特許第5655883号(P5655883)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5655883
(24)【登録日】2014年12月5日
(45)【発行日】2015年1月21日
(54)【発明の名称】エンジン制御装置
(51)【国際特許分類】
   F02D 29/02 20060101AFI20141225BHJP
   F02D 17/00 20060101ALI20141225BHJP
【FI】
   F02D29/02 321A
   F02D17/00 Q
【請求項の数】2
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2013-71745(P2013-71745)
(22)【出願日】2013年3月29日
(65)【公開番号】特開2014-196677(P2014-196677A)
(43)【公開日】2014年10月16日
【審査請求日】2014年5月16日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100092978
【弁理士】
【氏名又は名称】真田 有
(72)【発明者】
【氏名】舟越 浩
【審査官】 竹下 和志
(56)【参考文献】
【文献】 特開2006−194141(JP,A)
【文献】 特開2011−202638(JP,A)
【文献】 特開2012−067716(JP,A)
【文献】 特開2011−027072(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02D 13/00 − 28/00
F02D 29/00 − 29/06
F02D 41/00 − 41/40
F02D 41/30 − 45/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両に搭載されるエンジンの作動状態を制御するエンジン制御装置であって、
車速検出手段により検出された前記車両の車速が第一設定車速を上回った後に前記車両の停車を示すことを含む所定の停車時アイドルストップ実施条件が成立すると、前記エンジンを自動的に停止させる停車時アイドルストップを実施する第一制御手段と、
前記車速検出手段により検出された前記車速が前記第一設定車速よりも高い第二設定車速を上回った後に前記第二設定車速よりも低い第三設定車速を下回ったことを含む所定の走行時アイドルストップ実施条件が成立すると、前記車両の走行中に前記エンジンを自動的に停止させる走行時アイドルストップを実施する第二制御手段と、
前記エンジンの自動停止中に所定の再始動条件が成立すると、前記エンジンを自動的に再始動させるアイドルスタートを実施する第三制御手段と、を備え、
前記車両の走行中に前記再始動条件が成立して前記第三制御手段によって前記エンジンが自動的に再始動された場合、前記車両が停車するか、又は前記車速検出手段によって検出される前記車速が前記第二設定車速よりも高い第四設定車速を上回るまでは前記第二制御手段による前記エンジンの自動停止を禁止する
ことを特徴とするエンジン制御装置
【請求項2】
前記第三設定車速は、前記第一設定車速よりも高い
ことを特徴とする、請求項1記載のエンジン制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両に搭載されたエンジンの制御を実施する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両のエンジン制御として、アイドルストップ制御が開発されている。このアイドルストップ制御では、アイドリング時に所定のアイドルストップ実施条件が成立するとエンジンを自動的に停止させ、その後、所定の再始動条件が成立するとエンジンを自動的に再始動させる。
【0003】
アイドルストップ実施条件としては、例えば運転者による制動操作で停車したことが挙げられ、また、再始動条件としては、例えば停車時に運転者による制動操作が解除されることが挙げられる。
上記のアイドルストップ実施条件及び再始動条件によれば、渋滞時や車庫入れなど停車及び発車を頻繁に繰り返す場合には、エンジンの停止及び再始動が頻発してしまうおそれがある。これにより、ドライバビリティの悪化を招いてしまうおそれがある。
【0004】
そこで、エンジンの停止及び再始動の頻発を回避すべく、例えば特許文献1に示される技術が開発されている。この技術では、再始動条件の成立に伴いエンジンを再始動させた場合、その後の車速が所定車速よりも高くなるまでエンジンの自動停止を禁止している。これにより、所定車速を超えない車速範囲で停車及び発車を頻繁に繰り返す場合に、エンジンが自動停止されることがなく、もちろんエンジンが再始動されることもない。
【0005】
一方、エンジンを自動停止させる機会を増加させるために、例えば特許文献2に示される技術が開発されている。この技術では、車両の走行中に、制動操作がされ且つ車速が所定車速を下回ると、停車前であってもエンジンを自動停止している。これにより、エンジンを自動停止させる機会を増加させることができ、燃費を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2012―67716号公報
【特許文献2】特開2011―196288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、エンジンの停止及び再始動の頻発を回避しつつ、エンジンを自動停止させる機会を増加させるためには、特許文献1の技術と特許文献2の技術とを組み合わせることが考えられる。そこで、エンジンの自動停止の開始時点を停車時点から停車直前の走行中に前倒ししたもの(以下、「組合せ技術」という)が考えられる。具体的には、車速が所定車速(以下、「エンジン停止許可車速」という)よりも高くなるまではエンジンの自動停止を禁止し、車速がエンジン停止許可車速を上回った後には、車速が停車直前の車速(以下、「エンジン停止開始車速」という)を下回ると車両走行中からエンジンを自動停止させる技術が考えられる。この場合、エンジン停止開始車速をエンジン停止許可車速よりも低い所定車速に設定することになる。
【0008】
このエンジン停止開始車速を高く設定するほど、エンジンを自動停止させる機会を多くすることができる。しかし、この結果、エンジン停止開始車速がエンジン停止許可車速に接近するので、渋滞路などで車両がエンジン停止開始車速及びエンジン停止許可車速の付近の車速を上下しながら走行していると、エンジンの停止及び再始動が頻発してしまう。
【0009】
これを回避するために、エンジン停止許可車速を高くすることが考えられる。エンジン停止許可車速を高くするほど、エンジン停止許可車速を超えない車速範囲におけるエンジンの停止及び再始動が回避されるため、ドライバビリティが確保されるが、エンジンを自動停止させる機会が減少してしまう。このように、組合せ技術では、エンジンの停止及び再始動の頻発を回避することとエンジンを自動停止させる機会を確保することとがトレードオフの関係になってしまう。
【0010】
本発明の目的の一つは、上記のような課題に鑑み創案されたもので、ドライバビリティを確保するとともに、燃費を向上させることができるようにした、エンジン制御装置を提供することである。
なお、この目的に限らず、後述する発明を実施するための形態に示す各構成により導かれる作用効果であって、従来の技術によっては得られない作用効果を奏することも本発明の他の目的として位置づけることができる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
(1)上記の目的を達成するために、本発明のエンジン制御装置は、車両に搭載される
エンジンの作動状態を制御するエンジン制御装置であって、車速検出手段により検出され
た前記車両の車速が第一設定車速を上回った後に前記車両の停車を示すことを含む所定の
停車時アイドルストップ実施条件が成立すると前記エンジンを自動的に停止させる停車時
アイドルストップを実施する第一制御手段と、前記車速検出手段により検出された前記車
速が前記第一設定車速よりも高い第二設定車速を上回った後に前記第二設定車速よりも低
い第三設定車速を下回ったことを含む所定の走行時アイドルストップ実施条件が成立する
と前記車両の走行中に前記エンジンを自動的に停止させる走行時アイドルストップを実施
する第二制御手段と、前記エンジンの自動停止中に所定の再始動条件が成立すると前記エンジンを自動的に再始動させるアイドルスタートを実施する第三制御手段と、を備え、前記車両の走行中に前記再始動条件が成立して前記第三制御手段によって前記エンジンが自動的に再始動された場合、前記車両が停車するか、又は前記車速検出手段によって検出される前記車速が前記第二設定車速よりも高い第四設定車速を上回るまでは前記第二制御手段による前記エンジンの自動停止を禁止することを特徴としている。
【0012】
)前記第三設定車速は、前記第一設定車速よりも高いことが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエンジン制御装置によれば、車速が第一設定車速を上回った後に停車を示すことを含む所定の停車時アイドルストップ実施条件が成立すると停車時アイドルストップが実施されてエンジンが自動的に停止されるため、例えば車庫入れ時や渋滞時といった第一設定車速を超えない車速範囲で停車及び発車を頻繁に繰り返す場合にエンジンが自動停止されることがない。よって、停車時におけるエンジンの自動停止の頻発を回避して、ドライバビリティを確保することができる。
また、車速が第二設定車速を上回った後に第三設定車速を下回って走行時アイドルストップ実施条件が成立した場合には、走行時(所謂コースト時)にエンジンが自動的に停止されることにより、燃費を向上させることができる。一方、例えば渋滞時における波状走行といった第二設定車速を超えない車速範囲で第三設定車速を繰り返し下回る場合にエンジンが自動停止されることがない。よって、走行時におけるエンジンの自動停止の頻発を回避して、ドライバビリティを確保することができる。
さらに、第二設定車速が第一設定車速よりも高いため、走行時におけるエンジンの自動停止の頻発を回避することによりドライバビリティを確保するとともに、停車時においてエンジンを自動的に停止させる機会を確保することにより燃費を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態にかかるエンジン制御装置を模式的に示す全体図である。
図2】本発明の一実施形態にかかるエンジン制御装置により実施されるアイドルストップ実施条件の判定のうち、アイドルストップの実施を許可するか否かの判定手順を示すフローチャートであり、(a)は停車時におけるアイドルストップの実施許可判定を示し、(b)は走行時おけるアイドルストップの実施許可判定を示す。
図3】本発明の一実施形態にかかるエンジン制御装置により実施されるアイドルストップ実施条件の判定のうち、アイドルストップの実施を開始するか否かの判定手順を示すフローチャートである。
図4】本発明の一実施形態にかかるエンジン制御装置によりアイドルストップが実施されるときの各パラメータを例示するタイムチャートであり、(a)は車速Vを示し、(b)は停車時におけるアイドルストップの実施を許可する条件の成否を示すフラグFsを示し、(c)は走行時におけるアイドルストップの実施を許可する条件の成否を示すフラグFcを示し、(d)は走行時におけるアイドルストップの実施経験の有無を示すフラグFEXPを示し、(e)は運転者による制動操作の有無を示し、(f)はアイドルストップの実施及び不実施を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照して、本発明に係る実施の形態について説明する。本実施形態のエンジン制御装置は、車両に搭載される。この車両には、軽自動車や普通自動車などの乗用自動車,トラックやバスなどの中型自動車或いは大型自動車が含まれる。
【0016】
〔1.一実施形態〕
〔1−1.構成〕
〔1−1−1.制御装置の入出力装置の構成〕
図1を参照して、一実施形態に係る車両の全体構成を説明する。この車両は、エンジン制御装置(以下、「ECU」と略称する)1とその入力側に接続された各検出器3〜5とその出力側に接続されたエンジン2とを備えている。このECU1は、マイクロプロセッサやROM(Read Only Memory),RAM(Random Access Memory)等を集積したLSI(Large Scale Integration)デバイスや組み込み電子デバイスとして構成される電子制御装置である。
【0017】
ECU1の入力側に接続された各検出器3〜5は、ECU1により実施されるアイドルストップ制御に必要な各情報を検出するものである。
本実施形態では、ECU1がアイドルストップ制御を実施するにあたり、運転者による制動操作の情報と車速の情報とが少なくとも必要とされている。このため、ECU1の入力側には、運転者による制動操作(サービスブレーキの操作)を検出するブレーキスイッチ(ブレーキSW)3と車両の速度(車速)Vを検出する車速センサ4とが接続されている。ブレーキスイッチ3により検出された制動操作の情報と車速センサ4により検出された車速Vの情報とは、ECU1に伝達される。
なお、ブレーキスイッチ3は、運転者の制動操作を検出するものであればこれに限らず、ブレーキ液圧センサといった他の検出器であってもよい。この場合、ブレーキ液圧センサにより検出されたブレーキ液圧の情報がECU1に伝達される。
【0018】
さらに、ECU1がアイドルストップ制御を実施するにあたって必要なその他の情報(例えば、運転者によるアクセル操作の情報,ステアリング操作の有無やステアリングトルクの情報,バッテリの充電状態の情報)があれば、その他の情報を検出するその他の検出器5(破線で示す)がECU1の入力側に接続される。
一方、ECU1の出力側に接続されたエンジン2は、ECU1により実施されるアイドルストップ制御の対象となる内燃機関である。
【0019】
〔1−1−2.制御装置の構成〕
ECU1はエンジン2に関する広汎なシステムを制御するが、以下の説明では、エンジン2を自動的に停止させるアイドルストップとエンジン2を自動的に再始動させるアイドルスタートとを実施するアイドルストップ制御にかかる構成に着目してECU1を説明する。
このECU1は、各機能要素として、停車時におけるアイドルストップを実施するための停車時アイドルストップ制御部(第一制御手段)10と、車両走行時(所謂コースト時)におけるアイドルストップを実施するための走行時アイドルストップ制御部(第二制御手段)20と、車両の停止時及び走行時のアイドルスタートを実施するためのアイドルスタート制御部(第三制御手段)30とを有する。
【0020】
停車時アイドルストップ制御部10は、エンジン2の稼働中に停車時アイドルストップ実施条件が成立するとアイドルストップを実施し、走行時アイドルストップ制御部20は、エンジン2の稼働中に走行時アイドルストップ実施条件が成立するとアイドルストップを実施し、アイドルスタート制御部30は、アイドルストップ制御部10,20によるエンジン2の自動停止中に再始動条件が成立するとアイドルスタート(エンジン再始動)を実施する。
以下、停車時アイドルストップ制御部10,走行時アイドルストップ制御部20,アイドルスタート制御部30の順に説明する。
【0021】
〔1−1−2−1.停車時アイドルストップ制御にかかる構成〕
停車時アイドルストップ制御部10は、その機能要素として、停車時アイドルストップ実施条件の成否を判定する停車時アイドルストップ実施条件判定部11を備える。この停車時アイドルストップ制御部10は、停車時アイドルストップ実施条件判定部11により停車時アイドルストップ実施条件の成立が判定されると、停車時におけるアイドルストップを実施する。逆に、停車時アイドルストップ実施条件判定部11により停車時アイドルストップ実施条件の非成立が判定されると、停車時におけるアイドルストップを実施しない。
【0022】
停車時アイドルストップ実施条件判定部11は、停車時におけるアイドルストップの実施を許可する条件(以下、「停車時アイドルストップ許可条件」という)の成否を判定する許可条件判定部11aと、停車時におけるアイドルストップの実施を開始する条件(以下、「停車時アイドルストップ開始条件」という)の成否を判定する開始条件判定部11bとを有する。この停車時アイドルストップ実施条件判定部11は、上記の停車時アイドルストップ許可条件及び停車時アイドルストップ開始条件の何れもが成立したときに、停車時アイドルストップ実施条件が成立したと判定する。なお、停車時アイドルストップ許可条件は停車時アイドルストップ実施条件の前提条件であり、許可条件判定部11aにより停車時アイドルストップ許可条件の成否が判定され、開始条件判定部11bによる停車時アイドルストップ開始条件の成否が判定される。
【0023】
「停車時アイドルストップ許可条件」とは、「車速センサ4により検出された車速Vが第一設定車速V1を上回ったこと」である。すなわち、許可条件判定部11aは、車速センサ4により検出された車速Vが第一設定車速V1を上回ったか否かを判定して、停車時アイドルストップ許可条件の成否を判定する。具体的には、車速Vが第一設定車速V1よりも高くなれば停車時アイドルストップ許可条件の成立判定が保持される。言い換えれば、第一設定車速V1を上回る車速Vでの走行経験があれば停車時アイドルストップ許可条件が成立し、停車や第一設定車速V1以下での車速Vの範囲内(以下、単に「車速範囲内」という)の走行経験しかなければ停車時アイドルストップ許可条件は成立しない。
ここでいう第一設定車速V1は、極低速の走行を強いられる渋滞時や車庫入れなど停車及び発車を頻繁に繰り返す場合の上限車速として予め実験的又は経験的に設定されており、例えば5km/hといった車速を用いることができる。
【0024】
なお、許可条件判定部11aは、アイドルスタート制御部30により停車時のアイドルスタートが実施されると、停車時アイドルストップ許可条件の成立判定をリセットする。詳細には、停車時におけるアイドルスタートの実施後に車速Vが第一設定車速V1を上回るまでは停車時アイドルストップ許可条件の非成立が判定され、車速Vが第一設定車速V1を上回ってから停車時におけるアイドルスタートが実施されるまで停車時アイドルストップ許可条件の成立が判定される。
【0025】
ただし、アイドルスタート制御部30による走行時のアイドルスタートの実施は、許可条件判定部11aによる停車時アイドルストップ許可条件の成否判定に関係がない。したがって、許可条件判定部11aは、走行時におけるアイドルスタートが実施されたとしても実施されなかったとしても、上記したように停車時アイドルストップ許可条件の成否を判定する。
【0026】
「停車時アイドルストップ開始条件」とは、「アイドルストップを実施するのに支障がない諸々の前提条件が何れも成立すると共に運転者による車両停止意思が検出され、且つ、車両が停車したこと」である。
「諸々の前提条件」とは、例えば、エンジン2が暖機運転を完了していること、エンジン2で駆動される機器が非作動或いは作動要求がないこと(例えば、エンジン2で駆動されるコンプレッサを用いるエアコンが非作動であることや、エンジン2で駆動される発電機によるは発電電力を使用する車両の機器類が非作動であること、エンジン2の吸気負圧を利用するブレーキのマスタバック負圧が所定値以上であること等)、排気浄化用の触媒が活性化していること、エンジン2の作動にかかるセンサ類が正常であること等などがあげられる。
【0027】
「運転者による車両停止意思が検出される」とは、「サービスブレーキが操作されていることが検出される」ことであるが、アクセル操作がされていないこと(エンジンがアイドリング状態であること)も必要な前提条件である。
「車両が停車したこと」とは、車速センサ4により検出された車速Vが停車を示すことを意味する。具体的には、車速センサ4により検出された車速Vが0km/hやその極近傍の停車判定車速以下であることを意味する。以下、「車両が停車したこと」という場合にも同様の意味で用いる。
【0028】
開始条件判定部11bは、上記諸々の前提条件が何れも成立している状況下で運転者による制動操作によって停車すると停止時アイドルストップ開始条件の成立を判定する。言い換えれば、開始条件判定部11bは、上記諸々の前提条件の成立下で、ブレーキスイッチ3により運転者の制動操作が検出されている場合に、車速センサ4により検出された車速Vが停車を示すか否かを判定して、車両が停車したか否かを判定する。つまり、停車時アイドルストップ開始条件は、停車するまでは成立せず、停車すると成立する。
【0029】
〔1−1−2−2.走行時アイドルストップ制御にかかる構成〕
走行時アイドルストップ制御部20は、その機能要素として、走行時アイドルストップ実施条件の成否を判定する走行時アイドルストップ実施条件判定部21を備える。この走行時アイドルストップ制御部20は、走行時アイドルストップ実施条件判定部21により走行時アイドルストップ実施条件の成立が判定されると、走行時におけるアイドルストップを実施する。逆に、走行時アイドルストップ実施条件判定部21により走行時アイドルストップ実施条件の非成立が判定されると、走行時におけるアイドルストップを実施しない。
【0030】
走行時アイドルストップ実施条件判定部21は、走行時におけるアイドルストップの実施を許可する条件(以下、「走行時アイドルストップ許可条件」という)の成否を判定する許可条件判定部21aと、走行時におけるアイドルストップの実施を開始する条件(以下、「走行時アイドルストップ開始条件」という)の成否を判定する開始条件判定部21bとを有する。この走行時アイドルストップ実施条件判定部21は、上記の走行時アイドルストップ許可条件及び走行時アイドルストップ開始条件の何れもが成立したときに、走行時アイドルストップ実施条件が成立したと判定する。なお、走行時アイドルストップ許可条件は走行時アイドルストップ実施条件の前提条件であり、許可条件判定部21aにより走行時アイドルストップ許可条件の成否が判定され、開始条件判定部21bによる走行時アイドルストップ開始条件の成否が判定される。
【0031】
「走行時アイドルストップ許可条件」は、「車速センサ4により検出された車速Vが、走行時におけるアイドルストップの実施を許可する判定車速として予め設定された第二設定車速V2を上回ったこと」及び「走行時におけるアイドルストップの実施を経験していない(リセットされている)こと」である。
ここでいう第二設定車速V2は、上記の第一設定車速V1よりも高く、車両の巡航走行時の下限車速よりも低い車速であるとともに、低速での波状運転を強いられる渋滞時などの上限車速として予め実験的又は経験的に設定されており、例えば25km/hといった車速を用いることができる。
【0032】
また、走行時におけるアイドルストップの実施経験は、直近の車両走行中にアイドルストップが実施されたら実施経験ありとされ、少なくとも下記の(A1)又は(A2)の場合にリセットされる。
(A1)車両が停車したこと。
(A2)車速センサ4により検出された車速Vが第四設定車速V4を上回ったこと。
【0033】
上記(A1)の場合、走行中にアイドルストップが実施された後に停車すると、アイドルストップの実施経験がリセットされる。また、上記(A2)の場合、走行中にアイドルストップが実施された後に停車することなく車速Vが第四設定車速V4を上回ると、アイドルストップの実施経験がリセットされる。
ここでいう第四設定車速V4は、上記の第二設定車速V2よりも高く、低速或いは中速での波状運転を強いられる渋滞時などの上限車速として予め実験的又は経験的に設定されており、例えば40km/hといった車速を用いることができる。
【0034】
以下、「走行時アイドルストップ許可条件」を、走行中におけるアイドルストップの走行経験が上記(A1)の場合にリセットされたときのもの、上記(A2)の場合にリセットされたときのものの順に説明する。
【0035】
「走行時アイドルストップ許可条件」は、上記(A1)が成立して走行中におけるアイドルストップの実施経験がリセットされた場合には「車速センサ4により検出された車速Vが第二設定車速V2を上回ったこと」である。すなわち、許可条件判定部21aは、車速センサ4により検出された車速Vが第二設定車速V2を上回ったか否かを判定して、走行時アイドルストップ許可条件の成否を判定する。具体的には、走行中におけるアイドルストップが実施された後に停車した場合、車速Vが第二設定車速V2よりも高くなれば走行時アイドルストップ許可条件が成立していると判定される。言い換えれば、走行時アイドルストップ許可条件は、上記(A1)が成立して走行中におけるアイドルストップの実施経験がリセットされてから、第二設定車速V2を上回る車速Vでの走行経験があれば成立し、第二設定車速V2以下の車速範囲内の走行経験しかなければ成立しない。
【0036】
一方、「走行時アイドルストップ許可条件」は、上記(A2)が成立して走行中におけるアイドルストップの実施経験がリセットされると成立する。すなわち、許可条件判定部21aは、走行中にエンジン2が自動再始動された後に停車することなく走行を継続した場合、車速センサ4により検出された車速Vが第四設定車速V4を上回ったか否かを判定して、走行時アイドルストップ許可条件の成否を判定する。具体的には、車速Vが第四設定車速V4よりも高くなれば走行中におけるアイドルストップの実施経験がリセットされて走行時アイドルストップ許可条件が成立していると判定される。
すなわち、第四設定車速V4は第二設定車速V2よりも高く設定されているため、車速Vが第四設定車速V4を上回った場合には、必然的に「車速センサ4により検出された車速Vが、走行時におけるアイドルストップの実施を許可する判定車速として予め設定された第二設定車速V2を上回ったこと」と上記(A2)の場合の「走行時におけるアイドルストップの実施を経験していない(リセットされている)こと」とが満たされ、走行時アイドルストップ許可条件が成立する。言い換えれば、走行時アイドルストップ許可条件は、走行中にエンジン2が自動再始動された後に停車することなく走行を継続した場合、第四設定車速V4を上回る車速Vでの走行経験があれば成立し、第四設定車速V4以下の車速範囲内の走行経験しかなければ成立しない。
【0037】
つまり、「走行時アイドルストップ許可条件」は、車両の走行中に後述する再始動条件が成立してアイドルスタート制御部30によってエンジン2が自動的に再始動された後は、(i)車両が停止していない、又は、(ii)車速センサ4によって検出された車速Vが第四設定車速V4を上回っていないと成立しない。
このように、車両の走行中に再始動条件が成立してアイドルスタート制御部30によってエンジン2が自動的に再始動された場合、車両が停車する、又は、車速センサ4によって検出された車速Vが第二設定車速V2よりも高い第四設定車速V4を上回るまでは走行時アイドルストップ制御部20によるアイドルストップが禁止される。
【0038】
言い換えれば、ECU1は、車両の走行中に再始動条件が成立してアイドルスタート制御部30によってエンジン2が自動的に再始動された場合、車両が停車するか、又は、車速センサ4によって検出された車速Vが第二設定車速V2よりも高い第四設定車速V4を上回るまでは走行時アイドルストップ制御部20によるアイドルストップを禁止する。
【0039】
「走行時アイドルストップ開始条件」とは、「アイドルストップを実施するのに支障がない諸々の前提条件が成立すると共に運転者による車両停止意思が検出され、且つ、車速センサ4により検出された車速Vが第三設定車速V3を下回ったこと」である。「停車時アイドルストップ開始条件」の車速条件が「車速Vが停車を示すこと」であるのに対して、「走行時アイドルストップ開始条件」の車速条件は「車速Vが第三設定車速V3を下回ったこと」であり、この車速条件が相違する。
「走行時アイドルストップ開始条件」と「停車時アイドルストップ開始条件」とでは、車速条件以外にも、例えばステアリングトルクの判定閾値などの一部の条件は異なるが、その他の条件は同様に設定されている。
【0040】
開始条件判定部21bは、上記の諸々の前提条件が何れも成立している状況下で、ブレーキスイッチ3により運転者の制動操作が検出されている場合に、車速センサ4により検出された車速Vが第三設定車速V3を下回ったか否かを判定して、走行時アイドルストップ開始条件の成否を判定する。具体的には、車速Vが第三設定車速V3を下回れば走行時アイドルストップ開始条件の成立が判定され、そうでなければ走行時アイドルストップ開始条件の非成立が判定される。
ここでいう第三設定車速V3は、本実施形態では上記の第二設定車速V2よりも低く、運転者が停車させようとしていると見做すことのできる停車直前の上限車速として予め実験的又は経験的に設定されており、例えば12km/hといった車速を用いることができる。
【0041】
このように、ECU1には、アイドルストップの実施にかかる条件として、停車時アイドルストップ実施条件と走行時アイドルストップ実施条件とがそれぞれ用意されている。詳細には、停車時におけるアイドルストップの実施にかかる判定車速としての第一設定車速V1と、走行時におけるアイドルストップの実施にかかる判定車速としての第二設定車速V2,第三設定車速V3及び第四設定車速V4とのそれぞれが用意されており、第一設定車速V1と第二設定車速V2,第三設定車速V3及び第四設定車速V4とが個別に設定されている。
【0042】
なお、上記の各アイドルストップ実施条件に、例えば運転者によりステアリング操作がされていないことやバッテリ充電状態がセルモータ(図示略)でエンジン2を始動させるのに十分であることなどのその他の条件を加重してもよい。この場合、各アイドルストップ実施条件判定部11,21は、その他の検出器5による検出情報に基づきその他の条件の成否を判定して各アイドルストップ実施条件の成否を判定する。
【0043】
〔1−1−2−3.アイドルススタート制御にかかる構成〕
アイドルスタート制御部30は、その機能要素として、再始動条件の成否を判定する再始動条件判定部31を備える。「再始動条件」とは、「運転者による車両発進意思が検出されたこと、及び、上記の各アイドルストップ開始条件の諸々の前提条件の何れかが不成立となったこと、の少なくとも何れかが成立すること」である。「運転者による車両発進意思が検出された」とは、「運転者によるサービスブレーキの操作解除が検出された」ことである。したがって、本実施形態では、アイドルストップ開始条件が成立すると再始動条件は非成立となり、逆に、再始動条件が成立するとアイドルストップ開始条件は非成立となる。
【0044】
アイドルスタート制御部30は、アイドルストップが実施されているエンジンの自動停止中に、再始動条件判定部31により再始動条件の成立が判定されると、アイドルスタートを実施する。逆に、アイドルストップが実施されているときに、再始動条件判定部31により再始動条件の非成立が判定されると、アイドルスタートを実施しない。
【0045】
再始動条件判定部31は、ブレーキスイッチ3からの検出信号に基づいて運転者による車両の制動操作の有無を判定すると共に、上記の諸々の前提条件の成立,不成立を判定して、再始動条件の成否を判定する。
なお、運転者の車両発進意思にかかる再始動条件は、上記のものに限らず、例えば運転者によりアクセル操作やステアリング操作がされたこととしてもよい。この場合、再始動条件判定部31は、その他の検出器5からの検出情報に基づいて再始動条件の成否を判定する。
【0046】
〔1−2.フローチャート〕
次に、図2及び図3のフローチャートを参照して、ECU1で実施される制御手順を説明する。各フローチャートは所定の制御処理周期で繰り返し実施される。また、各フローチャート中の各ステップは、ECU1のハードウェアに割り当てられた各機能がソフトウェア(コンピュータプログラム)によって動作することで実施される。
【0047】
〔1−2−1.アイドルストップ許可条件の判定フロー〕
以下、図2を参照して、アイドルストップの実施を許可する判定を説明する。
はじめに、図2(a)を参照して、停車時アイドルストップ許可条件の判定を説明する。なお、図2(a)及び後述する図3に示すフラグFsは、1であれば停車時アイドルストップ許可条件の成立を示し、0であれば停車時アイドルストップ許可条件の非成立を示す。
【0048】
ステップA10では、フラグFsが0か否かを判定する。つまり、このステップA10では、停車時アイドルストップ許可条件が非成立か否かを判定している。停車時アイドルストップ許可条件が非成立であればステップA20へ移行し、そうでなければ本制御処理周期を終了(以下、「リターン」という)する。
ステップA20では、車速Vが第一設定車速V1よりも高いか否かを判定する。つまり、このステップA20では、車速Vが第一設定車速V1を上回ったか否かを判定している。車速Vが第一設定車速V1を上回っていればステップA30へ移行し、そうでなければリターンする。
ステップA30では、フラグFsを1にセットする。そしてリターンする。
【0049】
次に、図2(b)を参照して、走行時アイドルストップ許可条件判定を説明する。なお、図2(b)及び後述する図3に示すフラグFcは、1であれば走行時アイドルストップ許可条件の成立を示し、0であれば走行時アイドルストップ許可条件の非成立を示す。また、フラグFEXPは、1であれば直近の車両走行時にアイドルストップが実施されていることを示し、0であれば直近の車両走行時にアイドルストップが実施されていないことを示す。
【0050】
ステップB10では、フラグFcが0か否かを判定する。つまり、このステップB10では、走行時アイドルストップ許可条件が非成立か否かを判定している。走行時アイドルストップ許可条件が非成立であればステップB20へ移行し、そうでなければリターンする。
ステップB20では、フラグFEXPが0か否かを判定する。つまり、このステップB20では、直近の車両走行時にアイドルストップの実施がされていないか否かを判定している。直近の車両走行時にアイドルストップが実施されていなければステップB30へ移行し、そうでなければステップB50へ移行する。
【0051】
ステップB30では、車速Vが第二設定車速V2よりも高いか否かを判定する。つまり、このステップB20では、車速Vが第二設定車速V2を上回ったか否かを判定している。車速Vが第二設定車速V2を上回っていればステップB40へ移行し、そうでなければリターンする。
ステップB40では、フラグFcを1にセットする。そしてリターンする。
また、ステップB50では、車両が停車した(V≒0)か否かを判定する。車両が停車していればステップB60へ移行し、そうでなければステップB70へ移行する。
ステップB60ではフラグFEXPを0にセットする。そしてリターンする。
【0052】
ステップB70では、車速Vが第四設定車速V4よりも高いか否かを判定する。つまり、このステップB70では、車速Vが第四設定車速V4を上回ったか否かを判定している。車速Vが第四設定車速V4を上回っていればステップB80へ移行し、そうでなければリターンする。
ステップB80では、フラグFEXPを0にセットするとともにフラグFcを1にセットする。そしてリターンする。
【0053】
〔1−2−2.アイドルストップ開始条件の判定フロー〕
以下、図3を参照して、走行時及び停車時におけるアイドルストップ開始条件の判定を説明する。
まず、ステップC10では、車速条件以外の各アイドルストップ開始条件が成立したか否かを判定する。つまり、ステップC10では、車速条件以外の停車時アイドルストップ開始条件及び走行時アイドルストップ開始条件のそれぞれの成否を判定しており、これらのアイドルストップ開始条件の何れもが成立したか否かを判定している。これは、再始動条件が非成立か否かを判定していることにもなっている。車速条件以外の各アイドルストップ開始条件の成立が判定されるとステップC20へ移行し、非成立が判定されるとステップC100へ移行する。
【0054】
ステップC20では、フラグFcが1か否かを判定する。つまり、このステップC20では、走行時アイドルストップ許可条件の成否を判定している。走行時アイドルストップ許可条件が成立していれば(フラグFcが1であれば)ステップC30へ移行し、そうでなければ(フラグFcが0であれば)ステップC70へ移行する。
【0055】
ステップC30では、車速Vが第三設定車速V3よりも低いか否かを判定する。つまり、このステップC30では、走行時アイドルストップ開始条件の車速条件の成否を判定している。この車速条件が成立していれば(車速Vが第三設定車速V3よりも低ければ)ステップC40へ移行し、そうでなければリターンする。
ステップC40では、車両が停車した(V≒0)か否かを判定する。このステップC40では、停車時アイドルストップ開始条件の車速条件の成否を判定している。この車速条件が成立(V≒0)していればステップC80へ移行し、そうでなければステップC50へ移行する。
ステップC50では、走行時におけるアイドルストップを実施する。そしてステップC60へ移行する。
ステップC60では、フラグFEXPを1にセットする。そしてリターンする。
【0056】
また、ステップC70では、ステップC40と同様に、車両が停車した(V≒0)か否かを判定する。車両が停車していればステップC80へ移行し、そうでなければリターンする。
ステップC80では、フラグFsが1か否かを判定する。つまり、このステップC80では、停車時アイドルストップ許可条件の成否を判定している。停車時アイドルストップ許可条件が成立していれば(フラグFsが1であれば)ステップC90へ移行し、そうでなければ(フラグFsが0であれば)リターンする。
【0057】
なお、ステップC80では、走行時アイドルストップ許可条件の非成立が判定(C20のNOルート)されている場合に車両が停車(C70のYESルート)し、停車時アイドルストップ許可条件の非成立(C80のNOルート)のときに、リターンする。
また、ステップC40からステップC80に移行した場合には、走行時アイドルストップ許可条件が成立しているため、必然的に停車時アイドルストップ条件も成立することになる。したがって、ステップC40からステップC80に移行した場合には、ステップC90へ移行する。
ステップC90では、停車時におけるアイドルストップを実施する。そしてリターンする。
【0058】
また、ステップC100では、アイドルストップの実施によりエンジン停止中か否かを判定する。エンジン停止中であればステップC110へ移行し、エンジン稼働中であればリターンする。
ステップC110では、車両が停車した(V≒0)か否かを判定する。車両が停車していればステップC120へ移行し、そうでなければステップC130へ移行する。
ステップC120では、フラグFs及びフラグFcの何れもを0にセットする。そしてステップC140へ移行する。
また、ステップC130では、フラグFcだけを0にセットする。そしてステップC140へ移行する。
ステップC140では、アイドルスタートを実施する。そしてリターンする。
【0059】
〔1−3.効果〕
本実施形態のエンジン制御装置は、上述のように構成されるため、以下のような効果を得ることができる。
停車時アイドルストップ制御部10は、車速センサ4により検出された車速Vが第一設定車速V1を上回った後に停車を示すことを含む停車時アイドルストップ実施条件が成立すると停車時における車両のエンジン2を自動的に停止させるアイドルストップを実施するため、例えば車庫入れ時や渋滞時といった第一設定車速V1を超えない車速範囲で停車及び発車を頻繁に繰り返す場合に停車時におけるアイドルストップが実施されることがなく、もちろんエンジン2が自動的に再始動させるアイドルスタートが実施されることもない。よって、停車時におけるアイドルストップの頻発を回避して、ドライバビリティを確保することができる。
【0060】
走行時アイドルストップ制御部20は、車速センサ4により検出された車速Vが第二設定車速V2を上回った後に第二設定車速V2よりも低い第三設定車速V3を下回ったことを含む走行時アイドルストップ実施条件が成立すると車両の走行時におけるアイドルストップを実施するため、車速センサ4により検出された車速Vが第二設定車速V2を上回った後に第三設定車速V3を下回った場合には、走行時アイドルストップ実施条件が成立して走行時アイドルストップ制御部20により走行時のアイドルストップが実施されることにより、燃費を向上させることができる。一方、例えば渋滞時における波状走行といった第二設定車速V2を超えない車速範囲で第三設定車速V3を繰り返し下回る場合にエンジン2が自動停止されることがなく、もちろんエンジン2が再始動されることもない。よって、走行時におけるアイドルストップの頻発を回避して、ドライバビリティを確保することができる。
【0061】
さらに、走行時のアイドルストップにかかる走行時アイドルストップ実施条件の第二設定車速V2が第一設定車速V1よりも高いため、車速センサ4により検出された車速Vが第一設定車速V1を上回るものの第二設定車速V2を超えない車速範囲で第三設定車速V3を繰り返し下回った後に停車した場合には、走行時アイドルストップ実施条件は成立せずに停車時アイドルストップ実施条件が成立する。このため、走行時アイドルストップ制御部20による走行時のアイドルストップは実施されずに停車時アイドルストップ制御部10により停車時のアイドルストップが実施される。したがって、走行時におけるアイドルストップの頻発を回避することによりドライバビリティを確保するとともに、停車時におけるアイドルストップの実施機会を確保することにより燃費を向上させることができる。
【0062】
〔発明が解決しようとする課題〕の欄で上述の組合せ技術では、アイドルストップの実施を許可する判定に用いる判定車速としてのエンジン停止許可車速が一つしか用意されておらず、このエンジン停止許可車速がエンジン停止開始車速(「第三設定車速V3」に対応)よりも高いほど、エンジン停止許可車速を超えない車速範囲でエンジン停止開始車速を下回ったときのアイドルストップの頻発を回避することができるため、エンジン停止許可車速をエンジン停止開始車速よりも低く設定することができない。一方で、エンジン停止許可車速が高いほど、車速がエンジン停止許可車速を超えなければ走行時におけるアイドルストップと停車時におけるアイドルストップとの何れもが禁止されてしまうため、燃費を向上させることができない。
【0063】
これに対し、本実施形態のエンジン制御装置は、アイドルストップの実施判定に用いる判定車速として、停車時のアイドルストップにかかる第一設定車速V1と走行時のアイドルストップにかかる第二設定車速V2,第三設定車速V3及び第四設定車速V4とのそれぞれが用意されているため、第一設定車速V1と第二設定車速V2,第三設定車速V3及び第四設定車速V4とをそれぞれ個別に設定することができる。
【0064】
特に本実施形態では、第三設定車速V3が第一設定車速V1よりも高く設定されているため、車速センサ4により検出された車速Vが第一設定車速V1を上回った後に第二設定車速V2を超えない車速範囲で繰り返し第三設定車速V3を下回って停車した場合には、走行時アイドルストップ実施条件が成立せずに走行時のアイドルストップが実施されず、停車時アイドルストップ実施条件が成立して停車時のアイドルストップが実施される。したがって、走行時におけるアイドルストップの頻発を回避してドライバビリティを確保するとともに、停車時におけるアイドルストップを実施する機会を確保して燃費を向上させることができる。
【0065】
また、ECU1は、走行時におけるアイドルスタートの実施後に、車両が停止するか、又は、車速Vが第四設定車速V4を上回るまでは走行時アイドルストップ制御部20による走行時のアイドルストップを禁止するため、走行時のアイドルスタートが実施されてから車両の走行を継続しているときに、第四設定車速V4を超えない車速範囲で第三設定車速V3を繰り返し下回ったとしても、走行時のアイドルストップは実施されない。したがって、走行時におけるアイドルストップの頻発を回避してドライバビリティを確保することができる。
【0066】
以下、本実施形態のエンジン制御装置によりアイドルストップが実施されるときの一例を、図4を参照して説明する。
時点t1では、図4(a)に示すように車速Vが第一設定車速V1を上回り、図4(b)に示すように停車時アイドルストップ許可条件が成立してフラグFsが0(非成立)から1(成立)にセットされる。
時点t2では、図4(a)に示すように車速Vが第二設定車速V2を上回り、図4(c)に示すように走行時アイドルストップ許可条件が成立してフラグFcが0(非成立)から1(成立)にセットされる。
【0067】
時点t3では図4(d)に示すように運転者による制動操作が開始され、この制動操作が時点t5まで継続される。このとき、図4(a)に示すように車速Vが低下し、時点t4で第二設定車速V2よりも低く設定された第三設定車速V3を下回る。すなわち、時点t4で走行時アイドルストップ開始条件が成立し、時点t5で再始動条件が成立する。したがって、図4(d)に示すように時点t4から走行時におけるアイドルストップの実施経験にかかるフラグFEXPが1にセットされ、図4(f)に示すように時点t4から時点t5までアイドルストップが実施される。
【0068】
時点t5では、アイドルストップが解除されるため、図4(c)に示すように走行時のアイドルストップにかかるフラグFcがリセット(0にセット)される。なお、停車時のアイドルストップにかかるフラグFsは、図4(b)に示すように1にセットされたまま保持される。
【0069】
時点t5から時点t6までは、図4(a)及び(e)に示すように時点t51,時点t52,時点t53,時点t54,時点t55,時点t56で制動操作により繰り返し第三設定車速V3を下回る。このとき、図4(d)に示すようにフラグFEXPが1にセットされたままであるため、図4(c)に示すように走行時アイドルストップ許可条件の成否にかかるフラグFsは0(非成立)にセットされる。このため、図4(f)に示すようにアイドルストップが実施されない。そして、時点t6以降は、図4(d)に示すように、フラグFEXPが0にセットされる。
【0070】
仮に、走行時アイドルストップ許可条件が、アイドルストップの実施経験にかかわらず第三設定車速V3を上回った後に第二設定車速V2を下回ったときに成立するものであれば、図4(f)に破線で示すように時点t51,時点t52,時点t53,時点t54,時点t55,時点t56でアイドルストップが実施されることになり、アイドルストップが頻発してしまう。
【0071】
しかしながら、本実施形態のエンジン制御装置では、走行中にアイドルスタートが実施されてから車両の走行を継続しているときに、第二設定車速V2よりも高く設定された第四設定車速V4(図示略)を超えない車速範囲で第三設定車速V3を繰り返し下回ったとしても、走行時のアイドルストップが実施されない。すなわち、ECU1は、走行時におけるアイドルスタートが実施されてから車両の走行を継続しているときに、車速Vが第四設定車速V4を上回るまでは走行時アイドルストップ制御部20による走行時のアイドルストップを禁止する。したがって、走行時のアイドルストップを一旦実施した後において、走行時のアイドルストップの頻発を回避することができる。
【0072】
時点t6以降は、図4(a)に示すように車速Vが停車(V≒0)を示し、図4(e)に示すように制動操作が継続されている。この時点t6以降は、図4(b)に示すようにフラグFsが1にセットされている、即ち、停車時アイドルストップ許可条件が成立しているため、図4(f)に示すようにアイドルストップが実施される。したがって、停車時におけるアイドルストップを実施する機会を確保して燃費を向上させることができる。
【0073】
なお、図示省略するが、時点t6以降に、第二設定車速V2を超えない車速範囲で第三設定車速V3を繰り返し下回ったとしても、走行時のアイドルストップが実施されない。したがって、走行時のアイドルストップを一旦実施した後において、走行時のアイドルストップの頻発を確実に回避することができる。
【0074】
〔2.その他〕
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。
上述の一実施形態では、第三設定車速V3が第一設定車速V1よりも高く設定されたものを示したが、第一設定車速V1と第三設定車速V3との高低関係は任意である。つまり、停車時におけるアイドルストップの頻発の回避度合に依って第一設定車速V1を設定することができ、これとは別個に、走行時におけるアイドルストップの実施機会の確保度合に依って第三設定車速V3を設定することができる。このため、場合に依っては、第一設定車速V1を第三設定車速V3よりも高く設定することができ、或いは、第一設定車速V1と第三設定車速V3とを等しい車速に設定することができる。
【0075】
上述の一実施形態では、走行時及び停車時におけるアイドルストップが解除されると走行時アイドルストップ許可条件の成否判定がリセットされるものを示したが、この成否判定が、停車時におけるアイドルストップの解除ではリセットされないが走行時におけるアイドルストップの解除でリセットされることとしてもよい。逆に、走行時アイドルストップ許可条件の成否判定が走行時におけるアイドルストップの終了ではリセットされないが停車時におけるアイドルストップの終了でリセットされることとしてもよい。これらの場合、走行時のアイドルストップが実施されやすくなるが、制御ロジックを簡素にすることができる。
【0076】
また、「走行時アイドルストップ許可条件」にかかるアイドルストップ実施経験は、上記(A2)の場合にリセットされるものに限らず、これに替えて、車速センサ4により検出された車速Vが第二設定車速V2を上回ったときにリセットされてもよい。この場合、本発明のエンジン制御装置には、停車時におけるアイドルストップの実施にかかる判定車速としての第一設定車速V1と、走行時におけるアイドルストップの実施にかかる判定車速としての第二設定車速V2及び第三設定車速V3とが少なくとも用意されていればよいため、制御ロジックを簡素にすることができる。
【符号の説明】
【0077】
1 ECU
2 エンジン
3 ブレーキスイッチ
4 車速センサ(車速検出手段)
10 停車時アイドルストップ制御部(第一制御手段)
11 停車時アイドルストップ実施条件判定部
11a 許可条件判定部
11b 開始条件判定部
20 走行時アイドルストップ制御部(第二制御手段)
21 走行時アイドルストップ実施条件判定部
21a 許可条件判定部
21b 開始条件判定部
30 アイドルスタート制御部(第三制御手段)
31 再始動条件判定部
図1
図2
図3
図4