特許第5655249号(P5655249)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5655249圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】5655249
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置
(51)【国際特許分類】
   F04B 39/16 20060101AFI20141225BHJP
   H02H 3/08 20060101ALI20141225BHJP
   H02H 3/093 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   F04B39/16 F
   H02H3/08 D
   H02H3/093 D
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2013-226197(P2013-226197)
(22)【出願日】2013年10月31日
【審査請求日】2014年2月13日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000154521
【氏名又は名称】株式会社フクハラ
(74)【代理人】
【識別番号】100129056
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 信雄
(72)【発明者】
【氏名】石黒 衆亮
(72)【発明者】
【氏名】菊地 和弘
【審査官】 山本 崇昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−061819(JP,A)
【文献】 特開平05−332215(JP,A)
【文献】 特開平04−000212(JP,A)
【文献】 特開平04−281342(JP,A)
【文献】 特開2007−170216(JP,A)
【文献】 特開2000−126260(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 39/16
F04B 41/00
H02H 3/08
H02H 3/093
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
空気圧縮機が吐出する圧縮空気より発生するドレンを除去するための圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置であって、
AC電磁弁の電源線を監視する電流検知手段と、
前記電流検知手段の信号を所定の基準と比較した上で増幅でき得る比較増幅手段と、
AC電磁弁の排出指令信号の開始よりラッシュカレントが流れる所定時間以上を遅延させた信号を送出する一以上の時間遅延手段と、
前記比較増幅手段の信号と前記時間遅延手段の信号とを論理積もしくは否定論理積する判断手段と、
前記判断手段の真の信号を保持する異常電流保持手段と、
前記異常電流保持手段が異常電流である信号を保持した場合に前記AC電磁弁の電源をOFFする電源切断手段と、
を備え、前記AC電磁弁が開弁不良をきたした時に無駄な圧縮空気を放出しないことを特徴とする圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置。
【請求項2】
前記異常電流保持手段が異常電流である信号を保持した場合に、警報を発報する警報発報手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置。
【請求項3】
前記電流検知手段が、カレントトランスもしくはホール素子であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ドレンを除去するための装置に関し、より詳しくは、空気圧縮機が吐出する圧縮空気より発生するドレンを除去するための装置に関する。
【背景技術】
【0002】
空気圧縮機が吐出する圧縮空気からは、ドレンが発生する。前記ドレンは、圧縮空気圧回路中において、主に圧縮空気の温度が下がることにより発生する。前記ドレンが発生すると、圧縮空気の利用に際して邪魔なだけでなく、装置の故障を招きかねないという問題があった。そこで従来より、圧縮空気圧回路の所定中間箇所において、何らかの排出指令信号に基づき電磁的に弁を開閉させることで、前記ドレンを除去する電磁式ドレントラップを使用することが一般的となっている。
【0003】
しかしながら、前記電磁式ドレントラップによれば、AC電磁弁を使用した場合に、プランジャーやそれに類するものがドレン中に含まれるスラッジや油塊等を噛んでしまって動作不良を起こすことがあり、それにより過電流が発生してAC電磁弁のコイルを焼きつかせてしまうという問題があった。かかる問題は、より多くのスラッジや油塊を発生させやすい大型の空気圧縮機の後段に接続される大型のドレントラップで、特に多く起こっていた。
【0004】
そのようなAC電磁弁のコイルの焼き付きを防止すべく、ヒューズやポリスイッチなどの電源切断手段をAC電磁弁の電源と直列に取付ける対応が為されていたが、ACコイルにはラッシュカレントが流れるために、それを考慮すると必要以上に容量の大きいものを選定せざるを得ず、中途半端な動作不良で定格以上の電流が流れても、ヒューズやポリスイッチが切れずにAC電磁弁のコイルを過熱させ、その結果、装置寿命を短くしたり、また、中途半端な開弁で余分な圧縮空気を消費するものであった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−256171号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような従来の問題点に鑑み、圧縮空気用電磁式ドレントラップの機能性向上を実現することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明は、第一の構成として、空気圧縮機が吐出する圧縮空気より発生するドレンを除去するための圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置であって、AC電磁弁の電源線を監視する電流検知手段と、該電流検知手段の信号を所定の基準と比較した上で増幅でき得る比較増幅手段と、少なくともAC電磁弁の排出指令信号の開始よりラッシュカレントが流れる所定時間以上を遅延させた信号を送出する一以上の時間遅延手段と、比較増幅手段の信号と時間遅延手段の信号とを論理積もしくは否定論理積する判断手段と、該判断手段の真の信号を保持する異常電流保持手段と、前記異常電流保持手段が異常電流である信号を保持した場合に前記AC電磁弁の電源をOFFする電源切断手段と、を備え、前記AC電磁弁が開弁不良をきたした時に無駄な圧縮空気を放出しないことを特徴とした構成を採用する。
【0009】
また、本発明は、第二の構成として、前記異常電流保持手段が異常電流である信号を保持した場合に、警報を発報する警報発報手段を備えた構成を採用し得る。
【0010】
さらにまた、本発明は、第三の構成として、前記電流検知手段が、カレントトランスもしくはホール素子である構成を採用し得る。
【発明の効果】
【0011】
本発明にかかる圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置によれば、第一の構成を採用することにより、少なくともラッシュカレントが流れ終わった時点で過電流の存否を判断し、その過電流を異常電流として検知することで、該過電流がラッシュカレントではなくAC電磁弁の動作不良による異常電流であることを簡便且つ容易な構成で判別可能であると共に、異常電流を検知した場合にAC電磁弁の電源をOFFにすることで、それ以上の異常電流の発生を抑制し、これにより該AC電磁弁の中途半端な開弁による余分な圧縮空気の消費を防ぐことが可能になり、さらには、該AC電磁弁の焼き付きを防ぐと共に装置寿命の長期化が図られる、といった優れた効果を奏する。
【0013】
また、本発明にかかる圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置によれば、第二の構成を採用することにより、警報発報手段を備えることで、異常電流を検知したことを人や接続される機器に容易に知らしめることができる、といった優れた効果を奏するものである。
【0014】
またさらに、本発明にかかる圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置によれば、第三の構成を採用することにより、電流検知手段をAC電磁弁の電源線とカレントトランスもしくはホール素子との磁気的な結合でのみ結合させることによって、AC電磁弁の電源と制御部の電源とを絶縁でき、これにより回路構成が単純・低コストで実現可能である、といった優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明にかかる圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置の実施形態を示す簡略的な回路図である。
図2】本発明にかかる圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置の動作態様を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明にかかる圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置は、AC電磁弁の電源線1bを監視する電流検知手段1と、該電流検知手段1が発する信号を所定の基準と比較した上で増幅でき得る比較増幅手段2と、AC電磁弁の排出指令信号の開始よりラッシュカレントが流れる所定時間を遅延させた信号を送出する一以上の時間遅延手段3と、比較増幅手段2の信号と時間遅延手段3の信号とを論理積もしくは否定論理積する判断手段4と、該判断手段4の信号を保持する異常電流保持手段5と、を備えたことを最大の特徴とする。以下、本発明にかかる圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置の実施形態を、図面に基づいて説明する。
【0017】
なお、本発明にかかる圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置は、以下に述べる実施形態に特に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、すなわち同一の作用効果を発揮できる素子、材質、形状、寸法等の範囲内で適宜変更することができる。
【0018】
図1は、本発明にかかる圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置の実施形態を示す簡略的な回路図である。
本発明にかかる圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置は、空気圧縮機が吐出する圧縮空気より発生するドレンを除去するための装置であって、主な構成として、電流検知手段1と、比較増幅手段2と、時間遅延手段3と、判断手段4と、異常電流保持手段5と、から構成される。
【0019】
ところで、電磁式ドレントラップは、AC電源により動作し、ドレンの排出のために排出口を開弁させるAC電磁弁を備えるものが存し、本発明に係る圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置は、そのような電磁式ドレントラップに備えられる。また、前記AC電磁弁は、排出指令信号に制御されたACリレー、トライアック、サイリスタ、ソリッドステートリレーなどでAC電圧を印加され、開弁されるものである。
【0020】
電流検知手段1は、AC電磁弁の電源線1bを監視するものであって、AC電磁弁の電源線1bに流れる電流量に応じて、自身の出力電圧を大きくするものである。かかる電源線1bの電流量は、電流量信号1cとして比較増幅手段2へ送出される。
【0021】
前記電流検知手段1は、AC電磁弁の電源線1bと磁気的に結合し、且つ、自身の電源と電源線1bの電源とは絶縁されていることが好ましく、それを実現するものとしては、カレントトランスもしくはホール素子を利用したICがあげられる。
【0022】
比較増幅手段2は、電流検知手段1がAC電磁弁の電源線1bに流れる電流量に応じて出力する電圧(電流量信号1c)と、基準電圧発生手段2bが出力する基準電圧2cとを比較し、前者が後者に比し高い電圧となった場合に、両者の差分以上に増幅した上で信号を送出でき得るものであって、すなわち、AC電磁弁の電源線1bに基準以上の電流量が流れると、過電流検出信号2dを送出するものである。
【0023】
かかる比較増幅手段2は、基準との比較と、他の制御回路とのロジックレベルに合わせた信号を正しく送出できれば事足りる。それを実現するものとしては、オペアンプによるコンパレーターICに基準電圧発生手段2bを組み合わせる実施例が考えられるが、他にAD変換器の値と基準値を設定したマグニチュードコンパレーターICを組み合わせる実施例なども考えられ得る。
【0024】
なお、基準電圧発生手段2bは、電源の抵抗分圧によるもの、ツェナーダイオードによるものなどが考えられるが、周知のもので事足り、その基準電圧2cの大きさは、AC電磁弁の電源線1bに通常流れる電流量に対し1.1〜2倍程度を見積もった電流量が流れた場合の電流検知手段1に現れる電圧に設定しておくことが好ましい。
【0025】
時間遅延手段3は、AC電磁弁の排出指令信号が送出された際に、その信号により開弁が開始されたAC電磁弁にラッシュカレントが流れる所定時間を遅延させた時間遅延信号3cを送出するものである。それを実現するものとしては、CRの時定数によるモノマルチバイブレーターを一若しくは複数組み合わせる実施例や、発振器による所定数のカウントによる信号送出を行う実施例などが考えられ得る。その場合、リセット信号3bないしトリガー信号を排出指令信号とする必要がある。
【0026】
判断手段4は、前記比較増幅手段2の過電流検出信号2dと前記時間遅延手段3の時間遅延信号3cとを論理積ないし否定論理積した信号を送出するものである。すなわち、ラッシュカレントが流れ終わった後に過電流を検知した場合に、異常電流検出信号4bを送出するものである。論理積か否定論理積かは、実施に応じて適宜決定される。
【0027】
異常電流保持手段5は、前記異常電流検出信号4bを保持し、異常電流保持信号5cを送出するものである。それを実現するものとしては、種々のフリップフロップが挙げられ、そのリセット信号5bとしては、排出指令信号、過電流検出信号2d、時間遅延信号3cなどが考えられ得るが、実施例によって適宜選択すればよい。
【0028】
なお、前記異常電流保持手段5に接続され、該異常電流保持手段5が異常電流保持信号5cを送出した場合に、排出指令信号を無効化する電源切断手段6を採用し得る。電源切断手段6は、FETもしくはトランジスタで排出指令信号を直接に無効化する実施例、イネーブルが可能なバッファで排出指令信号をバッファリングし、イネーブルのON・OFFでもAC電磁弁を制御可能とする実施例などが考えられ得る。
【0029】
またさらに、前記異常電流保持手段5に接続され、該異常電流保持手段5が異常電流保持信号5cを送出した場合に、警報を発報する警報発報手段7を採用し得る。警報発報手段7は、ランプやブザー、無電圧接点出力機器、有電圧接点出力機器を接続する実施例などが考えられ得る。
【0030】
以上の通り構成される本発明にかかる圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置について、次にその動作態様を説明する。図2は、本発明にかかる圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置の動作態様を示すタイムチャートである。
【0031】
AC電磁弁は、AC電磁弁の電源線1bよりAC電圧を印加され、流入したドレンを排出する。そこでAC電磁弁の電源線1bに排出指令信号に基づきAC電圧が印加されると、該AC電圧の1サイクル程度の間、所定のラッシュカレントが流れることとなる。ラッシュカレントの電流量は通常動作時の5倍程度、多いものだと10倍以上流れるものも存する。
【0032】
電流検知手段1は、ラッシュカレントでも通常動作時でも、常にAC電磁弁の電源線1bに流れる電流量を監視し、その電流量に応じた電圧である電流量信号1cを比較増幅手段2へ送出する。
【0033】
比較増幅手段2は、基準電圧発生手段2bによる基準電圧2cと前記電流検知手段1の出力する電圧(電流量信号1c)とを比較し、後者の方が大きい場合に過電流検出信号2dを判断手段4へ送出する。
【0034】
このとき、かかる比較増幅手段2は、ラッシュカレントが流れている場合でも、異常電流が流れている場合でも、場合に関係なく電流量のみに対し判断を行うこととなる。したがって、そのどちらにより過電流となっているのかまでは過電流検出信号2dだけで判断することはできない。
【0035】
ところで、AC電磁弁がゴミやスラッジ、油塊などを噛んでしまい動作不良となると、該AC電磁弁にラッシュカレントが流れる時間を超えても通常動作時より多い電流量、すなわち異常電流が流れることになる。
そこで、時間遅延手段3によりAC電磁弁の排出指令信号の開始よりラッシュカレントが流れる所定時間を遅延させた時間遅延信号3cが判断手段4へ送出され、該判断手段4における判断に際してラッシュカレントが流れる時間を除外するようになっている。
【0036】
すなわち判断手段4では、比較増幅手段2から送出されてきた過電流検出信号2dと時間遅延手段3から送出されてきた時間遅延信号3cとを論理積ないし否定論理積することで、ラッシュカレントが流れ終わった後も過電流が流れている場合にのみ異常電流検出信号4bを送出する。これにより、過電流についてAC電磁弁がゴミやスラッジ、油塊などを噛んでしまった際に発生する異常電流によるものか否かを判別することができる。
【0037】
判断手段4から送出された異常電流検出信号4bは、異常電流保持手段5により保持され、電源切断手段6や警報発報手段7に異常電流保持信号5cを送出する。これにより、AC電磁弁の電源をOFFにしてそれ以上の異常電流の発生抑制可能になると共に該AC電磁弁の中途半端な開弁による余分な圧縮空気の消費を防ぐことが可能となり、また、異常電流を検知したことを外部に知らしめることが可能となる。
【産業上の利用可能性】
【0038】
本発明は、空気圧縮機が吐出する圧縮空気より発生するドレンを除去するための電磁式ドレントラップであって、装置の機能性向上に資すると共に、圧縮空気圧回路に接続される機器全般にわたって本発明を採用することができ得るものであって、本発明における「圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置」の産業上の利用可能性は大であると思料する。
【符号の説明】
【0039】
1 電流検知手段
1b 電源線
1c 電流量信号
2 比較増幅手段
2b 基準電圧発生手段
2c 基準電圧
2d 過電流検出信号
3 時間遅延手段
3b リセット信号(トリガー信号)
3c 時間遅延信号
4 判断手段
4b 異常電流検出信号
5 異常電流保持手段
5b リセット信号
5c 異常電流保持信号
6 電源切断手段
7 警報発報手段
【要約】
【課題】 圧縮空気用電磁式ドレントラップにおける機能性の向上を実現する安全装置の提供を図る。
【解決手段】 空気圧縮機が吐出する圧縮空気より発生するドレンを除去するための圧縮空気用電磁式ドレントラップの安全装置であって、AC電磁弁の電源線を監視する電流検知手段と、電流検知手段の信号を所定の基準と比較した上で増幅でき得る比較増幅手段と、AC電磁弁の排出指令信号の開始よりラッシュカレントが流れる所定時間以上を遅延させた信号を送出する一以上の時間遅延手段と、比較増幅手段の信号と時間遅延手段の信号とを論理積もしくは否定論理積する判断手段と、判断手段の真の信号を保持する異常電流保持手段と、を備えた構成を採用する。
【選択図】図1
図1
図2