅 厚則
(72)【発明者】
【氏名】奥村 悟司
(72)【発明者】
【氏名】直田 浩明
(72)【発明者】
【氏名】宮原 慶裕
【審査官】 西村 亜希子
(56)【参考文献】
【文献】 Clin. Cancer Res.,2005年 8月 1日,Vol.11, No.15,pp.5581-5589
【文献】 Anticancer Res.,2000年,Vol.20, No.3A,pp.1793-1799
【文献】 Int. Immunol.,1999年,Vol.11, No.5,pp.745-751
【文献】 Gene Ther.,2005年 1月,Vol.12, No.2,pp.140-146
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/09
A61K 48/00
A61P 35/00
C07K 14/705
C12N 5/10
CAplus/MEDLINE/WPIDS/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
JSTPlus(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(1)配列表の配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるα鎖可変領域ポリペプチド又は該配列に1〜数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入もしくは置換がなされたアミノ酸配列からなるα鎖可変領域ポリペプチドと、α鎖定常領域ポリペプチドとからなるTCRα鎖ポリペプチド、及び
(2)配列表の配列番号7で示されるアミノ酸配列からなるβ鎖可変領域ポリペプチド又は該配列に1〜数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入もしくは置換がなされたアミノ酸配列からなるβ鎖可変領域ポリペプチドと、β鎖定常領域ポリペプチドとからなるTCRβ鎖ポリペプチド、
から構成される、HLA−A24拘束性のMAGE−A4143-151特異的なT細胞レセプター。
【請求項2】
(1)配列表の配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、および該配列に1〜数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換がなされたポリペプチドから選択されるポリペプチド、並びに
(2)配列表の配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、および該配列に1〜数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換がなされたポリペプチドから選択されるポリペプチド、
から構成される、請求項1記載のT細胞レセプター。
【請求項3】
(1)配列表の配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるα鎖可変領域ポリペプチド又は該配列に1〜数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入もしくは置換がなされたアミノ酸配列からなるα鎖可変領域ポリペプチドと、α鎖定常領域ポリペプチドとからなるTCRα鎖ポリペプチドをコードする核酸、及び
(2)配列表の配列番号7で示されるアミノ酸配列からなるβ鎖可変領域ポリペプチド又は該配列に1〜数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入もしくは置換がなされたアミノ酸配列からなるβ鎖可変領域ポリペプチドと、β鎖定常領域ポリペプチドとからなるTCRβ鎖ポリペプチドをコードする核酸、
を組み合わせた、HLA−A24拘束性のMAGE−A4143-151特異的なT細胞レセプターをコードする核酸。
【請求項4】
(1)配列表の配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、および該配列に1〜数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換がなされたポリペプチドから選択されるポリペプチドをコードする核酸、並びに
(2)配列表の配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、および該配列に1〜数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換がなされたポリペプチドから選択されるポリペプチドをコードする核酸、
を組み合わせた、請求項3記載の核酸。
【請求項5】
請求項3又は4記載の核酸を含有する組換え核酸。
【請求項6】
請求項3又は4記載の核酸、又は請求項5記載の組換え核酸を有効成分として含有する制がん剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MAGE−A4143-151ペプチドに特異的なHLA−A2402拘束性のT細胞レセプター(TCR)α鎖を構成するポリペプチド、該ポリペプチドをコードする核酸、前記TCRのβ鎖を構成するポリペプチド、該ポリペプチドをコードする核酸、前記α鎖を構成するポリペプチドとβ鎖を構成するポリペプチドで構成されるT細胞レセプター、前記核酸を含んでなる組換え核酸、該組換え核酸を含むベクター、前記核酸又はベクターを導入された細胞、並びに前記のベクター又は細胞を有効成分として含んでなる制がん剤に関する。
【背景技術】
【0002】
細胞傷害性T細胞(CTL)には、主要組織適合性抗原遺伝子複合体(major histocompatibility gene complex;以下、MHCと略す)にコードされる主要組織適合性抗原分子(MHC分子、ヒトの場合 human leukocyte antigenと呼ばれ、以下、HLAと略す)と抗原ペプチドとの結合物である複合体を特異的なT細胞レセプター(T cell receptor;以下、TCRと略す)によって認識し、その複合体を細胞表面に提示している細胞を傷害することのできるものがある。したがって該細胞傷害反応が成立するためには、1)標的細胞のHLAクラスIのタイプに特異的なTCRを持ったCTLが存在すること、2)HLA分子に結合して形成される複合体がTCRによる認識を受けることができるような抗原ペプチドが存在すること、が必要である。
【0003】
このような抗原ペプチドは、例えば哺乳類細胞の細胞内で合成された抗原等が細胞質でプロセスされ、小さいペプチドに分解されることにより生じ、更にHLA分子と会合し、細胞表面に提示される。すなわち、多くのサブユニットよりなるプロテアソーム複合体の中で、タンパク質は8〜15アミノ酸よりなるペプチドに分解され、そのうちのいくつかがTAPトランスポーターにより細胞質から小胞体に運ばれる。これらのペプチドは小胞体でクラスI/β2ミクログロブリン(microglobulin)のヘテロダイマーに結合できれば、3分子複合体として安定化され、ゴルジ装置を通って、細胞表面に輸送される。腫瘍関連抗原又は腫瘍特異的抗原タンパク質を発現している腫瘍細胞は、T細胞に認識されるHLA拘束性抗原ペプチドを細胞表面に提示できるはずである。
【0004】
HLAクラスI分子は主としてHLA−A、−B、−Cがあり、これらに結合して提示される抗原ペプチドは、8〜10個のアミノ酸よりなり、更に各々のHLA分子によって異なる一定の構造上の特徴があることが知られている。例えば、世界的に最も頻度の高いHLA−A2.1分子に結合するペプチドとしてはN末端より2番目にLeu、且つC末端にLeu又はValを有する9〜10個のアミノ酸よりなるペプチドが最も良く知られているものである。また、日本人を始めとするアジアの人種に多いHLA−A24分子に結合するペプチドはN末端より2番目にTyr、Phe、Met、Trpのいずれか、且つC末端にLeu、Ile、Trp、Pheのいずれかを有する9〜10個のアミノ酸よりなるものであるペプチドが最もよく知られている。
【0005】
現在までに抗原ペプチドが同定されている腫瘍抗原としては、HLA−A1に対するMAGE−A1、MAGE−A3、MAGE−A4、HLA−A2.1に対するMAGE−A3、MART1、チロシナーゼ、gp100、HER2/neu、CEA等、HLA−Cw1に対するMAGE−A3、HLA−B44に対するMAGE−A3、HLA−B37に対するMAGE−A4、HLA−A24に対するMAGE−A1、MAGE−A2、MAGE−A3、MAGE−A4、NY−ESO−1、CEA、HER2/neu、チロシナーゼ、β−カテニン(catenin)等がある。これらの中の多くは、まず腫瘍細胞を認識するクラスI拘束性のCTLを株化し、このCTLの認識する腫瘍抗原を同定し、続いて遺伝子工学的方法により腫瘍抗原タンパク質中最小単位を見出し、更にHLAクラスI分子への結合モチーフに関する情報を基に最小単位中のペプチドが見出されている。また、まず前記のHLAクラスI分子結合ペプチドに共通したモチーフ構造を基に、腫瘍抗原タンパク質中のHLAクラスI分子結合ペプチドを見出し、続いて抗原提示細胞を利用してCTLを誘導可能なものを選択した後、最終的に腫瘍細胞に対して傷害性を有するCTLが誘導できているかどうかにより抗原ペプチドが決定されている。
【0006】
一方、HLAクラスI分子はいくつかのサブタイプに分類されるが、その保有サブタイプの種類は人種間で大きく異なり、世界的にはHLA−A2が最も多く、白色人種の45%がHLA−A2陽性である。そして、このHLA−A2拘束性の抗原ペプチドの同定が最も進んでいる。日本人ではHLA−A2陽性は40%を占めるが、そのサブタイプを見ると白色人種と同じHLA−A*0201陽性は20%で、残りの多くはA*0206陽性である。これらのサブタイプへの結合ペプチドは異なり、主として研究されているHLA−A2はHLA−A*0201である。一方、日本人ではHLA−A24陽性が60%以上を占めており、アジア人種では他の人種に比べてHLA−A24陽性率が高い。従って、HLA−A24拘束性の抗原ペプチドの発見はアジア人種、特に日本人において腫瘍細胞特異的に作用するCTLを誘導する事による、腫瘍治療に有用なCTLの提供に重要な役割を示す。
【0007】
同じ抗原でも、HLAの違いに基づいて抗原ペプチドが異なるため、抗原ペプチドを利用したCTLの誘導は煩雑である。この問題を解決するために色々な工夫がなされているが、まだ満足できる成果は得られていない。工夫されていることの一つは、患者自身(自家)由来の抗原提示細胞に抗原遺伝子を形質導入し、これを利用したT細胞誘導方法である。抗原提示細胞として、B細胞、マクロファージ、樹状細胞が検討され、プロフェッショナル抗原提示細胞として知られている樹状細胞を中心として、ワクチンのアジュバント等として使用する臨床試験が実施されている。しかし、これらの抗原提示細胞は、免疫誘導に必要な量を準備するのに労力を要することが課題である。B細胞はEBウイルスによる不死化による大量調製が可能であるが、ウイルスを使用している点から安全性上問題がある。
【0008】
腫瘍抗原特異的TCR遺伝子としては、例えばHLA−A2拘束性のMART1特異的TCR〔非特許文献1〕、MAGE−A3特異的TCR〔非特許文献2〕、CAMEL(CTL−recognized antigen on melanoma)特異的TCR〔非特許文献3〕、gp100特異的TCR〔非特許文献4〕、NY−ESO−1特異的TCR〔非特許文献5〕、HLA−24拘束性のWT1(Wilms tumor 1)特異的TCR〔非特許文献6〕、HLA−Cw16拘束性のMAGE−A1特異的TCR〔非特許文献7〕等の遺伝子がクローニングされている。
【0009】
TCR遺伝子を任意のCTLに導入することにより目的の抗原に特異的な細胞傷害活性を付与することが期待できる。これに基づき、MART1〔非特許文献8〕、gp100〔非特許文献4〕及びmHAG HA−2抗原〔非特許文献9〕を標的としたTCR遺伝子による遺伝子治療が試みられている。
【0010】
MAGE−A4はがん精巣抗原ファミリーのMAGEサブファミリーに属する抗原であり、様々ながんにおいて発現している上に高い抗原性を有する(食道がんの60%、頭頸部がんの50%、非小細胞肺がんの24%、胃がんの33%及びホジキン病の21%において陽性)ことから、がんワクチン療法の標的抗原として有望視されている。HLA−A24拘束性のMAGE−A4143-151ペプチド特異的CTLクローンが取得されている〔非特許文献10〕。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】カンサー リサーチ(Cancer Res.)、第54巻、第5265−5268頁(1994)
【非特許文献2】アンチカンサー リサーチ(Anticancer Res.)、第20巻、第1793−1799頁(2000)
【非特許文献3】インターナショナル ジャーナル オブ カンサー(Int. J. Cancer)、第99巻、第7−13頁(2002)
【非特許文献4】ジャーナル オブ イムノロジー、(J. Immunol.)第170巻、第2186−2194頁(2003)
【非特許文献5】ジャーナル オブ イムノロジー、第174巻、第4415−4423頁(2005)
【非特許文献6】ブラッド(Blood)、第106巻、第470−476頁(2005)
【非特許文献7】インターナショナル イムノロジー(Int. Immunol.)、第8巻、第1463−1466頁(1996)
【非特許文献8】ジャーナル オブ イムノロジー、第163巻、第507−513頁(1999)
【非特許文献9】ブラッド(Blood)、第103巻、第3530−3540頁(2003)
【非特許文献10】クリニカル カンサー リサーチ(Clin. Cancer Res.)、第11巻、第5581−5589頁(2005)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
腫瘍関連抗原に対するHLA−A24拘束性のTCR遺伝子としては、WT1に対するものが知られているが、HLA−A2.1に比べると未だにその解析は遅れており、アジア人種、特に日本人の腫瘍治療に有用なTCR遺伝子の提供が不可能である。したがって、種々の腫瘍抗原に対するHLA−A24拘束性の新たなTCR遺伝子の発見が望まれる。
【0013】
生体内でTCRを介した細胞傷害活性を担っているのは抗原特異的なTCRを持つCTLであるが、これを体外で増殖させてがん等の疾患の治療に使用するには、これらの細胞の取り扱い、例えば採取や拡大培養に問題を有している。したがって、所望の抗原特異性を有するCTLを大量かつ容易に調製するための、腫瘍抗原等に特異的なTCRの遺伝子を提供することが待ち望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、腫瘍抗原に対するCTLについて鋭意研究した結果、腫瘍抗原であるMAGE−A4に対するHLA−A24拘束性のCTLからTCRα鎖及びβ鎖をコードするcDNAをクローニングすることに成功した。さらに、HLA−A24分子を発現するCTL等の細胞にこれらのcDNAから調製したRNAを導入することにより、これらの細胞がHLA−A24拘束性のMAGE−A4由来ペプチド特異的な細胞傷害性を示すことを見出し、本発明を完成した。
【0015】
本発明の第1の態様は、HLA−A24拘束性の、MAGE−A4143-151特異的なT細胞レセプターを構成するポリペプチド、ならびに前記レセプターの可変領域のポリペプチドを有するポリペプチドに関する。
【0016】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様のポリペプチドにより構成されていることを特徴とする、HLA−A24拘束性の、MAGE−A4143-151特異的なTCRに関する。
【0017】
本発明の第3の態様は、HLA−A24拘束性の、MAGE−A4143-151特異的なTCRをコードする核酸、ならびに前記レセプターの可変領域のポリペプチドを有するポリペプチドをコードする核酸に関する。
【0018】
本発明の第4の態様は、本発明の第3の態様の核酸を含んでなる組換え核酸に関する。
【0019】
本発明の第5の態様は、本発明の第4の態様の組換え核酸が挿入されてなるベクターに関する。
【0020】
本発明の第6の態様は、本発明の第3の態様の核酸が導入されている、又は第5の態様のベクターで形質転換されていることを特徴とする、HLA−A24拘束性のMAGE−A4143-151特異的なTCRを発現する細胞に関する。
【0021】
本発明の第7の態様は、本発明の第6の態様の細胞又は第5の態様のベクターを有効成分として含有することを特徴とする制がん剤に関する。
【0022】
本発明の第8の態様は、本発明の第7の態様の制がん剤を投与する工程を包含する、癌の治療方法に関する
【発明の効果】
【0023】
本発明により、HLA−A24拘束性のMAGE−A4143-151特異的なTCRのα鎖及びβ鎖をコードする核酸が提供される。また、HLA−A24拘束性ではない、またはMAGE−A4143-151特異性を有しないT細胞をエフェクター細胞として使用する腫瘍細胞傷害方法が提供される。前記のエフェクター細胞は、例えばがんの治療において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】#2−28細胞、RNA導入ms69細胞およびms69細胞のテトラマーアッセイの結果を示す図である。
図2】#2−28細胞、RNA導入CD8陽性細胞およびCD8陽性細胞のテトラマーアッセイの結果を示す図である。
図3】#2−28細胞、RNA導入ms69細胞およびms69細胞のELISPOTアッセイの結果を示す図である。
図4】RNA導入CD8陽性細胞およびCD8陽性細胞のELISPOTアッセイの結果を示す図である。
図5】#2−28細胞、RNA導入ms69細胞およびms69細胞の細胞傷害活性を示す図である。
図6】#2−28細胞、RNA導入CD8陽性細胞およびCD8陽性細胞の細胞傷害活性を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1の態様は、HLA−A24拘束性の、MAGE−A4143-151特異的なT細胞レセプターを構成するポリペプチドであって、前記レセプターの可変領域のポリペプチドを有するものに関する。前記のポリペプチドには、TCRα鎖及びTCRβ鎖の2種があり、両鎖が組み合わされてHLA−A24拘束性のMAGE−A4143-151特異的なTCRを構成する。
【0026】
前記α鎖ポリペプチドは、β鎖とともにHLA−A24拘束性のMAGE−A4143-151特異的なTCRを形成しうるものであって、α鎖可変領域のポリペプチドとして、配列表の配列番号5に示されるアミノ酸配列のポリペプチド;配列表の配列番号5に示されるアミノ酸配列において、1〜数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換を有するポリペプチド;から選択されるものを有するものを意味する。本発明における、TCRのα鎖由来のポリペプチドは、前記のα鎖可変領域のアミノ酸配列もしくはこれに類似した配列を必須の構成成分として含有するものである。定常領域を含有する、α鎖全体のアミノ酸配列(配列番号1)もしくはこれに類似した配列、すなわち1〜数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドは本発明の好適な態様の一つである。
【0027】
また、前記β鎖ポリペプチドは、α鎖とともにHLA−A24拘束性のMAGE−A4143-151特異的なTCRを形成しうるものであって、β鎖可変領域のポリペプチドとして、配列表の配列番号7に示されるアミノ酸配列のポリペプチド;配列表の配列番号7に示されるアミノ酸配列において、少なくとも1つのアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換を有するポリペプチド;から選択されるものを有するものを意味する。本発明における、TCRのβ鎖由来のポリペプチドは、前記のβ鎖可変領域のアミノ酸配列もしくはこれに類似した配列を必須の構成成分として含有するものである。定常領域を含有する、β鎖全体のアミノ酸配列(配列番号2)もしくはこれに類似した配列、すなわち1〜数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換を有するアミノ酸配列からなるポリペプチドは本発明の好適な態様の一つである。
【0028】
ここで、「HLA−A24拘束性のMAGE−A4143-151特異的なTCR」とは、配列表の配列番号9に示されるアミノ酸配列を有するペプチド(MAGE−A4143-151、以下、P143と略す)とHLA−A24分子との複合体を特異的に認識し、かつ、該TCRがT細胞表面に存在するときに該T細胞に標的細胞に対するHLA−A24拘束性のP143特異的な細胞傷害活性を付与しうるものである。上記複合体を特異的に認識することは公知の方法によって確認すればよく、好適な方法として、例えばHLA−A24分子とP143を用いたテトラマー解析およびELISPOTアッセイが挙げられる。ELISPOTアッセイを行うことにより、該TCRを細胞表面に発現しているT細胞がTCRにより標的細胞を認識し、そのシグナルが細胞内に伝達されたことを確認することができる。上記複合体がT細胞表面に存在するときに該T細胞に細胞傷害活性を付与しうることの確認も公知の方法によればよく、好適な方法として、例えばクロムリリースアッセイなどのHLA−A24陽性標的細胞に対する細胞傷害活性の測定が挙げられる。
【0029】
本発明のポリペプチドは、後述する本発明の核酸を使用して遺伝子工学的に生産することができる。例えば、前記のα鎖ポリペプチドをコードする核酸、β鎖ポリペプチドをコードする核酸の両方を細胞に導入してα鎖、β鎖ポリペプチド発現させることにより、当該細胞にHLA−A24拘束性の、MAGE−A4143-151特異的なTCRを発現させることができる。
【0030】
本発明の第2の態様は、本発明のポリペプチドにより構成されていることを特徴とする、HLA−A24拘束性の、MAGE−A4143-151特異的なTCRに関する。前記のTCRは、特に本発明を限定するものではないが、例えば後述の本発明の核酸を使用して、前記核酸にコードされているポリペプチドを人為的に発現させることにより、天然において付随している生体成分とは分離された形態で調製することができる。
【0031】
本発明の第3の態様は、HLA−A24拘束性の、MAGE−A4143-151特異的なTCRまたはその可変領域をコードする核酸に関する。
【0032】
本発明の核酸とは、TCRα鎖可変領域ポリペプチドを有するポリペプチドをコードする核酸またはTCRβ鎖可変領域ポリペプチドを有するポリペプチドをコードする核酸であって、それぞれ、TCRβ鎖ポリペプチドをコードする核酸またはTCRα鎖ポリペプチドをコードする核酸とともに細胞に導入した場合にHLA−A24/MAGE−A4143-151複合体特異的に結合する分子が前記の細胞で発現される。なお、TCRα鎖可変領域ポリペプチドを有するポリペプチドをコードする核酸にはTCRα鎖ポリペプチドをコードする核酸、TCRα鎖可変領域ポリペプチドをコードする核酸が、TCRβ鎖可変領域ポリペプチドを有するポリペプチドをコードする核酸にはTCRβ鎖ポリペプチドをコードする核酸、TCRβ鎖可変領域ポリペプチドをコードする核酸が含まれ、TCRα鎖ポリペプチドをコードする核酸とTCRβ鎖ポリペプチドをコードする核酸、TCRα鎖可変領域ポリペプチドをコードする核酸とTCRβ鎖可変領域ポリペプチドをコードする核酸、いずれの組み合わせを細胞に導入した場合にもHLA−A24拘束性のMAGE−A4143-151特異的なTCRが前記の細胞で発現される。
【0033】
本発明を限定するものではないが、前記α鎖ポリペプチドをコードする核酸としては、配列表の配列番号3に示される塩基配列からなる核酸、ならびに前記塩基配列の核酸又はその相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズしうる核酸が例示される。α鎖ポリペプチドの可変領域をコードする核酸としては、配列表の配列番号6に示される塩基配列からなる核酸、ならびに前記塩基配列の核酸又はその相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズしうる核酸が例示される。また、前記β鎖ポリペプチドをコードする核酸としては、配列表の配列番号4に示される塩基配列からなる核酸、ならびに前記塩基配列の核酸又はその相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズしうる核酸が例示される。β鎖ポリペプチドの可変領域をコードする核酸としては、配列表の配列番号8に示される塩基配列からなる核酸、ならびに前記塩基配列の核酸又はその相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズしうる核酸が例示される。
【0034】
ここで、ストリンジェントな条件としては、1989年、コールド・スプリング・ハーバー・ラボラトリー発行、J.サムブルック(J.Sambrook)ら編集、モレキュラー・クローニング:ア・ラボラトリー・マニュアル第2版(Molecular Cloning: A Laboratory Manual 2nd ed.)等に記載された条件が例示される。具体的には、例えば0.5% SDS、5×デンハルツ溶液、0.01% 変性サケ精子DNAを含む6×SSC中、プローブとともに65℃にて12〜20時間インキュベートする条件が挙げられる。プローブにハイブリダイズした核酸は、例えば0.5% SDSを含む0.1×SSC中、37℃で洗浄して非特異的に結合したプローブを除去した後に検出することができる。
【0035】
本明細書における核酸とは、1本鎖あるいは2本鎖の、DNA、RNAあるいはDNA−RNAキメラ、又はDNA−RNAヘテロ2本鎖を意味する。核酸の全部又は一部がRNAである場合は、RNA部分の配列については、本願明細書に記載の配列表におけるTをUと読み替えることとする。本発明の好適な態様としては、本発明のTCRα鎖ポリペプチドをコードする核酸またはTCRα鎖可変領域ポリペプチドをコードする核酸と、TCRβ鎖ポリペプチドをコードする核酸またはTCRβ鎖可変領域ポリペプチドをコードする核酸の、2種の核酸の組合せが例示される。前記の核酸の組み合わせは、細胞においてHLA−A24拘束性の、MAGE−A4143-151特異的なTCRを発現させる目的に有用である。
【0036】
本発明の核酸は、例えば次のようにして得ることができる。HLA−A24拘束性のMAGE−A4143-151特異的なCTL、例えば非特許文献10に記載のクローン#2−28から常法によりRNAを調製し、cDNAを合成する。これを鋳型とし、TCRα鎖及びβ鎖の定常領域をコードする核酸に相補的なアンチセンスプライマーを用いて5’−ラピッド アンプリフィケーション オブ cDNA エンド(RACE)を行う。5’−RACEは公知の方法により行えばよく、例えばCapFishing Full−length cDNA Premix Kit(シージーン社製)のような市販のキットを用いて行うことができる。前記手法により増幅されたDNAをプラスミドベクターに組み込み、大腸菌を形質転換する。形質転換体からプラスミドを調製し、挿入されたDNAの塩基配列を決定する。
【0037】
得られた塩基配列と既知のTCRα鎖及びβ鎖の遺伝子の配列を比較することにより、5’−RACEにより増幅された、TCR遺伝子とは無関係のDNAを除外することができる。また、PCRの際に塩基配列に変異が生じたDNAが増幅される可能性があるので、本発明では、複数の大腸菌クローンから配列を決定し、そのコンセンサス配列から推定される前記CTLが本来有するTCRα鎖遺伝子及びβ鎖遺伝子の配列を使用することが好ましい。
【0038】
配列表の配列番号3で示される塩基配列を有する、配列番号1のアミノ酸配列のTCRα鎖をコードする核酸、及び、配列表の配列番号4で示される塩基配列を有する、配列番号2のアミノ酸配列のTCRβ鎖をコードする核酸は、上記の方法により得られたものである。
【0039】
本発明には、上記の方法により得られたDNAを使用してもよいし、同じ配列を有する核酸を化学合成して使用してもよい。
【0040】
本発明の核酸のうち、TCRを構成する各鎖の可変領域に相当する部分をコードする核酸は、他の機能性分子、例えば抗体やレセプターをコードする核酸のうちの、定常領域や細胞内領域をコードする領域に接続させることができる。こうして構築された新規核酸は、HLA−A24拘束性のMAGE−A4143-151特異的な結合活性が付与された、キメラ機能性分子の製造に有用である。
【0041】
本発明の第4の態様は、本発明の核酸を含んでなる組換え核酸である。前記の組換え核酸とは、特に本発明を限定するものではないが、本発明の核酸を細胞に導入した場合に前記核酸にコードされているポリペプチドの翻訳を可能とする種々の要素を付加された核酸が例示される。
【0042】
DNAからなる本発明の組換え核酸としては、プロモーター(例えば、ホスホグリセリン酸キナーゼプロモーター、Xistプロモーター、β−アクチンプロモーター、RNAポリメラーゼIIプロモーター等の哺乳類由来プロモーター、SV40初期プロモーター、サイトメガロウイルスプロモーター、単純ヘルペスウイルスのチミジンキナーゼプロモーター、各種レトロウイルスのLTRプロモーター等のウイルス由来プロモーター)、ターミネーター、エンハンサーやそのほかの転写制御領域を有するものが例示される。さらに、第1の発明のポリペプチドの翻訳に寄与する配列(Kozak配列等)をコードしていてもよい。前記の各要素が本発明の核酸からのRNAの転写、ポリペプチドの翻訳に適するよう、機能的に連携する位置に配置されることは当然である。なお、組換え核酸がRNAである場合には転写の制御に関する要素は不要である。
【0043】
本発明の組換え核酸は後述するようにベクターに組み込んで使用する他、RNAである本発明の核酸を直接細胞に導入することによりTCRの発現に使用することもできる。RNAの導入方法としては、公知の方法を用いれば良いが、例えば電気穿孔法が好適に使用できる。
【0044】
本発明の第5の態様は、本発明の組換え核酸が少なくとも1つ挿入されてなるベクターに関する。前記のベクターは所望の細胞にHLA−A24拘束性の、MAGE−A4143-151特異的なTCRを発現させるうえで有用である。特に好適な態様としては、(1)本発明のTCRα鎖ポリペプチド又はその可変領域ポリペプチドを有するポリペプチドをコードする核酸を含有する組換え核酸と本発明のTCRβ鎖ポリペプチド又はその可変領域ポリペプチドを有するポリペプチドをコードする核酸を含有する組換え核酸の両方が挿入されてなるベクター、および(2)本発明のTCRα鎖ポリペプチド又はその可変領域ポリペプチドを有するポリペプチドをコードする核酸を含有する組換え核酸が挿入されてなるベクターと本発明のTCRβ鎖ポリペプチド又はその可変領域ポリペプチドを有するポリペプチドをコードする核酸を含有する組換え核酸が挿入されてなるベクターの組み合わせが例示される。前記の(1)の態様において、TCRα鎖ポリペプチドをコードする核酸とTCRβ鎖ポリペプチドをコードする核酸はそれぞれ別のプロモーターにより転写、翻訳されてもよく、内部リボソームエントリー部位(IRES)を使用して一つのプロモーターで転写、翻訳されてもよい。
【0045】
本発明に使用されるベクターには特に限定はなく、プラスミドベクター、ウイルスベクターなど公知のベクターより目的に応じて適当なものを選択し、使用すればよい。たとえば、前記の組換え核酸をプラスミドベクターに組み込んだ場合には、細胞への導入にはリン酸カルシウム法、カチオニック・リピド法、リポソーム法、エレクトロポーレーション法等の遺伝子導入法を使用できる。
【0046】
細胞に感染して外来DNAを導入する能力を有するウイルスベクターは本発明に好適である。本発明には、レトロウイルスベクター(レンチウイルスベクターやシュードタイプベクターを含む)、アデノウイルスベクター、アデノ随伴ウイルスベクター、ヘルペスウイルスベクター等の公知のウイルスベクターを使用することができる。本発明の組換え核酸を挿入されたウイルスベクターは、各ウイルスに適した条件で目的の細胞に感染させ、本発明の核酸を導入させることができる。挿入された外来の核酸を染色体上に組み込む能力を有するレトロウイルスベクターは本発明に好適である。
【0047】
本発明の第6の態様は、本発明の核酸が導入されていることを特徴とする、HLA−A24拘束性のMAGE−A4143-151特異的なTCRを発現する細胞に関する。ここで、本発明の核酸は、前記の本発明の組換え核酸もしくは本発明のベクターとして所望の細胞に導入されていてもよく、本発明の細胞の好適な態様としては、TCRα鎖ポリペプチド又はその可変領域ポリペプチドを有するポリペプチドをコードする核酸とTCRβ鎖ポリペプチド又はその可変領域ポリペプチドを有するポリペプチドをコードする核酸の両方が導入されている細胞や本発明のベクターで形質転換されている細胞が例示される。さらに、前記の核酸が染色体DNA上に組み込まれている細胞も本発明に包含される。
【0048】
TCRはT細胞の抗原の認識に重要な役割を示すことから、好適な本発明の態様は本発明の核酸が導入されたT細胞である。生体より採取されたT細胞に、前記の手法により本発明の核酸を導入することにより、HLA−A24拘束性の、MAGE−A4143-151特異的なTCRを発現するT細胞を得ることができる。さらに、本発明の好適な態様として、T細胞に分化しうる細胞に前記の核酸を導入し、その後に細胞をT細胞に分化させてもよい。T細胞に分化しうる細胞としては、例えば造血幹細胞、リンパ球系共通前駆細胞及びT細胞前駆細胞が例示される。なお、核酸が導入される導入対象細胞は単一の細胞種に分画されている必要はなく、前記の導入対象細胞を含有する細胞集団を核酸導入の対象とすることができる。
【0049】
前記の、導入対象細胞を含有する細胞集団は、ヒトもしくは非ヒト哺乳動物の例えば末梢血、骨髄および臍帯血より採取すればよい。必要に応じ、T細胞および/またはT細胞に分化しうる細胞を分画もしくは富化して本発明に使用することができる。本発明のTCR遺伝子導入細胞をがんなどの治療に用いる場合には、当該細胞集団は治療対象となる患者本人、あるいは患者のHLAタイプと一致したドナーから採取することが好ましい。
【0050】
本発明の核酸を細胞に導入する方法に特に限定はなく、公知の方法を用いることができる。本発明の核酸または本発明の組換え核酸を導入する場合には、例えばエレクトロポーレーション法、リン酸カルシウム法、カチオニック・リピド法、リポソーム法を使用する方法を用いることができる。市販のトランスフェクション試薬〔例えば、TransITシリーズ(ミラス社製)、GeneJuice(ノバジェン社製)、RiboJuice(ノバジェン社製)、Lipofectamine(インビトロジェン社製)〕を用いることにより、簡便かつ高効率に核酸を導入できる。本発明のベクターを用いる場合には、ベクターがプラスミドベクターであれば前記の核酸と同様の方法により細胞に導入することができる。一方、ベクターがウイルスベクターであれば、各々のウイルスベクターに適した感染方法を選択すればよい。特に、レトロウイルスベクターを用いる場合には、組換えフィブロネクチンフラグメントであるCH−296(タカラバイオ社製)を用いることにより、各種細胞、特にレトロウイルスベクターの感染効率が低い造血幹細胞に対して、高効率な遺伝子導入が可能となる。
【0051】
本発明の第7の態様は、本発明の第5の態様のベクターまたは第6の態様の細胞を有効成分として含有することを特徴とする制がん剤に関する。本発明の第6の態様により得られた、本発明の核酸を導入されたT細胞は、HLA−A24分子とMAGE−A4143-151ペプチドを提示する細胞に対して細胞傷害活性を示す。したがって、前記の本発明のベクターおよび細胞はMAGE−A4を発現する癌に対する制がん剤として使用することができる。
【0052】
前記の、本発明の制がん剤は、本発明のベクターまたは細胞を有効成分として含有することを特徴とする。該制がん剤は、前記のベクターまたは細胞を医薬的に許容される希釈剤に懸濁した形で提供される。なお、ここで言う希釈剤とは例えば当該ベクターまたは細胞の保存に適した培地、生理食塩水、又はリン酸緩衝生理食塩水である。培地としては、特に限定するものではないが、RPMI、AIM−V、X−VIVO10などの培地が一般的に挙げられる。また該制がん剤には医薬的に許容される担体、保存剤等が安定化の目的で添加されていてもよい。なおここで言う担体とはヒト血清アルブミン等である。本発明の細胞を有効成分として含有する制がん剤には前記の細胞を好ましくは1×104〜1×108個/mL、より好ましくは5×105〜5×107個/mL含有させる。
【0053】
本発明の細胞を有効成分として含有する制がん剤をヒトに投与する場合には、例えば注射器で投与することができ、成人1人当たりの投与量としては、通常、前記の細胞数が好ましくは1×106〜1×1010個となるようにする。なお、前記の値は目安であり、これに限定されるものではない。また、本発明のベクターを有効成分として含有する制がん剤の場合、投与経路やベクターの種類等により制がん剤中のベクター濃度および投与量は大きく異なる。
【0054】
以上のとおり、本発明により癌の治療方法が提供される。前記治療方法は、本発明の第5の態様のベクターを有効成分として使用する場合にはin vivo遺伝子治療である。一方、本発明の細胞を有効成分として使用する場合には、体外に摘出された細胞にHLA−A24拘束性の、MAGE−A4143-151特異的なTCRをコードする核酸を導入した後にこれを患者に投与するex vivo治療である。本発明の治療方法は、投与する個体(たとえばヒト)由来の細胞、もしくはHLAのタイプが同一である個体由来の細胞に核酸を導入して使用することができるため、毒性は特に認められない。
【実施例】
【0055】
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0056】
実施例1 MAGE−A4特異的CTLクローン#2−28のTCRα鎖及びβ鎖遺伝子のクローニングと配列決定
(1)#2−28からのRNA調製、5’−RACE、クローニング
非特許文献10記載の、MAGE−A4143-151ペプチド(配列表の配列番号9、以下P143と略す)をパルスした標的細胞にHLA−A2402拘束性に細胞傷害活性を示すCTLクローンである#2−28細胞を培養し、2×105個の細胞からRNeasy Mini Kit(キアゲン社製)を用いてRNAを抽出した。このRNAのうち200ngを鋳型に、CapFishing Full−length cDNA Premix Kit(シージーン社製)を用いて、キットの取扱説明書に従ってcDNAを合成した。なお、配列表の配列番号10に示すオリゴdTアダプター、Reverse Transcriptase M−MLV(RNaseH free)(タカラバイオ社製)及び前記酵素に添付の反応用緩衝液を用いて逆転写反応を行った。
【0057】
こうして得られた1本鎖cDNAを鋳型に、上記キットを用いてPCRを行った。5’側プライマーとしてはキット添付の5’−RACEプライマー(配列番号11)を、3’側プライマーとしてはTCRα鎖C領域に特異的な3−TRα−Cプライマー(配列番号12)、TCRβ鎖C1領域に特異的な3−TRβ−C1プライマー(配列番号13)又はTCRβ鎖C2領域に特異的な3−TRβ−C2プライマー(配列番号14)を使用した。これらの反応を、順にPCR−α、PCR−β1及びPCR−β2と呼ぶ。各反応液を94℃で3分間保持したあと、94℃で40秒間、58℃で40秒間、72℃で1分間のサイクルを30回繰り返し、72℃で5分間保持した。各反応産物の一部をアガロースゲル電気泳動により分析したところ、PCR−α及びPCR−β2において約1kbのDNAが増幅していた。
【0058】
PCR−α及びPCR−β2の残りの反応産物をアガロースゲル電気泳動によって分離し、約1kbのDNAをゲルから回収した。これらをpT7blue T−Vector(ノバジェン社製)とライゲーションし、大腸菌DH5αを形質転換した。
【0059】
(2)配列の決定、クラスタリング、クローンの選択
こうして得られたPCR−α及びPCR−β2に由来する形質転換体からそれぞれ96個を選択してそのそれぞれからプラスミドを調製し、自動シークエンサーを用いてDNA塩基配列を決定した。配列データからpT7blueの配列を除去した後にクラスタリングを行ったところ、最も大きいコンティグのコンセンサス配列に含まれる最も長いオープンリーディングフレームの配列は配列表の配列番号3及び配列番号4に示すとおりであった。これらの配列は順に、#2−28細胞のTCR α鎖遺伝子及びβ鎖遺伝子のcDNA配列である。cDNA塩基配列から推定されるTCR α鎖及びβ鎖のアミノ酸配列を、配列表の配列番号1及び配列番号2に示す。上記のプラスミドの中からTCR α鎖遺伝子及びβ鎖遺伝子cDNAのコンセンサス配列をpT7blueのT7プロモーターと同じ向きに持つプラスミドを選択し、それぞれpBS MAGE TCRα及びpBS MAGE TCRβと命名した。
【0060】
実施例2 mRNAトランスフェクションによるMAGE−A4特異的TCRの発現
(1)mRNAの調製
制限酵素EcoRIで消化することによりpBS MAGE TCRα及びpBS MAGE TCRβを直鎖化した。これらを鋳型とし、mMESSAGE mMACHINE T7 Kit(アンビオン社製)を用いて、キットの取扱説明書に従ってインビトロ転写を行った。その後、Poly(A) Tailing Kit(アンビオン社製)を用いて、キットの取扱説明書に従って、前記転写されたRNAにポリ(A)鎖を付加した。こうしてMAGE−A4 TCRα mRNA及びMAGE−A4 TCRβ mRNAを得た。これらをリン酸緩衝生理食塩水(PBS)に溶解し、使用時まで−80℃で保存した。
【0061】
(2)mRNAトランスフェクション
ms69細胞はSAGE715−723ペプチド(配列表の配列番号15、以下P715と略す)をパルスした標的細胞にHLA−A2402拘束性に細胞傷害活性を示すCTLクローンであり、非特許文献10記載の#22細胞と同様の方法により得られた、#22とは別のクローンである。1×107個のms69細胞をX−VIVO20培地(キャンブレックス社製)で2回洗浄した。実施例2−(1)で調製したMAGE−A4 TCRα mRNA及びMAGE−A4 TCRβ mRNAの各80μgと上記細胞をX−VIVO20培地中、150μLとなるように混合し、ECM830遺伝子導入装置(BTX社製)を用いて電気穿孔法によりRNAの細胞への導入を行った。mRNA導入後の細胞は、X−VIVO20培地中、5%CO2存在下37℃で1日培養した。以下、こうして得られた細胞をRNA導入ms69細胞と記載する。
【0062】
ヒト末梢血からFicoll遠心法により末梢血単核球(PBMC)を分離し、0.5% AB型血清添加PBSで2回洗浄した。これに、抗CD8抗体を固相化した磁気ビーズであるMACS CD8 MicroBeads(ミルテニー社製)を添加して4℃で15分間反応させた後、ビーズを0.5% AB型血清添加PBSで1回洗浄した。マグネットを装着したカラムでトラップした磁気ビーズから回収したCD8陽性細胞を10% AB血清及び100U/mLインターロイキン2(IL−2)を添加したRPMI1640培地に1×106個/mLとなるように懸濁した。24ウェルプレートの各ウェルにPBSで1μg/mLに希釈した抗CD3抗体(オルソクローンOKT3、ヤンセンファーマ社製)を300μLずつ加え、4℃で1晩静置したあと上清を捨て、各ウェルに上記のCD8陽性細胞懸濁液を1mLずつ分注した。培養開始4日後、7日後及び10日後に培地を半量ずつ交換しながら5%CO2存在下37℃で培養した。培養開始12日後のCD8陽性細胞1×107個をX−VIVO20培地(キャンブレックス社製)で2回洗浄した。ms69細胞と同様の方法により、この細胞にMAGE−A4 TCRα mRNA及びMAGE−A4 TCRβ mRNAを導入した。mRNA導入後の細胞はX−VIVO20培地中、5%CO2存在下37℃で1日培養した。以下、こうして得られた細胞をRNA導入CD8陽性細胞と記載する。
【0063】
(3)テトラマーアッセイ
HLA−A2402重鎖のC末端にビオチンプロテインリガーゼBirAの基質となる配列を付加したポリペプチド及びβ2−ミクログロブリンを不溶性封入体として大腸菌に発現させた。前記の封入体をP143ペプチド存在下、インビトロでリフォールディングさせることにより、HLA−A2402/β2−ミクログロブリン/P143複合体を形成させた。得られた複合体にビオチンプロテインリガーゼ(アビディティー社製)を作用させ、フィコエリスリン標識ストレプトアビジン(Streptavidin−PE、インビトロジェン社製)を用いてテトラマーを調製した。
【0064】
上記RNA導入ms69細胞及びRNA導入CD8陽性細胞を20μg/mLテトラマーと37℃で30分間反応させた後、Tricolor標識マウス抗ヒトCD8抗体(カルタグ社製)と氷上で15分間反応させた。細胞を洗浄後、FACS Calibur(BD社製)を用いてフローサイトメトリー解析を行った。ms69細胞及びCD8陽性細胞を陰性対象、#2−28細胞を陽性対象として使用した。
【0065】
その結果、テトラマー陽性率は、陰性対照のms69細胞では0.60%であったのに対してRNA導入ms69細胞では66.65%であり、また、陰性対照のCD8陽性細胞では23.1%であったのに対してRNA導入CD8陽性細胞では34.4%であった。RNAを導入したms69細胞及びCD8陽性細胞のテトラマーアッセイの結果を図1及び図2に示す。この結果から、#2−28細胞からクローニングしたTCRα鎖及びTCRβ鎖の遺伝子産物は、P143とHLA−A2402の複合体を認識することが明らかになった。
【0066】
(4)ELISPOTアッセイ
標的細胞は次のようにして調製した。B×Tハイブリッド細胞株174CEM.T2(以下、T2細胞と略す)にHLA−2402遺伝子をトランスフェクトして作製されたT2−A24細胞(Ikuta Y.ら、Blood、第99巻、第3717−3724頁、2002年)を10% ウシ胎児血清(FCS)含有RPMI1640培地で培養し、遠心分離のあと上清を捨てた。その後、RPMI1640培地に懸濁し、遠心分離のあと上清を捨てることにより細胞を洗浄した。このようにして細胞の洗浄を合計3回行ったあと、1mLの10μM P143あるいはP715含有又はペプチド不含RPMI1640培地に懸濁して、5%CO2存在下、37℃で1時間インキュベートした。遠心分離により細胞を回収し、RPMI1640培地に懸濁したあと遠心分離を行って細胞を洗浄した。5×104個/100μLとなるように細胞をRPMI1640培地に懸濁し、ELISPOTアッセイの標的細胞として使用した。
【0067】
マルチスクリーン HA 96ウェル濾過およびアッセイプレート(ミリポア社製)の各ウェルに2μg/mLとなるようにPBSで希釈した抗ヒトインターフェロンγ抗体(1−D1K、マブテック社製)を100μLずつ分注し、4℃で1晩放置した。ウェル内の液を捨てた後、各ウェルに100μLのRPMI1640培地を加え、15分間放置し、液を捨ててプレートを洗浄した。この洗浄を更に1回行った後、10% AB型血清含有RPMI1640培地を各ウェルに加え、37℃で1時間放置し、ブロッキングを行った。ブロッキング後、上清を吸引したあと各ウェルに100μLのRPMI1640培地を添加してプレートを洗浄した。この洗浄操作を合計3回行った。
【0068】
実施例2−(2)で調製した(a)RNA導入ms69細胞、(b)陰性対照のms69細胞及び(c)陽性対象の#2−28細胞並びに実施例2−(2)で調製した(d)RNA導入CD8陽性細胞及び(e)陰性対照のCD8陽性細胞を遠心分離により回収し、RPMI1640培地で1回洗浄した。(a)、(b)及び(c)は2000個、1000個又は500個/100μLとなるように、(d)及び(e)は2×104個/100μLになるようにRPMI1640培地に懸濁し、実施例2−(4)で調製した洗浄済みプレートのウェルに100μLずつ分注した。これに100μLの上記標的細胞懸濁液を添加し、5%CO2存在下、37℃で20時間培養した。
【0069】
プレートの各ウェルから液を除去し、0.05% Tween20含有PBS(PBS−T)で6回洗浄した。ビオチン化抗ヒトインターフェロンγ抗体(マブテック社製、クローン名:7−B6−1)を0.2μg/mLになるようにPBSで希釈し、各ウェルに100μLずつ分注したあと、4℃で1晩放置した。
【0070】
プレートの各ウェルから液を除去し、PBS−Tで6回洗浄した。1μg/mLになるようにPBSで希釈したアルカリフォスファターゼ標識ストレプトアビジン(バイオラッド社製)を各ウェルに100μLずつ分注し、室温で1時間反応させた。プレートの各ウェルから液を除去し、PBS−Tで3回洗浄した後、AP発色キット(バイオラッド社製、170−6432)の取扱説明書に従い調製した発色液を各ウェルに100μLずつ分注し、遮光して発色反応を行った。蒸留水で発色を停止した後、プレートの写真を撮影した。
【0071】
その結果、ms69細胞及びCD8陽性細胞に比べてRNAを導入したms69細胞及びCD8陽性細胞は、標的細胞がP143をパルスされている場合により多数のインターフェロンγ陽性スポットを形成した。この結果を図3及び図4に示す。図3はCTLクローンをエフェクター細胞として使用したときのELISPOTアッセイの結果であり、ms69細胞はP715をパルスした標的細胞に対して、#2−28細胞はP143をパルスした標的細胞に対して、RNA導入ms69細胞はいずれの標的細胞に対しても多数のインターフェロンγ陽性スポットを形成した。図4はCD8陽性細胞をエフェクター細胞として使用したときのELISPOTアッセイの結果であり、RNA導入CD8陽性細胞はP143をパルスされた標的細胞に特異的にインターフェロンγ陽性スポットを形成した。
【0072】
(5)細胞傷害活性
T2細胞、T2−A24細胞及び、T2細胞にHLA−A0201遺伝子をトランスフェクトして作製されたT2−A2細胞をRPMI1640培地で3回洗浄し、5×106個/mLになるようにRPMI1640培地に懸濁した。これらの細胞懸濁液1mLに終濃度10μMのP143又はP715を加え、室温で15分間静置した後、10%FCS含有RPMI1640培地1mLを添加して37℃で1時間インキュベートした。細胞をFCS不含RPMI1640培地で3回洗浄し、1×106個の細胞を100μLの10%FCS含有RPMI1640培地に懸濁した。これに50μLのNa251CrO4水溶液(3.7MBq)を添加し、37℃で2時間標識した。これを標的細胞として細胞傷害活性の測定に使用した。
【0073】
ms69細胞、RNA導入ms69細胞、#2−28細胞、CD8陽性細胞及びRNA導入CD8細胞をRPMI1640培地で2回洗浄し、2×106個/mL、1×106個/mL、5×105個/mL、2.5×105個/mL、1.25×105個/mL及び、6.25×104個/mLとなるように10%FCS含有RPMI1640培地に懸濁し(エフェクター細胞)、その100μLを96穴V底プレートのウェルに入れた。1×106個/mLとなるように標的細胞を10%FCS含有RPMI1640培地に懸濁し、エフェクター細胞の入ったウェルに100μLずつ添加した。37℃で4時間反応させた後、遠心分離により上清を回収し、100μLの上清に遊離された51Cr量をガンマカウンターを用いて測定した。放射活性の測定値から、次の式により特異的細胞傷害活性を計算した。
【0074】
【数1】
【0075】
上式において、最小放出値とはエフェクター細胞を加えないウェルにおける51Cr遊離量であり、標的細胞からの51Crの自然遊離量を示す。また、最大放出値とはトリトンX−100を標的細胞に加えて破壊したときの51Cr遊離量を示す。
【0076】
この結果を図5及び図6に示す。図5はP715でパルスしたT2−A24細胞(a)、P143でパルスしたT2−A24細胞(b)及びP143でパルスしたT2−A2細胞(c)に対するCTLクローンの細胞傷害活性を示す図であり、横軸はエフェクター細胞数/標的細胞数比(E/T比)を、縦軸は特異的細胞傷害活性(%)を示す。ms69細胞はP715でパルスしたT2−A24細胞にだけ、#2−28細胞はP143でパルスしたT2−A24細胞にだけ細胞傷害活性を示したのに対して、RNAを導入したms69細胞は両方の標的細胞に対して細胞傷害活性を示した。P143でパルスしたT2−A2細胞に対してはどのエフェクター細胞も細胞傷害活性を示さなかった。図6はP143でパルスしたT2細胞(a)、ペプチドパルスしていないT2−A24細胞(b)及びP143でパルスしたT2−A24細胞(c)に対するCD8細胞の細胞傷害活性を示す図であり、横軸はE/T比を、縦軸は特異的細胞傷害活性(%)を示す。陰性対照のCD8陽性細胞はいずれの細胞に対しても細胞傷害活性を示さなかったのに対して、RNAを導入したCD8陽性細胞及び陽性対象の#2−28細胞はP143でパルスしたT2−A24細胞に対して細胞傷害活性を示した。
【0077】
以上の結果から、#2−28細胞のTCR α鎖及びβ鎖をコードする遺伝子は、P143特異的なHLA−A2402拘束性の細胞傷害活性を、CTLクローン及び末梢血由来CD8細胞に付与することが明らかになった。
【0078】
なお、本発明の態様として、以下のものが挙げられる。
[1]配列表の配列番号5で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド又は該配列に1〜数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入もしくは置換がなされたアミノ酸配列からなるポリペプチドを有し、かつ配列表の配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドとともにHLA−A24拘束性のMAGE−A4143-151特異的なT細胞レセプターを構成しうるポリペプチド。
[2]配列表の配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、および該配列に1〜数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換がなされたポリペプチドから選択されるポリペプチドであって、かつ配列表の配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドとともにHLA−A24/MAGE−A4143-151複合体特異的に結合する分子を構成しうる、前記[1]記載のポリペプチド。
[3]配列表の配列番号7で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド又は該配列に1〜数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入もしくは置換がなされたアミノ酸配列からなるポリペプチドを有し、かつ配列表の配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドとともにHLA−A24拘束性のMAGE−A4143-151特異的なT細胞レセプターを構成しうるポリペプチド。
【0079】
[4]配列表の配列番号2で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチド、および該配列に1〜数個のアミノ酸残基の欠失、付加、挿入又は置換がなされたポリペプチドから選択されるポリペプチドであって、かつ配列表の配列番号1で示されるアミノ酸配列からなるポリペプチドとともにHLA−A24/MAGE−A4143-151複合体特異的に結合する分子を構成しうる、前記[3]記載のポリペプチド。
[5]前記[1]記載のポリペプチドおよび前記[3]記載のポリペプチドで構成されてなるHLA−A24拘束性のMAGE−A4143-151特異的なT細胞レセプター。
[6]前記[1]記載のポリペプチドをコードする核酸。
[7]配列表の配列番号3で示される塩基配列からなる核酸、又は前記の核酸もしくはその相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズしうる核酸である前記[6]記載の核酸。
【0080】
[8]配列表の配列番号6で示される塩基配列からなる核酸、又は前記の核酸もしくはその相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズしうる核酸である前記[6]記載の核酸。
[9]前記[3]記載のポリペプチドをコードする核酸。
[10]配列表の配列番号4で示される塩基配列からなる核酸、又は前記の核酸もしくはその相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズしうる核酸である前記[9]記載の核酸。
[11]配列表の配列番号8で示される塩基配列からなる核酸、又は前記の核酸もしくはその相補鎖とストリンジェントな条件下にハイブリダイズしうる核酸である前記[9]記載の核酸。
[12]前記[6]〜[11]いずれか記載の核酸を含有する組換え核酸。
[13]前記[12]記載の組換え核酸が少なくとも1つ挿入されてなるベクター。
【0081】
[14](1)前記[6]〜[8]いずれか記載の核酸を含有する組換え核酸と前記[9]〜[11]いずれか記載の核酸を含有する組換え核酸の両方が挿入されてなるベクター、および(2)前記[6]〜[8]いずれか記載の核酸を含有する組換え核酸が挿入されてなるベクターと前記[9]〜[11]いずれか記載の核酸を含有する組換え核酸が挿入されてなるベクターの組み合わせ、から選択される前記[13]記載のベクター。
[15]前記[6]〜[11]いずれか記載の核酸が導入された、HLA−A24拘束性のMAGE−A4143-151特異的なT細胞レセプターを発現する細胞。
[16]前記[6]〜[8]いずれか記載の核酸と前記[9]〜[11]いずれか記載の核酸の両方が導入された前記[15]記載の細胞。
【0082】
[17]前記[13]又は[14]記載のベクターで形質転換された、HLA−A24拘束性のMAGE−A4143-151特異的なT細胞レセプターを発現する細胞。
[18]T細胞もしくはT細胞に分化しうる細胞である前記[15]〜[17]いずれか記載の細胞。
[19]前記[13]又は[14]記載のベクターを有効成分として含有する制がん剤。
[20]前記[15]〜[18]いずれか記載の細胞を有効成分として含有する制がん剤。
[21]前記[18]または[19]記載の制がん剤を投与する工程を包含する、癌の治療方法。
【産業上の利用可能性】
【0083】
本発明によりMAGE−A4に対するHLA−A24拘束性のCTL由来のTCRα鎖及びβ鎖のポリペプチド、ならびに該ポリペプチドをコードする核酸が提供される。前記の核酸はHLA−A24分子とMAGE−A4143-151ペプチドを提示する細胞に対する細胞傷害活性をT細胞に付与できることから、MAGE−A4を発現する癌の治療に有用である。
【配列表フリーテキスト】
【0084】
SEQ ID NO:10; Oligo dT adaptor.
SEQ ID NO:11; 5'-RACE primer.
SEQ ID NO:12; Synthetic primer 3-TRalpha-C to amplify a DNA fragment encoding TCR alpha chain.
SEQ ID NO:13; Synthetic primer 3-TRbeta-C1 to amplify a DNA fragment encoding TCR beta chain.
SEQ ID NO:14; Synthetic primer 3-TRbeta-C2 to amplify a DNA fragment encoding TCR beta chain.
図1
図2
図3
図4
図5
図6
【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]