(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、一般には、各壁は必要耐圧強度を満たすものの、その厚みの最適値設計の方法が未確立であるため、厚み寸法が大きめに設定される傾向にあり、このことが、軽量化、小型化、および低コスト化を阻害する要因となっている。
【0004】
本発明の課題は、各流路を仕切る複数の壁の厚みが最適値またはその近傍の値に設定された、小型、軽量、且つ低コストの押出管を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の第1観点に係る押出管は、内側の第1流路と外側の多穴流路とを形成するアルミ製の押出管であって、内円筒部と、外円筒部と、複数の梁部とを有している。外円筒部は、内円筒部の外周面を囲んでいる。複数の梁部は、放射方向に延びて内円筒部と外円筒部とをつないでいる。第1流路は、内円筒部に囲まれた空間である。多穴流路は、内円筒部と外円筒部と梁部とに囲まれた空間である。また、
内円筒部の内径Diが3mm〜8mm、
外円筒部の外径Doが15mm〜26mm、
であ
り、
梁部の円周方向の幅a、内円筒部の厚みb、外円筒部の厚みc、内径Di、外径Do、材料の引張強度σs、及び必要耐圧強度Pbによって決まる、無次元パラメータa
*、b
*、c
*は、
a
*=a・σs・62/{(1/2)・(Do―Di)・157・Pb}
b
*=b・σs・62/{(Di/2)・(Do/18)・157・Pb}
c
*=c・σs・62/{(Do/2)・(Di/6)・157・Pb}
で表され、
多穴流路の総数Nが8〜16であ
り、
総数Nによって設定される係数C1、C2、C3、C4と、無次元パラメータa
*、b
*、c
*との関係は、
b
*/(a
*)
C2=C1、
(c
*−C4)/b
*=C3、
C1= 0.17697N+0.72687、
C2= 0.00241N+0.86391、
C3=−0.00960N−0.21260、
C4= 0.00180N+0.36960、
である。
【0006】
この押出管では、上記数式によって、内円筒部、外円筒部、及び梁部それぞれの最適な壁厚が比較的容易に算出されるので、押出管材料の使用量削減が促進される。
【0007】
本発明の第
2観点に係る押出管は、第1観点に係る押出管であって、
引張強度σsが、100N/mm
2〜200N/mm
2、
必要耐圧強度Pbが、30MPa以上、
である。
【0008】
この押出管では、適用可能な引張強度の範囲が広いので、アルミ材料を選択する際、その材料選択の自由度が大きい。
【0009】
本発明の第
3観点に係る押出管は、第1観点
又は第
2観点に係る押出管であって、多穴流路のうち、内円筒部側円周面および外円筒部側円周面とは同心円形状を成している。
【0010】
この押出管では、例えば、多穴流路のうち内円筒部側円周面が内円筒部と同心円形状を成すことによって、内円筒部の厚みbが多穴流路と対峙する領域で一定寸法となるので、耐圧強度が安定する。同様に、多穴流路のうち外円筒部側円周面が外円筒部と同心円形状を成すことによって、外円筒部の厚みcが多穴流路と対峙する領域で一定寸法となるので、耐圧強度が安定する。
【0011】
本発明の第
4観点に係る押出管は、第1観点から第
3観点のいずれかに係る押出管であって、梁部の幅aを2等分する仮想面が内円筒部の中心軸を含み、梁部の幅aを挟む面はその仮想面と平行である。
【0012】
この押出管では、内円筒部から外円筒部にかけて梁部の幅aが同一寸法となるので、梁部の全長(幅aと直交する方向)にわたって耐圧強度が安定する。
【0013】
本発明の第
5観点に係る熱交換器は、第1観点から第
4観点に係る押出管を用いた熱交換器であって、第1流路および多穴流路に冷媒が流通する。
【0014】
この熱交換器は、例えば、空気調和装置の放熱器出口から膨張弁に向う冷媒を冷却する過冷却熱交換器として利用されるので、過冷却熱交換器を搭載する空気調和装置の冷凍能力の向上、および低コスト化に貢献することができる。
【0015】
本発明の第
6観点に係る熱交換器は、第1観点から第
4観点に係る押出管を用いた熱交換器であって、第1流路および多穴流路の一方に水が流通し、他方に冷媒が流通する。
【0016】
この熱交換器は、例えば、ヒートポンプ式給湯機の水―冷媒・熱交換器として利用されるので、ヒートポンプ式給湯機の能力の向上、および低コスト化に貢献することができる。
【0017】
本発明の第
7観点に係る冷凍装置は、第
5観点または第
6観点に係る熱交換器を備えた
冷凍装置である。熱交換器が、過冷却熱交換器として利用されたとき、或いは水―冷媒・熱交換器として利用されたとき、冷凍装置の能力も向上し、コストも低減される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の第1観点に係る押出管では、数式によって、内円筒部、外円筒部、及び梁部それぞれの最適な壁厚が比較的容易に算出されるので、押出管材料の使用量削減が促進される。
【0019】
本発明の第
2観点に係る押出管では、適用可能な引張強度の範囲が広いので、アルミ材料を選択する際、その材料選択の自由度が大きい。
【0020】
本発明の第
3観点に係る押出管では、内円筒部の厚みb及び外円筒部の厚みcが多穴流路と対峙する領域で一定寸法となるので、耐圧強度が安定する。
【0021】
本発明の第
4観点に係る押出管では、内円筒部から外円筒部にかけて梁部の幅aが同一寸法となるので、梁部の全長(幅aと直交する方向)にわたって耐圧強度が安定する。
【0022】
本発明の第
5観点に係る熱交換器は、例えば、空気調和装置の放熱器出口から膨張弁に向う冷媒を冷却する過冷却熱交換器として利用されるので、過冷却熱交換器を搭載する空気調和装置の冷凍能力の向上、及び低コスト化に貢献することができる。
【0023】
本発明の第
6観点に係る熱交換器は、例えば、ヒートポンプ式給湯機の水―冷媒・熱交換器として利用されるので、ヒートポンプ式給湯機の能力向上、及び低コスト化に貢献することができる。
【0024】
本発明の第
7観点に係る冷凍装置では、冷凍装置の能力が向上し、コストも低減される。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。なお、以下の実施形態は、本発明の具体例であって、本発明の技術的範囲を限定するものではない。
【0027】
(1)空気調和装置
(1−1)全体構成
図1は、本発明の一実施形態に係る押出管から成る過冷却熱交換器を使用する冷凍装置の構成図である。
図1において、冷凍装置1は、冷房運転及び暖房運転が可能な空気調和装置であり、室外機3と、室内機5と、室外機3と室内機5とを接続するための液冷媒連絡配管7及びガス冷媒連絡配管9とを備えている。
【0028】
(1−2)室内機
室内機5は、室内熱交換器51と、室内ファン53とを有している。室内熱交換器51では、室内空気との熱交換によって内部を流れる冷媒が蒸発又は放熱し、室内の空気が冷却又は加熱される。室内ファン53は、回転することによって室内空気を取り込んで室内熱交換器51に送風し、室内熱交換器51と室内空気との熱交換を促進する。
【0029】
(1−3)室外機
室外機3は、主に、圧縮機21、四路切換弁23、室外熱交換器25、膨張弁29、液側閉鎖弁37、ガス側閉鎖弁39、アキュームレータ31、バイパス路33、及び過冷却熱交換器83を有している。さらに、室外機3は室外ファン41も有している。
【0030】
(1−3−1)圧縮機、四路切換弁およびアキュームレータ
圧縮機21は、ガス冷媒を吸入して圧縮する。圧縮機21の吸込口手前には、アキュームレータ31が配置されており、圧縮機21に液冷媒が直に吸い込まれないようになっている。
【0031】
四路切換弁23は、冷房運転と暖房運転との切換時に、冷媒の流れの方向を切り換える。冷房運転時、四路切換弁23は、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器25のガス側とを接続するとともに圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁39とを接続する。つまり、
図1の四路切換弁23内の実線で示された状態である。
【0032】
また、暖房運転時、四路切換弁23は、圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁39とを接続するとともに圧縮機21の吸入側と室外熱交換器25のガス側とを接続する。つまり、
図1の四路切換弁23内の点線で示された状態である。
【0033】
(1−3−2)室外熱交換器
室外熱交換器25では、室外空気との熱交換によって内部を流れる冷媒が放熱又は蒸発する。なお、室
外ファン41が、この室外熱交換器25と対峙するように配置されており、回転することによって室外空気を取り込んで室外熱交換器25に送風し、室外熱交換器25と室外空気との熱交換を促進する。
【0034】
(1−3−3)膨張弁
膨張弁29は、冷媒圧力や冷媒流量の調節を行うために、室外熱交換器25と液側閉鎖弁37の間の配管に接続され、冷房運転時及び暖房運転時のいずれにおいても、冷媒を膨張させる機能を有している。
【0035】
(1−3−4)バイパス路と流量調整弁
室外熱交換器25と膨張弁29との間には、冷媒の一部を分岐させてバイパス路33に向わせる分岐点271が設けられている。バイパス路33の途中には、流量調整弁35が接続されている。本実施形態では、流量調整弁35は電動膨張弁である。
【0036】
(1−3−5)閉鎖弁および冷媒連絡配管
液側閉鎖弁37及びガス側閉鎖弁39は、それぞれ、液冷媒連絡配管7及びガス冷媒連絡配管9に接続されている。液冷媒連絡配管7は、室内機5の室内熱交換器51の液側と室外機3の液側閉鎖弁37との間を接続している。ガス冷媒連絡配管9は、室内機5の室内熱交換器51のガス側と室外機3のガス側閉鎖弁39との間を接続している。
【0037】
その結果、冷房運転時に圧縮機21、室外熱交換器25、膨張弁29および室内熱交換器51の順に冷媒が流れ、暖房運転時に圧縮機21、室内熱交換器51、膨張弁29および室外熱交換器25の順に冷媒が流れる冷凍回路11が形成される。
【0038】
(1−3−6)過冷却熱交換器
過冷却熱交換器83は、室外熱交換器25と膨張弁29との間を流れる冷媒(以後、主冷媒とよぶ)と、バイパス路33を流れる冷媒(以後、バイパス冷媒とよぶ)との間で熱交換を行わせる。本実施形態の過冷却熱交換器83は、内側の流路と外側の流路とを形成するアルミ製の押出管から成る2重管型熱交換器である。
【0039】
(2)押出管
図2は、押出管の断面図である。
図2において、押出管81は、内円筒部71と、外円筒部73と、複数の梁部75とを有している。外円筒部73は、内円筒部71の外周面を囲んでいる。また、内円筒部71と外円筒部73とは同心円形状を成している。
【0040】
梁部75は、放射方向に延びて内円筒部71と外円筒部73とをつないでいる。内円筒部71は、第1流路61を形成している。また、内円筒部71と外円筒部73と複数の梁部75とによって、第2流路として多穴流路63が形成されている。
【0041】
本実施形態では、多穴流路63のうち内円筒部71側円周面が内円筒部71と同心円形状を成しており、内円筒部71の厚みbが多穴流路63と対峙する領域で一定寸法となっているので、耐圧強度が安定している。同様に、多穴流路63のうち外円筒部73側円周面が外円筒部73と同心円形状を成しており、外円筒部73の厚みcが多穴流路63と対峙する領域で一定寸法となっているので、耐圧強度が安定している。
【0042】
図1に示すように、室外熱交換器25から膨張弁29に向う冷媒(以後、主冷媒とよぶ)は、過冷却熱交換器83(押出管81)の第1流路61を通る。また、室外熱交換器25を出た冷媒の一部は分岐点271からバイパス路33へ流れる冷媒(以後、バイパス冷媒とよぶ)となり、途中の流量調整弁35で減圧された後、過冷却熱交換器83(押出管81)の多穴流路63を通って圧縮機21の吸い込み側に向う。このため、過冷却熱交換器83内では、多穴流路63を通るバイパス冷媒が蒸発する際に第1流路61を通る主冷媒の熱量の一部を奪うので、主冷媒は冷却されて過冷却冷媒となる。
【0043】
(3)暖房運転と冷房運転
上記のように構成された冷凍装置について、以下、暖房運転および冷房運転それぞれにおける冷媒の流れを説明する。
【0044】
(3−1)暖房運転時の冷媒の流れ
図1において、暖房運転時、四路切換弁23は、圧縮機21の吐出側とガス側閉鎖弁39とを接続するとともに圧縮機21の吸入側と室外熱交換器25のガス側とを接続する。また、膨張弁29は開度を絞る。その結果、室外熱交換器25が冷媒の蒸発器として機能し、かつ、室内熱交換器51が冷媒の放熱器として機能する。
【0045】
このような状態の冷凍回路11において、低圧の冷媒は、圧縮機21に吸入され、高圧に圧縮された後に吐出される。圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁23、ガス側閉鎖弁39及びガス冷媒連絡配管9を通って、室内熱交換器51に入る。室内熱交換器51に入った高圧の冷媒は、そこで室内空気と熱交換を行って放熱する。これにより、室内空気は加熱される。
【0046】
室内熱交換器51で放熱した高圧の冷媒は、液冷媒連絡配管7及び液側閉鎖弁37を通って、膨張弁29に至る。冷媒は、膨張弁29によって低圧に減圧され、その後、過冷却熱交換器83の第1流路61を通って室外熱交換器25に入る。
【0047】
過冷却熱交換器83と室外熱交換器25との間には、バイパス路33に通じる分岐点271が設けられている。但し、暖房運転時は、バイパス路33途中の流量調整弁35が閉じられているので、冷媒がバイパス路33へ流れない。それゆえ、過冷却熱交換器83での熱交換は行われない。
【0048】
室外熱交換器25に入った冷媒は、そこで、室外ファン41によって供給される室外空気と熱交換を行って蒸発する。室外熱交換器25で蒸発した低圧の冷媒は、四路切換弁23を通じて、再び、圧縮機21に吸入される。
【0049】
(3−2)冷房運転時の冷媒の流れ
図1において、冷房運転時、四路切換弁23が、圧縮機21の吐出側と室外熱交換器25のガス側とを接続するとともに圧縮機21の吸入側とガス側閉鎖弁39とを接続する。また、膨張弁29は開度を絞る。その結果、室外熱交換器25が冷媒の放熱器として機能し、且つ、室内熱交換器51が冷媒の蒸発器として機能する。
【0050】
このような状態の冷媒回路において、低圧の冷媒は、圧縮機21に吸入され、高圧に圧縮され吐出される。圧縮機21から吐出された高圧の冷媒は、四路切換弁23を通じて、室外熱交換器25に送られる。
【0051】
室外熱交換器25に送られた高圧の冷媒は、そこで室外空気と熱交換を行って放熱する。室外熱交換器25において放熱した高圧の冷媒は、過冷却熱交換器83の第1流路61を通って膨張弁29に向う。
【0052】
他方、冷媒の一部は過冷却熱交換器83手前の分岐点271からバイパス路33へ流れ、途中の流量調整弁35で減圧された後、過冷却熱交換器83の多穴流路63を通って圧縮機21の吸い込み側に向う。このため、過冷却熱交換器83内では、多穴流路63を通る冷媒が蒸発する際に第1流路61を通る主冷媒の熱量の一部を奪うので、主冷媒は冷却されて過冷却冷媒となる。
【0053】
過冷却冷媒は膨張弁29に送られて低圧に減圧される。膨張弁29で減圧された低圧の冷媒は、液側閉鎖弁37及び液冷媒連絡配管7を通って、室内熱交換器51に入る。
【0054】
室内熱交換器51に入った低圧の冷媒は、そこで室内空気と熱交換を行って蒸発する。これにより、室内空気は冷却される。室内熱交換器51において蒸発した低圧の冷媒は、ガス冷媒連絡配管9、ガス側閉鎖弁39及び四路切換弁23を通って、再び、圧縮機21に吸入される。
【0055】
(4)押出管の設計
本実施形態では、押出管81の軽量化、小型化および低コスト化を図るため、内円筒部71の厚みb、外円筒部73の厚みc、及び梁部75の円周方向の幅aが、第1流路61および多穴流路63それぞれに同一所定圧力を与えたとき同時に破壊する値に設定されている。
【0056】
その根拠は、押出管81の全ての壁が余分な厚みを削減した最適な寸法で形成されているならば、各流路に作用する圧力を壁が破壊するまで増加させたとき、全ての壁がほぼ同一圧力でほぼ同時に破壊する、と推定されているからである。以下、内円筒部71の厚みb、外円筒部73の厚みc、及び梁部75の幅aの設計方法について説明する。
【0057】
(4−1)手順1
先ず、基本形状である内円筒部71の内径Di、外円筒部73の外径Do、および多穴流路63の総数Nを決定する。このとき、内径Diは3mm〜8mm、外径Doは15mm〜26mm、および総数Nは8〜16である。
【0058】
ここでは、Di=6mm、Do=18mm、N=16とする。
【0059】
(4−2)手順2
次に、材料の引張強度σsと、目標耐圧強度を決定する。このとき、引張強度σsは100N/mm
2〜200N/mm
2、必要耐圧強度Pbは30MPa以上である。
【0060】
ここでは、σs=157N/mm
2、Pb=62MPaとする。
【0061】
(4−3)手順3
次に、手順1で決定された内径Di、外径Do、および総数Nから製造可能な範囲内で、梁部75の幅aを任意に決定する。
【0063】
(4−4)手順4
次に、手順3で決定した梁部75の幅a、内径Di、外径Do、引張強度σs、及び必要耐圧強度Pbから、幅aに係る無次元パラメータa
*を次式から算出する。
【0064】
a
*=a・σs・62/{(1/2)・(Do―Di)・157・Pb}
計算の結果、a
*=0.15となる。
【0065】
(4−5)手順5
次に、手順4で算出した無次元パラメータa
*を次式に代入して、厚みb、及び厚みcに係る無次元パラメータb
*、及びc
*を導き出す。
【0066】
b
*/(a
*)
C2=C1、
(c
*−C4)/b
*=C3、
C1= 0.17697N+0.72687、
C2= 0.00241N+0.86391、
C3=−0.00960N−0.21260、
C4= 0.00180N+0.36960、
計算の結果、b
*=0.64、c
*=0.16となる。
【0067】
(4−6)手順6
次に、手順5で導き出した無次元パラメータb
*、及びc
*を次式に代入して、厚みb、及び厚みcを逆算する。
【0068】
b
*=b・σs・62/{(Di/2)・(Do/18)・157・Pb}
c
*=c・σs・62/{(Do/2)・(Di/6)・157・Pb}
計算の結果、b=1.9、c=1.5となる。
【0069】
(4−7)手順4−6の変形例1
なお、上記手順4―6の式に基づいて、無次元パラメータa
*から厚みb、及び厚みcを直接算出する式を作成してもよい。具体的な算出式は、
a
*=a・σs・62/{(1/2)・(Do―Di)・157・Pb}、
b=C1・(a
*)
C2・(Di/2)・(Do/18)・157・Pb/(σs・62)±0.2、
c={C1・C3・(a
*)
C2+C4}・(Do/2)・(Di/6)・157・Pb/(σs・62)±0.2、
C1= 0.17697N+0.72687、
C2= 0.00241N+0.86391、
C3=−0.00960N−0.21260、
C4= 0.00180N+0.36960、
である。
【0070】
(4−8)手順4−6の変形例2
また、材料の引張強度σsおよび目標耐圧強度が一定として、多穴流路63の総数Nごとに、無次元パラメータa
*、b
*、及びc
*の関係を示すグラフを作成し、b
*、及びc
*をそのグラフから求めてもよい。
【0071】
図3は、目標耐圧強度を満たすa、b、及びcに係る無次元パラメータa
*、b
*、及びc
*の関係を示すグラフである。なお、横軸はb
*、縦軸はc
*を示す。
【0072】
前提条件がσs=157N/mm
2、Pb=62MPa、N=16であるとき、FEM解析によれば、目標耐圧強度を満たす幅a、厚みb、及び厚みcそれぞれに係る無次元パラメータa
*、b
*、及びc
*の組合せは、
図3に示す各曲線の上側領域(例えば、a
*=0.1における網掛け部分)にあり、各曲線の変曲点が梁部75、内円筒部71、及び外円筒部73の壁が同時に破壊するような無次元パラメータa
*、b
*、及びc
*の組合せである。変曲点では材料の無駄が無く、多穴流路63の穴断面積が最大であり、熱交換器性能が最大となる。
【0073】
例えば、幅a=0.6のとき、手順4の式によりa
*=0.1が得られる。
図3のa
*=0.1における曲線の変曲点からb
*=0.44、及びc
*=0.24が読み取れる。
【0074】
b
*=0.42、及びc
*=0.24を手順6の式に代入して、厚みb、及び厚みcを逆算する。その結果、b=1.3、c=2.1が得られる。
【0075】
(5)内円筒部の厚み、外円筒部の厚みの許容範囲
梁部75の幅a、内円筒部71の厚みb、及び外円筒部73の厚みcそれぞれの最適値が決定されても、製造された押出管81の幅a、厚みb及び厚みcそれぞれの仕上がり寸法が最適値から外れていることもあり得る。ここでは、梁部75の幅aが一定であるときの内円筒部71の厚みb、及び外円筒部73の厚みcの許容範囲について説明する。
【0076】
図4は、内円筒部の厚みbと外側流路断面積との関係を、梁部の幅a毎に示したグラフである。なお、前提条件は、Di=6mm、Do=18mm、σs=157N/mm
2、Pb=62MPaである。
【0077】
図4において、横軸は内円筒部の厚みb、縦軸は外側流路断面積比率を示している。外側流路断面積比率は、幅aに対する厚みbが最適値であるときの外側流路断面積を1としている。つまり、幅aに対する厚みbおよび厚みcが最適値のとき、外側流路断面積は最大となり、厚みb及び厚みcが最適値からプラス側およびマイナス側のいずれの側に外れても外側流路断面積は減少し、外側流路断面積比率は1未満となる。
【0078】
図4に示すように、幅a=0.5における厚みbの最適値は1.13であり、外側流路断面積比は1である。一般に、流路断面積は最大値から5%の低下までは許容されるので、幅a=0.5における曲線と比率0.95における水平線との交点間が厚みbの許容範囲である。
図4より、幅a=0.5における厚みbの許容範囲は0.95〜1.28(最適値は1.13)である。
【0079】
同様に、幅a=0.7における厚みbの最適値は1.54であり、許容範囲は1.38〜1.71である。また、幅a=0.9における厚みbの最適値は1.93であり、許容範囲は1.77〜2.10である。
【0080】
図5は、梁部の幅a毎に、内円筒部の厚みbおよび外円筒部の厚みcの最適値と許容範囲を示した表である。
図5において、厚みcは、幅aおよび厚みbから算出されており、厚みbが許容範囲の最大値のとき、厚みcは許容範囲の最小値となる。また、最下欄の[a]は、厚みbから逆算した幅aの値である。
【0081】
一例として、(幅a、厚みb、厚みc)=(0.50、1.13、2.34)で最適値設計された押出管81の製造ロッドを検査した結果は、(幅a、厚みb、厚みc)=(0.41〜0.57、0.95〜1.28、2.54〜2.18)であることが望ましい、と言える。
【0082】
図6は、梁部の幅a、内円筒部の厚みbおよび外円筒部の厚みcが同時に破壊するときの応力分布図である。
図6に示すように、梁部75では、内円筒部71から外円筒部73に至る区間のほぼ中央に応力が集中している。本実施形態では、梁部75の幅aを2等分する仮想面Pが内円筒部71の中心軸を含み、梁部75の幅aを挟む面はその仮想面Pと平行である。つまり、内円筒部71から外円筒部73にかけて梁部75の幅を同一寸法としたことによって、内円筒部71から外円筒部73に至る区間のほぼ中央に応力が集中するようになり、梁部75の全長にわたって耐圧強度が安定する。
【0083】
(6)特徴
(6−1)
押出管81では、内円筒部71の厚みb、外円筒部73の厚みc、及び梁部75の円周方向の幅aが、第1流路61および多穴流路63それぞれに同一所定圧力を与えたとき同時に破壊する値に設定されている。その根拠は、押出管81の全ての壁が余分な厚みを削減した最適な寸法で形成されているならば、各流路に作用する圧力を壁が破壊するまで増加させたとき、全ての壁がほぼ同一圧力でほぼ同時に破壊する、と推定されているからである。
【0084】
具体的には、幅a、厚みb、厚みc、内径Di、外径Do、総数N、材料の引張強度σs、及び必要耐圧強度Pbとの関係が、
a
*=a・σs・62/{(1/2)・(Do―Di)・157・Pb}、
b=C1・(a
*)
C2・(Di/2)・(Do/18)・157・Pb/(σs・62)±0.2、
c={C1・C3・(a
*)
C2+C4}・(Do/2)・(Di/6)・157・Pb/(σs・62)±0.2、
C1= 0.17697N+0.72687、
C2= 0.00241N+0.86391、
C3=−0.00960N−0.21260、
C4= 0.00180N+0.36960、
で表される式を満足する値に設定される。
【0085】
それゆえ、押出管81では、耐圧性を満たすために必要な材料の使用量を下限またはその近傍まで削減可能である。その結果、流路断面積の拡大、軽量化、及び小型化が図られる。
【0086】
(6−2)
多穴流路63のうち内円筒部71側円周面が内円筒部71と同心円形状を成しており、内円筒部71の厚みbが多穴流路63に対応する領域で一定寸法となるので、耐圧強度が安定する。同様に、多穴流路63のうち外円筒部73側円周面が外円筒部73と同心円形状を成しており、外円筒部73の厚みcが多穴流路63に対応する領域で一定寸法となるので、耐圧強度が安定する。
【0087】
(6−3)
押出管81では、梁部75の幅aを2等分する仮想面Pが内円筒部71の中心軸を含み、梁部75の幅aを挟む面はその仮想面Pと平行である。つまり、内円筒部71から外円筒部73にかけて梁部75の幅を同一寸法としたことによって、内円筒部71から外円筒部73に至る区間のほぼ中央に応力が集中するようになり、梁部75の全長にわたって耐圧強度が安定する。
【0088】
(6−4)
押出管81から成る熱交換器では、第1流路61を流れる冷媒が、多穴流路63を流れる冷媒によって冷却される。それゆえ、過冷却熱交換器に適している。
【0089】
(6−5)
押出管81を用いた熱交換器では、第1流路61を流れる水が、多穴流路63を流れる冷媒によって加熱される。それゆえ、水―冷媒・熱交換器に適している。