(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ケーシング(15)と、該ケーシング(15)に収容される電動機(50)と、該電動機(50)によって駆動される駆動軸(60)と、該駆動軸(60)の端部が係合する係合部(43)を有し、該駆動軸(60)に対して偏心して回転する可動スクロール(40)、及び固定スクロール(30)を有する圧縮機構(20)と、上記駆動軸(60)を支持する軸受部(28)、及び上記係合部(43)を収容する収容部(26)を有するハウジング(25)と、上記ケーシング(15)の油溜部(18)の油を搬送する油搬送機構(75)とを備え、
上記駆動軸(60)には、上記油搬送機構(75)で搬送された油を上記係合部(43)の摺動部(44)へ供給する給油通路(70)が形成されるスクロール型圧縮機であって、
上記ハウジング(25)には、
上記収容部(26)の底部(26a)に形成され、上記係合部(43)の摺動部(44)を潤滑した後の油が溜まり込む凹部(78)と、
上記凹部(78)内の油を上記圧縮機構(20)の摺動部(35,45)へ送る給油路(90)と、
が形成され、
上記凹部(78)は、上記軸受部(28)の全周を囲む環状の溝(78)で構成される
ことを特徴とするスクロール圧縮機。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示のスクロール型圧縮機では、収容室の油を圧縮機構の摺動部へ確実に供給するために、収容室内にある程度の油を常に貯留しておく必要がある。一方、このようにして、収容室内にある程度の油が溜まると、収容室に収容される駆動軸ないし係合部が、油に浸かる状態となる。このため、駆動軸が回転する状態において、駆動軸ないし係合部と油との間の摩擦抵抗が大きくなり、ひいては攪拌損失も大きくなって電動機の動力が増大してしまう。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、収容室内での油の攪拌損失を低減できるスクロール型圧縮機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
第1の発明は、ケーシング(15)と、該ケーシング(15)に収容される電動機(50)と、該電動機(50)によって駆動される駆動軸(60)と、該駆動軸(60)の端部が係合する係合部(43)を有し、該駆動軸(60)に対して偏心して回転する可動スクロール(40)、及び固定スクロール(30)を有する圧縮機構(20)と、上記駆動軸(60)を支持する軸受部(28)、及び上記係合部(43)を収容する収容部(26)を有するハウジング(25)と、上記ケーシング(15)の油溜部(18)の油を搬送する油搬送機構(75)とを備え、上記駆動軸(60)には、上記油搬送機構(75)で搬送された油を上記係合部(43)の摺動部(44)へ供給する給油通路(70)が形成されるスクロール型圧縮機を対象とする。そして、このスクロール型圧縮機は、上記ハウジング(25)には、上記収容部(26)の底部(26a)に形成され、上記係合部(43)の摺動部(44)を潤滑した後の油が溜まり込む凹部(78)と、該凹部(78)内の油を上記圧縮機構(20)の摺動部(35,45)へ送る給油通路(70)とが形成され
、上記凹部(78)は、上記軸受部(28)の全周を囲む環状の溝(78)で構成されることを特徴とする。
【0009】
第1の発明では、駆動軸(60)の端部が可動スクロール(40)の係合部(43)に係合することで、駆動軸(60)と可動スクロール(40)とが連結する。電動機(50)が駆動軸(60)を回転駆動すると、固定スクロール(30)に対して可動スクロール(40)が偏心回転する。これにより、固定スクロール(30)と可動スクロール(40)との間の圧縮室の容積が拡縮され、該圧縮室で流体が圧縮される。
【0010】
油搬送機構(75)は、ケーシング(15)の油溜部(18)の油を給油通路(70)を介して駆動軸(60)と係合部(43)との間の摺動部(44)へ供給する。これにより、摺動部(44)が油によって潤滑され、摺動抵抗が小さくなる。係合部(43)の摺動部(44)の潤滑に利用された油は、係合部(43)を収容する収容部(26)の内部へ流出する。本発明では、収容部(26)の底部に凹部(78)が形成されるので、流出した油は凹部(78)の内部へ流れ落ちる。従って、収容部(26)では、係合部(43)の周囲にまで油が溜まり込むことが抑制される。この結果、回転中の係合部(43)における油の攪拌損失が小さくなる。
【0011】
凹部(78)に流れ落ちた油は、給油路(90)を通じて圧縮機構(20)の摺動部(35,45)へ送られる。凹部(78)は、収容部(26)の底部よりも低い位置にあるため、収容部(26)内の油は凹部(78)内へ順次供給される。このため、凹部(78)内の油を圧縮機構(20)の摺動部(35,45)へ確実に供給できる。
【0012】
第
1の発明の凹部は、駆動軸(60)の軸受部(28)の全周を囲む環状の溝(78)で構成される。軸受部(28)の全周に環状の溝を形成すると、ハウジング(25)における環状溝(78)と軸受部(28)との間の部位の弾性係数が小さくなる。このため、駆動軸(60)の回転時に該駆動軸(60)の軸心が傾いてしまったとしても、この部位が駆動軸(60)の外周面に沿うように変形し易くなる。この結果、駆動軸(60)の外周面が軸受部(28)に対して片当たりすることを回避でき、軸受部(28)の軸受負荷を低減できる。
【0013】
第2の発明は、ケーシング(15)と、該ケーシング(15)に収容される電動機(50)と、該電動機(50)によって駆動される駆動軸(60)と、該駆動軸(60)の端部が係合する係合部(43)を有し、該駆動軸(60)に対して偏心して回転する可動スクロール(40)、及び固定スクロール(30)を有する圧縮機構(20)と、上記駆動軸(60)を支持する軸受部(28)、及び上記係合部(43)を収容する収容部(26)を有するハウジング(25)と、上記ケーシング(15)の油溜部(18)の油を搬送する油搬送機構(75)とを備え、上記駆動軸(60)には、上記油搬送機構(75)で搬送された油を上記係合部(43)の摺動部(44)へ供給する給油通路(70)が形成されるスクロール型圧縮機を対象とし、上記ハウジング(25)には、上記収容部(26)の底部(26a)に形成され、上記係合部(43)の摺動部(44)を潤滑した後の油が溜まり込む凹部(78)と、該凹部(78)内の油を上記圧縮機構(20)の摺動部(35,45)へ送る給油路(90)とが形成され、上記ハウジング(25)には、上記収容部(26)の油を上記油溜部(18)へ送る排油路(80)が形成され、該排油路(80)の流入口(80a)は、上記凹部(78)の内部に開口していることを特徴とする。
【0014】
第
2の発明は、係合部(43)の摺動部(44)を潤滑した後、収容部(26)内に流れ落ちた油の一部が、排油路(80)を通じて油溜部(18)へ返送される。これにより、油溜部(18)の油が不足することを回避できる。また、収容部(26)の油を排油路(80)を通じて油溜部(18)へ戻すことで、収容部(26)の油面高さの上昇を抑制できる。従って、係合部(43)が油に浸かってしまうことを防止でき、回転中の係合部(43)における油の攪拌損失が小さくなる。
【0015】
第
2の発明では、収容部(26)から凹部(78)へ流れ落ちた油の一部が、排油路(80)を通じて油溜部(18)へ戻される。このため、凹部(78)の油が収容部(26)へ溢れることを防止でき、収容部(26)の油面高さの上昇を確実に抑制できる。
【0016】
第
3の発明は、第
2の発明において、上記凹部(78)の内部には、上記給油路(90)の流入口(90a)と連通する第1室(S1)と、上記排油路(80)の流入口(80a)と連通する第2室(S2)とを区画する仕切部材(100)が、上記凹部(78)の底部から開口面に亘って形成され、上記第1室(S1)の容積が、上記第2室(S2)の容積よりも大きいことを特徴とする。
【0017】
第
3の発明では、凹部(78)の内部が仕切部材(100)によって第1室(S1)と第2室(S2)とに区画される。給油路(90)と繋がる第1室(S1)の容積は、排油路(80)と繋がる第2室(S2)の容積よりも大きい。このため、係合部(43)の摺動部(44)の潤滑に利用された後、凹部(78)に流れ落ちる油の量も、第2室(S2)より第1室(S1)の方が多くなる。従って、本発明では、給油路(90)を介して圧縮機構(20)の摺動部(35,45)へ供給される油を十分に確保できる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、収容部(26)の底部(26a)に凹部(78)を形成したので、係合部(43)の摺動部(44)の潤滑に利用された油を凹部(78)内へ送ることができる。これにより、収容部(26)内では、係合部(43)が油に浸かってしまうことを抑制でき、回転中の係合部(43)の油の攪拌損失を低減できる。
【0019】
また、係合部(43)によって油が攪拌されると、この油中に圧縮流体が混入したり、この油がミスト状になったりする虞がある。これにより、油は、自重によって油溜部(18)に戻りにくくなり、油溜部(18)の油量が不足してしまう、という問題が生じる。これに対し、本発明では、上述のように係合部(43)が油に浸かってしまうことを抑制できるので、油中に圧縮流体が混入したり、油がミスト状になったりすることも防止できる。従って、摺動部(44)の潤滑に利用された油を速やかに油溜部(18)へ戻すことができ、いわゆる油上がりを防止できる。
【0020】
第
1の発明では、凹部を環状の溝(78)で構成することにより、駆動軸(60)と軸受部(28)の片当たりを防止できる。つまり、本発明では、環状の溝(78)が、油を貯留するための凹部(78)と、いわゆる弾性溝を兼ねる構成となるため、装置構造の簡素化を図ることができる。
【0021】
第
2の発明では、収容部(26)に流出した油が排油路(80)を介して油溜部(18)へ戻るため、係合部(43)が油に浸かってしまうことを防止でき、係合部(43)による油の攪拌を抑制できる。
【0022】
また、第
2の発明では、排油路(80)の流入口(80a)が、凹部(78)の内部に開口するため、凹部(78)の油が収容部(26)へ溢れることを回避できる。この結果、第
2の発明では、収容部(26)の油面の高さの上昇を効果的に抑制でき、係合部(43)による油の攪拌を確実に抑制できる。
【0023】
第
3の発明では、凹部(78)内を仕切部材(100)によって第1室(S1)と第2室(S2)とに区画し、給油路(90)と連通する第1室(S1)の容積を第2室(S2)よりも大きくしたため、給油路(90)から圧縮機構(20)の摺動部(35,45)へ供給される油量が不足してしまうことを防止できる。従って、圧縮機構(20)の摺動部(35,45)を確実に潤滑でき、ひいてはスクロール型圧縮機の信頼性を向上できる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、以下の実施形態は、本質的に好ましい例示であって、本発明、その適用物、あるいはその用途の範囲を制限することを意図するものではない。
【0026】
本発明の実施形態について説明する。本実施形態のスクロール型圧縮機(10)は、全密閉圧縮機である。このスクロール型圧縮機(10)は、冷凍サイクルを行う冷媒回路に接続され、冷媒回路の冷媒を吸入して圧縮する。
【0027】
〈スクロール圧縮機の全体構成〉
図1に示すように、スクロール型圧縮機(10)では、ケーシング(15)の内部空間に、圧縮機構(20)と、電動機(50)と、下部軸受部材(55)と、駆動軸(60)とが収容されている。ケーシング(15)は、縦長の円筒状に形成された密閉容器である。ケーシング(15)の内部空間では、上から下へ向かって順に、圧縮機構(20)と電動機(50)と下部軸受部材(55)とが配置されている。また、駆動軸(60)は、その軸方向がケーシング(15)の高さ方向に沿う姿勢で配置されている。なお、圧縮機構(20)の詳細な構造については、後述する。
【0028】
ケーシング(15)には、吸入管(16)と吐出管(17)とが取り付けられている。吸入管(16)及び吐出管(17)は、何れもケーシング(15)を貫通している。吸入管(16)は、圧縮機構(20)に接続されている。吐出管(17)は、ケーシング(15)の内部空間における電動機(50)と圧縮機構(20)の間の部分に開口している。
【0029】
下部軸受部材(55)は、中央円筒部(56)とアーム部(57)とを備えている。
図1では一つしか図示されていないが、下部軸受部材(55)には、三つのアーム部(57)が設けられている。中央円筒部(56)は、概ね円筒状に形成されている。各アーム部(57)は、中央円筒部(56)の外周面から外側へ延びている。下部軸受部材(55)では、三つのアーム部(57)が概ね等角度間隔で配置されている。各アーム部(57)の突端部は、ケーシング(15)に固定されている。中央円筒部(56)の上端付近には、軸受メタル(58)が挿入されている。この軸受メタル(58)には、後述する駆動軸(60)の副ジャーナル部(67)が挿通されている。中央円筒部(56)は、副ジャーナル部(67)を支持するジャーナル軸受を構成している。
【0030】
電動機(50)は、固定子(51)と回転子(52)とを備えている。固定子(51)は、ケーシング(15)に固定されている。回転子(52)は、固定子(51)と同軸に配置されている。この回転子(52)には、後述する駆動軸(60)の主軸部(61)が挿通されている。固定子(51)の外周面には、固定子(51)の軸方向の両端に亘って、冷媒及び油が流れる複数のコアカット(51a)が形成される。
【0031】
駆動軸(60)には、主軸部(61)と、バランスウェイト部(62)と、偏心部(63)とが形成されている。バランスウェイト部(62)は、主軸部(61)の軸方向の途中に配置されている。主軸部(61)は、バランスウェイト部(62)よりも下側の部分が電動機(50)の回転子(52)を貫通している。また、主軸部(61)では、バランスウェイト部(62)よりも上側の部分が主ジャーナル部(64)を構成し、回転子(52)を貫通する部分よりも下側に副ジャーナル部(67)が形成されている。主ジャーナル部(64)は、ハウジング(25)の中央膨出部(27)に設けられた軸受メタル(28)に挿通されている。副ジャーナル部(67)は、下部軸受部材(55)の中央円筒部(56)に設けられた軸受メタル(58)に挿通されている。
【0032】
偏心部(63)は、駆動軸(60)の上側端部に形成されている。偏心部(63)は、主ジャーナル部(64)よりも小径の円柱状に形成され、主ジャーナル部(64)の上端面に突設されている。偏心部(63)の軸心は、主ジャーナル部(64)の軸心(即ち、主軸部(61)の軸心)と平行で、且つ主ジャーナル部(64)の軸心に対して偏心している。偏心部(63)は、可動スクロール(40)の円筒部(43)に設けられた軸受メタル(44)に挿入されている。可動スクロール(40)の円筒部(43)は、偏心部(63)が回転自在に係合する係合部を構成する。
【0033】
駆動軸(60)には、給油通路(70)が形成されている。この給油通路(70)は、一つの主通路(74)と三つの分岐通路(71〜73)とを備えている。主通路(74)は、駆動軸(60)の軸心に沿って延びており、その一端が主軸部(61)の下端に、その他端が偏心部(63)の上端面に、それぞれ開口している。第1分岐通路(71)は、偏心部(63)に形成されている。この第1分岐通路(71)は、主通路(74)から偏心部(63)の半径方向の外側に延びており、偏心部(63)の外周面に開口している。第2分岐通路(72)は、主ジャーナル部(64)に形成されている。この第2分岐通路(72)は、主通路(74)から主ジャーナル部(64)の半径方向の外側に延びており、主ジャーナル部(64)の外周面に開口している。第3分岐通路(73)は、副ジャーナル部(67)に形成されている。この第3分岐通路(73)は、主通路(74)から副ジャーナル部(67)の半径方向の外側に延びており、副ジャーナル部(67)の外周面に開口している。
【0034】
駆動軸(60)の下端には、油搬送機構としての給油ポンプ(75)が取り付けられている。給油ポンプ(75)は、駆動軸(60)によって駆動されるトロコイドポンプである。この給油ポンプ(75)は、給油通路(70)の主通路(74)の始端付近に配置されている。また、給油ポンプ(75)は、下端に下方に向かって開口して潤滑油である冷凍機油を吸い込む吸込口(76)が形成されている。なお、給油ポンプ(75)は、トロコイドポンプに限定されるものではなく、駆動軸(60)によって駆動される容積型ポンプであればよい。従って、給油ポンプ(75)は、例えばギアポンプであってもよい。
【0035】
ケーシング(15)の底部には、潤滑油である冷凍機油が貯留されている。つまり、ケーシング(15)の底部には、油溜部(18)が形成されている。駆動軸(60)が回転すると、給油ポンプ(75)が油溜部(18)から冷凍機油を吸い込んで吐出し、給油ポンプ(75)から吐出された冷凍機油が主通路(74)を流れる。主通路(74)を流れる冷凍機油は、下部軸受部材(55)や圧縮機構(20)と駆動軸(60)の摺動箇所へ供給される。給油ポンプ(75)は容積型ポンプであるため、主通路(74)における冷凍機油の流量は、駆動軸(60)の回転速度に比例する。
【0036】
図2にも示すように、ケーシング(15)の内部には、電動機(50)の上方にハウジング(25)が設けられている。ハウジング(25)は、厚肉の円板状に形成されており、その外周縁部がケーシング(15)に固定されている。ハウジング(25)の中央部には、中央凹部(26)と、環状凸部(29)とが形成されている。中央凹部(26)は、ハウジング(25)の上面に開口する円柱状の窪みである。中央凹部(26)は、可動スクロール(40)の円筒部(43)及び駆動軸(60)の偏心部(63)を収容する収容部を構成する。環状凸部(29)は、中央凹部(26)の外周に沿って形成され、ハウジング(25)の上面から突出している。環状凸部(29)の突端面は、平坦面となっている。環状凸部(29)の突端面には、その周方向に沿ってリング状の凹溝が形成されており、この凹溝にシール部材(29a)が嵌め込まれている。
【0037】
ハウジング(25)には、中央膨出部(27)が形成されている。中央膨出部(27)は、中央凹部(26)の下側に位置して下方へ膨出している。中央膨出部(27)には、中央膨出部(27)を上下に貫通する貫通孔が形成されており、この貫通孔に軸受メタル(28)が挿入されている。中央膨出部(27)の軸受メタル(28)には、駆動軸(60)の主ジャーナル部(64)が挿通されている。そして、中央膨出部(27)は、主ジャーナル部(64)を支持するジャーナル軸受を構成している。
【0038】
〈圧縮機構の構成〉
図2にも示すように、圧縮機構(20)は、固定スクロール(30)と、可動スクロール(40)とを備えている。また、圧縮機構(20)には、可動スクロール(40)の自転運動を規制するためのオルダム継手(24)が設けられている。
【0039】
ハウジング(25)の上には、固定スクロール(30)と可動スクロール(40)とが載置されている。固定スクロール(30)は、ボルト等によってハウジング(25)に固定されている。一方、可動スクロール(40)は、オルダム継手(24)を介してハウジング(25)に係合しており、ハウジング(25)に対して相対的に移動可能となっている。この可動スクロール(40)は、駆動軸(60)に係合して偏心回転運動を行う。
【0040】
可動スクロール(40)は、可動側鏡板部(41)と、可動側ラップ(42)と、円筒部(43)とを一体に形成した部材である。可動側鏡板部(41)は、円板状に形成されている。可動側ラップ(42)は、渦巻き壁状に形成されており、可動側鏡板部(41)の前面(
図1及び
図2における上面)に突設されている。円筒部(43)は、円筒状に形成され、可動側鏡板部(41)の背面(
図1及び
図2における下面)に突設されている。
【0041】
可動スクロール(40)の可動側鏡板部(41)の背面は、ハウジング(25)の環状凸部(29)に設けられたシール部材(29a)と摺接する。一方、可動スクロール(40)の円筒部(43)は、ハウジング(25)の中央凹部(26)へ上方から挿入されている。円筒部(43)には、偏心部(63)が摺接する摺動部としての軸受メタル(44)が挿入されている。円筒部(43)の軸受メタル(44)には、後述する駆動軸(60)の偏心部(63)が下方から挿入されている。円筒部(43)は、偏心部(63)と摺動するジャーナル軸受を構成している。
【0042】
固定スクロール(30)は、固定側鏡板部(31)と、固定側ラップ(32)と、外周部(33)とを一体に形成した部材である。固定側鏡板部(31)は、円板状に形成されている。固定側ラップ(32)は、渦巻き壁状に形成されており、固定側鏡板部(31)の前面(
図1及び
図2における下面)に突設されている。外周部(33)は、固定側鏡板部(31)の外周部(33)から下方へ延びる厚肉のリング状に形成され、固定側ラップ(32)の周囲を囲っている。
【0043】
固定側鏡板部(31)には、吐出ポート(22)が形成されている。吐出ポート(22)は、固定側鏡板部(31)の中央付近に形成された貫通孔であって、固定側鏡板部(31)を厚さ方向に貫通している。また、固定側鏡板部(31)の外周付近には、吸入管(16)が挿入されている。
【0044】
圧縮機構(20)には、吐出ガス通路(23)が形成されている。この吐出ガス通路(23)は、その始端が吐出ポート(22)に連通している。図示しないが、吐出ガス通路(23)は、固定スクロール(30)からハウジング(25)に亘って形成されており、その他端がハウジング(25)の下面に開口している。
【0045】
圧縮機構(20)において、固定スクロール(30)と可動スクロール(40)は、固定側鏡板部(31)の前面と可動側鏡板部(41)の前面が互いに向かい合い、固定側ラップ(32)と可動側ラップ(42)が互いに噛み合うように配置されている。そして、圧縮機構(20)では、固定側ラップ(32)と可動側ラップ(42)とが互いに噛み合うことによって、複数の圧縮室(21)が形成される。
【0046】
また、圧縮機構(20)では、可動スクロール(40)の可動側鏡板部(41)と固定スクロール(30)の外周部(33)が互いに摺接する。具体的に、可動側鏡板部(41)では、その前面(
図1及び
図2における上面)のうち可動側ラップ(42)よりも外周側の部分が、固定スクロール(30)と摺接する可動側スラスト摺動面(45)となっている。一方、固定スクロール(30)の外周部(33)は、その突端面(
図1及び
図2における下面)が、可動スクロール(40)の可動側スラスト摺動面(45)と摺接する。外周部(33)では、その突端面のうち可動側スラスト摺動面(45)と摺接する部分が、固定側スラスト摺動面(35)となっている。つまり、固定側スラスト摺動面(35)及び可動側スラスト摺動面(45)は、圧縮機構(20)の摺動部を構成する。
【0047】
図2及び
図4に示すように、上述した中央凹部(26)の底部(26a)には、環状溝(78)が形成される。環状溝(78)は、上側に向かって開放される凹部によって構成される。環状溝(78)の中心は、主ジャーナル部(64)の軸心と概ね一致しており、軸受部である軸受メタル(28)の全周を囲んでいる。環状溝(78)は、いわゆる弾性溝を構成している。つまり、ハウジング(25)では、環状溝(78)と軸受メタル(28)の間に上方に突出する筒状凸部(79)が形成される。駆動軸(60)の回転時において、主ジャーナル部(64)が径方向外方に撓んだ状態となると、筒状凸部(79)は主ジャーナル部(64)に沿うように弾性変形する。これにより、主ジャーナル部(64)が軸受メタル(28)に対して線接触してしまう、いわゆる片当たりを防止でき、軸受メタル(28)の軸受負荷を低減できる。
【0048】
ハウジング(25)の中央凹部(26)の内部には、給油通路(70)を通じて主ジャーナル部(64)の軸受メタル(28)の潤滑に利用された油が流出する。ハウジング(25)には、中央凹部(26)に流出した油を油溜部(18)に送るための排油路(80)と、この油を圧縮機構(20)の摺動部(固定側スラスト摺動面(35)及び可動側スラスト摺動面(45)に送るための給油路(90)とが形成される。
【0049】
本実施形態の排油路(80)は、ハウジング(25)の環状凸部(29)に形成される。排油路(80)は、環状凸部(29)の下端部を径方向に貫通する横孔(81)と、該横孔(81)の流出端から下方に延びる縦孔(82)とで構成される。排油路(80)の流入口(80a)は、中央凹部(26)の内部に開口している。排油路(80)の流入口(80a)の下端部の高さは、中央凹部(26)の底部(26a)と概ね同じ高さにある。つまり、排油路(80)の流入口(80a)は、中央凹部(26)の底部(26a)に沿うように配置される。
【0050】
排油路(80)の縦孔(82)の下側には、油捕捉板(83)が設けられる。油捕捉板(83)は、上方に向かって拡径した拡径部(83a)と、該拡径部(83a)から下方に向かって延びる下側ノズル部(83b)とを有している。下側ノズル部(83b)の流出端(下端)は、固定子(51)のコアカット(51a)の内部に位置している。
【0051】
給油路(90)は、ハウジング(25)の中央膨出部(27)から環状凸部(29)に亘って形成される。給油路(90)は、第1給油孔(91)と第2給油孔(92)とで構成される。第1給油孔(91)は、ハウジング(25)の内部において、環状溝(78)から径方向外方に向かって斜め上方に延びている。第1給油孔(91)の流入口(91a)は、環状溝(78)の内部に開口している。第1給油孔(91)の流入口(91a)の高さは、排油路(80)の流入口(80a)の高さよりも低い位置にある。また、第1給油孔(91)の流入口(91a)の高さは、環状溝(78)の底面よりも高い位置にある。これにより、環状溝(78)の底に溜まったゴミ等が、流入口(91a)を通じて給油路(90)に入り込むことを防止でき、ひいては給油路(90)でのゴミ等の詰まりを防止できる。
【0052】
第2給油孔(92)は、第1給油孔(91)の流出端と連通するように、ハウジング(25)の環状凸部(29)を軸方向に貫通して形成される。第2給油孔(92)には、スクリュー部材(93)が挿通されている。スクリュー部材(93)の頭部(93a)は、第2給油孔(92)の下端を閉塞している。第2給油孔(92)では、スクリュー部材(93)により、油の流路が絞られている。つまり、スクリュー部材(93)は、第2給油孔(92)を流れる油を減圧する減圧機構(絞り機構)を構成している。
【0053】
図2及び
図3に示すように、固定スクロール(30)の外周部(33)には、第2給油孔(92)に連通する油連絡通路(94)と、該油連絡通路(94)に連通する油溝(95)とが形成される。油連絡通路(94)の流入端は、ハウジング(25)内部の第2給油孔(92)に接続している。油連絡通路(94)の流出端は、可動スクロール(40)の可動側スラスト摺動面(45)に向かって開口している。油溝(95)は、外周部(33)の固定側スラスト摺動面(35)に形成された凹溝であって、固定側ラップ(32)の周囲を囲むリング状に形成されている。油溝(95)は、油連絡通路(94)の流出端と連通している。
【0054】
−運転動作−
スクロール型圧縮機(10)の運転動作について説明する。
【0055】
〈冷媒を圧縮する動作〉
スクロール型圧縮機(10)において、電動機(50)へ通電すると、駆動軸(60)によって可動スクロール(40)が駆動される。可動スクロール(40)は、その自転運動がオルダム継手(24)によって規制されており、自転運動は行わずに公転運動だけを行う。
【0056】
可動スクロール(40)が公転運動を行うと、吸入管(16)を通って圧縮機構(20)へ流入した低圧のガス冷媒が、固定側ラップ(32)及び可動側ラップ(42)の外周側端部付近から圧縮室(21)へ吸入される。可動スクロール(40)が更に移動すると、圧縮室(21)が吸入管(16)から遮断された閉じきり状態となり、その後、圧縮室(21)は、固定側ラップ(32)及び可動側ラップ(42)に沿ってそれらの内周側端部へ向かって移動してゆく。その過程で圧縮室(21)の容積が次第に減少し、圧縮室(21)内のガス冷媒が圧縮されてゆく。
【0057】
可動スクロール(40)の移動に伴って圧縮室(21)の容積が次第に縮小してゆくと、やがて圧縮室(21)は吐出ポート(22)に連通する。そして、圧縮室(21)内で圧縮された冷媒(即ち、高圧のガス冷媒)は、吐出ポート(22)を通って吐出ガス通路(23)へ流入し、その後にケーシング(15)の内部空間へ吐出される。ケーシング(15)の内部空間において、圧縮機構(20)から吐出された高圧のガス冷媒は、一旦は電動機(50)の固定子(51)よりも下方へ導かれ、その後に回転子(52)と固定子(51)の隙間などを通って上方へ流れ、吐出管(17)を通ってケーシング(15)の外部へ流出してゆく。
【0058】
ケーシング(15)の内部空間のうちハウジング(25)よりも下方の部分では、圧縮機構(20)から吐出された高圧ガス冷媒が流通しており、その圧力は高圧ガス冷媒の圧力と実質的に等しくなっている。従って、ケーシング(15)内の油溜部(18)に貯留された冷凍機油の圧力も、高圧ガス冷媒の圧力と実質的に等しくなっている。
【0059】
一方、ケーシング(15)の内部空間のうちハウジング(25)よりも上方の部分は、図示しないが吸入管(16)と連通しており、その圧力が圧縮機構(20)へ吸入される低圧ガス冷媒の圧力と同程度となっている。従って、圧縮機構(20)では、可動スクロール(40)の可動側鏡板部(41)の外周付近の空間の圧力も、低圧ガス冷媒の圧力と同程度となっている。
【0060】
〈摺動部の給油動作〉
スクロール型圧縮機(10)の運転中には、回転する駆動軸(60)によって給油ポンプ(75)が駆動され、ケーシング(15)の底部に貯留された冷凍機油が給油通路(70)の主通路(74)へ吸い上げられる。主通路(74)を流れる冷凍機油は、その一部が各分岐通路(71〜73)へ流入し、残りが主通路(74)の上端から流出する。第3分岐通路(73)へ流入した油(冷凍機油)は、副ジャーナル部(67)と軸受メタル(58)の隙間へ供給され、副ジャーナル部(67)と軸受メタル(58)の潤滑や冷却に利用される。第2分岐通路(72)へ流入した油は、主ジャーナル部(64)と軸受メタル(28)の隙間へ供給され、主ジャーナル部(64)と軸受メタル(28)の潤滑や冷却に利用される。
【0061】
第1分岐通路(71)へ流入した油は、偏心部(63)と軸受メタル(44)の隙間へ供給され、偏心部(63)と軸受メタル(44)の潤滑や冷却に利用される。軸受メタル(44)の潤滑に利用された油は、中央凹部(26)の内部へ流出する。
【0062】
ところで、中央凹部(26)の内部において、軸受メタル(44)の潤滑に利用された油が溜まり込んでいくと、可動スクロール(40)の円筒部(43)が油に浸かってしまうことがある。このような状態で円筒部(43)が偏心回転運動を繰り返すと、中央凹部(26)内の油が円筒部(43)の抵抗となり、いわゆる攪拌損失が増大して電動機(50)の動力の増大を招く。また、中央凹部(26)内の油が円筒部(43)によって攪拌されると、ケーシング(15)内の高圧のガス冷媒が油に混入したり、油がミスト状に微細化されたりすることがある。これにより、中央凹部(26)内で攪拌された油が、その自重により、最終的に油溜部(18)に戻りにくくなり、油溜部(18)の油量が不足してしまう。そこで、本実施形態では、中央凹部(26)内での円筒部(43)による油の攪拌を防止するために、中央凹部(26)の底部(26a)に環状溝(78)を形成している。
【0063】
具体的に、軸受メタル(44)の潤滑に利用されて中央凹部(26)の内部へ流出した冷媒は、該中央凹部(26)の底部(26a)から環状溝(78)の内部へ流れ落ちる。環状溝(78)内の油面の高さが、第1給油孔(91)の流入口(90a)の高さ位置を越えると、環状溝(78)の油が第1給油孔(91)に流入する。この油は、第1給油孔(91)を通過し、第2給油孔(92)を上方へ流れる。この際、第2給油孔(92)では、スクリュー部材(93)により、高圧の油が減圧される。第2給油孔(92)を通過した油は、固定スクロール(30)の内部の油連絡通路(94)を経由して、油溝(95)に流入する。これにより、圧縮機構(20)では、固定側スラスト摺動面(35)と可動側スラスト摺動面(45)との間の摺動部が油によって潤滑される。
【0064】
このように、中央凹部(26)に流出した油は、環状溝(78)及び給油路(90)を通じて、圧縮機構(20)の摺動部へ適宜供給される。この結果、中央凹部(26)内の油面高さが上昇することが抑制され、可動スクロール(40)の円筒部(43)が油に浸かる面積を抑えることができる。
【0065】
また、環状溝(78)内の油面が上昇し、この油が環状溝(78)から中央凹部(26)へ油が溢れた場合、この油は排油路(80)へ流入する。排油路(80)では、油が横孔(81)、縦孔(82)、油捕捉板(83)を順に流れ、コアカット(51a)へ導かれる。コアカット(51a)内の油は、ケーシング(15)の内周面に沿うようにして更に下方へ流れ、最終的に油溜部(18)へ送られる。
【0066】
このように、環状溝(78)から溢れた油は、排油路(80)を通じて直接的に油溜部(18)へ戻される。このため、中央凹部(26)内の油面高さが上昇することが抑制され、可動スクロール(40)の円筒部(43)が油に浸かる面積を抑えることができる。
【0067】
−実施形態の効果−
上記実施形態によれば、ハウジング(25)の中央凹部(26)の底部(26a)に環状溝(78)を形成したので、軸受メタル(44)の潤滑に利用された油を環状溝(78)内へ捕捉できる。これにより、中央凹部(26)内では、可動スクロール(40)の円筒部(43)が油に浸かってしまうことを抑制でき、回転中の円筒部(43)の油の攪拌損失を低減できる。この結果、電動機(50)の動力を削減でき、省エネ性を向上できる。
【0068】
また、このようにして円筒部(43)による油の攪拌を抑制することで、油中に圧縮流体が混入したり、油がミスト状になったりすることも防止できる。従って、軸受メタル(44)の潤滑に利用された油を速やかに油溜部(18)へ戻すことができ、いわゆる油上がりを防止できる。
【0069】
また、上記実施形態では、主ジャーナル部(64)の軸受メタル(28)の周囲に環状溝(78)を形成することで、この環状溝(78)と軸受メタル(28)の間に筒状凸部(79)を形成できる。これにより、主ジャーナル部(64)が軸心に対して傾いたとしても、この主ジャーナル部(64)に沿って筒状凸部(79)を弾性変形させることができる。従って、軸受メタル(28)に対して主ジャーナル部(64)が片当たりしてしまうのを回避でき、主ジャーナル部(64)の軸受負荷を低減できる。そして、環状溝(78)は、油を捕捉して給油路(90)へ導くための溝と、いわゆる弾性溝とを兼ねているため、ハウジング(25)の構造の簡素化を図ることもできる。
【0070】
また、上記実施形態では、中央凹部(26)に流出した油の一部が、排油路(80)を介して直接的に油溜部(18)へ戻るため、円筒部(43)が油に浸かってしまうことを防止できる。特に、本実施形態では、排油路(80)の流入口(80a)が、中央凹部(26)の底部(26a)に沿うように配置されるため、環状溝(78)から油が溢れたとしても、この油を速やかに排油路(80)へ導入できる。
【0071】
また、上記実施形態では、給油路(90)の流入口(90a)を環状溝(78)の内部に開口させ、排油路(80)の流入口(80a)を中央凹部(26)の内部に開口させている。つまり、給油路(90)の流入口(90a)の高さは、排油路(80)の流入口(80a)の高さよりも低い位置にある。このため、中央凹部(26)の内部に流出した油は、排油路(80)よりも給油路(90)へ優先的に導入されるので、圧縮機構(20)の摺動部(35,45)へ確実に油を供給でき、スクロール型圧縮機(10)の信頼性を向上できる。
【0072】
〈実施形態の変形例1〉
図5に示す変形例1に係るスクロール型圧縮機(10)は、上記実施形態と排油路(80)の構成が異なっている。変形例1の排油路(80)は、その流入口(80a)が環状溝(78)の内部に開口している。具体的に、排油路(80)は、環状溝(78)の内部から径方向外方に延びる横孔(81)と、該横孔(81)の径方向外方端部から下方に延びる縦孔(82)とを有している。環状溝(78)の内部では、給油路(90)の流入口(90a)の高さが、排油路(80)の流入口(80a)の高さよりも低い位置にある。
【0073】
変形例1では、環状溝(78)内の油面の高さが、給油路(90)の流入口(90a)と排油路(80)の流入口(80a)との間にある場合、給油路(90)に優先的に油が導入される。一方、環状溝(78)内の油面の高さが、排油路(80)の流入口(80a)にまで至ると、給油路(90)と排油路(80)との双方へ油が導入される。このように、変形例1においても、中央凹部(26)の内部に流出した油は、排油路(80)よりも給油路(90)へ優先的に導入されるので、圧縮機構(20)の摺動部(35,45)へ確実に油を供給でき、スクロール型圧縮機(10)の信頼性を向上できる。
【0074】
また、変形例1では、環状溝(78)内の油を給油路(90)と排油路(80)との双方へ送るため、環状溝(78)内の油が中央凹部(26)へ溢れてしまうことを防止できる。この結果、可動スクロール(40)の円筒部(43)が油に浸かってしまうことを一層確実に防止できる。
【0075】
変形例1のそれ以外の作用及び効果は、上記実施形態と同様である。
【0076】
〈実施形態の変形例2〉
図6及び
図7に示す変形例2は、上記変形例1と同様のハウジング(25)の構成において、環状溝(78)の内部に仕切部材(100)を設けている。仕切部材(100)は、環状溝(78)の下側の底部から、該環状溝(78)の上側の開口端に亘るように、環状溝(78)の軸方向に延びている。仕切部材(100)は、環状溝(78)の軸方向に直角な断面形状が、略コの字(Uの字)状に形成され、環状溝(78)に嵌合している。
【0077】
仕切部材(100)は、環状溝(78)の内側内周面に沿うように円弧状に湾曲した縦壁部(100a)と、該縦壁部(100a)の周方向の両端にそれぞれ形成される一対の側壁部(100b)とを有している。縦壁部(100a)は、排油路(80)の流入口(80a)に対向する位置に配置される。各縦壁部(100a)は、環状溝(78)の内側内周面から外側外周面に亘って径方向に延びている。この仕切部材(100)により、環状溝(78)の内部は、仕切部材(100)の外側の第1室(S1)と、仕切部材(100)の内側の第2室とに区画される。第1室(S1)には、給油路(90)の流入口(90a)が連通している。第2室(S2)には、排油路(80)の流入口(80a)が連通している。
【0078】
変形例2では、第1室(S1)の上端の開口面積が、第2室(S2)の上端の開口面積よりも大きくなっている。つまり、環状溝(78)の内部では、第1室(S1)の体積が第2室(S2)の体積よりも大きくなっている。このため、変形例2では、中央凹部(26)に流出した油の多くが、第2室(S2)よりも第1室(S1)へ流れ落ちることになり、第1室(S1)に十分な油を貯めることができる。従って、第1室(S1)及び給油路(90)を介して、圧縮機構(20)の摺動部(35,45)へ確実に油を供給でき、スクロール型圧縮機(10)の信頼性を向上できる。
【0079】
変形例2のそれ以外の作用効果は、上記実施形態と同様である。
【0080】
《その他の実施形態》
上記実施形態については、以下のような構成としてもよい。
【0081】
上記
変形例1及び2では、中央凹部(26)の底部(26a)において、主ジャーナル部(64)を囲むように環状の凹部(78)を形成しているが、この凹部(78)は、必ずしも環状でなくてもよく、例えば軸直角な断面形状が、矩形状、直線状、点状であってもよい。つまり、凹部(78)は、中央凹部(26)に流出した油を捕捉できるものであれば、如何なる形状であってもよい。