【文献】
Sea-Fue WANG et al.,"Properties of Hexagonal Ba(Ti1-xMnx)O3 Ceramics: Effects of Sintering Temperature and Mn Content",Japanese Journal of Applied Physics,2007年,Vol.46, No.5A,p.2978-2983
【文献】
Antonio Feteira et al.,"Microwave Dielectric Properties of Gallium-Doped Hexagonal Barium Titanate Ceramics",Journal of the American Ceramic Society,2003年,Vol.86,No.3,p.511-513
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
電子部品の一例であるセラミックコンデンサには温度補償用として用いられるものがある。このような用途に用いられるコンデンサには、広い温度範囲において、比誘電率等の特性の変化が小さいことが求められる。
【0003】
このようなコンデンサの誘電体材料としては、たとえば(Ca)(Ti,Zr)O
3系等の常誘電体をベースとした材料が用いられている(特許文献1参照)。しかしながら、常誘電体をベースとしているため、比較的に高い誘電率が得られず、たとえば特許文献1に記載の誘電体材料では、比誘電率はいずれも50以下であった。このため、コンデンサ容量の拡大には限界があった。
【0004】
ところで、比較的に高い誘電率を有する新たな材料として、たとえば六方晶チタン酸バリウムが挙げられる。六方晶チタン酸バリウムは、ペロブスカイト型結晶構造(正方晶、立方晶)を有するチタン酸バリウムよりも誘電率は低いものの、常誘電体より高い誘電率を示す。
【0005】
しかしながら、チタン酸バリウムの結晶構造において、六方晶構造は準安定相であり、通常1460℃以上においてのみ存在することができる。そのため、室温において六方晶チタン酸バリウムを得るには、1460℃以上の高温から急冷する必要がある。
【0006】
この場合、高温からの急冷により、得られる六方晶チタン酸バリウムの比表面積は1m
2/g以下となってしまい、粗い粉末しか得られない。このような粗い粉末を用いて、薄層化された誘電体層を有する電子部品を製造すると、誘電体層の薄層化に対応できず、十分な信頼性が確保されないという問題がある。
【0007】
ところで、六方晶チタン酸バリウムを製造する方法としては、たとえば、非特許文献1には、出発原料としてBaCO
3、TiO
2およびMn
3O
4を用いて、これを熱処理することが開示されている。このようにすることで、六方晶への変態温度を下げることができるため、1460℃以下の温度での熱処理によりMnが固溶した六方晶チタン酸バリウムを得ている。
【0008】
しかしながら、非特許文献1において得られる六方晶チタン酸バリウムの比表面積は1.6m
2/g程度である。この比表面積から見積もられる平均粒子径は、約0.6μm程度であるが、実際は、1μmを超える粗大粒子が含まれる。この六方晶チタン酸バリウム粉末を用いても、薄層化が進む電子部品の誘電体層への適用は不十分である。
【0009】
また、特許文献2には、900℃以下の熱処理で、結晶欠陥が少なく、微粒かつ均一粒径のチタン酸バリウム粉末の製造例が開示されている。しかし、特許文献2で得られているチタン酸バリウム粉末の六方晶化率は5%程度が限度であり、六方晶化率の高い、微粒かつ均一粒径のチタン酸バリウム粉末は未だ得られていない現状である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、微粒であり、均一な粒度を有し、誘電体層の薄層化に寄与しうる六方晶系チタン酸バリウム粉末を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討したところ、チタン酸バリウム(BaTiO
3)のTiサイトの一部を、特定の+3価金属イオンで特定量置換してなるチタン酸バリウムは、比較的低温で六方晶相が安定し、特に微粒の原料粉末を使用することで、微粒であり、均一な粒度を有する六方晶系チタン酸バリウムが得られることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
すなわち、上記課題を解決する本発明の要旨は以下のとおりである。
(1)最大粒径が1.0μm以下であり、
90%累積粒子径(D90)と50%累積粒子径(D50)との比(D90/D50)が3.0以下であり、
六方晶化率が50%以上である六方晶系チタン酸バリウム粉末。
【0015】
(2)Ba
A(Ti
1−αM
α)
BO
3で表され、
Mは、有効イオン半径が0.58〜0.64Åの+3価の金属イオンであり、
A/Bが0.900〜1.040の範囲にあり、
αが0.03〜0.2の範囲にある、(1)に記載の六方晶系チタン酸バリウム粉末。
【0016】
(3)Mが、Mn、Cr、GaおよびCoからなる群から選ばれる元素の+3価金属イオンである(2)に記載の六方晶系チタン酸バリウム粉末。
【0017】
(4)上記(1)〜(3)の何れかに記載のチタン酸バリウム粉末の焼結体を主成分とする誘電体磁器組成物。
【0018】
(5)上記(4)に記載の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層と、内部電極層を有する電子部品。
【0019】
(6)比表面積が20m
2/g以上の炭酸バリウム粉末、
比表面積が30m
2/g以上の二酸化チタン粉末、および
比表面積が5.0m
2/g以上のM元素含有粉末(Mは+3価イオンの有効イオン半径が0.58〜0.64Åである元素)を含む混合粉末を準備する工程、および、
該混合粉末を900℃以上1300℃未満で熱処理する工程を含む六方晶系チタン酸バリウム粉末の製造方法。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、微粒であり、均一な粒度を有し、誘電体層の薄層化に寄与しうる六方晶系チタン酸バリウム粉末が提供される。このような六方晶系チタン酸バリウム粉末を使用することで、比較的に高い比誘電率を示すと共に、絶縁抵抗にも優れ、薄層化の可能な誘電体磁器組成物が得られる。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明を、実施形態に基づきさらに詳細に説明する。
【0023】
<積層セラミックコンデンサ>
図1に示すように、電子部品の代表例である積層セラミックコンデンサ1は、誘電体層2と内部電極層3とが交互に積層された構成のコンデンサ素子本体10を有する。このコンデンサ素子本体10の両端部には、素子本体10の内部で交互に配置された内部電極層3と各々導通する一対の外部電極4が形成してある。コンデンサ素子本体10の形状に特に制限はないが、通常、直方体状とされる。また、その寸法にも特に制限はなく、用途に応じて適当な寸法とすればよい。
【0024】
内部電極層3は、各端面がコンデンサ素子本体10の対向する2端部の表面に交互に露出するように積層してある。一対の外部電極4は、コンデンサ素子本体10の両端部に形成され、交互に配置された内部電極層3の露出端面に接続されて、コンデンサ回路を構成する。
【0025】
誘電体層2は、本実施形態に係る誘電体磁器組成物を含有する。本実施形態に係る誘電体磁器組成物は、六方晶系チタン酸バリウムを主相とし、特定の副成分を含む。なお、下記において、各種酸化物の組成式が示されるが、酸素(O)量は、化学量論組成から若干変位してもよい。
【0026】
まず、本実施形態に係る誘電体磁器組成物において主成分であって、主相を構成する六方晶系チタン酸バリウムについて説明する。六方晶系チタン酸バリウムからなる主相は、原料として下記の六方晶系チタン酸バリウム粉末を用い、これを副成分とともに焼成することで形成される。
【0027】
<六方晶系チタン酸バリウム粉末>
本実施形態に係る六方晶系チタン酸バリウム粉末は、六方晶構造を有するチタン酸バリウム(六方晶チタン酸バリウム)粉末を主成分としている。具体的には、本実施形態に係る六方晶系チタン酸バリウム粉末100質量%に対して、50質量%以上、好ましくは90質量%以上、より好ましくは95質量%以上の比率で六方晶チタン酸バリウムが含有されている。
【0028】
なお、六方晶化率はX線回折分析により求められ、本実施形態に係る六方晶系チタン酸バリウム粉末には、六方晶チタン酸バリウム以外に、正方晶構造あるいは立方晶構造を有するチタン酸バリウムが含まれていてもよい。
【0029】
六方晶化率の測定に際しては、具体的には、まず、X線回折測定により得られるX線回折チャートより、チタン酸バリウム(六方晶、立方晶、正方晶)に由来するピーク以外のピークが存在するか否かを判断する。このようなピークが存在していると、得られる粉末において異相(Ba
2TiO
4、BaCO
3等)が生じていることとなり、好ましくない。
【0030】
粉末がチタン酸バリウム(BaTiO
3)のみで構成されている場合、六方晶チタン酸バリウムが生成した比率を算出して判断する。具体的には、六方晶チタン酸バリウム、正方晶チタン酸バリウムおよび立方晶チタン酸バリウムの最大ピーク強度の合計を100%として、六方晶チタン酸バリウムの最大ピーク強度が占める比率を、六方晶チタン酸バリウムの生成比率(存在比率)とする。この比率が50%以上の場合に、六方晶チタン酸バリウムを主成分として含む六方晶系チタン酸バリウム粉末が得られることになる。
【0031】
本実施形態に係る六方晶系チタン酸バリウム粉末は、その最大粒径が1.0μm以下であり、好ましくは0.5μm以下であり、さらに好ましくは0.1〜0.3μmの範囲にある。
【0032】
また、六方晶系チタン酸バリウム粉末の90%累積粒子径(D90)と50%累積粒子径(D50)との比(D90/D50)は、3.0以下、好ましくは2.5以下、さらに好ましくは2.0以下である。
【0033】
さらに、六方晶系チタン酸バリウム粉末の平均粒径(D50)は、好ましくは0.1〜0.7μm、さらに好ましくは0.1〜0.5μmの範囲にある。
【0034】
なお、本明細書において、六方晶系チタン酸バリウム粉末の最大粒径、D50およびD90は、SEMで1000個の粒子について観察測定して算出した。
【0035】
本実施形態に係る六方晶系チタン酸バリウム粉末は、上述の構成を有し、微粒であり、均一な粒度を有する。たとえば、BET法により測定される比表面積は2.0m
2/g以上、好ましくは3.0m
2/g以上、より好ましくは4.0m
2/g以上となる。
【0036】
本発明に係る六方晶系チタン酸バリウム粉末は、上記の粒子性状および六方晶化率を満足する限りその組成は特に限定はされないが、六方晶相を確実に得る上での好ましい組成は、一般式:Ba
A(Ti
1−αM
α)
BO
3で表される。
【0037】
上式中、Mは、有効イオン半径が0.58〜0.64Åの+3価の金属イオンであり、Mn
3+、Cr
3+、Ga
3+およびCo
3+からなる群から
選ばれる+3価金属イオンであり、特に好ましくはGa
3+である。なお、本明細書に記載の有効イオン半径は、文献「R.D.Shannon,Acta Crystallogr.,A32,751(1976)」に基づく値である。
【0038】
また、A/Bは、好ましくは0.900〜1.040、さらに好ましくは0.960〜1.030の範囲にある。A/Bが小さすぎると、チタン酸バリウム生成時における反応性が高くなり、粒成長しやすくなる。そのため、細かい粒子が得られにくく、所望の比表面積が得られない傾向にある。逆に、A/Bが大きすぎると、Baが占める割合が多くなるため、Baリッチなオルソチタン酸バリウム(Ba
2TiO
4)が異相として生成する傾向にあるため好ましくない。
【0039】
上記式中のαは、Tiに対する3価イオンMの置換割合を示しており、好ましくは0.03〜0.2の範囲にある。αが0.03未満であり、3価イオンMが過小である場合には、六方晶相が形成されないおそれがあり、またαが0.2を超え、3価イオンMが過剰であると、異相が形成されるおそれがある。
【0040】
Tiサイトを3価イオンMに置換することで、六方晶相の形成が促進される理由は必ずしも明らかではないが、3価イオンMがTiサイトを置換、固溶することで、BaTiO
3結晶において、2aサイトのTi−O軸が伸長し、4fサイトのTi−O軸が収縮し、六方晶構造が安定化するためと考えられる。
【0041】
本実施形態に係る六方晶系チタン酸バリウム粉末は、微粒であり、均一な粒度を有するため、積層セラミック電子部品の誘電体層を薄層化した場合(たとえば層間厚み1μm)であっても、層間に配置されるチタン酸バリウム粒子の数を少なくとも2個以上とすることができ、十分な信頼性(高温負荷寿命)を確保することができる。
【0042】
なお、得られる粉末を、ボールミル等を用いて粉砕することで、微粒化することは可能であるが、この場合、粒度分布がブロードになってしまう。その結果、粒子径にバラツキが生じ、信頼性にもバラツキが生じる。また、粉砕時に粉末に加わる衝撃(エネルギー)等が悪影響を与えるため好ましくない。したがって、六方晶チタン酸バリウムが生成した状態において、微粒であり、均一な粒度を有する本発明のチタン酸バリウム粉末は有用性が極めて高い。
【0043】
六方晶系チタン酸バリウム粉末の製造方法
次に、本実施形態に係る六方晶系チタン酸バリウム粉末を製造する方法について説明するが、本発明の六方晶系チタン酸バリウム粉末は下記製法により得られるものに限定はされない。
【0044】
本実施形態に係る六方晶系チタン酸バリウム粉末の製造においては、まず、所定の粒子性状を有するチタン酸バリウムの原料とM元素含有粉末とを準備する。
【0045】
チタン酸バリウムの原料としては、本実施形態では、炭酸バリウム粉末(BaCO
3)および二酸化チタン粉末(TiO
2)を用いることが好ましい。
【0046】
炭酸バリウム粉末の比表面積は、好ましくは20m
2/g以上、さらに好ましくは30〜100m
2/gの範囲にあり、二酸化チタン粉末の比表面積が30m
2/g以上、さらに好ましくは40〜100m
2/gの範囲にある。
【0047】
M元素含有粉末とは、チタン酸バリウムのTiサイトを置換する有効イオン半径が0.58〜0.64Åの3価イオンMを生成しうる化合物の粉末であり、好ましくは、Mn、Cr、GaおよびCoからなる群から
選ばれる元素を含有する化合物である。なお、原料として用いられるM元素含有粉末における金属元素Mの価数は3価である必要は必ずしもなく、後述するような熱処理条件において、Tiサイトを置換する有効イオン半径が0.58〜0.64Åの3価イオンMを生成する元素であればよい。
【0048】
M元素含有粉末は、酸化物であってもよく、また炭酸塩、シュウ酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物等であってもよいが、粒子性状の制御および入手の容易さなどの観点から酸化物が好ましく用いられる。
【0049】
Mn含有化合物としては、具体的にはMn
3O
4、MnCO
3が用いられ、Cr含有化合物としては、Cr
2O
3、CrO
2が用いられ、Ga含有化合物としては、Ga
2O
3、Ga(OH)
3が用いられ、Co含有化合物としては、Co
2O
3、CoOが用いられる。これらは複合酸化物として用いても良く、また2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0050】
M元素含有粉末の比表面積が5.0m
2/g以上、さらに好ましくは10〜100m
2/gの範囲にある。
【0051】
原料である炭酸バリウム粉末、二酸化チタン粉末およびM元素含有粉末の比表面積が上記範囲にあると、微粒であり均一な粒度の六方晶系チタン酸バリウム粉末が得られる。比表面積が比較的小さく、粗粒の原料粉末を用いると、六方晶系チタン酸バリウムが得られるものの、微粒子が得られにくくなる。
【0052】
次に準備した原料を、所定の組成比となるように秤量して混合、必要に応じて粉砕し、原料混合物を得る。混合・粉砕する方法としては、たとえば、水等の溶媒とともに原料をボールミル等の公知の粉砕容器に投入し、混合・粉砕する湿式法が挙げられる。また、乾式ミキサーなどを用いて行う乾式法により、混合・粉砕してもよい。なお、原料粉末の比表面積は、混合粉末を準備する際の粉砕により上記範囲に調整してもよい。また、混合、粉砕時には、投入した原料の分散性を向上させるために、分散剤を添加するのが好ましい。分散剤としては公知のものを用いればよい。
【0053】
次に、得られた原料混合物を、必要に応じて乾燥した後、熱処理を行う。熱処理における昇温速度は、好ましくは50〜900℃/時間である。また、熱処理における保持温度は、六方晶構造への変態温度よりも高くすればよい。本実施形態では、六方晶構造への変態温度は、A/B、Tiサイト置換量(α)および元素Mの種類等により変化するため、保持温度、熱処理雰囲気もそれに応じて変化させればよい。また、粒径が小さく、粒度のそろった六方晶系チタン酸バリウム粉末を得るためには、熱処理温度は、900℃以上1300℃未満とすることが好ましく、特に950〜1150℃であることが好ましい。保持時間は、好ましくは0.5〜5時間、より好ましくは2〜4時間である。
【0054】
さらに、元素Mの種類によって熱処理雰囲気を適宜に設定することが好ましい。たとえば、元素MとしてMnを用いる場合には、酸素を含む大気雰囲気が好ましい。Mnは還元雰囲気では2価イオンが安定的であるため、還元雰囲気の熱処理では、Tiサイトを置換しても六方晶相が形成されないおそれがある。一方、酸素を含む大気雰囲気ではMn
3+が安定的であるため、Tiサイトを置換して六方晶相の形成を促進する。また、Crは、還元雰囲気では3価が安定するが、大気雰囲気では6価が優勢となるため、還元雰囲気での熱処理が好ましい。Gaは還元雰囲気、大気雰囲気の何れであってもよいが、還元雰囲気が好ましい。Coの場合には、大気雰囲気が好ましい。
【0055】
このような熱処理を行うことで、元素Mが、3価のイオンとしてBaTiO
3のTiサイトに置換、固溶し、六方晶系チタン酸バリウムの生成が促進される。
【0056】
なお、保持温度が低すぎると、反応しきれない原料(たとえばBaCO
3など)が残留する傾向にある。
【0057】
そして、熱処理での保持時間を経過した後、六方晶構造を維持するために、熱処理時の保持温度から室温まで冷却する。具体的には、冷却速度を好ましくは200℃/時間以上とする。
【0058】
このようにすることで、室温においても六方晶構造が維持された六方晶チタン酸バリウムを主成分として含む六方晶系チタン酸バリウム粉末が得られる。得られる粉末が、六方晶系チタン酸バリウム粉末であるか否かを判断する方法は特に制限されないが、本実施形態では、X線回折測定により判断する。
【0059】
この六方晶系チタン酸バリウム粉末は、通常六方晶チタン酸バリウムが安定に存在する温度(1460℃以上)よりも低い温度から冷却されて得られるため、細かい粒子として得られる。しかも、六方晶系チタン酸バリウム粉末の組成やA/B比などを上記の範囲に制御しているため、より細かく、粒径の均一な粒子が得られる。
【0060】
<誘電体磁器組成物>
このようにして得られる六方晶系チタン酸バリウム粉末と下記副成分とを用いて焼結することで、電子部品等における誘電体層を形成する誘電体磁器組成物が得られる。
【0061】
<副成分>
副成分としては、たとえば、
MgO、CaOおよびBaOからなる群から選ばれる少なくとも1つのアルカリ土類酸化物、
金属酸化物として、Mn
3O
4および/またはCr
2O
3と、CuOと、Al
2O
3と、
Y、La、Ce、Pr、Nd、Sm、Gd、Tb、Dy、HoおよびYbからなる群から選ばれる少なくとも1つの希土類元素の酸化物、および
SiO
2を含むガラス成分が用いられる。
【0062】
また、本発明の目的を達成できる範囲において、上記誘電体磁器組成物には、その他の副成分を添加してもよい。
【0063】
<積層セラミックコンデンサ>
図1に示した、電子部品の代表例である積層セラミックコンデンサ1における誘電体層2の厚さは、特に限定されないが、一層あたり5μm以下であることが好ましく、より好ましくは3μm以下である。厚さの下限は、特に限定されないが、たとえば1μm程度である。本実施形態に係る誘電体磁器組成物によれば、層厚1μm以上で比誘電率が50以上を示す。誘電体層2の積層数は、特に限定されないが、200以上であることが好ましい。
【0064】
誘電体層2に含まれる誘電体粒子の平均結晶粒径は、特に限定されず、誘電体層2の厚さなどに応じて、例えば0.1〜1.0μmの範囲から適宜決定すればよく、好ましくは0.1〜0.5μmである。なお、誘電体層中に含まれる誘電体粒子の平均結晶粒径は、次のように測定される。まず、得られたコンデンサ試料を内部電極に垂直な面で切断し、その切断面を研磨する。そして、その研磨面にケミカルエッチングを施し、その後、走査型電子顕微鏡(SEM)により観察を行い、コード法により誘電体粒子の形状を球と仮定して算出する。
【0065】
内部電極層3に含有される導電材は特に限定されないが、誘電体層2の構成材料が耐還元性を有するため、卑金属を用いることができる。導電材として用いる卑金属としては、NiまたはNi合金が好ましい。Ni合金としては、Mn,Cr,CoおよびAlから選択される1種以上の元素とNiとの合金が好ましく、合金中のNi含有量は95重量%以上であることが好ましい。
【0066】
外部電極4に含有される導電材は特に限定されないが、本実施形態では安価なNi,Cuや、これらの合金を用いることができる。外部電極4の厚さは用途等に応じて適宜決定されればよいが、通常、10〜50μm程度であることが好ましい。
【0067】
本実施形態の誘電体磁器組成物を用いた積層セラミックコンデンサは、チタン酸バリウム原料として、上述した六方晶系チタン酸バリウム粉末を用いる他は、従来の積層セラミックコンデンサと同様に、ペーストを用いた通常の印刷法やシート法によりグリーンチップを作製し、これを焼成した後、外部電極を印刷または転写して焼成することにより製造される。
【0068】
このようにして製造された本発明の積層セラミックコンデンサは、ハンダ付等によりプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0069】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明は、上述した実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々に改変することができる。
【0070】
たとえば、上述した実施形態では、本発明に係る電子部品として積層セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る電子部品としては、積層セラミックコンデンサに限定されず、上記組成の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有するものであれば何でも良い。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下の実施例、比較例において、「原料および生成物の比表面積」、「生成物の粒子性状」および「六方晶化率」は以下のように測定した。
【0072】
<原料および生成物の比表面積>
原料粉末および熱処理後の生成物の比表面積はBET法により測定した。
【0073】
<生成物の粒子性状>
熱処理後の生成物の粒子性状を、SEMにより1000個の粒子について観察測定し、各粒子の円相当換算径から、最大粒径、D50およびD90を算出した。
【0074】
<六方晶化率>
熱処理後の生成物の六方晶化率をX線回折分析により算出した。X線回折は、X線源としてCu−Kα線を用い、その測定条件は、電圧45kV、電流40mAで、2θ=20°〜90°の範囲を、走査速度4.0deg/min、積算時間30secであった。
【0075】
測定により得られたX線回折チャートから、2θ=45°付近において、各ピークを同定し、チタン酸バリウム(六方晶、正方晶、立方晶)や異相が存在しているかどうかを評価した。次いで、チタン酸バリウムのピークのみが観察された試料については、さらに六方晶チタン酸バリウム(h−BaTiO
3)、正方晶チタン酸バリウム(t−BaTiO
3)および立方晶チタン酸バリウム(c−BaTiO
3)の最大ピーク強度を算出した。そして、h−BaTiO
3、t−BaTiO
3およびc−BaTiO
3の最大ピーク強度の合計に対するh−BaTiO
3の最大ピーク強度が占める比率を算出し、六方晶チタン酸バリウム(h−BaTiO
3)の比率を求めた。
【0076】
(参考例1、実施例
1〜4、比較例1〜10)
BaCO
3(比表面積:25m
2/g)およびTiO
2(比表面積:50m
2/g)を準備した。また、M元素含有化合物として、Mn
3O
4(比表面積:20m
2/g)、Cr
2O
3(比表面積:10m
2/g)、Ga
2O
3(比表面積:10m
2/g)、Co
2O
3(比表面積:10m
2/g)、MgO(比表面積:20m
2/g)、Al
2O
3(比表面積:20m
2/g)、Fe
2O
3(比表面積:10m
2/g)、In
2O
3(比表面積:10m
2/g)、Ge
2O
3(比表面積:10m
2/g)、SnO
2(比表面積:10m
2/g)を準備した。
【0077】
M元素含有化合物として、表1に記載の化合物を用い、一般式Ba
A(Ti
1−αM
α)
BO
3におけるαが0.1、A/Bが1となるように秤量して、水および分散剤とともにボールミルにて混合した。得られた混合粉を、以下の熱処理条件で処理し、六方晶系チタン酸バリウム粉末を作製した。
【0078】
熱処理条件は、昇温速度:200℃/時間、保持温度:表1に示す温度、温度保持時間:2時間、冷却速度:200℃/時間、熱処理雰囲気とした。なお、熱処理雰囲気における「大気」は酸素分圧が0.2atmの大気中での熱処理を意味し、「還元」は全ガス流量2L/分中、3%が水素、97%が窒素の雰囲気中での熱処理を意味する。
【0079】
得られた六方晶系チタン酸バリウム粉末に対して、下記に示すX線回折を行った。また、SEM観察により最大粒径、D90/D50を算出し、BET法による比表面積を測定した。結果を表1に示す。
【0080】
(比較例11)
原料粉末として、BaCO
3(比表面積:5m
2/g)、TiO
2(比表面積:10m
2/g)、Ga
2O
3(比表面積:5m
2/g)を用い、還元雰囲気での熱処理を行った以外は、実施例と同様の操作を行った。結果を表1に示す。
【0081】
【表1】
【0082】
以上より、3価イオンの有効イオン半径が所定範囲にあるM元素含有化合物を含む微粒の原料粉末を用い、所定の温度範囲にて、3価イオンを生成する雰囲気中で熱処理を行うことで、六方晶化率が高く、微粒であり粒子径の均一な六方晶系チタン酸バリウム粉末が得られた。
【0083】
一方、3価以外のイオンが形成される場合(比較例1,3,6〜8)、3価イオンが形成される場合であっても有効イオン半径が所定範囲に無い場合(比較例2,4,5)および熱処理温度が低すぎる場合(比較例10)には、六方晶系チタン酸バリウム粉末は得られなかった。また、熱処理温度が高すぎる場合(比較例9)および原料として粗粒の粉末を用いた場合には、六方晶系チタン酸バリウム粉末が生成するものの、粒径が大きくなり、微粒であり粒子径の均一な六方晶系チタン酸バリウム粉末は得られなかった。