(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明のペンタフルオロスルファニルフェニル基を有するテトラキス(アリール)ボレート化合物(配位性のある化合物で配位されていても良い。)とは、ホウ素元素にペンタフルオロスルファニルフェニル基が少なくともひとつは結合している化合物を示す。
【0008】
前記ペンタフルオロスルファニルフェニル基を有するテトラキス(アリール)ボレート化合物(配位性のある化合物で配位されていても良い。)は、具体的には、一般式(1)
【0010】
(式中、A
+は、陽イオンであり、Arは、全て同一でもそれぞれ異なっていても良く、置換基を有していても良いアリール基を示す。なお、ペンタフルオロスルファニルフェニル基上の任意の水素原子は、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていても良い。又、nは1〜4の整数である。)
で示されるペンタフルオロスルファニル基を有するテトラアリールボレート化合物(配位性のある化合物で配位されていても良い)であるペンタフルオロスルファニルフェニル基を有するテトラキス(アリール)ボレート化合物が好ましい。
【0011】
前記A
+は、陽イオンであるが、例えば、水素イオン;リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、セシウムイオン等のアルカリ金属イオン;クロロマグネシウムイオン、ブロモマグネシウムイオン、ヨードマグネシウムイオン等のハロゲノマグネシウムイオン;テトラメチルアンモニウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオン、テトラフェニルアンモニウムイオン、ジメチルピロリジルアンモニウムイオン、スピロ−(1,1’)-ビピロリジルアンモニウムイオン、スピロ−(1,1’)−ビピペリジルアンモニウムイオン、スピロ−(1,1’)−ピロリジル-ピペリジルアンモニウムイオン、スピロ−(1,1’)−アゼチジル−ピロリジルアンモニウムイオンなどのアンモニウムイオン;テトラメチルホスホニウムイオン、テトラフェニルホスホニウムイオン等のホスホニウムイオン;トリメチルスルホニウムイオン、トリフェニルスルホニウムイオン等のスルホニウムイオン;トリエチルオキソニウムイオン等のオキソニウムイオン;トリメチルカルボニウムイオン、トリフェニルカルボニウムイオン等のカルボニウムイオンが挙げられるが、好ましくはアルカリ金属イオン、アンモニウムイオン、更に好ましくはアルカリ金属イオン、特に好ましくはリチウムイオンである。
【0012】
又、Arは、全て同一でもそれぞれ異なっていても良く、置換基を有していても良いアリール基を示す。前記アリール基としては、広義の意味のアリール基であり、ヘテロアリール基も含む。その具体例としては、例えば、フェニル基、トリル基、フルオロフェニル基、ペンタフルオロフェニル基、ペンタフルオロスルファニルフェニル基、キシリル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基;キノリル基、ピリジル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基等のヘテロアリール基が挙げられる。
【0013】
前記置換基としては、例えば、炭素原子を介して出来る置換基、酸素原子を介して出来る置換基、窒素原子を介して出来る置換基、硫黄原子を介して出来る置換基、ハロゲン原子が挙げられる。
【0014】
前記炭素原子を介して出来る置換基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基等のアルキル基;トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基等のハロゲン化アルキル基;シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロブチル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基、シクロブテニル基、シクロペンテニル基等のアルケニル基;キノリル基、ピリジル基、ピロリジル基、ピロリル基、フリル基、チエニル基等の複素環基;フェニル基、トリル基、フルオロフェニル基、キシリル基、ビフェニリル基、ナフチル基、アントリル基、フェナントリル基等のアリール基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0015】
前記酸素原子を介して出来る置換基としては、例えば、メトキシル基、エトキシル基、プロポキシル基、ブトキシル基、ペンチルオキシル基、ヘキシルオキシル基、ヘプチルオキシル基、ベンジルオキシル基等のアルコキシル基;トリフルオロメトキシル基、ペンタフルオロエトキシル基等のハロゲン化アルコキシル基;フェノキシル基、トルイルオキシル基、ナフチルオキシル基等のアリールオキシル基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0016】
前記窒素原子を介して出来る置換基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジブチルアミノ基、メチルエチルアミノ基、メチルブチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、N−メチル−N−メタンスルホニルアミノ基等の第二アミノ基;モルホリノ基、ピペリジノ基、ピロリジノ基、インドリル基等の複素環式アミノ基が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0017】
前記硫黄原子を介して出来る置換基としては、例えば、チオメトキシル基、チオエトキシル基、チオプロポキシル基等のチオアルコキシル基;チオフェノキシル基、チオトルイルオキシル基、チオナフチルオキシル基等のチオアリールオキシル基、ペンタフルオロスルファニル基等が挙げられる。なお、これらの基は、各種異性体を含む。
【0018】
前記ハロゲン原子としては、例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。
【0019】
本発明のペンタフルオロスルファニル基を有するテトラキス(アリール)ボレート化合物の製造方法としては、例えば、一般式(2)
【0021】
(式中、Arは前記と同義であり、Xはハロゲン原子を示す。又、mは0〜3の整数である。)
で示されるハロゲン化ホウ素化合物(配位性のある化合物で配位されていても良い)と一般式(3a)及び(3b)
【0023】
(式中、A
+及びArは前記と同義である。)
で示されるアリール金属化合物より選ばれる少なくとも1種のアリール金属化合物(なお、(3a)の化合物は必ず含まれる)とを反応させる請求項1記載のペンタフルオロスルファニルフェニル基を有するテトラキス(アリール)ボレート化合物を製造させる方法が挙げられるが、より具体的には、
(1)ハロゲン化ホウ素化合物に単一のアリール化合物を混合して反応させる方法
(2)ハロゲン化ホウ素化合物に複数種のアリール化合物を一括混合して反応させる方法
(3)ハロゲン化ホウ素化合物に複数種のアリール化合物を順次混合して反応させる方法
等が好適に行われる。特に、単一の生成物を合成するためには、好ましくは(1)又は(3)の方法、更に好ましくは(1)の方法で行われる。
【0024】
本発明のペンタフルオロスルファニル基を有するテトラキス(アリール)ボレート化合物及び/又は原料として使用するハロゲン化ホウ素化合物は、配位性のある化合物で配位された状態で存在することもある(安定に存在するために配位された状態で存在していることが多い場合もある)。前記配位性のある化合物としては、例えば、水;ジエチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン等のエーテル類;酢酸エチル,安息香酸メチル等のカルボン酸エステル類;ジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーンボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート類;メタノール、イソプロプルアルコール等のアルコール類;ジエチルアミン、トリエチルアミン等のアミン類;メチルメルカプタン等のチオアルコール類;ジメチルチオエーテル等のチオエーテル類である。なお、配位性のある化合物で配位された状態を錯体と称することもある。
【0025】
本発明において使用する一般式(3a)〜(3b)で示されるアリール金属化合物の量(複数種のアリール金属化合物の場合は総合計量)は、トリハロゲン化ホウ素(配位性のある化合物で配位されていても良い)1モルに対して、好ましくは1.0〜20モル、更に好ましくは1.0〜10モル、特に好ましくは1.0〜8.0モルである。
【0026】
本発明の反応は、溶媒の存在下で行うのが望ましく、使用される溶媒としては、反応を阻害しないものならば特に限定されないが、例えば、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類が挙げられるが、好ましくはエーテル類、脂肪族炭化水素類、更に好ましくはヘキサン、エーテル、テトラヒドロフランが使用される。なお、これらの溶媒は、単独又は二種以上を混合して使用しても良い。
【0027】
前記溶媒の使用量は、ハロゲン化ホウ素化合物(配位性のある化合物で配位されていても良い)1gに対して、好ましくは0.1〜1000ml、更に好ましくは0.2〜500ml、特に好ましくは0.5〜200mlである。
【0028】
本発明は、例えば、ハロゲン化ホウ素化合物、1又は複数種のアリール金属化合物、及び溶媒を混合して反応させる等の方法によって行われる。複数種のアリール金属化合物を使用する場合には、一括又は順次添加して反応させても良く、目的物を得るための最良の方法で適宜行われる。なお、その際の反応温度は、好ましくは−100〜200℃、更に好ましくは−90〜150℃、特に好ましくは−80〜100℃であり、反応圧力は特に制限されないが、通常、常圧又は加圧下で行う。
【0029】
本発明の反応によってペンタフルオロスルファニルフェニル基を有するテトラキス(アリール)ボレート化合物(配位性のある化合物で配位されていても良い)が得られるが、例えば、濾過、抽出、再結晶、晶析、蒸留、昇華、シリカゲルカラムクロマトグラフィー等の方法により単離・精製される。
【0030】
得られたペンタフルオロスルファニルフェニル基を有するテトラキス(アリール)ボレート化合物に配位している化合物(主に製造の際の溶媒であることが多い)中の配位化合物は適当な溶媒中で加熱することによって取り除くことができ、必要な配位性のある化合物を接触させることによって、再度、同一又は別の配位性のある化合物を配位させることができる。
【0031】
又、得られたペンタフルオロスルファニルフェニル基を有するテトラキス(アリール)ボレート化合物(配位性のある化合物で配位されていても良い)のうち、好ましい化合物としては、式(4)
【0033】
(式中、ペンタフルオロスルファニルフェニル基及びフェニル基上の任意の水素原子は、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていても良い。又、nは1〜4の整数である。)
で示されるペンタフルオロスルファニルフェニル基を有するリチウムテトラキス(アリール)ボレート(配位性のある化合物で配位されていても良い)であり、更に好ましい化合物としてはペンタフルオロスルファニル基の位置がホウ素原子に対して3位又は4位であるペンタフルオロスルファニルフェニル基を有するテトラキス(アリール)ボレート化合物である。
【0034】
なお、これらの本発明の化合物は、有機溶媒、特にエステル類、カーボネート類、ニトリル類、アルコール類及びハロゲン化脂肪族炭化水素からなる群より選ばれる少なくとも1種の有機溶媒に対して高い溶解性を示す。有機溶媒に溶解した状態では、一般式(6)
【0036】
(式中、ペンタフルオロスルファニルフェニル基及びフェニル基上の任意の水素原子は、アルキル基、シクロアルキル基、アラルキル基、アリール基又はハロゲン原子で置換されていても良い。又、nは1〜4の整数である。)
で示されるペンタフルオロスルファニルフェニル基を有するテトラキス(アリール)ボレートイオンとして存在する。当該ペンタフルオロスルファニルフェニル基を有するテトラキス(アリール)ボレートイオンを含む有機溶媒溶液は、特異な電気特性を有すると考えられる。
【実施例】
【0037】
次に、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらに限定されるものではない。
【0038】
実施例1(リチウムテトラ(4−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレートの合成)
攪拌装置を備えた内容量300mlのガラス製容器に、4−ブロモペンタフルオロスルファニルベンゼン11.3g(40mmol)及び無水ジエチルエーテル100mlを加え、−78℃に冷却して攪拌しながら、1.58mol/Lのt−ブチルリチウムペンタン溶液25.3ml(40mmol)をゆるやかに滴下して15分間攪拌させた。次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体0.95g(6.7mmol)を同温度にて加え、室温まで昇温させて一晩反応させた。
反応終了後、反応液を減圧下で濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(展開溶媒;酢酸エチル→メタノール添加)した後に減圧下で濃縮し、茶色油状液体として、リチウムテトラ(4−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート0.82gを得た(三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体基準の単離収率;11%)。なお、
1H−NMR分析により、目的物1分子に対して、酢酸エチル3.56分子が配位していることが確認された。
なお、リチウムテトラ(4−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレートは以下の物性を示す新規な化合物である。
【0039】
1H−NMR(CDCl
3,δ(ppm));7.38〜7.44(m)
13C−NMR(CDCl
3,δ(ppm));123.2,135.3,150.1,166.6
7Li−NMR(CDCl
3,δ(ppm));0.152
FAB−MS(negative);823(M−Li)
【0040】
参考例1(テトラキス(ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレートイオンを含む有機溶媒溶液の調整)
実施例1で得られたリチウムテトラ(4−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレートを、酢酸エチル、クロロホルム、ジメチルカーボネート、アセトニトリル及びメタノールに溶解させて、各々のテトラキス(4−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレートイオンを含む有機溶媒溶液を調整した(極めて易溶であった)。
【0041】
実施例2(リチウムテトラ(3−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレートの合成)
攪拌装置を備えた内容量500mlのガラス製容器に、3−ブロモペンタフルオロスルファニルベンゼン22.6g(80mmol)及び無水ジエチルエーテル200mlを加え、−78℃に冷却して攪拌しながら、1.58mol/Lのt−ブチルリチウムペンタン溶液50.6ml(80mmol)をゆるやかに滴下して20分間攪拌させた。次いで、三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体1.89g(13.3mmol)を同温度にて加え、室温まで昇温させて一晩反応させた。
反応終了後、反応液にトリフルオロ酢酸7.68g(67.3mmol)を加えた後、反応液を減圧下で濃縮した。得られた濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(ヘキサン:酢酸エチル=50:50→酢酸エチル:メタノール=95:5)して茶色油状液体1.5gを得た。次いで、得られた油状液体を逆相カラムクロマトグラフィーで精製(展開溶媒;アセトニトリル)した後に減圧下で濃縮し、茶色油状液体として、リチウムテトラ(4−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート1.48gを得た(三フッ化ホウ素ジエチルエーテル錯体基準の単離収率;10%)。なお、
1H−NMR分析により、目的物1分子に対して、アセトニトリル6.0分子が配位していることが確認された。
なお、リチウムテトラ(3−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレートは以下の物性を示す新規な化合物である。
【0042】
1H−NMR(CDCl
3,δ(ppm));7.18〜7.26(4H、m)、7.37〜7.45(8H、m)、7.72〜7.30(4H,m)
13C−NMR(CDCl
3,δ(ppm));120.5,126.6,131.6,138.4,153.3,162.6
19F−NMR(CDCl
3,δ(ppm));64.5(sept),89.3(quint)
7Li−NMR(CDCl
3,δ(ppm));−1.578
FAB−MS(negative);823(M−Li)
【0043】
実施例3(リチウム(トリフェニル)(4−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート及びリチウム(ジフェニル)ビス(4−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレートの合成)
攪拌装置を備えた内容量200mlのガラス製容器に、4−ブロモペンタフルオロスルファニルベンゼン4.25g(15mmol)及び無水ジエチルエーテル100mlを加え、−78℃に冷却して攪拌しながら、1.58mol/Lのt−ブチルリチウムペンタン溶液9.49ml(15mmol)をゆるやかに滴下して20分間攪拌させた。次いで、トリフェニルホウ素3.99g(16.5mmol)の無水ジエチルエーテル溶液25mlを同温度にて加え、室温まで昇温させて一晩反応させた。
反応終了後、反応液を減圧下で濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(展開溶媒;ヘキサン/酢酸エチル=50/50→酢酸エチル)することで、茶色油状液体2.77gを得た。
得られた茶色油状液体を
1H−NMR分析したところ、酢酸エチルが配位したリチウム(トリフェニル)(4−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート及び酢酸エチルが配位したリチウム(ジフェニル)ビス(4−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレートが存在していることが確認された(生成比はFAB−MSスペクトルの強度比より86:14であった)。当該比を基にして計算したところ単離収率は約40%であった。
なお、リチウム(トリフェニル)(4−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート及びリチウム(ジフェニル)ビス(4−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレートは以下の物性を示す新規な化合物である。
【0044】
FAB−MS(negative);
445(M−Li);リチウム(トリフェニル)(4−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート
571(M−Li);リチウム(ジフェニル)ビス(4−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート
【0045】
実施例4(リチウム(トリフェニル)(3−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート及びリチウム(ジフェニル)ビス(3−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレートの合成)
攪拌装置を備えた内容量200mlのガラス製容器に、3−ブロモペンタフルオロスルファニルベンゼン4.25g(15mmol)及び無水ジエチルエーテル100mlを加え、−78℃に冷却して攪拌しながら、1.58mol/Lのt−ブチルリチウムペンタン溶液9.49ml(15mmol)をゆるやかに滴下して20分間攪拌させた。次いで、トリフェニルホウ素3.99g(16.5mmol)の無水ジエチルエーテル溶液25mlを同温度にて加え、室温まで昇温させて一晩反応させた。
反応終了後、反応液を減圧下で濃縮し、濃縮物をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製(展開溶媒;ヘキサン/酢酸エチル=50/50→酢酸エチル/メタノール=95/5)した後に減圧下で濃縮し、茶色油状液体0.97gを得た。
得られた茶色油状液体を
1H−NMR分析したところ、酢酸エチルが配位したリチウム(トリフェニル)(3−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート及び酢酸エチルが配位したリチウム(ジフェニル)ビス(3−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレートが存在していることが確認された(生成比はFAB−MSスペクトルの強度比より64:36であった)。当該比を基にして計算したところ単離収率は約14%であった。
なお、リチウム(トリフェニル)(3−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート及びリチウム(ジフェニル)ビス(3−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレートは以下の物性を示す新規な化合物である。
【0046】
FAB−MS(negative);
445(M−Li);リチウム(トリフェニル)(3−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート
571(M−Li);リチウム(ジフェニル)ビス(3−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート
【0047】
参考例2(ペンタフルオロスルファニルフェニル基を有するテトラキス(アリール)ボレート化合物に配位性している溶媒の除去)
リチウムテトラ(3−ペンタフルオロスルファニルフェニル)ボレート(酢酸エチルが3.56分子配位)0.79gをアセトニトリル5mlに加え、60℃で1時間還流させた。その後、得られた溶液を減圧下、80℃で濃縮して固体を得た。得られた固体を
1H−NMR分析したところ、配位子していた酢酸エチルがないことが確認された。
なお、アセトニトリルを、アセトン、1,2−ジメトキシエタン、メタノール、炭酸ジメチルに変えたときでも、同様に配位子していた酢酸エチルがないことが確認された。特に、メタノール、炭酸ジメチルを使用した場合には、取り扱いが容易なさらさらした固体が得られた。