【実施例】
【0117】
〔使用した試薬〕
・Urea(Ultra pure grade)(MP Biomedicals, Inc.製)
・CHAPS(ナカライテスク社製)
・Dithiothreitol(DTT)(ナカライテスク社製)
・Pharmalyte pH 3-10(GE Healthcare UK Ltd.製)
・Pharmalyte pH 4-6.5(GE Healthcare UK Ltd.製)
・Acrylamide IEF [99.9%](Amersham Biosciences社製)
・Acrylamide(ナカライテスク社製)
・N,N’-Methylenebisacrylamide (BIS)(ナカライテスク社製)
・Glycerine(和光純薬株式会社製)
・Tris(hydroxymethyl)aminomethane (tris)(和光純薬株式会社製)
・2-mercaptoethanol(和光純薬株式会社製)
・Butanol(和光純薬株式会社製)
・6M Hydrochloric acid (HCl)(和光純薬株式会社製)
・Agarose(ナカライテスク社製)
・Bromophenol blue (BPB)(Aldrich社製)
・N,N,N’,N’-Tetramethylethylenediamine (TEMED)(ナカライテスク社製)
・Ammonium Peroxodisulfate (APS)(和光純薬株式会社製)
・Phosphoric acid(ナカライテスク社製)
・Sodium dodecyl sulfate (SDS)(Pharmacia Biotech社製)
・Glycine(ナカライテスク社製)
・Methanol(ナカライテスク社製)
・Acetic acid(ナカライテスク社製)
・Coomassie Brilliant Blue G-250(ナカライテスク社製)
・Ammonium bicarbonate ≧99.5%(Fluka社製)
・Acetonitrile [スペクトル分析用] (ACN)(ナカライテスク社製)
・Acetonitrile [Chromasolv,for HPLC,gradient grade,≧99.9%] (SIGMA-Aldrich社製)
・Iodoacetamide(GE Healthcare UK Ltd.製)
・Sequence Grade Modiffied Trypsin (trypsin)(Promega社製)
・Alpha-cyano-4-hydroxy-cinnamic acid (CHCA)(SIGMA-Aldrich社製)
・Trifluoroacetic acid(TFA)(和光純薬株式会社製)
・Trifluoroacetic acid(TFA高速液体グラフ用)(ナカライテスク社製)
・Peptide Calibration Standard II(BRUKER社製)
・Sodium chloride(ナカライテスク社製)
・Potassium chloride(和光純薬株式会社製)
・Di-Sodium hydrogenphosphate 12-water (Na
2HPO
4 12H
2O)(ナカライテスク社製)
・Potassium dihydrogenphosphate(ナカライテスク社製)
・Imidazole(ナカライテスク社製)
・グアニジン塩酸塩(Gdn-HCl)(ナカライテスク社製)
・牛血清アルブミン(BSA)(ナカライテスク社製)
・Sodium acetate(SIGMA-ALDRICH社製)
・BugButer Protein Extraction Reagent(BugBuster)(Novagen社製)
・Benzonase Nuclease(Novagen社製)
・Protease Inhibitor(ナカライテスク社製)
・DNA Purification Kit(Promega社製)
・大塚蒸留水(大塚製薬社製)
・KODplus ver.2 PCR kit(東洋紡株式会社製)
・グリコーゲン(ナカライテスク社製)
・Infusion Advantage PCR cloning kit(クロンテック社製)
・Chymotrypsin(Protea社製)
・Micro BCA kit(Thermo社製)
・DC protein assay kit(BIO-RAD社製)
・Overnight Express(Novagen社製)
・アンピシリン(Amp)(ナカライテスク社製)
・2×YT培地(Novagen社製)
・LB寒天培地(ナカライテスク社製)
〔使用した装置〕
・超純水装置:アリウム611UV(18.2MΩcm) :Sartorius
・泳動装置:等電点ディスク電気泳動装置:日本エイドー株式会社
・恒温式2連スラブ電気泳動装置:日本エイドー株式会社
・電源装置:Electrophoresis Power Supply:GE Healthcare UK Ltd.
・ゲル撮影:イメージスキャナ(GT-X700):EPSON、ゲル撮影装置(FASIII):東洋紡株式会社
・質量分析計:Voyager DE-STR:Applied Biosystems Inc
・pHメーター:ガラス電極式水素イオン濃度計:HORIBA
・遠心分離機:テーブルトップマイクロ冷却遠心機3500:KUBOTA、ユニバーサル冷却遠心機:KUBOTA
・オートクレーブ:BS-325:株式会社 トミー精工
・クリーンベンチ:NS-13B:十慈フィールド株式会社
・クロマトグラフィーシステム:AKTAprime plus:GE Healthcare UK Ltd.、His Trap HP column:GE Healthcare UK Ltd.
・透析膜:透析用セルロースチューブ(孔径:400〜500nm):Viskase Companies,Inc.
・滅菌フィルター:Vacuum Driven Disposable Filtration System:IWAKI
・限外濾過フィルター:MICROCON(登録商標)(10,000 Nominal Molecular Weight Limit):Millipore
・HPLC用前処理フィルター:Non-Sterile 4mm Millex(登録商標) HV syringe Driven Filter Unit (450nm):Millipore
・HPLCシステム:PU-2089 Quaternary Gradient Pump:JASCO、LC-NetII/ADC:JASCO、MD-2018Plus Photodiode Array Detector:JASCO、UV-1575 Intelligent UV/VIS Detector :JASCO、5C18-AR-IIpacked column(Size:4.6×150mm):ナカライテスク
・インキュベーター:BR40LF:TAITEC
・サーマルサイクラー:PCR SPRINT:Thermo
・分光光度計:UV-1600:島津製作所
・凍結乾燥機:FD-1000:EYELA
〔使用した溶液〕
以下の%は特記しない限り、w/v%である。
・Lysis Buffer(8M urea,4%CHAPS,2v/v% Pharmalyte pH 3-10,1%DTT)・・・Urea:4.8g、20%CHAPS:2.0ml、Pharmalyte pH3-10:0.20ml、DTT:0.10gを混合し、イオン交換水で10mlにメスアップした。
・陽極バッファ(0.068v/v%リン酸)・・・リン酸:34μlをイオン交換水で50mlにメスアップした。
・陰極バッファ(2v/v%TEMED)・・・TEMED:800μlをイオン交換水で40mlにメスアップした。
・1次元電気泳動用アクリルアミドストック溶液(28.4%Acrylamide,1.6%BIS)・・・Acrylamide IEF:1.42g、BIS:0.08gを混合し、超純水で5mlにメスアップした。
・等電点ゲル溶液(8Murea,4%CHAPS, 2.5v/v%Pharmalyte pH 3-10,2.5v/v%Pharmalyte pH 4-6.5)(3.5%t,5%c)・・・1次元電気泳動用アクリルアミドストック溶液:0.29ml、Urea:1.2g、20w/v%CHAPS:0.5ml、Pharmalyte pH3-10:62.5μl、Pharmalyte pH4-6.5:62.5μlを混合し、超純水で2.5mlにメスアップした。なお、等電点ゲル溶液は使用前に脱気して使用した。また使用直前に重合剤として、25%APS 1μl、TEMED 2.5μlを加えた。
・0.5Mtris-HCl溶液(pH6.8)・・・Tris:30.3gをHClでpHを6.8に調整後、イオン交換水で500mlにメスアップした。
・1Mtris-HCl溶液(pH8.8)・・・Tris:60.6gをHClでpHを8.8に調整後、イオン交換水で500mlにメスアップした。
・SDS-PAGE用サンプルバッファ(0.0625Mtris,10%SDS)・・・0.5Mtris-HCl溶液(pH6.8):50mlにSDS:20gを加え、イオン交換水で400mlにメスアップした。
・SDS-PAGE用泳動バッファ・・・Tris:6g、Glysin:28.8g、SDS:2gをイオン交換水に溶解し最終2000mlにメスアップした。
・separation gel 溶液(0.375Mtris,0.1%SDS,8% glycerine)(12.3%t,2.7%c)・・・50% acrylamide:11.64ml、 2%BIS:6ml、1Mtris-HCl溶液(pH8.8):13.2ml、10%SDS:0.36ml、60v/v% glycerine:4.8mlを混合し、イオン交換水で36mlにメスアップした。使用直前に重合剤として、25%(w/v)APS 80μl、TEMED 20μlを加えた。
・stacking gel溶液(0.125Mtris,0.1%SDS,10%glycerine)(5.1%t,2.6%c)・・・30% acrylamide:1.66ml、2%BIS:0.66ml、0.5Mtris-HCl溶液(pH6.8):2.49ml、10%SDS:0.1ml、60v/v%glycerine:1.66mlを混合し、イオン交換水で10mlにメスアップした。使用直前に重合剤として、25%(w/v)APS 16μl、TEMED 10μlを加えた。
・等電点ゲル固定用アガロース溶液(0.0625Mtris,10%SDS,1%ager)・・・SDS-PAGE用サンプルバッファ:50ml、Agarose:0.5g、BPB:traceを混合して溶解した。
・固定液(40%methanol,10%acetic acid)・・・Methanol:80ml、Acetic acid:20mlを混合し、イオン交換水で200mlにメスアップした。
・染色液(0.12%CBBG-250,10%リン酸,10%硫酸アンモニウム,20%methanol)・・・CBB G-250:0.24g、リン酸:20ml、硫酸アンモニウム:20g、Methanol:40mlを混合し、 イオン交換水で200mlにメスアップした。詳細には、CBB G-250と硫酸アンモニウムとを予め混合しておき、リン酸を加え全体量の80%までイオン交換水でメスアップし、10minほど撹拌した(この時の溶液は濃青色)。その後、全体量の20%のメタノールを入れ10minほど撹拌し、ろ過せずに使用した(この時の溶液は濃青緑色)。
・脱色液(1%acetic acid)・・・Acetic acid:10mlをイオン交換水で1000mlにメスアップした。
・MSサンプル調製用脱色液(0.1M重炭酸アンモニウム,40v/v%ACN)・・・1M重炭酸アンモニウム溶液:450μl、ACN:1.8mlを混合し、超純水で4.5mlにメスアップした。
・洗浄液(0.025M重炭酸アンモニウム,50%ACN)・・・1M重炭酸アンモニウム溶液:100μl、ACN:2mlを混合し、超純水で4mlにメスアップした。
・消化液(0.05M重炭酸アンモニウム,0.02mg/ml trypsin)・・・ 1M重炭酸アンモニウム溶液:5μl、0.2mg/ml trypsin:10μlを混合し、超純水で100μlにメスアップした。消化液の調製は、氷上で行われた。
・抽出液(50%ACN,1%TFA)・・・ACN:500μl、TFA:10μlを混合し、超純水で1mlにメスアップした。
・CHCA溶液(飽和CHCA,70%ACN,0.1%TFA)・・・CHCA:18.9mg、ACN:700μl、TFA:1μlを混合し、超純水で1mlにメスアップした。
・10×PBS・・・Sodium chloraide:80g、 Potassium chloraide:2g、 Potassium dihydrogenphosphate:2g、 Na2HPO4 12H2O:29gを混合し、イオン交換水で1000mlにメスアップした。イオン交換水で10倍希釈して使用した。
・PBST(1v/v%Tween20)・・・10×PBS:100ml、Tween20:10mlを混合し、イオン交換水で1000mlにメスアップした。
・2×SDS処理バッファ(0.125Mtris,4%SDS,20v/v%glycerine,2v/v%2-mervaptoethanol)・・・0.5Mtris-HCl溶液(pH6.8):0.5ml、10%SDS:0.8ml、 60v/v%glycerine:0.67ml、 2-mercaptoethanol:0.04ml、BPB:traceを混合して調製した。
・LB寒天培地・・・LB寒天培地:40gを1000mlのイオン交換水で溶解した後、オートクレーブ滅菌して使用した。
・2×YT培地・・・2×YT培地:31gを1000mlのイオン交換水で溶解した後、オートクレーブ滅菌して使用した。
1000mlのイオン交換水で溶解した後、オートクレーブ滅菌し使用した。
・OE培地・・・Overnight Express:60g、 Glycerine:10mlを1000mlのイオン交換水で溶解した後、滅菌フィルターで滅菌した。
・solubilization buffer(6M Gdn-HCl、10mM 2- mercaptoethanol、2×PBS、pH7.5)・・・Gdn-HCl:570g、2-melcaptoethanol:0.7ml、10×PBS:200mlを混合し、イオン交換水で1000mlにメスアップした。NaOHでpHをpH7.5に調整した。
・His Trap用平衡化バッファ(A液) (8M Urea、20mM Imidazole、2×PBS、pH7.5)・・・Urea:480g、Imidazole:1.36g、10×PBS:200mlを混合し、イオン交換水で1000mlにメスアップした。HClでpHをpH7.5に調整した。
・His Trap用溶出バッファ(B液) (8M Urea、400mM Imidazole、2×PBS、pH7.5)・・・Urea:480g、Imidazole:27.2g、10×PBS:200mlを混合し、 イオン交換水で1000mlにメスアップした。HClでpHをpH7.5に調整した。
・HPLC用カラム平衡化バッファ(A液)(0.1%TFA)・・・超純水:1000mlとTrifluoroacetic acid(TFA高速液体グラフ用):1mlとを混合した。
・HPLC用溶出バッファ(B液)(0.1%TFA、99.9% Acetonitrile)・・・Acetonitrile [Chromasolv,for HPLC,gradient grade,≧99.9%]:1000mlとTrifluoroacetic acid(TFA高速液体グラフ用):1mlとを混合した。
【0118】
〔1.ポリカーボネートまたはポリメタクリル酸メチルに対する親和性タンパク質のスクリーニング〕
(I)サンプル調製
(1)クリーンベンチ内でオートクレーブしたLB培地20mlにグリセロールストックから大腸菌BL21(DE3)を植菌し、37℃で一晩、前培養した。
(2)オートクレーブした2×YT培地100mlに前培養液を、OD
600=0.1になるように加え、37℃、200rpmで7時間培養した。
(3)培養後、50mlの遠心管に培養液を移して4500rpmで15分間遠心分離し、上清を取り除いた。
(4)ペレット状の菌体にBugBuster10ml、Benzonase Nuclease 3μl、Protease Inhibitor 100μl加え、菌体を溶菌した。
(5)10000gで20分間遠心分離後、上清を回収し、吸着用サンプルとした。
(6)ポリカーボネート片(PC片)またはポリメタクリル酸メチル片(PMMA片)を10g(概算表面積約200cm
2)測りとり、上記の吸着用サンプル5mlを加え、室温、160rpmで5時間振盪した。
(7)PC片またはPMMA片に40mlのPBSを加え80rpmで5分間振盪した。その後、上清を取り除いた。この操作を3回行った。
(8)PC片またはPMMA片に40mlの超純水を加え、(7)と同条件で洗浄した。この操作を3回行った。
(9)Lysis buffer 4mlを加え160rpmで30分間振盪し、上清を回収した。
(10)MICROCON(登録商標)に回収した液500mlを加え、14000gで30分間遠心分離した。
(11)メンブレン上にLysis bufferを100μl加え、ピペッティング後、1.5mlチューブにMICROCON(登録商標)を逆向きで入れ、1000gで3分間遠心分離し、液を回収した。これを溶出サンプルとした。また、吸着用サンプル、溶出サンプル共に-20℃で保存した。
【0119】
(II)等電点電気泳動
(1)ガラス管の内側をエタノールで洗浄した。その後、ガラス管の底から11.5cmのところに印をつけ、底にパラフィルムを巻いた。
(2)等電点ゲル溶液にAPSを2.5μl、TEMEDを1μl加え、ガラス管に印をつけたところまで流し込み、イオン交換水を20μl重層し、ゲル化するまで室温でインキュベーションした。
(3)重層していたイオン交換水を除去後、各サンプル溶液を25μl加え、2倍希釈したLysis Bufferを20μl重層した。
(4)陽極、陰極に各バッファを満たし、等電点電気泳動を開始した。泳動時の電圧は、200Vで1時間、400Vで16時間、800Vで1時間と段階的に変化させた。
(5)ガラス管を装置から外し、注射器でガラス管とゲルの間にイオン交換水を流し込み、等電点ゲルを取り出した。
(6)15ml遠心管に等電点ゲルを移し10ml程度のイオン交換水で3回洗浄した。
【0120】
(III)SDS-PAGE
(1)ガラス板をエタノールで洗浄し、乾燥後組み立てた。その後ガラス板の上端から2.5cmのところに印をつけた。
(2)separation gel溶液にAPS 80μl、TEMED 20μlを加えた溶液を、組み立てたガラス板の印の位置まで流し込んだ。その後ブタノールを400ml重層し、separation gel溶液が重合するまで室温でインキュベーションした。
(3)重合完了後、ブタノールをイオン交換水で洗浄し、水分をよく除去した後、stacking gel溶液にAPS 16μl、TEMED 10μlを加え、ガラス板の上端まで流し込んだ。その後ブタノールを400μl重層し、stacking gel溶液が重合するまで室温でインキュベーションした。
(4)上記(II)で洗浄した等電点ゲルに、SDS-PAGE用サンプルバッファ4.75mlと2-mercaptoethanol 250μlとを加え、15分間振盪した。
(5)SDS-PAGE用サンプルバッファおよび2-mercaptoethanolを取り除き、イオン交換水で等電点ゲルを洗浄後、SDS-PAGE用サンプルバッファ5mlとIAA 0.125gとを加え、15分間振盪した。
(6)SDS-PAGE用サンプルバッファを取り除いた後、電子レンジによって溶かした等電点ゲル固定用アガロース溶液を用いて等電点ゲルを、(3)で作製したゲル上に固定した。分子量マーカーを加える時は、ろ紙にマーカー10mlをしみこませ、等電点ゲル固定用アガロース溶液により固定した。
(7)20mAの定電流で約1時間30分、40mAの定電流で約3時間電気泳動を行った。BPBのラインがガラス板の下端に達した時に泳動を終了させた。
(8)ゲルをガラス板から外し、固定液200ml中で2時間又はover nightで振盪した。
(9)固定液を除去後、染色液を200ml加え12時間以上振盪した。
(10)染色液を除去後、脱色液を200ml加え12時間以上振盪した。なお、脱色中はペーパータオルを色素吸着の目的で約1時間ごとに交換した。
(11)脱色後、スキャナで撮影し4℃で保存した。
【0121】
(IV)MALDI-TOF MSによるタンパク質の同定
(1)得られたゲルから同定したいスポットを切り出し、MSサンプル調製用脱色液を150μ加え、45分間振盪した。
(2)脱色液を捨て、超純水500μlを加えて1分間振盪後液を捨て、再度脱色液を150μl加えて45分間振盪した。
(3)超純水500μlを加え、1分振盪した。超純水を捨て、この操作を2回繰り返した。
(4)洗浄液を200μlずつ加え5分間振盪した。
(5)洗浄液を捨て、ACNを100μlずつ加えて5分間振盪した。更にACNを除去し、ゲルを乾燥させた。
(6)消化液を5mlずつ氷上で加え、20分程度氷上でインキュベーションし膨潤した。
(7)37℃下で一晩(16時間程度)インキュベーションした。
(8)消化していたゲル片を取り出し、抽出液を50μl加え30分間振盪した。
(9)抽出液を新しい1.5mlチューブに取り、再度ゲルに抽出液25μlを加え15分間振盪した。
(10)抽出液25mlを上記チューブに加え-80℃にて凍結した。その後、凍結乾燥により乾固させた。
(11)乾固物に抽出液を2μl加え、振盪後、遠心分離機により溶液をスピンダウンさせた。
(12)MS測定用プレートに0.5μlアプライ後、乾燥する前にCHCA溶液を0.5μl滴下した。
(13)質量分析計(Voyager DE-STR)を用いて測定し、ACTH_reflector.bicのパラメーターファイルを使用した。
(14)質量分析結果を、MASCOT Peptide Mass Fingerprintにより同定した。データベース検索条件は、database:NCBInr、Taxonomy:All entries、Enzyme:Trypsin、Fixed modifications:Carbamidomethyl、Peptide tol.:±0.1、Mass Values:MH+、Monoisotopic、で行った。なお、本実施例では同定可能なスコアを81以上と定義した。
【0122】
(結果)
大腸菌内の細胞内タンパク質が含まれている吸着用サンプルの二次元電気泳動結果を
図3(a)に示し、PCから溶出したタンパク質を含む溶出サンプルの二次元電気泳動結果を
図3(b)に示した。
【0123】
表1に溶出サンプルより同定したタンパク質の一覧を示す。なお、偶然にもPMMAから溶出したタンパク質を含む溶出サンプルからも同一のタンパク質が同定された。
【0124】
【表1】
【0125】
表1の「No.」は
図3(b)のスポットの番号に対応している。
図3(b)のNo.1のスポットはMalto porin (「MLT」と略す)、No.2のスポットはOmpf porin (「OMP」と略す)、No.3のスポットはElongation factor(「ELN」と略す)、No.4のスポットはBifunctional aconitate hydratase (「BIF」と略す)が、PCおよびPMMAに特異的に吸着し得るタンパク質(「PC/PMMA親和性タンパク質」という)として同定された。
【0126】
〔2.PC/PMMA親和性タンパク質のクローニング〕
(I)大腸菌ゲノムの精製
DNA Purification Kit(Promega社製)を用いて抽出を行った。
【0127】
(試薬)
Nuclei Lysis Solution
RNase Solution
Protein Precipitation Solution
DNA Rehydration Solution
(手順)
(1)一晩培養した大腸菌BL21(DE3)の培養液1mlを、1.5mlチューブに取った。
(2)13000〜16000gで2分間遠心分離し、上清を捨てた。
(3)600μlのNuclei Lysis Solutionを加え、撹拌した。
(4)80℃で5分間インキュベートし、室温まで冷やした。
(5)3μlのRNase Solutionを加え、5回程度、転倒撹拌した。
(6)37℃で15〜60分インキュベートし、室温まで冷やした。
(7)200μlのProtein Precipitation Solutionを加え、20秒間撹拌し、氷上で5分間インキュベートした。
(8)13000〜16000Gで3分間遠心分離した。
(9)DNAを含む上清を、室温で600μlイソプロパノール中に移し、DNAが析出するまでゆっくり転倒撹拌した。
(10)13000〜16000gで2分間遠心分離し、上清を除去した。
(11)70%エタノール600μlを加え、ペレットを洗浄した。
(12)13000〜16000gで2分間遠心分離し、上清を除去後、ペレットを乾燥させた。
(13)100μlのDNA Rehydration Solutionを加え、65℃で1時間又は、4℃で一晩インキュベートした。抽出したDNAは2〜8℃で保存した。
【0128】
(II)ゲノムPCRによるPC/PMMA親和性タンパク質遺伝子の単離
(使用したプライマー)
各PC/PMMA親和性タンパク質を増幅するためのプライマーセットは以下の通り。1つのタンパク質につき2種類のプライマーを使用した。
(OMP増幅用プライマー)
OMP inF S1:ATA TAC ATA TGA TGA AGC GCA ATA TTC TGG(配列番号23)
OMP inF S2:TAA GAA GGA GAT ATA CAT ATG AAG CGC(配列番号24)
OMP inF AS1:GTG CGG CCG CGA ACT GGT AAA CGA TAC CCA(配列番号25)
OMP inF AS2:TGG TGG TGC TCG AGT GCG GCC GCG AAC TGG(配列番号26)
(MLT増幅用プライマーー)
MLT inF S1: ATA TAC ATA TGA TGA TTA CTC TGC GCA AAC(配列番号27)
MLT inF S2: TAA GAA GGA GAT ATA CAT ATG ATG ATT ACT(配列番号28)
MLT inF AS1: GTG CGG CCG CCC ACC AGA TTT CCA TCT(配列番号29)
MLT inF AS2: TGG TGG TGC TCG AGT GCG GCC GCC CAC CAG(配列番号30)
(ELN増幅用プライマー)
ELN inF S1: ATA TAC ATA TGT CTA AAG AAA AGT TTG A(配列番号31)
ELN inF S2: TAA GAA GGA GAT ATA CAT ATG TCT AAA GAA(配列番号32)
ELN inF AS1: GTG CGG CCG CGC TCA GAA CTT TTG CTA(配列番号33)
ELN inF AS2: TGG TGG TGC TCG AGT GCG GCC GCG CTC AGA(配列番号34)
(BIF増幅用プライマー)
BIF inF S1: ATA TAC ATA TGG TGC TAG AAG AAT ACC GTA(配列番号35)
BIF inF S2: TAA GAA GGA GAT ATA CAT ATG GTG CTA GAA(配列番号36)
BIF inF AS1: GTG CGG CCG CAA CCG CAG TCT GGA AAA TCA(配列番号37)
BIF inF AS2: TGG TGG TGC TCG AGT GCG GCC GCA ACC GCA(配列番号38)
(手順)
(1)上記各プライマーを100nmol/mlになるよう希釈した。
(2)蒸留水180μlと(1)で調製した希釈液20μlとを混合し、10nmol/mlのプライマー溶液とした。
(3)PCRチューブに蒸留水33μl、KODbuffer 5μl、dNTP 5 μl、MgSO
42μl、KOD+ 1μl、(I)で抽出した大腸菌ゲノムDNA 1 μl、(2)で作製したプライマー溶液2種類を各1.5 μlずつ混合した。
(4)遠心後、サーマルサイクラーで増幅した。サーマルサイクラーは以下のプログラムで行った。
Pre Denature:94℃で2min、Denature:94℃で15sec、Annealing:(Tm-5)℃で30sec、Extension:68℃で1minまたは3minとし、DenatureからExtensionまでを30サイクル行った。
(III)PC/PMMA親和性タンパク質の遺伝子発現ベクターの構築
In-Fusion
TM Advantage PCR Cloning Kit(Clontech社製)を用いた。
【0129】
(試薬)
In-Fusion Enzyme
5× In-Fusion Reaction Buffer
Cloning Enhancer
(手順)
(1)制限酵素(NdeI、NotI)によってpET22(b)Vectorを消化した。
(2)(II)で作製したPCR反応液5 μlと、Cloning Enancer 2 μlとを混合し、37℃で15分間インキュベート後、80℃で15分間インキュベートした。
(3)制限酵素で切断したpET22(b)Vector 3.5 μl、5× In-Fusion Reaction Buffer 2 μl、In-Fusion Enzyme 1 μlを混合し、37℃で15分間、50℃で15分間インキュベートした。
(4)蒸留水40 μl、酢酸ナトリウム5 μl、グリコーゲン1μl、エタノール135μlを加え、ボルテックスミキサーで撹拌した。
(5)20000gで2分間遠心分離し、上清を除去した。
(6)氷冷70%エタノール500μlを加え、撹拌後20000gで2分間遠心分離し、上清を除去した。
(7)乾燥したペレットに蒸留水3μlを加えて溶解させた。
(8)コンピテントセルに(7)で調製した溶液を加え、42℃で45秒インキュベートし、LB Agerプレートに蒔き37℃で一晩インキュベートした。
【0130】
(IV)PC/PMMA親和性タンパク質の発現
(1)クリーンベンチ内でオートクレーブされ2×YT培地20mlに、Amp 50μg/mlとなるように加え、形質転換後の大腸菌BL21(DE3)を植菌し、37℃で一晩、前培養した。
(2)Ampを(1)と同様に加えたOE培地100mlに前培養液をOD
600=0.1になるように加え、37℃、200rpmで24時間培養した。
(3)培養後、50mlの遠沈管に培養液を移して4500rpmで15分間遠心分離し、上清を取り除いた。
(4)ペレットにSolubilization buffer(6M Gdn-HCl、10mM 2- mercaptoethanol、2×PBS、pH7.5)を加え、溶解させた。
【0131】
(V)アフィニティクロマトグラフィーによる精製
(1)A液(8M Urea、20mM Imidazole、2×PBS、pH7.5)、B液(8M Urea、400mM Imidazole、2×PBS、pH7.5)を調製した。
(2)A
*KTAシステムを起動し、Line A、BにA液、B液をセットした(ただし左記A
*はAウムラウトをさす)。
(3)LineA、BをA液、B液で置換し、His Trap
TMHPカラムを取り付けた。
(4)A液を流速1ml/minでカラムに供給し、カラム内を平衡化した。
(5)各タンパク質溶液を流速1ml/minで供給し、カラムに吸着させた。
(6)A液を流速1ml/minでカラムに供給し、洗浄した。
(7)B液を流速1ml/minでカラムに供給し、目的タンパク質をフラクションコレクターで回収した。
(8)回収した目的タンパク質溶液を8M Urea+PBSで透析した。
【0132】
(VI)SDS-PAGEによる精製の確認
(1)ガラス板をエタノールで洗浄し、乾燥後組み立てた。その後ガラス板の上端から2.5cmのところに印をつけた。
(2)separation gel溶液にAPS 80μl、TEMED 20μlを加え、組み立てたガラス板の印の位置まで流し込んだ。その後ブタノールを400μl重層し、separation gel溶液が重合するまで室温でインキュベーションした。
(3)重合後、ブタノールをイオン交換水で洗浄し水気をよく気ってstacking gel溶液にAPS 16μl、TEMED 10μlを加え、ガラス板の上端まで流し込んだ。その後コームをさし、ブタノールを400μl重層後、stacking gel溶液が重合するまで室温でインキュベーションした。
(4)サンプル溶液20μlと2×SDS処理バッファ20mlを混合し、90℃で5分間インキュベートした。
(5)サンプルを30μlずつ添加し、泳動を開始した。
(6)20mAの定電流で約1時間30分、40mAの定電流で約3時間電気泳動を行った。BPBのラインが下端に達した時に泳動を終了させた。
(7)ゲルをガラス板から外し、固定液200ml中で2時間又は一晩振盪を行った。
(8)固定液を除去後、染色液を200ml加え12時間以上振盪した。
(9)染色液を除去後、脱色液を200ml加え12時間以上振盪した。なお、脱色中はペーパータオルを色素吸着の目的で約1時間ごとに交換した。
(10)脱色後、スキャナで撮影し4℃で保存した。
【0133】
(VII)タンパク質定量
タンパク質定量には、Lowryらの方法を基本とする検出キット(DC Protein Assay(BIO-RAD社製))を用いた。
【0134】
(試薬)
Reagent A
Reagent B
Reagent C
Reagent A’・・・Reagent A:Reagent S=50:1の混合溶液
(手順)
(1)濃度が0、125、250、500、1000 μg/mlになるように標準溶液(BSA)を8M Urea + PBSで希釈し、それぞれ100 μl調製した。
(2)透析後の精製した各タンパク質を100 μlになるように8M Urea + PBSで5倍、25倍希釈した。
(3)上記(1)および(2)の溶液にReagent A’を500 μl加え、撹拌した。その後、Reagent Bを4ml加え、15分間室温でインキュベートした。
(4)波長750 nmの吸光度を測定した。
(5)標準溶液の測定結果から検量線を作成し、精製した各タンパク質の濃度を算出した。
【0135】
(結果)
PC/PMMA親和性タンパク質の遺伝子を、大腸菌ゲノムからPCRによってクローニングし、大腸菌BL21(DE3)で過剰発現させたところ、封入体(インクルージョンボディ)として回収された。これらをSolubilization bufferで可溶化し、His Trap HPカラムを用いて変性状態で精製した。精製後、SDS-PAGEによりタンパク質が発現、精製されていることを確認した。その結果を
図4に示す。
【0136】
〔3.PC/PMMA親和性ペプチドのスクリーニング〕
(I)マイクロBCAアッセイ
マイクロBCAアッセイには、Micro BCATM Protein Assay Kit(Therom社製)を用いた。
【0137】
(試薬)
Reagent MA
Reagent MB
Reagent MC
Albumin Standard
(手順)
(1)精製した各タンパク質を、PBSで25mg/mlとなるよう希釈した。
(2)PC片またはPMMA片 4g(概算表面積約80cm
2)を測りとり、希釈した各タンパク質溶液を2ml加え、25℃、200rpmで2時間振盪した。
(3)PBS 25mlでPC片またはPMMA片を5回洗浄した。
(4)標準溶液(Albumin Standard)を、40、20、10、5、2.5、1.25、0.625μg/mlに調整した。
(5)上記(3)で洗浄したPC片またはPMMA片にPBSを1ml加えた。
(6)体積比がReagent MA:Reagent MB:Reagent MC=25:24:1となるように混合し、上記(4)および(5)で作製した各サンプルに1mlずつ加えた。攪拌後、37℃で2時間インキュベーションした。
(7)波長562nmの吸光度を測定した。
(8)標準溶液の測定結果から検量線を作成し、吸着量を算出した。
【0138】
(結果)
精製した4種類のタンパク質、およびコントロールとして牛血清アルブミン (BSA)をPBS中に25μg/mlとなるよう希釈し、PC片またはPMMA片に対する吸着量を測定した。
図5にその結果を示す。
図5に示すようにスクリーニングされた4種類のタンパク質は、コントロールのBSAより高い吸着量を示し、PC片またはPMMA片に対して親和力を有していることが示された。特に、OMPおよびMLTが高い吸着量を示した。
【0139】
なお、非イオン性界面活性剤を1%含むPBSTを用いた同様の実験では吸着量が著しく低下した。これらの結果から、これらのPC/PMMA親和性タンパク質は主に疎水性相互作用で吸着していることが示唆された。
【0140】
(II)タンパク質消化物の吸着実験
(手順)
(1)精製した各タンパク質をPBSで500μg/mlになるように希釈した。
(2)希釈した液1mlにトリプシン又はキモトリプシン20μgを加え、37℃で12時間以上インキュベートし消化した。
(3)消化液600μlをPC片またはPMMA片16g(概算表面積約330cm
2)に加え、25℃、200rpmで2時間振盪した。
(4)A液(0.1%TFA)、B液(0.1%TFA、99.9%ACN)を調製した。
(5)HPLCシステムを起動後、LineA、BにA液、B液をセットし、LineA、BをA液、B液で置換した。
(6)A液を流速1ml/minでカラムに供給し、カラム内を平衡化した。
(7)上記(2)で希釈した液と、消化後吸着させた液とを前処理フィルターでろ過後、100mlカラムに供給した。
(8)B液の濃度を直線的に増加させ、カラムからペプチドを溶出した。
(9)吸着前後を比較して、著しい減少が見られたピークに相当する溶出液を回収した。
【0141】
(結果)
PC片またはPMMA片へ吸着前後のペプチド成分をHPLCにより比較した結果を
図6〜10に示す。
【0142】
図6はコントロールであるBSAのトリプシン消化物のHPLCチャート図を示す。
図6中の「吸着前」のチャートはBSAのトリプシン消化物をPC片へ吸着させる前のチャートであり、「吸着後」のチャートはBSAのトリプシン消化物をPC片へ吸着させた後のチャートであり、「Acetonitril%」は溶出液中のアセトニトリルの濃度を示す。
【0143】
BSAのトリプシン消化物について、PC片の吸着後にピークが顕著に減少しているものは特に見られなかった。データは省略するが、BSAのキモトリプシン消化物の結果も同様であった。また、データは省略するが、PMMA片の吸着後にピークが顕著に減少しているものも特に見られなかった。すなわち、BSAのトリプシン消化物およびキモトリプシン消化物には、PCまたはPMMAに特異的且つ強固に吸着し得るペプチドは存在しないといえる。なお、吸着後のサンプルにおいてピーク面積が70%以上減少した場合に、「ピークが顕著に減少した」と判断した(以下同じ)。
【0144】
図7(a)は、BIFのトリプシン消化物のHPLCチャート図を示し、
図7(b)はBIFのキモトリプシン消化物のHPLCチャート図を示す。
図7中の「吸着前」のチャートはBIFの酵素消化物をPC片へ吸着させる前のチャートであり、「吸着後」のチャートはBIFの酵素消化物をPC片へ吸着させた後のチャートであり、「Acetonitril%」は溶出液中のアセトニトリルの濃度を示す。
【0145】
BIFのトリプシン消化物およびキモトリプシン消化物について、PC片の吸着後にピークが顕著に減少しているものは特に見られなかった。また、データは省略するが、PMMA片の吸着後にピークが顕著に減少しているものも特に見られなかった。すなわち、BIFのトリプシン消化物およびキモトリプシン消化物には、PCまたはPMMAに特異的且つ強固に吸着し得るペプチドは存在しないといえる。
【0146】
図8(a)は、MLTのトリプシン消化物のHPLCチャート図を示し、
図8(b)はMLTのキモトリプシン消化物のHPLCチャート図を示す。
図8中の「吸着前」のチャートはMLTの酵素消化物をPC片へ吸着させる前のチャートであり、「吸着後」のチャートはMLTの酵素消化物をPC片へ吸着させた後のチャートであり、「Acetonitril%」は溶出液中のアセトニトリルの濃度を示す。
【0147】
MLTのトリプシン消化物について、PC片の吸着後に顕著に減少しているピークが3つ確認された(
図8(a)中のピーク1〜3)。かかる3つのピークに含まれているペプチドは、PCに特異的且つ強固に吸着し得るペプチドであるといえる。MLTのキモトリプシン消化物について、PC片の吸着後に顕著に減少しているピークが数個確認された。しかしMALDI-TOF MSによる質量分析を行い、データベースを用いてアミノ酸配列を検索した結果、ペプチドの配列が特定できなかった。また、データは省略するが、PMMA片の吸着後にピークが顕著に減少しているものも特に見られなかった。
【0148】
図9(a)は、OMPのトリプシン消化物のHPLCチャート図を示し、
図9(b)はOMPのキモトリプシン消化物のHPLCチャート図を示す。
図9中の「吸着前」のチャートはOMPの酵素消化物をPC片へ吸着させる前のチャートであり、「吸着後」のチャートはOMPの酵素消化物をPC片へ吸着させた後のチャートであり、「Acetonitril%」は溶出液中のアセトニトリルの濃度を示す。
【0149】
OMPのトリプシン消化物について、PC片の吸着後に顕著に減少しているピークが3つ確認された(
図9(a)中のピーク4〜6)。かかる3つのピークに含まれているペプチドは、PCに特異的且つ強固に吸着し得るペプチドであるといえる。また、データは省略するが、OMPのトリプシン消化物について、PMMA片の吸着後に顕著に減少しているピークが3つ確認された。
【0150】
図10(a)は、ELNのトリプシン消化物のHPLCチャート図を示し、
図10(b)はELNのキモトリプシン消化物のHPLCチャート図を示す。
図10中の「吸着前」のチャートはELNの酵素消化物をPC片へ吸着させる前のチャートであり、「吸着後」のチャートはELNの酵素消化物をPC片へ吸着させた後のチャートであり、「Acetonitril%」は溶出液中のアセトニトリルの濃度を示す。
【0151】
ELNのトリプシン消化物について、PC片の吸着後に顕著に減少しているピークが1つ確認された(
図10(a)中のピーク7)。かかる1つのピークに含まれているペプチドは、PCに特異的且つ強固に吸着し得るペプチドであるといえる。また、データは省略するが、PMMA片の吸着後にピークが顕著に減少しているものも特に見られなかった。
【0152】
なお、芳香族アミノ酸のC末端側を特異的に切断するキモトリプシンで消化を行った場合に、MLT以外のタンパク質でピークの減少がほとんど見られなくなった。この結果から、PCへの吸着に芳香族アミノ酸類が関与していることが示唆された。
【0153】
(III)MALDI-TOF MSによるアミノ酸配列の決定
(1)上記(II)で回収したピーク(ピーク1〜7)に相当する溶出液を凍結乾燥により乾固させた。
(2)乾固物に抽出液を2μl加え、振盪後スピンダウンさせた。
(3)MS測定用プレートに0.5μlアプライ後、乾燥する前にCHCA溶液を0.5μl滴下した。
(4)質量分析計(Voyager DE-STR)を用いて分析を行った。質量分析にはACTH_reflector.bicのパラメーターファイルを使用した。
(5)質量分析計によって得た分子量の結果と、データベース (ExPASy Proteomics server:http://www.expasy.ch/)とを比較し、アミノ酸配列を決定した。
【0154】
(結果)
決定されたピーク1〜7のアミノ酸配列を表2〜5に示す。表2〜5における「ピークNo.」は前記(II)で見出されたピークの番号に相当し、「MW」はペプチドの分子量、「position」は酵素消化前のタンパク質のアミノ酸配列におけるペプチドの位置を示し、「(2次構造)」は酵素消化前のタンパク質におけるペプチドの2次構造を示す。2次構造を示す記号「a」はα-へリックス構造、「b」はβ-シート構造、「c」はコイル、「t」はターンを示す。
【0155】
【表2】
【0156】
【表3】
【0157】
【表4】
【0158】
【表5】
【0159】
表2はMLTのトリプシン消化物について、PC片の吸着後に顕著に減少したピーク1〜3のアミノ酸配列等を示す。なお、ピーク1および2は同一のペプチドであった。
【0160】
表3はOMPのトリプシン消化物について、PC片の吸着後に顕著に減少したピーク4〜6のアミノ酸配列等を示す。
【0161】
表4はELNのトリプシン消化物について、PC片の吸着後に顕著に減少したピーク7のアミノ酸配列等を示す。
【0162】
表5はOMPのトリプシン消化物について、PMMA片の吸着後に顕著に減少した3つのピークのアミノ酸配列等を示す。なお、PMOMP21と表3のPMOMP3とは同一のペプチドであった。つまりこのPMOMP21(PMOMP3)はPCおよびPMMAに特異的且つ強固に吸着し得るペプチドであるということが分かった。
【0163】
〔4.親和性ペプチドの吸着力測定〕
(手順)
(1)100、75、50、25、12.5、6.25μg/mlの各ペプチド溶液を調製した。なお、PCOMP3(PMOMP21)は2%DMSO+PBSで溶解し、PCOMP6は2%DMSO+PBSで溶解し、PCOMP7は1%DMSO+PBSで溶解し、PCMLT8は1%DMSO+PBSで溶解し、PCMLT10は0.8M urea+PBSで溶解し、PCELN8は0.08M urea+PBSで溶解し、PMOMP19は0.8M urea+PBS 0.8M ureaで溶解し、PMOMP25は0.8M urea+PBSで溶解し、Standard1およびStandard2はPBSで溶解した。比較用のペプチドとしてβ-シート構造を多く含むStandard1(GERGFFYTPKA:配列番号39)、α−へリックス構造を多く含むStandard2(NPKYEQFLE:配列番号40)を用いた。
(2)調製された溶液400μlをPC片またはPMMA片 3g(概算表面積約60cm
2)へ加え、25℃、200rpmで2時間振盪した。
(3)A液(0.1%TFA)、B液(0.1%TFA、99.9%ACN)を調製した。
(4)HPLCシステムを起動後、LineA、BにそれぞれA液、B液をセットし、LineA、BをそれぞれA液、B液で置換した。
(5)A液を流速1ml/minでカラムに供給し、カラム内を平衡化した。
(6)PC片またはPMMA片の吸着前後の液を、100μlずつカラムに供した。
(7)B液の濃度を直線的に増加させ、カラムからペプチドを溶出した。
(8)吸着前のサンプルで検量線を引き、吸着後のピーク高から吸着等温線を作成した。
【0164】
(結果)
図11に各ペプチドのPCに対する吸着力を測定した結果を示した。
図11中、黒ひし形のシンボルはStandard1、白抜きひし形のシンボルはStandard2、黒丸のシンボルはPCOMP3、白抜き丸のシンボルはPCOMP7、黒三角のシンボルはPCMLT8、白抜き三角のシンボルはPCELN8の結果を示す。PCMLT10およびPCOMP6の結果については省略する。
【0165】
また
図12に各ペプチドのPMMAに対する吸着力を測定した結果を示した。
図12中、黒ひし形のシンボルはStandard1、白抜きひし形のシンボルはStandard2、黒丸のシンボルはPMOMP21、白抜き丸のシンボルはPMOMP19、黒三角のシンボルはPMOMP25の結果を示す。
【0166】
図10および11において、横軸は未吸着のペプチド濃度(μM)を示し、縦軸は吸着密度(μmol/m
2)を示す。
図10および11においては、横軸(未吸着のペプチド濃度)に対する曲線の傾きが急であればあるほど、吸着力が高いことを意味している。
【0167】
図10および11によれば、親和性ペプチドとして同定されたいずれのペプチドも比較のペプチドに比して極めて高いPCまたはPMMAに対する吸着力を示した。特にPCOMP3(PMOMP21)については、PCおよびPMMAの両者に吸着することができるとともに、今回検討したペプチド濃度において全て未吸着のペプチドが検出されなかったことから、吸着力が極めて高いということが分かった。
【0168】
発明者らの試算によれば、特許文献2および非特許文献1に示されているPCまたはPMMAに特異的に結合するペプチドの吸着密度は最大で1.0μmol/m
2程度であるため、今回見出した各ペプチドはPCおよび/またはPMMAに対して極めて高い吸着力を有するものであるといえる。
【0169】
なお、今回親和性ペプチドとして見出されたペプチドの2次元構造を表2〜5にまとめたが、吸着力の強いペプチドにはβ-シート構造が多く含まれていた。よって、親和性ペプチドのPCまたはPMMAへの吸着にはβ-シート構造が関与していることが示唆された。