特許第5655479号(P5655479)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655479
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】吸収性物品の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61F 13/15 20060101AFI20141225BHJP
   A61F 13/49 20060101ALI20141225BHJP
   A61F 13/514 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   A41B13/02 S
   A41B13/02 F
【請求項の数】4
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2010-223833(P2010-223833)
(22)【出願日】2010年10月1日
(65)【公開番号】特開2012-75700(P2012-75700A)
(43)【公開日】2012年4月19日
【審査請求日】2013年2月4日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000122298
【氏名又は名称】王子ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】古城 清史
(72)【発明者】
【氏名】飯島 茂美
【審査官】 北村 龍平
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−264232(JP,A)
【文献】 特開2007−075887(JP,A)
【文献】 特開平11−034502(JP,A)
【文献】 特開2007−061440(JP,A)
【文献】 特開2010−215269(JP,A)
【文献】 特開2003−058759(JP,A)
【文献】 特開2007−306944(JP,A)
【文献】 特開2006−096387(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/00
13/15 − 13/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収体を有する吸収性物品の製造方法であって、
その外表面を構成する部材を構成することになる長尺シート状の原部材における着用時に意匠性を害しない腹周りに対して、レーザマーカで印字を施す印字工程を有し、前記印字が、ロットナンバー又は製造日を表すものである吸収性物品の製造方法。
【請求項2】
前記吸収体の裏面に配置され、液不透過性材料からなるバックシートを更に有する吸収性物品の製造方法であって、
前記印字工程が、前記バックシートを構成することになる長尺シート状のバックシート材にレーザマーカで印字を施す工程である請求項1に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項3】
前記吸収体の裏面に配置され、液不透過性材料からなるバックシートと、前記バックシートの外表面側を被覆するカバーシートを更に有する吸収性物品の製造方法であって、
前記印字工程が、前記カバーシートを構成することになる長尺シート状のカバーシート材にレーザマーカで印字を施す工程である請求項1に記載の吸収性物品の製造方法。
【請求項4】
前記吸収体の裏面に配置され、液不透過性材料からなるバックシートと、前記バックシートの外表面側を被覆する外装体を更に有する吸収性物品の製造方法であって、
前記印字工程が、前記外装体を構成することになる長尺シート状の外装体材にレーザマーカで印字を施す工程である請求項1に記載の吸収性物品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は衣類又はおむつの内部に配置して、排泄物を良好に吸収・保持させることが可能な吸収性物品の製造方法に関する。更に詳しくは、その外表面に製造番号等の印字が施された吸収性物品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳幼児用、或いは高齢者・障害者等の成人用の吸収性物品として、尿等の排泄液を吸収する使い捨ておむつ(例えば、テープ型おむつ、パンツ型おむつ)や、尿パッド等が利用されている。
【0003】
従来、尿等の排泄液を吸収する使い捨ておむつ等の吸収性物品に対して、印字(例えば、製造番号)はインクジェット方式により包装フィルムに施していた。このような包装フィルムに製造番号等をインクジェット方式で施す技術は、従来公知の技術であるが、先行技術文献は見当たらない。
【0004】
しかしながら、包装フィルムに製造番号等の印字を施した場合、消費者が吸収性物品を購入して使用する際、包装フィルムを先に捨ててしまうことがある。そのため、品質トラブル等が発生した場合には製造番号の特定を行うことができないという問題がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
かかる問題を対処すべく、製造番号等を直接吸収性物品にインクジェット方式により施す方法が考えられる。しかし、この方法には次のような問題が懸念される。(1)乳幼児の敏感な肌に印字が触れた場合に、肌がかぶれる等の悪影響が生じる可能性がある。(2)使い捨ておむつを着用時に、印字に触れるとかすれて見え難くなる。(3)意匠性を害さないよう小さく印字を施すと、包装フィルムに梱包して輸送する際、吸収性物品同士がこすれて印字が消失する可能性がある。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、印字に触れた場合であっても肌への悪影響が生じ難く、着用時に印字に触れてもかすれ難く、意匠性を害さないように小さく印字を施しても印字の消失の可能性が低い方法で、吸収性物品に直接製造番号等の印字を施す吸収性物品の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、吸収性物品の外表面を構成する部材にレーザマーカで直接印字を施すことによって、上記課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
即ち、本発明によれば、以下に示す吸収性物品の製造方法が提供される。
【0009】
[1]吸収体を有する吸収性物品の製造方法であって、その外表面を構成する部材を構成することになる長尺シート状の原部材における着用時に意匠性を害しない腹周りに対して、レーザマーカで印字を施す印字工程を有し、前記印字が、ロットナンバー又は製造日を表すものである吸収性物品の製造方法。
【0010】
[2]前記吸収体の裏面に配置され、液不透過性材料からなるバックシートを更に有する吸収性物品の製造方法であって、前記印字工程が、前記バックシートを構成することになる長尺シート状のバックシート材にレーザマーカで印字を施す工程である前記[1]に記載の吸収性物品の製造方法。
【0011】
[3]前記吸収体の裏面に配置され、液不透過性材料からなるバックシートと、前記バックシートの外表面側を被覆するカバーシートを更に有する吸収性物品の製造方法であって、前記印字工程が、前記カバーシートを構成することになる長尺シート状のカバーシート材にレーザマーカで印字を施す工程である前記[1]に記載の吸収性物品の製造方法。
【0013】
]前記吸収体の裏面に配置され、液不透過性材料からなるバックシートと、前記バックシートの外表面側を被覆する外装体を更に有する吸収性物品の製造方法であって、前記印字工程が、前記外装体を構成することになる長尺シート状の外装体材にレーザマーカで印字を施す工程である前記[1]に記載の吸収性物品の製造方法。
【発明の効果】
【0021】
本発明の吸収性物品の製造方法によれば、印字に触れた場合であっても肌への悪影響が生じ難く、着用時に印字に触れてもかすれ難く、意匠性を害さないように小さく印字を施しても、印字の消失の可能性が低いため、吸収性物品に直接製造番号等の印字を施すことができるという効果を奏する。
【0022】
本発明の吸収性物品の製造方法によって製造される吸収性物品は、印字に触れた場合であっても肌への悪影響が生じ難く、着用時に印字に触れても印字がかすれ難く、意匠性を害さないように小さく印字を施しても、印字の消失の可能性が低いため、使用者の製造番号の確認等に実益があるという効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1A】本発明の吸収性物品の製造方法によって製造される吸収性物品の一実施形態を模式的に示す斜視図である。
図1B図1Aに示す吸収性物品を展開し、トップシート方向から見た状態を模式的に示す概略平面図である。
図1C図1Bに示す吸収性物品のA−A’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
図2A】本発明の吸収性物品の製造方法によって製造される吸収性物品の他の実施形態を示す概略平面図であり、吸収性物品を展開し、トップシート側から見た状態を模式的に示す概略平面図である。
図2B図2Aに示す吸収性物品のB−B’切断端面を模式的に示す概略端面図である。
図3A】本発明の吸収性物品の製造方法を説明する概略平面図であり、吸収性本体を作製する工程を模式的に示す概略平面図である。
図3B】本発明の吸収性物品の製造方法を説明する概略平面図であり、吸収性物品を製造する工程の一部を模式的に示す概略平面図である。
図4】本発明の吸収性物品の製造方法を説明する概略平面図であり、吸収性物品を製造する工程の一例を模式的に示す概略平面図である。
図5】本発明の吸収性物品の製造方法を説明する概略平面図であり、吸収性物品を製造する工程の他の例を模式的に示す概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明の吸収性物品の製造方法の実施形態として、使い捨ておむつの製造方法を例にして具体的に説明する。但し、本発明はその発明特定事項を備える吸収性物品(例えば、尿パッド等)の製造方法を広く包含するものであり、以下の実施形態に限定されるものではない。
【0025】
[1]定義等:
「被印字部材」とは、吸収性物品の外表面を構成する部材の中で、レーザマーカにより印字が施される部材をいう。また、「バックシート材」とは、吸収性物品のバックシートを構成することになる部材をいう。更に、「トップシート材」とは、吸収性物品のトップシートを構成することになる部材をいう。また、「カバーシート材」とは、吸収性物品のカバーシートを構成することになる部材をいう。更に、「サイドシート材」とは、吸収性物品のサイドシートを構成することになる部材をいう。また、「外装体材」とは、吸収性物品の外装体を構成することになる部材をいう。
【0026】
[2]本発明の吸収性物品の製造方法:
本発明の吸収性物品の製造方法は、吸収体を有する吸収性物品の製造方法であって、被印字部材を構成することになる原部材にレーザマーカで印字を施す印字工程を有する。印字工程が、染料等を付着させて印字を施す工程ではなく、レーザマーカで印字を施す工程であるので、印字に触れた場合であっても肌への悪影響が生じ難く、着用時に印字に触れても印字をかすれ難くすることができる。これは、レーザマーカで印字を施す方法が、レーザ光を照射して熱エネルギーにより対象物を溶かす、焦がす、削る等の変化をさせて印字を施す方法だからである。
【0027】
また、印字は、レーザマーカによって施されるものであり、ロットナンバー又は製造日を表すものである。ロットナンバーや製造日等の印字は、品質トラブル等が生じた際に製造元がトラブルを起こした製品を特定するために必要な情報である。そのため、使用者は品質トラブルが生じない限りはさほど必要な情報ではない。従って、これらの印字を、意匠性を害するように施してしまうと購買意欲の減退をもたらす可能性があるので、意匠性を害することのないよう(例えば、文字の線を細くする)施すことが好ましい。
【0028】
染料等を付着させて印字を施す場合、文字の線を細くすると、かすれ易くなる可能性が高くなる。一方、レーザマーカにより施される印字は、上記したようにレーザ光を照射して熱エネルギーにより対象物を変化させて施されるため、印字がかすれる、或いは消失するという可能性が低くなる。なお、吸収性物品に対して印字を施す文献ではないが、レーザマーカによりプリント基板等に印字を施す文献としては、例えば、特開2006−5187号公報、特開2003−163439号公報、特開2003−145284号公報等がある。本発明の吸収性物品の製造方法においては、上記文献に記載された方法により印字を施すこともできる。
【0029】
レーザマーカの種類は特に制限されるものではなく、例えば、COレーザマーカ、YAG/YVOレーザマーカ、ファイバレーザマーカ等がある。但し、印字が施される部材が基本的に不織布等の燃焼点が低い物質で構成されているため、レーザマーカを使用する場合、出力や照射時間を設定することが必要である。具体的には、出力が5〜30Wで、スキャンスピードが500〜12000mm/Sが好ましい。
【0030】
レーザマーカによる印字は、吸収性物品を構成した後に被印字部材に施すこともできるが、本発明においては、吸収性物品を構成する前に、被印字部材を構成することになる原部材に印字を施すものとする。なお、どちらの方法で行っても、吸収性物品の被印字部材にはレーザマーカにより印字が施されることになる。
【0031】
[2−1]パンツ型使い捨ておむつの製造方法:
本発明の吸収性物品の製造方法の一実施形態として、図1A〜1Cに示すパンツ型使い捨ておむつ1Aの製造方法について説明する。先ず、図1Cに示す、吸収体22と、吸収体22の表面に配置するトップシート18と、吸収体22の裏面に配置するバックシート20と、を備える吸収性本体14を作製する。具体的には、図3Aに示すように、バックシート材120の表面に、親水性シートに包まれた吸収体22を配置し、更にその表面にトップシート材118を配置する。次いで、吸収体22の周縁部をトップシート材118とバックシート材120とで挟み込むように封着することによって吸収性本体14を得る。なお、バックシート材120及びトップシート材118として各長尺シート材を用い、各長尺シート材をローラーから連続的に送出する方法・装置を採用した例を示している。
【0032】
また、図1B図1Cに示すように、立体ギャザー26a(26b)を更に備えたものを製造する場合、次のようにして行うことができる。具体的には、図3Aに示すように、シート材32a(32b)の一方の端部を折り返し、その折り返し部分に、立体ギャザー伸縮材を挟み込んだ状態で貼り合わせることによって、立体ギャザー26a(26b)を得る。なお、図3Aに示す製造方法においては、後で立体ギャザー26a(26b)を構成することになるシート材32a(32b)として各長尺シート材を用い、各長尺シート材をローラーから連続的に送出する方法・装置を採用した例を示している。
【0033】
次に、図3Bに示すように、外装体材116の外表面に、上記で作製した吸収性本体14を配置して貼り付ける。その後、外装体材116の上記で配置した複数の吸収性本体14間に孔を開けて脚周り開口部12を構成する。その後、長手方向に二つ折にし、廃棄テープ9を取り付ける。最後に、パンツ型使い捨ておむつ1Aの前身頃2と後身頃6の側縁に対応する箇所同士をヒートシール等で貼り付けた後で製品カットを行い、吸収性物品1(パンツ型使い捨ておむつ1A)を製造することができる。図3Bに示す製造方法においては、外装体材116として長尺シート材を用い、長尺シート材をローラーから連続的に送出する方法・装置を採用した例を示している。
【0034】
吸収性物品1(パンツ型使い捨ておむつ1A)の外装体16にレーザマーカで印字を施す場合、図3Bに示すように、所定の位置に予めレーザマーカで印字200が施された長尺シート材である外装体材116を用いることで行ってもよい。参考例として、図示はしないが、吸収性物品1(パンツ型使い捨ておむつ1A)を得た後で外装体16にレーザマーカで印字を施す方法がある
【0035】
また、廃棄テープにレーザマーカで印字を施す場合、図示はしないが、予めレーザマーカで印字が施された廃棄テープ9を取り付けた後、吸収性物品1(パンツ型使い捨ておむつ1A)を製造してもよく、吸収性物品1(パンツ型使い捨ておむつ1A)を得た後で廃棄テープ9にレーザマーカで印字を施してもよい。
【0036】
[2−2]テープ型使い捨ておむつの製造方法
本発明の吸収性物品の製造方法の他の実施形態として、図2A及び図2Bに示すテープ型使い捨ておむつ1Bの製造方法について説明する。先ず、図4に示すように、バックシート材120の表面に、親水性シートに包まれた吸収体22を配置する。次に、長手方向の側縁に止着テープ11を貼り付けたサイドシート材132a(132b)を配置したトップシート材118を、吸収体22の表面に配置する。なお、バックシート材120、トップシート材118、及びサイドシート材132a(132b)として各長尺シート材を用い、各長尺シート材をローラーから連続的に送出する方法・装置を採用した例を示している。
【0037】
その後、着用時に股下部に対応する位置を裁断し、製品カットを行って吸収性物品1(テープ型使い捨ておむつ1B)を製造することができる。また、バックシートの外表面をカバーシートで被覆する場合には、図5に示すように、バックシート材120の外表面に対応する面に、カバーシート材124を配置することで製造することができる。
【0038】
吸収性物品1(テープ型使い捨ておむつ1B)のバックシート20に印字を施す場合、図4に示すように、所定の位置に予めレーザマーカで印字200が施された長尺シート材であるバックシート材120を用いることで行ってもよい。参考例として、図示はしないが、吸収性物品1(テープ型使い捨ておむつ1B)を得た後でバックシート20にレーザマーカで印字200を施す方法がある
【0039】
また、吸収性物品1(テープ型使い捨ておむつ1B)のカバーシート24に印字を施す場合、図5に示すように、所定の位置に予めレーザマーカで印字200が施された長尺シート材であるカバーシート材124を用いることで行ってもよい。参考例として、図示はしないが、吸収性物品1(テープ型使い捨ておむつ1B)を得た後、カバーシート24にレーザマーカで印字200を施す方法がある
【0040】
更に、参考例として、止着テープにレーザマーカで印字を施す場合、図示はしないが、予めレーザマーカで印字が施された止着テープ11を取り付けた後、吸収性物品1(テープ型使い捨ておむつ1B)を製造してもよく、吸収性物品1(テープ型使い捨ておむつ1B)を得た後で、止着テープ11にレーザマーカで印字を施してもよい。
【0041】
[3]吸収性物品:
本発明の吸収性物品の製造方法によって製造される吸収性物品は、被印字部材にレーザマーカで印字が施された吸収性物品である。レーザマーカで印字が施されているため、吸収性物品は印字に触れた場合であっても肌への悪影響が生じ難く、着用時に印字に触れても印字がかすれ難く、意匠性を害さないように小さく印字を施しても、印字の消失の可能性が低いため、使用者の製造番号の確認等に実益があるという効果を奏する。
【0042】
被印字部材の具体例としては、バックシート、カバーシート、止着テープ、廃棄テープ、外装体等を挙げることができる。しかしながら、吸収性物品においては、被印字部材はこれらのものに限定されるものではなく、外表面を構成する部材である限りにおいては特段限定されるものではない。
【0043】
吸収性物品の実施形態としては、図1A図1Cに示すようなパンツ型使い捨ておむつ1Aや、図2A及び図2Bに示すようなテープ型使い捨ておむつ1Bがある。しかし、本発明の吸収性物品の製造方法によって製造される吸収性物品(例えば、尿パッド等)を広く包含するものである。以下、各構成要素について説明する。
【0044】
[3−1]吸収体:
「吸収体」は、着用者の尿等を吸収し保持するための部材であり、吸収性材料によって構成される。前記吸収性材料としては、例えばフラッフパルプ、高吸水性ポリマー(Super Absorbent Polymer;以下、「SAP」と記す。)、親水性シート等を挙げることができる。前記フラッフパルプとしては木材パルプや非木材パルプを綿状に解繊したものを、前記SAPとしてはポリアクリル酸ナトリウムを、前記親水性シートとしてはティシュ、吸収紙、親水化処理を行った不織布等を用いることが好ましい。
【0045】
「吸収体」としては、1種又は2種以上の吸収性材料を単層又は複層のマット状に成形したものを用いることが好ましい。中でも、フラッフパルプ100質量部に対して、10〜500質量部のSAPを併用したものが好ましい。この際、SAPはフラッフパルプのマット中に混在させてもよいし、複数のマットの層間に層状に配置して用いてもよい。なお、SAPの脱落を防止し、形状安定性を付与するために、吸収体全体を親水性シートによって被包しておくことが好ましい。図1Cに示す吸収性物品1(パンツ型使い捨ておむつ1A)は、親水性シートである上ティシュ54及び下ティシュ56によって吸収体22全体を被包した例である。また、図2Bに示す吸収性物品1(テープ型使い捨ておむつ1B)は、親水性シート28によって吸収体22全体を被包した例である。
【0046】
「吸収体」は、目的に応じて矩形状、砂時計型等の所望の形状に成形されたものを用いればよい。図1A図1C図2A及び図2Bに示す吸収性物品1は、矩形状の吸収体22を用いた例である。なお、「吸収体」はその表面側をトップシートによって被覆されるとともに、その裏面側をバックシートによって被覆されている。即ち、トップシートとバックシートの層間に配置されている。
【0047】
[3−2]トップシート:
「トップシート」は、吸収体の表面(おむつの装着時に着用者の肌と対向する側の面)を被覆するように配置されるシート状部材である。着用者の尿等を透過させる必要から、その少なくとも一部(全部又は一部)が液透過性材料により構成される。
【0048】
前記液透過性材料としては、織布、不織布、多孔性フィルム等を挙げることができる。中でも、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、脂肪族ポリアミド等の熱可塑性樹脂からなる不織布に親水化処理を施したものを用いることが好ましい。
【0049】
前記不織布としては、エアースルー(カード熱風)、カードエンボス等の製法によって製造された不織布を好適に用いることができる。前記親水化処理は、不織布の原綿に対して界面活性剤を塗布、スプレー、含浸等させることにより行うことができる。
【0050】
トップシートは「少なくとも一部」が液透過性材料によって構成されている。その位置については特に限定されないが、平面視した場合に股下部における吸収体の配置位置と重畳する部分が液透過性材料により構成されていることが好ましい。
【0051】
なお、吸収性物品は、着用者の肌と対向する側の面全てがトップシートによってカバーされている必要はない。例えば、テープ型使い捨ておむつにおいては、おむつの幅方向中央部に液透過性材料からなるトップシートを配置し、おむつの幅方向側縁部(サイドフラップ部分)には通気撥水性材料からなるサイドシートを配置する形態がよく用いられる。この際、前記通気撥水性材料としてはカードエンボス、スパンボンド等の製法により得られた不織布シート、特に防水性が高いSMS、SMMS等の不織布シートを用いることが好ましい。
【0052】
[3−3]バックシート:
バックシートは、吸収体の裏面(おむつの装着時に着用者の肌と背向する側の面)を被覆するように配置されるシート状部材である。バックシートは、着用者の尿がおむつ外部に漏洩してしまうことを防止する必要から、液不透過性材料によって構成される。
【0053】
バックシートの配置位置については特に制限はない。吸収体に吸収された尿の漏れを防止するという観点から、少なくとも吸収体の配置位置をカバーするようにバックシートが配置されていることが好ましい。
【0054】
前記液不透過性材料としては、例えば、ポリエチレン等の樹脂からなる液不透過性フィルム等を挙げることができる。中でも、微多孔性ポリエチレンフィルムを用いることが好ましい。この微多孔性ポリエチレンフィルムは0.1〜数μmの微細な孔が多数形成されたフィルムであり、液不透過性ではあるが透湿性を有する。従って、防漏性を確保しつつおむつ内部の蒸れを防止することができる。
【0055】
吸収性物品が、図2A図2Bに示すようなテープ型使い捨ておむつ1Bである場合、バックシート20にレーザマーカで印字200を施す場合がある。この際、印字箇所は、意匠性を害しないよう、着用時に腹周り近傍となる箇所とする。なお、着用時に腹周り近傍となる箇所として前身頃と後身頃の両方が考えられるが、特に限定されるものではない。
【0056】
[3−4]カバーシート:
また、吸収性物品が、図2A図2Bに示すようなテープ型使い捨ておむつ1Bである場合、バックシート20の外表面側にカバーシート24を貼り合わせる形態がよく用いられる。このカバーシートは、バックシートを補強し、バックシートの手触り(触感)を良好なものとするために用いられる。
【0057】
カバーシートを構成する材料としては、例えば、織布、不織布等を挙げることができる。中でも、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル等の熱可塑性樹脂からなる乾式不織布、湿式不織布を用いることが好ましい。
【0058】
カバーシートに印字を施す場合、意匠性を害しないよう、着用時に腹周り近傍となる箇所(図2Aにおいては、前身頃2の長手方向端部)とする。なお、着用時に腹周り近傍となる箇所として後身頃6の長手方向端部であってもよい。
【0059】
[3−5]外装体:
図1Aに示すように、外装体16は一つのウエスト周り開口部10及び一対の脚周り開口部12a,12bが形成されたパンツ型を呈するシート状の部材である。図1A図1Bに示すように、外装体16はおむつの前身頃2、股下部4及び後身頃6の各部を形成している。
【0060】
図1Aに示すように、外装体16は前身頃2の側縁2a,2b近傍の部分(側縁部)とこれに対応する後身頃6の側縁6a,6b近傍の部分(側縁部)が予め接合されることによって(接合部8)、一つのウエスト周り開口部10及び一対の脚周り開口部12a,12bが形成され、パンツ型を呈するように構成されたものが一般的である。
【0061】
但し、外装体は前記の構成に限定されるものではない。例えば、前身頃と後身頃の対応する側縁部に、係合可能なファスナー部材が付設され、そのファスナー部材同士を相互に係合させることによってパンツ型に構成可能なもの、又は前身頃と後身頃の対応する側縁部同士が着脱可能なファスナー部材によって予め係合されてパンツ型を呈するように構成されたもの等も本明細書にいう「外装体」に含まれるものとする。前記ファスナー部材としては、例えば、メカニカルファスナー等を挙げることができる。
【0062】
外装体の材質は特に限定されないが、おむつ内部の蒸れを防止するべく通気性に優れた素材、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、その他の合成繊維からなる不織布等により構成することが好ましい。
【0063】
外装体は2枚以上の不織布を貼り合わせて構成されることが多い。例えば、図1A図1Cに示す吸収性物品1(パンツ型使い捨ておむつ1A)では、外装体16を2枚の不織布(インナーシート16a、アウターシート16b)から構成した例である。
【0064】
後述する伸縮材は、外装体に対して、ホットメルト接着剤等の流動性の高い接着剤を用いた接着、ヒートシールをはじめとする熱や超音波等による溶着により固定される。図1A図1Cに示す吸収性物品1(パンツ型使い捨ておむつ1A)においては、外装体16のインナーシート16aとアウターシート16bとの層間に脚周り伸縮材40、ウエスト周り伸縮材42及び腹周り伸縮材44を挟み込んで固定している。
【0065】
外装体に印字を施す場合、意匠性を害しないよう、着用時に腹周り近傍となる箇所(図1Aにおいては、前身頃2の腹部)とする。なお、着用時に腹周り近傍となる箇所として後身頃6の腹部であってもよい。
【0066】
[3−6]止着テープ:
テープ型使い捨ておむつの場合、後身頃の左右の各側縁から延出するように配置された、前身頃と後身頃とを固定するための止着テープを備えたものが好適に用いられる。止着テープは、テープ状基材と、テープ状基材の先端部に付設された止着材とによって構成されるものである。
【0067】
止着テープの止着材は特に限定されない。但し、止着力が高く、複数回の脱着を行っても止着力が低下し難いメカニカルファスナー(面状ファスナー)を用いることが好ましい。例えば、止着テープの先端近傍にメカニカルファスナーのフック材を付設する一方、前身頃にメカニカルファスナーのループ材からなるフロントパッチを付設する形態が多く用いられる。
【0068】
止着テープの数は特に限定されず、着用者の体型(具体的には、ウエスト周り、脚周り等)の寸法に合わせて、適当な数の止着テープを付設すればよい。一般的には、乳幼児用の使い捨ておむつであれば一対(左右1個ずつ)、成人用の使い捨ておむつであれば二対(左右2個ずつ)が付設される。
【0069】
[3−7]廃棄テープ:
パンツ型使い捨ておむつの場合、おむつを廃棄する際に排泄物が付着している面を内側に、即ち、汚れた部分が出ないように折りたたんで固定するために使用するための廃棄テープを備えたものが好適に用いられる。廃棄テープは、テープ状基材と、テープ状基材の先端部に付設された止着材とによって構成されるものである。
【0070】
廃棄テープの止着材は特に限定されないが、繰り返し使用するものではないので、コストの観点から粘着剤の粘着力を利用した粘着ファスナーが好適に用いられる。なお、廃棄テープの数は特に限定されない。
【0071】
止着テープや廃棄テープに印字を施す場合、通常、意匠性を害さないと考えられるので、止着材が付設されていないテープ状基材の外表面に施す。但し、止着テープや廃棄テープは使用時等によく触れる部位であるので、かすれ難くするためにレーザマーカで印字を施すことが重要である。
【0072】
[3−8]各種伸縮材:
収性物品の実施形態が使い捨ておむつである場合には、ウエスト周り伸縮材、脚周り伸縮材、腹周り伸縮材等の伸縮材を配置することが好ましい。
【0073】
ウエスト周り伸縮材は、ウエスト周り開口部に沿って配置される伸縮材である。ウエスト周り伸縮材を配置することによって、ウエスト開口部に伸縮性に富むギャザー(ウエストギャザー)を形成することができる。このウエストギャザーにより、ウエスト周りに隙間が形成され難くなり、ウエスト周りからの尿漏れを防止することができる他、着用者へのおむつのフィット性が良好となり、おむつのずり下がりが防止される。
【0074】
脚周り伸縮材は、脚周りギャザーを形成するための伸縮材である。パンツ型使い捨ておむつの場合、図1A及び図1Bに示すように脚周り開口部12の外縁に沿って線状の脚周り伸縮材40を複数本、曲線的に配置する形態がよく用いられる。この形態においては、脚周り伸縮材40が股下部4の中央を横断しないように配置することが好ましい。股下部4の中央に脚周り伸縮材40の収縮力を作用させないことで吸収体22のヨレを防止し、股下部4における吸収体22のフィット性を向上させることができる。一方、テープ型使い捨ておむつの場合、少なくとも股下部に左右複数対の線状伸縮材を平行する直線状に配置する形態がよく用いられる。
【0075】
腹周り伸縮材は、パンツ型使い捨ておむつにおいてタミーギャザーを形成するための伸縮材である。図1A及び図1Bに示すように着用者の腹周りに相当する部分に線状の腹周り伸縮材44を複数本、直線的に配置する形態がよく用いられる。この形態においても脚周り伸縮材の場合と同様の理由から、腹周り伸縮材44が吸収体22の配置部位を横断しないように配置することが好ましい。
【0076】
伸縮材としては、天然ゴムからなる平ゴムや合成ゴム(ウレタンゴム等)の弾性糸からなる糸ゴムの他、伸縮性ネット、伸縮性フィルム、伸縮性フォーム(ウレタンフォーム等)等を好適に用いることができる。
【0077】
伸縮材は、着用者に対して過度の締め付け力を作用させることなく、十分な伸縮力を作用させるため、120〜400%の伸長状態で固定することが好ましく、200〜300%の伸長状態で固定することが好ましい。伸縮材は、例えば、ホットメルト接着剤、その他の流動性の高い接着剤を用いた接着、ヒートシールをはじめとする熱や超音波等による溶着によって固定することができる。
【0078】
パンツ型使い捨ておむつの場合、脚周り伸縮材40、腹周り伸縮材44とも、例えば外装体16のインナーシート16aとアウターシート16bの層間に、伸張状態の線状伸縮材を挟み込むように固定する等の方法で配置することができる。図1A及び図1Bに示す例では脚周り伸縮材40及び腹周り伸縮材44を外装体16のインナーシート16aとアウターシート16bの層間に、伸張状態の線状伸縮材を挟み込むように固定する方法で配置している。
【0079】
一方、テープ型使い捨ておむつの場合、脚周り伸縮材は、例えばサイドシートとカバーシートの層間に、伸張状態の線状伸縮材を挟み込むように固定する等の方法で、ウエスト周り伸縮材は、例えばトップシートとカバーシートの層間に、伸張状態の面状伸縮材(伸縮性フォーム等)を挟み込むように固定する等の方法で配置することができる。
【0080】
[3−9]立体ギャザー:
図1B及び図1Cに示すパンツ型使い捨ておむつ1Aの場合、撥水性シート32からなり、吸収体22の両側に配置された左右一対の立体ギャザー26(26a,26b)を備えていることが好ましい。
【0081】
立体ギャザーは、従来のパンツ型使い捨ておむつに準じて構成することができる。図1Cに示すように撥水性シート32の層間に伸張状態の立体ギャザー伸縮材36を挟み込んで固定したものを挙げることができる。この際、撥水性シートとしては、サイドシートと同様の材料を好適に用いることができる。
【0082】
パンツ型使い捨ておむつの場合、図1Cに示すように吸収性本体14に対して立体ギャザー形成用の撥水性シート32を別途付設し、吸収性本体14と一体的に立体ギャザー26を構成する形態が多く用いられる。一方、テープ型使い捨ておむつの場合、おむつを構成するシート材(例えば撥水性不織布からなるサイドシート等)の一部によって立体ギャザーを構成する形態が多く用いられる。
【0083】
なお、図1B及び図1Cに示すように、吸収性物品1には立体ギャザー伸縮材36に加えて立体ギャザー26の両側縁に側縁伸縮材38を配置している。このように側縁伸縮材を配置すると、着用中のおむつにおいて、後に記載する吸収性本体の両側縁が吸収体よりも立ち上がった形態になり易い。このような形態は、排尿後に尿が吸収性本体の幅方向中央部(即ち吸収体)に集まり易くなり、尿漏れを発生し難くすることができる。
【0084】
[3−10]吸収性本体:
パンツ型使い捨ておむつの場合、図1Cに示すように吸収体22、トップシート18及びバックシート20として、これら部材が一体的に構成されたパッド状の部材(本明細書中、この部材を「吸収性本体」と称する。)を用いる場合がある。図1Cに示す使い捨ておむつ1Aには吸収体22の周縁部においてトップシート18とバックシート20が貼り合わされることによって、トップシート18とバックシート20の層間に吸収体22が内包された形態の吸収性本体14が用いられている。この吸収性本体14は吸収体22、トップシート18及びバックシート20の他、前述した立体ギャザー26も一体的に構成された吸収性本体の例である。
【産業上の利用可能性】
【0085】
本発明の吸収性物品の製造方法は、乳幼児用、或いは介護を必要とする高齢者や障害者等の成人用のおむつを得るための方法として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0086】
1:吸収性物品、1A:パンツ型使い捨ておむつ、1B:テープ型使い捨ておむつ、2:前身頃、2a,2b:側縁、4:股下部、6:後身頃、6a,6b:側縁、8:接合部、9:廃棄テープ、10:ウエスト周り開口部、11:止着テープ、12,12a,12b:脚周り開口部、13:フロントパッチ、14:吸収性本体、16:外装体、16a:インナーシート、16b:アウターシート、18:トップシート、19:サイドシート、20:バックシート、22:吸収体、24:カバーシート、26,26a,26b:立体ギャザー、28:親水性シート、32,32a,32b:シート材、36:立体ギャザー伸縮材、38:側縁伸縮材、40:脚周り伸縮材、42:腹周り伸縮材、44:ウエスト周り伸縮材、46:メカニカルファスナー、46a:フック材、46b:ループ材、54:上ティッシュ、56:下ティッシュ、116:外装体材:、116a:インナーシート材、116b:アウターシート材、118:トップシート材、120:バックシート材、124:カバーシート材、132a:サイドシート材、132b:サイドシート材、200:印字。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3A
図3B
図4
図5