特許第5655669号(P5655669)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5655669半導体層の製造方法、及び、太陽電池の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655669
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】半導体層の製造方法、及び、太陽電池の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 31/0749 20120101AFI20141225BHJP
   H01L 31/18 20060101ALI20141225BHJP
   H01L 21/368 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   H01L31/06 460
   H01L31/04 420
   H01L21/368 Z
【請求項の数】4
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2011-80269(P2011-80269)
(22)【出願日】2011年3月31日
(65)【公開番号】特開2012-216647(P2012-216647A)
(43)【公開日】2012年11月8日
【審査請求日】2013年11月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003067
【氏名又は名称】TDK株式会社
(72)【発明者】
【氏名】栗原 雅人
(72)【発明者】
【氏名】フィリップ デール
(72)【発明者】
【氏名】マーク シュタイシェン
【審査官】 井上 徹
(56)【参考文献】
【文献】 特表2007−529907(JP,A)
【文献】 特表2010−535939(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 31/02−31/078、31/18−31/20、
51/42−51/48
H02S 10/00−50/15
H01L 21/20−21/31、21/363−21/368
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の上に、Cu層、In層、及び、Ga層を含む積層体を形成する積層体形成工程と、
前記積層体をCu(In,Ga1−x(Se,S1−y層にする半導体層形成工程と、を備え、
前記積層体形成工程では、前記Ga層を、ガリウム塩を溶解したイオン液体中での電解
析出により形成し、
前記イオン液体のカチオンは、(1)式又は(2)式で表される半導体層の製造方法。
ここで、0<x<1、0<y≦1、0<i,jである。
【化1】

〔式中、R〜Rは互いに同一または異種の炭素数1〜5のアルキル基を示し、これらR、RおよびRのいずれか2個の基が環を形成していても構わない。R’はメチル基またはエチル基を示す。〕
【請求項2】
基板の上に、Cu層、In層、及び、Ga層を含む積層体を形成する積層体形成工程と、
前記積層体をCu(In,Ga1−x(Se,S1−y層にする半導体層形成工程と、を備え、
前記積層体形成工程では、前記Ga層を、ガリウム塩を溶解したイオン液体中での電解析出により形成し、
前記イオン液体は、()式で表される半導体層の製造方法。
ここで、0<x<1、0<y≦1、0<i,jである。
【化2】
【請求項3】
前記ガリウム塩を溶解したイオン液体において、前記イオン液体のモル数を[IL]とし、前記ガリウムのモル数を[Ga]としたときに、0.0002≦[Ga]/[IL]≦0.1である請求項1〜2のいずれか一項記載の半導体層の製造方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項記載の半導体層の製造方法を含む、太陽電池の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体層の製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、太陽電池の半導体層として、CIGS層やCIGSS層と呼ばれる、Cu(In,Ga1−x(Se,S1−y層が知られている。ここで、0<x<1、0<y≦1、0<i,jである。そして、このような半導体層の製造方法として、例えば、Cu層,In層、Ga層をこの順に電解析出により形成し、その後、この積層層を加熱により合金化した後に、セレン化水素、硫化水素等によりセレン化や硫化することが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特表2009−515343号公報
【非特許文献1】Thin Solid Films 515(2007)5899
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の方法ではこのような半導体層からのリーク電流を十分に抑制できなかった。本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、Cu(In,Ga1−x(Se,S1−y層からのリーク電流を抑制できる半導体層の製造方法等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者等が鋭意検討したところ、Gaの電析を、ガリウム塩含有水溶液中でなく、ガリウム塩を含むイオン液体中で行なうと、良好なGa膜が得られ、これにより、このGa層から得られる半導体層のリーク電流を抑制できることを見出し、本発明に想到した。
【0006】
本発明に係る半導体層の製造方法は、基板上に、Cu層、In層、及び、Ga層を含む積層体を形成する積層体形成工程と、この積層体をCu(In、Ga1−x(Se,S1−y層にする半導体層形成工程と、を備える。そして、積層体形成工程では、Ga層を、ガリウム塩を溶解したイオン液体中での電解析出により形成する。ここで、0<x<1、0<y≦1、0<i,jである。
【0007】
本発明によれば、この半導体層からのリーク電流を抑制することができる。この理由は明らかでないが、本発明者等は以下のように考えている。Gaの標準電極電位は約−0.52Vときわめて低く、電析電圧を十分に低くする必要がある。このため、ガリウム塩含有水溶液からGaを電析すると水素が多量に発生する。そして、この水素発生は、下層にIn層やCu層がある場合にはこれらの剥離を起こしたり、また、泡の付着によるGa析出障害などを引き起こしたりし、均一な構造のGa層が得られにくく、これによって半導体層の構造の均一性が劣化して、リーク電流が増加するものと考えられる。これに対して、本発明では、イオン液体中で電解析出を行なうので水素が発生し難くGa層の構造の均一性を高められ、これによって半導体層の構造の均一性も高められるため、半導体層からのリーク電流が抑制されるものと考えられる。
【0008】
ここで、イオン液体のカチオンは、(1)式又は(2)式で表されることが好ましい。
【化1】

〔式中、R〜Rは互いに同一または異種の炭素数1〜5のアルキル基を示し、これらR、RおよびRのいずれか2個の基が環を形成していても構わない。R’はメチル基またはエチル基を示す。〕
【0009】
これによれば、これらのカチオンがさらにGa層の平滑性を向上させる効果を奏する。
【0010】
また、イオン液体は、(3)式で表されることも好ましい。
【化2】
【0011】
さらに、ガリウム塩を溶解したイオン液体において、イオン液体のモル数を[IL]とし、ガリウムのモル数を[Ga]としたときに、0.0002≦[Ga]/[IL]≦0.1であることが好ましい。
【0012】
また、本発明に係る太陽電池の製造方法は、上述の半導体層の製造方法を含む。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、半導体層からのリーク電流を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】実施形態に係る太陽電池の断面図である。
図2】太陽電池の製造方法を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な一実施形態について詳細に説明する。なお、図面において、同一又は同等の要素については同一の符号を付す。また、上下左右の位置関係は図面に示す通りである。また、説明が重複する場合にはその説明を省略する。
【0016】
(太陽電池の製造方法)
ここでは、太陽電池の製造方法を例に、半導体層の製造方法について説明する。
【0017】
図1に示すように、本実施形態に係る太陽電池2は、基材4と、基材4上に形成された裏面電極層6と、裏面電極層6上に形成されたp型半導体層(光吸収層)8と、p型半導体層8上に形成されたn型半導体層(バッファ層)10と、n型半導体層10上に形成された半絶縁層12と、半絶縁層12上に形成された窓層14(透明導電層)と、窓層14上に形成された上部電極16(取り出し電極)と、を備える薄層型太陽電池である。ここで、p型半導体層8が、CIGS層、CIGSS層と呼ばれる、Cu(In,Ga1−x(Se,S1−y層である。ここで、0<x<1、0<y≦1、0<i,jである。
【0018】
本実施形態では、まず、基材4を用意する。基材4は特に限定されず、例えば、ソーダライムガラス(青板ガラス)等が挙げられる。
【0019】
続いて、基材4上に裏面電極層6を形成する。裏面電極層6は、導電性を有すれば特に限定されないが、Moから構成される金属層が好ましい。裏面電極層6の形成方法としては、例えばMo等の原料ターゲットを用いたスパッタリング等が挙げられる。
【0020】
(積層体形成工程)
続いて、図2に示すように、基板としての裏面電極層6上に、Cu層8a、In層8b、Ga層8cからなる積層体8pを形成する。
【0021】
(Cu層8a、In層8bの形成)
ここでは、Cu層8a、及び、In層8bを電解析出法により行うことが好ましい。これにより、Cu,Inの組成を正確に制御でき、大面積製膜が容易であり、低コスト化が可能となる、等の効果がある。なお、Cu層8a、In層8bを、スパッタリング法や、蒸着法等により形成しても実施は可能である。
【0022】
Cu層8aを電解析出法により形成するには、Cu塩を含む水溶液中で電解析出を行えばよい。Cu塩としては、CuCl、CuSO、Cu(NO、Cu(CHCOO)が挙げられる。
【0023】
In層8bを電解析出法により形成するには、In塩を含む水溶液中で電解析出を行えばよい。In塩としては、InCl、InBr、InI、In(SO、In(NO、In(NHSOが挙げられる。
【0024】
これらの水溶液中には、平坦化剤等の添加剤をくわえることが好ましい。平坦化剤としては、ソルビトール、グルコース、スルファミン酸、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0025】
これらの水溶液は、酸性浴でも、アルカリ性浴でもよいが、In層の場合は、浴のIn3+の安定性からpH2.5以下の酸性浴が好ましい。
【0026】
Cu層8a、In層8bを電解析出法により行う場合には、Ga層8cを形成する前に、Cu層8a、In層8bを電解析出することが好ましい。この理由は、Cu,In、Gaの中で、Gaが最も標準電極電位が低いからである。Cu層8a、In層8bの順番は特に限定されないが、Cu,Inの標準電極電位の観点から、裏面電極層6側から順に、Cu層8a、In層8bとすることが好ましい。Cu層8a、In層8bを電解析出法により行なわない場合には、Ga層8cを形成した後に、Cu層8a、In層8bを形成してもよく、Cu層8aとIn層8bとの間にGa層8cを形成してもよい。
【0027】
(Ga層の形成)
Ga層は、ガリウム塩を溶解したイオン液体中で電解析出することにより形成する。
【0028】
(イオン液体)
イオン液体は、室温、例えば、15℃で液体として存在する塩であれば特に限定されない。なかでも、アンモニウム塩、スルホニウム塩、オキソニウム塩、ホスホニウム塩等のオニウム塩が好ましい。特に、脂肪族オニウム塩、脂環式オニウム塩が好ましい。
【0029】
イオン液体のカチオンは、(1)式又は(2)式で表される4級アンモニウムイオンであることが好ましい。
【化3】

〔式中、R〜Rは互いに同一または異種の炭素数1〜5のアルキル基を示し、これらR、RおよびRのいずれか2個の基が環を形成していても構わない。R’はメチル基またはエチル基を示す。〕
【0030】
これによれば、(1)式及び(2)式のカチオンの存在によりGa層の平滑性がより一層向上する効果を奏する。この理由として、このようなある程度の長さの鎖を有するカチオンは、水溶液中の電解析出における平滑剤のような機能を奏するものと考えられる。
【0031】
イオン液体のカチオンとしては、具体的には、(CH)(C(CHOC)N、(4)式で表されるカチオン等が挙げられる。
【化4】
【0032】
アニオンも特に限定されず、たとえば、BF、PF、ClO、CFSO、CFCO、(CFSO、Cl、Br、I、(CPF,N(SOCF,N(CN),C(CN),SCN,CHSO,CSO,CSO,C13SO,C17SO,HSO,C11SO,B(C,(CHPO,(CPO,CHSO,CHSO,CSO等が挙げられる。
【0033】
融点、熱的、電気化学的安定性、粘度の点から、アニオンは(CFSOが好ましい。
【0034】
イオン液体は、理論分解電圧が1.23V以上であることが好ましい。また、イオン液体は、複数種のものを混合して用いてもよい。
【0035】
(ガリウム塩)
ガリウム塩も特に限定されないが、たとえば、GaCl、GaBr、GaI、Ga(SOなどが挙げられる。
【0036】
イオン液体中のガリウム塩の濃度も特に限定されないが、イオン液体のモル数を[IL]とし、ガリウムのモル数を[Ga]としたときに、0.0002≦[Ga]/[IL]≦0.1とすることが好ましい。ガリウム成分が少なすぎると、必要量電析するのに長時間要し、ガリウム成分が多すぎるとガリウム塩含有イオン液体の粘度が上昇し、電析浴として使用が困難となる。
【0037】
なお、イオン液体には、ガリウム塩、InCl,InBr,InI,In(SOなどのIn塩、CuCl,CuSOなどの銅塩やHSeOのようなセレン源を共溶解させてもよい。また、添加剤等を含んでいてもよい。
【0038】
Cu層8a、In層8b、Ga層8cの厚みは、後述の半導体層形成工程で作成するCu(In,Ga1−x(Se,S1−yの各原子のモル比に応じて適宜調節すればよい。積層体8pの厚みも特に限定されないが、例えば600nm〜1500nmとすることができる。
【0039】
電解析出に用いる装置は特に限定されず、析出面を陰極とし、必要に応じて参照電極を利用して、陰極に対して各イオンの電解析出に必要な負電圧をかければよい。
【0040】
(半導体層形成工程)
続いて、積層体8pを、Cu(In,Ga1−x(Se,S1−y層にする。この方法は、公知の方法を利用できる。例えば、積層体8pを加熱して合金化すると共に、セレン化、必要に応じて硫化すればよい。
【0041】
合金化は、たとえば、積層体8pを150〜425℃に加熱すればよく、保持時間は5分〜3時間程度とすればよく、保持後、自然冷却等すればよい。この工程は、アニーリングとも呼ばれる。
【0042】
また、セレン化は、積層体を、Seを含む雰囲気中で熱処理すればよい。Se源としては、Se蒸気、セレン化水素等が挙げられる。
【0043】
また、硫化は、積層体を、Sを含む雰囲気中で熱処理すればよい。S源としては、S蒸気、硫化水素等が挙げられる。
【0044】
セレン化や硫化の熱処理温度は特に限定されないが、例えば、450〜600℃である。
【0045】
合金化と、セレン化及び硫化は同時に行なってもよい。すなわち、合金化工程における雰囲気ガス中に、セレン源や硫黄源を添加することにより、積層体からのCu(In,Ga1−x(Se,S1−y層の形成を容易に行なえる。勿論、積層体を合金化した後に、セレン化や硫化を行なってもよい。
【0046】
また、セレン化や硫化は、気相反応でなく固相反応により行ってもよい。具体的には、セレンや硫黄含む固体層を、積層体8p上に積層し、その後、加熱による合金化を行ってもよい。
【0047】
Cu(In,Ga1−x(Se,S1−y層としては、典型的には、i=1、j=2である化合物、i=3、j=5である化合物が挙げられる。Cuのモル比は1以下でも良く、例えば、0.7_〜0.99であることができる。
【0048】
また、InとGaとのモル比や、SeとSとのモル比を調整することにより、禁制帯幅Egを適宜制御することができる。
【0049】
このようにして、p型半導体層8としての、Cu(In,Ga1−x(Se,S1−y層が形成される。
【0050】
(n型半導体層の形成)
続いて、p型半導体層8上に、バッファ層としてのn型半導体層10を形成する。n型半導体層10としては、例えば、CdS層、Zn(S,O,OH)層、ZnMgO層又はZn(O,S1−x)層(xは1未満の正の実数)等が挙げられる。CdS層及びZn(S,O,OH)層は、化学溶液成長法(Chemical Bath Deposition)により形成することができる。ZnMgO層は、MOCVD(Metal Organic Chemical Vapor Deposition)等の化学蒸着法又はスパッタリングにより形成することができる。Zn(O,S1−x)層はALD法(Atomic layer deposition)により形成することができる。
【0051】
(半絶縁層、窓層、上部電極の形成)
続いて、n型半導体層10上に半絶縁層12を形成し、半絶縁層12上に窓層14を形成し、窓層14上に上部電極16形成する。これにより、薄膜型太陽電池2が得られる。なお、窓層14上にMgFから構成される反射防止層を形成してもよい。
【0052】
半絶縁層12としては、例えばZnO層等が挙げられる。窓層14としては、例えばZnO:B又はZnO:Al等が挙げられる。上部電極16は例えばAl又はNi等の金属から構成される。半絶縁層12、窓層14及び上部電極16は、例えばスパッタリング又はMOCVD等によって形成することができる。
【0053】
これによって、太陽電池2が完成する。
【0054】
本実施形態によれば、n型半導体層からのリーク電流を従来に比べて抑制することができる。この理由は明らかでないが、本発明者等は以下のように考えている。Gaの標準電極電位は約−0.52Vときわめて低く、Gaを電解析出させるためには電極電圧を十分に低くする必要がある。このため、ガリウム塩含有水溶液からGaを電析すると水素が多量に発生することとなる。そして、この水素のために均一な構造(例えば、厚み等)のGa層が得られにくく(厚みムラやピンホール等が発生しやすい)、これによって半導体層の構造の均一性が劣化し、リーク電流が増大するものと考えられる。これに対して、本発明では、イオン液体中で電解析出を行なうので水素が発生し難く、Ga層の構造の均一性を高められるため、均一性に優れたn型半導体層が得られ、リーク電流が低減されるものと考えられる。これにより、太陽電池の出力を増大させることができる。
【0055】
本実施形態は上記実施形態に限定されず様々な変形態様が可能である。
例えば、Cu層やIn層を、これらの金属塩を溶解したイオン液体中でそれぞれ行なってもよい。太陽電池の構成も上記構成に限定されない。
【実施例】
【0056】
(実施例1)
ソーダライムガラス基板上に、スパッタ法により、1×1cmの大きさのMo層を厚み1μm形成した。
【0057】
(Cu層の電解析出)
3.0MのNaOH,0.2Mのソルビトール,0.10MのCuClを含む水溶液を電解液として、電解析出により、Mo層上に240nmのCu膜を形成した。なお、電解析出の対極としてはPt板を用い、参照極にはAg/AgCl/飽和KCl溶液の構成の水溶液用電極を用い、正負極間距離は1.5cmとし、室温とし、参照極に対する陰極の電位を−1.14Vとし、通電量を0.60Cとした。その後、水洗し乾燥した。
【0058】
(In層の電解析出)
2.0MのNaOH,2.3Mのスルファミン酸,0.25MのInClを含む水溶液を電解液として、電解析出により、Cu層上に375nmのIn膜を形成した。なお、電解析出の対極としてはPt板を用い、参照極にはAg/AgCl/飽和KCl溶液の構成の水溶液用電極を用い、正負極間距離は1.5cmとし、室温とし、参照極に対する陰極の電位を−1.00Vとし、通電量を0.65Cとした。その後、水洗し乾燥した。
【0059】
(Ga層の電解析出)
(3)式のイオン液体(1−buthyl−methylpyrrolidium bis(trifuluoromethylsulfonyl)imideに、GaClを溶解させた液を電解液とした。電解液の濃度は、イオン液体のモル数を[IL]とし、ガリウムのモル数を[Ga]としたときに、[Ga]/[IL]=0.01とした。この液を電解液として、電解析出により、In層上に120nmのGa膜を形成した。なお、電解析出の対極としてはPt板を用い、参照極にはAg線型非水溶媒用電極を用い、正負極間距離は1.5cmとし、室温とし、参照極に対する陰極の電位を−2.10Vとし、通電量を0.28Cとした。その後、洗浄し乾燥した。これにより、3層構造の積層体が完成した。
【化5】
【0060】
(合金化及びセレン化)
10mbarの10%水素含有アルゴンガス雰囲気中電気炉で、セレン源としてセレン粉末とともに、密封状態で積層体を550℃に加熱し、30分間保持し、その後自然冷却した。セレン粉末の量は、積層体の完全セレン化に必要な当量の100倍とした。なお、加熱時にセレン粉末は完全に気化した。これにより、p型半導体としてのCIGS層であるCu0.8(In0.7、Ga0.3)Se層を得た。
【0061】
(実施例2)
イオン液体にN,N−Dimethyl−N−methyl−N−(2−methoxyethyl)ammonium bis(trifuluoromethylsulfonyl)imideを用いた以外は、実施例1と同様にしてCu0.8(In0.7、Ga0.3)Se層を得た。
【0062】
(比較例1)
Ga層の電解析出を、Ga塩含有イオン液体の代わりに、0.05MのGaCl,1MのKSCNを溶解した水溶液中で、3.20Cの通電量で行なう以外は実施例1と同様とした。なお、実施例1に比べて通電量を増やしたのは、電流の内の多くの部分が水素発生に消耗される本条件下でも、実施例1と同じ量のGaを析出させるためである。
【0063】
(評価)
得られた積層体、CIGS層を、実体顕微鏡にて倍率25倍で、走査型電子顕微鏡にて倍率5000倍で観察しピンホールの有無や形態を調べた。さらに、CIGS層を倍率5000倍のEDXにより観察しCu,In,Ga,Seの分布を調べた。これらの観察は5箇所で行った。
【0064】
(光応答)
0.2MのEu(NO水溶液中で、CIGS層を陰極、Ptスパイラル電極を対極、Ag/AgCl電極を参照極とし、陰極の電位を−0.3Vに設定して、光照射時/非照射時に、対極とn型半導体(陰極)との間に流れる電流の密度を測定した。
【0065】
(結果)
(i)電析時観察およびモルフォロジー
実施例1、2では、電解析出時にはガスの発生は認められなかった。顕微鏡観察によれば、積層体、CIGS膜ともに一様に平滑な面であり、ピンホールも認められなかった。EDXの結果によれば、それぞれCIGS膜は一様に均一な組成分布を有し、Ga/(In+Ga)のモル組成比は0.30となった。
【0066】
比較例1では、電析時には水素ガスの発生が認められた。顕微鏡観察によればプリカーサ膜に直径10μm以上のピンホールが平均18個認められた。EDX観察によれば、積層体の表面にGaの多いところと、少ないところがあり、ムラが生じていた。顕微鏡観察によればCIGS層には、ピンホールが平均25個認められ、EDXによればGa/(In+Ga)の組成比は0.30であった。水素発生に通電電気量の多くが費やされたことが確認できた。
【0067】
(ii)光応答
実施例1では、照射時の電流密度が−0.300mA/cm,非照射時の電流密度が−0.005mA/cmであった。また、実施例2では、照射時の電流密度が−0.283mA/cm,非照射時の電流密度が−0.006mA/cmであった。
【0068】
比較例1では、照射時の電流密度が−0.178mA/cm,非照射時の電流密度が−0.043mA/cmであった。
【0069】
A=(照射時の電流密度−非照射時の電流密度)が正味の電流密度に対応し、この値が大きいほど、吸収層としてのp型半導体層が良好なことを示している。また、非照射時の電流密度が大きいほど、p型半導体層からのリーク電流が多いことを示し、リーク箇所が多いことを示す。実施例では比較例に比してリーク電流の抑制された吸収層が得られたことが確認できた。
【符号の説明】
【0070】
6…裏面電極層(基板)、8a…Cu層、8b…In層、8c…Ga層、8p…積層体、8…p型半導体層(Cu(In,Ga1−x(Se,S1−y層)、2…太陽電池。
図1
図2