特許第5655751号(P5655751)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655751
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】分散型電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/38 20060101AFI20141225BHJP
   H02P 9/00 20060101ALI20141225BHJP
   H02P 9/04 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   H02J3/38 R
   H02P9/00 B
   H02P9/04 P
【請求項の数】3
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-208927(P2011-208927)
(22)【出願日】2011年9月26日
(65)【公開番号】特開2013-70569(P2013-70569A)
(43)【公開日】2013年4月18日
【審査請求日】2014年1月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】アイシン精機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100089082
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 脩
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 一成
【審査官】 松尾 俊介
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−272158(JP,A)
【文献】 特開2008−223559(JP,A)
【文献】 特開2008−206269(JP,A)
【文献】 特開2009−278761(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 3/38
H02P 9/00
H02P 9/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力系統と負荷装置とを接続する第1の電線の途中に第2の電線によって接続され、前記負荷装置に電力を供給する発電装置と、
前記発電装置を制御する発電制御部と、
前記発電装置に付随して稼働する付随装置を制御し、前記電力系統から供給された電力により作動し、前記発電制御部と互いに通信可能に接続されている付随装置制御部と、
前記第2の電線の途中に配設されたブレーカと、
前記発電装置と前記ブレーカとの間に配設されて、その配設された位置の電圧及び電流の少なくとも一方を検出する検出装置とを備え、
前記発電制御部は、
前記付随装置制御部との間の通信状態が正常であるか否かを判定する通信状態判定手段と、
前記検出装置からの検出信号に基づき、前記電力系統から給電されていないか否かを判定する給電判定手段と、
前記通信状態判定手段が前記付随装置制御部との通信状態が異常であると判定した場合に、前記電力系統が異常であると判定し、一方で、前記通信状態判定手段が前記付随装置制御部との通信状態が正常であると判定し、且つ、前記給電判定手段が前記電力系統から給電されていないと判定した場合に、前記ブレーカが作動して前記第2の電線を遮断したと判定する異常判定手段と、を備える分散型電源システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記付随装置は、前記発電装置の排熱を回収した貯湯水を貯湯する貯湯槽を有する貯湯ユニットである分散型電源システム。
【請求項3】
請求項1又は請求項2において、
前記発電制御部に電力を供給するバッテリを更に備え、
前記発電装置が起動時、または停止時には、前記発電制御部は前記バッテリからの電力の供給を受ける分散型電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力系統に接続された需要者の負荷装置に電力を供給する分散型電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガス等を燃料として発電する分散型電源システムが普及しつつある。この分散型電源システムは、発電所に比べて小規模な電源(発電装置)を、需要者先に分散させて設置し、需要者の電力消費に応じた電力をそれぞれ生成して供給するシステムである。電源としては、マイクロガスタービン発電装置、ガスエンジン発電装置、燃料電池発電装置などがある。このような分散型電源システムは、ブレーカを介して電力系統に接続されているのが一般的である。
【0003】
ところで、電力系統からの送電が停止した場合(停電)と、過電流がブレーカに流れてブレーカが作動した場合のいずれの場合にも、分散型電源システムは電力系統から電力が供給されない状態となる。このため、分散型電源システムは、停電かブレーカの作動(トリップ)かを判別できなかった。
【0004】
特許文献1に示される分散型電源システムでは、分岐配線ブレーカ23よりも上流側(電力系統側)に電圧検出部5が設けられ、分岐配線ブレーカ23よりも下流側(発電装置側)に停電検出部6が設けられている。そして、少なくとも電圧検出部5で電圧が検知されない場合には、停電と判定していた。
【特許文献1】特開2009−207325号公報(第6、7頁、図1
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述したような電圧検出部5の追加により、停電を判定する機能の追加は、システムが複雑化し、余分な部品の追加によるコストアップを招来してしまうという問題があった。また、作動信号出力機能付のブレーカを用いてブレーカの作動を判別することも考えられるが、この場合にも、作動信号が伝送される信号線を分散型電源システムに接続させる必要があることから、システムが複雑化してしまい、コストアップを招来してしまうという問題があった。
本発明は、上述した各問題を解消するためになされたもので、コストアップとならずに、発電装置が電力系統から給電されない状態となった際に、電力系統の異常とブレーカの作動のいずれかを判別することができる分散型電源システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、請求項1に係る発明は、電力系統と負荷装置とを接続する第1の電線の途中に第2の電線によって接続され、負荷装置に電力を供給する発電装置と、発電装置を制御する発電制御部と、発電装置に付随して稼働する付随装置を制御し、電力系統から供給された電力により作動し、発電制御部と互いに通信可能に接続されている付随装置制御部と、第2の電線の途中に配設されたブレーカと、発電装置とブレーカとの間に配設されて、その配設された位置の電圧及び電流の少なくとも一方を検出する検出装置とを備え、発電制御部は、付随装置制御部との間の通信状態が正常であるか否かを判定する通信状態判定手段と、検出装置からの検出信号に基づき、電力系統から給電されていないか否かを判定する給電判定手段と、通信状態判定手段が付随装置制御部との通信状態が異常であると判定した場合に、電力系統が異常であると判定し、一方で、通信状態判定手段が付随装置制御部との通信状態が正常であると判定し、且つ、給電判定手段が電力系統から給電されていないと判定した場合に、ブレーカが作動して第2の電線を遮断したと判定する異常判定手段と、を備える。
【0007】
請求項2に係る発明は、請求項1において、付随装置は、発電装置の排熱を回収した貯湯水を貯湯する貯湯槽を有する。
【0008】
請求項3に係る発明は、請求項1又は請求項2において、発電制御部に電力を供給するバッテリを更に備え、発電装置が起動時、または停止時には、発電制御部はバッテリからの電力の供給を受ける。
【発明の効果】
【0009】
上記のように構成した請求項1に係る発明においては、通信状態判定手段は、付随装置制御部との間の通信状態が正常であるか否かを判定し、給電判定手段は、検出装置からの検出信号に基づき、電力系統から給電されていないか否かを判定する。そして、異常判定手段は、通信状態判定手段が付随装置制御部との通信状態が異常であると判定した場合に、電力系統が異常であると判定する。つまり、付随装置制御部は、電力系統から電力の供給を受けて作動しているので、電力系統に停電等の異常が発生した場合には、付随装置制御部は作動しないため発電制御部との間で正常に通信を行うことができない。この場合には、通信状態判定手段は付随装置制御部との通信状態が不良と判定し、異常判定手段は電力系統が異常であると判定する。
【0010】
一方で、通信状態判定手段が付随装置制御部との通信状態が正常であると判定し、且つ、給電判定手段が電力系統から給電されていないと判定した場合には、異常判定手段はブレーカが作動して第2の電線が遮断されたと判定する。つまり、通信状態判定手段が付随装置制御部との通信状態が正常であると判定している状態では、付随装置制御部は作動していることから、付随装置制御部は電力系統からの電力の供給を受けているので、電力系統は正常である。更にこの場合において、給電判定手段が電力系統から給電されていないと判定した場合には、上述のように電力系統は正常であることから、発電装置が電力系統から給電されない状態にある原因は、ブレーカが第2の電線を遮断したことにある。従って、この場合には、異常判定手段は、ブレーカの作動と判定する。
【0011】
このように、請求項1に係る発明では、従来の分散型電源システムが備えている検出装置に加えて、余分な機械的部品を追加すること無く、発電制御部に上述した通信状態判定手段及び異常判定手段を設け、電力系統の異常とブレーカの作動を判別している。これにより、コストアップとならずに、発電装置が電力系統から給電されない状態となった際に、電力系統の異常とブレーカの作動のいずれかを判別することができる分散型電源システムを提供することができる。
【0012】
上記のように構成した請求項2に係る発明においては、請求項1に記載の発明において、付随装置は、発電装置の排熱を回収した貯湯水を貯湯する貯湯槽を有する。これにより、発電装置に貯湯槽を有する貯湯ユニットを備えたコジェネレーションシステムに、余分な機械的部品を追加すること無く、発電制御部に上述した通信状態判定手段及び異常判定手段を設け、電力系統の異常とブレーカの作動を判別することができる。
【0013】
上記のように構成した請求項3に係る発明においては、請求項1又は請求項2に係る発明において、発電装置が起動時、または停止時には、バッテリは、発電制御部に電力を供給する。これにより、発電装置が起動時や停止時であっても発電制御部にバッテリから電力が供給されるため、電力系統の異常かブレーカの作動かを確実に判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明による分散型電源システムの一実施の形態の概要を示す概要図である。
図2図1に示した発電機の具体例であり、(A)は燃料電池を用いた例の概要図であり、(B)はエンジンを用いた例の概要図である。
図3図1に示した制御部にて実行される制御プログラムである異常判定処理のフローチャートである。
図4】電力系統及び分散型電源システムの状態を表した表である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(本発明の分散型電源システムの構成の説明)
以下、図1を用いて、本発明による分散型電源システム100の一実施の形態について説明する。本発明の分散型電源システム100は、発電ユニット40と貯湯ユニット70(付随装置)とから構成されている所謂コジェネレーションシステムである。発電ユニット40(発電装置30)は、電力系統200に第1の電線81によって接続された負荷装置91に電力を供給するものである。貯湯ユニット70は、発電ユニット40(発電装置30)の排熱を回収して湯水を生成・貯湯するものであり、発電ユニット40(発電装置30)に付随して稼働する装置である。
【0016】
発電ユニット40は、発電装置30、発電ユニット電源基板32、バッテリ33、補機34、発電制御部35を備えている。発電装置30は、発電機10と変換装置20とから構成されている。発電装置30の変換装置20は、第1の電線81の途中に、第2の電線82によって接続されている。第2の電線82には、変換装置20側から第1の電線81側へ順に、開閉器28、検出装置25、ブレーカ26が接続されている。
【0017】
ブレーカ26は、第2の電線82の途中に配設されている。ブレーカ26は、第2の電線82に過電流が流れた場合に、第2の電線82を機械的動作により強制的に遮断する(開路する)引き外し機構を備えている。なお、引き外し機構は、可動接点と固定接点とを離接させ、可動接点を固定接点から離れる方向に付勢するトリップ機構と、押圧されるとトリップ機構を作動させるトリガーレバー、トリガーレバーを押圧するバイメタル及び可動鉄心の少なくとも一方を有している。ブレーカ26に過電流が流れると、バイメタルが加熱されて湾曲して、又は、可動鉄心が固定鉄心に引き寄せられて、トリガーレバーが押圧される。すると、トリップ機構が作動して、可動接点を固定接点から引き外し、可動接点及び固定接点に接続している第2の電線82が遮断(開路)される(第2の電線82が遮断状態とされる)。
【0018】
検出装置25は、発電装置30の変換装置20とブレーカ26の間に配設されている。検出装置25は、その配設された位置の電圧及び電流の少なくとも一方を検出して、発電装置30が電力系統200から給電されているか否かを検出するものである。本実施形態では、検出装置25は、その配設された位置(第2の電線82)の電圧を検出する。検出装置25で検出された第2の電線82の電圧の検出信号は、発電制御部35に出力される。
【0019】
発電機10は、天然ガス、LPG、灯油、ガソリン、メタノール等の燃料を用いて発電する燃料電池発電機や、エンジン発電機等、或いは、自然エネルギーによって発電する太陽光発電機や、風力発電機等、又は、これらの組み合わせが含まれる。
【0020】
発電機10が燃料電池発電機である場合の構成について、図2の(A)を用いて説明する。燃料電池発電機は、燃料電池11及び改質装置12から構成されている。改質装置12は、燃料供給装置34bから供給される燃料を、水供給装置34cから供給される水で水蒸気改質(一酸化炭素シフト反応を含む)して水素リッチな改質ガスを生成するものである。また、改質装置12は、選択酸化触媒により、改質ガスに含まれる一酸化炭素を、空気供給装置34dから供給される空気と反応させて、所定濃度(10ppm以下)にまで低減して燃料電池に導出する一酸化炭素低減装置を備えている。燃料電池11は、改質装置12から燃料極に供給された改質ガス中の水素、及び、空気供給装置34aから空気極に供給された酸化剤ガスである空気の化学反応により発電して直流電流を出力する。
【0021】
発電機10がエンジン発電機である場合の構成について、図2の(B)を用いて説明する。エンジン発電機は、燃料供給装置34eから供給される燃料と空気との燃焼による熱エネルギーを回転エネルギー(運動エネルギー)に変換するエンジン15と、この回転エネルギーから電気エネルギーである電流を生成する発電機本体16を備えている。エンジン15には、ガスタービンエンジン、レシプロエンジン等の内燃機関、蒸気タービンエンジン等の外燃機関が含まれる。
【0022】
図1に示される変換装置20は、発電機10により発電された電流を、電力系統200と同期のとれた交流電流に変換し、負荷装置91に供給するものである。変換装置20は、DC/DCコンバータ21とDC/ACインバータ22を備えている。DC/DCコンバータ21は、発電機10から出力される直流電流(例えば40V)を入力し、所定の電圧(例えば350V)の直流電流に昇圧又は降圧して出力するものである。
【0023】
DC/ACインバータ22は、DC/DCコンバータ21から出力される直流電流を入力し、電力系統200と同期のとれた交流電流(例えば100Vや200V)に変換して出力するものである。また、DC/ACインバータ22は、電力系統200から入力した交流電流(例えば100Vや200V)を所定の電圧の直流電流(例えば350V)に変換して出力する機能も有している。本実施形態では、DC/ACインバータ22は、直流を交流に変換する機能と、交流を直流に変換する機能の両機能を内蔵した1つの機器で構成しているが、それぞれの機能を別の機器で構成するようにしても差し支え無い。
【0024】
発電ユニット電源基板32は、DC/DCコンバータ21及びDC/ACインバータ22に接続されており、DC/DCコンバータ21とDC/ACインバータ22からの直流電流を入力して所定の電圧(例えば24Vや5V)の直流電流に降圧して、この直流電流を発電制御部35、補機34、及び、バッテリ33に供給するものである。
【0025】
バッテリ33は、発電ユニット電源基板32に接続されている。バッテリ33は、発電ユニット電源基板32から供給される直流電流によって充電され、電力系統200からの電力の供給が遮断された際に、発電ユニット電源基板32に充電された電流を供給することにより、発電制御部35及び補機34に電流を供給するものである。バッテリ33には、リチウムイオンバッテリ、ニッケル・水素バッテリ、鉛バッテリが含まれる。
【0026】
発電制御部35は、発電ユニット40の全体的な制御を行うものであり、DC/DCコンバータ21、DC/ACインバータ22、補機34を制御して、発電装置30の出力を制御する。なお、補機34には、発電機10を制御する上述の空気供給装置34a、燃料供給装置34b、水供給装置34c、空気供給装置34d、燃料供給装置34eが含まれる。発電制御部35は、図示しない電力センサにより負荷装置91の総消費電力を検出し、発電装置30の発電量(出力電力)を負荷装置91の総消費電力に追従させる運転(追従運転)を行う。発電制御部35は、後述する貯湯制御部62(付随装置制御部)との間で相互に通信を行う。なお、発電制御部35と貯湯制御部62との間で行われる通信を「貯湯通信」という。
【0027】
発電制御部35は、CPU35a、記憶装置35b、入出力インターフェース等により構成されている。なお、発電制御部35は、特許請求の範囲に記載の「通信状態判定手段」、「給電判定手段」、「異常判定手段」に相当し得るものである。
【0028】
CPU35aは、発電制御部35を制御する中央演算処理装置で、図略のシステムバスを介して記憶装置35bや入出力インターフェースに接続されている。記憶装置35bは、いわゆるRAM、ROM、不揮発性メモリ等の半導体記憶装置で、図略のシステムバスを介してCPU35aに接続されている。ROMや不揮発性メモリには、CPU35aを制御するシステムプログラムのほかに、発電制御部35に後述の「通信状態判定手段」、「給電判定手段」、「異常判定手段」としての機能を持たせるためのプログラムが格納されている。これら「通信状態判定手段」、「給電判定手段」、「異常判定手段」により、後述する「異常判定処理」(図3示)が実行される。なお、前記「通信状態判定手段」、「給電判定手段」、「異常判定手段」を、ハードウエアで構成しても差し支え無い。前記ハードウエアには、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)等の電子回路が含まれる。
【0029】
RAMは前記プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものである。入出力インターフェースは、貯湯制御部62、冷却水循環ポンプ18、貯湯水循環ポンプ54、DC/DCコンバータ21、DC/ACインバータ22、補機34、開閉器28、検出装置25、及び、ヒータ用開閉器27とのデータの入出力を仲介するもので、システムバスに接続されている。
【0030】
負荷装置91は、照明・エアーコンディショナー・テレビ・などの電気器具である。なお、発電装置30の出力電力より負荷装置91の総消費電力が上回った場合には、その不足電力を電力系統200から給電(順潮流)して補うようになっている。
【0031】
貯湯ユニット70は、貯湯槽50、貯湯水循環回路52、熱交換器53、貯湯ユニット電源基板61、貯湯制御部62を備えている。貯湯槽50は、貯湯水を貯水可能な容器であり、その内部の貯湯水が層状に、即ち上部の貯湯水が最も高温であり下部にいくに従って低温となり下部の温度が最も低温であるように貯留されるようになっている。
【0032】
貯湯槽50の下部には、貯湯槽50に水道水を供給する給水管55が接続されている。給水管55には、減圧弁57が設けられている。貯湯槽50の上部には、貯湯槽50内の貯湯水を温水利用機器(図示省略)に給湯する給湯管56が接続されている。温水利用機器としては、浴槽、シャワー、キッチンの蛇口、洗面所の蛇口、床暖房機器等がある。このような構成により、貯湯槽50に貯留されている高温の貯湯水が貯湯槽50の上部に接続された給湯管56から導出され、その導出された分を補給するように、水道水(低温の水)が貯湯槽50の下部に接続された給水管55から導入されるようになっている。
【0033】
貯湯槽50の下部及び上部には、それぞれ貯湯水循環回路52の一端及び他端がそれぞれ接続されている。貯湯水循環回路52上には、一端から他端に順に貯湯水循環ポンプ54、熱交換器53が配設されている。貯湯水循環ポンプ54は、貯湯槽50の下部の貯湯水を、吸い込んで貯湯水循環回路52に流通させて、貯湯槽50の上部に吐出させるものであり、発電制御部35により制御されるようになっている。
【0034】
発電機10には、発電機10の発熱(発電機10の発電で発生する排熱)を回収した冷却水が循環する冷却水循環回路17が接続されている。冷却水循環回路17上には、冷却水循環ポンプ18、熱交換器53、冷却水加温ヒータ19(交流電流使用部)が設けられている。冷却水循環ポンプ18は、冷却水を冷却水循環回路17内で循環させるものであり、発電制御部35により制御される。熱交換器53は、貯湯水と冷却水との間で熱交換を行わせるものである。このような構成により、発電機10にて発生した排熱(熱エネルギー)は、冷却水に回収され、熱交換器53を介して貯湯水に回収され、その結果貯湯水が加温(昇温)される。
【0035】
冷却水加温ヒータ19は、変換装置20又は電力系統200から供給される交流電力に従って制御されるものであり、供給された電力を熱に変換するものすなわち通電されて発熱する電力熱変換器である。冷却水加温ヒータ19は、発電機10と熱交換器53との間であって発電機10の下流かつ熱交換器53の上流に配設されていることが好ましい。冷却水加温ヒータ19は、開閉器28とブレーカ26との間の第2の電線82に、ヒータ用開閉器27を介して接続されている。ヒータ用開閉器27は、発電制御部35の指令により、開閉される。この冷却水加温ヒータ19は、燃料電池11(図2に示す)の起動時に、電力系統200から供給される電力により冷却水循環回路17内の冷却水を加温し、この加温された冷却水により燃料電池11を昇温させる(燃料電池11の暖機運転(起動運転))。電力系統200が停電中には、バッテリ33から供給される電力によって、冷却水加温ヒータ19は、冷却水循環回路17内の冷却水を加温する。
【0036】
貯湯槽50には、貯湯槽50内の貯湯水の温度を検出する複数(本実施形態では5個)の貯湯温度センサ51−1〜51−5が上下方向(鉛直方向)に沿って等間隔に取り付けられている。貯湯温度センサ51−1は、貯湯槽50の内部上面位置に配設されている。各貯湯温度センサ51−1〜51−5は、その位置の貯湯槽50内の貯湯水の温度をそれぞれ検出し、当該それぞれの温度情報を貯湯制御部62に出力する。これら貯湯温度センサ51−1〜51−5による各位置での湯温の検出結果に基づいて、貯湯槽50内の残湯量が検出されるようになっている。残湯量は、貯湯槽50内に残っている所定温度(例えば60℃)以上である貯湯水の残量を表している。従って、たとえば、各貯湯温度センサ51−1〜51−3が、60℃以上を検出し、各貯湯温度センサ51−4〜51−5が60℃未満を検出している場合には、貯湯槽50天井内壁から貯湯温度センサ51−3までの湯量が残湯量として検出される。
【0037】
貯湯ユニット電源基板61は、第1の電線81に接続され、電力系統200から電力が供給される。貯湯ユニット電源基板61は、電力系統200から供給される電力を降圧、整流、及び、平滑化し、所定の電圧(例えば5Vや24V)の直流電流に変換し、この直流電流を貯湯制御部62に供給するものである。
【0038】
貯湯制御部62は、貯湯温度センサ51−1〜51−5で検出された温度情報を入力し、この温度情報に基づいて、上述した方法により、貯湯槽50内の残湯量を算出する。貯湯制御部62は、発電制御部35と互いに通信可能である。貯湯制御部62は、貯湯槽50内の残湯量や、貯湯槽50内の残湯量が満水となった(貯湯槽50が温度的に満水となったと判断した場合には)旨の情報を、発電制御部35に送信する。或いは、貯湯制御部62が、各貯湯温度センサ51−1〜51−5で検出された温度情報をそのまま、「貯湯通信」により、発電制御部35に送信し、前記温度情報に基づき発電制御部35が貯湯槽50内の残湯量を算出する実施形態であっても差し支え無い。なお、発電制御部35が貯湯槽50内の残湯量が満水となった旨の情報を受信した場合、或いは、発電制御部35が貯湯槽50内の残湯量が満水となったと判断した場合には、発電制御部35は、発電装置30を停止させる。これにより、発電機10から排出される熱が無駄にならない。
【0039】
貯湯制御部62は、CPU62a、記憶装置62b、入出力インターフェース等により構成されている。CPU62aは、中央演算処理装置で、図略のシステムバスを介して記憶装置や入出力インターフェースに接続されている。記憶装置62bは、いわゆるRAM、ROM、不揮発性メモリ等の半導体記憶装置で、図略のシステムバスを介してCPU62aに接続されている。ROMや不揮発性メモリには、CPU62aを制御するシステムプログラムや各種制御プログラムが格納されている。RAMは前記プログラムの実行に必要な変数を一時的に記憶するものである。入出力インターフェースは、発電制御部35、貯湯温度センサ51−1〜51−5とのデータのやり取りを仲介するもので、システムバスに接続されている。
【0040】
(異常判定処理の説明)
次に、上述した分散型電源システム100の作動について、図3及び図4を参照して説明する。なお、図4は、(1)正常な場合、(2)電力系統200が異常な場合、(3)ブレーカ26が作動している場合について、電力系統200の状態、ブレーカ26の状態、発電ユニット40が電力系統200から給電されているか否か、貯湯制御部62が作動しているか否か、発電制御部35と貯湯制御部62間の通信状態が正常であるか否か、「異常判定手段」による判定結果、判定後の分散型電源システム100の動作について表した表である。
【0041】
発電制御部35は、図3に示される「異常判定処理」を順次実行することにより、電力系統200の異常とブレーカ26の作動のいずれかが判定される。まず、ステップ102(給電判定ステップ)において、「給電判定手段」である発電制御部35は、検出装置25から入力された検出信号に基づき、電力系統200から給電されていない状態であるか否かを判定する。具体的には、発電制御部35は、検出装置25によって検出された電力系統200からの電圧(ブレーカ26よりも変換装置20側の電圧)が、所定電圧以下(例えば、定格の1/10以下)であるか否かによって判定し、電力系統200からの電圧が所定電圧以下であると判定した場合には、電力系統200から給電されていない状態にあると判定する。発電制御部35が、電力系統200から給電されていない状態にあると判定した場合には(ステップ102で「YES」と判定)、プログラムをステップ104に進める。一方で、発電制御部35が、電力系統200から給電されている状態にあると判定した場合には(ステップ102で「NO」と判定)、ステップ102の処理を繰り返す。
【0042】
ステップ104(通信状態判定ステップ)において、「通信状態判定手段」である発電制御部35は、貯湯制御部62との間の通信状態が正常であるか否かを判定する。電力系統200が停電等の異常により、第1の電線81に電力が供給されていない状態では、貯湯制御部62に電力が供給されないので、貯湯制御部62は作動せず(停止し)、発電制御部35は貯湯制御部62と通信を行うことができない。この場合には、発電制御部35は、貯湯制御部62との間において通信状態が異常な状態であると判定し(ステップ104で「NO」と判定)、プログラムをステップ106に進める。なお、発電装置30が発電している際には、発電制御部35には、発電装置30から電力が供給される。このため、例え電力系統200の異常により、電力系統200から発電ユニット40に給電されていない状態であっても、発電制御部35は作動し、発電制御部35は貯湯制御部62との間においての通信状態が異常であるか否かを判定することができる。
【0043】
一方で、電力系統200が正常で、第1の電線81に電力が供給されている状態では、貯湯制御部62には電力が供給されているので、貯湯制御部62は作動し、発電制御部35は貯湯制御部62と通信可能な状態にある。この場合には、「通信状態判定手段」である発電制御部35は、貯湯制御部62との通信状態が正常であると判定し(ステップ104で「YES」と判定)、プログラムをステップ120に進める。
【0044】
ステップ106(異常判定ステップ)において、「異常判定手段」である発電制御部35は、電力系統200が異常であると判定し、記憶装置35bにその旨の情報を記憶し、プログラムをステップ108に進める。
【0045】
ステップ108において、発電制御部35は、開閉器28を開いて、第2の電線82を開路し(遮断し)、発電ユニット40を電力系統200から切り離し(解列)たうえで、発電ユニット40の運転を継続させる単独運転を実行する。ステップ108が終了すると、発電制御部35は、プログラムをステップ110に進める。
【0046】
ステップ110において、発電制御部35は、電力系統200の異常が解消したか否かを判定する。具体的には、「通信状態判定手段」である発電制御部35は、貯湯制御部62との間の通信状態が正常であるか否かを判定する。電力系統200が正常に回復し、電力系統200から第1の電線81への電力の供給が回復した場合には、貯湯制御部62へ電力が供給されるので、貯湯制御部62は作動し、発電制御部35は貯湯制御部62と通信可能な状態となる。この場合には、発電制御部35は、貯湯制御部62との通信状態が正常であると判定し、次いで、電力系統200の異常が解消したと判定し(ステップ110で「YES」と判定)、プログラムをステップ112に進める。一方で、発電制御部35が、貯湯制御部62と通信できない場合には、貯湯制御部62との通信状態が異常であると判定し、次いで、電力系統200の異常が解消していないと判定し(ステップ110で「NO」と判定)、ステップ110の処理を繰り返す。なお、ステップ110において、「給電判定手段」である発電制御部35が、検出装置25からの検出信号に基づき、電力系統200から給電されているか否かを判定することにより、電力系統200の異常が解消したか否かを判定することにしても差し支え無い。
【0047】
ステップ112において、発電制御部35は、開閉器28を閉じ、発電ユニット40を電力系統200に再連系させ、プログラムをステップ102に戻す。
【0048】
このように、電力系統200が異常と判定された場合に(ステップ106)、発電ユニット40を停止させるのでは無く、発電ユニット40を電力系統200から切り離したうえで、発電ユニット40を単独運転させ(ステップ108)、電力系統200の異常が解消した場合に(ステップ110で「YES」と判定)、発電ユニット40が電力系統200に再連系される(ステップ112)。このため、発電ユニット40を停止させた場合と異なり、発電ユニット40を電力系統200に再連系させる場合において、発電ユニット40の「起動運転」が不要となる。
【0049】
ステップ120(異常判定ステップ)において、「異常判定手段」である発電制御部35は、ブレーカ26が作動して第2の電線82を遮断したと判定し、その結果を記憶装置35に記憶させる。つまり、発電制御部35と貯湯制御部62とが通信可能な状態であるということは、上述のように、貯湯制御部62に電力系統200から電力が供給されているからであり、この状態において、変換装置20が電力系統200から給電されていない状態にある原因は、ブレーカ26が作動して第2の電線82を遮断しているからである。なお、ブレーカ26の作動の原因には、冷却水加温ヒータ19や発電ユニット40内で短絡や漏電等の異常により第2の電線82に過電流が流れる場合が含まれる。ステップ120が終了すると、発電制御部35は、プログラムをステップ122に進める。
【0050】
ステップ122において、発電制御部35は、発電装置30の発電運転を停止させるとともに、「異常判定処理」を終了させる(ステップ124)。具体的には、発電制御部35は、補機34に指令を出力し、燃料供給装置34b、34e等による燃料等の供給を停止させ、発電機10を停止させる。
【0051】
なお、本実施形態では、上述したように、分散型電源システム100には、発電制御部35に電力を供給するバッテリ33が設けられている。このため、発電ユニット40を起動させる「起動時」、或いは、発電ユニット40を停止させる「停止時」であっても、バッテリ33から発電制御部35に電力が供給される。このため、発電ユニット40が発電していない「起動時」や「停止時」であっても、発電制御部35は、ステップ102、104、106、108、110、112の処理を実行することができる。また、仮に、発電ユニット40の異常により、ブレーカ26が作動し、発電装置30から発電ユニット電源基板32への電力の供給が遮断された場合であっても、バッテリ33から発電制御部35に電力が供給される。このため、発電制御部35は、ステップ102、104、120の処理を実行する。そして、ステップ122において、バッテリ33は補機34にも電力を供給するので、発電制御部35は、ステップ122の処理を実行することができる。このため、発電制御部35は、安全に発電ユニット40を停止させることができる。
【0052】
上述した説明から明らかなように、「通信状態判定手段」である発電制御部35が貯湯制御部62(付随装置制御部)との通信状態が異常であると判定した場合には(ステップ104で「NO」と判定)、「異常判定手段」である発電制御部35は、電力系統200が異常であると判定する(ステップ106)。つまり、貯湯制御部62(付随装置制御部)は、電力系統200から電力の供給を受けて作動しているので、電力系統200に停電等の異常が発生した場合には、貯湯制御部62(付随装置制御部)は作動しないため発電制御部35との間で正常に通信を行うことができない。この場合には、「通信状態判定手段」である発電制御部35は、貯湯制御部62(付随装置制御部)との通信状態が不良と判定し、「異常判定手段」である発電制御部35は、電力系統が異常であると判定する(ステップ106)。
【0053】
一方で、「給電判定手段」である発電制御部35が、検出装置25からの検出信号に基づき、電力系統200から給電されていないと判定し(ステップ102で「YES」と判定)、且つ、「通信状態判定手段」である発電制御部35が、発電制御部35と貯湯制御部62(付随装置制御部)との通信状態が正常であると判定した場合には(ステップ104で「YES」と判定)、「異常判定手段」である発電制御部35は、ブレーカ26が作動して第2の電線82が遮断されたと判定する(ステップ120)。つまり、「通信状態判定手段」である発電制御部35が貯湯制御部62(付随装置制御部)との通信状態が正常と判定している状態では、貯湯制御部62(付随装置制御部)は作動していることから、貯湯制御部62(付随装置制御部)は電力系統200からの電力の供給を受けている。従って、この場合には、電力系統200は正常である。更にこの場合において、「給電判定手段」である発電制御部35が、検出装置25からの検出信号に基づき、電力系統200から給電されていないと判定していた場合には(ステップ102で「YES」と判定)、上述のように電力系統200は正常であることから、発電装置30が電力系統200から給電されていない状態にある原因は、ブレーカ26が第2の電線82を遮断したことにある。従って、この場合には、「異常判定手段」である発電制御部35は、ブレーカ26の作動と判定する(ステップ120)。
【0054】
このように、本発明の分散型電源システム100では、従来の分散型電源システムが備えている検出装置25に加えて、余分な機械的部品を追加すること無く、発電制御部35にプログラムを追加することにより、発電制御部35に上述した「通信状態判定手段」及び「異常判定手段」としての機能を設け、電力系統200の異常とブレーカ26の作動を判別している。これにより、コストアップとならずに、発電装置が電力系統200から給電されない状態となった際に、電力系統200の異常とブレーカの作動のいずれかを判別することができる分散型電源システム100を提供することができる。
【0055】
なお、図1に示されるように、付随装置である貯湯ユニット70は、発電装置30の排熱を回収した貯湯水を貯湯する貯湯槽50を有する。このように、発電ユニット40(発電装置30)に貯湯槽50を有する貯湯ユニット70を備えたコジェネレーションシステムに、余分な機械的部品を追加すること無く、発電制御部35にプログラムを追加することにより、発電制御部35に上述した「通信状態判定手段」及び「異常判定手段」としての機能を設け、電力系統200の異常とブレーカ26の作動を判別することができる。
【0056】
また、発電装置30が「起動時(起動運転中)」や「停止時(停止運転中)」には、バッテリ33は、発電制御部35に電力を供給する。これにより、発電装置30が「起動時」や「停止時」であっても発電制御部35にバッテリ33から電力が供給されるため、電力系統200の異常かブレーカ26の作動かを確実に判別することができる。
【0057】
上述した実施形態では、検出装置25は、その配設された位置(第2の電線82)の電圧を検出している。しかし、検出装置25は、第2の電線82における電圧及び電流の量や向きを検出する実施形態であっても差し支え無い。この実施形態では、ステップ102において、「異常判定手段」である発電制御部35は、検出装置25から入力された第2の電線82における電圧及び電流の検出信号に基づき、電力系統200から給電されない状態であるか否かを判定する。或いは、検出装置25は、第2の電線82における電流の量や向きを検出する実施形態であっても差し支え無い。この実施形態では、ステップ102において、「異常判定手段」である発電制御部35は、検出装置25から入力された第2の電線82における電流の量や向きの検出信号に基づき、電力系統200から給電されない状態であるか否かを判定する。
【0058】
なお、上述した実施形態では、発電ユニット40に付随して稼働する付随装置の一例として、貯湯ユニット70を挙げて本発明の分散型電源システム100を説明した。しかし、付随装置は貯湯ユニット70に限定されず、電力系統200から供給される電力で作動する付随装置制御部を有し、当該付随装置制御部が発電制御部35と通信するような付随装置であればよく、このような付随装置を有する分散型電源システム100であれば、本発明の技術的思想が適用可能なことは言うまでもない。
【符号の説明】
【0059】
10…発電機、25…検出装置、26…ブレーカ、30…発電装置、35…発電制御部(通信状態判定手段、給電判定手段、異常判定手段)、20…変換装置、33…バッテリ、50…貯湯槽、62…貯湯制御部(付随装置制御部)、81…第1の電線、82…第2の電線、100…分散型電源システム、200…電力系統(商用電源)。
図1
図2
図3
図4