(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、今日の二次電池は、正極合剤含有組成物としてスラリー化された正極合剤含有組成物を用い、これを集電体に塗布して正極合剤層を有する正極を形成するとともに、負極合剤含有組成物としてスラリー化された負極合剤含有組成物を用い、これを集電体に塗布して負極合剤層を有する負極を形成し、これら正極及び負極をセパーレータを介して積層した電極体と、非水系電解液又は水系電解液とを電池外装ケース内に装填して形成するのが一般的である。
【0007】
従来のバッチ生産方式によると、ビーズミルのような分散機を用い事前に正極活物質や負極活物質と導電助剤を混合分散処理しておき、これをプラネタリーミキサーのような機械を用いてスラリー化する方法がとられる。この方法によると、正極合剤含有組成物スラリーや負極合剤含有組成物スラリーを正極活物質や負極活物質等を出発原料として一貫して連続的に生産することはできない。
【0008】
特開2007−220510号公報記載の連続剪断処理装置によっても、正極合剤含有組成物スラリーや負極合剤含有組成物スラリーを一貫して連続的に生産することはできない。
【0009】
同公報の記載によると、例えば、正極合剤含有組成物スラリーの調製にあたっては、正極活物質を連続剪断装置を用いて処理し、その後に、別途準備されたプラネタリーミキサー等の混合装置を用いて、該正極活物質と、導電助剤、結着剤及び溶剤とを従来どおりの混合方法で混合して正極合剤含有組成物スラリーが調製される。
【0010】
或いは、正極活物質及び導電助剤を前記連続剪断装置を用いて処理し、そうして得られる混合物を別途準備されたプラネタリーミキサー等の混合装置を用いて結着剤及び溶剤と従来どおりの混合方法で混合してスラリー化された正極合剤含有組成物が調製される。
【0011】
スラリー化された負極合剤含有組成物の調製も略同様である。
【0012】
同公報には、正極活物質又は負極活物質、導電助剤、結着剤及び溶剤を一度に前記連続剪断装置に投入して処理することができる旨の記載があるが、このように多種類の電池材料を一度に連続剪断処理装置へ投入して所望の混合とメカノケミカル処理をそれら材料に一挙に施して、それら材料が均一に混合分散されたスラリー化された組成物を得ることは実際には困難であると思われる。
【0013】
そこで本発明は、二次電池形成のための電極合剤含有組成物スラリー塗布対象材への塗布工程に供することができる均質な電極合剤含有組成物スラリーを少なくとも粉体の電極活物質を含む粉体電池材料を出発原料として目的とする電極合剤含有組成物スラリーまで一貫して連続的に再現性良好に製造することができる二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーの連続製造装置及び連続製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は前記課題を解決するため次の二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーの連続製造装置及び連続製造方法を提供する。
(1)二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーの連続製造装置
少なくとも粉体の電極活物質を含む粉体電池材料の供給部と、
該供給部から供給される粉体電池材料にメカノケミカル処理を施してメカノケミカル処理物を得るためのメカノケミカル処理部と、
液状のバインダーを投入するためのバインダー投入部を有するとともに該バインダー投入部から投入される液状バインダーと前記メカノケミカル処理部から供給される前記メカノケミカル処理物とに混練分散処理を施して
該バインダーと該メカノケミカル処理物とを混練するとともに相互に分散させて硬練混練物を得るための硬練混練分散処理部と、
液状の希釈剤を投入するための希釈剤投入部を有するとともに該希釈剤投入部から投入される液状希釈剤と前記硬練混練分散処理部から供給される前記硬練混練物とに混練分散処理を施して該希釈剤と該硬練混練物とを混練するとともに相互に分散させて電極合剤含有組成物スラリーを得るための希釈混練分散処理部とを含み、
前記メカノケミカル処理部、硬練混練分散処理部及び希釈混練分散処理部のそれぞれは、1又は2以上の環状の固定円盤と、該環状固定円盤に対向配置されるとともに該環状固定円盤に通された回転軸に支持され、該回転軸が回転駆動されることで該環状固定円盤と中心軸線を同じくして回転駆動される1又は2以上の回転円盤とを含んでおり、該環状固定円盤と該回転円盤とで該環状固定円盤と該回転円盤との隙間に入り込む処理対象材料に剪断及び分散処理を施す剪断分散処理域が1段又は2段以上に形成されており、前記メカノケミカル処理部、硬練混練分散処理部及び希釈混練分散処理部のそれぞれにおける前記回転軸は前記供給部から連続して延びて一体的に回転可能な連続回転軸を形成しており、該供給部に位置する該連続回転軸の部分は該部分の回転により前記粉体電池材料を前記メカノケミカル処理部へ送るための送り部材を有しており、
前記硬練混練分散処理部における前記バインダー投入部は、該硬練混練分散処理部において前記メカノケミカル処理部にもっとも近く配置されている前記回転円盤が嵌挿されている液注部シリンダーに設けられており、
前記希釈混練分散処理部における前記希釈剤投入部は、すくなくとも、該希釈混練分散処理部において前記硬練混練分散処理部にもっとも近く配置されている前記回転円盤が嵌挿されている液注部シリンダーに設けられている二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーの連続製造装置。
【0015】
(2)二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーの連続製造方法
本発明に係る二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーの連続製造装置を用いる二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーの連続製造方法であり、該二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーの連続製造装置において前記供給部から連続して延びる前記連続回転軸を回転させて該連続回転軸に支持された回転円盤を回転させつつ、前記粉体電池材料を構成する各粉体材料を予め定められた配合割合で配合した粉体電池材料を前記供給部により連続的に前記メカノケミカル処理部へ供給し、該メカノケミカル処理部において前記供給部から供給されてくる該電池材料にメカノケミカル処理を施し、ひき続き該メカノケミカル処理部で得られたメカノケミカル処理物を前記硬練混練分散処理部へ供給し、該硬練混練分散処理部において前記バインダー投入部から液状のバインダーを予め定めた割合で投入し、該バインダーと前記メカノケミカル処理物に混練分散処理を施し、該硬練混練分散処理部で得られた硬練混練物をひき続き前記希釈混練分散処理部へ供給し、該希釈混練分散処理部において前記液状の希釈剤を予め定めた割合で前記希釈剤投入部から投入し、該希釈剤と前記硬練混練分散処理部から供給された硬練混練物に混練分散処理を施して固形分濃度が予め定めた割合になるように配合された二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーを連続的に得る二次電池用の電極合剤含有組成物スラリー連続製造方法。
【0016】
ここで、「電極合剤含有組成物」は、「正極合剤含有組成物」であっても、「負極合剤含有組成物」のいずれであってもよく、またそれらは、「非水系二次電池」用のものでも、「水系二次電池」用のものでも構わない。
【0017】
また、粉体電池材料を構成する「電極活物質」は「正極活物質」でも「負極活物質」でも構わない。粉体電池材料を構成するものとして電極活物質の他に粉体の添加剤が採用されてもよく、その場合、粉体の添加剤として粉体の導電助剤を例示できる。
【0018】
正極合剤含有組成物スラリーを製造する場合には、粉体電池材料として粉体の正極活物質と粉体の導電助剤を含むものを例示できる。
負極合剤含有組成物スラリーを製造する場合には、粉体電池材料として粉体の負極活物質、或いは粉体の負極活物質と粉体の導電助剤を含むものを例示できる。
【0019】
本発明の二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーの連続製造装置及び該装置を用いる二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーの連続製造方法によると、少なくとも粉体の電極活物質を含む粉体電池材料を出発原料として、該粉体電池材料を構成する各材料を計量して、それら材料を予め定めた配合割合で前記供給部からメカノケミカル処理部へ供給することができ、しかも連続的に供給することが可能である。
【0020】
そのようにメカノケミカル処理部に供給された粉体電池材料は、メカノケミカル処理部における剪断分散処理域を通過することで剪断力と分散作用を受けて均一状に混合されるとともに相互に分散された状態の、且つ、その分散状態がその後の各種処理においても維持される、換言すれば、その後の処理おいても電池材料を構成している一部の材料等が再凝集することが抑制された状態が維持されるメカノケミカル処理物となる。
【0021】
このメカノケミカル処理物はひき続き硬練混練分散処理部へ送られ、該処理部で予め定めた配合割合となるように供給される液状の
バインダーとともに混練分散処理される。該混練分散処理においても液状バインダーとメカノケミカル処理物とが該処理部における前記剪断分散処理域を通過することでそれらは均一状に混練されるとともに相互に均一状に分散される。
【0022】
この場合、液状バインダーは水飴状の粘度の
バインダーであることが一般的であり、そのような場合には、そのまま塗布工程に供するには未だ適さない比較的硬練りの混練物(硬練混練物)が得られる。
【0023】
この硬練混練物はひき続き希釈混練分散処理部へ送られ、該処理部で予め定めた配合割合となるように供給される液状の希釈剤とともに混練される。該混練処理においても液状希釈剤と硬練混練物とが該処理部における前記剪断分散処理域を通過することでそれらは均一状に混練されるとともに相互に均一状に分散され、かくして、均質な、塗布工程に供することができる適度の粘度の二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーが品質再現性良好に連続的に得られる。
【0024】
本発明に係る二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーの連続製造装置及び連続製造方法によると、少なくとも粉体の電極活物質を含む粉体電池材料を出発原料として目的とする電極合剤含有組成物スラリーまで一貫して連続的に再現性良好に同じ製造装置で製造することができるから、出発原料である粉体電池材料から最終的に電極合剤含有組成物スラリーを得るまでの間にそれぞれ機能の異なる複数台の装置を必要とすることがなく、それだけ装置コストの面からも、人件費の面からもコスト安に済み、ランニングコストも安価に済み、しかも効率よく所望量の電極合剤含有組成物スラリーを得ることができる。
【0025】
また、粉体原料を混合処理したのちに、その処理物を別途用意したプラネタリーミキサー等に移し替えてバインダー等と混練するバッチ処理を行う場合と比べると、粉塵飛散による作業環境の汚染、悪化が抑制され、電極合剤含有組成物への異物の混入が生じ難く、さらにロット毎の品質のバラツキの問題も生じ難く、それだけ高品質で、品質の安定した電極合剤含有組成物スラリーを効率良く連続的に得ることができる。
【0026】
各材料が所定割合で配合された粉体電池材料は別途計量準備しておいて、例えば前記供給部にホッパ等をから連続的に投入するようにしてもよいが、前記供給部に前記粉体電池材料を構成するそれぞれの材料に対応させて、材料配合割合が予め定めた配合割合となるように該材料を計量して前記供給部へ投入するための計量器を接続しておいてもよい。
これにより、より効率的に粉体電池材料を供給部へ投入することができる。
【0027】
前記供給部から前記メカノケミカル処理部へ供給される前記粉体電池材料が前記粉体電極活物質のほか少なくとも1種の粉体添加剤(例えば導電助剤)を含むものである場合、 前記メカノケミカル処理部としては、該供給部から供給される該電極活物質と該添加剤(例えば導電助剤)とを混合するとともに該電極活物質の周囲に少なくとも一種の前記添加剤(例えば導電助剤)を散点状に分散配置するスポットメカノケミカル処理を実施するメカノケミカル処理部である場合を例示できる。
【0028】
このようなスポット型メカノケミカル処理により、添加物(例えば導電助剤)はその後の処理においても凝集し難く、電極活物質から剥離し難く、電極活物質の周囲に散点状に分散配置された状態が良好に維持され、それだけ最終的に得られる電極合剤含有組成物スラリーの品質が高品質なものとなる。
【0029】
また、このようなメカノケミカル処理によると、電池材料として電極活物質のほかに嵩高い導電助剤を採用する場合でも、導電助剤が均一に分散されることで、電池の充填密度を向上させることができ、その割りには、導電助剤の配合割合をそれだけ少なく済ませることができる。
さらに吸油量の多い導電助剤の配合割合を小さくできるので、それだけ
バインダー配合割合も少なく済ませることができ、これらにより、各処理を効率的に行うことができ、原料費を抑制することもできる。
【0030】
前記環状固定円盤と前記回転円盤との隙間に入り込む処理対象材料に前記剪断分散処理を施す剪断分散処理域としては、該環状固定円盤の該回転円盤に向けられた面に形成された凹所(キャビティ)と、該回転円盤の該環状固定円盤に向けられた面に形成された凹所(キャビティ)とを含んでいるものを例示できる。
環状固定円盤の凹所(キャビティ)及び回転円盤の凹所(キャビティ)は、それら凹所に捕捉される処理対象材料が該固定円盤に対する該回転円盤の回転に伴って凹所内に旋回流が形成されつつ移動する際に剪断力を受けるとともに分散せしめられる凹所である。
【0031】
また、環状固定円盤の凹所(キャビティ)の縁と該回転円盤の凹所(キャビティ)の縁とは、回転円盤の回転に伴ってそれら縁がすれ違うときに、該回転円盤の上流側の面においては処理対象材料が該回転円盤の円周側へ送られ、該回転円盤の下流側の面においては処理対象材料が該回転円盤の回転軸側へ送られるように、円盤半径方向に対する延び方向角度(固定円盤の凹所縁及び回転円盤の凹所縁間の相対角度)が調整されている。
回転円盤の外周部には、前記供給部による電池材料送り方向と同方向に処理対象材料を送る送り部材(例えばスクリュー様の送り部材)が形成されていてもよい。
【0032】
処理対象材料を円滑に送るために、各隣り合う前記回転円盤の間に位置する前記回転軸の部分には処理対象材料を前記供給部による電池材料送り方向と同方向に送るための、例えばスクリューのような中間送り部材を設けてもよい。
【0033】
電極合剤含有組成物スラリーの汚染を抑制するために、前記電池材料と接触する部分の表面を耐摩耗性溶射材料膜で被覆してもよい。
耐摩耗性溶射材料膜としては、タングステンカーバイトの溶射膜を例示できるが、アルミナ、ジルコニア等のセラミック材料の溶射膜を採用することもできる。
【0034】
前記の希釈処理を行う希釈混練分散処理部は、その前段の処理部で得られた硬練混練物を段階的に円滑に薄められるように前記供給部による前記電池材料の送り方向
と同方向に複数段に設けられていてもよい。
【0035】
例えば2段に設けることができ、その場合、例えば次のように設けることができる。
すなわち、前記供給部における電池材料送り方向
と同方向において上流側段の希釈混練分散処理部は前記液状希釈剤として液状の一次希釈剤を投入するための一次希釈剤投入部を
有し、該一次希釈剤投入部から投入される一次希釈剤と前記硬練混練分散処理部から供給される前記硬練混練物とを混練するとともに相互に分散させて一次希釈物を得るための一次希釈混練分散処理部とし、下流側段の希釈混練分散処理部は前記液状希釈剤として液状の二次希釈剤を投入するための二次希釈剤投入部を
有し、該二次希釈剤投入部から投入される二次希釈剤と前記一次希釈混練分散処理部から供給される前記一次希釈物とを混練するとともに相互に分散させて前記電極合剤含有組成物スラリーを得るための二次希釈混練分散処理部とするのである。
また、この場合、前記一次希釈混練分散処理部における前記一次希釈剤投入部は、該一次希釈混練分散処理部において前記硬練混練分散処理部にもっとも近く配置されている前記回転円盤が嵌挿されている液注部シリンダーに設け、前記二次希釈混練分散処理部における前記二次希釈剤投入部は、該二次希釈混練分散処理部において前記一次希釈混練分散処理部にもっとも近く配置されている前記回転円盤が嵌挿されている液注部シリンダーに設ける。
【0036】
このように希釈処理を行う希釈混練分散処理部として一次希釈混練分散処理部及び二次希釈混練処理部を採用した装置を用いる二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーの製造方法の例として次のものを挙げることができる。
【0037】
二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーの連続製造装置において前記供給部から連続して延びる前記連続回転軸を回転させて該連続回転軸に支持された回転円盤を回転させつつ、前記粉体の電池材料として粉体電極活物質100部に対し粉体の添加剤である導電助剤及び導電助剤以外の添加剤から選ばれた粉体添加剤を0.05部から15部の範囲の割合で配合した粉体電池材料を前記供給部により連続的に前記メカノケミカル処理部へ供給し、該メカノケミカル処理部において前記供給部から供給されてくる該電池材料にメカノケミカル処理を施し、ひき続き該メカノケミカル処理部で得られたメカノケミカル処理物を前記硬練混練分散処理部へ供給し、該硬練混練分散処理部において前記バインダー投入部から液状のバインダーを0.05部から50部の範囲の割合で投入し、該バインダーと前記メカノケミカル処理物に混練分散処理を施し、該硬練混練分散処理部で得られた硬練混練物をひき続き前記一次希釈混練分散処理部へ供給し、該一次希釈混練分散処理部において前記一次希釈剤として液状希釈バインダーを10部〜60部の範囲の割合で前記一次希釈剤投入部から投入し、該液状希釈バインダーと前記硬練混練分散処理部から供給された硬練混練物に一次希釈混練分散処理を施し、該一次希釈混練分散処理部で得られた一次希釈物をひき続き前記二次希釈混練分散処理部へ供給し、該二次希釈混練分散処理部において前記二次希釈剤として溶剤を10部〜60部の範囲の割合で前記二次希釈剤投入部から投入し、該溶剤と前記一次希釈混練分散処理部から供給された一次希釈物に二次希釈混練分散処理を施して固形分濃度が30%〜90%になるように配合された二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーを連続的に得る二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーの連続製造方法である。
【0038】
メカノケミカル処理において導電性の助剤(導電助剤)又は導電助剤以外の添加剤から選ばれた粉体添加剤の量を0.05部〜15部とするのは、0.05部未満では電池の導通が得られない恐れがあり、15部を超えてくると二次電池の主要材である活物質の割合が減少し、電池容量が小となり、電池性能が低下してくるからである。
【0039】
硬練混練分散処理において、バインダーの割合を0.05部から50部とするのは、0.05部未満では材料が硬練混練物、換言すれば粘土状物にならず、混練操作の効率が低下するからであり、50部を超えてくると、スラリー粘度の低下による剪断力伝達不良、それによる混練分散処理の効率低下が生じてくるからである。
【0040】
また、一次希釈混練分散処理において希釈バインダーの割合を10部〜60部とするのは、10部未満では活物質と活物質、或いは活物質とスラリーを塗布する対象材(一般的には集電体)の結着性が乏しくなるからであり、60部を超えてくると、電池性能に直接関係のないバインダーの割合が増えてくるからである。
【0041】
二次希釈混練分散処理において溶剤の割合を10部〜60部とするのは、10部未満ではスラリー粘度が高くなることによる塗工不良が発生し、60部を超えてくると、最終的に揮発させる溶剤の量が増え過ぎるからである。 かくして、最終的に得られる電極合剤含有組成物スラリーにおいては固形分濃度が30%〜90%になるよう配合された状態となる。この固形分濃度のスラリーを塗工処理に供することができる。
【発明の効果】
【0042】
以上説明したように本発明によると、二次電池形成のための電極合剤含有組成物スラリー塗布対象材への塗布工程に供することができる均質な電極合剤含有組成物スラリーを少なくとも粉体の電極活物質を含む粉体電池材料を出発原料として目的とする電極合剤含有組成物スラリーまで一貫して連続的に再現性良好に製造することができる二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーの連続製造装置及び連続製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して説明する。
図1は本発明に係る二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーの連続製造装置の1例の構成を概略的に示している。
【0045】
図1に示す二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーの連続製造装置(以下、「連続混練分散機」という。)10は、粉体電池材料の供給部の1例であるフィード部1、メカノケミカル処理部2、硬練混練分散処理部3、一次希釈混練分散処理部4、二次希釈混練分散処理部5、メータリング部6及び排出部7を備えている。
【0046】
また、少なくとも粉体の正極活物質又は粉体の負極活物質を含む粉体電池材料を構成する各粉体原料をそれらの配合割合を予め定めたものとしてフィード部1へ投入するための複数の定量フィーダ8も含んでいる。
【0047】
フィード部1は、水平方向に延びる筒状のケーシングと11と、このケーシング11に中心軸線を同じくして、且つ、螺旋羽根周縁が該ケージング内周面に摺動可能に嵌挿されたスパイラルロッド12とを備えている。
【0048】
フィード部1による材料送り方向において、ケーシング11の上流側端部の上部には、2台以上の前記定量フィーダー8が搭載されていて、これら定量フィーダー8は、ケーシング11の原料受入れ開口111に連通している。
【0049】
スパイラルロッド12は、中心軸棒121の外周面に、所定方向に螺設されたスパイラルフイン(螺旋羽根)122を形成したもので、軸棒121の基端部(
図1の右側端部)が、ケーシング11に固定支持された定位置の図示省略の駆動モータ軸に接続されており、該モータにより回転駆動可能なものである。
【0050】
定量フィーダー8から供給された原料は、このスパイラルフイン122の回転によってメカノケミカル処理部2、硬練混練分散処理部3、一次希釈混練分散処理部4、二次希釈混練分散処理部5、メータリング部6及び排出部7へ順次圧送されるようになっている。
【0051】
定量フィーダー8は、粉体電池材料を構成する各粉体原料を予め定めた配合割合でフィード部1へ連続的に投入するために、該各粉体原料を連続的に所定の一定量計量しつつフィード部12へ投入するものである。
【0052】
各定量フィーダー8は原料を収容する原料ホッパ61と、原料を計量するロードセル62と、原料ホッパ61の底部から切り出される原料をフィード部1へ向けて送り出すためのスパイラルフィーダー63と、そのスパイラルフィーダー63の粉体送出端に連通するようにケーシング11の原料受入口111の周縁部から立設された連絡筒体64とを備えている。
【0053】
スパイラルフイーダ63は、原料ホッパ61の底部開口と連絡筒体64の上部開口との間に設けられて、これら開口を連通させる筒体65内にスパイラルフインをその周縁が筒体内面に摺動可能に嵌装したものである。図示省略のフィードモータの駆動によって、スパイラルフィーダー63が回転し、それにより原料ホッパー61内の原料が搬送され、筒体65及び連絡筒体64を介してケーシング11内へ供給される。ケーシング11内への供給量は、あらかじめ設定しておき、ロスインウェイト式で定量供給することができる。
図1に示す装置10のように定量フィーダ8が2台設けられている場合、例えば、一方の定量フィーダ8で粉体の正極活物質又は粉体の負極活物質を計量して供給するとともに他方の定量フィーダ8で粉体の導電助剤を計量して供給することができる。
なお、定量フィーダ8は必要に応じ3台以上設けてもよい。
【0054】
メカノケミカル処理部2は、この実施形態では2枚の環状の固定円盤21と、これら固定円盤21間に挟持された環状の混練シリンダー22と、固定円盤21間に、且つ、固定円盤21に対向するように配置された回転円盤23とを含んでいる。
後述する硬練混練分散処理部3の液注部回転円盤25の上流側の側面もメカノケミカル処理部2の一部である。
【0055】
メカノケミカル処理部2は以上説明したものに限定されない。もう少し一般的に言えば、2枚以上の環状の固定円盤21と、これら固定円盤21間に挟持された状態で固定円盤21と交互に配置される1枚以上の環状の混練シリンダー22と、表裏面(
図1において右側の面及び左側の面、換言すれば、材料送り方向において上流側の面及び下流側の面)が固定円盤21と対向した状態で混練シリンダー21と中心軸線を同じくして配置される1枚以上の回転円盤23とを含むものである。
【0056】
各回転円盤23は、スパイラルロッド12の中心軸棒121先端から中心軸線を同じくして一体的に突設された回転軸200に外嵌されている。回転軸200はスパイラルロッド12の中心軸棒121より小径であり、両者境界に段差が形成されている。回転軸200のうち、固定円盤21の内周面に臨み、且つ、回転円盤23に隣り合う部分には、中間送り部材の例として筒状の中間スクリュー24が外嵌されている。中間スクリュー24によって回転軸200に回転円盤23と中間スクリュー24とが交互に装着された状態になっている。
【0057】
回転円盤23は、外径寸法が混練シリンダー22の内径寸法より僅かに小さく設定されているとともに、中間スクリュー24は、外径寸法が固定円盤21の内径寸法より僅かに小さく設定され、これによって回転円盤23及び中間スクリュー24は、回転軸200に交互に外嵌された状態で、外周面が混練シリンダー22
及び固定円盤21の内周面に対して原料が通過し得る隙間を提供しつつそれぞれ対向している。
【0058】
連続混練分散機10によれば、原料ホッパー61に投入された原料は、スパイラルフィーダー63の駆動によって原料ホッパー61の底部から切り出され、筒体65及び連絡筒体64を介してフィード部1のケーシング11内へ導入される。
ケーシング11内に導入された原料は、スパイラルロッド12の駆動回転によるスパイラルフイン122の回転によって順次下流側のメカノケミカル処理部2へ向けて搬送される。
【0059】
そして、メカノケミカル処理部2へ搬送された原料は、まず、回転している最上流側(
図1において右側)の中間スクリュー24の外周面と、最上流側の固定円盤21の内周面との間を通過し、ひき続き最上流側の固定円盤21の
図1における左側面と、回転している回転円盤23の上流側側面(
図1において右側面)の間を通過するに際し、当該原料にメカノケミカル処理が施される。
【0060】
かかる原料に対するメカノケミカル処理が固定円盤21、混練シリンダー22、回転円盤23及び中間スクリュー24の設置分だけ複数段で繰り返され、最後にメカノケミカル処理部2の最下流側の固定円盤21の
図1において左側面と硬練混練分散処理部3の液注部回転円盤25の
図1における右側面との間でメカノケミカル処理が行われる。
【0061】
メカノケミカル処理の完了により得られたメカノケミカル処理物は、スパイラルロッド12及び中間スクリュー24の回転により硬練混練分散処理部3へと搬送される。
【0062】
硬練混練分散処理部3は、
メカノケミカル処理部2の最下流側の固定円盤21
に接するよう配置された、液状バインダー投入部例の部品である液注部シリンダー26と、
2枚以上の環状の固定円盤29と、
固定円盤29間に狭持された状態で固定円盤29と交互に配設される1枚以上の環状の混練シリンダー30(本例では2枚の固定円盤29間に狭持された環状の混練シリンダー30)と、
表裏面(
図1の右側面及び左側面、換言すれば材料送り方向において上流側の面及び下流側の面)が固定円盤21及び29と対向した状態で液注部シリンダー26に中心軸線を同じくして嵌挿された液注部回転円盤25と、
表裏面が固定円盤29と対向した状態で混練シリンダ30に中心軸線を同じくして嵌挿された1枚以上の回転円盤31とを含んでいる。
後述する1次希釈混練分散処理部4の液注部回転円盤33の上流側の側面も硬練混練分散処理部3の一部である。
【0063】
液注部回転円盤25は、メカノケミカル処理部2の最下流側の中間スクリュー24の
図1における左側面と接する位置で前記メカノケミカル処理部2の回転軸200から一体的に延びる回転軸300に外嵌されている。回転円盤31も回転軸300に外嵌されている。
【0064】
回転円盤25、31は、メカノケミカル処理部2の回転軸200から一体的に延びる回転軸300に外嵌されている。固定円盤29の内周面に臨み、且つ、回転円盤31に隣り合う回転軸300の部分には、中間送り部材の例として筒状の中間スクリュー32が外嵌されている。中間スクリュー32によって回転軸300に回転円盤31と中間スクリュー32とが交互に装着された状態になっている。
【0065】
液注部回転円盤25は、外径寸法が液注部シリンダー26の内径寸法より僅かに小さく設定されており、回転円盤31も同様に、外径寸法が混練シリンダー30の内径寸法より僅かに小さく設定されているとともに、中間スクリュー32は外径寸法が固定円盤29の内径寸法より僅かに小さく設定されている。これによって液注部回転円盤25、回転円盤31及び中間スクリュー32は、回転軸300に交互に外嵌された状態で、外周面が液注部シリンダー26、混練シリンダー30及び固定円盤29の内周面に対して原料が通過し得る隙間を介してそれぞれ対向するようになっている。
【0066】
液状原料であるバインダーは、図示省略の容器にストックしておき、定量移送に優れた図示省略のポンプを用いて移送する。液注部シリンダー26の外周部から内周部にかけて貫通したバインダー投入部27が設けられており、バインダー投入部27には連続分散混練機10から投入部27側への粉体電池原料の逆流を防止するための逆止弁28が接続されている。
【0067】
図示省略の前記容器と前記ポンプの吸込口を配管で接続し、該ポンプの吐出口と逆止弁28とをそれらの間に接続した図示省略の質量流量計を介して配管接続し、かくして液状バインダーを連続分散混練機100のバインダー投入部27へ供給するバインダーの量をあらかじめ設定した値になるよう制御する。
【0068】
硬練混練分散処理部3へ搬送されたメカノケミカル処理が施されたメカノケミカル処理物(本例ではメカノケミカル処理が施された粉体原料)は、まず、回転している液注部回転円盤25の外周面と、液注部シリンダー26の内周面との間を通過する。
【0069】
一方、液注部シリンダー26に設けたバインダー投入部27から供給されるバインダーは、液注部回転円盤25の外周面と、液注部シリンダー26の内周面の間の隙間に入り込み、前記粉体のメカノケミカル処理物と混合され、粘土状物を形成する。
【0070】
これら原料は、回転している液注部回転円盤25の
図1における左側面と最上流側の固定円盤29の
図1における右側面との間を通過し、ひき続き回転している最上流側(
図1の右側)の中間スクリュー32の外周面と、最上流側の固定円盤29の内周面との間を通過し、その後最上流側の固定円盤29の
図1における左側面と、回転している回転円盤31の右側面との間を通過し、これらの隙間の通過に際して当該原料に硬練混練分散処理が施される。
【0071】
かかる原料に対する硬練混練分散処理が固定円盤29、混練シリンダー30、回転円盤31及び中間スクリュー32の設置分だけ複数段で繰り返され、最後に硬練混練分散処理部3の最下流側の固定円盤29の
図1における左側面と次段の一次希釈混練分散処理部4の液注部回転円盤33の
図1における右側面との間で硬練混練分散処理が行われる。硬練混練分散処理の完了により得られた硬練混練物は、前記スパイラルロッド12及び中間スクリュー24及び32の回転により一次希釈混練分散処理部4へと搬送される。
【0072】
硬練混練分散処理部3と一次希釈混練分散処理部4の間に二次硬練混練分散処理部、3次硬練混練分散処理部、4次硬練混練分散処理部・・・を設けるというように、硬練混練分散処理部を複数段に設けてもよい。
【0073】
一次希釈混練分散処理部4は、
硬練混練分散処理部3の最下流側の固定円盤29と接するように配置された、一次希釈剤例である液状希釈バインダーの投入部の例の部品である液注部シリンダー34と、
2枚以上の環状の固定円盤37と、
固定円盤37間に狭持された状態で固定円盤37と交互に配設される1枚以上の環状の混練シリンダー38(本例では2枚の固定円盤37間に狭持された環状の混練シリンダー38)と、
表裏面(
図1の右側面及び左側面、換言すれば材料送り方向において上流側の面及び下流側の面)が固定円盤29及び37と対向した状態で液注部シリンダー34に中心軸線を同じくして嵌挿された液注部回転円盤33と、
表裏面が固定円盤37と対向した状態で混練シリンダー38に中心軸線を同じくして嵌挿された1枚以上の回転円盤39とを含んでいる。
なお、後述する2次希釈混練分散処理部5における液注部回転円盤41の上流側の側面も一次希釈混練分散処理部4の一部である。
【0074】
液注部回転円盤33は、硬練混練分散処理部3の最下流側の中間スクリュー32の
図1における左側面と接する位置で、前記硬練混練分散処理部3の回転軸300から一体的に延びる回転軸400に外嵌されている。回転円盤39も回転軸400に外嵌されている。
【0075】
回転円盤33、39は、硬練混練分散処理部3の回転軸200から一体的に延びる回転軸300に外嵌されている。固定円盤37の内周面に臨み、且つ、回転円盤39に隣り合う回転軸400の部分には、中間送り部材の例として筒状の中間スクリュー40が外嵌されている。中間スクリュー40によって回転軸400に回転円盤39と中間スクリュー40とが交互に装着された状態になっている。
【0076】
液注部回転円盤33は、外径寸法が液注部シリンダー34の内径寸法より僅かに小さく設定されており、回転円盤39も同様に、外径寸法が混練シリンダー38の内径寸法より僅かに小さく設定されているとともに、中間スクリュー40は、外径寸法が固定円盤37の内径寸法より僅かに小さく設定され、これらによって液注部回転円盤33、回転円盤39及び中間スクリュー40は、回転軸400に交互に外嵌された状態で、外周面が液注部シリンダー34、混練シリンダー38及び固定円盤37の内周面に対して処理対象材料が通過し得る隙間を介してそれぞれ対向している。
【0077】
一次希釈バインダーは、図示省略の容器にストックしておき、定量移送に優れた図示省略のポンプを用いて移送する。液注部シリンダー34の外周部から内周部にかけて貫通した一次希釈バインダー投入部35が設けられており、バインダー投入部35には連続分散混練機10から投入部35側への処理材料の逆流を防止するための逆止弁36が接続されている。
【0078】
図示省略の前記容器と前記ポンプの吸込口を配管で接続し、該ポンプの吐出口と逆止弁36とをそれらの間に接続した図示省略の質量流量計を介して配管接続し、かくして連続分散混練機10の一次希釈バインダー投入部35へ供給する液状の一次希釈バインダーの量をあらかじめ設定した値になるよう制御する。
【0079】
一次希釈混練分散処理部4へ搬送された、硬練混練分散処理が施された硬練混練物は、まず、回転している液注部回転円盤33の外周面と、液注部シリンダー34の内周面との間を通過する。
【0080】
一方、液注部シリンダー34に設けた一次希釈バインダー投入部35から供給されるバインダーは、液注部回転円盤33の外周面と、液注部シリンダー34の内周面の間の隙間に入り込み、硬練混練分散処理部3から供給される硬練混練物と混合される。
【0081】
これら材料は、回転している液注部回転円盤33の
図1における左側面と最上流側の固定円盤37の
図1における右側面との間を通過し、ひき続き回転している最上流側(
図1の右側)の中間スクリュー40の外周面と、最上流側の固定円盤37の内周面との間を通過し、その後最上流側の固定円盤37の
図1における左側面と、回転している回転円盤39の右側面との間を通過し、これらの隙間の通過に際して当該原料に混練分散処理が施される。
【0082】
かかる混練分散処理が固定円盤37、混練シリンダー38、回転円盤39及び中間スクリュー40の設置分だけ複数段で繰り返され、最後に一次混練分散処理部4の最下流側の固定円盤37の
図1における左側面と次段の二次希釈混練分散処理部5の液注部回転円盤41の
図1における右側面との間でさらに混練分散処理が行われる。一次混練分散処理の完了により得られた一次希釈混練物は、前記スパイラルロッド12及び中間スクリュー24、32及び40の回転により二次希釈混練分散処理部5へと搬送される。
【0083】
二次希釈混練分散処理部5は、
一次希釈混練分散処理部4の最下流側の固定円盤37と接するよう配置された、二次希釈剤である溶剤の投入部の例の部品である液注部シリンダー42と、
3枚以上の環状の固定円盤45と、
固定円盤45間に狭持された状態で固定円盤45と交互に配設される3枚以上の環状の混練シリンダー46(本例では3枚の固定円盤45の各隣に配置された環状の混練シリンダー46)と、
表裏面(
図1の右側面及び左側面、換言すれば材料送り方向において上流側の面及び下流側の面)が固定円盤37及び45と対向した状態で液注部シリンダー42に中心軸線を同じくして嵌挿された液注部回転円盤41と、
表裏面が固定円盤45と対向した状態で混練シリンダー46に中心軸線を同じくして嵌挿された3枚以上の回転円盤47とを含んでいる。
後述するメータリング部6における環状の前固定円盤51の上流側の側面も二次希釈混練分散処理部5の一部である。
【0084】
液注部回転円盤41は、一次希釈混練分散処理部4の最下流側の中間スクリュー40の
図1における左側面と接する位置で、一次希釈混練分散処理部4の回転軸400から一体的的に延びる回転軸500に外嵌されている。回転円盤47も回転軸500に外嵌されている。
【0085】
隣り合う回転円盤47間及び液注部回転円盤41と回転円盤47との間には、中間送り部材の例として筒状の中間スクリュー48が外嵌されている。中間スクリュー48によって回転軸500に回転円盤47と中間スクリュー48とが交互に装着された状態になっている。
【0086】
液注部回転円盤41は、外径寸法が液注部シリンダー42の内径寸法より僅かに小さく設定されており、回転円盤47も同様に、外径寸法が混練シリンダー46の内径寸法より僅かに小さく設定されているとともに、中間スクリュー48は、外径寸法が固定円盤45の内径寸法より僅かに小さく設定され、これによって液注部回転円盤41、各回転円盤47及び各中間スクリュー48は、回転軸500に交互に外嵌固定された状態で、外周面が液注部シリンダー42、混練シリンダー46及び固定円盤45の内周面に対して処理対象材料が通過し得る隙間を介してそれぞれ対向するようになっている。
【0087】
溶媒は、図示省略の容器にストックしておき、定量移送に優れた図示省略のポンプを用いて移送する。液注部シリンダー42の外周部から内周部にかけて貫通した溶媒投入部43が設けられており、溶媒投入部43には連続分散混練機10から投入部43側への処理材料の逆流を防止するための逆止弁44が接続されている。
【0088】
図示省略の前記容器と前記ポンプの吸込口を配管で接続し、該ポンプの吐出口と逆止弁44とをそれらの間に接続した図示省略の質量流量計を介して配管接続し、かくして連続分散混練機10の溶媒投入部43へ供給する液状溶媒の量をあらかじめ設定した値になるよう制御する。
【0089】
二次希釈混練分散処理部5へ搬送された一次希釈物は、まず、回転している液注部回転円盤41の外周面と、液注部シリンダー42の内周面との間を通過する。一方、液注部シリンダー42に設けた溶媒投入部43から供給される溶媒は、液注部回転円盤41の外周面と、液注部シリンダー42の内周面の間の隙間に入り込み、前記一次希釈混練分散処理を施した一次希釈物と混合される。
【0090】
これら混合物は回転している液注部回転円盤41の
図1における左側面と最上流側の固定円盤45の
図1における右側面との間を通過し、ひき続き、回転している最上流側(
図1 の右側)の中間スクリュー48の外周面と、最上流側の固定円盤45の内周面との間を通過し、その後最上流側の固定円盤45の
図1における左側面と、回転している最上流側の回転円盤47の右側面との間を通過し、これらの隙間の通過に際して当該処理対象材料に二次希釈混練分散処理が施される。
【0091】
かかる材料に対する二次希釈混練分散処理が固定円盤45、混練シリンダー46、回転円盤47及び中間スクリュー48の設置分だけ複数段で繰り返され、最後に二次希釈混練分散処理部5の最下流側の回転円盤47の
図1における左側面とメータリング部6の前固定円盤51の
図1における右側面との間で最終的な二次希釈混練分散処理が行われる。
【0092】
二次希釈混練分散処理の完了により得られた正極合剤含有組成物スラリー或いは負極合剤含有組成物スラリーは、スパイラルロッド12、中間スクリュー24、32、40及び48の回転によりメータリング部6へと搬送される。
【0093】
二次希釈混練分散処理部5とメータリング部6との間に三次希釈混練分散処理部、四次希釈混練分散処理部、五次希釈混練分散処理部・・・を設けるというように、希釈混練分散処理部は3段以上に設けてもよいし、場合によっては1段だけでもよい。
【0094】
メータリング部6は、二次希釈混練分散処理部5の最下流側の混練シリンダー46と接するよう配置された環状の前固定円盤51と、前固定円盤51と接するように配置されたメータリングシリンダー50と、前固定円盤51とメータリングシリンダー50に中心軸線を同じくして配置されたメータリングスクリュー49を含んでいる。
【0095】
メータリングスクリュー49は、その上流側端が二次希釈混練分散処理部5の最下流側の回転円盤47の
図1における左側面と接する状態で、二次希釈混練分散処理部5の回転軸500から一体的に延びる回転軸600に外嵌固定されている。
【0096】
メータリング部6へ搬送されてくる、二次希釈混練分散処理を施して得られた電極合剤含有組成物スラリーは、回転するメータリングスクリュー49の外周面と、前固定円盤51の内周面及びメータリングシリンダー50の内周面との間を通過し、排出部7から装置10外へ定量排出される。
【0097】
排出部7から排出される電極合剤含有組成物スラリーは、例えば、電極合剤含有組成物層、さらには該電極合剤含有組成物層からなる正極或いは負極を得るために、電極合剤含有組成物スラリーを集電体に塗布する塗布工程に供することができる。
【0098】
メータリング部6を省略し、二次希釈混練分散処理部5の最下流側端部に排出部7を設けることも可能である。
【0099】
前記したフィード部1のスパイラルロッド中心軸121、メカノケミカル処理部2の回転軸200、硬練混練分散処理部3の回転軸300、一次希釈混練分散処理部4の回転軸400、二次希釈混練分散処理部5の回転軸500及びメータリング部6の回転軸600は一体的に連続形成されている。
【0100】
連続式混練分散機10における回転円盤23、31、39、47、中間スクリュー24、32、40、48、液注部回転円盤25、33、41及びメータリングスクリュー49は最終段回転軸600に形成された雄ねじに螺合されたスクリューヘッド52を緊締することで、スパイラルロッド12へ押圧固定され、各対応する回転軸上に位置決めされる。
【0101】
固定円盤21、29、37、45、混練シリンダー22、30、38、46、液注部固定円盤26、34、42、前固定円盤51及びメータリングシリンダー50には、一部だけを
図1に示すタイロッド9がメータリングシリンダー50側から貫通され、フィード部1のケーシング11に螺合緊締されており、これにより21、29、37、45、混練シリンダー22、30、38、46、液注部固定円盤26、34、42、前固定円盤51及びメータリングシリンダー50がフィード部1と一体化している。
【0102】
図2にメカノケミカル処理部2、硬練混練分散処理部3及び一次希釈混練分散処理部4における環状の固定円盤21、29、37の材料搬送方向において上流側の面207及び下流側の面208を示す。上流側の面207には全体として円形配列で複数の凹所(キャビティ)207’が形成されている。下流側の面208には全体として円形配列で複数の凹所(キャビティ)208’が形成されている。なお、孔hは前記タイロッドを通す孔である。後述する固定円盤、回転円盤等においても孔hは前記タイロッドを通す孔である。
【0103】
図3にメカノケミカル処理部2、硬練混練分散処理部3及び一次希釈混練分散処理部4における回転円盤23、31、39及び液注部回転円盤25、33の材料搬送方向において上流側の面201及び下流側の面202を示す。
図3には回転円盤23、31、39等の回転方向も示す。上流側の面201には複数の凹所(キャビテヤ)201’が形成さており、下流側の面202にも複数の凹所(キャビティ)202’が形成、配列されている。
【0104】
図4に液注部回転円盤41の材料搬送方向において上流側の面203及び下流側の面204を示す。
図4には液注部回転円盤41の回転方向も示す。上流側の面203には複数の凹所(キャビティ)203’が形成、配列されている。下流側の面204には複数の凹所(キャビティ)204’が形成、配列されている。
【0105】
図5に二次希釈混練分散処理部5における環状の固定円盤45及び前固定円盤51の材料搬送方向において上流側の面209及び固定円盤45の下流側の面210を示す。
上流側の面209には複数の凹所(キャビティ)209’が配列されており、下流側の面210にも複数の凹所(キリビティ)201’が配列されている。
図6に二次希釈混練分散処理部5における回転円盤47の上流側の面205及び下流側の面206を示す。
図6には回転円盤47の回転方向も示す。上流側の面205には複数の凹所(キャビティ)205’が形成、配列されており、下流側の面206には複数の凹所(キャビティ)206’が形成、配列されている。
【0106】
メカノケミカル処理部2等における固定円盤とそれに対向する回転円盤との間に形成される前記剪断分散処理域ついてさらに説明する。
メカノケミカル処理部2における上流側の固定円盤21の下流側の側面208(
図2参照)とそれに対向する回転円盤23の上流側の側面201(
図3参照)とで、それらの隙間に入り込む処理対象材料に剪断及び分散処理を施す剪断分散処理域が形成されている。
【0107】
この剪断分散処理域は固定円盤21の下流側の側面208に形成された複数の凹所208’(
図2参照)とこれに対向する回転円盤23の上流側の側面201に形成された複数の凹所201’(
図3参照)とを含んでいる。
【0108】
この剪断分散処理域によると、固定円盤21の下流側面208の凹所208’及び回転円盤23の上流側の側面201の凹所201’に捕捉される材料が固定円盤21に対する回転円盤23の回転に伴って凹所内に旋回流が形成されつつ移動する際に剪断力を受けるとともに分散せしめられる。
環状固定円盤21の凹所208’の縁と回転円盤23の凹所201’の縁とは、回転円盤23の回転に伴ってそれら縁がすれ違うときに、処理対象材料が回転円盤23の円周側へ送られるように、円盤半径方向に対する延び方向角度(固定円盤の凹所縁と回転円盤の凹所縁の延び方向の相対的角度)が調整されている。
図示を省略しているが、回転円盤23の外周部には処理対象材料を送るスクリュー様の送り部材が形成されている。このスクリュー様の送り部材は他の回転部材にも設けられている。
【0109】
また、メカノケミカル処理部2における下流側の固定円盤21の上流側の側面207(
図2参照)とそれに対向する回転円盤23の下流側の側面202(
図3参照)とで、それらの隙間に入り込む処理対象材料に剪断及び分散処理を施す剪断分散処理域が形成されている。
【0110】
この剪断分散処理域は下流側固定円盤21の上流側の側面207に形成された複数の凹所207’(
図2参照)とこれに対向する回転円盤23の下流側の側面202に形成された複数の凹所202’(
図3参照)とを含んでいる。
【0111】
かくして、下流側固定円盤21の上流側の側面207の凹所207’及び回転円盤23の下流側の側面202の凹所202’に捕捉される材料は、回転円盤23の固定円盤21に対する回転に伴い、剪断及び分散処理を受ける。
下流側固定円盤21の上流側側面の凹所207’の縁と回転円盤23の下流側側面の凹所202’の縁とは、回転円盤23の回転に伴ってそれら縁がすれ違うときに、処理対象材料が回転円盤23の回転軸側へ送られるように、円盤半径方向に対する延び方向角度(固定円盤の凹所縁と回転円盤の凹所縁の延び方向の相対的角度)が調整されている。
【0112】
さらに、下流側の固定円盤21の下流側の側面208(
図2参照)とそれに対向す液注部回転円盤25の上流側の側面201(
図3参照)とで、それらの隙間に入り込む処理対象材料に剪断及び分散処理を施す剪断分散処理域が形成されている。
【0113】
この剪断分散処理域は下流側固定円盤21の下流側の側面208に形成された複数の凹所208’(
図2参照)とこれに対向する回転円盤25の上流側の側面201に形成された複数の凹所201’(
図3参照)とを含んでいる。
【0114】
かくして、下流側固定円盤21の下流側の側面208の凹所208’及び回転円盤25の上流側側面の凹所201’(
図3参照)に捕捉される材料は剪断、分散処理を受ける。
【0115】
硬練混練分散処理部3においても、同様に、
液注部回転円盤25の下流側側面とそれに対向する上流側固定円盤29の上流側の側面との間、
上流側固定円盤29の下流側の側面とそれに対向する回転円盤31の上流側の側面との間、
回転円盤31の下流側の側面とそれに対向する下流側固定円盤29の上流側の側面との間、及び
下流側固定円盤29の下流側の側面とそれに対向する液注部回転円盤33の上流側の側面との間
にそれぞれメカノケミカル処理物及び液状バインダーに剪断力と分散作用を及ぼして均一な硬練混練物を得る剪断分散処理域が形成されている。
【0116】
一次希釈混練分散処理部4においても、同様に、
液注部回転円盤33の下流側側面とそれに対向する上流側固定円盤37の上流側の側面との間、
上流側固定円盤37の下流側の側面とそれに対向する回転円盤39の上流側の側面との間、
回転円盤39の下流側の側面とそれに対向する下流側固定円盤37の上流側の側面との間、及び
下流側固定円盤37の下流側の側面とそれに対向する液注部回転円盤41の上流側の側面との間
にそれぞれ硬練混練物及び一次希釈バインダーに剪断力と分散作用を及ぼして均一な一次希釈物を得る剪断分散処理域が形成されている。
【0117】
なお、
図4に示すように、液注部回転円盤41の上流側の側面203には凹所(キャビティ)203’が形成されており、下流側の側面204には凹所(キャビティ)204’が形成されている。
【0118】
二次希釈混練分散処理部5においては次のように剪断分散処理域が形成されている。
液注部回転円盤41の下流側面204(
図4参照)とそれに対向する最上流側固定円盤45の上流側面209(
図5参照)とで、それらの隙間に入り込む処理対象材料に剪断及び分散処理を施す剪断分散処理域が形成されている。
【0119】
この剪断分散処理域は液注部回転円盤41の下流側の側面204に形成された複数の凹所204’(
図4参照)とこれに対向する最上流固定円盤45の上流側面209(
図5参照)に形成された凹所209’とで形成されている。
【0120】
同様に、最上流固定円盤45の凹所210’(
図5参照)を有する下流側面210(
図5参照)とそれに対向する最上流回転円盤47の凹所205’(
図6参照)を有する上流側面205(
図6参照)とで、それらの隙間に入り込む処理対象材料に剪断及び分散処理を施す剪断分散処理域が形成されている。
【0121】
同様にして順次、固定円盤45とそれに隣り合う回転円盤47との間、さらに最下流側の回転円盤47とそれに対向する前固定円盤51との間にそれぞれ剪断分散処理域が形成されている。
【0122】
これらの剪断分散処理域を1次希釈物及び溶剤が通過することで均質な電極合剤含有組成物スラリーが得られる。
【0123】
前記の固定円盤21、29、37、45、51における凹所や、回転円盤23、31、39、47及び液注部回転円盤25、33、41の凹所は
図2〜
図6に示すものに限定されない。例えば、
図7に示す固定円盤や
図8に示す回転円盤を採用することもできる。
【0124】
図7の固定円盤は側面307及び310にそれぞれ大きい目の凹所307’、310’を形成したものである。
図8の回転円盤は側面301、302にそれぞれ配列ピッチを比較的大きくした凹所301’、302’を形成したものである。
【0125】
また、
図2〜
図8に示す固定円盤の凹所、回転円盤の凹所は様々に組み合わせて使用することもできる。
【0126】
以上説明した装置10によると、少なくとも粉体の電極活物質を含む粉体電池材料を出発原料として、該粉体電池材料を構成する各材料を計量して、それら材料を予め定めた配合割合でフィード部1からメカノケミカル処理部2へ供給することができ、しかも連続的に供給することが可能である。
【0127】
そのようにメカノケミカル処理部2に供給された粉体電池材料は、そこでの剪断分散処理域を通過することで剪断力と分散作用を受けて均一状に混合されるとともに相互に分散された状態の、且つ、その分散状態がその後の各種処理においても維持される、換言すれば、その後の処理おいても電池材料を構成している一部の材料等が再凝集することが抑制された状態が維持されるメカノケミカル処理物となる。
【0128】
このメカノケミカル処理物はひき続き硬練混練分散処理部3へ送られ、該処理部で予め定めた配合割合となるように供給される液状の
バインダーとともに混練分散処理される。該混練分散処理においても液状バインダーとメカノケミカル処理物とが該処理部における剪断分散処理域を通過することでそれらは均一状に混練されるとともに相互に均一状に分散され、比較的硬練りの混練物(硬練混練物)が得られる。
【0129】
この硬練混練物はひき続き一次希釈混練分散処理部4へ送られ、該処理部で予め定めた配合割合となるように供給される液状の希釈バインダーとともに混練される。該混練処理においても希釈バインダーと硬練混練物とが該処理部における剪断分散処理域を通過することでそれらは均一状に混練されるとともに相互に均一状に分散される。
【0130】
この一次希釈物はひき続き二次希釈混練分散処理部5へ送られ、該処理部で予め定めた配合割合となるように供給される溶剤とともに混練される。該混練処理においても溶剤と一次希釈物とが該処理部における剪断分散処理域を通過することでそれらは均一状に混練されるとともに相互に均一状に分散される。
かくして、均質な、塗布工程に供することができる適度の粘度の二次電池用の電極合剤含有組成物スラリーが品質再現性良好に連続的に得られる。
【0131】
正極合剤含有組成物に係る正極活物質としては、特に限定されないが、例えば
LiMO
2 又はLiM
2O
4で表されるリチウム含有金属酸化物であって、元素M がCo、Ni、Mn、Fe、Cuなどの金属元素の少なくとも1種であるもの、より具体的には、LiCoO
2などのリチウムコバルト酸化物、LiMnO
4などのリチウムマンガン酸化物、LiNiO
2などのリチウムニッケル酸化物などのリチウム含有金属酸化物、又はこれらを基本構造とする複合酸化物(例えば異種金属添加物);
二酸化マンガン、五酸化バナジウム、クロム酸化物などの金属酸化物、又はこれらを基本構造とする複合酸化物;
二硫化チタン、二硫化モリブデンなどの金属酸化物
などが挙げられる。
これらの正極活物質は一種単独で用いてもよく、例えば混合物や固溶体として2種以上を併用しても構わない。
【0132】
負極合剤含有組成物に係る負極活物質としては、リチウムイオンをドープ、脱ドープできるものであれば特に限定されないが、
黒鉛、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素類、有機高分子化合物の焼成体、メソカーボンマイクロビーズ、炭素繊維、活性炭などの炭素材料;
Si、Sn、Inなどの合金又はLiに近い低電圧で充放電できるSi、Sn、Inなどの酸化物
などを用いることができる。
これらの負極活物質は、1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。
【0133】
導電助剤としては、例えば、ファーネスブラック、ケッチエンブラックなどのカーボンブラック系導電助剤;アセチレンブラック;鱗片状黒鉛;繊維状炭素;活性炭などが挙げられる。なお、導電助剤は、正極合剤含有組成物の調製には必須の原材料であるが、負極合剤含有組成物の調製においても、必要に応じて使用することができる。
【0134】
電極合剤含有組成物に係るバインダーとしては、例えば、
ポリテトラフルオロエチレン、ポリフツ化ビニリデン(PVDF)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンオキシド、ポリビニルピロリドン、ポリエステル樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂などの樹脂系結着剤;
エチレン−プロピレン−ジエン共重合樹脂、スチレンブタジエンゴム(SBR) 、ポリブタジエン、フッ素ゴムなどのゴム系結着剤;
ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース(CMC) などのセルロース樹脂などの多糖類
などが挙げられる。
これらの結着剤は1種単独で用いてもよく、2種以上を併用しても構わない。
なお、電極合剤含有組成物の調製に当たっては、結着剤は、予め溶剤に溶解させた溶液として用いることもできる。
【0135】
電極合剤含有組成物に係る溶剤としては、例えば、N −メチル−2−ピロリドン(NMP)、ジメチルアセトアミド、ジメチルホルムアミドなどの非プロトン性有機溶媒を1種単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0136】
以下に実施例等について説明するが、以下の記載を含む実施形態の説明は本発明をそれらに制限するものではない。以下の記載を含む実施形態の説明で記載した条件等は本発明の趣旨から逸脱しない範囲で変更する限り全て本発明の範囲に含まれる。
なお、以下の記載を含む実施形態の説明及び特許請求の範囲に「部」又は「%」とあるのは特に断らない限り質量基準である。
【0137】
<実施例1>
リチウムイオン二次電池材料の正極活物質であるマンガン酸リチウム(平均粒子径:5μm)と導電助剤であるアセチレンブラックを
図1の連続式混練分散機10のフィード部1から定量フィーダー8を使用しマンガン酸リチウム95部:アセチレンブラック5部の割合で供給した。連続式混練分散機10の軸回転数は毎分75回転とし、各処理部の温度設定は20℃とし7℃のチラー水(冷却水)を固定円盤及び混練シリンダーの、それらに予め設けておいた図示省略の通水路に通して温度制御を行なった。
【0138】
液状原料であるバインダー〔ポリフツ化ビニリデン(PVDF)(固形分濃度8%)〕、一次希釈バインダー〔PVDFを溶剤であるNMPで稀釈した稀釈PVDF(固形分濃度4%)〕及びNMP溶剤はそれぞれバインダー投入部27、稀釈バインダー投入部35及び溶剤投入部43から圧注入を行ないスラリー排出部7から固形分濃度55%の正極合剤含有組成物スラリーとして回収した。
【0139】
<比較例1>
リチウムイオン二次電池材料の正極括物質であるマンガン酸リチウム(平均粒子径:5μm)と導電助剤であるアセチレンブラックを淺田鉄工(株)製プラネタリーデスパー(PVM100−2D)を使用してマンガン酸リチウム95部:アセチレンブラック5部に液状原料であるPVDF(固形分濃度8%)を5.75部加え固形分濃度95%とし、PVM100−2Dの低速軸回転数は毎分20回転に設定し、1時間固練り混練を行った。
【0140】
その後、固形分濃度を4%に調整したPVDFを22部加え、30分混合し、その後NMPを57部加え、高速攪拌を30分間行い、固形分濃度55%のスラリーとして回収した。PVM100−2Dの攪拌中の温度設定は20℃とし液温の上昇を抑えた。負荷電流は低速軸が約12A、高速軸が約15Aであった。
【0141】
これら実施例1及び比較例1で得られたスラリーをアルミ箔に塗布した結果を如何に示す。
塗布速度 合材厚 塗工量 密度 備考 (m/分) (μm)(mg/cm
2 )(g/cc) 実施例1 3 105 22.5 2.16 塗工面は平滑であった。比較例1 3 110 22.1 2.0 塗工面はひび割れ発生。
【0142】
実施例1と比較例1を比較する。
1.塗工量を22.1mg/cm
2 に換算した場合、実施例1の合材厚は103μmとなる。比較例1の合材厚に対して実施例1は約93%であることから合材の充填密度が約7%上昇していることがわかる。
2.密度の測定においても比較例1が2.0、実施例1が2.16であることから圧密度が約8%上昇していることがわかる。
充填密度及び圧密度の上昇は電池容量の上昇に寄与する。
3.塗工面の平滑性は作業効率の効率化に寄与する。塗工面がひび割れを起こす塗料の物性では塗工速度をさらに遅くしなければならないが、平滑性が保たれている場合は塗工速度をさらに早く出来る可能性が有る。