【0025】
本発明に係る置換基を持たない飽和脂肪族炭化水素としては、常温(0℃〜40℃のいずれかの温度)で液体のものであれば全て挙げられ、直鎖状、分枝状、環状いずれのものでもよく、炭素数4〜20、好ましくは炭素数4〜15、より好ましくは炭素数4〜12のものが挙げられる。具体的には、例えばシクロブタン、2−メチルブタン、2,2−ジメチルプロパン(ネオペンタン)、n−ペンタン
、シクロペンタン、メチルシクロブタン、n−ヘキサン
、2−メチルペンタン、3−メチルペンタン
、2−エチルブタン
、2,2−ジメチルブタン、2,3−ジメチルブタン
、シクロヘキサン、メチルシクロペンタン、n−ヘプタン
、2,4−ジメチルペンタン、2,3−ジメチルペンタン、2,2−ジメチルペンタン、2,2,3−トリメチルブタン
、シクロヘプタン、メチルシクロヘキサン、エチルシクロペンタン、n−オクタン
、2−メチルヘプタン、3−メチルヘプタン、4−メチルヘプタン、2,2−ジメチルヘキサン、2,3−ジメチルヘキサン、2,4−ジメチルヘキサン、2,5−ジメチルヘキサン、3,3−ジメチルヘキサン、3,4−ジメチルヘキサン、3−エチルヘキサン、2,2,3−トリメチルペンタン、2,2,4−トリメチルペンタン(イソオクタン)
、2,3,3−トリメチルペンタン、2,3,4−トリメチルペンタン、2−メチル−3−エチルペンタン、3−メチル−3−エチルペンタン、2,2,3,3−テトラメチルブタン、シクロオクタン、メチルシクロヘプタン、エチルシクロヘキサン、1,1−ジメチルシクロヘキサン、1,2−ジメチルシクロヘキサン、1,3−ジメチルシクロヘキサン、1,4−ジメチルシクロヘキサン、n−プロピルシクロペンタン、n−ノナン、分子式C
9H
20で示されるノナン異性体(34種)、メチルシクロオクタン、エチルシクロヘプタン、n−プロピルシクロヘキサン、イソプロピルシクロヘキサン、1,2,4−トリメチルシクロヘキサン、1−エチル−3−メチルシクロヘキサン、1−エチル−2−メチルシクロヘキサン、n−ブチルシクロペンタン、n−デカン、分子式C
10H
22で示されるデカン異性体(74種)、シクロデカン、エチルシクロオクタン、n−プロピルシクロヘプタン、n−ブチルシクロヘキサン、イソブチルシクロヘキサン、tert−ブチルシクロヘキサン、1−メチル−3−(n−プロピル)シクロヘキサン、1−メチル−2−(n−プロピル)シクロヘキサン、1,3−ジエチルシクロヘキサン、1,2−ジエチルシクロヘキサン、1,2,4,5−テトラメチルシクロヘキサン、n−ペンチルシクロペンタン、n−ウンデカン、分子式C
11H
24で示されるウンデカン異性体(158種)、メチルシクロデカン、n−ブチルシクロヘプタン、n−ペンチルシクロヘキサン、n−ドデカン、ビシクロヘキシル、2,2,4,6,6−ペンタメチルヘプタン(イソドデカン)、2−メチルウンデカン、分子式C
12H
26で示されるドデカン異性体、n−ブチルシクロオクタン、n−ペンチルシクロヘプタン、n−ヘキシルシクロヘキサン、n−トリデカン、分子式C
13H
28で示されるトリデカン異性体(801種)、n−ペンチルシクロオクタン、n−ヘキシルシクロヘプタン、n−ヘプチルシクロヘキサン、n−テトラデカン、分子式C
14H
30で示されるテトラデカン異性体(1857種)、n−ペンタデカン、分子式C
15H
32で示されるペンタデカン異性体(4346種)、n-ヘキサデカン、2,2,4,4,6,8,8−ヘプタメチルノナン(イソヘキサデカン)、分子式C
16H
34で示されるヘキサデカン異性体、n−ヘプタデカン、分子式C
17H
36で示されるヘプタデカン異性体、n−オクタデカン、分子式C
18H
38で示されるオクタデカン異性体、n−ノナデカン、2,6,10,14−テトラメチルペンタデカン、分子式C
19H
40で示されるノナデカン異性体、n−エイコサン、分子式C
20H
42で示されるエイコサン異性体等が挙げられる。
【実施例】
【0073】
実験例1.吸着剤を用いた1,2,4−トリクロロベンゼンの精製
原料として1,2,4−トリクロロベンゼンを用い、該原料をバッチ処理によって各種吸着剤と接触させ、各吸着剤による、1,2,4−トリクロロベンゼンからの蛍光物質の除去効果を検討した。
【0074】
(1)原料 1,2,4−トリクロロベンゼン(工業用原料)
【0075】
(2)吸着剤
・合成ゼオライト F−9(和光純薬工業(株)販売)
・活性炭(顆粒状)(和光特級、和光純薬工業(株)製)
・活性炭(カラムクロマトグラフ用、和光純薬工業(株)製)
・ワコーゲルC−200(カラムクロマトグラフ用、和光純薬工業(株)製)
・活性アルミナ(カラムクロマトグラフ用、和光純薬工業(株)製)
・モレキュラーシーブス5A(和光純薬工業(株)販売)
【0076】
(3)吸着剤による処理
原料
50mLを100mL三角フラスコに入れ、上記(2)の何れかの吸着剤1gを添加し、5時間攪拌した。その後処理液をメンブレンフィルター(0.45μm)で濾過した。
【0077】
(4)測定
蛍光分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製F−4500)を用い、上記(3)で得られた濾液の励起波長365nm、蛍光波長450〜700nmにおける蛍光強度を測定した。
【0078】
(5)結果
得られた結果を下記表1に示す。表1の数値は、各吸着剤を用いて処理した原料の、励起波長365nm、蛍光波長450〜700nmにおける蛍光強度を硫酸キニーネ換算した値(10μg/Lの硫酸キニーネ溶液(0.1N硫酸酸性)の励起波長365nm/蛍光波長450nm付近の蛍光強度ピークの値を10 Q.S.U(Quinine sulfate unit)として相対強度(Relative fluorescence intensity: R.F.I.)に換算した値)である。
【0079】
【表1】
【0080】
表1から明らかな如く、吸着剤で処理する前の原料には蛍光物質が存在し、その蛍光強度は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)用として求められる蛍光物質の規格値よりも高い値であった。
【0081】
原料を各種吸着剤で処理したところ、原料を合成ゼオライトF−9を用いて処理した場合に、最も蛍光物質量が減少しているが、このような処理品もHPLC用規格品としては不十分であった。尚、処理前と比較して、いずれの蛍光波長でも蛍光強度が低くなったことを考慮すると、合成ゼオライトF−9は、1,2,4-トリクロロベンゼンから蛍光物質を除去する効果が高いことが判る。
【0082】
実施例1.
実験例1で蛍光物質の除去効果が高いことが確認された合成ゼオライト F−9を用いた処理方法にオゾンガス処理を加えた精製方法を検討した。
【0083】
(1)原料:1,2,4−トリクロロベンゼン(工業用原料)
【0084】
(2)オゾンガスによる処理
1)オゾン発生装置
実験用オゾン発生装置 コフロックPZ-1A (コフロック(株)製)
2)処理方法
原料100mLを、オゾン発生装置に接続したオゾンガス通気管と排出ガス排気管を設置した200mL容ガラス容器に入れ、オゾン発生装置を用い、原料攪拌下、下記の条件で原料にオゾンガスをバブリングした。
【0085】
オゾン通気条件(常圧)
オゾンガス発生量:0.3g/hr
ガス流量:1L/min
処理温度:20℃
処理時間:10min(オゾン通気量0.05g/100mL原料)
【0086】
以上の通気条件における、通気させる際のオゾンガス中のオゾン濃度は約0.2335 vol%(約5g/Nm
3)である。
オゾンガス処理後の粗精製品を、一部サンプリングした。
【0087】
(3)吸着剤による処理
φ2cmガラスカラムに10gの合成ゼオライト F−9を充填したカラムに、オゾンガス処理した粗精製品をアプライし、処理速度1.2mL/min(空間速度SV=5.0(H
−1))で、通液した。初流を5mLカット後、溶出液を回収した。
【0088】
(4)測定
回収した溶出液、及びサンプリングしたオゾンガス処理後の粗精製品について、実験例1(4)と同じ装置及び方法で、励起波長365nm、蛍光波長450〜700nmにおける蛍光強度を測定した。
【0089】
また、分光光度計((株)日立ハイテクノロジーズ製U−3310)を用いて波長200〜400nmにおける紫外線の吸光度も測定した。尚、紫外線の吸光度測定値は、JIS K 0115に従い、石英ガラス製吸収セル10mmを用い、それぞれの波長における吸光度を蒸留水を対照液として測定した値である。
【0090】
別に、オゾンガス処理せずに、上記ゼオライト処理のみを行って得られた溶出液についても、同様に蛍光強度を測定した。
【0091】
(5)結果
得られた結果を表2に示す。表2において、380〜400nmにおける吸光度は、380〜400nmでの吸光度の最大値を示す。また、蛍光強度は、各蛍光波長における蛍光強度の最大値を、硫酸キニーネ換算値で示す。
【0092】
【表2】
【0093】
表2から明らかな如く、吸着剤処理のみよりも、吸着剤処理前に原料をオゾンガスで処理することにより、更に蛍光物質の除去効果が向上することがわかる。
【0094】
実施例2
オゾンガス処理と吸着剤処理の最適条件の検討を行った。
(1)原料:1,2,4−トリクロロベンゼン(工業用原料)
【0095】
(2)オゾンガスによる処理
1)オゾン発生装置 実施例1で使用したものと同じ。
2)処理方法
原料650mLを、オゾン発生装置に接続したオゾンガス通気管と排出ガス排気管を設置した1L容ガラス容器に入れ、オゾン発生装置を用い、原料を攪拌下に、下記表3に記載の各条件(常圧)で、原料にオゾンガスをバブリングした。
【0096】
尚、表3で「オゾン通気量(g/1L換算)」とは、各実験で原料650mLに通気したオゾンの量(O
3として)を、原料1Lに対するオゾン(O
3として)の通気量として換算した値を示し、「オゾン通気量(g/200L換算)」とは、原料200Lに対するオゾン(O
3として)の通気量として換算した値を示す。
【0097】
【表3】
【0098】
オゾンガス処理後の粗精製品を、一部サンプリングした。
【0099】
(3)吸着剤による処理
φ2cmガラスカラムに10gの合成ゼオライト F−9を充填したカラムに、オゾンガス処理した粗精製品の各全量をアプライし、処理速度1.2mL/min(SV=5.0(H
−1))で、通液した。初流を5mLカット後、溶出液を200mL×2フラクション分取し、次いで第3フラクションのみ230mL分取した。
【0100】
(4)測定
回収した各フラクションの溶出液、及びサンプリングしたオゾンガス処理後の粗精製品について、実験例1(4)と同じ装置及び方法で、励起波長365nm、蛍光波長450〜700nmにおける蛍光強度を測定した。また、分光光度計を用いて、波長350nmにおける紫外線の吸光度を測定した。
【0101】
(5)結果
結果を表4に示す。表4において、蛍光強度は、上記測定条件における蛍光強度の最大値を、硫酸キニーネ換算値で示す。尚、実験No.1〜5のいずれの場合も、蛍光強度の最大値は、蛍光波長450〜490nmのところに出現した。また、実験No.1〜5のいずれの場合も、蛍光波長500〜700nmの範囲では、蛍光強度はすべて3未満であった。
【0102】
【表4】
【0103】
また、吸光度の測定結果を表5に示す。表5において、吸光度がHPLCの規格に適合していた場合(350nmの紫外線の吸光度が0.05以下の場合)を「○」適合していなかった場合を「×」で示す。
【0104】
【表5】
【0105】
表4及び表5の結果から明らかな如く、実験No.1〜3の条件で原料をオゾンガス処理後、吸着剤処理することにより、蛍光強度及び吸光度のいずれもがHPLCの規格品に適合する精製品が取得できたことが判る。
【0106】
また、実施例2のゼオライト処理では、ゼオライトカラムから流出した流出液を3回に分けてサンプリングしているが、1回目のサンプリング液200mLは、ゼオライト10gで処理しているので、実生産規模である原料200L相当を処理した場合に換算すると、原料200Lをゼオライト約10kgで処理した場合に相当する。同様に2回目のサンプリング液は原料400mLをゼオライト10gで処理した場合に相当し、実生産規模に換算すると原料200Lをゼオライト約5kgで処理した場合に相当する。3回目のサンプリング液は原料630mLをゼオライト10gで処理した場合に相当し、実生産規模に換算すると原料200Lをゼオライト約3kgで処理した場合に相当する。そこで、表4及び表5の実験No.1〜3の蛍光強度及び吸光度の測定結果を、オゾン通気量(g/200L換算)と比較してみると、200Lの原料をオゾン量1〜3g/200L程度で処理すれば、その後のゼオライト処理時には、ゼオライト使用量が約3kg/200L(原料)で、精製が可能になることが判る。現在のゼオライト使用量は40〜50kg/200L(原料)であることと比較すると、本発明の方法により原料をオゾンガス処理した後ゼオライト処理することにより、使用するゼオライトの量を大幅に削減出来ることが示唆された。
【0107】
尚、オゾンガスを過剰に通気すると、原料が着色してしまい、ゼオライト処理しても吸光度、蛍光強度ともに改善されなかった。
【0108】
実施例3.
実製造規模で、本発明に係る精製方法を実施した。
(1)原料:1,2,4−トリクロロベンゼン(工業用原料)
【0109】
(2)オゾンガスによる処理
1)オゾン発生装置 実施例1で使用したものと同じ。
2)処理方法
原料200Lを、オゾン発生装置に接続したオゾンガス通気ノズルと排出ガス排気管を設置したドラムに入れた。原料を攪拌下に、下記の条件で、ドラム内底部に設置したオゾンガス通気
ノズルより、オゾンガスを細かい気泡で、原料にバブリングした。
【0110】
オゾン通気条件(常圧)
オゾンガス発生量:1g/hr
ガス流量:約2L/min
処理温度:20℃
以上の通気条件における、通気させる際のオゾンガス中のオゾン濃度は約0.38761 vol%(約8.3g/Nm
3)である。
【0111】
30分毎にオゾン通気を止め、原料をサンプリングし、実験例1(4)と同じ装置及び方法で、励起波長365nm、蛍光波長450〜700nmにおける蛍光強度を測定した。蛍光強度が10(硫酸キニーネ換算)以下になった時点で、バブリングを終了した。
【0112】
オゾンガス処理後の粗精製品を、一部サンプリングした。
【0113】
(3)吸着剤による処理
φ30cmガラスカラムに5kgの合成ゼオライト F−9を充填したカラムに、オゾンガス処理した粗精製品の各全量をアプライし、処理速度33L/hr(SV=4.6(H
−1))で、通液した。初流を3Lカット後、溶出液を回収した。
【0114】
(4)測定
回収した溶出液、及びサンプリングしたオゾンガス処理後の粗精製品について、実験例1(4)と同じ装置及び方法で、励起波長254nm、蛍光波長450〜700nm、及び励起波長365nm、蛍光波長450〜700nmにおける蛍光強度を測定した。また、分光光度計を用いて波長200〜400nmにおける紫外線の吸光度も測定した。
【0115】
(5)結果
結果を下記表6に示す。表6において、380〜400nmにおける吸光度は、380〜400nmでの吸光度の最大値を示す。また、蛍光強度は、上記測定条件における蛍光強度の最大値を、硫酸キニーネ換算値で示す。
【0116】
尚、蛍光強度の最大値は蛍光波長450〜490nmのところに出現した。また、蛍光波長500〜700nmの範囲では、蛍光強度は全て3未満であった。
【0117】
【表6】
【0118】
表6の結果から明らかな如く、原料をオゾンガス処理後、ゼオライト処理することにより、蒸留等の更なる精製処理を行わなくても、HPLC用移動相としての使用に適した精製品を取得することができることが判る。また、オゾンガス処理を行わずにゼオライト処理する従来の方法では原料約200Lに対して約40〜50kgのゼオライトを使用していた。これに対して本発明に係る精製方法では、従来より遙かに少量のゼオライト使用量(約5kg程度)で、精製処理を行えることが判る。
【0119】
実施例4.
(1)原料:2,2,4−トリメチルペンタン(工業用原料)
【0120】
(2)オゾンガスによる処理
1)オゾン発生装置 実施例1で使用したものと同じ。
2)処理方法
原料400mLを、オゾン発生装置に接続したオゾンガス通気管と排出ガス排気管を設置した1L容ガラス容器に入れ、原料を攪拌下に、下記の条件で、オゾンガスを原料にバブリングした。
【0121】
オゾン通気条件(常圧)
オゾンガス発生量:0.4g/hr
ガス流量:約1L/min
処理温度:約20℃(室温)
処理時間:(a)1分間
(b)3分間
(c)5分間
以上の通気条件における、通気させる際のオゾンガス中のオゾン濃度は約0.31289 vol%(約6.7g/Nm
3)である。
【0122】
尚、(a)のオゾンガス処理時間が1分の条件下でのオゾン総通気量は、0.4g×(1/60分)=0.007g/原料400mL(=0.017g/L原料)である。同様に、(b)のオゾンガス処理時間が3分の条件下でのオゾン総通気量は、0.4g×(3/60分)=0.02g/原料400mL(=0.05g/L原料)である。(c)のオゾンガス処理時間が5分の条件下でのオゾン総通気量は、0.4g×(5/60分)=0.033g/原料400mL(=0.083g/L原料)である。
【0123】
各処理時間オゾンガス処理した粗精製品の一部をサンプリングした。
【0124】
(3)吸着剤による処理
φ2cmガラスカラムに10gの合成ゼオライト F−9を充填したカラムに、オゾンガス処理した粗精製品350mLをアプライし、処理速度1mL/min(SV=4.2(H
−1))で、通液した。初流を10mLカット後、溶出液を回収した。
【0125】
(4)測定
回収した溶出液、及びサンプリングしたオゾンガス処理後の粗精製品について、実験例1(4)で使用したと同じ装置及び方法で、励起波長254nm、蛍光波長450〜700nm、及び励起波長365nm、蛍光波長450〜700nmにおける蛍光強度を測定した。また、分光光度計を用いて波長200〜400nmにおける紫外線の吸光度も測定した。
【0126】
(5)結果
結果を下記表7に示す。表7において、254〜400nmにおける吸光度は、254〜400nmでの吸光度の最大値を示す。また、蛍光強度は、上記測定条件における蛍光強度の最大値を、硫酸キニーネ換算値で示す。
【0127】
【表7】
【0128】
表7の結果から明らかな如く、本発明の精製方法を実施することにより、HPLC用移動相としての使用に適した2,2,4−トリメチルペンタンを得ることが出来ることがわかる。
【0129】
実施例5.
(1)原料:1,2,4−トリクロロベンゼン(工業用原料)
【0130】
(2)オゾンガスによる処理
1)オゾン発生装置 実施例1で使用したものと同じ。
2)処理方法
原料650mLを、オゾン発生装置に接続したオゾンガス通気管と排出ガス排気管を設置した1L容ガラス容器に入れ、オゾン発生装置を用い、原料を攪拌下に、下記の条件で原料にオゾンガスをバブリングした。
【0131】
オゾン通気条件(常圧)
オゾンガス発生量:0.3g/hr
ガス流量:1L/min
処理温度:20℃
処理時間:2min(オゾン通気量0.01g/650mL原料)
【0132】
以上の通気条件における、通気させる際のオゾンガス中のオゾン濃度は約0.2335 vol%(約5g/Nm
3)である。
オゾンガス処理後の粗精製品を、一部サンプリングした。
【0133】
(3)吸着剤による処理
1)吸着剤
・合成ゼオライト F−9(和光純薬工業(株)販売)
・合成ゼオライトHS−320(Y型ゼオライト、和光純薬工業(株)製)
・塩基性活性アルミナ(カラムクロマトグラフ用、和光純薬工業(株)製)
2)処理方法
φ2cmガラスカラムに上記1)の何れかの吸着剤10gを充填したカラムに、オゾンガス処理した粗精製品の200mLをアプライし、処理速度1.2mL/min(空間速度SV=5.0(H
−1))で、通液した。初流を5mLカット後、溶出液を回収した。
【0134】
(4)測定
回収した溶出液、及びサンプリングしたオゾンガス処理後の粗精製品について、実験例1(4)と同じ装置及び方法で、励起波長365nm、蛍光波長450〜700nmにおける蛍光強度を測定した。また、分光光度計を用いて波長200〜400nmにおける紫外線の吸光度も測定した。
【0135】
(5)結果
得られた結果を表8に示す。表8において、380〜400nmにおける吸光度は、380〜400nmでの吸光度の最大値を示す。また、蛍光強度は、各蛍光波長における蛍光強度の最大値を、硫酸キニーネ換算値で示す。
【0136】
【表8】
【0137】
表8の結果から明らかな如く、本発明の精製方法を実施することにより、Y型ゼオライト(合成ゼオライト HS-320)や塩基性吸着剤(塩基性活性アルミナ)を吸着剤として用いた場合でも、原料の吸光度及び蛍光強度が低減された。また、原料の吸光度及び蛍光強度が、HPLC用移動相としての使用に適した程度まで精製することが出来た。
【0138】
特に、合成ゼオライトF−9を吸着剤として用いた場合に、最も原料の精製効果が高いことが判る。
【0139】
実施例6.
(1)原料:n−ヘプタン(工業用原料)
【0140】
(2)オゾンガスによる処理
1)オゾン発生装置 実施例1で使用したものと同じ。
2)処理方法
原料200mLを、オゾン発生装置に接続したオゾンガス通気管と排出ガス排気管を設置した1L容ガラス容器に入れ、オゾン発生装置を用い、原料攪拌下、下記の条件で原料にオゾンガスをバブリングした。
【0141】
オゾン通気条件(常圧)
オゾンガス発生量:0.3g/hr
ガス流量:1L/min
処理温度:20℃
処理時間:2min(オゾン通気量0.01g/200mL原料)
以上の通気条件における通気させる際のオゾンガス中のオゾン濃度は約0.2335 vol%(約5g/Nm
3)である。
オゾンガス処理後の粗精製品を、一部サンプリングした。
【0142】
(3)吸着剤による処理
1)吸着剤
・合成ゼオライト F−9(和光純薬工業(株)販売)
・塩基性活性アルミナ(カラムクロマトグラフ用、和光純薬工業(株)製)
2)処理方法
φ2cmガラスカラムに上記1)の何れかの吸着剤10gを充填したカラムに、オゾンガス処理した粗精製品の200mLをアプライし、処理速度1.2mL/min(空間速度SV=5.0(H
−1))で、通液した。初流を5mLカット後、溶出液を回収した。
【0143】
(4)測定
回収した溶出液、及びサンプリングしたオゾンガス処理後の粗精製品について、実験例1(4)と同じ装置及び方法で、励起波長254nm、蛍光波長450〜700nm、及び励起波長365nm、蛍光波長450〜700nmにおける蛍光強度を測定した。また、分光光度計を用いて波長200〜400nmにおける紫外線の吸光度も測定した。
【0144】
(5)結果
得られた結果を表9に示す。表9において、254〜400nmにおける吸光度は、254〜400nmでの吸光度の最大値を示す。また、蛍光強度は、上記測定条件における蛍光強度の最大値を、硫酸キニーネ換算値で示す。
【0145】
【表9】
【0146】
表9の結果から、吸着剤(合成ゼオライトF−9)を用いた処理のみでは、吸光度の低減はわずかであり、HPLC用移動相としての使用に適した品質にまで精製することが出来なかった。これに対し、オゾンガス処理後、吸着剤処理することにより、吸光度が顕著に低減され、HPLC用移動相として使用可能な、高精製品を取得できることが判った。
【0147】
また、Y型ゼオライト(合成ゼオライト HS-320)や塩基性吸着剤(塩基性活性アルミナ)を吸着剤として用いた場合でも、吸光度及び蛍光強度が低減でき、蛍光物質の除去効果が得られたことが判る。
【0148】
特に、合成ゼオライトF−9を吸着剤として用いた場合に、最も精製効果が高いことが判る。
【0149】
実施例7.
(1)原料:2,2,4−トリメチルペンタン(工業用原料)
【0150】
(2)オゾンガスによる処理
1)オゾン発生装置 実施例1で使用したものと同じ。
2)処理方法
原料200mLを、オゾン発生装置に接続したオゾンガス通気管と排出ガス排気管を設置した1L容ガラス容器に入れ、オゾン発生装置を用い、原料攪拌下、下記の条件で原料にオゾンガスをバブリングした。
【0151】
オゾン通気条件(常圧)
オゾンガス発生量:0.3g/hr
ガス流量:1L/min
処理温度:20℃
処理時間:2min(オゾン通気量0.01g/200mL原料)
以上の通気条件における通気させる際のオゾンガス中のオゾン濃度は約0.2335 vol%(約5g/Nm
3)である。
【0152】
(3)吸着剤による処理
φ2cmガラスカラムに10gの合成ゼオライト F−9を充填したカラムに、オゾンガス処理した粗精製品の200mLをアプライし、処理速度1.2mL/min(空間速度SV=5.0(H
−1))で、通液した。初流を5mLカット後、溶出液を回収した。
【0153】
(4)測定
回収した溶出液について、実験例1(4)と同じ装置及び方法で、波長200〜400nmにおける紫外線の吸光度を測定した。
【0154】
別に、オゾンガス処理せずに、上記吸着剤処理のみを行って得られた溶出液についても、同様に紫外線の吸光度を測定した。
【0155】
(5)結果
得られた結果を表10に示す。表10において、254〜400nmにおける吸光度は、
254〜400nmでの吸光度の最大値を示す。
【0156】
【表10】
【0157】
表10の結果から明らかな如く、2,2,4−トリメチルペンタンを精製する場合も、吸着剤(合成ゼオライトF−9)を用いた処理のみでは、吸光度の低減はわずかであり、HPLC用移動相の使用に適した精製品を得ることはできなかった。これに対し、オゾンガス処理後、吸着剤処理することにより、吸光度が顕著に低減され、HPLCに使用可能な高精製品を取得できることが判った。
【0158】
さらに、以上の実施例6及び7の結果から、本発明の精製方法は、2,2,4−トリメチルペンタンやn−ヘプタンなどの飽和炭化水素類の精製に有効であることが判る。
【0159】
実施例8.模擬灯油を用いた、本発明の精製方法の検討
灯油は、家庭用燃料電池の燃料としての利用が期待されているが、市販の灯油中に微量に混入している硫黄化合物が燃料電池の触媒の性能を低下させることが知られている。
【0160】
そのような硫黄化合物としてはジベンゾチオフェン、4,6-ジメチルベンゾチオフェン、3-メチルベンゾチオフェン等がある。
【0161】
そこで、灯油の主成分(炭素数9−15の炭化水素)の一種であるウンデカンに、上記3種類の硫黄化合物を添加した模擬灯油を調製し、本発明の精製方法でこの模擬灯油を精製した。
【0162】
(1)模擬灯油
特級n−ウンデカン(和光純薬工業(株)製)に、ジベンゾチオフェン、4,6-ジメチルベンゾチオフェン、3-メチルベンゾチオフェン(すべて和光純薬工業(株)製)を、それぞれ30mg/Lになるように添加した模擬灯油(硫黄濃度として約0.0022w/w%)を調製した。
【0163】
(2)オゾンガスによる処理
1)オゾン発生装置 実施例1で使用したものと同じ。
2)処理方法
原料200mLを、オゾン発生装置に接続したオゾンガス通気管と排出ガス排気管を設置した1L容ガラス容器に入れ、オゾン発生装置を用い、模擬灯油を攪拌下に、下記の条件で原料にオゾンガスをバブリングした。
【0164】
オゾン通気条件(常圧)
オゾンガス発生量:0.3g/hr
ガス流量:1L/min
処理温度:20℃
処理時間:4min(オゾン通気量0.02g/200mL原料)
以上の通気条件における通気させる際のオゾンガス中のオゾン濃度は約0.2335 vol%(約5g/Nm
3)である。
【0165】
(3)吸着剤による処理
φ2cmガラスカラムに10gの合成ゼオライト F−9を充填したカラムに、オゾンガス処理した粗精製品の200mLをアプライし、処理速度1.2mL/min(空間速度SV=5.0(H
−1))で、通液した。初流を5mLカット後、溶出液を回収した。
【0166】
(4)測定
回収した溶出液について、実験例1(4)と同じ装置及び方法で、波長200〜400nmにおける紫外線の吸光度を測定した。
【0167】
また、下記条件で、三次元蛍光スペクトルによる品質評価を行った。
【0168】
装置:蛍光分光光度計(日立ハイテクノロジーズ製F‐4500)
測定条件:
測定モード:三次元
測定励起波長:200nm〜800nm
測定蛍光波長:200nm〜800nm
スキャンスピード:2400nm/min
【0169】
(5)結果
1)吸光度測定結果
吸光度の測定結果を表11に示す。
【0170】
【表11】
【0171】
表11の結果から明らかな如く、オゾンガス処理と吸着剤処理を併用する本発明の精製方法で模擬灯油を精製すると、不純物に起因すると思われる吸光度が顕著に低減し、添加した硫黄化合物や、ウンデカン中に含まれていた不純物が除去できていることが判る。
【0172】
2)紫外吸収スペクトルによる品質評価
200〜400nmにおける紫外線吸収スペクトルを
図1及び
図2に示す。
図1は、原料の模擬灯油の紫外吸収スペクトルを示す。
図2は、模擬灯油の精製品の紫外吸収スペクトルを示す。また、
図1及び
図2に於いて、横軸は測定波長(nm)を、縦軸は吸光度(Ab)を夫々示す。
【0173】
図1及び
図2の結果から明らかな如く、本実施例で調製した模擬灯油を用いた場合は、硫黄化合物及び原料であるn−ウンデカン中の不純物に由来する紫外吸収のスペクトルが出現した(
図1)。一方、本発明の方法で精製することにより、このスペクトルが消失しており(
図2)、本発明の精製方法により硫黄化合物や、試薬中の紫外吸収を有する不純物が効果的に除去できたことが判る。
【0174】
3)三次元
蛍光スペクトルによる品質評価
三次元蛍光スペクトルによる評価結果を
図3及び
図4に示す。
図3は、模擬灯油の三次元蛍光スペクトルを示す。
図4は、模擬灯油の精製品の三次元蛍光スペクトルを示す。また、
図3及び
図4に於いて、横軸は蛍光波長(EM(nm))を、縦軸は励起波長(EX(nm))を夫々示す。
【0175】
図3から明らかな如く、模擬灯油の蛍光スペクトルには、硫黄化合物及び原料のn−ウンデカンの不純物に起因すると思われる蛍光スペクトルが出現した(
図3中、丸く囲んだ箇所)。これに対し、模擬灯油を本発明の精製方法で精製することにより、このスペクトルが何れも消失していた(
図4)。このことから、本発明の精製方法により、硫黄化合物や、原料のn−ウンデカン中の蛍光を有する不純物が効果的に除去できたことが判る。
【0176】
以上のことから、本発明の精製方法は、灯油中の硫黄化合物の除去に非常に有効であることが示唆された。