(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記ゲート電極直下の前記二次元キャリアガス層が形成される領域内に、前記低導電性領域を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の化合物半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0010】
次に、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施形態を説明する。以下の図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部の長さの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることはもちろんである。
【0011】
又、以下に示す第1及び第2の実施形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、この発明の技術的思想は、構成部品の形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の実施形態は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0012】
(第1の実施形態)
本発明の第1の実施形態に係る化合物半導体装置1は、
図1に示すように、化合物半導体層20と、化合物半導体層20の主面200上に配置されたソース電極3及びドレイン電極4と、ソース電極3とドレイン電極4間で主面200上に配置されたゲート電極5と、ゲート電極5とドレイン電極4間で主面200上にフィールド絶縁膜60を介して配置されたフィールドプレート6とを備える。
【0013】
化合物半導体層20は、第1の窒化物化合物半導体からなるキャリア供給層22、及び第1の窒化物化合物半導体と異なるバンドギャップエネルギーを有する第2の窒化物化合物半導体からなるキャリア走行層21を有する。キャリア走行層21とキャリア供給層22間のヘテロ接合面近傍のキャリア走行層21に、電流通路(チャネル)としての二次元キャリアガス層23が形成される。
【0014】
化合物半導体装置1において、キャリア走行層21の二次元キャリアガス層23が形成される領域のうちのフィールドプレート6直下の領域内に、上方にフィールドプレート6若しくはゲート電極5が配置されていない領域よりも導電率が低い低導電性領域210が配置されている。更に、ゲート電極5下方の二次元キャリアガス層23が形成される領域内にも、低導電性領域210が配置されている。低導電性領域210のキャリア濃度は、1×10
17個/cm
3〜1×10
20個/cm
3程度である。一方、低導電性領域210以外の二次元キャリアガス層23が形成される領域のキャリア濃度は低導電性領域210のキャリア濃度の2倍程度以上であり、例えば2×10
20個/cm
3以上である。
【0015】
フィールドプレート6の下方で低導電性領域210が形成される領域は、フィールドプレート6のゲート側端部601下方からドレイン側端部602下方の間の領域である。また、ゲート電極5の下方で低導電性領域210が形成される領域は、ゲート電極5のソース側端部501下方からドレイン側端部502下方の間の領域である。
【0016】
図1に示した化合物半導体装置1ではゲート電極5とフィールドプレート6が連接している。このため、低導電性領域210が形成される領域は、ゲート電極5のソース側端部501下方からフィールドプレート6のドレイン側端部602下方の間の二次元キャリアガス層23の形成領域である。
【0017】
また、
図1に示したように、基板10上にバッファ層11が配置され、バッファ層11上に化合物半導体層20が配置されている。また、ゲート電極5は、化合物半導体層20の主面200に接するゲート絶縁膜50とメタル層51とを積層した構造である。つまり、
図1に示した化合物半導体装置1のゲート電極構造は、MIS構造である。
【0018】
基板10には、シリコン(Si)基板、シリコンカーバイト(SiC)基板、窒化ガリウム(GaN)基板等の半導体基板や、サファイア基板、セラミック基板等の絶縁体基板を採用可能である。例えば、基板10に大口径化が容易なシリコン基板を採用することにより、化合物半導体装置1の製造コストを低減できる。
【0019】
バッファ層11は、周知の有機金属気相成長(MOCVD)法等のエピタキシャル成長法で形成できる。
図1では、バッファ層11を1つの層として図示しているが、バッファ層11を複数の層で形成してもよい。例えば、バッファ層11を窒化アルミニウム(AlN)からなる第1のサブレイヤー(第1の副層)と窒化ガリウム(GaN)からなる第2のサブレイヤー(第2の副層)とを交互に積層した多層構造バッファとしてもよい。また、化合物半導体装置1が高電子移動度トランジスタ(HEMT)として動作する場合、バッファ層11はHEMTの動作に直接には関係しないため、バッファ層11を省いてもよい。また、バッファ層11の材料として、AlN、GaN以外の窒化物半導体、又はIII−V族化合物半導体を採用してもよい。基板10とバッファ層11とを組み合わせた構造
を基板とみなすこともできる。バッファ層11の構造、配置は、基板10の材料等に応じて決定される。
【0020】
バッファ層11上に配置されたキャリア走行層21は、例えば不純物が添加されていないアンドープGaNを0.3〜10μm程度の厚みに、MOCVD法等によりエピタキシャル成長させて形成する。ここでノンドープとは、不純物が意図的に添加されていないことを意味する。
【0021】
キャリア走行層21上に配置されたキャリア供給層22は、キャリア走行層21よりもバンドギャップが大きく、且つキャリア走行層21と格子定数の異なる窒化物半導体からなる。キャリア供給層22は、例えばAl
xM
yGa
1-x-yN(0≦x<1、0≦y<1、0≦x+y≦1、Mはインジウム(In)或いはボロン(B)等)で表される窒化物半導体、或いは他の化合物半導体である。キャリア供給層22がAl
xM
yGa
1-x-yNである場合、組成比xは0.1〜0.4が好ましく、より好ましくは0.3である。また、キャリア供給層22としてアンドープのAl
xGa
1-xNも採用可能である。更に、n型不純物を添加したAl
xGa
1-xNからなる窒化物半導体もキャリア供給層22に採用可能である。
【0022】
キャリア供給層22は、MOCVD法等によるエピタキシャル成長によってキャリア走行層21上に形成される。キャリア供給層22とキャリア走行層21は格子定数が異なるため、格子歪みによるピエゾ分極が生じる。このピエゾ分極とキャリア供給層22の結晶が有する自発分極によりヘテロ接合付近に高密度のキャリアが生じ、二次元キャリアガス層23が形成される。キャリア供給層22の膜厚は、キャリア走行層21よりも薄く、10〜50nm程度、例えば25nm程度である。
【0023】
ゲート絶縁膜50は化合物半導体層20の主面200上に配置され、ゲート絶縁膜50にそれぞれ形成された開口部において、ソース電極3及びドレイン電極4が化合物半導体層20の主面200に接している。ソース電極3及びドレイン電極4は、化合物半導体層20と低抵抗接触(オーミック接触)可能な金属により形成される。例えばチタン(Ti)とアルミニウム(Al)の積層体等として、ソース電極3及びドレイン電極4は形成される。
【0024】
フィールド絶縁膜60は、ゲート絶縁膜50、ソース電極3及びドレイン電極4上に配置されている。ゲート電極5のメタル層51は、フィールド絶縁膜60に形成された開口部においてゲート絶縁膜50に接している。メタル層51は、例えばニッケル(Ni)膜と金(Au)膜との積層構造からなる。即ち、ゲート絶縁膜50に接してNi膜が配置され、Ni膜上にAu膜が配置されてゲート電極5が形成されている。
【0025】
以下に、
図1に示した化合物半導体装置1の導通(オン)時と非導通(オフ)時での動作について説明する。
【0026】
先ず、化合物半導体装置1が非導通(オフ)状態、即ち、チャネル遮断状態である場合について説明する。例えば、ドレイン電極4に600Vを印加し、ソース電極3に0V、ゲート電極5に0V〜−数V程度を印加するバイアス条件(以下において「非導通バイアス条件」という。)の場合を考える。このとき、フィールドプレート6にはゲート電極5と同じ電圧が印加される。
【0027】
フィールドプレート6及びゲート電極5の下方のチャネル領域に低導電性領域210が配置されているため、非導通バイアス条件においてゲート電極5のドレイン側端部502におけるバイアス電界の集中を緩和することができる。これにより、化合物半導体装置1の耐圧を向上することができる。
【0028】
更に、フィールドプレート6がゲート電極5とドレイン電極4間に配置されていることにより、ゲート電極5のドレイン側端部502の空乏層の曲率が制御されて、ドレイン側端部502に集中するバイアス電界が緩和される。
【0029】
次に、化合物半導体装置1が導通(オン)状態、即ち、チャネル導通状態である場合について説明する。例えば、ドレイン電極4に600Vを印加し、ソース電極3に0V、ゲート電極5に+3V〜+10V程度を印加するバイアス条件(以下において「導通バイアス条件」という。)の場合を考える。このとき、フィールドプレート6にはゲート電極5と同じバイアス電圧が印加される。
【0030】
導通バイアス条件においては、フィールドプレート6に+3V〜+10V程度のバイアス電圧が印加されるため、低導電性領域210のキャリア濃度が上昇する。このため、低導電性領域210の導電性が向上し、化合物半導体装置1のオン抵抗の増大が抑制される。
【0031】
フィールドプレート6にバイアス電圧を印加して低導電性領域210のキャリア濃度を増大させるには、二次元キャリアガス層23における低導電性領域210が形成される領域が、フィールドプレート6直下に配置されている必要がある。フィールドプレート6に印加されるバイアス電圧と同程度のゲート電圧がゲート電極5に印加される導通バイアス条件の場合は、ゲート電極5直下の二次元キャリアガス層23にも低導電性領域210を形成してもよい。したがって、
図1に示したようにゲート電極5とフィールドプレート6が連接されている場合には、フィールドプレート6及びゲート電極5の下方に、低導電性領域210を形成できる。
【0032】
一方、上方にフィールドプレート6がない低導電性領域では、導通バイアス条件においてもキャリア濃度を増大させることができない。その結果、この低導電性領域はソース電極とドレイン電極との間に接続された抵抗成分とみなされ、
図1に示した化合物半導体装置1に比べてオン抵抗が高い。
【0033】
以上に説明したように、本発明の第1の実施形態に係る化合物半導体装置1によれば、フィールドプレート6直下の二次元キャリアガス層23に低導電性領域210が配置されているため、非導通バイアス条件においてゲート電極5のドレイン側端部502におけるバイアス電界の集中が緩和される。その結果、化合物半導体装置1の耐圧を向上することができる。更に、導通バイアス条件において、フィールドプレート6にバイアス電圧を印加することにより、低導電性領域210のキャリア濃度が上昇する。このため、低導電性領域210の導電性が向上し、化合物半導体装置1のオン抵抗の増大が抑制される。
【0034】
したがって、
図1に示した化合物半導体装置1によれば、ゲート電極5の端部でのバイアス電界集中が緩和され、且つ動作時のオン抵抗の増大が抑制された化合物半導体装置を提供することができる。
【0035】
以下に、
図2〜
図9を用いて、本発明の第1の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法を説明する。なお、以下に述べる化合物半導体装置の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0036】
(イ)
図2に示すように、基板10上に、MOCVD法等によりバッファ層11、キャリア走行層21及びキャリア供給層22をこの順にエピタキシャル成長させる。バッファ層11は、例えばAlN層とGaN層を交互に積層した構造である。キャリア走行層21は、例えばアンドープGaN膜である。キャリア供給層22は、キャリア走行層21よりもバンドギャップが大きく、且つ格子定数の異なる窒化物半導体からなり、例えばアンドープのAlGaN膜が採用可能である。
【0037】
(ロ)
図3に示すように、キャリア供給層22上に、酸化シリコン(SiO
2)膜、窒化シリコン(SiN)膜、又は酸化アルミニウム(Al
2O
3)膜などからなるゲート絶縁膜50を形成する。例えばゲート絶縁膜50は、膜厚10nmのAl
2O
3膜である。
【0038】
(ハ)フォトリソグラフィ技術を用いて、ゲート絶縁膜50の所定の位置に開口部を形成する。具体的には、ソース電極3及びドレイン電極4を配置する位置のゲート絶縁膜50を、フォトレジスト膜をマスクにしてエッチング除去する。
【0039】
(ニ)スパッタ法により、膜厚25nm程度のTi膜と膜厚300nm程度のAl膜の積層膜を、ゲート絶縁膜50の開口部を埋め込むようにしてフォトレジスト膜上に形成する。その後、フォトレジスト膜を除去するリフトオフ法により、Ti膜とAl膜の積層膜の一部を除去する。これにより、
図4に示すように、Ti膜とAl膜を積層した構造のソース電極3及びドレイン電極4が形成される。
【0040】
(ホ)ソース電極3及びドレイン電極4が二次元キャリアガス層23と低抵抗接触するように、オーミックシンターを行う。
【0041】
(ヘ)
図5に示すように、ゲート絶縁膜50、ソース電極3及びドレイン電極4上に、例えば酸化シリコン(SiO)からなるフィールド絶縁膜60を形成する。フィールド絶縁膜60の膜厚は、例えば10nm程度である。
【0042】
(ト)フォトリソグラフィ技術を用いて、フィールド絶縁膜60の所定の位置に開口部を形成する。具体的には、
図6に示すように、ゲート電極5を配置する位置のフィールド絶縁膜60を、フォトレジスト膜70をマスクにしてエッチング除去する。このとき、ゲート絶縁膜50はエッチングストッパとして機能する。
【0043】
(チ)フォトレジスト膜70を除去した後、新たなフォトレジスト膜80をフィールド絶縁膜60上に形成する。ゲート電極5及びフィールドプレート6を配置する位置のフォトレジスト膜80を選択的に除去した後、
図7に示すように、フォトレジスト膜80をマスクにして、窒素(N)イオンをキャリア走行層21に注入する。窒素(N)イオンの注入条件は、例えば注入エネルギーが20〜40keV、ドーズ量が1×10
11イオン/cm
2〜1×10
13イオン/cm
2である。これにより、二次元キャリアガス層23が形成される領域のうち、フィールドプレート6及びゲート電極5直下の領域内に低導電性領域210が形成される。
【0044】
(リ)フォトレジスト膜80上、及びフォトレジスト膜80に形成された開口部の底面に露出したゲート絶縁膜50及びフィールド絶縁膜60上に、膜厚100nm程度のNi膜をスパッタ法により形成する。更に、Ni膜上に膜厚200nm程度のAu膜をスパッタ法により形成する。これにより、
図8に示すように、Ni膜とAu膜を積層した導電体層500が形成される。ゲート絶縁膜50上に形成された導電体層500はゲート電極5のメタル層51であり、フィールド絶縁膜60上に形成された導電体層500はフィールドプレート6である。フォトレジスト膜80を除去することにより、
図1に示した化合物半導体装置が完成する。
【0045】
以上に説明したように、本発明の実施形態に係る化合物半導体装置の製造方法によれば、キャリア走行層21の二次元キャリアガス層23が形成される領域のうちのフィールドプレート6及びゲート電極5直下の領域内に、上方にフィールドプレート6及びゲート電極5が配置されていない領域よりも導電率が低い低導電性領域210を有する化合物半導体装置1を得られる。これにより、ゲート電極5の端部でのバイアス電界集中が緩和され、且つ動作時のオン抵抗の増大が抑制された化合物半導体装置1を提供することができる。
【0046】
<変形例>
図1に示した化合物半導体装置1のゲート電極構造はMIS構造である。しかし、化合物半導体装置1のゲート電極構造が、ゲート電極5と化合物半導体層20とがショットキー接合するMES構造であってもよい。ゲート電極5の構造が、ゲート絶縁膜がなくメタル層51のみの構造である例を、
図9に示す。
【0047】
また、
図10に示すように、ゲート電極5直下には低導電性領域210が存在せず、フィールドプレート6直下にのみ低導電性領域210が存在するように、化合物半導体装置1を構成してもよい。つまり、上方にフィールドプレート6が配置されていない領域には、低導電性領域210が形成されない。
図10に示した化合物半導体装置1においても、ゲート電極5のドレイン側端部502におけるバイアス電界の集中を緩和できる。そして、フィールドプレート6に適切なバイアス電圧を印加することにより、低導電性領域210のキャリア濃度を上昇させて、化合物半導体装置1のオン抵抗の増大を抑制できる。
【0048】
例えば、
図7に示したゲート電極5及びフィールドプレート6を形成するためのフォトレジスト膜80以外に、
図11に示すようなイオン注入用マスクとしてのフォトレジスト膜90を使用することにより、
図10に示した化合物半導体装置1を形成することができる。
【0049】
更に、
図12に示すように、ゲート電極5とフィールドプレート6が連接していないように、化合物半導体装置1を構成してもよい。
図12に示した化合物半導体装置1において、ゲート電極5とフィールドプレート6に同一の電圧を印加してもよいし、ゲート電極5に印加するゲート電圧と異なるバイアス電圧をフィールドプレート6に印加してもよい。
【0050】
例えば、低導電性領域210の導電性を向上させるために必要なフィールドプレート6に印加するバイアス電圧が、化合物半導体装置1を導通状態にするために必要なゲート電圧よりも大きな場合がある。
図12に示したようにゲート電極5とフィールドプレート6に異なる電圧を印加できるようにすることにより、ゲート電極5に不必要に大きなゲート電圧を印加することなく、低導電性領域210の導電性を向上させるために必要なバイアス電圧をフィールドプレート6に印加することができる。
【0051】
図11に示したイオン注入用のフォトレジスト膜90を使用することにより、
図12に示したように、フィールドプレート6直下にのみ低導電性領域210を形成することができる。更に、
図7、
図8に示したフォトレジスト膜80において、ゲート電極5を形成する位置とフィールドプレート6を形成する位置とにそれぞれ開口部を設けることにより、ゲート電極5とフィールドプレート6とが離間して配置された
図12に示す化合物半導体装置1を製造することができる。
【0052】
(第2の実施形態)
本発明の第2の実施形態に係る化合物半導体装置1は、
図13に示すように、化合物半導体層20の主面200に形成された凹部(リセス)7の底面にゲート電極5が配置されていることが、
図1と異なる点である。また、フィールドプレート6下方のゲート絶縁膜50が、フィールド絶縁膜として作用する。その他の構成については、
図1に示す第1の実施形態と同様である。
【0053】
図13に示すように、キャリア供給層22の上面の一部がエッチングされて、凹部7が形成されている。凹部7の深さはキャリア供給層22の厚みより浅く形成されている。例えば、キャリア供給層22の厚みが20μm程度である場合、凹部7の深さは5〜10μm程度である。
【0054】
図13に示した化合物半導体装置1においても、フィールドプレート6及びゲート電極5直下の二次元キャリアガス層23に低導電性領域210が配置されているため、非導通バイアス条件においてゲート電極5のドレイン側端部502におけるバイアス電界の集中を緩和することができる。これにより、化合物半導体装置1の耐圧を向上することができる。更に、フィールドプレート6がゲート電極5とドレイン電極4間に配置されていることにより、ゲート電極5のドレイン側端部502の空乏層の曲率が制御されて、ドレイン側端部502に集中するバイアス電界が緩和される。
【0055】
また、導通バイアス条件において、フィールドプレート6にバイアス電圧を印加することにより、低導電性領域210のキャリア濃度が上昇する。このため、低導電性領域210の導電性が向上し、化合物半導体装置1のオン抵抗の増大が抑制される。
【0056】
他は、第1の実施形態と実質的に同様であり、重複した記載を省略する。例えば、化合物半導体装置1のゲート電極構造がMIS構造ではなく、MES構造であってもよい。また、
図10に示した化合物半導体装置1と同様に、ゲート電極5直下には低導電性領域210が存在しなくてもよい。更に、
図12に示した化合物半導体装置1と同様に、ゲート電極5とフィールドプレート6が連接していなくてもよい。
【0057】
図14〜
図19を参照して、本発明の第2の実施形態に係る化合物半導体装置1の製造方法を説明する。なお、以下に述べる化合物半導体装置1の製造方法は一例であり、この変形例を含めて、これ以外の種々の製造方法により実現可能であることは勿論である。
【0058】
(イ)
図14に示すように、基板10上に、MOCVD法等によりバッファ層11、キャリア走行層21及びキャリア供給層22をこの順にエピタキシャル成長させる。キャリア供給層22は、キャリア走行層21よりもバンドギャップが大きく、且つ格子定数の異なる窒化物半導体からなる。
【0059】
(ロ)キャリア供給層22上にフォトレジスト膜100を形成した後、ゲート電極5を配置する位置のフォトレジスト膜100をエッチング除去する。その後、フォトレジスト膜100をエッチングマスクに用いて、キャリア供給層22の上部の一部を選択的にエッチング除去し、
図15に示すように、凹部7を形成する。
【0060】
(ハ)フォトレジスト膜100を除去した後、
図16に示すように、凹部7の底面及び内壁を覆うように、キャリア供給層22上にゲート絶縁膜50を形成する。
【0061】
(ニ)ゲート絶縁膜50上にフォトレジスト膜110を形成した後、ゲート電極5及びフィールドプレート6を配置する位置のフォトレジスト膜110をエッチング除去する。その後、
図17に示すように、フォトレジスト膜110上、及びフォトレジスト膜110の開口部の底面に露出したゲート絶縁膜50上に、導電体層500を形成する。導電体層500は、例えばNi膜とAu膜との積層体である。フォトレジスト膜110を除去することにより、ゲート電極5のメタル層51及びフィールドプレート6が形成される。
【0062】
(ホ)フォトレジスト膜110を除去した後、
図18に示すように、ゲート電極5及びフィールドプレート6をマスクにして、シリコン(Si)イオンをキャリア供給層22に注入する。シリコン(Si)イオンの注入条件は、例えば注入エネルギーが10〜30keV、ドーズ量が1×10
14イオン/cm
2〜1×10
16イオン/cm
2である。これにより、ゲート電極5及びフィールドプレート6直下の二次元キャリアガス層23が形成される領域の導電性が隣接する領域よりも低くなる。つまり、フィールドプレート6及びゲート電極5直下に低導電性領域210が形成される。
【0063】
(ヘ)新たなフォトレジスト膜120を形成した後、ソース電極3及びドレイン電極4を配置する位置のフォトレジスト膜120を除去する。そして、ソース電極3及びドレイン電極4を配置する位置のゲート絶縁膜50を、フォトレジスト膜120をマスクにしてエッチング除去する。
【0064】
(ト)
図19に示すように、Ti膜とAl膜の積層膜300を、ゲート絶縁膜50の開口部を埋め込むようにしてフォトレジスト膜120上に形成する。その後、フォトレジスト膜を除去するリフトオフ法により、Ti膜とAl膜の積層膜300の一部を除去する。これにより、Ti膜とAl膜を積層した構造のソース電極3及びドレイン電極4が形成される。
【0065】
(チ)ソース電極3及びドレイン電極4が二次元キャリアガス層23と低抵抗接触するように、オーミックシンターを行う。以上により、
図13に示した化合物半導体装置1が得られる。
【0066】
(その他の実施形態)
上記のように、本発明は第1及び第2の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面はこの発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば、化合物半導体装置1がノーマリオフ型トランジスタであっても、ノーマリオン型トランジスタであってもよい。
【0067】
このように、本発明はここでは記載していない様々な実施形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な特許請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。