特許第5655785号(P5655785)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5655785可撓性基材用のフルオロポリマーブレンド組成物およびコーティング
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655785
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】可撓性基材用のフルオロポリマーブレンド組成物およびコーティング
(51)【国際特許分類】
   C08L 27/18 20060101AFI20141225BHJP
   C08L 27/12 20060101ALI20141225BHJP
   C09D 127/18 20060101ALI20141225BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20141225BHJP
   C09D 5/03 20060101ALI20141225BHJP
   C09D 123/28 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   C08L27/18
   C08L27/12
   C09D127/18
   C09D5/02
   C09D5/03
   C09D123/28
【請求項の数】18
【全頁数】76
(21)【出願番号】特願2011-529274(P2011-529274)
(86)(22)【出願日】2009年9月25日
(65)【公表番号】特表2012-504178(P2012-504178A)
(43)【公表日】2012年2月16日
(86)【国際出願番号】US2009058444
(87)【国際公開番号】WO2010036935
(87)【国際公開日】20100401
【審査請求日】2012年9月24日
(31)【優先権主張番号】61/100,311
(32)【優先日】2008年9月26日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/145,875
(32)【優先日】2009年1月20日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/109,952
(32)【優先日】2008年10月31日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/145,433
(32)【優先日】2009年1月16日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】511064199
【氏名又は名称】ウィットフォード コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】ハーヴェイ,レオナルド,ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ブレイン,ヘレン,エル.
【審査官】 安田 周史
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−194397(JP,A)
【文献】 特開昭46−000728(JP,A)
【文献】 特開2001−357729(JP,A)
【文献】 特開2003−183408(JP,A)
【文献】 特開2007−131671(JP,A)
【文献】 特開2008−050455(JP,A)
【文献】 特表2009−538964(JP,A)
【文献】 特開2000−143922(JP,A)
【文献】 特開2005−320398(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 27/18
C08L 27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フルオロポリマーの水性分散体の組成物が、
少なくとも500,000の数平均分子量(M)を有し、当該組成物中に全フルオロポリマー固形物合計重量を基準にして1重量%〜98重量%の間の量で存在する、少なくとも1つの高分子量ポリテトラフルオロエチレン(HPTFE)の水性分散体と、
335℃以下の第一融点(T)を有し、当該組成物中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして1重量%〜98重量%の間の量で存在する、少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)の水性分散体と、
ペルフルオロアルコキシ(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、及びメチルフルオロアルコキシ(MFA)からなる群から選択され、かつ当該組成物中に全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして1重量%〜98重量%の間の量で存在する、少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)の水性分散体と、を含む、フルオロポリマーの水性分散体の組成物。
【請求項2】
前記水性分散体の組成物中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして、前記HPTFEが75重量%〜96重量%の間の量で存在し、かつ前記LPTFE及びMPFが4重量%〜25重量%の間の量で存在する、請求項1に記載の水性分散体の組成物。
【請求項3】
前記水性分散体の組成物中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして、前記HPTFEが82重量%〜96重量%の間の量で存在し、かつ前記LPTFE及びMPFが4重量%〜18重量%の間の量で存在する、請求項1に記載の水性分散体の組成物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーが、前記LPTFE及びMPF中の前記フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして37重量%〜65重量%の間の量で存在するペルフルオロアルコキシ(PFA)を含む、請求項1に記載の水性分散体の組成物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーが、前記LPTFE及びMPF中の前記フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして50重量%〜60重量%の間の量で存在するペルフルオロアルコキシ(PFA)を含む、請求項1に記載の水性分散体の組成物。
【請求項6】
前記少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーが、前記LPTFE及びMPF中の前記フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして20重量%〜85重量%の間の量で存在するフッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含む、請求項1に記載の水性分散体の組成物。
【請求項7】
前記少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーが、前記LPTFE及びMPF中の前記フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして50重量%〜75重量%の間の量で存在するフッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含む、請求項1に記載の水性分散体の組成物。
【請求項8】
前記低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)が、0.9ミクロン(μm)以下、0.75ミクロン(μm)以下、0.5ミクロン(μm)以下、0.4ミクロン(μm)以下、0.3ミクロン(μm)以下、及び0.2ミクロン(μm)以下からなる群から選択される平均粒子径を有する、請求項1に記載の水性分散体の組成物。
【請求項9】
前記低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)が、332℃以下、330℃以下、329℃以下、328℃以下、327℃以下、326℃以下、及び325℃以下からなる群から選択される第一融点を有する、請求項1に記載の水性分散体の組成物。
【請求項10】
前記低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)がエマルション重合によって得られ、凝集、熱劣化、又は放射線照射を受けないものである、請求項1に記載の水性分散体の組成物。
【請求項11】
前記低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)が、エマルション重合物又は懸濁重合によって得られ、その後の分子量低減工程を経る又は経ないものから得られるLPTFEミクロパウダーである、請求項1に記載の水性分散体の組成物。
【請求項12】
可撓性基材を準備する工程と、
前記可撓性基材上に水性分散体の組成物をコーティングする工程であって、前記水性分散体の組成物が、
少なくとも500,000の数平均分子量(M)を有し、かつ前記水性分散体の組成物中に全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして70重量%〜98重量%の間の量で存在する、少なくとも1つの高分子量ポリテトラフルオロエチレン(HPTFE)を含有する少なくとも1つのフルオロポリマーの水性分散体と、
500,000未満の数平均分子量(M)を有し、かつ前記水性分散体の組成物中に全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして1重量%〜30重量%の間の量で存在する、少なくとも低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)の水性分散体と、
ペルフルオロアルコキシ(PFA)、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)、及びメチルフルオロアルコキシ(MFA)からなる群から選択され、かつ前記水性分散体の組成物中に全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして1重量%〜30重量%の間の量で存在する少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)の水性分散体とを含む、水性分散体の組成物をコーティングする工程と、
前記水性分散体の組成物を硬化させてコーティングを形成する工程と、を含む、可撓性基材のコーティング方法。
【請求項13】
前記水性分散体の組成物中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして、前記少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)が5重量%〜15重量%の間の量で存在し、かつ少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーが5重量%〜15重量%の間の量で存在する、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーが、前記少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)と前記少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーとを合計した固形物合計重量を基準にして、37重量%〜65重量%の間の量で存在するペルフルオロアルコキシ(PFA)を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記コーティングが、
5μ未満の表面粗度(Ra)、
及び60°で少なくとも30%の反射率で測定された光沢度からなる群から選択されるひとつ以上の特性を有する、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記水性分散体の組成物中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして、前記HPTFEが90重量%〜96重量%の間の量で存在し、かつ前記LPTFE及びMPFが4重量%〜10重量%の間の量で存在する、請求項1に記載の水性分散体の組成物。
【請求項17】
前記HPTFEは、前記HPTFEの重量を基準にして変性コモノマーが1重量%未満の量で存在する、請求項1から11のいずれか一項に記載の水性分散体の組成物。
【請求項18】
前記変性コモノマーが、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)である、請求項17に記載の水性分散体の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、米国法典第35巻特許法第119条(e)(U.S.C§119(e))の元で、2008年9月26日出願、米国仮特許出願シリアル番号第61/100,311号(特許文献1)、発明の名称「フルオロポリマーブレンド組成物」(BLENDED FLUOROPOLYMER COMPOSITIONS);2008年10月31日出願、米国仮特許出願シリアル番号第61/109,952号(特許文献2)、発明の名称「可撓性基材用のブルオロポリマーブレンドのトップコート」(BLENDED FLUOROPOLYMER TOPCOATS FOR FLEXIBLE SUBSTRATES);2009年1月16日出願、米国仮特許出願シリアル番号第61/145,433号(特許文献3)、発明の名称「フルオロポリマーブレンド組成物」(BLENDED FLUOROPOLYMER COMPOSITIONS);および2009年1月20日出願、米国仮特許出願シリアル番号第61/145,875号(特許文献4)、発明の名称「フルオロポリマーブレンド組成物」(BLENDED FLUOROPOLYMER COMPOSITIONS)の恩恵を主張し、これらの全体の開示は参考として本明細書中に明確に援用される。
【0002】
(技術分野)
本発明はフルオロポリマーに関し、特に非粘着性表面および/または耐摩耗性表面が所望されるガラスクロスのような可撓性基材に塗布されるコーティングタイプのようなものであって、改善された特性を有するフルオロポリマー組成物に関する。詳細には、本発明は、フルオロポリマー組成物に関し、その組成物を使用して、改善された非粘着性または剥離特性および/または改善された耐摩耗性を有するコーティングを形成でき、並びにフィルムおよびブレンドした粉末組成物を形成できる。
【背景技術】
【0003】
フルオロポリマーは、水素原子の一部または全てがフッ素で置換されている直鎖エチレン反復単位を主として有する長鎖ポリマーである。例として、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、メチルフルオロアルコキシ(MFA)、フルオロエチレンプロピレン(FEP)、ペルフルオロアルコキシ(PFA)、ポリ塩化三フルオロエチレンおよびポリフッ化ビニルが挙げられる。
【0004】
ガラスクロスは、フルオロポリマーでコーティングできる可撓性基材の一例である。そのコーティングには、高分子量のポリテトラフルオロエチレン(HPTFE)それ自体が、または少量の追加ポリマーおよび/または充填剤を含有したものが含まれる。1つのコーティング技法には、一般的にフルオロポリマーを収容する浸漬タンクを通過させるようにガラスクロス織布を供給し、次いでコーテイィングされた織布を乾燥および焼結用のオーブンタワー内を上向きに通過させるように供給してコーティング剤を硬化または固着させる工程が含まれる。このプロセスは通常、最高10以上のコーティング層が塗布されるまで多数回繰り返される。
【0005】
ガラスクロスのような可撓性基材に、例えばコーティング塗工に使用されて改善された耐摩耗性および/または剥離性を示し、かつその他の用途に使用されるもののような改善されたフルオロポリマー組成物が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国仮特許出願シリアル番号第61/100,311号
【特許文献2】米国仮特許出願シリアル番号第61/109,952号
【特許文献3】米国仮特許出願シリアル番号第61/145,433号
【特許文献4】米国仮特許出願シリアル番号第61/145,875号
【特許文献5】米国特許出願シリアル番号第12/468,580号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はフルオロポリマーブレンド組成物を提供し、そのものは典型的な適用例では、可撓性基材への、および所望により事前にプライマーまたは下地塗装および/またはミッドコート(midcoat)でコーティングされた可撓性基材へのコーティング剤として利用できる。一実施形態では、組成物は、少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)、および少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)のブレンドである。別の実施形態では、組成物には、高分子量ポリテトラフルオロエチレン(HPTFE)のような少なくとも1つのフルオロポリマーを含有するフルオロポリマー主要成分が含まれ、かつ追加的にLPTFE/MPFブレンドフルオロポリマー組成物が含まれる。可撓性基材への塗布後、所望によりプライマーまたは下地塗装および/またはミッドコートの上に塗布され、次いで硬化され、本組成物は改善された耐摩耗性、および/または改善された剥離特性、および/または増加された透光性/透明性、および/または改善された不浸透性を示すコーティングを形成する。また本組成物を使用して、高度の透明性および不浸透性を有するフィルムが生産できる。粉末形態の本組成物を溶融押出しまたはペースト押出し成形して改善された不浸透性を有する物品を成形できる。
【0008】
本発明の一形態において、本発明はフルオロポリマー組成物を提供し、その組成物は、組成物中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして1重量%〜98重量%の間の量で存在し、かつ数平均分子量(M)が少なくとも500,000である少なくとも1つの高分子量ポリテトラフルオロエチレン(HPTFE)と、組成物中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして1重量%〜98重量%の間の量で存在し、かつ第一の融点(T)が335℃以下である少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)と、組成物中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして1重量%〜98重量%の間の量で存在する少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)とが含まれる。
【0009】
基材に塗布されるコーティングは本フルオロポリマー組成物を含むことができる。フィルムは本フルオロポリマー組成物を含むことができる。本フルオロポリマー組成物は、水性分散体形態または粉末形態であることができる。
【0010】
本発明の別の形態では、本発明はフルオロポリマー組成物を提供し、その組成物は、組成物中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして70重量%〜98重量%の間の量で存在するフルオロポリマー主要成分であって、数平均分子量(M)が少なくとも500,000である高分子量ポリテトラフルオロエチレン(HPTFE)を含有する少なくとも1つのフルオロポリマーを含むフルオロポリマー主要成分;および組成物中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして2重量%〜30重量%の間の量で存在するフルオロポリマーブレンド組成物であって、そのフルオロポリマーブレンド組成物は、第一の融点(T)が335℃以下であり、かつ平均粒子径が1.0ミクロン(μm)以下である少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)と、少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)とを含むフルオロポリマーブレンド組成物;を含む。
【0011】
本組成物では、組成物中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして、少なくとも1つのフルオロポリマー主要成分は75重量%〜96重量%の間の量で存在でき、フルオロポリマーブレンド組成物は4重量%〜25重量%の間の量で存在できる。別の実施形態では、組成物中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして少なくとも1つのフルオロポリマー主要成分は82重量%〜96重量%の間の量で存在でき、フルオロポリマーブレンド組成物は4重量%〜18重量%の間の量で存在できる。
【0012】
本組成物では、少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーは、フルオロポリマーブレンド組成物のフルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして、37重量%〜65重量%の間の量で存在するペルフルオロアルコキシ(PFA)を含むことができる。別の実施形態では、ペルフルオロアルコキシ(PFA)は、フルオロポリマーブレンド組成物の固形物合計重量を基準にして、50重量%〜60重量%の間の量で存在することができる。
【0013】
本組成物では、少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーは、フルオロポリマーブレンド組成物の固形物合計重量を基準にして、20重量%〜85重量%の間の量で存在するフッ素化エチレンプロピレン(FEP)を含むことができる。別の実施形態では、フッ素化エチレンプロピレン(FEP)は、フルオロポリマーブレンド組成物の固形物合計重量を基準にして、50重量%〜75重量%の間の量で存在することができる。
【0014】
少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)は、平均粒子径が、0.9ミクロン(μm)以下、0.75ミクロン(μm)以下、0.5ミクロン(μm)以下、0.4ミクロン(μm)以下、0.3ミクロン(μm)以下、および0.2ミクロン(μm)以下からなる群から選択され、および/または第一の融点(T)が、332℃以下、330℃以下、329℃以下、328℃以下、327℃以下、326℃以下、および335℃以下からなる群から選択される、ものであることができる。
【0015】
少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)は、その後の凝集、熱劣化、または放射線照射工程を受けずにエマルション重合によって得ることができ、またエマルション重合または懸濁重合し、その後の分子量低減工程を経てまたは経ないで得られるLPTFEミクロパウダーであることができる。
【0016】
本発明の別の形態では、本発明はコーティングされた可撓性基材を提供し、そのものは、可撓性基材と、前記可撓性基材の上のコーティングであって、コーティング中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして70重量%〜98重量%の間の量で存在し、数平均金分子量(M)が少なくとも500,000である高分子量ポリテトラフルオロエチレン(HPTFE)を含有する少なくとも1つのフルオロポリマーと、コーティング中の全フルオロポリマーの固形物合計重量を基準にして1重量%〜30重量%の間の量で存在し、数平均金分子量(M)が500,000未満である少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFFE)と、コーティング中の全フルオロポリマーの合計重量を基準にして1重量%〜30重量%の間の量で存在する少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーが含まれるコーティングとが含まれる。
【0017】
コーティングには、コーティング中の全フルオロポリマーの合計重量を基準にして、少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)が5重量%〜15重量%で存在でき、かつ少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーが5重量%〜15重量%で存在できる。その少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーは、少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)と少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマーとを合計した固形物合計重量を基準にして37重量%〜65重量%の間の量で存在するペルフルオロアルコキシ(PFA)を含むことができる。
【0018】
そのコーティングは、1.5ミクロン未満の表面粗度(Ra)、および60°で少なくとも30%の反射率で測定された光沢度からなる群から選択される1つ以上の特性を有することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
本発明の上記事項並びにその他の特徴および利点、並びにそれらを達成する方法は、付録の図面と関連させて行われる以下の本発明の実施形態の説明によってより明らかになり、本発明自体がより良好に理解されるであろう。
図1】上図はPFAを含有する実施例におけるトップコートに関し、PFAおよびLPTFE含量に対する往復摩耗試験の周囲環境初期(実施例3)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図2】上図はPFAを含有する実施例におけるトップコートに関し、PFAおよびLPTFE含量に対する往復摩耗試験の周囲環境10%(実施例3)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す、
図3】上図はPFAを含有する実施例におけるトップコートに関し、PFAおよびLPTFE含量に対するテーバー摩耗指数1000(実施例4)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図4】上図はPFAを含有する実施例におけるトップコートに関し、PFAおよびLPTFE含量に対するテーバー摩耗指数2000(実施例4)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図5】上図はPFAを含有する実施例におけるトップコートに関し、PFAおよびLPTFE含量に対するテーバー摩耗指数3000(実施例4)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図6】上図はPFAを含有する実施例におけるトップコートに関し、PFAおよびLPTFE含量に対するクッキー生地料理剥離性(実施例5)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図7】上図はPFAを含有する実施例におけるトップコートに関し、PFAおよびLPTFE含量に対するピザ生地料理剥離性(実施例5)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図8】上図はPFAを含有する実施例におけるトップコートに関し、PFAおよびLPTFE含量に対する鶏肉料理剥離性(実施例5)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図9】上図はPFAを含有する実施例におけるトップコートに関し、PFAおよびLPTFE含量に対する表面粗度(実施例2)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図10】上図はPFAを含有する実施例におけるトップコートに関し、PFAおよびLPTFE含量に対する光沢度(実施例2)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図11】上図はPFAを含有する実施例におけるトップコートに関し、PFAおよびLPTFE含量に対する接触角(実施例2)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図12】上図はPFAを含有する実施例におけるトップコートに関し、PFAおよびLPTFE含量に対する瞬発力(実施例8)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図13】上図はPFAを含有する実施例におけるトップコートに関し、PFAおよびLPTFE含量に対する動的力性(実施例8)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図14】上図はPFAを含有する実施例におけるトップコートに関し、PFAおよびLPTFE含量に対する接着性試験の正規化結果(実施例8)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図15】上図はPFAを含有する実施例におけるトップコートに関し、PFAおよびLPTFE含量に対する往復摩耗試験およびテーバー摩耗指数摩耗試験の正規化結果(実施例3および4)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図16】上図はPFAを含有する実施例におけるトップコートに関し、PFAおよびLPTFE含量に対する料理剥離性試験の正規化結果(実施例5)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図17】上図はPFAを含有する実施例におけるトップコートに関し、PFAおよびLPTFE含量に対する表面粗度、光沢度、および接触角試験の正規化結果(実施例2)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図18】上図はPFAを含有する実施例におけるトップコートに関し、PFAおよびLPTFE含量に対する往復摩耗試験およびテーバー摩耗指数摩耗試験(実施例3および4)、接着性試験(実施例8)、料理剥離性試験(実施例5)、並びに表面粗度、光沢度、および接触角試験(実施例2)の正規化結果の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図19】上図はFEPを含有する実施例におけるトップコートに関し、FEPおよびLPTFE含量に対する往復摩耗試験 周囲環境初期(実施例3)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図20】上図はFEPを含有する実施例におけるトップコートに関し、FEPおよびLPTFE含量に対する往復摩耗試験 周囲環境10%(実施例3)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図21】上図はFEPを含有する実施例におけるトップコートに関し、FEPおよびLPTFE含量に対するテーバー摩耗指数1000(実施例4)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図22】上図はFEPを含有する実施例におけるトップコートに関し、FEPおよびLPTFE含量に対するテーバー摩耗指数2000(実施例4)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図23】上図はFEPを含有する実施例におけるトップコートに関し、FEPおよびLPTFE含量に対するテーバー摩耗指数3000(実施例4)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図24】上図はFEPを含有する実施例におけるトップコートに関し、FEPおよびLPTFE含量に対するクッキー生地料理剥離性(実施例5)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図25】上図はFEPを含有する実施例におけるトップコートに関し、FEPおよびLPTFE含量に対するピザ生地料理剥離性(実施例5)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図26】上図はFEPを含有する実施例におけるトップコートに関し、FEPおよびLPTFE含量に対する鶏肉料理剥離性(実施例5)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図27】上図はFEPを含有する実施例におけるトップコートに関し、FEPおよびLPTFE含量に対する表面粗度(実施例2)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図28】上図はFEPを含有する実施例におけるトップコートに関し、FEPおよびLPTFE含量に対する光沢度(実施例2)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図29】上図はFEPを含有する実施例におけるトップコートに関し、FEPおよびLPTFE含量に対する接触角(実施例2)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図30】上図はFEPを含有する実施例におけるトップコートに関し、FEPおよびLPTFE含量に対する瞬発力(実施例8)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図31】上図はFEPを含有する実施例におけるトップコートに関し、FEPおよびLPTFE含量に対する動的力性(実施例8)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図32】上図はFEPを含有する実施例におけるトップコートに関し、FEPおよびLPTFE含量に対する接着性試験(実施例8)の正規化結果の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図33】上図はFEPを含有する実施例におけるトップコートに関し、FEPおよびLPTFE含量に対する往復摩耗試験およびテーバー摩耗指数摩耗試験(実施例3および4)の正規化結果の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図34】上図はFEPを含有する実施例におけるトップコートに関し、FEPおよびLPTFE含量に対する料理剥離性試験(実施例5)の正規化結果の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図35】上図はFEPを含有する実施例におけるトップコートに関し、FEPおよびLPTFE含量に対する表面粗度、光沢度、および接触角試験(実施例2)の正規化結果の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図36】上図はFEPを含有する実施例におけるトップコートに関し、FEPおよびLPTFE含量に対する往復摩耗試験およびテーバー摩耗指数摩耗試験(実施例3および4)、接着性試験(実施例8)、料理剥離性試験(実施例5)、並びに表面粗度、光沢度、および接触角試験(実施例2)の正規化結果の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図37】上図はPFAおよびFEP(MPF)の両方を含有する実施例におけるトップコートに関し、MPFおよびLPTFE含量に対する往復摩耗試験周囲環境初期(実施例3)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図38】上図はPFAおよびFEP(MPF)の両方を含有する実施例におけるトップコートにし、MPFおよびLPTFE含量に対する往復摩耗試験周囲環境10%(実施例3)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図39】上図はPFAおよびFEP(MPF)の両方を含有する実施例におけるトップコートに関し、MPFおよびLPTFE含量に対するテーバー摩耗指数1000(実施例4)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図40】上図はPFAおよびFEP(MPF)の両方を含有する実施例におけるトップコートに関し、MPFおよびLPTFE含量に対するテーバー摩耗指数2000(実施例4)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図41】上図はPFAおよびFEP(MPF)の両方を含有する実施例におけるトップコートに関し、MPFおよびLPTFE含量に対するテーバー摩耗指数3000(実施例4)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図42】上図はPFAおよびFEP(MPF)の両方を含有する実施例におけるトップコートに関し、MPFおよびLPTFE含量に対するクッキー生地料理剥離性(実施例5)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図43】上図はPFAおよびFEP(MPF)の両方を含有する実施例におけるトップコートに関し、MPFおよびLPTFE含量に対するピザ生地料理剥離性(実施例5)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図44】上図はPFAおよびFEP(MPF)の両方を含有する実施例におけるトップコートに関し、MPFおよびLPTFE含量に対する鶏肉料理剥離性(実施例5)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図45】上図はPFAおよびFEP(MPF)の両方を含有する実施例におけるトップコートに関し、MPFおよびLPTFE含量に対する表面粗度(実施例2)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図46】上図はPFAおよびFEP(MPF)の両方を含有する実施例におけるトップコートに関し、MPFおよびLPTFE含量に対する光沢度(実施例2)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図47】上図はPFAおよびFEP(MPF)の両方を含有する実施例におけるトップコートに関し、MPFおよびLPTFE含量に対する接触角(実施例2)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図48】上図はPFAおよびFEP(MPF)の両方を含有する実施例におけるトップコートに関し、MPFおよびLPTFE含量に対する瞬発力(実施例8)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図49】上図はPFAおよびFEP(MPF)の両方を含有する実施例におけるトップコートに関し、MPFおよびLPTFE含量に対する動的力性(実施例8)の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図50】上図はPFAおよびFEP(MPF)の両方を含有する実施例におけるトップコートに関し、MPFおよびLPTFE含量に対する接着性試験(実施例8)の正規化結果の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図51】上図はPFAおよびFEP(MPF)の両方を含有する実施例におけるトップコートに関し、MPFおよびLPTFE含量に対する往復摩耗試験およびテーバー摩耗指数摩耗試験(実施例3および4)の正規化結果の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図52】上図はPFAおよびFEP(MPF)の両方を含有する実施例におけるトップコートに関し、MPFおよびLPTFE含量に対する料理隔離試験(実施例5)の正規化結果の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図53】上図はPFAおよびFEP(MPF)の両方を含有する実施例におけるトップコートに関し、MPFおよびLPTFE含量に対する接触角試験(実施例2)の正規化結果の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図54】上図はPFAおよびFEP(MPF)の両方を含有する実施例におけるトップコートに関し、MPFおよびLPTFE含量に対する往復摩耗試験およびテーバー摩耗指数の摩耗試験(実施例3および4)、接着性試験(実施例8)、料理剥離性試験(実施例5)、並びに表面粗度、光沢度、および接触角試験(実施例2)の正規化結果の第一コンタープロットを示し、同時に第一プロットのHPTFE豊富領域に関する第二プロットを下図に示す。
図55】HPTFE、PFA、およびLPTFEを有するコーティング(実施例6)を有するガラスクロス片、サンプルF(33)を通過する光源の写真である。
図56】HPTFEだけを有するコーティング(実施例6)を有するガラスクロス片、サンプルF(46)対照を通過する光源の写真である。
図57】実施例6で使用されたむき出し光源の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本明細書に詳述される例示は本発明の実施形態を示し、そのような例示はいかなる形においても本発明の範囲を制限するものと解釈されるべきではない。
【0021】
本発明はフルオロポリマーブレンド組成物を提供し、そのものは典型的な適用例では、可撓性基材への、および所望により事前にプライマーまたは下地塗装および/またはミッドコート(midcoat)でコーティングされた可撓性基材へのコーティング剤として利用できる。一実施形態では、本組成物は、少なくとも1つの低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)、および少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)のブレンドである。別の実施形態では、本組成物には、高分子量ポリテトラフルオロエチレン(HPTFE)のような少なくとも1つのフルオロポリマーを含有するフルオロポリマー主要成分が含まれ、かつ追加的にLPTFE/MPFブレンドフルオロポリマー組成物が含まれる。可撓性基材への塗布後、所望によりプライマーまたは下地塗装および/またはミッドコートの上に塗布され、次いで硬化され、本組成物は改善された耐摩耗性、および/または改善された剥離特性、および/または増加された透光性/透明性、および/または改善された不浸透性を示すコーティングを形成する。また本組成物を使用して、高度の透明性および不浸透性を有するフィルムが生産できる。粉末形態の本組成物を溶融押出しまたはペースト押出し成形して改善された不浸透性を有する物品を成形できる。
【0022】
本発明のコーティング組成物が塗布できる好適な可撓性基材としては、例えば、連続式オーブン用の食物コンベーヤー、スタジアム屋根およびレーダードームに使用される建築用織物、並びにヒートシール用ベルト、回路基板、料理シート、およびテント用織物のような用途に一般的に使用されるタイプのガラスクロスが挙げられる。「ガラスクロス」または「ガラス布」は、例えば、リネン、ガラスまたは木綿のような、繊維を織って作られる織物材料である。
【0023】
本コーティング組成物でコーティングできるその他の可撓性基材には、例えば、ステープルファイバー、化繊綿、ヤーン、加工糸、織物、不織布、ワイヤークロス、ロープ、ベルト、コード、およびウェブを包含する天然繊維または合成繊維を含む任意の材料が挙げられる。本コーティング組成物でコーティングできる典型的な繊維状材料には、綿、綿デニム、ウール、シルク、セラミック繊維および金属繊維を初めとする植物性繊維、動物性繊維および鉱物性繊維のような天然繊維、並びに、合成繊維であって、例えばカーボン編織物、超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)繊維、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリパラフェニレンテレフタルアミドまたはケブラー(登録商標)を初めとするパラ−アミド繊維、およびノーメックス(登録商標)のようなメターアラミド繊維(それぞれはデュポン社(E.I. du Pont de Nemours and Company)から入手可能)、ライトン(登録商標)(Ryton)のようなポリフェニレンスルファイド(シェブロンフィリップスケミカル社(Chevron Phillips Chemical Co.)から入手可能)、プリプロピレン繊維、ポリアクリル繊維、ゾルテック(登録商標)(Zoltek)のようなポリアクリロニトリル(PAN)繊維(ゾルテック社から入手可能)、ポリアミド繊維(ナイロン)、およびダクロン(登録商標)(Dacron)のようなナイロン−ポリエステル繊維(インヴィスタノースアメリカ(Invista North America)から入手可能)が挙げられる。
【0024】
可撓性基材は、所望により、本コーティング組成物を塗布する前にプライマー(または下地塗装)および/またはミッドコートでコーティングできる。そのプライマーおよびミッドコートは任意のタイプのフルオロポリマー系のコーティング剤であることができ、商業的に入手可能な高分子量PTFE系のコーティング剤が広く利用されている。特定のプライマーおよび/またはミッドコート組成物が広く利用できるが、それらは本明細書に開示されたコーティングによって示される改善された特性に対して必須であるとは考えられない 。
【0025】
詳細には、一実施形態において、本コーティング組成物は下層コーティングまたは下塗りの上に塗布される。その下塗りは下地塗装であってもよく、下塗りは基材上に直接塗布されるコーテイィングであり(時にはプライマーと呼ばれる)、所望により1つ以上のミッドコートと同時に塗布される。これらの実施形態において、本コ―ティング剤は本明細書では「オーバーコート」または「トップコート」と呼んでもよく、これらの用語は一般的に置き換え可能である。他の実施形態では、本コーティング組成物は基材に直接塗布してその基材と直接的に接触したコーティングを形成でき、それによってそのコーティングはいかなる下塗りの上にも塗布されない。更なる実施形態では、本コーティングシステム自体が下塗りであることができる。
【0026】
別の用途では、高度な光学的透明度および優れた不浸透性を有する自立フィルムが、本組成物から流延成形できる。例えば、本組成物を好適な基材表面上に流延成形し、それらを乾燥および硬化させてから取り出すことによって本組成物からフィルムを生産できる。
【0027】
更なる用途では、本明細書で論じられる組成物を有する粉末が調製でき、次いで粉末を溶液中に分散して、またはペースト押出しもしくは溶融押出しなどによって押出して不浸透性が増強された物品を生産できる。
【0028】
本明細書で説明される第一の実施形態では、本組成物には一般的に少なくとも1つの低分子量PTFE(LPTFE)および少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)をブレンドしたフルオロポリマー組成物が含有される。
【0029】
本明細書で説明される第二の実施形態では、本組成物には一般的に、少なくとも1つのフルオロポリマー主要成分およびフルオロポリマーブレンド組成物が含有される。
そのフルオロポリマー主要成分は、代表的には高分子量PTFE(HPTFE)である。そのフルオロポリマーブレンド組成物には、少なくとも1つの低分子量PTFE(LPTFE)および少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)が含有される。
【0030】
I.第一実施形態
第一の実施形態では、組成物は少なくとも1つの低分子量PTFE(LPTFE)と少なくとも1つの溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)とのブレンドである。好適なフルオロポリマー成分およびブレンドを以下で論じ、また2009年5月19日出願米国特許出願シリアル番号第12/468,580号(特許文献5)、発明の名称「フルオロポリマーブレンド組成物」(BLENDED FLUOROPOLYMER COMPOSITIONS)で、本発明の譲受人に譲渡される特許においても論じられ、その開示は参考として本明細書中に明確に援用される。
【0031】
A.低分子量ポリテトラフルオロエチレン(LPTFE)
本フルオロポリマーブレンド組成物の中の第一のフルオロポリマーは、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の液状分散体であることができ、詳細には、低分子量(LPTFE)および/または、所望により以下で詳細に論じられるその他の特性を有するPTFEの液状分散体であることができる。
【0032】
殆どの実施形態におけるLPTFEの液状分散体は水性分散体であろうが、LPTFEはその他の溶剤に分散してもよく、および/または元々水性相にあるLPTFEをヘキサン、アセトン、またはアルコールを初めとする有機溶剤のような別の溶剤に転相してもよい。
【0033】
上記のように生産された場合、LPTFEの平均粒子径は、ISO13320に準拠したレーザー光回折を用いるような好適な方法により測定すると、1.0ミクロン(μm)以下、0.9ミクロン(μm)以下、0.75ミクロン(μm)以下、0.5ミクロン(μm)以下、0.4ミクロン(μm)以下、0.3ミクロン(μm)以下、または0.2ミクロン(μm)以下であろう。幾つかの実施形態では、LPTFEの平均粒子径は、例えば30、50、100、もしくは150nmと同じくらい小さく、または200、250、もしくは350nmと同じくらい大であってもよい。
【0034】
LPTFEの数平均分子量(M)は一般的に500,000nm未満であろうが、殆どの実施形態では、例えば、10,000以上、もしくは20,00以上、もしくは25,000以上と同じくらい小さく、または200,000以下、もしくは100,000以下、もしくは70,000以下、もしくは60,000以下、もしくは50,000以下と同じくらい大であってもよい。
【0035】
LPTFEの分子量を特徴付ける他の方式は、例えば示差走査熱量測定(DSC)のような好適な方法によって決定されるような第一融点(T)によるものであり、それによるLPTFEの第一融点(T)は335℃以下である。他の実施形態では、LPTFEの第一融点は332℃以下、330℃以下、329℃以下、328℃以下、327℃以下、326℃以下、325℃以下であってもよい。
【0036】
LPTFEは、安定化された、不安定化された、または最小安定化された水性分散体の形態で提供できる。本明細書で用いる場合、「不安定化」または「最小安定化」は、従来型の界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤などをLPTFE水性分散体の重量を基準にして1.0重量%未満で含有する水性分散体を示す。幾つかの実施形態では、LPTFE分散体は、1.0重量%未満の界面活性剤、0.8重量%未満の界面活性剤、0.6重量%未満の界面活性剤、または更には0.5重量%未満の界面活性剤を有する水性分散体の形態で提供できる。他の実施形態では、LPTFE分散体は一般的に1〜12重量%の界面活性剤を有する、「安定化」された水性分散体の形態で提供できる。しかしながら、採用される安定化対策のタイプは本発明に決定的な特性ではない。
【0037】
また、以下に論じるようにLPTFEは固形ミクロパウダーの形態で提供できる。
【0038】
LPTFEは一般的に低分子量PTFEホモポリマーの形態である。しかしながら、他の実施形態では、LPTFEは少量の変性コモノマーを含有していてもよく、その場合PTFEは当技術分野で「変性PTFE」または「微量変性PTFE」として知られるコポリマーである。変性コモノマーの例には、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)が挙げられ、その他の変性剤例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ペルフルオロブチルエチレン(PFBE)が挙げられ、またはその他のペルフルオロアルキルビニルエーテル例えば、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、もしくはペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)が挙げられる。変性コモノマーは一般的に、例えばPTFEに対して1%未満の量で存在するであろう。
【0039】
好適なLPTFEには、SFN−D(中昊晨光化工研究院(Chenguang R.I.)、C. I, Chengdu, 610036 P.R. China、から入手可能)並びにTE3877N(デュポンから入手可能)が挙げられる。その他のLPTFEミクロパウダーには、ダイニオン(Dyneon)TF−9207(ダイニオン有限責任会社から入手可能)、LDW−410(ダイキン工業社から入手可能)、およびMP−25、MP−55、MP−8T、およびUF8TA(それぞれはローレル(Laurel)製品社から入手可能)が挙げられる。
【0040】
これらのフルオロポリマーは、以下の表1に説明される特性を有する。
表1 典型的な低分子量ポリテトラフルオロエチレンの特性
【0041】
【表1】
【0042】
本発明で使用できるLPTFEの典型的タイプを以下で論じる。
i.分散重合またはエマルション重合によるLPTFEであって生産後に凝集、放射線照射、または熱劣化が行われないもの。
【0043】
本発明のいくつかの実施形態では、LPTFEは分散重合またはエマルション重合のような当技術分野で良く知られた重合方法で生産される。これらの重合プロセスは、生産されるフルオロポリマーの平均分子量を低減させる連鎖移動剤を用いて行われるか、および/または重合プロセスを制御して重合させ、低分子量を有するPTFE(LPTFE)粒子の液状分散体を直接的に形成させる別の方法によって行われる。
【0044】
これらの実施形態では、LPTFEは、分散重合またはエマルション重合により生産された後で凝集、放射線照射または熱劣化が行われない。詳細には、LPTFEは製造工程中でいかなる凝集工程も受けることがなく、従って小さい粒子径を保持する。更にLPTFEは熱劣化を受けて分子量を低減させることがない。その上LPTFEは、高エネルギー電子ビームのような放射線照射を受けて分子量を低減されることがない。これらの実施形態では、LPTFE分散体は、電子常磁性共鳴(ESR)分光または電子スピン共鳴(ESR)分光にかけたときにスペクトルが示されないおよび/または検出限界以下である。そのことは、照射されたPTFEではそのようなスペクトルが示され、および/または別方法で検出可能なフリーラジカルを有することとは対照的である。
【0045】
これらのタイプのLPTFE分散体は水性分散体として提供され、それらは制御された分散重合またはエマルション重合プロセスによって得られ、LPTFE重合物が直接的に生産され、生産後に凝集、熱劣化、または放射線照射を受けることがない。当業者は、これらのタイプのLPTFE分散体が、市販のその他のPTFEと異なっていると認識するであろう。
【0046】
第一には、これらのLPTFE分散体は、粒状重合または懸濁重合として当技術分野で良く知られる重合プロセスによって製造されるPTFEとは異なっている。粒状重合または懸濁重合は粒状PTFE樹脂または粒状PTFE成形粉として当技術分野で知られるPTFEを生じる。粒状PTFEは一般的に、少なくとも1,000,000以上の数平均分子量(M)のような高分子量を有し、かつ335℃より高い、典型的には335℃よりもはるかに高い第一融点(T)を有する。粒状PTFE樹脂は一般的に、数μ、典型的には10〜700ミクロン(μm)の平均粒子径を有する粒子を含有する固形または粉末形態で提供される。これらの樹脂はまた、例えば20〜40ミクロン(μm)の平均粒子径を有する粒度分画樹脂としても供給され得る。
【0047】
更に、これらのタイプのLPTFE分散体は、一般的に0.2〜20ミクロン(μm)の間の粒子径を有し粒状PTFEミクロパウダーとして知られる、低分子量材料を形成するために高分子量PTFE樹脂から放射線照射または熱劣化による分解で調製される低分子量材料とは区別できる。粒状PTFEミクロパウダーの例には、ゾニール(登録商標)(Zonyl)MP1200、MP1300およびMP1400樹脂(デュポン社から入手可能であり、ゾニールはデュポン社の登録商標である)が挙げられる。
【0048】
第二に、これらのタイプのLPTFE分散体はまた、高分子量PTFEに重合させるために連鎖移動剤を用いないで行われる分散重合またはエマルション重合から作製される高分子量PTFE分散体とも異なる。高分子量PTFEは、少なくとも1,000,000以上の数平均分子量(M)を有し、335℃より高い、一般的には335℃よりもはるかに高い第一融点(T)を有する。これらの高分子量PTFE分散体は一般的に、1.0重量%、典型的には1.0重量%よりもはるかに多い量で存在する従来型の界面活性剤を用いて安定化されている。
【0049】
更に、これらのタイプのLPTFE分散体は、分散重合またはエマルション重合によって生産され、その後で凝固または凝集される高分子量PTFE分散体とも異なる。
【0050】
その上、これらのタイプのLPTFE分散体は、分散重合またはエマルション重合によって生産され、その後で凝固または凝集され、次いで熱劣化または放射線照射を受けて、当技術分野でPTFEミクロパウダーとして知られる低分子量PTFEを形成する高分子量PTFE分散体と異なる。そのPTFEミクロパウダーは、例えば押出し成形およびその他の用途のために0.2〜20ミクロン(μm)の粒子径を有する固形粉末として提供される。PTFEミクロパウダーの例には、ゾニール(登録商標)(Zonyl)MP1000、MP1100、MP1500およびMP1600樹脂(デュポン社から入手可能であり、ゾニールはデュポン社の登録商標である)が挙げられる。しかしながら、以下に論じられるように、これらのタイプのLPTFEミクロパウダーもまた本発明に使用できる。
【0051】
第三に、これらのタイプのLPTFE分散体は、LPTFEミクロパウダーとは異なる。LPTFEミクロパウダーは連鎖移動剤の存在下の分散重合またはエマルション重合によって重合され、その後凝集させて例えば、0.2〜20ミクロン(μm)の平均粒子径を有するPTFEミクロパイダーが形成される。
ii.LPTFEEミクロパウダー
【0052】
本発明の第二の実施形態では、LPTFEはLPTFEミクロパウダーの形態であることができる。
【0053】
第一タイプのLPTFEミクロパウダーは、分散重合またはエマルション重合によって生産される高分子量PTFE分散体から誘導される。その分散体はその後凝固または凝集され、次いで熱劣化または放射線照射を受けて、当技術分野でPTFEミクロパウダーとして知られる低分子量PTFE粉末を形成するが、本明細書ではこれをLPTFEミクロパウダーと呼ぶ。このLPTFEミクロパウダーは一般的に、0.2〜20ミクロン(μm)の代表的な粒径を有する固形の粉末として供給される。
【0054】
これらのLPTFEミクロパウダーの例には、ゾニール(登録商標)(Zonyl)MP1000、MP1500およびMP1600樹脂(デュポン社から入手可能であり、ゾニールはデュポン社の登録商標である)、およびMP−25、MP−55およびUF8TA(それぞれはローレル製品社から入手可能)が挙げられる。
【0055】
第二タイプのLPTFEミクロパウダーは、高分子量の粒状PTFE樹脂から誘導される。その樹脂は放射線照射または熱劣化によって熱分解され、粒状PTFEミクロパウダーとして知られる低分子量材料が形成され、この粒状LPTFEミクロパウダーは一般的に、0.2〜20ミクロン(μm)の範囲にある代表的な粒径を有する。
【0056】
これらのタイプのLPTFEミクロパウダーの例には、ゾニール(登録商標)MP−1200、MP−1300およびMP−1400樹脂(デュポン社から入手可能であり、ゾニールはデュポン社の登録商標である)、およびMP−8TおよびMP−10(ローレル製品社から入手可能)が挙げられる。
【0057】
第三タイプのこれらのLPTFEミクロパウダーは、連鎖移動剤の存在下の分散重合またはエマルション重合によって重合され、その後凝集されて、例えば0.2〜20ミクロン(μm)の代表的な平均粒子径を有するLPTFEミクロパウダーを形成することができる。
B.溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)
【0058】
フルオロポリマーブレンド組成物の第二のフルオロポリマーは、1つ以上の溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)からなる液状分散体であることができ、その溶融加工可能フルオロポリマーは、例えばペルフルオロアルコキシ(PFA)(テトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロアルキルビニルエーテルとのコポリマー)などであることができ、それらには、メチルフルオロアルコキシ(MFA)(テトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)とのコポリマー)、およびエチルフルオロアルコキシ(EFA)(テトラフルオロエチレン(TFE)とペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)とのコポリマー)が挙げられ、およびフッ素化エチレンプロピレン(FEP)であることができる。
【0059】
MPFは、当技術分野で分散重合またはエマルション重合としてよく知られる重合プロセスによって生産できる。これらの重合プロセスは、生産されるフルオロポリマーの平均分子量を低減させる連鎖移動剤を用いて、および/または重合プロセスを制御してMPFが直接的に重合した粒子の液状分散体が形成される他の方法を用いて行われる。
【0060】
殆どの実施形態では、そのMPFが分散重合またはエマルション重合によって生産され、その後の凝集、放射線照射、または熱劣化が行われない。詳細には、MPFは その製造工程中でいかなる凝集工程も受けないので、以下に説明するように小さい平均粒径を保持する。
【0061】
殆どの実施形態におけるMPFの液状分散体は、水性分散体であろうが、そのMPFは、その他の溶剤に分散してもよく、および/または元々水性相にあるMPFをヘキサン、アセトン、またはアルコールを初めとする有機溶剤のような別の溶剤に転相してもよい。
【0062】
MPFは、上記の用に生産された場合、一般的に平均粒子径は1.0ミクロン(μm)以下、0.9ミクロン(μm)以下、0.75ミクロン(μm)以下、0.5ミクロン(μm)以下、0.4ミクロン(μm)以下、0.3ミクロン(μm)以下、または0.2ミクロン(μm)以下であろう。詳細にはMPFの平均粒子径は、例えば30、50、100、もしくは150nmと同じくらい小さく、または200、250、もしくは350nmと同じくらい大であってもよい。
【0063】
その他の実施形態では、MPF粉末も使用できるであろう。
【0064】
MPFは、安定化された、不安定化された、または最小安定化された水性分散体の形態で提供できる。本明細書で用いる場合、「不安定化」または「最小安定化」は、従来型の界面活性剤、例えば非イオン性界面活性剤またはアニオン性界面活性剤などをMPF水性分散体の重量を基準にして1.0重量%未満で含有する水性分散体を指す。幾つかの実施形態では、MPF分散体は、1.0重量%未満の界面活性剤、0.8重量%未満の界面活性剤、0.6重量%未満の界面活性剤、または更には0.5重量%未満の界面活性剤を有する水性分散体の形態であってもよい。他の実施形態では、MPF分散体は一般的に1〜12重量%の界面活性剤を有する、「安定化」された水性分散体の形態であることができる。
【0065】
ASTM D1238に準拠して測定されるMPFの溶融流動速度(MFR、メルトフローレート)は、一般的に0.5g/10分であり、ある実施形態では2g/10分以上である場合がある。
【0066】
また、MPFは、コモノマー含量、すなわちテトラフルオロエチレン(TFE)以外の1つ以上のモノマーの含量が、一般的に約3.0重量%以上であり、例えば、4.0重量%以上、4.5重量%以上、5.0重量%以上、5.5重量%以上、または6.0重量%以上などである。
【0067】
好適なMPF分散体には、TE7224(PFA)(デュポン社から入手可能)、6900Z(PFA)(ダイニオン有限責任会社から入手可能)、TE9568(FEP)(デュポン社から入手可能)、ネオフロン(Neoflon)ND−110(FEP)(ダイキン社から入手可能)、およびハイフロン(Hyflon)XPH6202−1(MFA)(ソルベイ(Solvay)社から入手可能)が挙げられる。これらのMPF分散体は、以下の表2に説明される特性を有する。
表2.典型的な溶融加工可能なフルオロポリマー(MPF)の特性
【0068】
【表2】
【0069】
C.LPTFE/MPFブレンド組成物
【0070】
本発明のフルオロポリマーブレンド組成物を形成するために、LPTFE液状分散体およびMPF液状分散体が混合される。液状分散体が使用される場合、分散体は固形物含量を変更してよく、当業者は、LPTFEおよびMPF液状分散体の湿重量が、それら分散体の固形物含量および得られるブレンド組成物において所望されるLPTFEとMPFとの所望の相対的重量%比率を基準にして選択できることを認識するであろう。
【0071】
とりわけ、分散体の混合の場合、上記に説明した小さい平均粒子径を有する液状分散体の形態で提供されるLPTFEおよびMPFが提供されるので、LPTFEおよびMPFの粒子は、それら分散体が例えば乾燥されまたは融解される後加工の工程の前に、サブミクロンのレベルで互いに接触されるようになる。上記に論じたように、一実施形態によると、LPTFEおよびMPFは混合前に凝集されていないので、LPTFEおよびMPFのサブミクロン相互作用は、特別な結晶形態の乾燥または硬化したフルオロポリマーブレンドの形成を促進すると考えられ、このことが本ブレンド組成物で得られる有益な結果を獲得するために重要であると考えられる。多くの用途には液体状態でのブレンドが望ましいが、LPTFE成分として採用した場合の本実施例においてミクロパウダーの有効性によって実証されたように、その他の用途に関しては粉末ブレンドもまた望ましい。
【0072】
以下に説明されるフルオロポリマーブレンド組成物における、LPTFEとMPFとの相対的な比率、画分、または重量%は、LPTFEおよびMPFフルオロポリマーの固形物合計重量を基準にしている。そのため、存在する可能性のあるLPTFEおよびMPF以外のその他のフルオロポリマー並びに非フッ素化ポリマー成分、例えば水またはその他の溶剤、界面活性剤、顔料、フィラー、およびその他の調合物などは除外される。
【0073】
LPTFEは、フルオロポリマーブレンド組成物中の重量で、5重量%、10重量%、もしくは15重量%と同じくらい少なく、または85重量%、90重量%、もしくは95重量%と同じくらい多く含まれることができる。一実施形態では、LPTFEは、ブレンド組成物中40重量%〜60重量%で、例えばフルオロポリマーブレンド組成物中50重量%で含まれることができる。MPFは、フルオロポリマーブレンド組成物中の重量で、85重量%、90重量%、もしくは95重量%と同じくらい多く、または5重量%、10重量%、もしくは15重量%と同じくらい少なく含まれることができる。一実施形態では、MPFは、フルオロポリマーブレンド組成物中40重量%〜60重量%で、例えばブレンド組成物中50重量%で含まれることができる。
【0074】
LPTFEおよびMFAのブレンドには、一実施形態で35重量%〜90重量%のMFA、および10重量%〜65重量%のLPTFEが含まれることができる。別の実施形態で、そのようなブレンドには35重量%〜76重量%のMFA、および24重量%〜65重量%のLPTFEが含まれることができる。別の実施形態で、そのようなブレンドには56重量%〜76重量%のMFA、および24重量%〜44重量%のLPTFEが含まれることができる。別の実施形態で、そのようなブレンドには63重量%〜70重量%のMFA、および30重量%〜37重量%のLPTFEが含まれることができる。更なる実施形態で、そのようなブレンドには67重量%のMFA、および33重量%のLPTFEが含まれることができる。
【0075】
LPTFEおよびFEPのブレンドには、一実施形態で25重量%〜90重量%のFEP、および10重量%〜75重量%のLPTFEが含まれることができる。別の実施形態で、そのようなブレンドには35重量%〜90重量%のFEP、および10重量%〜65重量%のLPTFEが含まれることができる。別の実施形態で、そのようなブレンドには35重量%〜55重量%のFEP、および45重量%〜65重量%のLPTFEか、または60重量%〜90重量%のFEP、および10重量%〜40重量%のLPTFEかのどちらかで含まれることができる。別の実施形態で、そのようなブレンドには40重量%〜50重量%のFEP、および50重量%〜60重量%のLPTFEか、または75重量%〜85重量%のFEP、および15重量%〜25重量%のLPTFEかのどちらかで含まれることができる。更なる実施形態で、そのようなブレンドには50重量%のFEP、および50重量%のLPTFか、または75重量%のFEP、および25重量%のLPTFEかのどちらかで含まれることができる。
【0076】
LPTFEおよびPFAのブレンドには、一実施形態で37重量%〜80重量%のPFA、および20重量%〜63重量%のLPTFEが含まれることができる。別の実施形態で、そのようなブレンドには37重量%〜65重量%のPFA、および35重量%〜63重量%のLPTFEが含まれることができる。別の実施形態で、そのようなブレンドには43重量%〜63重量%のPFA、および37重量%〜57重量%のLPTFEが含まれることができる。別の実施形態で、そのようなブレンドには50重量%〜60重量%のPFA、および40重量%〜50重量%のLPTFEが含まれることができる。更なる実施形態で、そのようなブレンドには53重量%のPFA、および47重量%のLPTFEが含まれることができる。
【0077】
水性分散体が使用される場合、その分散体は各種の固形物含量を有することができる。混合される第一および第二のフルオロポリマーの水性分散体の湿重量は、分散体の固形物含量および所望するフルオロポリマーの相対的重量%を基準にして選択される。複数フルオロポリマーの粉末もまたブレンドでき、所望であれば次いで分散してよい。
【0078】
本明細書で説明されるコーティング組成物はまた、所望であれば好適な添加物、例えば界面活性剤、フィラー、強化材添加物、および顔料などを含有できる。
【0079】
コーティング組成物は任意の標準的調合技法、例えば単純な添加混合または低せん断混合により調製できる。コーティング組成物は、プライマーおよび/またはミッドコートの上に任意の既知技法によって塗布でき、次いで硬化させて、改善された耐摩耗性および剥離特性を有するコーティングを備えたコーティングされた可撓性基材を提供する事ができる。プライマーおよび/またはミッドコートの特定な組成物は広く変更してもよく、本明細書に開示されるコーティングによって示される改善された特性に対して決定的なものであるとは考えられない。しかしながら、下記の実施例7に関連して認められるように、オイルおよびグリースの侵入に対する改善された耐性は、プライマーまたはミッドコートを使用しない場合の本コーティングの下で得ることができる。
【0080】
本コーティングは、用途に応じて15〜80μの乾燥膜厚(DFT)に塗布でき、塗布された厚さに応じて約400℃を越える温度で2〜10分の間で硬化できる。用途および所望される厚さの程度に応じて、コ―ティングは数層に塗布できる。
II.第二実施形態
【0081】
第二実施形態では、本組成物は、高分子量ポリテトラフルオロエチレン(HPTFE)のようなフルオロポリマー主要成分と、ある量の上記LPTFE/MPFをブレンドしたフルオロポリマーとを一緒に含有する。
A.フルオロポリマー主要成分
【0082】
そのフルオロポリマー主要成分には、少なくとも1つのフルオロポリマー、例えばポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンとエチレンのコポリマー(ETFE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロ(アルキルビニルエーテル)のコポリマー(PAVE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロ(エチルビニルエーテル)のコポリマー(PEVE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロ(プロピルビニルエーテル)のコポリマー(PPVE)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロ(メチルビニルエーテル)のコポリマー(PMVE)、テトラフルオロエチレンとヘキサフルオロプロピレンのコポリマー(FEP)、テトラフルオロエチレンとペルフルオロアルコキシ(PFA)とフッ化ポリビニリデン(PVDF)のコポリマー、並びにテトラフルオロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、およびニフッ化ビニリデンのコポリマー(THV)、並びにその他のペルフルオロ化ポリマーが挙げられる。PTFE系のフルオロエラストマーもまた使用できる。
【0083】
一般的には、フルオロポリマー主要成分は1つ以上のペルフルオロ化フルオロポリマー、詳細には1つ以上の従来型の高分子量PTFE(HPTFE)成分であろう。
【0084】
HPTFEの数平均分子量(M)は、一般的に少なくとも500,000であり、少なくとも1,000,000であってもよい。そして液状分散体および/または粉末形態の好適なHPTFEは、多くの市販元から入手可能である。液状HPTFE分散体は一般的に、安定性のために界面活性剤を含有し、「不安定化」HPTFE分散体は一般的に1.0重量%未満の界面活性剤を含有するが、それらHPTFEも同様に入手可能であり、同様に使用できる。粉末が使用される場合、その粉末は一般的には、液体中に分散してコーティング組成物が調製されるであろう。
【0085】
幾つかの実施形態では、HPTFEは、少量の変性コモノマーを含有していてもよく、その場合HPTFEは当技術分野で「変性PTFE」または「微量変性PTFE」として知られるコポリマーである。変性コモノマーの例には、ペルフルオロプロピルビニルエーテル(PPVE)が挙げられ、その他の変性剤例えば、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ペルフルオロブチルエチレン(PFBE)が挙げられ、またはその他のペルフルオロアルキルビニルエーテル例えば、ペルフルオロメチルビニルエーテル(PMVE)、もしくはペルフルオロエチルビニルエーテル(PEVE)が挙げられる。変性コモノマーは一般的に、例えばHPTFEの重量を基準にして1重量%未満の量で存在するであろう。
【0086】
B.LPTFE/MPFブレンド組成物
LPTFE/MPFブレンド組成物は、第一実施形態に対して上記で説明したものである。
【0087】
C.HPTFE/LPTFE/MPFブレンド組成物
本組成物を形成するために、本コーティング組成物成分の水性分散体は任意の順番で、フルオロポリマー粒子に対する凝集、凝固、もしくは繊維形成の可能性を最小化する方法、例えばゆっくりとした攪拌、または別の低せん断もしくは中せん断の方法で攪拌しながら混合できる。液状分散体が使用される場合、その分散体は各種の固形物含量を有することができる。そして当業者は、HPTFE、LPTFEおよびMPFの液状分散体の湿重量が、それら分散体の固形物含量および得られるブレンド組成物において所望されるHPTFE、LPTFE、およびMPFの所望の相対的重量%比率を基準にして選択できることを認識するであろう。
【0088】
一実施形態では、本組成物の全フルオロポリマー成分の固形物含量を基準にして、フルオロポリマーの主要成分は、1重量%、2重量%、4重量%、10重量%、30重量%、35重量%、40重量%、45重量%、55重量%、60重量%、もしくは70重量%と同じくらい低い量で、または80重量%、90重量%、95重量%、96重量%、もしくは98重量%と同じくらい多い量で、または前記値の任意の対の間で規定される範囲内の量で存在する。それと共にブレンドされるフルオロポリマー組成物の各成分もしくは両成分は、1重量%、2重量%、4重量%、5重量%、10重量%、もしくは20重量%と同じくらい低い量で、または 30重量%、40重量%、45重量%、55重量%、60重量%、65重量%、70重量%、96重量%、98重量%、もしくは99重量%と同じくらい多い量で、または前記値の任意の対の間で規定される範囲内の量で存在する。
【0089】
特定の実施形態では、フルオロポリマーの主要成分は、組成物中の全フルオロポリマーの合計重量を基準にして、例えば60〜98重量%、70〜98重量%、もしくは82〜96重量%の量で組成物中に存在できる。LPTFE/MPFのフルオロポリマーブレンドは、組成物中の全フルオロポリマーの合計重量を基準にして、例えば2〜40重量%、2〜30重量%、もしくは4〜18重量%の対応する量で存在できる。
【0090】
LPTFEおよびMPFの互いに関連する量については、特定の実施形態において、LPTFEが、LPTFEおよびMPF成分を合計した固形物含量を基準にして、33重量%〜66重量%、40重量%〜60重量%、45重量%〜55重量%の量で、もしくは50重量%の量で存在できる。それと共にMPFについては、対応する量であって、LPTFEおよびMPF成分を合計した固形物含量を基準にして、33重量%〜66重量%、40重量%〜60重量%、45重量%〜55重量%の間の量で、もしくは50重量%の量で存在できる。換言すれば、LPTFE/MPF比率は、LPTFEおよびMPF成分を合計した固形物含量を基準にして、2:1〜1:2、1.5:1〜1:1.5、1.2:1〜1:1.2で、もしくは1:1であることができる。
【0091】
水性分散体が使用される場合、その分散体は各種の固形物含量を有することができる。混合される第一および第二フルオロポリマーの水性分散体の湿重量は、分散体の固形物含量および所望するフルオロポリマーの相対的重量%を基準にして選択される。複数フルオロポリマーの粉末もまたブレンドでき、次いで分散してよい。
【0092】
本明細書で説明されるコーティング組成物はまた、所望であれば好適な添加物、例えば界面活性剤、フィラー、強化材添加物、および顔料などを含有できる。
【0093】
その組成物は任意の標準的調合技法、例えば単純な添加混合または低せん断混合により調製できる。組成物は、任意の既知技法によってプライマーおよび/またはミッドコートの上に塗布またはオーバーコートでき、次いで硬化させて、改善された耐摩耗性および剥離特性を有するコーティングを備えたコーティングされた可撓性基材を提供することができる。プライマーおよび/またはミッドコートの特定の組成物は広く変更してもよく、本明細書に開示されるコーティングによって示される改善された特性に対して決定的なものであるとは考えられない。しかしながら、下記の実施例7に関連して認められるように、オイルおよびグリースの侵入に対する改善された耐性は、プライマーまたはミッドコートを使用しない場合の本コーティングの下で得ることができる。
【0094】
本コーティングは、用途に応じて15〜80μの乾燥膜厚(DFT)に塗布でき、塗布された厚さに応じて約400℃を越える温度で2〜10分の間で硬化できる。用途および所望される厚さの程度に応じて、コ―ティングは数層に塗布されてもよい。
【0095】
分散体の混合は、LPTFEおよびMPF、並びにHPTFE、LPTFEおよびMPFのサブミクロンレベルでの相互作用を促進させ、均質なブレンドを促進させる結果、そのフルオロポリマーブレンド組成物が乾燥された際に、フルオロポリマーの真のアロイを示す結晶構造が形成され、ブレンド物は個別のフルオロポリマーのものとは異なった溶融特性を有することが分かった。そのフルオロポリマーブレンド組成物を使用して、耐摩耗性、光沢性、接着性が改善され、より大きい接触角を有するコーティングが提供できる。
【0096】
III.物理的特性
上記の第一および第二実施形態の組成物から調製されたコーティングおよびフィルムは、以下の実施例から明らかなように、以下の特性の1つ以上を追加の特性と共に示すことができる。
【0097】
本組成物は、可撓性基材に対して可撓性基材に直接的にもしくは下地コーティングの上に塗布された場合、またはフィルムに形成された場合、水滴に対してヤング式(Young Relation)に従って測定したときに、少なくとも100°の接触角を示し、そして例えば少なくとも110°、120°、125°、130°または135°の接触角を有することができる。接触角は、任意の好適な市販の機器、例えばドイツ国ハンブルグのクルス(Kruss)社から入手可能な「液滴型分析(Drop Shape Analysis)」システム(DSA10)を用いて、ASTM D7334−08に準拠して測定できる。
【0098】
本組成物は、基材に対して基材に直接的にもしくは下地コーティングの上に塗布された場合、またはフィルムに形成された場合、1.5ミクロン未満の表面粗度(Ra、粗さプロファイルの算術平均粗さであり、ミクロンで測定される)を示し、表面粗度は、例えばEN ISO13565に準拠して下記の実施例2で測定されるように、1.3ミクロン未満、1.2ミクロン未満、または1.0ミクロン未満であることができる。
【0099】
本組成物は、可撓性基材に対して可撓性基材に直接的にもしくは下地コーティングの上に塗布された場合、またはフィルムに形成された場合、少なくとも15という、60°での%反射率で測定された光沢度を示すことができる。そのコーティングは、例えば少なくとも25、30、35、40、または45という測定光沢度を有することができる。光沢度は、任意の好適な市販の機器、例えばミクログロス(Microgloss)60°光沢度計(Byk−ガードナー社から入手可能)を用いて、以下の規格:BS 3900/D5、DIN EN ISO2813、DIN67530、EN ISO 7688、ASTM D523、ASTM D1455、ASTM C346、ASTM C584、ASTM D2457、JIS Z8741、MFT 30064、TAPPI T480に準拠して測定される。測定値の単位は%反射率として表わされる。
【0100】
本組成物は、可撓性基材に対して可撓性基材に直接的にもしくは下地コーティングの上に塗布された場合、またはフィルムに形成された場合、下記の実施例6によって得られる、少なくとも60%という光透過性を示し、そのコーティングは、例えば少なくとも70%、少なくとも75%、または少なくとも80%の測定光透過性を有することができる。
【0101】
本組成物は、可撓性基材に対して可撓性基材に直接的にもしくは下地コーティングの上に塗布された場合、下記の実施例8によって得られるように、下記の実施例8で説明される剥離試験で測定され場合、少なくとも4lb/f、少なくとも5lb/f、少なくとも6lb/f、もしくは少なくとも7lb/fの瞬発力(instantaneous force)、および/または少なくとも4lb/f、少なくとも5lb/f、少なくとも6lb/f、もしくは少なくとも7lb/fの動的力性(kinetic force)という接着力が示される。
【実施例】
【0102】
以下に述べる非限定的な実施例は、本発明の種々の特徴および特性を示すが、それらに限定されるものと解釈されるべきではない。実施例および本明細書の他の箇所を通じて、特に指示がない限り、パーセントは重量%である。
【実施例1】
【0103】
可撓性基材、例えばガラスクロスに対する典型的な組成物および用途
【0104】
この実施例では、コーティングを、本発明の第一実施形態に従ってブレンドしたフルオロポリマー組成物から、および本発明の第二実施形態に従って高分子量PTFE(HPTFE)をブレンドしたフルオロポリマーから作製した。
【0105】
この実施例では、これらの組成物をガラスクロスの下地塗装および/またはミッドコートの上にコーティングし、それらコーティングシステムを耐摩耗性、剥離特性、およびその他の特性に関して残りの実施例の中で試験した。
【0106】
下地塗装およびミッドコートの配合を、それぞれ表3Aおよび3Bに明記し、それらは湿重量画分で表示した。一方、表3Cに明記したトップコート成分は乾燥重量画分で表示した。
表3A 下地塗装配合
【0107】
【表3-1】
【0108】
【表3-2】
【0109】
【表3-3】
【0110】
表3B ミッドコート配合
【0111】
【表4-1】
【0112】
【表4-2】
【0113】
表3C トップコート配合
【0114】
【表5-1】
【0115】
【表5-2】
【0116】
【表5-3】
【0117】
トップコートのフルオロポリマー成分は以下のようである。
【0118】
PTFE(HPTFE)−ソルベイD3112X、固形物=60%
【0119】
MFA−ソルベイハイフロン MFA XPH6202−1、ロット番号 実験室品、固形物=27.2%
【0120】
PFA−デュポンPFA TE7224、ロット番号0804330005、固形物=58.6%
【0121】
FEP−デュポンFEP TE9568、固形物=54.0%
【0122】
LPTFE−SFN−D、中昊晨光化工研究院、ただしトップコートF(44)はダイニオン9207TFのPTFEミクロパウダーで作製し、トップコートF(45)はUF8TA表面処理PTFEミクロパウダーで作製した。
【0123】
THV−ダイニオンTHV 340C、固形物=50.0%、バーサミド架橋剤とともに使用した。
【0124】
PAI−PPS:PAIはホイットフォード(Whitford) D7949 PAI溶液、PPSはシェブロンフィリップス(Chevron Phillips )ライトンPPS。
【0125】
全てのコーティング組成物は、標準的ミキサーを用いて中せん断で5〜7分混合した。全てのコーティングは、実験室中で引伸し棒(draw down bars)を用いてガラスクロスに塗布した。ガラスクロス基材のタイプは上記の表3A中に明記し、PDインターグラス社(PD Interglas)またはポルシェインダストリーズ(Porcher Industries)社で生産されたものである。コーティングされた基材は、実験室の260℃(500°F)設定ボックスオーブン中で2分間表面乾燥(flash off)させ、続いて実験室の400℃(752°F)設定オーブンボックス中で1分間硬化させる。
【0126】
対照サンプルは、AFC(Advanced Flexible Composites)社によって通常のPTFE分散体を用いて生産された標準サンプルであり、これらのサンプルは、変性または更なるコーティングが適用されていない。対照サンプルの下地塗装、ミッドコートおよびPTFEトップコートは、全て標準的PTFE分散体である。
【0127】
使用されるライン速度によって、一部の試作においては所定温度における滞留時間を低減させた。これらの場合のサンプルは実験室オーブンボックス中で430℃、2分間後硬化させた。基材温度を測定し、430℃は45〜52秒で到達した。サンプルは全ての試験計画を受けさせて滞留時間が特性に何らかの影響を与えるかどうかを測定した。本明細書の表においてはこのようなサンプルは「再硬化」または「再硬化した」という表示を付ける。
【実施例2】
【0128】
表面粗度、光沢度、および接触角の測定
【0129】
この実施例では、コーティングの表面粗度、光沢度、および接触角を測定した。試験計画は以下のようである。
【0130】
表面粗度。EN ISO13565に準拠して、解析器を装備し、表面をトレースする触針タイプの表面粗度検出器を使用した。これらの機器は例えば、ミツトヨサーフテスト402表面粗度検出解析器(ON L5N 5N1、オンタリオ州トロント、ミシサガ( Mississauga)、Meadowvale Blvd 2121、のミツトヨカナダから入手可能)、およびペルトメーター(Perthometer)M2P/M3P/M4P表面粗度検出解析器(ドイツ、ゲッティンゲンD−37073、カールマール通り1、のマール(Mahr)社)である。これらの機器ではRa(粗さプロファイルの算術平均粗さで、ミクロンで測定される)およびPc(ピーク数)を測定する。
【0131】
手順は以下のようである。最初に、測定するサンプルを準備する。大抵の検出器の構成において、検出器が接近できる平坦な表面を得るようにサンプルをカットする準備が必要である。検出器の粗さレンジを測定予定の予想粗さより少し高いレベルに設定する。トレース長さ、スケール倍率、および測定単位( ヤードポンド法またはメートル法)を設定する。メーカーの指示書に従って、既知の照合標準器を使用して検出器を較正する。同じ方式で、サンプルの表面粗度を測定する。少なくとも6測定を行う。
【0132】
光沢度。光沢度測定は、シーン(Sheen)インスツルメンツ社から入手可能なミニグロスメーター(Miniglossmeter)110V 20−60°を用いて、60°で達成された。光沢計は以下の標準に従った:BS 3900/D5、DIN EN ISO2813、DIN 67530、EN ISO 7688,ASTM D523、ASTM D1455、ASTM C346、ASTM C584、ASTM D2457、JIS Z8741、MFT 30064、TAPPI T480。測定値の単位は%反射率として表示される。
【0133】
接触角。接触角は水滴に関して測定し、度(°)で表示される。測定は、ヤング式に従って、ドイツのハンブルグのクルス(Kruss)社から入手可能な「液滴型分析」系(DSA10)を用いて、ASTM D7334−08に準拠して行った。
【0134】
結果を下記の表4に表示した。
表4 表面粗度、光沢度および接触角
【0135】
【表6-1】
【0136】
【表6-2】
【0137】
上記表4の結果は、本発明の第一および第二の実施形態に従って作製されたコーティング組成物を可撓性ガラス基材に塗布した場合に、対照のトップコートを上回る、顕著な平滑性改善、光沢度増加、および水での接触角増加があることを示す。
【0138】
実施例3 往復摩耗試験
【0139】
往復摩耗試験(RAT、reciprocating abrasion test)をこの実施例の末部で明記される試験基準の下でそれぞれのコーティングについて実行した。その結果を下記の表5に表示する。
【0140】
表5 往復磨耗試験(RAT)
【0141】
【表7-1】
【0142】
【表7-2】
【0143】
上記表の結果は、可撓性ガラス基材に塗布した場合に、本発明の第一および第二の実施形態に従って作製されたトップコートが対照のトップコートを200%までも改善して上回る線状耐摩耗性を有することを示す。
【0144】
往復摩耗試験(RAT)
【0145】
往復摩耗試験は、以下に記述の変更をともなって説明される完結した基準に基づいて実行した。変更点は、(1)コーティングサンプルは基材が10%暴露するまで試験した、(2)試験は周囲温度で3kg加重を用いて実施した、および(3)スコッチブライト(Scotchbrite)7447パッド(3M社)は1000回転ごとに取り替えた、である。
【0146】
完結した試験基準は次のとおりである。
【0147】
目的。この試験は往復運動するスコッチブライトパッドによる摩耗に対するコーティングの耐性を測定する。試験ではコーティングを前後運動の摩耗にかける。本試験は、洗浄によって生じる摩損およびその他類似形態の損傷にさらされたコーティングの耐用寿命を測定するものである。TM 135Cは、ホイットフォード社(ペンシルバニア州ウエストチェスター)で組立てられる試験装置の特に有名である。しかしながら、英国工業規格( British Standard )7069−1988に記載されるもののような同様な試験方式が適用可能である。
【0148】
装置および材料
【0149】
(1)テスト機は、固定された力で試験される表面に対して特定サイズのスコッチブライト摩耗パッドを保持でき、そのパッドを前後の(往復)運動で10〜15cm(4〜6インチ)の距離に渡って移動させることができる。力および運動は、自由落下する加重スタイラスによって適用する。機械はカウンターを装備する必要があり、好ましくは所定の回転数の後で停止するように設定できるものである。
【0150】
(2)要求される摩耗性を有するスコッチブライトパッドを必要なサイズにカットする。スコッチブライトパッドは、3M社研摩材システム部(ミネソタ州55144−1000,セントポール)で製造される。パッドは以下のような各種摩耗レベルの等級で提供される:最低−7445、7448、6448、7447、6444、7446、7440、5440−最高。
【0151】
スコッチブライトパッドは、150℃(300°F)までの温度で使用できる。等価なパッドを使用してもよい。
【0152】
(3)試験試料の加熱用ホットプレート(任意選択)
【0153】
(4)液体を用いてその中で行う試験用の洗剤溶液またはオイル(任意選択)
【0154】
手順
【0155】
試験を開始する前に、終点を定めておく必要がある。その終点は通常、基材の一部が露出される時と規定される。しかしながら、終点は例え基材が露出されないでも所定のストローク数として規定してもよい。本発明者は、標準的な終点の定義として、擦過面積に渡って基材の10%暴露を使用する。その他の終点を使用してもよい。
【0156】
往復パッドの下で試験される成形品を固定する。その成形品はボルト、クランプ、またはテープで堅固に固定させる必要がある。成形品はできるだけ平坦にし、パッドは端部で脱輪することがないように十分な長さである必要がある。表面における隆起は最初に磨耗され、端部脱輪はパッドを引裂く可能性があり、早まった摩損および誤った結果をもたらすであろう。
【0157】
必要とされる摩耗性のスコッチブライトの片をスタイラスの「足部」のサイズに正確にカットする。本発明では、標準として等級7447を使用し、テスト機上のスタイラスの「足部」は5cm(2インチ)直径である。パッドを「足部」の底に取り付ける。スコッチブライトパッドを、一枚の糊付き「ベルクロ(Velcro)」によって足部の底に固定する。
【0158】
その機械が調節可能なストローク長を有する場合、必要な長さに設定する。本発明者は標準として10cm(4インチ)のストローク長を用いる。パッドを試験片の表面に下げる。加重の動きが完全に自由であることを確認する。本発明者は 標準として3.0kg加重を使用したが、加重は変更してもよい。
【0159】
機械がカウンターを装備している場合、カウンターを必要なストローク回数に設定する。一ストロークは一方向における一運動である。機械が自動カウンターを持たない場合、カウンターを監視し、適正な回数で機械を停止するようにしなければならない。機械を各種間隔で停止し、摩耗パッドを交換する。パッドの摩耗性は、パッドにクズが充満するにつれて変化する(通常は効果がより少なくなる)。本発明者は1,000ストローク間隔でパッド交換した。1000ストロークはパッド交換するのに好ましい間隔である。
【0160】
試験機を始動する。終点に到達するまでまたはパッド交換前のストロークの必要回数が達成されるまで動作させる。
【0161】
各始動の開始点および終点において、試験片を注意深く検査する。終点に近付くに連れて、基材がコーティングを通して見え始めるであろう。終点の付近では、試験片を常に観察する。終点に到達したら機械を停止させる。
【0162】
評価
【0163】
試験機に関して以下の事項を記録する。
【0164】
1.スコッチブライトパッドの等級およびサイズ
【0165】
2.スタイラス上の荷重
【0166】
3.パッド交換の間のストローク数
【0167】
4.ストローク長
【0168】
5.終点の定義
【0169】
6.終点までのストローク数
【0170】
繰返し試験によりより高い信頼性が得られる。終点が単一の結果であるか数回の結果の平均であるかを明示する。
【0171】
コーティングの説明、塗膜厚さ、並びに基材および表面調製について記録する。
【0172】
試験が特定のストローク数まで実行された場合は、ストローク数を記録する。摩耗量、例えば露出された基材の%、または最初の基材露出に対するストローク数などを記録する。場合により、塗膜厚さおよび/または試験前後の重量を記録する。
【0173】
試験を高い温度で実施した場合、試験の温度を記録する。液体を用いて実施した場合は液体の仕様を記録する。
【0174】
補足事項/注意事項
【0175】
スコッチブライトパッドの両面を使用してよい。パッドは「足部」に寸法が合うように正確にカットしなければならない。パッド上のホツレのある辺部および起伏点があると不正確な結果を与える。試験片は平坦であり、夾雑物またはその他の粒子がないようにする必要がある。この試験方法は、BS 7069:1988付録A1に記載の摩耗試験と類似している。試験をBS 7069に準拠して行う場合、試験片を家庭用皿洗い洗剤の5g/リッター水の溶液50cm中に浸漬する。その試験は50回ごとにパッドを交換しながら250回続行する。
【0176】
実施例4 テーバー往復摩耗試験(Taber reciprocating abrasion test)
【0177】
テーバー往復摩耗試験は、ASTM D3389に準拠して下記のような条件下で実行した。条件は、(1)試験は重量損失法を用いてテーバー5135 摩耗試験機上で遂行した、(2)各摩耗試験機アームに250g荷重を備えたカリブレーズ(Calibrase)弾性輪H−18を使用し、その輪は1000回ごとに表面再仕上げを行った、および(3)テーバー摩耗指数は次式:
テーバー摩耗指数=損失重量(mg)/サイクル回数
で計算した、である。
【0178】
テーバー試験は一般的に、固定速度で回転する回転盤台に検体(代表的には12.5mm厚さ)を搭載して行う。2つの摩耗輪に特定の圧力をかけて、検体表面上に下降させる。回転盤が回転すると、その輪はサンプルによってサンプルの軸から正接方向に移動する水平軸に関して反対方向に駆動される。試験の間では、真空システムが遊離するクズを取り除きながら、1つの研磨輪は外周に向かう外側方向に検体を擦り、残りの研磨輪は中心に向かう内側方向に検体を擦る。
【0179】
その結果を下記の表6に表示する。
表6 テーバー往復摩耗試験
【0180】
【表8-1】
【0181】
【表8-2】
【0182】
【表8-3】
【0183】
上記表6の結果は、本発明の第一および第二実施形態に従って作製されたトップコートが、可撓性ガラス基材に塗布された場合のテーバー摩耗指数において低減があり、対照のトップコートを上回る改善が横方向耐摩耗耐性に示されることがわかる。
【0184】
実施例5 料理剥離性試験
【0185】
料理剥離性試験を、下記の基準に従って、クッキー生地、鶏肉足部、および卵に関して実施した。結果を1〜5に等級付けした(1−取り除けない、5−残渣および汚れ無しの優れた剥離)。
【0186】
クッキー生地。小さい円形片(約5cm直径)の生地をコーティングした基材の上の中央部に配置し、160℃で12分間料理し、5分間冷却した。剥離の容易性、残渣および汚れを採り入れた剥離性を評価した。
【0187】
ピザ生地。小さい円形片(約5cm直径)の生地をコーティングした基材の上の中央部に配置し、160℃で12分間料理した。5分間冷却させた。剥離の容易性、残渣および汚れを採り入れた剥離性を評価した。
【0188】
鶏肉足部。1つの鶏肉足部をコーティングした基材の上の中央部に配置し、225℃で30分間料理した。5分間冷却させた。剥離の容易性、残渣および汚れを採り入れた剥離性を評価した。
【0189】
卵。卵の試験は他の剥離試験とはわずかに異なった基準に従い、この場合は不成功になるまでの回数(表7のその他の剥離試験に対してレベル3と等価)を見積もった。
【0190】
結果を下記の表7に表示する。
【0191】
【表9-1】
【0192】
【表9-2】
【0193】
【表9-3】
【0194】
上記の表中の結果は、本発明の第一および第二実施形態に従って作製されたトップコートが可撓性ガラス基材に塗布された場合に、試験された全てのタイプの食物に対して剥離性の改善、汚れの低減、および洗浄特性の軽減が対照のトップコートを上回っていることがわかる。
【0195】
実施例6 光透過性試験
【0196】
光透過性試験をTES 1334光度計(TES電子社、台湾、タイペイ)を用いて実行した。測定の単位はルクス(lx)である。
【0197】
サンプルをライトボックス前面の2インチフレームの上に固定し、読みの最大値を測定した。光透過性は、コーティングされたサンプルで測定されたルクス値を未コーティングのサンプルで測定されたルクス値で除算して得られる%で表示される。
【0198】
結果を下記の表8Aに表示する。
表8A 光透過性試験
【0199】
【表10-1】
【0200】
【表10-2】
【0201】
【表10-3】
【0202】
コーティングF(対照46)は、コーティング F(33)と等価であり、かつ同一のHPTFE系の下地塗装およびミッドコートを採用し、トップコート中にHPTFEを含有し、かつ同一のクリーニング(bleached)ガラスクロス基材の上にコーティングされている。従って光透過性試験は、HPTFE/PFA/LPTFEのブレンドであるコーティングF(33)と直接的に比較できる。光透過性%がコーティング重量における変化について調節されている下記の表8Bから分かるように、コーティングF(33)はコーティングF(対照46)よりも31%多く光を透過する。更に、コーティングF(33)は、透き通ったようであるだけでなく、それを通して画像を識別し印刷文字列を読み取れることができる程度に半透明であると分かった。
【0203】
配合F(33)流延成形フィルムは光学的に透明であり、当業者はこれらのフィルムが各種基材と積層することができることを認識するであろう。これらフィルムの透明性は、ボイドフリーの材料が非常に小さい結晶構造を含有していて可視光の妨げになることがないことを示すと考えられる。
【0204】
本明細書で用いられるフィルム流延成形方法を以下に説明するが、当業者があらゆるフィルム流延成形方法が同等に好適であるだろうと認識するように、それに限定されるものではない。
【0205】
フィルムを以下に述べるように調製した。
所望の比率にしたMPF、LPTFE、およびHPTFEの液体ブレンドを作製する。
工程1で作製したブレンドに適切な調合剤を添加する。以下の配合および%を用いて、引き落としの用のブレンドを作製する:
a.PFAに対しては、以下の表8Bの混合物Aを使用する。工程1で作製した量に2/3を乗算する。
【0206】
b.FEPに対しては、以下の表8Bの混合物Bを使用する。工程1で作製した量に0.70を乗算する。
空気泡を避けるように静かに混合物を混合する。
ピペットを用いて、アルミ製脱脂パネルに少量を塗布する。
3ミルのウエットパスバードアプリケーター(wet path bird applicator)を使用して滑らかな運動でコーティング物をパネルの下方に引き出す。
そのパネルを93℃(200°F)で約5〜10分間急速蒸発(flash)させる。
パネルを204℃(400°F)に移動させ、3〜5分追加の急速蒸発を行う。
パネルを399℃(750°F)で10分間硬化させる。
硬化させたパネルからフィルムを注意深く剥離させる。
【0207】
表8B
混合物A
【0208】
【表11-1】
【0209】
混合物B
【0210】
【表11-2】
【0211】
サンプルF(33)をコーティングしたガラスクロスの場合では、このサンプルの透明性は、コーティングが本質的にボイドフリーであるだけでなくコーティング物と織布の繊維との間が密接に接触していることを示している。このような密接な接触は光がその材料を通過するときに内部反射および屈折を生じないので、材料は透明である。コーティングしたガラスクロス試験サンプルを通して画像および印刷文字列を識別する能力では白黒印刷を満足に示すことが若干難しいという条件下で、図55および56はそれぞれ、カラーで明るいF(33)のコーティングでコーティングされたガラスクロスサンプルと、対照F(46)でコーティングされたガラスクロスサンプルとの本比較を示す。
【0212】
これらのサンプルは小さい光源の前面に配置して(図57)写真撮影した。図55および56の比較から、画像品質は、対照F(46)に対してF(33)でかなり良好で明るいことが明確である。図57は、参照の目的でむき出しの光源を示す。
【0213】
表8B 光透過性試験:コーティング重量に対して調節したF(33)とF(対照46)との結果
【0214】
【表11-3】
【0215】
実施例7 オイル吸上試験
【0216】
オイル吸上試験は、基材片を160℃(320°F)温度の落花生オイルに吊るして実行した。オイルがウェブ基材の上方に移動した距離を測定した。使用した測定値単位はミリメーター(mm)であった。
【0217】
オイルは24時間ごとに補給してゲル化を回避した。
【0218】
結果を下記の表9に表示した。
表9 オイル吸上試験
【0219】
【表12】
【0220】
表9は、オイルがコーティングされたガラスクロスの上方に吸い上げられる高さを時間の関数として示す。HPTFE/LPTFE/PFA系を採用したコーティング、すなわちF(33)は、オイルの織布の繊維に沿った侵入および吸上に対してかなり大きい耐性があったことが容易に分かる。このような改善は、F(33)コーティングの場合では対照のF(20)に対して、コーティングとガラスクロスとの間のより高度に密接した接触によるものと考えられる。更にまた、透過性におけるこの低減は、上記実施例6の光透過性試験で論じたように、本コーティングシステムの本質的にボイドフリーの性質によって一層促進されると考えられる。
【0221】
実施例8 接着性試験
接着性試験は以下の条件で実行した。すなわち(1)試験をロイド(Lloyd)LRX引張り試験機(Tensometer)によって遂行した、(2)2細片の織布をPFAフィルムで封止(375℃、25秒)することによって、25mm幅、200mm長さのサンプルを準備した。
【0222】
試験は25mmの距離に対して100mm/分の速度で実行した。3つの測定の平均読み値を引用し、測定値の単位はlbs/fとする。
【0223】
結果を以下の表10に表示した。
表10 接着性試験
【0224】
【表13-1】
【0225】
【表13-2】
【0226】
表10の結果により、可撓性ガラス基材に塗布された場合、対照トップコートの接着特性は本コーティング組成物に保持されるか、または本コーティング組成物においてわずかな改善を示すことが分かる。このことは本コーティング組成物の添加が、基材に対するコーティングの接着性を妨げないことを示している。
【0227】
実施例9 HPTFE/MPF/LPTFEブレンドにおけるLPTFE成分としてLPTFEミクロパウダーを使用することの統計的解析
【0228】
2つのLPTFEミクロパウダーを、HPTFE/MPF/LPTFEトップコートのLPTFE成分として試験し、これらのLPTFE分散体等価物と比較した。結果を下記の表11に示す。表11の結果によれば、ミクロパウダーTF9207(トップコートF(44))およびUF8TA(トップコートF(45))を使用して作製したブレンドを「HPTFE+HPTFE+HPTFE、PFA、ミクロP」によって表示しているが、そのものは、エマルション重合で得られたLPTFEであって、凝集、熱劣化、または放射線照射を受けていないLPTFEを含有するトップコートと同様な挙動を示すことが明らかである。またLPTFEミクロパウダーを含有するトップコートは一般的に、純PTFEに基づいたトップコートよりも優れていることを観察した。
【0229】
しかしながら、「HPTFE+HPTFE+HPTFE、PFA、ミクロP」トップコートは、HPTFE/MPF/LPTFEトップコートと比較した場合、耐摩耗性が劣ることが分かった。従って「HPTFE+HPTFE+HPTFE、PFA、ミクロP」トップコートは、純HPTFEトッコートとHPTFE/MPF/LPTFEトップコートの間の中間的性能であると考えられる。
【0230】
テーバー摩耗試験/テーパー磨耗指数(TWI)のデータに関しては、より低い値がより優れた性能である点に留意すべきである。
【0231】
【表14-1】
【0232】
【表14-2】
【0233】
【表14-3】
【0234】
実施例10 LPTFE/HPTFE/MPFコーティング組成物の
HPTFE/MPFおよびHPTFE/LPTFEコーティング組成物との比較
HPTFE/MPFおよびHPTFE/LPTFEタイプの2成分トップコートの特性を、HPTFE/MPF/LPTFEタイプの3成分トップコートのものと比較して下記の表12に示す。HPTFE/MPFトップコートに関して、これら材料のHPTFE/MPF/LPTFEトップコートに対する材料の最も顕著な弱点は、摩耗性能、特にRAT試験における摩耗性能の大幅な低減であり、これらの材料は純PTFEトップコートよりも更に劣った性能を示した。HPTFE/LPTFEトップコートは、HPTFE/MPFトップコートよりも更に劣った総合摩耗性能を有し、かつ殆どのその他の態様においてHPTFE/MPF/LPTFEトップコートよりも一般的に劣っている。すべての試験に対するすべてのデーターを正規化した場合、表12の最終セクションで示されるランキングが得られ(0〜1のスケールで)、そこではHPTFE/MPE/LPTFEトップコートが、総合的にその他のタイプのものよりも優れていることが明確に分かる。
【0235】
正規化データーは下記の式により得られる。
式1: 表面特性の正規化計算
平均化{[最大(Ra)−(Ra)]/[最大(Ra)−最小(Ra)]、
[光沢度−最小(光沢度)]/[最大(光沢度)−最小(光沢度)]、
[接触角−最小(接触角)]/[最大(接触角)−最小(接触角)]}
式2: 接着性の正規化計算
平均化{[瞬発力−最小(瞬発力)]/[最大(瞬発力)−最小(瞬発力)]、
[動的力性−最小(動的力性)]/[最大(動的力性)−最小(動的力性)]}
式3: 摩耗性能の正規化計算
平均化{[RAT周囲環境初期−最小(RAT周囲環境初期)]/[最大(RAT周囲環境初期)−最小(RAT周囲環境初期)]、
[RAT周囲環境10%−最小(RAT周囲環境10%)]/[最大(RAT周囲環境10%)−最小(RAT周囲環境10%)]、
[最大(TWI1000)−(TWI1000)]/[最大(TWI1000)−最小(TWI1000)]、
[最大(TWI2000)−(TWI2000)]/[最大(TWI2000)−最小(TWI2000)]、
[最大(TWI3000)−(TWI3000)]/[最大(TWI3000)−最小(TWI3000)]}
式4: 剥離性の正規化計算
平均化{[エッグ剥離性−最小(エッグ剥離性)]/[最大(エッグ剥離性)−最小(エッグ剥離性)]、
[クッキー剥離性−最小(クッキー剥離性)]/[最大(クッキー剥離性)−最小(クッキー剥離性)]、
[ピザ剥離性−最小(ピザ剥離性)]/[最大(ピザ剥離性)−最小(ピザ剥離性)]、
[鶏肉剥離性−最小(鶏肉剥離性)]/[最大(鶏肉剥離性)−最小(鶏肉剥離性)]}
式5: 全データーの正規化計算
平均化{正規化表面特性、
正規化接着性、
正規化摩耗性、
正規化剥離性}
【0236】
すなわち、最大値が所望される各試験に関しては、全てのサンプルに対して測定された[実際値−試験で観測された最大値]をその試験の範囲値で除算し、これによりデーターは正規化され、0〜1の尺度値で1がベストである。しかしながら、試験に対する最小値が所望される場合では、全てのサンプルに対して測定された[最大値−実際値]をその試験の範囲値で除算し、これによりこの場合もデーターを0〜1の尺度値で正規化し、1がベストである。次いで、特定のタイプ、例えば剥離性の全テストを組み合わせるために正規化された全ての平均値が取られる。全ての試験に対する単一値が次いで上記式5のように計算できる。
【0237】
表12
【0238】
【表15-1】
【0239】
【表15-2】
【0240】
【表15-3】
【0241】
実施例11 コンタープロット
図1〜18は測定された特性のコンタープロットであり、それには、RATおよびTWI摩耗試験(実施例3および4)、料理剥離試験(実施例5)、並びに表面粗度、接触角、および光沢度試験(実施例2)の、PFAを含有する実施例におけるトップコートのPFA含量およびLPTFE含量に対するプロットが含まれる。
【0242】
図19〜36は測定された特性のコンタープロットであり、それには、RATおよびTWI摩耗試験(実施例3および4)、料理剥離試験(実施例5)、並びに表面粗度、接触角、および光沢度試験(実施例2)の、FEPを含有する実施例におけるトップコートのFEP含量およびLPTFE含量に対するプロットが含まれる。
【0243】
図37〜54は測定された特性のコンタープロットであり、それには、RATおよびTWI摩耗試験(実施例3および4)、料理剥離試験(実施例5)、並びに表面粗度、接触角、および光沢度試験(実施例2)の、PFA、MFA、およびFEP(MPF)を含有する実施例におけるトップコートのMPF含量およびLPTFE含量に対するプロットが含まれる。
【0244】
図15,33,および51において、実施例3および4の摩耗性試験結果が正規化される。図16,34,および52において、実施例5の料理剥離性試験の結果が正規化される。図17、35、および53において、実施例2の表面特性試験(接触角、光沢度、および表面粗度)の結果が正規化される。図18,36,および54において、実施例3および4の摩耗性試験、実施例5の料理剥離性試験、並びに実施例2の表面粗度、接触角、および光沢度試験の結果が正規化される。
【0245】
図18の調査により、最適な総合特性は一般的に、HPTFE+HPTFE+HPTFE、PFA、LPTFEシステムに対して得られることが分かる。特に良好な特性が、[PFA]が2〜25重量%の範囲にあり、かつ[LPTFE]が2〜14重量%の範囲にある場合に、すなわちPFA:LPFEの比率が12.5:1〜1:7の範囲にある場合に得られる。更に優れた総合特性が、[PFA]=4〜18重量%および[LPTFE]=1〜7重量%の範囲で得られる。このことは試験された全てのFEPおよびPFA実施例を含む図54のデーターにおいても確認される。図36の調査により、HPTFE+HPTFE+HPTFE、FEP、LPTFEシステムに対する最適な総合特性は一般的に、[FEP]が1〜6重量%の範囲であり、かつ[LPTFE]が3〜7重量%の範囲である場合に得られることが分かる。
【0246】
全てのデーターの正規化プロットである図54の調査によって、HPTFE、MPF、LPTFEトップコートに対する向上された特性はさまざまな組成物に渡って得ることができ、詳細には[LPTFE]が2〜15重量%、および[MPF]が2〜30重量%もしくはそれ以上の範囲で得られる。同様に、[LPTFE]が15〜90重量%もしくはそれ以上、および[MPF]が15〜85重量%もしくはそれ以上であることができる更なる領域において、未ブレンドのHPTFEまたはLPTFEまたはMPFと比較して向上した特性が示される。
【0247】
一般的には、図1〜54の調査から分かるように、これら3つのタイプのポリマー(HPTFE、LPTFE、およびMPF)のブレンド物は、広範囲の組成物に渡って向上した特性を示し、最適な配合はこれらブレンド物に要求される能力の精密な性質によって決まるであろう。
【0248】
例えば、摩耗性試験データーのより詳細な調査により、最高のRAT性能は[MPF]または[PFA]または[FEP]が2〜6重量%、および[LPTFE]が4〜8重量%の範囲にあるサンプルで見出される。しかしながら、テーバー摩耗試験では少し異なった最適範囲がもたらされ、最適範囲は[MPF]または[PFA]または[FEP]が5〜30重量%もしくはそれ以上、および[LPTFE]が2〜10重量%もしくはそれ以上の範囲にある。そのような相違は、システムに与えられる機械的誤使用の性質が、どの配合で最高の性能が予測されるかを決定するであろうということを示している。
【0249】
当業者には、ブレンドが利用される性能にたいして最も好適な精密な配合は、図1〜54に示される最適な特性領域を検討して決定できることが明らかであろう。
【0250】
好ましい設計を有するものとして本発明を説明してきたが、本発明は本開示の精神および範囲の中で更なる改変が可能である。従って本出願は、その一般的な原理を用いる任意の変更、使用または適応を網羅することを意図する。更に本出願は、本開示から離れるが、本発明がかかわる技術分野にある公知のまたは慣用の実施方法に入るようなものを網羅し、そして添付の特許請求の範囲に従うものと意図する。
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