(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来のものでは、例えば、点灯装置の電源スイッチ(片切りスイッチ)が切の状態であるにもかかわらず、LEDが薄暗く僅かに点灯してしまうという誤点灯の現象が生じる。この現象は、電源ラインにノイズが重畳され、LEDチップが接続された配線パターン等の導体と、この導体に近接する金属製の本体との間に生じる浮遊容量に起因して、LEDチップに漏れ電流として微小電流が流れることによるものと考えられる。
【0006】
これを回避するには、例えば、各LEDチップに並列にバイパス素子としてコンデンサを挿入し、前記微小電流をバイパスする経路を形成する方法があるが、この場合は、コンデンサを追加するため、コストが増加したり、半田付けの増加により配線接続の信頼性の低下を招いたりする虞がある。また、このコンデンサが基板の表面上に実装されることにより、基板表面の反射率が低下し、光源としての光出力が低下するという問題が生じる。
【0007】
また、LED等の発光素子は、その温度が上昇するに従い、光の出力が低下し、耐用年数も短くなる。このため、LEDやEL素子等の固体発光素子を光源とする照明装置にとって、耐用年数を延したり発光効率の特性を改善したりするために、発光素子の温度が上昇するのを抑制する必要がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みなされたもので、浮遊容量を小さくすることに着目し、これにより、発光素子の誤点灯を抑制するとともに、放熱効果の向上を図ることができる照明装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の記載の照明装置は、接地電位にある導電性を有する装置本体と;前記装置本体に配設された発光装置と;交流電源に接続され前記発光装置に電力を供給する点灯装置と;を具備し、
前記発光装置が、絶縁層を有する基板と、
表面の全光線反射率が90%以上であり、並設して前記絶縁層に積層され熱伝導性を有しかつ電気的に非導通の放熱層と、前記各放熱層がなす列の端の前記放熱層と所定の絶縁距離を空けて前記絶縁層に夫々積層された正極側給電導体及びこの導体と対をなす負極側給電導体と、プラス側電極及びマイナス側電極を有し、前記放熱層の並び方向に列をなすとともにこの列が前記列と直交する方向にも並ぶように前記各放熱層の夫々に複数実装された発光素子と、前記放熱層の並び方向に列をなした各発光素子列の列が延びる方向に隣接された各発光素子を電気的に直列に接続するとともに、前記各発光素子列の端に配置された前記発光素子と前記正極側給電導体又は前記負極側給電導体とを夫々接続して前記各発光素子列を電気的に並列に接続したボンディングワイヤを有する給電用配線手段と、
蛍光体を含有し、前記複数の発光素子と、前記ボンディングワイヤと、前記正極側給電導体の前記ボンディングワイヤとの接続部分と、前記負極側給電導体の前記ボンディングワイヤとの接続部分と、前記放熱層の少なくとも一部と、前記絶縁層の一部と、を一体で覆う封止部材と、を備え、
前記封止部材により覆われる領域において最も大きな面積を占めるのは前記電気的に非導通の放熱層であり、前記封止部材により覆われる領域には前記絶縁層も露出していることを特徴とする。
【0010】
基板は、アルミニウム等の熱伝導性が良好で放熱性に優れた金属材料をベース板として適用するのが好ましいが、格別構成材料が限定されるものではない。ベース板の材料は、絶縁材とする場合には、放熱特性が比較的良好で、耐久性に優れたセラミック材料又は合成樹脂材料を適用できる。発光素子とは、LED等の固体発光素子である。また、発光素子の実装個数には特段制限はない。
【0011】
放熱層は、例えば、三層構成とし、第一層を銅をエッチングして設け、この銅層の上に、第二層としてニッケル(Ni)をめっき処理し、第三層として、銀(Ag)をめっき処理して構成することができる。この場合、表層は反射率の高いものとすることができる。
給電用配線手段とは、各発光素子を電気的に接続するボンディングワイヤや配線パターン等の導体を意味する。
照明装置には、屋内又は屋外で使用される照明器具、ディスプレイ装置等が含まれる。
【0014】
請求項2に記載の照明装置は、請求項1に記載の照明装置において、前記各発光素子を電気的に接続する
前記給電用配線手段は、
隣接する発光素子間に形成され少なくとも放熱層の面積より小さい接続導体と、この接続導体を介して隣接する発光素子の電極同士を相互に接続するボンディングワイヤとを有して構成されていることを特徴とする。
接続導体は、少なくとも放熱層の面積より小さく、ボンディングワイヤを接続するための最小限の面積で形成することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載の発明によれば、放熱層の面積を大きくして、発光素子の温度上昇を効果的に抑制できる一方、給電用配線手段の面積を小さくして、発光素子の誤点灯を抑制することができる照明装置を提供できる。
【0017】
請求項2に記載の発明によれば、請求項1に記載の発明の効果に加え、面積の小さい接続導体を介して隣接する発光素子の電極同士を相互にボンディングワイヤで接続するので、給電用配線手段の面積を小さくすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の第1の実施形態に係る発光装置及び照明装置について
図1乃至
図4を参照して説明する。なお、各図において同一部分には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0020】
図1乃至
図3に示すように、発光装置1は、基板2と、複数の発光素子3と、各発光素子3の電極に接続された給電用配線手段4と、枠部材5と、封止部材6とを備えている。
【0021】
基板2は、略長方形に形成されている。基板2には、各発光素子3の放熱性を高めるうえで、アルミニウム等の熱伝導性が良好で放熱性に優れた金属材料をベース板として適用するのが好ましい。このような基板2として、アルミニウム製のべース板21の一面に絶縁層22が積層された金属製のべース基板が示されている。絶縁層22は、電気絶縁性の有機材料である合成樹脂、例えば、エポキシ樹脂で形成されている。なお、ベース板の材料は、絶縁材とする場合には、放熱特性が比較的良好で、耐久性に優れたセラミック材料又は合成樹脂材料を適用できる。
【0022】
図2及び
図3に示すように、絶縁層22の上には、放熱層23、正極側給電導体24及び負極側給電導体25が同様の層構成で積層されている。
図2に示すように、放熱層23は、略四角形状の6個のブロックに形成されて長手方向に並設されている。正極側給電導体24及び負極側給電導体25は、基板2の両端側に放熱層23とは、所定の絶縁距離を空けて、対をなして形成されている。
【0023】
図3に示すように、これら放熱層23、正極側給電導体24及び負極側給電導体25は、三層構成であり、絶縁層22の上に、第一層Aとして銅パターンがエッチングにより設けられている。この銅パターン層の上には、第二層Bとしてニッケル(Ni)がめっき処理されており、第三層Cには、銀(Ag)がめっき処理されている。放熱層23、正極側給電導体24及び負極側給電導体25の第三層C、すなわち、表層は、いずれも銀(Ag)めっきが施されており、全光線反射率は、90%と高いものとなっている。なお、絶縁層12上には、図示しないレジスト層が適宜積層されている。
正極側給電導体24及び負極側給電導体25は、電気的に接続され導通される層であり、これに対し、放熱層23は、電気的に接続されない非導通の層である。
【0024】
複数の発光素子3は、LEDのベアチップからなる。LEDのベアチップには、例えば、白色系の光を発光部で発光させるために、青色の光を発するものが用いられている。このLEDのベアチップは、シリコーン樹脂系の絶縁性の接着剤31を用いて、各放熱層23上に接着して実装されている。
【0025】
LEDのベアチップは、例えば、InGaN系の素子であり、透光性のサファイア素子基板に発光層が積層されており、発光層は、n型窒化物半導体層と、InGaN発光層と、p型窒化物半導体層とが順次積層されて形成されている。そして、発光層に電流を流すための電極は、p型窒化物半導体層上にp型電極パッドで形成されたプラス側電極32と、n型窒化物半導体層上にn型電極パッドで形成されたマイナス側電極33とで構成されている。
【0026】
給電用配線手段4は、各発光素子3を電気的に接続する機能を果たす導体である。前記電極は、給電用配線手段4としてボンディングワイヤ41により電気的に直接接続されている。ボンディングワイヤ41は、金(Au)の細線からなっており、実装強度の向上とLEDのベアチップの損傷低減のため金(Au)を主成分とするバンプを介して接続されている。
【0027】
これら複数の発光素子3は、各放熱層23上に10個ずつ実装されており、これら各放熱層23上の2個ずつが直列に接続されて合計12個が直列に接続されて5つの直列回路を構成している。
【0028】
具体的には、個々の発光素子列において、その列が延びる方向に隣接された発光素子3の異極の電極同士、つまり、
図3に代表して示すように、隣接された発光素子3の内で一方の発光素子3のプラス側電極32と、隣接された発光素子3の内で他方の発光素子3のマイナス側電極33とがボンディングワイヤ41で順次直接的に接続されている。これによって、個々の発光素子列を構成する複数の発光素子3は電気的に直列に接続される。したがって、複数の発光素子3は通電状態で一斉に発光される。
【0029】
さらに、個々の発光素子列において、特定の発光素子、すなわち、列の端に配置された発光素子3aの電極は、正極側給電導体24又は負極側給電導体25にボンディングワイヤ41で接続されている。したがって、前記各発光素子列は電気的には並列に設けられていて、正極側給電導体24及び負極側給電導体25を通じて給電されるようになっている。そのため、各発光素子列の内のいずれか一列がボンディング不良等に起因して発光できなくなることがあっても発光装置1全体の発光が停止することはない。
【0030】
以上のように隣接する発光素子3の電極同士は、給電用配線手段4としてボンディングワイヤ41により、配線パターン等を介さないで直接的に接続されている。したがって、給電用配線手段4が形成する導体としての電極の面積は、主としてボンディングワイヤ41で規定され、最小限の面積となっている。つまり、後述するように浮遊容量に関しては、接地電位にある本体が一方の電極を形成し、給電用配線手段4が他方の電極を形成することとなり、この間が誘電体を介して静電結合されることになる。この場合、浮遊容量の大きさは電極の面積に比例するが、上記のように給電用配線手段4が形成する電極の面積は小さくなっているので、浮遊容量を小さくすることができる。
【0031】
枠部材5は、例えば、ディスペンサを用いて所定の粘度を有する未硬化のシリコーン樹脂を基板2に枠状に塗布し、その後に加熱硬化することにより、基板2上に接着されている。この枠部材5は、略長方形状に塗布され内周面を有している。内周面で囲まれた枠部材5の内側に、放熱層23の大部分、正極側給電導体24及び負極側給電導体25のボンディングワイヤ41の接続部分が配設されている。つまり、発光素子3の実装領域は、枠部材5によって囲まれた状態となっている。
【0032】
枠部材5は、上記のようにシリコーン樹脂で形成されるので、光や熱による劣化が生じ難く、表層に銀(Ag)めっきが施された放熱層23、正極側給電導体24及び負極側給電導体25の変色を抑制することができる。したがって、これら放熱層23、正極側給電導体24及び負極側給電導体25による反射効率の低下を軽減できる。
【0033】
仮に、枠部材を形成する材料にエポキシ樹脂を用いると、表層の銀(Ag)めっきに有機物が付着し、表層が劣化し変色して反射効率の低下をもたらすこととなる。また、シリコーン樹脂に酸化チタンを含有させて枠部材5を形成してもよい。この場合は、さらに、光による表層の変色や劣化を防止することが可能となる。
【0034】
封止部材6は、透光性合成樹脂、例えば、透明シリコーン樹脂製であり、枠部材5の内側に充填されて基板2上に設けられている。封止部材6は、各発光素子3、正極側給電導体24及び負極側給電導体25のボンディングワイヤ41の接続部分等を封止している。
【0035】
封止部材6は、蛍光体を適量含有している。蛍光体は、発光素子3が発する光で励起されて、発光素子3が発する光の色とは異なる色の光を放射する。発光素子3が青色光を発する本実施形態では、白色光を出射できるようにするために、蛍光体には青色の光とは補色の関係にある黄色系の光を放射する黄色蛍光体が使用されている。封止部材6は、未硬化の状態で枠部材5の内側に所定量注入された後に加熱硬化させて設けられている。そのため、封止部材6の封止面積は枠部材5で規定されている。
【0036】
次に、
図4の参照を加えて上記発光装置1の作用を説明する。
図4は、照明装置を示す概略の結線図である。照明装置は、商用交流電源ACに電源スイッチSWを介して接続された点灯装置7、発光装置1を収容した本体8を備えている。点灯装置7は、例えば、全波整流回路の出力端子間に平滑コンデンサを接続し、この平滑コンデンサに直流電圧変換回路及び電流検出手段を接続して構成されている。発光装置1は、この点灯装置7から直流電力が供給されて、その発光素子3が点灯制御される。本体8は、アルミニウム等の導電性ある金属製であり、接地電位にある。
【0037】
発光装置1に通電されると、封止部材6で覆われた各発光素子3が一斉に発光されて、発光装置1は白色の光を出射する面状光源として使用される。この発光中において、放熱層23は、各発光素子3が発した熱を拡散するヒートスプレッダとして機能し放熱を促進する。さらに、発光装置1の発光中、発光素子3が放射した光のうちで基板2側に向かった光は放熱層23や正極側給電導体24及び負極側給電導体25の表層で主として光の利用方向に反射される。
【0038】
また、各発光素子3を接続する給電用配線手段4と本体8との間が近接している場合には、浮遊容量Csが生じる可能性があるが、本実施形態では、給電用配線手段4が浮遊容量Csの電極として作用する面積は小さく、浮遊容量Csを小さくすることが可能となる。したがって、電源スイッチSWを切った状態において、電源ラインにノイズが重畳したとしても、発光素子3に漏れ電流として微小電流が流れるのを抑制して、結果的に発光素子3の誤点灯を回避することが可能となる。
【0039】
因みに、本実施形態の照明装置において、周波数50Hz、振幅1Kvの電源ノイズを加える実験を行った結果、浮遊容量Csを40pFに抑えることができれば発光素子の僅かな点灯が観測され難いことが判明した。したがって、ひとつの発光装置あたりの浮遊容量Csを40pF以下に設定することが好適であることが確認できた。
【0040】
さらに、発光素子3を実装する放熱層23を配線パターンとして兼用することが考えられるが、この場合、放熱効果を高めるため、放熱層23の面積を大きくすると、これに伴い浮遊容量Csが大きくなる方向に作用し、ノイズによって発光素子3に漏れ電流が流れ、発光素子3の誤点灯を来す可能性がある。
【0041】
しかしながら、本実施形態においては、放熱層23は電気的に接続されない非導通の状態であるため、放熱層23の面積を大きくして、最大限に発光素子3の放熱効果を高めながら、一方、給電用配線手段4の面積を小さくして、発光素子3に漏れ電流として微小電流が流れるのを抑制して、発光素子3の誤点灯を抑制することができる。
【0042】
以上のように本実施形態によれば、放熱層23の面積を大きくして、発光素子3の温度上昇を効果的に抑制できる一方、給電用配線手段4の面積を小さくして、発光素子3の誤点灯を抑制することができる。
【0043】
次に、本発明の第2の実施形態に係る発光装置について
図5乃至
図7を参照して説明する。なお、第1の実施形態と同一又は相当部分には同一符号を付し重複した説明は省略する。
【0044】
本実施形態では、小面積の接続導体42を設け、この接続導体42を介して隣接する発光素子3の電極同士をボンディングワイヤ41で相互に接続するものである。したがって、給電用配線手段4は、接続導体42及びボンディングワイヤ41で構成されている。
【0045】
接続導体42は、発光素子列において、その列が延びる方向とは直交する列、すなわち、縦方向の各5個の発光素子3が構成する列間に、その列に沿って形成されている。この接続導体42は、幅狭に形成され、前記放熱層23と同様な三層構成であり、放熱層23とはその周囲を所定間隔を空けて分離され、絶縁されて形成されている。放熱層23は、第1の実施形態と同様に、電気的に接続されない非導通の層である。
【0046】
なお、接続導体42は、浮遊容量Csを小さくするため、少なくとも放熱層23の面積より小さく、ボンディングワイヤ41を接続するに足りる最小限の面積で形成することが好適である。
発光素子3の具体的な接続関係は、以下に説明するとおりである。
【0047】
個々の発光素子列において、その列が延びる方向に隣接された発光素子3の異極の電極同士、つまり、
図7に代表して示すように、隣接された発光素子3の内で一方の発光素子3のプラス側電極32と、隣接された発光素子3の内で他方の発光素子3のマイナス側電極33とがボンディングワイヤ41で接続導体42を介して接続されている。また、この一方の発光素子3のマイナス側電極33は、反対側に隣接する発光素子3のプラス側電極32にボンディングワイヤ41で直接的に接続され、他方の発光素子3のプラス側電極32は、反対側に隣接する発光素子3のマイナス側電極33にボンディングワイヤ41で直接的に接続されている。
【0048】
以上のように本実施形態によれば、第1の実施形態と同様に、放熱層23の面積を大きくして、発光素子3の温度上昇を効果的に抑制できる一方、給電用配線手段4の面積を小さくして、発光素子3の誤点灯を回避することができる。
【0049】
続いて、本発明の第3の実施形態に係る照明装置について説明する。図示は省略するが、上記発光装置1は、複数接続して光量を増大する照明装置として構成できる。この場合、各発光装置1を直列に接続すると、浮遊容量Csが増加し、漏れ電流が増加して発光素子3の誤点灯が生じる傾向となることが判明した。この問題を解決するため、本発明者は、種々の実験を行った。その結果、各発光装置1を並列に接続することにより、各発光装置1に流れる漏れ電流を均等化でき誤点灯を抑制できることが確認できた。
したがって、発光装置1を複数接続して照明装置を構成する場合には、各発光装置を並列に接続することが誤点灯を抑制するためには有効となる。
【0050】
なお、本発明は、上記各実施形態の構成に限定されることなく、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能である。例えば、照明装置としては、屋内又は屋外で使用される照明器具、ディスプレイ装置等に適用可能である。